説明

電磁弁

【課題】振動によるスプールおよびコイルのがたつきを抑制する。
【解決手段】樹脂製スプール414の鍔部414bに突起414dを設け、ヨーク415には、突起414dに対向する位置に凹部を設ける。そして、突起414dを凹部に挿入することにより、スプール径方向のスプール414の動きを拘束する。また、凹部の内周面に突起414dの外周面を接触させることにより、その接触部の摩擦抵抗により、スプール軸方向Xのスプール414の動きを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁弁に関するもので、例えば車輪のロック傾向を回避するためのABS(アンチロックブレーキシステム)のアクチュエータに用いる電磁弁に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁弁は、樹脂封止コイルの軸方向端面に突起を備え、磁性体ケース(磁路部材に相当)と磁性蓋状体(磁路部材に相当)とで形成される空間に樹脂封止コイルを収納することにより、突起が押しつぶされた状態で磁性蓋状体の平坦面に接触するようになっている。そして、突起を磁性蓋状体に接触させることにより、磁性体ケースおよび磁性蓋状体に対する樹脂封止コイルのがたつきを防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2539141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁弁は、クリープや温度変化により突起と磁性蓋状体との間に隙間が発生するため、振動により樹脂封止コイルががたついてしまう。そして、そのがたつきにより、音が発生したり、或いは、例えば樹脂封止コイルの巻線とターミナルとの接合部が破断してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、振動によるがたつきを抑制可能な電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂製スプール(414)の鍔部(414b、414c)には、スプール軸方向(X)の端面に突起(414d)が設けられ、金属製磁路部材(415、430)には、突起(414d)に対向する位置に凹部(415f、430a)が設けられ、突起(414d)が凹部(415f、430a)に挿入されるとともに、凹部(415f、430a)の内周面に突起(414d)の外周面が接触していることを第1の特徴とする。
【0006】
これによると、突起が凹部に挿入されているため、スプール径方向のスプールの動きが拘束され、スプールおよびコイルのスプール径方向がたつきを防止することができる。また、凹部の内周面に突起の外周面が接触しているため、その接触部の摩擦抵抗により、スプール軸方向のスプールの動きが抑制され、スプールおよびコイルのスプール軸方向がたつきを抑制することができる。
【0007】
本発明は、突起(414d)および凹部(415f、430a)が複数個設けられていることを第2の特徴とする。
【0008】
これによると、樹脂製のスプールと金属製の磁路部材との線膨張係数の差により、温度変化による突起間の寸法変化量と凹部間の寸法変化量が異なるため、温度に拘わらず突起の外周面のいずれかの部位が凹部の内周面に接触した状態が維持されて、第1の特徴の効果を確実に得ることができる。
【0009】
本発明は、突起(414d)の一部が、塑性変形して凹部(415f、430a)に嵌め込まれていることを第3の特徴とする。
【0010】
これによると、突起の一部が凹部に食い込む状態になることで、スプール径方向のスプールの動きがより確実に拘束される。また、突起のうち凹部の外に位置して磁路部材に押される部位、すなわち圧縮荷重を受ける部位は、クリープによる変形が起こり温度変化で磁路部材との間に隙間が発生しやすいが、突起部のうち凹部に入り込んだ部位は、圧縮荷重を受けにくくクリープによる寸法変化が起こりにくいため、突起の外周面が凹部の内周面に接触した状態を継続して得ることができる。
【0011】
本発明は、磁路部材は、スプール径方向から見たときの形状がコの字のヨーク(415)であり、ヨーク(415)は、スプール(414)のスプール軸方向(X)両端側に位置してスプール(414)を挟持する2つの平行なヨーク片(415a、415b)と、2つのヨーク片(415a、415b)を連結するヨーク側板(415c)とを備え、ヨーク(415)における反ヨーク側板側の開口部からヨーク側板(415c)側に向かってスプール(414)が挿入されて、スプール(414)が2つのヨーク片(415a、415b)間に挟持されるように構成され、2つのヨーク片(415a、415b)に、円筒部(414a)と同軸に貫通孔(415d、415e)が設けられ、2つのヨーク片のうち少なくとも一方のヨーク片(415a)に、凹部(415f)が設けられていることを第4の特徴とする。
【0012】
これによると、ヨーク片の凹部にスプールの突起を挿入することによって、ヨークの貫通孔とスプールの円筒部の軸中心を精度よく合わせることができるため、弁部へのヨークおよびスプールの組み付けが容易になる。
【0013】
本発明は、突起(414d)のうち少なくとも一部は、鍔部(414b)のうちコイル(413)の最外周部(413a)よりもスプール径方向外側に位置する部位に設けられていることを第5の特徴とする。
【0014】
これによると、鍔部のうちコイルの最外周部よりもスプール径方向外側に位置する部位は、スプール軸方向(X)のコイル側に向かって容易に変形することができるため、スプールをヨークに挿入する際の、突起の先端とヨークの表面との摩擦抵抗が小さくなり、突起が削られることを抑制することができる。
【0015】
本発明は、凹部(415f)は、スプール挿入向き(I)およびスプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)において、貫通孔(415d)よりも外側に位置することを第6の特徴とする。
【0016】
これによると、スプールをヨークに挿入する際に、突起は貫通孔を避けて凹部に到達することができるため、スプールをヨークに挿入する際に突起が貫通孔の角部にて削られることを防止することができる。
【0017】
本発明は、凹部(415f)のうち、貫通孔(415d)の中心(P2)よりもヨーク側板(415c)側に位置する凹部(415f1)は、スプール挿入向き(I)およびスプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)において、貫通孔(415d)よりも外側に位置することを第7の特徴とする。
【0018】
これによると、スプールをヨークに挿入する際に貫通孔を越えてヨーク側板側に至る突起が貫通孔の角部にて削られることを防止することができる。
【0019】
本発明は、凹部(415f)が、スプール挿入向き(I)に沿って複数個設けられ、複数の凹部(415f)の位置は、スプール挿入向き(I)およびスプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)にずれていることを第8の特徴とする。
【0020】
これによると、スプールをヨークに挿入する際に、ヨーク側板側の凹部に挿入される突起が、反ヨーク側板側の凹部を避けてヨーク側板側の凹部に到達することができるため、スプールをヨークに挿入する際にヨーク側板側の凹部に挿入される突起が反ヨーク側板側の凹部の角部にて削られることを防止することができる。
【0021】
本発明は、複数の凹部(415f)は、ヨーク側板(415c)側の凹部(415f1)に対して反ヨーク側板側の凹部(415f2)が、スプール挿入向き(I)およびスプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)で内側に位置することを第9の特徴とする。これによると、ヨークの先端部の狭幅化が容易である。
【0022】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、マスタシリンダ(以下、M/Cという)1とホイールシリンダ(以下、W/Cという)2との間に、ブレーキ液圧を制御する液圧制御用アクチュエータ3が配設されている。液圧制御用アクチュエータ3は、アルミニウム合金製のハウジング3aを備え、このハウジング3aには、電磁弁4が挿入される段付円柱状の凹部3b、M/C1とW/C2との間でブレーキ液を流通させるための流路3cが形成されている。
【0025】
電磁弁4は、磁性体にて形成された段付円筒状のガイド401を備えている。このガイド401は、一端側がハウジング3aの凹部3b内に挿入され、他端はハウジング3aの外に突出している。そして、凹部3bの開口端部をかしめることにより、ガイド401がハウジング3aに固定されている。
【0026】
ガイド401には、シャフト402を摺動自在に保持するガイド穴401a、シート403が圧入されるシート挿入穴401b、さらには、シート403とシート挿入穴401bとで囲まれた空間401cをW/C2側の流路3cに連通させる連通穴401dが形成されている。
【0027】
円柱状のシャフト402は、非磁性体金属(例えばステンレス)で形成され、シート403側の端部がガイド401のガイド穴401aから突き出て空間401cに延びており、その先端には金属製の球状の主弁体404が溶接されている。
【0028】
金属製の円筒状のシート403には、ガイド401内の空間401cとM/C1側の流路3cとを連通させる主流路403aが、その径方向中心部に形成されている。この主流路403aにおける空間401c側の端部に、主弁体404が接離するテーパ状の主弁座403bが形成され、主流路403aの途中には、主流路403aよりも通路面積が小さいオリフィス403cが形成されている。そして、主弁体404は、主弁座403bに接離することにより主流路403aを開閉する。
【0029】
また、シート403における径方向中心からずれた位置には、ガイド401内の空間401cとM/C1側の流路3cとを連通させる副流路403dが、主流路403aに対して並列に形成されている。換言すると、副流路403dは、主流路403aをバイパスして、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3cに接続されている。
【0030】
この副流路403dの途中に、テーパ状の副弁座403eが形成されている。副流路403d内において、副弁座403eよりもM/C1側の流路3cに近い側に、金属製の球状の副弁体405が移動可能に挿入されている。そして、副弁体405は、圧力差によって移動して副弁座403eと接離することにより、副流路403dを開閉する。
【0031】
ガイド401におけるシート挿入穴401bの開口端部側には、異物流入防止用のフィルタ407が挿入されるとともに、フィルタ407の抜け止めのために金属製のリング408が圧入されている。そして、フィルタ407によって、副弁体405の開弁時の位置が決定されるようになっている。また、ガイド401の外周にも、連通穴401dを囲むようにして、異物流入防止用のフィルタ409が配置されている。
【0032】
ガイド401の他端の外周側にはスリーブ410が嵌入されており、このスリーブ410は、非磁性体金属(例えばステンレス)で形成され、一端が開口したコップ形状を成しており、コップ底面が略球形状を成している。
【0033】
そして、スリーブ410の底面側に磁性体製の略円柱状のプランジャ411が配置され、このプランジャ411はスリーブ410内を摺動可能になっている。なお、プランジャ411がスリーブ410の底面に接することにより、プランジャ411の紙面上向きへの摺動が規制される。
【0034】
シャフト402は、シャフト402とシート403との間に配置されたスプリング412によってプランジャ411側に付勢されており、シャフト402とプランジャ411は常時当接して一体的に作動する。
【0035】
スリーブ410の周囲には、通電時に磁界を形成するコイル413が巻回されたスプール414が配置されている。スプール414の外周には磁路部材をなすヨーク415が配置されている。
【0036】
因みに、電磁弁4は、コイル413、スプール414およびヨーク415によって構成されて弁部の主弁体404を駆動する駆動部と、駆動部以外の部分よりなりハウジング3a内の流路3cを開閉する弁部とに大別され、弁部はハウジング3aに圧入して固定され、その後駆動部が弁部に装着される。
【0037】
次に、上記構成になる電磁弁4の基本的な作動について説明する。この電磁弁4は、非通電時においては、スプリング412によりシャフト402およびプランジャ411がスリーブ410の底面側に向かって付勢され、プランジャ411がスリーブ410の底面に接している。そして、シャフト402の主弁体404がシート403の主弁座403bから離れた状態となり、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3c間は、シート403の主流路403a、ガイド401内の空間401c、およびガイド401の連通穴401dを介して連通状態となる。
【0038】
この状態で図示しないブレーキペダルが踏み込まれると、M/C1側とW/C2側との圧力差により副弁体405がシート403の副弁座403e側に向かって移動され、副弁体405が副弁座403eに当接してシート403の副流路403dが閉じられる。したがって、ブレーキペダルが踏み込まれた際には、シート403の主流路403aおよび副流路403dのうち主流路403aのみを介してM/C1側からW/C2側へブレーキ液が流動される。
【0039】
一方、ブレーキペダルの踏み込みが中止されると、副弁体405は、M/C1側とW/C2側との圧力差により移動して、シート403の副弁座403eから離れた状態となり、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3c間は、シート403の副流路403d、ガイド401内の空間401c、およびガイド401の連通穴401dを介して連通状態となる。したがって、ブレーキペダルの踏み込みが中止された際には、シート403の主流路403aおよび副流路403dを介して、W/C2側からM/C1側へブレーキ液が速やかに戻される。
【0040】
また、電磁弁4は、通電時においては、電磁力によりシャフト402およびプランジャ411がシート403側に向かって駆動され、主弁体404が主弁座403bに当接して主流路403aが閉じられる。
【0041】
次に、駆動部を構成するコイル413、スプール414およびヨーク415について、図1〜図6に基づいて詳述する。図2は駆動部をコイル413およびスプール414とヨーク415とに分解して示す断面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図2のB矢視図、図5は図4のC−C線に沿う断面図、図6はスプールの突起がヨークの凹部に嵌め込まれた部位の拡大断面図である。
【0042】
図1〜図6に示すように、スプール414は、ガラス繊維入りナイロン等の樹脂にて成形したものであり、円筒部414aの両端部から径方向外側に向かって鍔部414b、414cが延びている。
【0043】
ハウジング3a側の第1鍔部414bにおけるスプール軸方向Xの端面には、ハウジング3a側に向かって突出した突起414dが4個設けられている。これらの突起414dは、先端に向かって小径となる形状であり、より詳細には、球面形状になっている。また、これらの突起414dは、その一部がコイル413の最外周部413aよりもスプール径方向外側に位置している(図5参照)。より詳細には、スプール414をスプール軸方向Xに見たときの突起414dの中心P1は、コイル413の最外周部413aよりもスプール径方向外側に位置している。
【0044】
反ハウジング側の第2鍔部414cには、導電金属製のターミナル414eがインサート成形されている。このターミナル414eは、第2鍔部414cから反ハウジング側に向かって突出しており、その突出した部位にコイル413の巻線の端部がヒュージングにて接合されている。
【0045】
ヨーク415は、電気亜鉛メッキ鋼板(SECE)等の磁性体金属をプレス成形で加工したものである。ヨーク415は、スプール414のスプール軸方向X両端側に配置される2つの平行なヨーク片415a、415bと、2つのヨーク片415a、415bを連結するヨーク側板415cとを備え、スプール径方向から見たときの形状がコの字になっている。
【0046】
そして、図2の矢印I(以下、スプール挿入向きという)のように、ヨーク415における反ヨーク側板側の開口部からヨーク側板415c側に向かってスプール414が挿入され、これによりスプール414が2つのヨーク片415a、415b間に挟持される。
【0047】
ハウジング3a側の第1ヨーク片415aには、第1貫通孔415dが形成され、反ハウジング側の第2ヨーク片415bには、第1貫通孔415dよりも小径の第2貫通孔415eが第1貫通孔415dと同軸に形成されている。また、第1ヨーク片415aには、スプール414の突起414dに対向する位置に、円柱形状の凹部415fが4個設けられている。
【0048】
これらの凹部415fは、図3に示すように、スプール挿入向きIおよびスプール軸方向Xに対してともに直交する方向Yにずらして配置されており、また、4個の凹部415fのうち第1貫通孔415dの中心P2よりもヨーク側板415c側に位置する凹部(以下、ヨーク側板側凹部という)415f1は、方向Yにおいて、第1貫通孔415dよりも外側に配置されている。
【0049】
また、4個の凹部415fのうち、第1貫通孔415dの中心P2よりも反ヨーク側板側に位置する凹部(以下、反ヨーク側板側凹部という)415f2は、方向Yにおいて、ヨーク側板側凹部415f1よりも内側に位置している。
【0050】
前述したように、突起414dは球面形状になっており、突起414dの最大径部の外径が凹部415fの内径よりも大きくなっている。また、突起414dを含むスプール414のスプール軸方向長さLs1が、2つのヨーク片415a、415b間の長さLyよりも長くなっている。一方、突起414dを含まないスプール414のスプール軸方向長さLs2が、2つのヨーク片415a、415b間の長さLyよりも短くなっている。このような寸法関係により、スプール414が2つのヨーク片415a、415b間に挟持された状態では、図6に示すように、スプール414の突起414dは、一部がヨーク415の凹部415fの角部に当たって塑性変形し、凹部415fに嵌り込むようになっている。
【0051】
本実施形態では、凹部415fの内径d=φ1mm、突起414dの曲率半径SR=0.8mm、突起414dの高さH=0.7mm、第1鍔部414bと第1ヨーク片415a間の隙間S(すなわち、Ly−Ls2)=0.3mm、に設定している。この場合、凹部415fの内周面と突起414dの外周面とが接触している部位の長さLtは、約0.22mmとなる。
【0052】
次に、コイル413、スプール414およびヨーク415の組み付けについて説明する。まず、スプール414にコイル413の巻線を巻回してコイル集合体を製造し、次いで、コイル413が一体化されたスプール414を、スプール挿入向きIに沿って移動させて、2つのヨーク片415a、415b間に挿入する。
【0053】
そして、スプール414の円筒部414aとヨーク415の第1、第2貫通孔415d、415eが略同軸になる位置までスプール414が挿入されると、4個の突起414dと4個の凹部415fの位置が一致し、図6に示すように、各突起414dは、一部が各凹部415fの角部に当たって塑性変形し、凹部415fに嵌り込む。これにより、コイル413、スプール414およびヨーク415が一体化されて、駆動部が完成する。
【0054】
本実施形態では、第1鍔部414bのうちコイル413の最外周部413aよりもスプール径方向外側に位置する部位は、スプール軸方向Xのコイル413側に向かって容易に変形することができる。そして、突起414dは、その一部がコイル413の最外周部413aよりもスプール径方向外側に位置している。このため、スプール414をヨーク片415a、415b間に挿入する際に、第1鍔部414bにおいて突起414dが配置された部位がコイル413側に向かって容易に変形し、突起414dの先端が第1ヨーク片415aにて削られることを抑制することができる。
【0055】
また、4個の凹部415fのうちヨーク側板側凹部415f1は、方向Yにおいて、第1貫通孔415dよりも外側に位置している。これによると、ヨーク側板側凹部415f1に嵌り込む突起414dは、スプール414をヨーク片415a、415b間に挿入する際に、第1貫通孔415dを避けてヨーク側板側凹部415f1に到達することができるため、その突起414dが第1貫通孔415dの角部にて削られることを防止することができる。
【0056】
また、4個の凹部415fは、方向Yにずらして配置されている。これによると、ヨーク側板側凹部415f1に嵌り込む突起414dは、スプール414をヨーク片415a、415b間に挿入する際に、反ヨーク側板側凹部415f2を避けてヨーク側板側凹部415f1に到達することができるため、その突起414dが反ヨーク側板側凹部415f2の角部にて削られることを防止することができる。
【0057】
また、反ヨーク側板側凹部415f2は、方向Yにおいて、ヨーク側板側凹部415f1よりも内側に位置している。これによると、ヨーク415の先端部の狭幅化が容易である。
【0058】
また、突起414dが凹部415fに挿入されているため、スプール径方向のスプール414の動きが拘束され、スプール414およびコイル413のスプール径方向がたつきを防止することができる。しかも、突起414dは塑性変形してその一部が凹部415fに食い込む状態になっているため、スプール径方向のスプール414の動きがより確実に拘束される。
【0059】
また、凹部415fの内周面に突起414dの外周面が接触しているため、その接触部の摩擦抵抗により、スプール軸方向Xのスプール414の動きが抑制され、スプール414およびコイル413のスプール軸方向Xのがたつきを抑制することができる。
【0060】
そして、突起414dのうち凹部415fの外に位置してヨーク415に押される部位、すなわち圧縮荷重を受ける部位は、クリープによる変形が起こり、温度変化でヨーク415との間に隙間が発生しやすいが、突起414d部のうち凹部415fに入り込んだ部位は、圧縮荷重を受けにくくクリープによる寸法変化が起こりにくいため、突起414dの外周面が凹部415fの内周面に接触した状態を継続して得ることができる。さらに、樹脂製のスプール414と金属製のヨーク415との線膨張係数の差により、温度変化による突起414d間の寸法変化量と凹部415f間の寸法変化量が異なるため、温度に拘わらず突起414dの外周面のいずれかの部位が凹部415fの内周面に接触した状態が維持される。
【0061】
また、突起414dをスプール414に一体成形することにより、殆どコストアップなしで実施することができる。また、ヨーク415をプレス成形で加工する際に凹部415fも同時に加工することにより、殆どコストアップなしで実施することができる。
【0062】
また、スプール414の円筒部414aとヨーク415の第1、第2貫通孔415d、415eが略同軸になる位置までスプール414が挿入されると、4個の突起414dと4個の凹部415fの位置が一致するようにしているため、駆動部完成状態において円筒部414aと第1、第2貫通孔415d、415eの軸中心を精度よく合わせることができ、したがって、弁部への駆動部の組み付けが容易になる。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図7は本発明の第2実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す断面図である。
【0064】
第1実施形態では、コの字形状のヨーク415を用いたが、本実施形態は、筒型のヨーク415を用いている。なお、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図7に示すように、電磁弁4の弁部は、ガイド401、ガイド401内を摺動するプランジャ411、プランジャ411を付勢するスプリング412、磁性体金属にて有底円筒状に形成されたステータコア420等を備えている。また、ガイド401とステータコア420は、非磁性の金属よりなる中間部材421を介在させて溶接されている。そして、弁部は、その構成部品であるガイド401、ステータコア420、プランジャ411、およびスプリング412等が一体化された後に、ハウジング3aに圧入して固定される。
【0066】
電磁弁4の駆動部は、コイル413、スプール414、ヨーク415、磁性体金属製の円板430等を備えている。円板430には、スプール414の突起414dが嵌り込む円柱形状の凹部430aが設けられている。なお、円板430はヨーク415とともに磁路を形成するものであり、ヨーク415および円板430は、本発明の磁路部材を構成している。
【0067】
ヨーク415は、円筒部415gと、円筒部415gにおける反ハウジング側の端部から径方向内側に向かって延びる鍔部415hとを備えている。この鍔部415hの中心部には、ステータコア420が挿入される貫通孔415iが設けられている。
【0068】
ヨーク415内にコイル413およびスプール414を挿入した後、ヨーク415におけるハウジング側の開口部に円板430が圧入されている。これにより、コイル413、スプール414、ヨーク415、および円板430が一体化されて、駆動部が完成する。
【0069】
そして、ヨーク415に円板430を圧入する際、スプール414の突起414dと円板430の凹部430aの位置を合わせて、円板430を所定の位置まで圧入することにより、第1実施形態と同様に、突起414dは、一部が凹部430aの角部に当たって塑性変形し、凹部430aに嵌り込む。
【0070】
本実施形態では、突起414dが凹部430aに挿入されているため、スプール径方向のスプール414の動きが拘束され、スプール414およびコイル413のスプール径方向がたつきを防止することができる。しかも、突起414dは塑性変形してその一部が凹部430aに食い込む状態になっているため、スプール径方向のスプール414の動きがより確実に拘束される。
【0071】
また、凹部430aの内周面に突起414dの外周面が接触しているため、その接触部の摩擦抵抗により、スプール軸方向Xのスプール414の動きが抑制され、スプール414およびコイル413のスプール軸方向Xのがたつきを抑制することができる。
【0072】
また、突起414dのうち凹部430aに入り込んだ部位は、圧縮荷重を受けにくくクリープによる寸法変化が起こりにくいため、突起414dの外周面が凹部430aの内周面に接触した状態を継続して得ることができる。さらに、樹脂製のスプール414と金属製の円板430との線膨張係数の差により、温度変化による突起414d間の寸法変化量と凹部430a間の寸法変化量が異なるため、温度に拘わらず突起414dの外周面のいずれかの部位が凹部430aの内周面に接触した状態が維持される。
【0073】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図8は本発明の第3実施形態に係る電磁弁においてスプールの突起がヨークまたは円板の凹部に嵌め込まれた部位の断面図である。
【0074】
上記各実施形態では、突起414dは球面形状であったが、本実施形態では、図8に示すように、スプール414の突起414dは、先端に向かって小径となる円錐台形状になっている。この突起414dの最大径部の外径は、ヨーク415または円板430の凹部415f、430aの内径よりも大きく、突起414dの先端の径は凹部415f、430aの内径よりも小さくなっている。これにより、突起414dが塑性変形してその一部が凹部415f、430aに食い込むようになっている。
【0075】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、突起414dを塑性変形させてその一部を凹部415f、430aに食い込ませるようにしたが、例えば、突起414dを凹部415f、430aの内径より僅かに大径の円柱状として、塑性変形することなく突起414dが凹部415f、430aに圧入されるようにしてもよい。要するに、突起414dの外周面が接触さえしていれば、塑性変形するほどの状態でなくても、がたつきを抑制することができる。
【0076】
また、上記各実施形態では、突起414dを複数個設けたが、突起414dは1つでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す断面図である。
【図2】図1の電磁弁における駆動部を分解して示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB矢視図である。
【図5】図4のC−C線に沿う断面図である。
【図6】図1の電磁弁においてスプールの突起がヨークの凹部に嵌め込まれた部位の拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電磁弁においてスプールの突起がヨークまたは円板の凹部に嵌め込まれた部位の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
413…コイル、414…スプール、414a…円筒部、414b…鍔部、414d…突起、415…ヨーク(磁路部材)、415f、430a…凹部、430…円板(磁路部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部(414a)および前記円筒部(414a)の端部から径方向外側に向かって延びる鍔部(414b、414c)を有する樹脂製のスプール(414)と、
前記スプール(414)に巻回され、通電時に磁界を形成するコイル(413)と、
前記スプール(414)および前記コイル(413)を取り囲んで磁路を形成する金属製の磁路部材(415、430)とを備える電磁弁において、
前記鍔部(414b、414c)には、スプール軸方向(X)の端面に突起(414d)が設けられ、
前記磁路部材(415、430)には、前記突起(414d)に対向する位置に凹部(415f、430a)が設けられ、
前記突起(414d)が前記凹部(415f、430a)に挿入されるとともに、前記凹部(415f、430a)の内周面に前記突起(414d)の外周面が接触していることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記突起(414d)および前記凹部(415f、430a)が複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記突起(414d)の一部は、塑性変形して前記凹部(415f、430a)に嵌め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記凹部(415f、430a)は円柱形状の穴であり、
前記突起(414d)は、先端に向かって小径となる形状で、且つ、最大径部の外径が前記凹部(415f、430a)の内径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記突起(414d)は球面形状であることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記突起(414d)は円錐台形状であることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記磁路部材は、スプール径方向から見たときの形状がコの字のヨーク(415)であり、
前記ヨーク(415)は、前記スプール(414)のスプール軸方向(X)両端側に位置して前記スプール(414)を挟持する2つの平行なヨーク片(415a、415b)と、前記2つのヨーク片(415a、415b)を連結するヨーク側板(415c)とを備え、
前記ヨーク(415)における反ヨーク側板側の開口部から前記ヨーク側板(415c)側に向かって前記スプール(414)が挿入されて、前記スプール(414)が前記2つのヨーク片(415a、415b)間に挟持されるように構成され、
前記2つのヨーク片(415a、415b)に、前記円筒部(414a)と同軸に貫通孔(415d、415e)が設けられ、
前記2つのヨーク片のうち少なくとも一方のヨーク片(415a)に、前記凹部(415f)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項8】
前記突起(414d)のうち少なくとも一部は、前記鍔部(414b)のうち前記コイル(413)の最外周部(413a)よりもスプール径方向外側に位置する部位に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記凹部(415f)は、スプール挿入向き(I)および前記スプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)において、前記貫通孔(415d)よりも外側に位置することを特徴とする請求項7または8に記載の電磁弁。
【請求項10】
前記凹部(415f)のうち、前記貫通孔(415d)の中心(P2)よりも前記ヨーク側板(415c)側に位置する凹部(415f1)は、スプール挿入向き(I)および前記スプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)において、前記貫通孔(415d)よりも外側に位置することを特徴とする請求項9に記載の電磁弁。
【請求項11】
前記凹部(415f)が、スプール挿入向き(I)に沿って複数個設けられ、
前記複数の凹部(415f)の位置は、スプール挿入向き(I)および前記スプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)にずれていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項12】
前記複数の凹部(415f)は、前記ヨーク側板(415c)側の凹部(415f1)に対して反ヨーク側板側の凹部(415f2)が、スプール挿入向き(I)および前記スプール軸方向(X)に対してともに直交する方向(Y)で内側に位置することを特徴とする請求項11に記載の電磁弁。
【請求項13】
前記磁路部材は、筒状のヨーク(415)と、前記ヨーク(415)の開口部に圧入された円板(430)とを備え、
前記円板(430)に前記凹部(430a)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92988(P2007−92988A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161081(P2006−161081)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】