説明

電磁弁

【課題】サイズの小型化を図るのに有利な電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁は、入口ポート30と出口ポート31と親弁口32とをもつボディ2と、親プランジャ4と、親弁口32を開閉する親弁体5と、親弁口32を閉弁する方向に親プランジャ4を付勢する親付勢要素6とをもつ。親プランジャ4は、子作動室45と、子弁口53と、子弁口53を開閉する子プランジャ8と、子弁口53を閉弁する方向に子プランジャ8を付勢する子付勢要素47とをもつ。励磁コイル部7は、親プランジャ4および子プランジャ8を開弁方向に移動させる磁気吸引力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体または液体等の流体を流す電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁として、ボディに形成された単一の弁口と、この弁口を閉鎖する単一の弁体と、第1、第2、第3の可動プランジャと、第1、第2、第3の励磁コイル部とを備えるものが知られている(特許文献1)。このものによれば、励磁コイル部の数はプランジャの数と同数個設けられている。第1、第2、第3の励磁コイル部は互いに独立して通電可能とされている。そして、第1の励磁コイル部に通電されると、第1プランジャが開弁方向に移動し、弁体を開弁させる。更に、第1の励磁コイル部および第2の励磁コイル部の双方に通電されると、第1プランジャおよび第2プランジャが開弁方向に移動し、弁体を開弁させる。この場合、第1プランジャによる開弁量と第2プランジャによる開弁量とが合計され、弁体の開弁量は更に増加する。更に、第1の励磁コイル部、第2の励磁コイル部および第3の励磁コイル部の三者に通電されると、第1プランジャ、第2プランジャおよび第3プランジャが開弁方向に移動し、弁体を更に開弁させる。この場合、第1プランジャによる開弁量と第2プランジャによる開弁量と第3プランジャによる開弁量とが合計され、弁体の開弁量は更に増加する。
【0003】
更に、別の電磁弁として、ボディにそれぞれ形成された第1、第2、第3の弁口と、第1の弁口を開閉する第1の弁体と、第2の弁口を開閉する第2の弁体と、第3の弁口を開閉する第3の弁体と、第1、第2、第3の弁体に共通する共通プランジャと、第1、第2、第3の励磁コイル部とを備えるものが知られている(特許文献2)。このものによれば、励磁コイル部の数は弁口の数と同数個である。つまり励磁コイル部の数は弁体の数と同数個である。そして、第1の励磁コイル部に通電されると、共通プランジャが開弁方向に移動し、第1の弁体を開弁させる。更に、第1の励磁コイル部および第2の励磁コイル部の双方に通電されると、共通プランジャが開弁方向に更に移動し、第1の弁体および第2の弁体の双方を開弁させ、第1の弁口および第2の弁口の双方を開放させる。この場合、第1の弁口による開弁量と第2の弁口による開弁量とが合計され、開弁量は増加する。更に、第1の励磁コイル部、第2の励磁コイル部および第3の励磁コイル部の三者に通電されると、共通プランジャが開弁方向に更に移動し、第1の弁体、第2の弁体および第3の弁体の三者を開弁させ、第1の弁口、第2の弁口および第3の弁口の三者を開放させる。この場合、第1の弁口による開弁量と第2の弁口による開弁量と第3の弁口による開弁量とが合計され、開弁量は最も増加する。
【特許文献1】実公昭59−39249号公報
【特許文献2】実公昭60−5162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1,2に係る技術によれば、サイズの小型化が要請されているが、必ずしも充分ではない。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みなされたものであり、サイズの小型化を図るのに有利な電磁弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)様相1に係る電磁弁は、(a)流体が流入する入口ポートと、流体が流出する出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に設けられた親弁口と、親作動室とをもつボディと、(b)ボディの親作動室内に移動可能に設けられた親プランジャと、(c)親プランジャに取り付けられ親弁口を開閉する親弁体と、(d)ボディの親作動室内に設けられ親弁体がボディの親弁口を閉弁する方向に親プランジャを付勢する親付勢要素と、(e)ボディに設けられ親プランジャを開弁方向に移動させる磁気吸引力を通電により発生させる励磁コイル部とを具備しており、
(f)親プランジャは、(i)空洞状をなす子作動室と、(ii)入口ポート、親弁口および出口ポートに連通可能に設けられ且つ親弁口の開口面積よりも小さな開口面積をもつ子弁口と、(iii)子作動室内に移動可能に配置され励磁コイル部の磁気吸引力により子弁口を開弁させる方向に移動する子プランジャと、(iv)子作動室内に設けられ、子プランジャが子弁口を閉弁する方向に子プランジャを付勢する子付勢要素とを具備していることを特徴とする。
【0007】
励磁コイル部に通電されていないとき、親付勢要素の付勢力により親プランジャは付勢されて親弁口を閉鎖している。また、子付勢要素の付勢力により子プランジャは付勢されて子弁口を閉鎖している。このため流体は電磁弁を流れない。
【0008】
励磁コイル部に通電されると磁気吸引力が発生する。通電量が増加するにつれて、磁気吸引力が次第に増加する。子プランジャは親プランジャよりも軽量である。通電量が少ないときには磁気吸引力が少ないため、親プランジャは開弁しない。しかしながら子プランジャは親プランジャの空洞状の子作動室に収容されているため、親プランジャよりも小サイズであり且つ軽量である。この結果、子付勢要素の付勢力に抗しつつ、子プランジャが親プランジャよりも優先的に開弁方向に移動し、子弁口が開弁する。この結果、入口ポートの流体は開弁状態の子弁口を通り、出口ポートに吐出される。このように子弁口が開放しているものの、親弁口が開放していないため、電磁弁を流れる流体の流量は少ない。
【0009】
励磁コイル部に通電される通電量が更に増加すると、磁気吸引力が更に増加する。すると、親プランジャが開弁方向に移動し始め、親弁口が開弁し始める。この結果、高圧側の入口ポートの流体は開弁状態の親弁口を通り、低圧側の出口ポートに吐出される。このように子弁口よりも大きな開口面積を有する親弁口が開放しているため、電磁弁を流れる流体の流量は多い。なお、親弁口が開放されているときには、子弁口は開放されていても良いし、閉鎖されていても良い。上記したように本発明の電磁弁によれば、入口ポートから出口ポートに流れる流体の流量を調整することができる。
【0010】
更に、親プランジャに形成されている空洞状をなす子作動室に子プランジャが配置されているため、親プランジャの軸芯が延設されている方向において、親プランジャのサイズと子プランジャのサイズとが重なり、サイズの小型化が図られている。
【0011】
上記したボディは、流体が流入する入口ポートと、流体が流出する出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に設けられた親弁口と、親作動室とをもつ。流体としては液体でも気体でも良く、水素ガス等の燃料、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、空気、酸素ガス、水蒸気が例示される。入口ポートは流体供給源に接続されている。出口ポートは流体消費部(例えば燃料電池)、流体排出部等に接続されている。親弁口の開口面積は子弁口の開口面積よりも大きく設定されている。親プランジャは、ボディの親作動室内に移動可能に設けられている。親プランジャは、励磁コイル部に通電するときに形成される磁路の一部を形成する。
【0012】
親弁体は、親プランジャに取り付けられており、親弁口を開閉する。親付勢要素はボディの親作動室内に設けられており、親弁体がボディの親弁口を閉弁する方向に親プランジャを付勢する。親付勢要素としてはバネが例示される。バネはコイル状のバネ、板状のバネ等が例示される。励磁コイル部は、ボディに設けられており、親プランジャおよび子プランジャを開弁方向に移動させる磁気吸引力を通電により発生させる。
【0013】
上記した親プランジャは、空洞状をなす子作動室と、子弁口と、子プランジャと、子付勢要素とを備えている。子作動室は親プランジャの内部において空洞状をなす。子弁口は、入口ポート、親弁口および出口ポートに連通可能に設けられており、且つ、親弁口の開口面積よりも小さな開口面積をもつ。子プランジャは、子作動室内に移動可能に配置されており、移動に伴い子弁口を開閉する。子プランジャは、励磁コイル部に通電するときに形成される磁路の一部を形成する。子付勢要素は子作動室内に設けられており、子プランジャが子弁口を閉弁する方向に子プランジャを付勢する。子付勢要素としてはバネが例示される。バネはコイル状のバネ、板状のバネ等が例示される。子付勢要素の付勢力は親付勢要素の付勢力よりも小さく設定されていることが好ましいが、必ずしもこれに限らない。例えば、開弁力を発生させる磁束を親プランジャよりも子プランジャに優先的に透過させ得る場合、あるいは、子プランジャが親プランジャよりも著しく軽量である場合等には、子付勢要素の付勢力と親付勢要素の付勢力とが同じ場合でも良い。
【0014】
(2)様相2に係る電磁弁によれば、上記様相において、子弁口は、親弁体にこれの厚み方向に貫通するように形成されていることを特徴とする。この場合、子弁口を形成するための部品を用いずとも良く、部品点数の削減を図り得、あるいは、子弁口をボディ自体に形成せずとも良く、ボディの内部構造の複雑化を回避でき、電磁弁の小型化を図るのに有利となる。
【0015】
(3)様相3に係る電磁弁によれば、上記様相において、子プランジャは、親プランジャの子作動室の内部に収容されていることを特徴とする。子プランジャは、親プランジャに内包されるため、電磁弁の小型化を図るのに有利である。この場合、子プランジャの底部(子弁口側)に凸部を形成できる。凸部は、親プランジャの先端部の内周壁面に接近するように、子プランジャの径外方向に突出していることが好ましい。この結果、子プランジャの凸部と親プランジャの先端部との間の磁気抵抗が低減され、磁路の磁束が子プランジャの凸部と親プランジャの先端部を透過し易くなり、子プランジャへの磁気吸引力を確保できる。この場合、子プランジャの開弁を親プランジャの開弁よりも早期に行うことができる。
【0016】
(4)様相4に係る電磁弁によれば、上記様相において、親プランジャは、励磁コイル部で発生する磁束を子プランジャに透過させると共に親プランジャの開弁よりも子プランジャの開弁を促進させる磁路案内部を備えていることを特徴とする。この場合、励磁コイル部で発生する開弁用の磁束を磁路案内部により案内し、子プランジャに透過させる。このため、子プランジャの開弁を親プランジャの開弁よりも促進させることができる。磁路案内部としては、透磁率が低い非磁性材料(例えばオーステナイト系のステンレス鋼またはアルミニウム等)、透磁率が低い空気等の流体(気体)が存在する空洞で形成できる。非磁性材料や流体(例えば気体)は、親プランジャや子プランジャを構成する材料よりも透磁率が低いため、子プランジャが優先的に移動して開弁されるように、開弁用の磁束を案内できる。
【0017】
(5)様相5に係る電磁弁によれば、上記様相において、子付勢要素の付勢力は親付勢要素の付勢力よりも小さく設定されていることを特徴とする。このため子プランジャの開弁動作を、親プランジャの開弁動作よりも確実に早期に行なうことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電磁弁によれば、親弁口が開弁せずに子弁口のみが開弁しているときには、子弁口の開弁による流量特性が得られる。更に、親弁口が開弁すると、親弁口の開弁による流量特性が得られる。親プランジャの子作動室に子プランジャは配置されている。このため親プランジャの軸長方向の寸法と、子プランジャの軸長方向の寸法とが重なるため、当該軸長方向におけるサイズの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態について図1〜図5を参照しつつ説明する。図1に示すように、電磁弁1は、ボディ2と、親プランジャ4と、親弁体5と、親付勢要素としての親バネ6と、励磁コイル部7とを備えている。親プランジャ4は、鉛直線に沿っている軸芯M1をもつ。ここで、軸芯M1と平行な方向を軸長方向とする。軸芯M1と直交する方向を軸直角方向とする。
【0020】
図1に示すように、ボディ2は、金属または硬質樹脂で形成された親ボディ20と、親ボディ20に取り付けられた磁路形成部材として機能すると共に透磁率が高い材料で形成されたヨーク21と、磁路形成部材として機能すると共に透磁率が高い材料で形成されたリング状の固定鉄心22と、バネ荷重調整具24と、透磁率が低い材料である非磁性材料で形成された支持部材26とをもつ。支持部材26は、親プランジャ4を外周側から覆う筒部26aと、筒部26aの一端(下端)から径外方向に延設されたリング状のフランジ部26cとで形成されている。このため、励磁コイル部7への通電により形成される磁路W1を、親プランジャ4のうち親弁体5側の先端部4pに案内する機能をもつ。
【0021】
図1に示すように、ヨーク21は、軸長方向に沿って延設されている筒部21aと、筒部21aの軸長方向の一端(下端)から軸直角方向に沿って外方に延設されている第1フランジ部21cと、筒部21aの軸長方向の他端(上端)から軸直角方向に沿って外方に延設されている第2フランジ部21dとをもつ。固定鉄心22はリング形状をなしており、ヨーク21の内側において親プランジャ4の上側に配置されている。固定鉄心22は、軸直角方向に沿っている第1リング面22aと、第1リング面22aの内周端に繋がると共に軸長方向に沿った円筒形状をなす第1内周壁面22bと、第1内周壁面22bの上端に繋がると共に軸直角方向に沿った第2リング面22cと、第2リング面22cの内周端に繋がると共に軸長方向に沿った第2内周壁面22dと、第2内周壁面22dで区画されている取付孔22eとを備えている。第1リング面22a、第1内周壁面22b、第2内周壁面22d、第1リング面22a、第2リング面22cは軸芯M1の回りを1周している。
【0022】
図1に示すように、ボディ2は、流体が流入するように横方向に開口する高圧側の入口ポート30と、流体が流出するように下方向に開口する低圧側の出口ポート31と、入口ポート30と出口ポート31との間に設けられた円形状の親弁口32と、親弁口32に対面する親作動室34とをもつ。入口ポート30は流体供給源30A(例えば水素ガス、水素含有ガスなどの燃料を供給する燃料供給源)に接続されている。親弁口32は、ボディ2の筒体27の弁座28の先端部(上端部)に円形状に形成されている。親弁口32の軸芯M2は上下方向(重力方向)に沿っており、軸芯M1と同軸的とされている。弁座28の外壁面28pは、下方に向かうにつれて径大となる円錐面状をなす傾斜面をもち、水分などを流下させ得るようにされている。
【0023】
出口ポート31の内壁面31iは円筒形状をなしており、内径が上下方向に沿って実質的に同一とされている。出口ポート31は流体消費部31A(例えば燃料電池の燃料極)側に繋がる。入口ポート30と出口ポート31との間にはリング通路36が設けられている。リング通路36は、入口ポート30、出口ポート31、親弁口32に連通または連通可能とされている。
【0024】
図1に示すように、親プランジャ4は透磁率が高い金属材料(例えば鉄系等の軟磁性材料)で形成されており、固定鉄心22の下面側に対面するようにボディ2の親作動室34内において固定鉄心22の下方に配置されている。親プランジャ4は、親作動室34内において矢印H1,H2方向(上下方向、重力方向)に沿って移動可能に設けられている。
【0025】
図2に示すように、親プランジャ4は、軸長方向に沿った円筒形状の第1外周壁面4aと、第1外周壁面4aの上端に繋がる円錐面状の対向面4bと、円錐面状の対向面4bの上端に繋がると共に軸長方向に沿った円筒形状の第2外周壁面4cと、第2外周壁面4cの上端に繋がると共に軸直角方向に沿った第1リング面4dとをもつ。円錐面状の対向面4bは、固定鉄心22に向かうにつれて外径が小さくなるように傾斜している。なお、第1外周壁面4a、対向面4b、第2外周壁面4c、リング面4dは、それぞれ、軸芯M1の回りで1周している。
【0026】
更に図2に示すように、親プランジャ4は、上面に、つまり固定鉄心22に対向する面に、空洞状の親バネ室40を有する。親バネ室40は固定鉄心22の下側に位置しており、固定鉄心22に向けて開口している。親バネ室40は、軸長方向に沿った内周壁面40iと、軸直角方向に沿った座面40xとを備えている。
【0027】
図2に示すように、親プランジャ4の円錐面状の対向面4bは、固定鉄心22の第1リング面22aにリング状の隙間9aを介して対面する。親プランジャ4の第2外周壁面4cは、固定鉄心22の第1内周壁面22bにリング状の隙間9bを介して対面する。親プランジャ4の第1外周壁面4aは、支持部材26の筒部26aにリング状の隙間9cを介して対面する。親プランジャ4の第1外周壁面4aには、親プランジャ4の姿勢を安定化させるガイドリング80が設けられている。要するに、ガイドリング80は、親プランジャ4の第1外周壁面4aと支持部材26の筒部26aとの間に介在しておれば良い。親プランジャ4の第2外周壁面4cは、固定鉄心22の第1内周壁面22bにリング状の隙間9dを介して対面する。
【0028】
図1に示すように、親弁体5は、親プランジャ4のうち軸直角方向に沿った底面(下面)に接着または溶着等の接合手段により取り付けられており、親弁口32に対面している。親弁体5は円形の盤状をなしており、弁座28に着座して親弁口32を閉鎖する。親弁体5は、親プランジャ4の底面(下面)に固着された盤状の第1部材51と、第1部材51に固着され盤状の第2部材52とで形成されている。第2部材52は第1部材51よりも弁座28側に設けられており、弁座28に着座する。親弁体5が弁座28から離れると、親弁口32が開放される。親弁体5を構成する第1部材51の材質としては非磁性材料(例えばオーステナイト系のステンレス鋼、アルミニウム合金、セラミックス、樹脂等)が好ましい。その理由としては、親プランジャ4の先端部4pおよび子プランジャ8の凸部8yに磁束を良好に透過させ、磁路W1による磁気吸引力を親プランジャ4および子プランジャ8に作用させるためである。第2部材52の材質としては、ゴムや樹脂等のシール性をもつ高分子材料で形成されていることが好ましい。
【0029】
子弁口53は円筒形状をなしており、親弁体5の中央域において、親弁体5の厚み方向に貫通してオリフィス状に形成されている。親弁体5と親プランジャ4の先端部4pとの間に通路54が形成されている。通路54は入口ポート30に連通していると共に、子作動室45に連通している。
【0030】
図1に示すように、親バネ6はボディ2の親作動室34内に軸芯M1を包囲するように設けられている。親バネ6は、親弁体5がボディ2の親弁口32を閉弁する方向(矢印H2方向、下方向)に親プランジャ4を付勢する。親バネ6の一端部は親バネ室40に収容され、親バネ室40の座面40xに着座している。親バネ6の他端部は、バネ荷重調整具24の座面24xに着座している。バネ荷重調整具24は固定鉄心22の取付孔22eに着脱可能に取り付けられている。具体的には、バネ荷重調整具24の雄螺子部24pは固定鉄心22の取付孔22eの雌螺子部22fに着脱可能に取り付けられている。雌螺子部22fおよび雄螺子部24pの螺合により、バネ荷重調整具24を矢印H1,H2方向に前進後退させれば、親バネ6による付勢力は調整される。
【0031】
励磁コイル部7はボディ2に設けられており、親プランジャ4および子プランジャ8を開弁方向(矢印H1方向、上方向)に移動させる磁気吸引力を生成する磁路W1を通電により発生させる。励磁コイル部7は、筒形状のボビン70と、ボビン70に巻き付けられた励磁巻線71とを備えている。ボビン70は樹脂製であり、筒部70aとフランジ部70c,70dとをもつ。筒部70aおよびフランジ部70c,70dにより、励磁巻線71は包囲されている。
【0032】
さて本実施形態によれば、図1に示すように、親プランジャ4は、空洞状をなす子作動室45と、子弁口53と、子作動室45内に移動可能に配置された子プランジャ8と、子作動室45内に設けられた子付勢要素としての子バネ47とを備えている。子作動室45は親プランジャ4の底面において開口している。図2に示すように、子作動室45は、入口ポート30、親弁口32および出口ポート31に連通可能に設けられている。子作動室45は、軸長方向に沿っている円筒形状の第1内周壁面45aと、軸長方向に沿っている円筒形状の第2内周壁面45bと、第1内周壁面45aと第2内周壁面45bとを軸直角方向に沿って繋ぐ第1リング面45cと、第2内周壁面45bの上端に繋がると共に軸直角方向に沿った第2リング面45dとをもつ。第1リング面45cと第2内周壁面45bとでリング状の段部45kを形成している。子作動室45は子バネ室48に連通する。子バネ室48には、コイル状の子バネ47が同軸的に収容されている。子バネ室48と親バネ室40とは、連通路49により連通している。
【0033】
図2に示すように、子弁口53の開口面積は、親弁口32の開口面積よりも小さくされている。子プランジャ8は透磁率が高い金属(例えば鉄系)で形成されており、親プランジャ4よりも軽量化および小サイズ化されている。子プランジャ8は、子作動室45内において上下方向(矢印H1,H2方向、重力方向)に沿って移動可能に配置されており、移動に伴い子弁口53を開閉する。図2に示すように、子プランジャ8は、軸長方向に沿って延設された円筒形状の第1外周壁面8aと、第1外周壁8aから径大端側が延設された円錐面状をなす円錐面状の対向面8bと、円錐面状の対向面8bの径小端側から軸長方向に沿って延設された円筒形状の第2外周壁面8cとを備えている。
【0034】
図2に示すように、子プランジャ8の第1外周壁面8aは、親プランジャ4の内周壁面45aにリング状の隙間9sを介して対面する。子プランジャ8の第1外周壁面8aには、子プランジャ8の姿勢を安定化させるガイドリング85が設けられている。要するに、ガイドリング85は、子プランジャ8の第1外周壁面8aと親プランジャ4の内周壁面45aとの間に介在していれば良い。
【0035】
図2に示すように、子プランジャ8の円錐面状の対向面8bは、親プランジャ4の第1リング面45cおよび段部45kにリング状の隙間9tを介して対面する。子プランジャ8の第2外周壁面8cは、親プランジャ4の第2内周壁面45bにリング状の隙間9uを介して対面する。
【0036】
図2に示すように、子バネ47はコイル状をなしており、子作動室45内に設けられている。子バネ47は、子プランジャ8が子弁口53を閉弁する方向(矢印H2方向,下方向)に向けて子プランジャ8を付勢する。子バネ47の軸長方向の一端は、子プランジャ8の着座面8xに着座している。子バネ47の軸長方向の他端は、子バネ室48の座面48xに着座している。子プランジャ8を閉弁方向に付勢する子バネ47のバネ定数は、親バネ6のバネ定数よりも小さく設定されている。従って子バネ47の付勢力は、親バネ6付勢力よりも小さく設定されている。よって子プランジャ8の閉弁力は、親プランジャ4の閉弁力よりも小さく設定されている。
【0037】
図2に示すように、子プランジャ8の底面(下面)には、リング状のシール部材85xが固着されている。子プランジャ8が閉弁されているとき、シール部材85xは子弁口53の周囲を覆って気密または液密的にシールしている。シール部材85xは、ゴムや軟質樹脂等のシール材料で形成されている。
【0038】
本実施形態によれば、励磁コイル部7に通電されていないとき、図1に示すように、親バネ6の付勢力により親プランジャ4は閉弁方向(矢印H2方向,下方向)付勢されて、親弁口32を閉鎖している。また、子バネ47の付勢力により子プランジャ8は閉弁方向(矢印H2方向,下方向)に付勢されて子弁口53を閉鎖している。このため入口ポート30の流体は電磁弁1を流れない。
【0039】
これに対して励磁コイル部7に通電されると、励磁コイル部7で発生した磁力により磁気吸引力が発生する。基本的な磁路W1(図1参照)は、非磁性材料で形成されている支持部材26の影響で、ヨーク21の筒部21a、ヨーク21の第1フランジ部21c、親プランジャ4の先端部4p、子プランジャ8の凸部8y、子プランジャ8、親プランジャ4、固定鉄心22、ヨーク21の第2フランジ部21dを透過する。
【0040】
ここで、図2に示すように、子プランジャ8の底部に形成されている凸部8yは、親プランジャ4の先端部4pの内周壁面に接近するように、子プランジャ8の径外方向にリング鍔状に突出している。この結果、子プランジャ8の凸部8yと親プランジャ4の先端部4pとの間の磁気抵抗が低減され、磁路W1の磁束が子プランジャ8の凸部8yと親プランジャ4の先端部4pを透過し易くなる。更に図2に示すように、ヨーク21のフランジ部21cの内端21iは支持部材26よりもΔTぶん、親プランジャ4の先端部4pの外周壁面に接近している。このためヨーク21の内端21iと親プランジャ4の先端部4pとの間の磁気抵抗が低減される。よって、磁路W1の磁束がヨーク21の内端21iと親プランジャ4の先端部4pと子プランジャ8の凸部8yとを透過し易くなる。これにより磁路W1による磁気吸引力を子プランジャ8に与え易くなり、子プランジャ8の開弁を親プランジャ7の開弁よりも早期な行うことができる利点が得られる。
【0041】
図1に示すように、閉弁時には、ヨーク21の第1フランジ部21cは、親プランジャ4の先端部を介して子プランジャ8の凸部8yに対向している。このため、ヨーク21の第1フランジ部21cを透過する磁束が子プランジャ8の凸部8yに透過し易くなる。故に、子プランジャ8の開弁動作の促進に有利である。
【0042】
励磁コイル部7に通電される通電量が増加するにつれて、磁気吸引力が次第に増加する。ここで、子バネ47の付勢力は親バネ6の付勢力よりも小さい。通電量が少ないときには磁気吸引力が少ないため、図3に示すように、親プランジャ4は開弁しない。しかし、子バネ47の付勢力に抗しつつ、図3に示すように、子プランジャ8が親プランジャ4よりも優先的に開弁方向(矢印H1方向、上方向)に移動し、子弁口53が開弁する。この結果、入口ポート30の流体は、矢印KA方向に沿ってリング通路36、通路54および開弁状態の子弁口53を通り、出口ポート31に吐出される。このように子弁口53が開放しているものの、親弁口32が開放されていないため、電磁弁1を流れる流体の流量は少ない。このように子弁口53が開放しているものの、親弁口32が開放されていない状態において、励磁コイル部7への通電量を調整すれば、子弁口53の開弁量が適宜調整される。
【0043】
ところで、励磁コイル部7に通電される通電量がさらに増加すると、矢印H1方向(開弁方向)への磁気吸引力が増加する。励磁コイル部7による磁気吸引力が親プランジャ4の閉弁力に打ち勝つと、親バネ6の付勢力に抗しつつ、図4に示すように、親プランジャ4が開弁方向(矢印H1方向,上方向)に移動し始め、親弁口32を開弁させる。この結果、入口ポート30の流体は矢印KB方向(図4参照)に沿って開弁状態の親弁口32を通り、出口ポート31に吐出される。このように子弁口53よりも大きな開口面積を有する親弁口32が開放しているため、電磁弁1を流れる流体の流量は増加する。なお、図4から理解できるように、親弁口32が開放されているとき、子弁口53は開放されている。このように親弁口32が開放されている状態において、励磁コイル部7への通電量を調整すれば、親弁口32の開弁量が適宜調整される。
【0044】
図5は、電磁弁1の入口ポート30から出口ポート31に流れる流体の流量Qと励磁コイル部7へ通電する通電量(電流または電圧)との関係を表すグラフを示す。図5において、特性線K1は本実施形態に係る電磁弁の流量特性を示す。特性線K2は比較例に係り、単段の比例式の電磁弁1の流量特性を示す。特性線K1に示すように、給電量が値A0から値A1までは、子弁口53のみが開弁するが、子弁口53の開弁度は比例的に増加する。このため入口ポート30から出口ポート31に流れる流体の流量は比例的に増加し、流量比例領域α1が得られる。このように給電量を値A0から値A1までの流量比例領域α1において給電量を調整すれば、親弁口32が閉鎖している状態において親子弁口53のみが開弁するため、流量が少ない領域において流量を調整できる。給電量が値A1を越えても値A2までは、親弁口32を閉鎖している親弁体5が開弁せず、親弁口32は開放しないため、流量は増加しない。したがって流量停滞領域α2が得られる。
【0045】
励磁コイル部7への給電量が値A2を越えると、親弁口32を閉鎖している親弁体5が開弁し、親弁体5の開弁度が比例的に増加するため、流量は比例的に増加する。従って、流量比例領域α3が得られる。流量比例領域α3において、給電量を調整すれば、子弁口53が開弁している状態において親弁口32が開弁するため、流量が大きな領域において流量を調整できる。なお、励磁コイル部7への給電量が値A3を越えると、流量は増加しない。したがって流量停滞領域α4が得られる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、親弁口32が閉弁されている状態で子弁口53が開弁するため、子弁口53の開弁による流量特性が得られ、更に磁気吸引力が増加すると、親弁口32が開弁するため、親弁口32の開弁による流量特性が得られる。
【0047】
更に本実施形態によれば、親プランジャ4の内部に形成されている空洞状をなす子作動室45に子プランジャ8が配置されており、親プランジャ4の軸長方向において親プランジャ4の軸長サイズと子プランジャ8の軸長サイズとが重なっている。殊に、親プランジャ4は子プランジャ8を内包している。このため親プランジャ4を収容する収容スペースの他に、子プランジャ8を収容する収容スペースをボディ2の内部に別途形成せずとも良く、電磁弁1の小型化に有利となる。更に本実施形態によれば、親プランジャ4は子プランジャ8を内包しているため、図4から理解できるように、親プランジャ4の子作動室45の軸長寸法LA内に子プランジャ8の軸長寸法LBが納まっている。つまり子プランジャ8は親プランジャ4に内包されている。このため電磁弁1の高さ寸法を抑えるのに有利である。
【0048】
更に本実施形態によれば、励磁コイル部7は単一であり、励磁コイル部7の数が減少されている。即ち、励磁コイル部7は、親プランジャ4および子プランジャ8を透過する磁路W1を形成し、親プランジャ4および子プランジャ8に共用されている。このように励磁コイル部7は親プランジャ4および子プランジャ8に共用されているため、前述とした特許文献1,2とは異なり、複数の励磁コイル部7を設けずとも良く、電磁弁1の小型化を図るのに有利となる。
【0049】
上記したように本実施形態によれば、励磁コイル部7は親プランジャ4および子プランジャ8に共用されているため、スイッチ素子の数、結線工数が減少し、電磁弁のサイズの小型化、コストの低廉化を図り得る。具体的には、励磁コイル部7は親プランジャ4および子プランジャ8の双方に共用化されているため、励磁コイル部7による磁気吸引力のバラツキを抑えるのに有利である。
【0050】
また本実施形態によれば、親弁口32よりも径小な子弁口53は、親弁体5にこれの厚み方向に貫通するように形成されている。このため、子弁口53を形成するための別部品を用いずとも良く、電磁弁1の小型化を図るのに有利となる。また、ボディ2に形成されている弁口は親弁口32だけであり、子弁口53は、親弁口32を開閉する親弁体5自体を厚み方向に貫通させて形成されている。このためボディ2に多数の弁口を形成する特許文献2に係る技術とは異なり、ボディ2の構造および加工が簡単となり、異物に対する詰まり性を低減させ得ると共に、コスト低減に有利となる。
【0051】
(実施形態2)
実施形態2(図示せず)は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。但し、シール部材85xは、子プランジャ8の底面に固着されておらず、親弁体5の第1部材51の表面(上面)に固着されている。従って子プランジャ8が子弁口53を閉弁しているとき、子プランジャ8の底面はシール部材85xに気密または液密に圧接されている。
【0052】
更に本実施形態においても、親プランジャ4の内部に形成されている空洞状をなす子作動室45に子プランジャ8が配置されており、親プランジャ4の軸長サイズと子プランジャ8の軸長サイズとが重なっている。殊に、親プランジャ4は子プランジャ8を内包している。このため親プランジャ4を収容する収容スペースの他に、子プランジャ8を収容する収容スペースをボディ2の内部に別途形成せずとも良く、電磁弁1の小型化に有利となる。更に本実施形態によれば、親プランジャ4は子プランジャ8を内包しているため、図4から理解できるように、親プランジャ4の子作動室45の軸長寸法LA内に子プランジャ8の軸長寸法LBが納まっている。つまり子プランジャ8は親プランジャ4に内包されている。このため電磁弁1の高さ寸法を抑えるのに有利である。
【0053】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。但し、親プランジャ4のうち固定鉄心22に対向する対向面4bは、軸芯M1の軸直角方向に沿ってリング状に延設されており、固定鉄心22の第1リング面22aに沿っている。この場合には、図5に示す特性線K3に示すように、流量が階段的に増加する段階増加領域α5を得るのに有利となる。更に本実施形態においても、親プランジャ4の内部に形成されている空洞状をなす子作動室45に子プランジャ8が配置されており、親プランジャ4の軸長サイズと子プランジャ8の軸長サイズとが重なっている。殊に、親プランジャ4は子プランジャ8を内包している。このため親プランジャ4を収容する収容スペースの他に、子プランジャ8を収容する収容スペースをボディ2の内部に別途形成せずとも良く、電磁弁1の小型化に有利となる。
【0054】
(実施形態4)
図7は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。但し、親プランジャ4のうち親弁口32側には磁路案内部4roが設けられている。磁路案内部4roは、励磁コイル部7で発生する開弁用の磁束を親プランジャ4よりも優先的に子プランジャ8に透過させると共に、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも促進させるものである。開弁用の磁束が親プランジャ4に透過しにくくなるため、子プランジャ8よりも親プランジャ4の開弁動作は遅延される。磁路案内部4roは、親プランジャ4のうち子プランジャ8を包囲する周壁部分を軸芯P1の回りを1周するように、リング状をなす空洞で形成されている。空洞には、親プランジャ4および子プランジャ8を構成する材料よりも透磁率が低い流体が存在する。
【0055】
この場合、励磁コイル部7で発生する開弁用の磁束が親プランジャ4に透過することが抑えられるため、親プランジャ4の開弁動作は子プランジャ8の開弁よりも遅延される。よって、子プランジャ8に透過するように磁路案内部4roにより開弁用の磁束を案内する。これにより磁束を親プランジャ4の底部よりも子プランジャ8の内部に優先的に透過させる。このため、子プランジャ8の磁路形成に起因する開弁動作を、親プランジャ4の開弁動作よりも促進させることができる。更に、図7に示すように、子プランジャ8の外周面にこれを1周するリング状の凸部8yが形成されている。このため、開弁用の磁束は、凸部8yから子プランジャ8に透過し易くなるため、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも優先させるのに有利となる。この場合、磁路案内部4roにより案内される磁路により、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも促進させることができる。即ち、親プランジャ4よりも子プランジャ8に優先的に磁束を透過させ子プランジャ8の開弁を促進させる構造が採用されている。このため、親バネ6の付勢力と子バネ47の付勢力とを同程度としても良い。勿論、親バネ6の付勢力よりも子バネ47の付勢力を小さく設定しても良い。
【0056】
(実施形態5)
図8は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。但し、親プランジャ4のうち親弁口32側の外周面には、磁路案内部4rrが設けられている。磁路案内部4rrは、励磁コイル部7で発生する磁束を親プランジャ4よりも優先的に子プランジャ8に透過させると共に、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも促進させるものである。磁路案内部4rrは、親プランジャ4のうち子プランジャ8を包囲する周壁部分を軸芯P1の回りを1周するようにリング状をなす非磁性材料(例えばオーステナイト系のステンレス鋼、アルミニウム系合金等の非磁性金属、セラミックス、樹脂等)で形成されている。磁路案内部4rrは溶接、嵌め込み、接着などで親プランジャ4に取り付けられる。この場合、励磁コイル部7で発生する磁束が親プランジャ4を透過することを抑え、できるだけ子プランジャ8を透過するように磁路案内部4roにより磁束を案内する。これにより磁束を親プランジャ4の底部よりも子プランジャ8に優先的に透過させる。このため、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも促進させることができる。更に図8に示すように、子プランジャ8の外周面にこれを1周するリング状の凸部8yが形成されている。このため磁束は、凸部8yから子プランジャ8に透過し易くなるため、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも優先させるのに有利となる。この場合、磁路案内部4roにより案内される磁路により、子プランジャ8の開弁動作を親プランジャ4の開弁動作よりも促進させることができるため、親バネ6の付勢力と子バネ47の付勢力とを同程度としても良い。勿論、親バネ6の付勢力よりも子バネ47の付勢力を小さく設定しても良い。親プランジャ4のうち親弁口32側の内周面に磁路案内部4rrを設けても良い。
【0057】
(実施形態6)
図9は実施形態6は、定置型または車両搭載型の燃料電池システムに適用している。燃料電池システムは、図9に示すように、燃料極101と酸化剤極103とで電解質膜104(例えばイオン伝導性をもつ固体高分子膜など)を挟んだ燃料電池のスタック100と、スタック100の燃料極101の入口にガス状の燃料(例えば水素ガス、水素含有ガス)を供給する燃料供給路200と、スタック100の燃料極101の出口からガス状の燃料オフガスを排出する燃料オフガス路210と、スタック100の酸化剤極103の入口に酸化剤ガス(例えば空気)を供給する酸化剤供給路300と、スタックの酸化剤極103の出口からガス状の酸化剤オフガスを排出する酸化剤オフガス路310とをもつ。
【0058】
図9に示すように、燃料供給路200には燃料供給弁205が設けられている。燃料オフガス路210には燃料オフガス排出弁215が設けられている。酸化剤供給路300には酸化剤供給弁305が設けられている。酸化剤オフガス路310には酸化剤オフガス排出弁315が設けられている。
【0059】
発電運転時には、燃料供給路200の燃料供給弁205が開放し、燃料がスタック100の燃料極101に供給される。酸化剤供給路300の酸化剤供給弁305が開弁し、酸化剤ガスがスタック100の酸化剤極103に供給される。これによりスタック100の内部で発電される。
【0060】
燃料オフガスは燃料オフガス路210の燃料オフガス排出弁215から排出される。酸化剤オフガスは酸化剤オフガス路310の酸化剤オフガス排出弁315から排出される。
【0061】
本実施形態によれば、燃料供給弁205は上記した電磁弁1で形成できる。この場合、電磁弁1の入口ポート30は燃料タンク等の燃料供給源に繋がり、電磁弁1の出口ポート31はスタック100の燃料極101の入口101iに繋がる。
【0062】
また燃料オフガス排出弁215は上記した電磁弁1で形成できる。この場合、電磁弁1の入口ポート30はスタックの燃料極101の出口101pに繋がる。電磁弁1の出口ポート31は燃料オフガス排出部に繋がる。
【0063】
酸化剤供給弁305も上記した電磁弁1で形成できる。この場合、電磁弁1の入口ポート30は酸化剤供給源に繋がり、電磁弁1の出口ポート31はスタックの酸化剤極103の入口103iに繋がる。
【0064】
更に、酸化剤オフガス排出弁315は上記した電磁弁1で形成できる。この場合、電磁弁1の入口ポート30はスタックの酸化剤極103の出口103pに繋がる。酸化剤オフガス排出弁315は大気側に繋がる。
【0065】
上記した燃料電池システムにおいて本格的な発電運転に至る前の待機運転(アイドリング運転)においては、図5に示すように、励磁コイル部7への通電量をA2未満の流量比例領域α1に設定しておけば、親弁口32を閉鎖させたまま子弁口53のみを開放させることができ、流量を絞ることができ、燃料電池システムの待機運転(アイドリング運転)に適応する。本格的な発電運転を行うときには、励磁コイル部7への通電量をA2以上の流量比例領域α3に設定すれば、親弁口32および子弁口53の双方を開放させることができ、流量を増加させることができ、燃料電池システムの発電運転に適する。更には燃料電池システムが改質装置を含むときには、改質装置の入口側および/または出口側の電磁弁に本発明を適用しても良い。
【0066】
(その他)
上記した実施形態では、親プランジャ4の軸芯M1は鉛直方向に沿って延設されているが、これに限らず、斜め方向に沿って延設されていても良い。この場合、親プランジャ4は斜め方向に移動する。場合によって親プランジャ4の軸芯M1は横方に沿っており、親プランジャ4は横方向に移動するタイプでも良い。
【0067】
上記した電磁弁1は燃料電池システムに限らず、他の流体機器に使用することができ、流体としては気体でも良いし、液体でも良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0068】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)燃料電池と、燃料電池の燃料極の入口に燃料を供給する燃料供給路、燃料電池の燃料極の出口から燃料オフガスを排出する燃料オフガス路と、燃料電池の酸化剤極の入口に酸化剤ガスを供給する酸化剤供給路と、燃料電池の酸化剤極の出口から酸化剤オフガスを排出する酸化剤オフガス路とをもつ燃料電池システムにおいて、燃料供給路には燃料供給弁が設けられており、燃料オフガス路には燃料オフガス排出弁が設けられており、酸化剤供給路には酸化剤供給弁が設けられており、酸化剤オフガス路には酸化剤オフガス排出弁が設けられており、燃料供給弁、燃料オフガス排出弁、酸化剤供給弁、酸化剤オフガス排出弁のうちの少なくとも1種は、各請求項に係る電磁弁で形成されていることを特徴とする燃料電池システム。この場合、親弁口が閉弁されている状態で子弁口が開弁するため、子弁口の開弁による流量特性が得られる。更に磁気吸引力が増加すると、親弁口が開弁するため、親弁口の開弁による流量特性が得られる。更に、電磁弁における磁気吸引力のバラツキを抑えると共に、スイッチ素子の数、結線工数が増加し、サイズの大型化、コストの高騰を抑えるのに有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、気体または液体状のガス流体を遮断および供給する電磁弁に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】電磁弁の親弁口および子弁口が閉鎖している状態を模式的に示す断面図である。
【図2】電磁弁の親弁口および子弁口が閉鎖している状態における親プランジャ付近を模式的に示す拡大断面図である。
【図3】電磁弁が親弁口が閉鎖しているものの、子弁口が開放している状態を模式的に示す断面図である。
【図4】電磁弁が親弁口が開放している状態を模式的に示す断面図である。
【図5】電磁弁の流量特性を示すグラフである。
【図6】実施形態3に係り、電磁弁の親弁口および子弁口が閉鎖している状態を模式的に示す断面図である。
【図7】実施形態4に係り、電磁弁の親弁口および子弁口が閉鎖している状態を模式的に示す断面図である。
【図8】実施形態5に係り、電磁弁の親弁口および子弁口が閉鎖している状態を模式的に示す断面図である。
【図9】燃料電池システムに適用した実施形態に係り、燃料電池のシステム図である。
【符号の説明】
【0071】
1は電磁弁、2はボディ、21はヨーク、22は固定鉄芯、26は支持部材、30は入口ポート、31は出口ポート、32は親弁口、36はリング通路、4は親プランジャ、40は親バネ室、45は子作動室、47は子バネ、48は子バネ室、5は親弁体、53は子弁口、6は親バネ、7は励磁コイル部、8は子プランジャ、85はシール部材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する入口ポートと、流体が流出する出口ポートと、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に設けられた親弁口と、親作動室とをもつボディと、
前記ボディの前記親作動室内に移動可能に設けられている親プランジャと、
前記親プランジャに取り付けられ前記親弁口を開閉する親弁体と、
前記ボディの前記親作動室内に設けられ前記親弁体が前記ボディの前記親弁口を閉弁する方向に前記親プランジャを付勢する親付勢要素と、
前記ボディに設けられ前記親プランジャを開弁方向に移動させる磁気吸引力を通電により発生させる励磁コイル部とを具備しており、
前記親プランジャは、
空洞状をなす子作動室と、
前記入口ポート、前記親弁口および前記出口ポートに連通可能に設けられ且つ前記親弁口の開口面積よりも小さな開口面積をもつ子弁口と、
前記子作動室内に移動可能に配置され前記励磁コイル部の前記磁気吸引力により前記子弁口を開弁させる方向に移動する子プランジャと、
前記子作動室内に設けられ、前記子プランジャが前記子弁口を閉弁する方向に前記子プランジャを付勢する子付勢要素とを具備していることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1において、前記子弁口は、前記親弁体にこれの厚み方向に貫通するように形成されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2のうちの一項において、前記子プランジャは、親プランジャの前記子作動室の内部に収容されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記親プランジャは、前記励磁コイル部で発生する磁束を前記子プランジャに透過させると共に前記子プランジャの開弁を前記親プランジャの開弁よりも促進させる磁路案内部を備えていることを特徴とする電磁弁。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記子付勢要素の付勢力は前記親付勢要素の付勢力よりも小さく設定されていることを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−128402(P2008−128402A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315628(P2006−315628)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】