説明

電磁干渉の測定および制御のための方法および電子システム

【課題】電気的にアクティブな被変調終端を用いて共振金属下部構造が放射する電磁ノイズを制御するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】電気的にアクティブな被変調終端を実施することによって、電子デバイスの平均EMR放射を低減することができる。例えば、インピーダンスを2つの金属下部構造間で1つ以上の終端位置において連続的に変動させることで、EMRの各成分の振幅に同様の変動を生じさせることができる。1つの手法によれば、EMRを測定する時間間隔未満の周期で電気インピーダンスを周期的に変動させることの結果として、平均測定EMRを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスによって生じる電磁干渉の測定および制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁干渉(EMI(electromagneticinterference))は、電子回路が、他の電子回路の動作を妨げる可能性のある望ましくない電磁放射(EMR(electromagnetic radiation))すなわち電磁ノイズを放射する問題である。多くの場合、電子システム内の金属下部構造(substructure)が、EMRのための効率的な放射または反射アンテナとして作用する。かかる金属下部構造の例は、限定ではないが、プロセッサ・ヒートシンク、印刷回路基板(PCB(printed circuit board))の基準面、および相互接続ブラケットが含まれる。EMRを制御するための既存の手法には、金属下部構造全体の周囲にファラデー・シールド(Faraday shield)を追加すること、または金属エンクロージャにおける開口のサイズを縮小し周波数を高くしてシールドを改良することを含む。また、スペクトル拡散クロックも選択肢であるが、これは、結果として生じるクロック・スキューに耐えられない多くの回路に適合しない。プロセッサ・クロック周波数が高くなると、EMIの軽減は特に困難である。なぜなら、これに対応して小さくなったEMR波長を含むことは、従来のシールド方法では難しいからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電気的にアクティブな被変調終端(modulated termination)を用いて共振金属下部構造が放射する電磁ノイズを制御するための方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態が提供する方法は、電磁ノイズを放射する第1および第2の下部構造間で1つ以上の終端位置において電気インピーダンスを連続的に変動させて特定周波数の電磁ノイズの振幅を連続的に変動させるステップを含む。
【0005】
別の実施形態は、電子信号を発生させるための信号発生器を有する電子システムを提供する。電気信号発生器に電気的に結合された第1の金属下部構造および第2の金属下部構造は、信号発生器からの電磁ノイズを放射する。インピーダンス・コントローラは、2つの金属下部構造間で1つ以上の終端位置においてインピーダンスを連続的に変動させて電磁ノイズの特定周波数における電磁ノイズの振幅を連続的に変動させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態に従った電子デバイスの概略ブロック図である。
【図2】試験中のデバイスが放射するEMRを測定することができるEMC試験状況の概略図である。
【図3】図1のデバイスによって特定の遠隔位置で発生した例示的な経時変化するEMR成分の典型的なグラフである。
【図4】2つの金属構造間のインピーダンスを変調させることによって変調させた経時変化するEMR成分の典型的なグラフである。
【図5】図1のデバイスの実施の1例を示す概略ブロック図であり、PINダイオードを流れる電流を制御することによって、2つの金属下部構造間の終端位置におけるインピーダンスを変動させている。
【図6】図1のデバイスの別の実施例を示す概略ブロック図であり、離間したPINダイオードを流れる電流を制御することによって、多数の終端位置におけるインピーダンスを変動させている。
【図7】アダプタ・ブラケットに接続された電子ハードウェア・カードを含むシステムにおいて実施される本発明の一実施形態の側面図である。
【図8】ヒートシンクが取り付けられたPCマザーボードを含むシステムにおいて実施される本発明の一実施形態の側面図である。
【図9】4つのねじによって金属エンクロージャに取り付けられた回路カードを含むシステムにおいて実施される本発明の別の実施形態の斜視図であり、ねじが回路カードの接地面をエンクロージャに電気的に接続する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、電気的にアクティブな被変調終端を用いて共振金属下部構造が放射する電磁ノイズを制御するための方法およびシステムを含む。電気的にアクティブな被変調終端は、選択された金属下部構造間で終端位置におけるインピーダンスを連続的に変動させるためのインピーダンス・コントローラを用いて、電子システム内で実施することができる。インピーダンス・コントローラは、金属下部構造間でインピーダンスを連続的に変動させる(例えば周期的に変動させる)ことによって、電磁ノイズ放射(EMR)の各周波数における振幅を連続的に変動させる。これに対応して、金属下部構造では、アンテナの共振周波数、アンテナ利得、および特定周波数における電磁放射パターンを含むアンテナ特性が、連続的に変化する。これらのアンテナ特性の連続的な変化によって、アンテナは、高効率の放射器と低効率の放射器との間で連続的に変動する。この結果、各特定周波数におけるEMRの振幅は、いずれかの特定方向から測定された場合、連続的に変動する。各周波数におけるEMR信号成分の振幅を連続的に変動させても、必ずしも全放射エネルギまたはピーク放射は(EMR周波数の全範囲にわたって)低減しないが、試験受信器によってEMRを測定する時間間隔よりも各サイクル期間の方が短い場合、平均測定EMRが低減する。これは、電磁適合性(EMC(electromagnetic compatibility)の規制制限を満たすために有効な方法となることができ、この場合、許容可能な平均放射レベルは、ピーク放射についてよりも低い。また、これは、平均放射を低減させた結果として、他のシステムとの干渉を抑える可能性がある。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に従った電子デバイス10の概略ブロック図である。電子デバイス10はシャシ11を含み、これは、信号発生器16に電気的に結合された第1の金属下部構造12および第2の金属下部構造14を支持する。信号発生器16は、副産物としてEMRを有する電子信号を発生する電子デバイス10内のいずれかの回路または回路群を含むことができる。例えば、信号発生器16は、コンピュータ・システムのプロセッサ等の集積回路を含むことができ、これは特定の周波数またはある範囲の周波数で動作し、更に、動作周波数とは無関係である場合がある1つ以上の周波数でEMRの形態の電磁ノイズを生成する。
【0009】
多くの場合、集積回路はEMIの源であるが、それらは一般に「アンテナ」ではない。むしろ、かかる回路は、そのエネルギを、ヒートシンク、回路基板面、およびケーブル等のもっと大きい金属下部構造に結合して、他の電子回路と干渉を生じさせるのに充分なEMRを放射する。図1の実施形態において、金属下部構造12、14は、EMRを放射するアンテナとして協同で機能する。放射されたEMRは、電子デバイス10内の他の電子回路またはシャシ11の外部の他の電子デバイスの回路と干渉を起こす可能性がある。電子デバイス10によって発生したEMRは、多数のEMR成分を含み、それらの各々が異なる周波数にあり、異なる金属下部構造によって異なる方向に放射される場合がある。EMRノイズ波長は極めて複雑であり得るが、一連のサイン波成分として時間領域において近似することができる。その成分の各々は、異なる振幅Aiおよび周波数fiを有する。すなわち、A1sin(2*pi*f1*t)+A2sin(2*pi*f2*t)+・・・+Aisin(2*pi*fi*t)である。これらの成分の各々の周波数(f1からfi)は、通常は変化しない。なぜなら、それらはデバイス自体内の動作周波数によって決定するからである。一例として、第1および第2の例示的なEMR成分25A、25Bを図示する。ある第1の周波数の第1のEMR成分25Aは、電子デバイス10に対して第1の遠隔位置において放射され、別の比較的高い第2の周波数の第2の例示的なEMR成分25Bは、電子デバイス10に対して別の遠隔位置において放射される。
【0010】
電子デバイスにおいて発生したEMRの各成分は通常、発生の時点で(EMR発生回路自体において)、一定の周波数および振幅を有する。成分の周波数(f1からfi)は、通常は変化しない。なぜなら、それらはデバイス10自体内の動作周波数によって決定するからである。しかしながら、電子デバイス10によって含まれるインピーダンス・コントローラ18は、2つの金属下部構造12、14間の1つ以上の位置(「終端位置」)23におけるインピーダンスを連続的に変動させることによって、各EMR成分の特定周波数における振幅(A1からAi)を電子的に制御する。インピーダンスの連続的な変動は、あるインピーダンス範囲でインピーダンスを連続的に循環させることによって実施可能である。終端位置23において、金属下部構造12、14間に、複数の離間可変抵抗器22(「R1」から「Rn」と標示)が結合されている。終端位置23は、2つの金属下部構造12、14間の電子経路を提供する。インピーダンス・コントローラ18は、クロック20によって管理されて、各可変抵抗器22における抵抗値を循環的に変動させる。経時変化する抵抗値は周期関数とすることができ、限定ではないが概ね正弦波の関数を含む。インピーダンスを変動させると、2つの金属下部構造12、14によって構成されるアンテナの共振周波数および放射パターンが変化する。これによってアンテナは高効率の放射器と低効率の放射器との間で循環し、この結果、所与の周波数においてEMRの振幅(すなわち振幅変調)が連続的に変化する。この振幅の連続的な変化によって、インピーダンスの変調なしで測定されるものに比べ、各周波数における平均値が低くなる。
【0011】
図2は、EMC試験受信器および電子デバイスの概略図であり、電子デバイス10(「試験中の装置」)によって放射されるEMR44がどのように試験受信器40によって測定可能であるかを示す。EMRの初期走査中、受信器40上のアンテナ42が、電子デバイス10から放射されるEMR44を検出する。受信器40は、この信号を増幅し、広い周波数範囲中で掃引し、一方でその入力においてピーク電力を測定する。アンテナ・ファクタ、ケーブル損失、および増幅について補正した後、測定したEMRの電界値を算出し、規則で定められた閾値と比較する。アンテナ42および試験受信器40は固定されているので、電子デバイス10自体をターンテーブル46上でゆっくり360度回転させて、電子デバイス10から異なる方向に発するEMRを累積的に受信すれば良い。EMRの最高周波数を記録した後、受信器を再構成して、もはや掃引せずに特定周波数で「静止」するようにする一方で、EMRのピーク値および平均値の双方を記録する。ターンテーブルを回転させ、アンテナを上下に動かして、これらの周波数の1つについて最大のEMRの方向を探し出す。いったんこの位置が見つかったら、データ(EMRの平均値およびピーク値)を捕捉し、再び規制制限と比較して、規則との最終的な適合性を判定する。初期走査において識別された周波数の各々について、この手順を繰り返す。
【0012】
図3は、金属下部構造間のインピーダンスを変調しない場合の、単一の周波数すなわちA1sin(2*pi*f1*t)における例示的なEMR成分の典型的なグラフである。この波長は、図1の2つの金属相互接続構造12、14間でインピーダンスを変動させない場合に、特定位置におけるEMR振幅のピーク値がどのように比較的一定のままであるかを表す。縦軸は正規化振幅を表し、横軸は時間を表す。正弦波のグラフは、周期「T」、周波数f=1/T、および波長λ=c/fを有し、ここでcは光速である。周波数fは、例えば2GHzとすることができる。
【0013】
図4は、図1の2つの金属下部構造間でインピーダンスを周期的に変動させることによって変動させたEMR成分A1sin(2*pi*f1*t)の典型的なグラフである。必須ではないが、経時変化するEMR周波数は、この例では概ね正弦波の振幅挙動を示す。変調の周波数fm=1/Tmであり、ここでTmは変調周期である。単に例示の目的のためであるが、変調周期Tmに対する図4におけるEMRの周期(f=1/T)は、EMC測定において通常見られるものに比べて、図4では誇張されている。
【0014】
異なる試験受信器は、それらの平均測定値を導出するために異なる方法を用いるが、機能上、実質的に全ての試験受信器は、指定された時間間隔内で入力電力を平均する。1GHzを超えるEMR測定値では、Ts「サンプリング間隔」は通常約100msであり、受信器自体の解像度帯域幅は1MHzとすることができる。図3および図4に示すように、平均機能は、測定している特定周波数における波のピークを追う「包絡線」を描くことによって、概念的に示すことができる。ピーク値は最高のサイン波ピークを示し、平均値は、サンプリング時間間隔Tsにわたって経時変化する包絡線の振幅を平均化することによって導出することができる。図4は、金属下部構造間でインピーダンスを変動させることの結果として得られるEMRの包絡線波長を示し、図3の直線は、変調していないEMRの包絡線を表す。サンプリング間隔TS内の少なくとも1つのサイクルでEMR包絡線波長が完了するようにEMRの振幅を変動させた結果、EMRの平均値は図3におけるものよりも著しく低い。変調周波数(fm=1/Tm)が充分に低く、サンプリング間隔Ts内の少なくとも1つのサイクルでEMR包絡線波長が完了しない場合、平均値は一定でなく、最大値と最小値との間でゆっくり変動する。かかる環境においては、規制上の要求によって、最大値を記録することが求められるので、低い変調周波数においては放射の軽減は実現されない。このため、サンプリング間隔Tsが変調周期Tmよりも大きいことが望ましい。
【0015】
一例によって示すと、試験中のデバイスが2GHzでEMRを放射している場合、受信器の平均検出器はその入力において1.9995GHzと2.0005GHzとの間で電力測定値を与え、100msのサンプリング間隔にわたって平均することができる。この100msサンプリング間隔によって、測定された放射の軽減を実現するためには、インピーダンスの変調周波数はサンプリング間隔Tsの逆数よりも高速でなければならず、これはこの例では10Hzとなる。変調速度がこれよりも遅いと、所与の測定周波数についての平均EMR測定値はピーク測定値と等しく、EMR軽減が全く得られない場合がある。このため、例示的なEMR測定は、選択された帯域幅B内でEMRの一部を受信し、選択されたサンプリング間隔TsにわたってEMRの受信部分の強度を平均し、サンプリング間隔Ts未満の周期Tm(すなわち1/fm)で2つのEMR放射金属構造間の電気インピーダンスを周期的に変動させることを含むことができる。
【0016】
電子デバイスからのEMRの測定中、特定周波数におけるEMRの平均強度を、規制制限等の閾値と比較することができる。平均強度が閾値よりも大きい場合は、これに応じて、平均測定強度が閾値未満になるまで、周期的に変動させるインピータンスの周期を短くすることができる。このように、電子デバイス10を「調整」して、平均EMR制限を定める規制上の要求に適合させることができる。これは、例えば、比較器回路を用いて実施することができる。比較器回路は、電子デバイス10または試験受信器によって含ませることができる。比較器は、平均強度を閾値(例えば規制制限)と比較して、例えば電子デバイス10がある規制上の要求と適合するか否かの指示のような比較の指示を出力することができる。
【0017】
図1の電子デバイス10の実施形態は、様々な方法で実施することができる。図4は、図1の電子デバイスの1例の実施を示す概略ブロック図である。ここでは、PINダイオード32を通る電流を変動させることによって、2つの金属下部構造12、14間の終端位置におけるインピータンスを変動させる。頭辞語「PIN」は、当技術分野において既知の、P型、真性、およびN型の材料の半導体積層物を示す。RF周波数におけるインピーダンスは、インピーダンス・コントローラ18によって含まれる制御回路24が与える低周波数電流バイアスによって制御することができる。低い交流(「AC」)周波数、または低い直流(「DC」)では、PINダイオード32は、入力信号を整流することによって従来の「PN」ダイオードと同様にふるまうことができる。しかしながら、高いAC周波数(DC負荷がある場合もない場合もある)では、PINダイオード32は、受動抵抗器のようにふるまう。指定された高電流レベル範囲内では、抵抗は、飽和に達するまで順方向電流と共に変動する。このため、PINダイオード32は可変抵抗器の挙動を示し、抵抗値は、PINダイオード32を通る電流を制御することで制御することができる。PINダイオード32を通る順方向電流を制御された速度で変動させることによって、制御回路24は、PINダイオード32の有効RF抵抗を変動させ、終端デバイスとして用いるのに極めて適したものとすることができる。
【0018】
図6は、図1の電子デバイス10の別の例示的な実施を示す概略ブロック図である。ここでは、多数の終端位置23に設けられた複数の離間PINダイオード32(「d1」から「dn」)を通る電流を制御することによって、終端位置23におけるインピーダンスを変動させる。インダクタンスL1を有するフェライト・ビードまたはインダクタ28が、第1の金属下部構造12を接地に結合する。フェライト・ビード28は、ダイオード変調速度において低いインピーダンスを有し、ダイオード制御電流に経路を与えるが、EMR周波数において高いインピーダンスを有し、これらの高い周波数で金属構造を誤って接地に接続することを防ぐ。各PINダイオード32を用いて、各終端位置23において金属下部構造12、14間のインピーダンスを個別に制御することができる。PINダイオード32の方向は、図5の単一のダイオード32の方位に対して反転させている。分離キャパシタ34(「C1」から「Cn」)およびフェライト・ビード28によって、各PINダイオード32を通る電流を個別に制御することが可能となる。また、阻止キャパシタ34によって、2つの金属下部構造12、14が同一のDC電圧電位にとどまることが可能となる。この実施において、制御回路24は個々の電流源から成ることができ、これらを変動させて、各終端位置23において各PIN32が与えるインピーダンス値を個々に調節する。
【0019】
また、多数のPINダイオード32を用いることは、電子デバイス10が放射するEMRを均一に制御することに役立つ。例えば、下部構造12、14が、経時変化する測定EMRの波長に比べて大きい場合、終端位置23の1つのみでインピーダンスを変動させても、その終端位置23から約1EMR波長を超える距離だけ離れた位置から発したEMRにはほとんど影響を及ぼさない場合がある。多数の終端位置23にダイオード32を設け、経時変化するEMRの波長のほぼ最大値未満の距離にダイオード32を離間することで、いっそう効果的な制御を行い、平均測定放射を低減する。他の例では、極めて高い周波数では波長が比較的小さいので、ダイオードを、1波長を超える距離だけ離間させれば良い。例えば、10Ghzにおける波長はわずか3cmである。しかしながら、1波長を超える距離だけ離間させた多くの終端位置においてインピーダンスを変動させることによって、平均測定EMRを低減させることができる。このため、別の実施形態によれば、ダイオード間の最大離間距離をEMR波長の約2倍未満に限定することができる。
【0020】
本発明は、金属下部構造が放射する電磁ノイズを制御するために、様々な特定の用途において具現化することができる。用途の例は、アダプタ・ブラケットとカード接地との間の接続(図7を参照)、カード接地ねじとシート金属シャシとの間の終端(図8を参照)、およびヒートシンクと接地面との間に追加された終端(図9を参照)を含む。
【0021】
図7は本発明の一実施形態の側面図である。これは、アダプタ・ブラケット60に接続された電子ハードウェア・カード50を含むシステムにおいて実施される。ハードウェア・カード50は多層印刷回路基板(PCB)52を含み、これは金属製接地層54を含む。接地層54は導電性金属層であり、これに対してPCB52の他層上の様々な回路を電気的に接地することができる。接地層54に直接接地することができる回路の一例は、プロセッサ・チップ16Aである。ハードウェア・カード50は、終端位置23においてアダプタ・ブラケット60に電気的に結合されている。ハードウェア・カード50の接地層54およびブラケット60は、プロセッサ・チップ16Aおよび他の回路(図示せず)が発生する電磁ノイズを放射可能である2つの金属下部構造である。接地層54およびブラケット60は、比較的大きい表面積のために、アンテナとして作用する。接地面54とブラケット60との間のインピーダンスをインピーダンス・コントローラ18によって連続的に変動させて、接地面54およびブラケット60が放射する平均EMRを低減させることができる。
【0022】
図8は本発明の一実施形態の側面図である。これは、ヒートシンク80が取り付けられたコンピュータ・マザーボード70を含むシステムにおいて実施される。マザーボード70は、1つ以上の金属製接地層または他の金属層を有し、これに対して別のプロセッサ・チップ16Bを接続することができる。ヒートシンク80は、このヒートシンク80をマザーボード70に固定するヒートシンク・クリップ82によって、2つ以上の終端位置23において金属層(複数の層)に電気的に接続されている。この実施形態において、マザーボード70の金属層およびヒートシンク80は、マザーボード70上のプロセッサ・チップ16Bまたは他の回路が発生するノイズを放射するアンテナとして作用する2つの金属下部構造である。接地面とヒートシンク80との間のインピーダンスを、この例ではプロセッサ・チップ16Bのサブ回路とすることができるインピーダンス・コントローラによって連続的に変動させて、平均放射EMRを低減させることができる。
【0023】
図9は本発明の別の実施形態の斜視図である。これは、4つのねじ82によって金属エンクロージャ80に取り付けた回路カード90を含むシステムにおいて実施される。ねじ82は、回路カード90の接地面94をエンクロージャ80に電気的に接続する。回路カード90が発生するEMRは、アンテナとして作用するエンクロージャ80および接地面94によって放射される。ねじ82は、終端位置23においてエンクロージャ80を回路カード90に電気的に結合する。インピーダンス・コントローラ18を用いて、終端位置23におけるエンクロージャ80と回路カード90との間のインピーダンスを周期的に変動させて、平均放射を軽減させる。
【0024】
本発明において用いた用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、本発明を限定することは意図していない。本発明において用いたように、単数の形態「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、文脈によって明確に示さない限り、複数の形態も含むことを意図している。更に、本明細書において用いられる場合、「〜を含む」または「〜を含んでいる」あるいはその両方は、明示した機構、整数、ステップ、動作、要素、構成要素またはグループあるいはそれら全ての存在を指定するが、その1つ以上の他の機構、整数、ステップ、動作、要素、構成要素またはグループあるいはそれら全ての存在または追加を除外しないことは理解されよう。「好ましくは」、「好適な」、「〜を優先する」、「任意に」、「〜することができる」という言葉および同様の言葉は、言及される項目、条件、またはステップが、本発明の任意の(必須ではない)機構であることを示すために用いられる。
【0025】
特許請求の範囲における、全てのミーンズ・プラス・ファンクションまたはステップ・プラス・ファンクション要素の対応する構造、材料、行為、および均等物は、具体的に特許請求した他の要素と組み合わせて機能を実行するためのいずれかの構造、材料、または行為を含むものと意図される。本発明の記載は、例示および記述の目的のために提示されるが、網羅的であったり、本発明を開示した形態に限定したりすることは意図していない。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には多くの変更および変形が明らかであろう。実施形態は、本発明の原理および実際の用途を最良に説明するため、更に、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な変更と共に様々な実施形態のために本発明を理解することができるように、選択され記載されたものである。
【符号の説明】
【0026】
12、14 金属下部構造
18 インピーダンス・コントローラ
20 クロック
24 制御回路
32 PINダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ノイズを放射する第1および第2の下部構造間で1つ以上の終端位置において電気インピーダンスを連続的に変動させて特定周波数の前記電磁ノイズの振幅を連続的に変動させるステップを含む、方法。
【請求項2】
2つの金属下部構造間で複数の終端位置において前記電気インピーダンスを同時に変動させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記終端位置が、前記電磁ノイズ成分の波長の約最大値未満の距離だけ離れている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の下部構造間で1つ以上の終端位置において電気インピーダンスを連続的に変動させる前記ステップが、前記第1および第2の金属下部構造を結合する1つ以上の離間PINダイオードに電流を流し、この電流を変化させて前記PINダイオードの抵抗を変動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選択された帯域幅内で前記電磁ノイズの一部を受信するステップと、
選択されたサンプリング間隔にわたって前記電磁ノイズの前記受信部分の強度を平均するステップと、
前記サンプリング間隔未満の周期で前記電気インピーダンスを周期的に変動させるステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記平均強度を閾値と比較するステップと、
前記平均強度が前記閾値を超えていることに応答して、前記電気インピーダンスを変動させる前記周期を短くするステップと、
を更に含む、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電子信号を発生させるための信号発生器と、
前記電気信号発生器に電気的に結合され、前記信号発生器からの電磁ノイズを放射するための第1の金属下部構造および第2の金属下部構造と、
前記2つの金属下部構造間で1つ以上の終端位置においてインピーダンスを連続的に変動させて前記電磁ノイズの特定周波数における前記電磁ノイズの振幅を連続的に変動させるためのインピーダンス・コントローラと、
を含む、電子システム。
【請求項8】
前記インピーダンス・コントローラが、
前記1つ以上の終端位置の各々におけるPINダイオードと、
前記PINダイオードを通る連続的に変動する電流を供給するための制御回路を有する可変電流源と、
を更に含む、請求項7に記載の電子システム。
【請求項9】
前記インピーダンス・コントローラが、
前記第1の金属下部構造を接地に結合するフェライト・ビードと、
各PINダイオードと前記第2の金属下部構造との間の直列のキャパシタと、
を更に含む、請求項8に記載の電子システム。
【請求項10】
選択された帯域幅内で前記電磁ノイズの一部を受信し、選択されたサンプリング間隔にわたって前記受信した電磁ノイズの強度を平均するためのEMI受信器を更に含み、
前記インピーダンス・コントローラが、前記平均するサンプリング間隔未満の周期で前記電気インピーダンスを周期的に変動させるように構成されている、請求項7に記載の電子システム。
【請求項11】
前記平均強度を閾値と比較し、前記比較の指示を出力するための比較器を更に含む、請求項10に記載の電子システム。
【請求項12】
前記第1の金属下部構造が多層回路基板の接地面を含み、前記第2の金属下部構造が前記回路基板を搭載するためのブラケットを含む、請求項7に記載の電子システム。
【請求項13】
前記第1の金属下部構造が多層回路基板の接地面を含み、前記第2の金属下部構造が前記回路基板に搭載されたヒートシンクを含む、請求項7に記載の電子システム。
【請求項14】
前記第1の金属下部構造が多層回路基板の接地面を含み、前記第2の金属下部構造が前記回路基板を搭載するエンクロージャを含む、請求項7に記載の電子システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−139499(P2010−139499A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246535(P2009−246535)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】