説明

電磁式リニア弁および液圧制御弁装置

【課題】プランジャの自励振動を抑制可能な電磁式リニア弁を提供するとともに、それぞれにおいて効果的にプランジャの自励振動を抑制可能な増圧用リニア弁および減圧用リニア弁を備えた液圧制御弁装置を提供する。
【解決手段】プランジャ122にコア126に向かって突出する凸部170を形成し、コア126の端面に形成されたプランジャ122の一端部が第1凹部172に臨み入るとともに、その第1凹部172の底面に形成された第2凹部174に凸部170が臨み入るように電磁式リニア弁92,94を構成する。また、その電磁式リニア弁を液圧制御弁装置に用いる際に、減圧用リニア弁94および増圧用リニア弁92の各々を、プランジャ122の凸部170の長さLaに対するコア126第1凹部172の深さLbの比r=(Lb/La)が互いに異なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身に供給される電流に応じて開弁量を連続的に制御可能な電磁式リニア弁に関し、また、その電磁式リニア弁を用いた液圧制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、ブレーキシリンダの液圧を制御するための液圧制御弁装置であって、開弁量を連続的に制御可能な電磁弁を含んで構成されるものが記載されている。また、下記特許文献2に記載の液圧制御弁装置は、自身に供給される電流の連続的な制御によって、開弁量を連続的に制御可能な増圧用リニア弁,減圧用リニア弁を含んで構成されている。それら増圧用リニア弁および減圧用リニア弁に用いられる電磁式リニア弁には、(a)内部を第1液室と第2液室とに区画し、それら第1液室と第2液室とを連通する連通穴が形成された区画部を有し、作動液が充填されるハウジングと、(b)軸線方向に移動可能、かつ、その軸線方向への移動に伴って、弁座として機能する連通穴の第1液室への開口を、弁体として機能する一端部が塞ぐように第1液室内に配設されたプランジャとを備える電磁式リニア弁がある。そのようなプランジャとハウジングとを備えた電磁式リニア弁は、弁体が弁座を塞いでいる状態において、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れを禁止し、弁体と弁座との間に隙間が生じている状態において、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れを許容する。さらに、弁体が弁座に接近する方向と弁座から離間する方向との一方にプランジャを付勢する弾性体と、その弾性体がプランジャを付勢する方向とは反対の方向にプランジャを移動させるための磁界を形成するコイルとを備えており、コイルへの通電量を制御することで、その開弁量を制御すること、換言すれば、高圧側の作動液路内の作動液の液圧(以下、「高圧側作動液圧」という場合がある)と低圧側の作動液路内の作動液の液圧(以下、「低圧側作動液圧」という場合がある)との差圧を制御することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−260843号公報
【特許文献2】特開2005−145136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の電磁式リニア弁においては、プランジャがハウジング内で弾性体によって支持されていることから、弁の開閉に伴って自励振動が生じる虞がある。プランジャの自励振動の発生要因としては種々のものが考えられているが、例えば、高圧側の作動液路からハウジング内に流入する作動液のプランジャへの作用が自励振動の発生要因の1つとして考えられている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、プランジャの自励振動を抑制可能な電磁式リニア弁を提供することを課題とする。
【0005】
また、液圧制御弁装置が備える増圧用リニア弁および減圧用リニア弁は、同じ構造の電磁式リニア弁が用いられる場合が多い。しかしながら、それら増圧用リニア弁と減圧用リニア弁においては、当然に、高圧側作動液圧,低圧側作動液圧,および、それらの間の差圧が、互いに異なる。つまり、液圧制御弁装置が備える増圧用リニア弁および減圧用リニア弁の各々は、プランジャの自励振動を抑制するために、高圧側作動液圧,低圧側作動液圧,および、それらの間の差圧等に応じて構造を定めることが望ましい。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、それぞれにおいて効果的にプランジャの自励振動を抑制可能な増圧用リニア弁および減圧用リニア弁を備えた液圧制御弁装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の電磁式リニア弁は、プランジャの一端部にコア部に向かって突出する凸部が形成され、コア部のプランジャに対向する端面にプランジャの一端部が臨み入る第1凹部が形成されるとともに、その第1凹部の底面に凸部が臨み入る第2凹部が形成されたものとされる。また、第2の発明の電磁式リニア弁は、ハウジング筒部が、(a-1)強磁性体によって筒状に形成された強磁性筒と、(a-2)非磁性体によって筒状に形成され、一端にコア部が嵌入されるとともに他端に強磁性筒が嵌入され、それらコア部と強磁性筒とを、コア部の端面と強磁性筒の端面との間に間隔が設けられた状態で連結する非磁性筒とを含んで構成され、プランジャが外周面から径方向に突出するフランジ部を有し、そのフランジ部がコア部と強磁性筒との間の間隔内に位置する状態で配設される。
【0007】
さらに、本発明の液圧制御弁装置は、第1の発明の電磁式リニア弁を用いたものであり、(A)高圧源と作動液被供給装置との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を増圧する増圧用リニア弁と、(B)作動液被供給装置と低圧源との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を減圧する減圧用リニア弁とを含んで構成され、それら増圧用リニア弁および減圧用リニア弁の各々が第1の発明の電磁式リニア弁とされ、プランジャの凸部の軸線方向の寸法に対するコア部が有する第1凹部の軸線方向の寸法の比を凸部凹部比と定義した場合に、減圧用リニア弁とされた電磁式リニア弁および増圧用リニア弁とされた電磁式リニア弁の各々が、凸部凹部比が互いに異なるように構成される。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明の電磁式リニア弁においては、プランジャと第1凹部との間,プランジャの凸部と第2凹部との間の両方に磁束が流れることになり、プランジャが弁座から離れるほどコアとプランジャとの間に生じる磁気力を大きくすることが可能である。つまり、第1の発明の電磁式リニア弁によれば、プランジャが離座している時に磁気力の水平方向成分を増大させることによりハウジングとプランジャとの間の摩擦力を増大させることができ、その大きくされた摩擦力によって、プランジャの自励振動を効果的に抑制することが可能である。また、第2の発明の電磁式リニア弁においては、プランジャの移動の際に、プランジャのフランジ部は、コア部と強磁性筒との間に形成される液室内を移動することになり、その部分が液圧式のダンパとして機能する。つまり、第2の発明の電磁式リニア弁によれば、プランジャの移動に対して抵抗力を付与することができ、プランジャの自励振動を抑制することが可能である。
【0009】
また、本発明の液圧制御弁装置においては、増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々の凸部凹部比が互いに異ならるものとされており、供給される電流が同じであっても、コア部とプランジャとの間に生じる磁気力が異なる。つまり、ハウジングとプランジャとの間の摩擦力が異なる。本発明の液圧制御弁装置は、例えば、増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々が受ける電流の平均的な大きさが互いに異なるような場合であっても、それら増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々において、適切な大きさの摩擦力を生じさせるように構成することが可能であり、プランジャの自励振動を効果的に抑制することが可能である。
【発明の態様】
【0010】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0011】
なお、下記(1)項は、請求可能発明ではなく、請求可能発明の前提となる構成を示した項であり、その(1)項に、それ以降に掲げる項のいずれかに記載の技術的特徴を付加した態様が、請求可能発明に相当する。種々の態様とされた請求可能発明のうち、(1)項を引用する(6)項が請求項1に相当し、請求項1に(11)項および(12)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(14)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(15)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、それぞれ相当する。また、(1)項を引用する(3)項が請求項5に相当する。
【0012】
(1)(a)筒状に形成されたハウジング筒部と、(b)そのハウジング筒部の一端を塞ぐようにして形成されたコア部と、(c)前記ハウジング筒部の内部を、前記コア部に近い第1液室と前記コア部と反対側の第2液室とに区画するとともに、それら第1液室と第2液室とを連通する連通穴が形成された区画部と、(d)前記第2液室と連通してその第2液室に作動液を流入させるための流入ポートと、(e)前記第1液室と連通してその第1液室から作動液を流出させるための流出ポートとを有するハウジングと、
一端部が前記コア部と対向するとともに他端部が前記連通穴の開口と対向する状態で、前記第1液室内に配設され、軸線方向に移動可能、かつ、その他端部が前記連通穴の開口に着座可能とされたプランジャと、
そのプランジャを、それの他端部が前記連通穴の開口に接近する方向とその開口から離間する方向との一方に付勢する弾性体と、
前記ハウジングの周りに配設され、前記プランジャをそれが前記弾性体によって付勢される方向とは逆方向に移動させるための磁界を形成するコイルと
を備えた電磁式リニア弁。
【0013】
先にも説明したように、本項は、請求可能発明の前提となる構成を示した項である。つまり、本項に記載の態様は、請求可能発明の電磁式リニア弁の基本的な構成要素を列挙した態様である。
【0014】
(2)前記弾性体が、
前記プランジャを、それの他端部が前記連結穴の開口に接近する方向に付勢するものである(1)項に記載の電磁式リニア弁。
【0015】
本項に記載の電磁式リニア弁は、常閉弁の電磁式リニア弁に限定されている。プランジャの自励振動の発生頻度は、一般的に、常閉弁の電磁式リニア弁の方が、常開弁の電磁式リニア弁に比較して高いことが知られている。したがって、本項に記載の電磁式リニア弁に、プランジャの自励振動を抑制する構成を付加すれば、その自励振動を抑制する効果が十分に活かされる。
【0016】
(3)前記ハウジング筒部が、
(a-1)強磁性体によって筒状に形成された強磁性筒と、(a-2)非磁性体によって筒状に形成され、一端に前記コア部が嵌入されるとともに他端に前記強磁性筒が嵌入され、それらコア部と強磁性筒とを、前記コア部の端面と前記強磁性筒の端面との間に間隔が設けられた状態で連結する非磁性筒とを含んで構成され、
前記プランジャが、
外周面から径方向に突出するフランジ部を有し、そのフランジ部が前記コア部と前記強磁性筒との間の前記間隔内に位置する状態で配設された(1)項または(2)項に記載の電磁式リニア弁。
【0017】
本項に記載の電磁式リニア弁においては、ハウジング内の強磁性筒とコア部との間に液室が形成されており、その液室内にプランジャが有するフランジ部が位置している。その強磁性筒とコア部との間の液室は、フランジ部によって、そのフランジ部と強磁性筒との間の液室と、フランジ部とコア部との間の液室とに区画される。つまり、プランジャの移動によって、フランジ部はその液室内を移動するのであり、作動液が、フランジ部によって区画された2つの液室の間を、非磁性筒とフランジ部との間の隙間を通って流通する。つまり、その作動液の流通によって抵抗力が発生し、プランジャの移動に対して減衰力が付与されるようになっている。したがって、本項に記載の電磁式リニア弁によれば、プランジャの移動に対する減衰力によって、そのプランジャの自励振動を抑制することが可能である。
【0018】
本項に記載の「フランジ部」は、その形状,大きさが特に限定されるものではなく、プランジャの本体部における外周面の全周にわたって形成されるものであってもよく、外周面の一部に形成されるものであってもよい。ただし、本項に記載の電磁式リニア弁が、上述のように、フランジ部と非磁性筒との間の隙間に作動液を流通させることによって抵抗力を発生させるものであるため、「フランジ部」は、非磁性筒の内側の形状,断面積等に応じて、適切な形状,大きさとすることが望ましい。
【0019】
(4)前記プランジャが、
前記ハウジングに対して傾いた場合に、前記フランジ部の一部が前記非磁性筒と当接するように構成された(3)項に記載の電磁式リニア弁。
【0020】
(5)前記プランジャが、
前記ハウジングに対して傾いた場合に、自身の一部が前記強磁性筒の前記コア部側の端部と当接して、前記フランジ部が前記非磁性筒に当接しないように構成された(3)項に記載の電磁式リニア弁。
【0021】
上記2つの項に記載の態様は、プランジャが着座している状態あるいは離座している状態において、そのプランジャがハウジング内で傾いた場合に、プランジャとハウジングとの当接箇所が限定されている。また、換言すれば、プランジャのフランジ部が、ハウジングの非磁性筒に当接するか否かが限定されている。具体的には、例えば、プランジャと強磁性筒との磁気密着の防止や、プランジャの円滑な移動を担保すべく、プランジャの強磁性筒内側に位置する部分に、非磁性体により形成された環状部材を外嵌させるように構成する場合がある。その環状部材の軸線方向の長さや軸線方向の位置を調整することで、プランジャとハウジングとの当接箇所を変更することが可能である。
【0022】
次に、プランジャが着座している状態で傾いた場合を考える。その場合、プランジャの着座している他端部(以下、着座部という場合がある)と、プランジャの一端部側の部分(以下、「当接部」という場合がある)とにおいて、ハウジングに当接し、2点で支持されることになる。ハウジングのコア部によるプランジャを吸引する力である吸引力は、軸線方向だけでなく、径方向にも作用するため、プランジャの当接部には、吸引力の径方向成分に依拠した摩擦力が生じる。この摩擦力は、閉弁状態から開弁状態に切り換わる時、換言すれば、プランジャが着座している状態から動き始める時の抵抗力となる。この時の摩擦力が大きくなると、プランジャの離座時の加速度が大きくなり、開弁量が急増する虞がある。この開弁量の急増は、作動液が第2液室から第1液室へ急激に流入することになり、プランジャの自励振動を引き起こす虞がある。つまり、そのプランジャの離座時の摩擦力は、できる限り小さくされることが望ましい。
【0023】
上述したように、プランジャの着座部と当接部とにおいてハウジングに2点支持されている場合に、コイルに電流が供給されると、プランジャのコア部に対向する一端部に吸引力が作用し、その吸引力の径方向成分に依拠して、当接部に摩擦力が作用する。つまり、プランジャの着座部(他端部)が支点として、プランジャの一端部に吸引力の径方向成分が入力され、当接部が作用点となる。その作用点は、支点と力点と間に位置するため、作用点が力点に近いほど、作用点に作用する力は小さくなる。したがって、フランジ部とハウジングの非磁性筒とが当接する前者の態様は、プランジャの一部が強磁性筒のコア部側の端部と当接する後者の態様に比較して、当接部がプランジャの力点となる一端部に近いため、当接部に作用する摩擦力を小さくすることが可能である。
【0024】
一方、後者の態様は、フランジ部を非磁性筒に当接させないように構成されているため、ハウジングの組付や溶接時に、ハウジングの強磁性筒とコア部との間に軸ズレが生じていても、その影響を受けずにすむようになっている。
【0025】
(6)前記プランジャが、前記一端部に前記コア部に向かって突出する凸部が形成されたものであり、
前記コア部が、前記プランジャに対向する端面にそのプランジャの前記一端部が臨み入る第1凹部が形成されるとともに、その第1凹部の底面に前記凸部が臨み入る第2凹部が形成されたものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の電磁式リニア弁。
【0026】
本項に記載の電磁式リニア弁は、コア部に段付形状の凹所が形成され、プランジャに段付形状の凸所が形成され、プランジャのその凸所がコア部の凹所に進入するように構成されている。そのような構成により、本項の電磁式リニア弁は、第1凹部の内周面とプランジャ本体の外周面との間,第2凹部の内周面とプランジャの凸部の外周面との間の2箇所に、磁束が流れるように構成することが可能である。つまり、本項の電磁式リニア弁は、プランジャがコア部側への移動量に対する、プランジャとコア部との磁束が流れる部分の面積の増加量を、磁束が流れる箇所が1箇所である従来の電磁式リニア弁に比較して、大きくすることが可能である。したがって、本項の電磁式リニア弁は、プランジャとコア部との間の磁気飽和を生じ難くすることが可能である。また、そのような構成とされた電磁式リニア弁は、プランジャが弁座から離れるほどコアとプランジャとの間に生じる磁気力を大きくすることが可能である。つまり、本項の電磁式リニア弁によれば、プランジャが離座している時に磁気力の水平方向成分を増大させることによりハウジングとプランジャとの間の摩擦力を増大させることができ、その大きくされた摩擦力によって、プランジャの自励振動を効果的に抑制することが可能である。
【0027】
(7)前記第1液室が、
前記プランジャの前記他端部の周りに形成された区画部側液室と、前記プランジャの前記一端部と前記コア部の前記第1凹部との間に形成された第1コア部側液室と、前記プランジャの前記凸部と前記コア部の前記第2凹部との間に形成された第2コア部側液室とを含んで構成され、
前記プランジャが、
自身の内部に設けられ、一端が前記区画部側液室に開口するとともに、他端が前記第1コア部側液室および前記第2コア部側液室の両者に開口し、前記第1コア部側液室および前記第2コア部側液室の各々と前記区画部側液室とを連通する連通路を有する(6)項に記載の電磁式リニア弁。
【0028】
本項に記載の態様は、上記「連通路」を少なくとも1つ有するものとすることができる。本項に記載の態様によれば、その少なくとも1つの連通路によって、2つのコア部側液室の両方に入り込んだ気泡を、区画部側液室に排出させることが可能である。
【0029】
(11)調圧した作動液を作動液被供給装置に供給すべく、高圧源から出力される作動液の液圧を調整するための液圧制御弁装置であって、
(A)前記高圧源と前記作動液被供給装置との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を増圧する増圧用リニア弁と、(B)前記作動液被供給装置と低圧源との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を減圧する減圧用リニア弁とを含んで構成され、
前記増圧用リニア弁および前記減圧用リニア弁の各々が、(6)項または(7)項に記載の電磁式リニア弁とされた液圧制御弁装置
【0030】
本項に記載の態様は、液圧制御弁装置が有する増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々に、プランジャとコア部との各々が段付形状に形成された上述の構成の電磁式リニア弁が用いられている。
【0031】
(12)前記プランジャが有する前記凸部の軸線方向の寸法に対する前記コア部が有する前記第1凹部の軸線方向の寸法の比を、凸部凹部比と定義した場合に、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が、前記凸部凹部比が互いに異なるように構成された(11)項に記載の液圧制御弁装置。
【0032】
本項に記載の液圧制御弁装置においては、増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々の凸部凹部比が互いに異ならるものとされており、供給される電流が同じであっても、プランジャとコア部との間に生じる磁気力が異なる。つまり、プランジャとハウジングとの間の摩擦力が異なる。本項の液圧制御弁装置は、例えば、増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々が受ける電流の平均的な大きさが互いに異なるような場合であっても、それら増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との各々において、適切な大きさの摩擦力を生じさせるように構成することが可能であり、プランジャの自励振動を効果的に抑制することが可能である。
【0033】
詳しく言えば、本項に記載の「凸部凹部比」の設定によって、例えば、プランジャが着座した状態において、第1凹部の内周面とプランジャ本体の外周面との間と、第2凹部の内周面とプランジャの凸部の外周面との間との少なくとも一方における磁束が流れる部分の面積を大きくすることができる。そのような凸部凹部比となる電磁式リニア弁は、プランジャとハウジングとの間の摩擦力を大きくすることが可能である。また、プランジャとコア部との間に多くの磁束が流れることが許容され、プランジャとコア部との間の磁気飽和を生じ難くすることが可能である。
【0034】
一方、プランジャが着座した状態において、第1凹部の内周面とプランジャ本体の外周面との間,第2凹部の内周面とプランジャの凸部の外周面との間と一方に磁束が流れず、プランジャがコア部側に移動した後に、その一方にも磁束が流れるようにすることができる。そのような凸部凹部比となる電磁式リニア弁によれば、プランジャが着座している時の吸引力が小さくされ、離座時のプランジャとハウジングとの摩擦力を小さくすることが可能である。
【0035】
(13)前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が、
前記区画部が有する前記連通穴の開口から前記コア部が有する前記第1凹部の底面までの距離と、前記プランジャの軸線方向の長さとが、互いに等しくされた(12)項に記載の液圧制御弁装置。
【0036】
本項に記載の態様は、2つの電磁式リニア弁の構造が限定されている。上記のような構造の電磁式リニア弁において、凸部凹部比を異ならせるには、第1凹部の底面を基準としてコア部の端面までの距離を異ならせる、あるいは、プランジャの凸部の端面を基準としてプランジャ本体部の端面までの距離を異ならせればよい。つまり、本項の態様は、2つの電磁式にリニア弁の各々が、第1凹部の内周面とプランジャ本体の外周面との間における磁束が流れる部分の面積が、互いに異なるものとなっている。
【0037】
(14)前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が備える前記弾性体が、
前記プランジャを、それの他端部が前記連通穴の開口に接近する方向に付勢するものとされ、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部凹部比が、前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部凹部比に比較して大きくなるように構成された(13)項に記載の液圧制御弁装置。
【0038】
本項に記載の態様においては、2つの電磁式リニア弁の各々が、第1凹部の内周面とプランジャ本体の外周面との間における磁束が流れる部分の面積が互いに異なる構成とされており、凸部凹部比が大きくなれば、その面積が大きくなる。そして、本項の態様においては、減圧用リニア弁の凸部凹部比が、増圧用リニア弁の凸部凹部比に比較して大きくされており、減圧用リニア弁は、プランジャとコア部との間において磁束が流れる面積が大きくされている。
【0039】
本項の態様においては、2つの電磁式リニア弁が常閉弁とされており、高圧側作動液圧と低圧側作動液圧との差圧を小さくする際に大きな電流が必要となる。例えば、液圧ブレーキシステムのように、作動液比供給装置としてのブレーキ装置へ供給する作動液の液圧が、低圧源の液圧に近い状態で変位させることが多いシステムに本項に記載の液圧制御弁装置が搭載される場合、減圧用リニア弁は、増圧用リニア弁に比較して大きな電流が必要となる。したがって、減圧用リニア弁においては、大きな電流が供給されてもプランジャとコア部と間で磁気飽和が生じ難くされ、増圧用リニア弁においては、プランジャ離座時の摩擦力が小さくされており、減圧用リニア弁および増圧用リニア弁の各々が、適切な構成とされている。
【0040】
(15)前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記第1凹部の軸線方向の寸法が、前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記第1凹部の軸線方向の寸法に比較して大きくされた(14)項に記載の液圧制御弁装置。
【0041】
(16)前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部の軸線方向の寸法が、前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部の軸線方向の寸法に比較して大きくされた(14)項に記載の液圧制御弁装置。
【0042】
上記2つの項に記載の態様は、減圧弁の凸部凹部比が増圧弁の凸部凹部比より大きくする構成が、具体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】請求可能発明の実施例である液圧制御弁装置を備えるブレーキシステムの概略図である。
【図2】図1の制御弁装置が有する減圧用リニア弁の概略断面図である。
【図3】図1の制御弁装置が有する増圧用リニア弁の概略断面図である。
【図4】本実施例の電磁式リニア弁と変形例の電磁式リニア弁を比較するための概略断面図である。
【図5】図1の増圧用リニア弁と減圧用リニア弁とを比較するための拡大断面図である。
【図6】変形例の液圧制御弁装置が備える増圧用リニア弁と減圧用リニア弁とを比較するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、請求可能発明の実施例およびいくつかの変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0045】
<液圧ブレーキシステムの構成>
請求可能発明の実施例である液圧制御弁装置を備えた液圧ブレーキシステムを、図1に示す。本液圧ブレーキシステムに含まれるブレーキ回路は、その図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、そのブレーキペダル10に加えられた踏力に依拠して作動液を加圧するマニュアル式液圧源装置12と、動力源が発生させる力に依拠して作動液を加圧する動力式液圧源装置14と、前後左右の車輪16にそれぞれ設けられた4つの液圧ブレーキ装置18と、それら2つの液圧源装置12,14とブレーキ装置18との間に設けられて動力式液圧源装置14が発生させる液圧を調整するブレーキアクチュエータ20とを備えている。なお、「車輪16」等のいくつかの構成要素は、総称として使用するが、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付すこととする。
【0046】
4つのブレーキ装置18は、それぞれ、ブレーキシリンダ22を有し、そのブレーキシリンダ22の液圧によって作動して車輪16に制動力を付与する。なお、本実施例においては、車輪18とともに回転するブレーキ回転体としてのディスクロータに、非回転体に保持された摩擦材としてのブレーキパッドをブレーキシリンダ22の液圧によって押し付けるディスクブレーキである。
【0047】
マニュアル式液圧源装置12は、液圧ブースタ30と、マスタシリンダ32とを含んで構成されている。その液圧ブースタ30は、ブレーキペダル10に加えられる操作力に対応する液圧より高い液圧を発生させる液圧調節部(レギュレータ,図1においてregと示す)34と、ブレーキペダル10と連係させられるパワーピストン36と、そのパワーピストン36の後方に設けられたブースタ室38とを含んで構成される。液圧調節部34は、図示を省略するスプールバルブ,調圧室等を含んで構成され、動力式液圧源装置14に接続されるとともに、低圧源であるリザーバ40に接続されている。ブレーキペダル10の操作に伴うスプールバルブの移動によって、動力式液圧源装置14あるいはリザーバ40に調圧室が選択的に連通させられ、調圧室の液圧が操作力に応じた大きさに調節される。この調圧室の作動液(液圧調節部34によって調圧された作動液)がブースタ室38に供給されることによって、パワーピストン36に前進方向の力が加えられ、操作力が助勢される。
【0048】
マスタシリンダ32は、上述したパワーピストン36に連係させられる加圧ピストン50と、その加圧ピストン50の前方に設けられた加圧室52とを含んで構成される。そして、パワーピストン36の前進に伴って、加圧ピストン50が前進させられ、加圧室52に液圧が発生させられる。
【0049】
ブレーキペダル10が踏み込まれると、パワーピストン36が前進させられ、それに伴って、加圧ピストン50が前進させられる。ブースタ室38には、液圧調節部34において操作力に応じた大きさに調圧された液圧が供給される。加圧ピストン50は、操作力と助勢力(ブースタ室76の液圧に応じた力)とを合わせた力によって前進させられ、その力に応じた大きさの液圧が、加圧室52に発生させられる。なお、本実施例においては、液圧調節部34の液圧と加圧室52の液圧とが、ほぼ同じ大きさとなるようにされている。
【0050】
動力式液圧源装置14は、リザーバ40から作動液を汲み上げるポンプ60と、そのポンプ60を駆動する動力源としてのポンプモータ62と、ポンプ60から吐出された作動液を加圧された状態で蓄えるアキュムレータ64とを含んで構成される。ポンプモータ62は、アキュムレータ64に蓄えられている作動液の圧力が、予め定められた範囲内にあるように制御される。また、動力式液圧源装置14は、ポンプ60の吐出圧を設定値以下に規制するリリーフ弁66をも有しており、ポンプ60の吐出圧が過大になることが防止される。
【0051】
上述した動力式液圧源装置14,液圧ブースタ30の液圧調節部34,マスタシリンダ32の加圧室52は、ブレーキアクチュエータ20に接続される。詳しく言えば、動力式液圧源装置14,液圧ブースタ30の液圧調節部34,マスタシリンダ32の加圧室52は、それぞれ、制御圧通路70,ブースタ通路72,マスタ通路74に接続され、それら制御圧通路70,ブースタ通路72,マスタ通路74が、ブレーキアクチュエータ20が有する共通通路76に接続される。また、その共通通路76は、各車輪16FR,16FL,16RR,16RLに対応して設けられたブレーキシリンダ22FR,22FL,22RR,22RLと、それぞれ、個別通路78FR,78FL,78RR,78RLを介して接続されている。さらに、共通通路76は、リザーバ40と低圧通路80を介して接続されている。
【0052】
ブレーキアクチュエータ20は、アキュムレータ64に蓄えられている作動液の圧力、つまり、動力式液圧源14から出力される液圧を調整する出力液圧制御弁装置90を有している。その出力液圧制御弁装置90は、動力式液圧源装置14と共通通路76とを接続する制御圧通路70に設けられた増圧用リニア弁92と、共通通路76とリザーバ40とを接続する低圧通路80に設けられた減圧用リニア弁94とを含んで構成される。増圧用リニア弁92は、動力式液圧源装置14から共通通路76への作動液の流入を制御することが可能となっており、一方、減圧用リニア弁94は、共通通路76内のリザーバ40への作動液の流出を制御することが可能となっている。増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94は、高圧側の作動液と低圧側の作動液との液圧差と供給電流との間に予め定められた一定の関係があり、供給電流の増減に応じて開弁圧が変えることが可能となっている。したがって、増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94は、供給電流の制御により、共通通路76に供給する作動液の液圧である供給圧を連続的に変化させることができ、供給圧を容易に任意の高さに制御することが可能となっている。なお、本発明は、それら増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94との構造に特徴を有するものであり、それらの構造については、後に詳しく説明するため、ここでの説明は省略する。
【0053】
また、ブレーキアクチュエータ20は、4つのブレーキシリンダ22FR,22FL,22RR,22RLの各々の液圧を調整するための個別液圧制御弁装置100を有している。その個別液圧制御弁装置100は、先に述べた個別通路78FR,78FL,78RR,78RLの各々に設けられた4つの保持弁102FR,102FL,102RR,102RLと、4つの保持弁112の各々とリザーバ40との間に設けられた4つの減圧弁104FR,104FL,104RR,104RLとを含んで構成される。保持弁102は、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁制御弁であり、ブレーキシリンダ22の液圧を増圧および保持するためのものである。減圧弁104は、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁制御弁であり、ブレーキシリンダ22の液圧を減圧するためのものである。
【0054】
また、共通通路76には、左右前輪16FR,16FLが接続される部分と、左右後輪16RR,16RLが接続される部分との間に、連通弁106が設けられている。つまり、その連通弁106は、左右後輪16RR,16RLに対応するブレーキシリンダ22RR,22RLと、左右前輪16FR,16FLに対応するブレーキシリンダ22FR,22FLとを連通させた状態と、遮断された状態とを切り換えるものとなっている。その連通弁106は、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁制御弁である。なお、連通弁106は、通常時において開状態とされて、先に述べた増圧用リニア弁92からの作動液が、左右後輪16RR,16RLに対応するブレーキシリンダ22RR,22RLだけでなく、左右前輪16FR,16FLに対応するブレーキシリンダ22FR,22FLへも供給されるように、それらが連通された状態とするようになっている。
【0055】
さらに、ブレーキアクチュエータ20は、ブースタ通路72に設けられたレギュレータカット弁110と、マスタ通路74に設けられたマスタカット弁112とを有している。それらレギュレータカット弁110およびマスタカット弁112は、いずれも、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁制御弁である。なお、マスタ通路72の途中には、ストロークシュミレータ114が、常閉の電磁制御弁であるシュミレータカット弁116を介して接続されている。
【0056】
<電磁式リニア弁の構成>
次に、先の説明において留保している電磁式リニア弁である増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94の構造について、図2を参照しつつ詳しく説明する。なお、それら増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94は、ほぼ同様の構成であるため、まず、減圧用リニア弁94を先に説明し、後に説明する増圧用リニア弁92については、減圧用リニア弁94と異なる箇所のみ説明することとする。
【0057】
減圧用リニア弁94は、図2に示すように、中空形状のハウジング120と、そのハウジング120内に自身の軸線方向に移動可能に設けられたプランジャ122と、ハウジング120の外周に設けられた円筒状のコイル124とを備えている。ハウジング120は、上端部に設けられた円柱状のコア126と、概して円筒状に形成されて内部においてプランジャの軸線方向の移動を案内するガイド筒128と、そのガイド筒128の下端部に嵌入された有蓋円筒状の弁部材130とを有している。コア126とガイド筒128とは、強磁性体により形成されたものであり、それらコア126とガイド筒128とは、非磁性体により形成された円筒状のスリーブ132によって連結されている。詳しくは、スリーブ132の上端にコア126が嵌入され、スリーブ132の下端にガイド筒128が嵌入され、コア126の下端面とガイド筒128の上端面との間に間隔が設けられた状態で連結されている。なお、強磁性筒であるガイド筒128と非磁性筒であるスリーブ132とによって、ハウジング筒部が形成されている。
【0058】
先にも述べたように、弁部材130は、ガイド筒128の下端に嵌入されており、ハウジング120内を第1液室140と第2液室142とに区画しており、ハウジング120の区画部として機能するものとなっている。その弁部材130には、軸線方向に貫通し、第1液室140と第2液室142とを連通する連通穴144が設けられている。その連通穴144の上方側の開口146はテーパ状に形成されている。
【0059】
弁部材130は、換言すれば、ハウジング120の第2液室142は、下方に開口しており、その開口150が流入ポートとして機能することで、高圧側の作動液路である共通通路76と連通している。一方、ハウジング120の第1液室140は、コア126とガイド筒128と弁部材130とによって区画されており、ガイド筒128の外壁面に設けられた開口152が流出ポートとして機能することで、第1液室140は、低圧側の作動液路である低圧通路80と連通している。
【0060】
プランジャ122は、強磁性体によって形成されたプランジャ本体160と、非磁性体により形成されてプランジャ本体160の下端に固定的に嵌合されたロッド162とを含んで構成されている。ロッド162の下端は、半球状に形成されており、弁部材130に形成された連通穴144の開口146に向かい合うようにされている。つまり、そのロッド162の下端が、弁体として機能し、連通穴144の開口146が、弁座として機能し、ロッド162の下端が、開口146に着座することで、連通穴144が塞がれる。プランジャ122は、コア126との間に配設されたコイルスプリング164によって、コア126から離れる方向(下方向)に向かって付勢されている。つまり、弾性体としてのコイルスプリング164は、ロッド162の下端を、連通穴144の開口146に接近させる方向に付勢し、連通穴144をプランジャ122によって塞ぐようになっている。
【0061】
プランジャ本体160の上端面には、コア126に向かって突出する凸部170が設けられており、プランジャ本体160の上端は、段付形状の凸所とされている。なお、プランジャ本体160の凸部170の下方に連続する部分を、プランジャ本体160の上端部と呼ぶこととする。一方、コア126の下端部は、そのコア126の下端面に第1凹部172が形成されるとともに、その第1凹部172の底面に第2凹部174が形成されており、段付形状の凹所とされている。そして、そのコア126の凹所に、プランジャ122の凸所が臨み入るようになっている。詳しく言えば、第1凹部172に、プランジャ本体160の上端部が臨み入り、第2凹部174に、凸部170が臨み入っている。
【0062】
ちなみに、第2凹部174の底面には、有底穴176が形成されており、その有底穴176の内部に上述のコイルスプリング164が配置されている。つまり、コイルスプリング164は、その有底穴176の底面(図に示す上面)と、プランジャ122の凸部170の上面との間に挟まれる状態で配設されている。また、そのコイルスプリング164の内側には、ストッパ178が配置されており、プランジャ122のコア126へ接近する方向の移動が制限されるようになっている。
【0063】
また、プランジャ本体160は、それの上部外周面から径方向に突出するフランジ部180を有している。そのフランジ部180は、先に述べたスリーブ132に対向し、コア126の下端面とガイド筒128の上端面との間に設けられた間隔内に位置する状態となっている。なお、そのフランジ部180は、プランジャ122が軸線方向に移動しても、その移動範囲内においては、コア126の下端面,ガイド筒128の上端面には当接しないようになっている。
【0064】
さらに、プランジャ本体160は、自身を軸線方向に貫通して自身の上方側と下方側とを連通する複数の連通路190を有している。詳しく言えば、プランジャ122は、第1液室140内に配設されており、その第1液室140が、プランジャ122のロッド162の周りに形成された区画部側液室192と、プランジャ122の上端部と第1凹部172との間に形成された第1コア部側液室194と、プランジャ122の凸部170と第2凹部174との間に形成された第2コア部側液室196とを含んで構成される。上記の複数の連通路190の各々は、区画部側液室192と、2つのコア部側液室194,196とを連通するものであり、それらの各々の上方側の端は、2つのコア部側液室194,196の両方に開口するものとなっている。つまり、連通路190によって、2つのコア部側液室194,196の両方に入り込んだ気泡を、区画部側液室192に排出させることが可能とされている。
【0065】
プランジャ本体160には、非磁性体により円筒状に形成されたプランジャスリーブ200が外嵌されている。プランジャ122が着座した状態でハウジング120内で傾いた場合、そのプランジャスリーブ200の上端において、ガイド筒128の内面に当接することなる。つまり、プランジャ122は、そのプランジャスリーブ200の下端とロッド162の下端との2点において支持されるようになっている。また、プランジャ122が離座した状態でハウジング120内で傾いた場合には、プランジャスリーブ200の上端と下端とにおいてガイド筒128の内面に当接し、プランジャ122は、それらプランジャスリーブ200の上端と下端との2点において支持されるようになっている。
【0066】
コイル124は、ハウジング120の上部外周面に固定されたコイルケース204内に収容されている。そのコイルケース204は、強磁性体によって形成されており、上端部がコア126に固定され、下端部がガイド筒128に固定されている。そのような構成により、磁路が形成される。
【0067】
次に、増圧用リニア弁92について、図3を参照しつつ説明する。なお、増圧用リニア弁92は、減圧用リニア弁94とほぼ同様の構成であるため、それの説明においては、減圧用リニア弁と同じ符号を用いて対応するものであることを示す。そして、以下の説明において、増圧用リニア弁92,減圧用リニア弁94のいずれに対応するものであるかを示す場合には、増圧用リニア弁92,減圧用リニア弁94にそれぞれ対応して、添え字「SLA」,「SLR」を付すこととする。
【0068】
増圧用リニア弁92は、減圧用リニア弁94と、ハウジング120が有するコア126の形状が異なる。詳しくは、増圧用リニア弁92のコア126SLAは、第1凹部172SLAの深さが、減圧用リニア弁94の第1凹部172SLRより浅く形成されたものとなっている。なお、増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94の各々のプランジャ122は、同一のものである。また、増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94の各々のハウジング120は、弁座として機能する弁部材130からコア126の第1凹部172の底面までの距離が等しくなるように形成されている。
【0069】
また、増圧用リニア弁92は、減圧用リニア弁94と、プランジャ122に外嵌されたプランジャスリーブ200の長さが異なる。増圧用リニア弁92のプランジャスリーブ200SLAは、減圧用リニア弁94のプランジャスリーブ200SLRに比較して、短くされている。そのような構成の相違により、減圧用リニア弁94においてプランジャ122が着座した状態でハウジング120内で傾いた場合に、プランジャスリーブ200SLRの上端がハウジング120の内面に当接するように構成されていたが、増圧用リニア弁92においては、フランジ部180がスリーブ132の内面に当接するように構成されている。つまり、増圧用リニア弁92においては、プランジャ122は、それが着座した状態で傾いた場合、そのフランジ部180とロッド162の下端との2点において支持されるようになっている。また、プランジャ122が離座した状態でハウジング120内で傾いた場合には、フランジ部180においてスリーブ182に当接するとともに、プランジャスリーブ200の下端においてガイド筒128の内面に当接し、プランジャ122は、それらフランジ部180とプランジャスリーブ200と下端との2点において支持されるようになっている。
【0070】
なお、増圧用リニア弁92において、ハウジング120の第2液室142SLAは、高圧側の作動液路である制御圧通路70と連通している。一方、ハウジング120の第1液室140SLAは、低圧側の作動液路である共通通路76と連通している。
【0071】
<電磁式リニア弁の作動>
上述した構造によって、電磁式リニア弁である増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94は、コイル124に電流が供給されていないときには、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れを禁止しており、コイル124に電流が供給されることによって、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れを許容し、高圧側の作動液路内の液圧と低圧側の作動液路内の液圧との差圧を制御可能な構造とされている。
【0072】
詳しく説明すれば、コイル124に電流が供給されていない場合には、コイルスプリング164の弾性力によって、プランジャ122のロッド162の先端が高圧側の作動液路に繋がる連通穴144の開口146を塞ぐことで、電磁式リニア弁92,94は、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れを禁止している。この際、ロッド162の先端には、高圧側の作動液路内の液圧(以下、「高圧側作動液圧」という場合がある)と低圧側の作動液路内の液圧(以下、「低圧側作動液圧」という場合がある)との差に基づく力F1が作用している。この圧力差に基づく力F1とコイルスプリング164の弾性力F2とは互いに逆向きに作用するが、弾性力F2は圧力差に基づく力F1と比較してある程度大きくされているため、電磁式リニア弁92,94は、コイル124への電流非供給時には開弁しないようになっている。
【0073】
一方、コイル124に電流が供給されると、磁界の形成に伴って、磁束が、コイルケース204,コア126,プランジャ122,ガイド筒128を通過する。そして、ロッド162の先端が連通穴144の開口146から離間する方向(以下、「離間方向」という場合がある)にプランジャ122を移動させようとする磁気力が生じる。コイル124に電流が供給されて磁界が形成されている際に、プランジャ122には、圧力差に基づく力F1と、磁気力によってプランジャ122が上方に付勢される力F3との和と、圧縮コイルスプリング164の弾性力F2とが互いに逆向きに作用する。この際、圧力差に基づく力F1と磁気力による付勢力F3との和が、弾性力F2より大きい間は、ロッド部162の先端によって塞がれていた開口146が開き、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路4へ作動液が流れるのである。
【0074】
そして、高圧の作動液が低圧側の作動液路へ流れることで、低圧側作動液圧が増加し、圧力差に基づく力F1が減少する。その圧力差に基づく力F1が減少することで、圧力差に基づく力F1と磁気力による付勢力F3との和が、弾性力F2より小さくなれば、電磁式リニア弁92,94は閉弁され、高圧側の作動液路から低圧側の作動液路への作動液の流れが阻止される。このため、低圧側作動液圧は、圧力差に基づく力F1と磁気力による付勢力F3との和が弾性力F2より小さくなった時点の低圧側作動液圧に維持される。つまり、コイル124への通電量を制御することで、低圧側作動液圧と高圧側作動液圧との圧力差を制御することが可能となり、低圧側作動液圧を目標とする作動液圧まで増加させることが可能となっている。
【0075】
<電磁式リニア弁の特徴>
上述したように、電磁式リニア弁92,94は、プランジャ122の上端部に形成された段付形状の凸所が、コア126の下端部に形成された段付形状の凹所に臨み入る構成とされている。本電磁式リニア弁92,94を、コア222の下端部が段付形状とされてない従来の電磁式リニア弁230と比較する。その比較例の電磁式リニア弁230は、図4(a)に示すように、プランジャ220が着座している場合、プランジャ220の上端に形成された凸部240が、コア222に形成された凹部242に臨み入る状態となっている。つまり、比較例の電磁式リニア弁230においては、コイルに電流が供給されると、コア222からプランジャ220に流れる磁束は、コア222の凹部242からプランジャ220の凸部240にのみ流れる。それに対して、本電磁式リニア弁92,94においては、図4(b)に示すように、コア126からプランジャ122に流れる磁束は、コア126の第1凹部172からプランジャ本体160の上端部に流れるとともに、コア126の第2凹部174からプランジャ122の凸部170にも流れる。このため、コイルからコアへ同じ量の磁束が流れた場合には、コアからプランジャに流れる磁束の量は、本電磁式リニア弁92,94の方が比較例の電磁式リニア弁230より多くなる。つまり、コイルへの通電量が同じであっても、本電磁式リニア弁92,94のコア126がプランジャ122を吸引する力である吸引力は、比較例の電磁式リニア弁230のコア222の吸引力より大きくなる。
【0076】
また、電磁式リニア弁では、コアによるプランジャの吸引に伴って、プランジャがコアに向かって移動し、プランジャの凸所がコアの凹所に進入していくことになる。比較例の電磁式リニア弁230が、プランジャ220の凸部240がコア222の凹部242に臨み入る状態となっているのに対して、本電磁式リニア弁92,94は、プランジャ本体160の上端部がコア126の第1凹部172に臨み入るとともに、プランジャ122の凸部170がコア126の第2凹部174に臨み入る状態となっている。平たく言えば、比較例の電磁式リニア弁230が、コアに対してプランジャの1箇所のみが進入するのに対して、本電磁式リニア弁92,94は、2箇所が進入することになる。そして、図4に示すように、比較例の電磁式リニア弁230が、プランジャ220の凸部240とコア222の凹部242とが径方向に重なる部分の面積が増加するのに対して、本電磁式リニア弁92,94は、プランジャ本体160の上端部とコア126の第1凹部172とが径方向に重なる部分の面積と、プランジャ122の凸部170とコア126の第2凹部174とが径方向に重なる部分の面積との両者が増加する。つまり、プランジャの上方へのストローク量が増加するほど、コアからプランジャへ流れる磁束の量が増加するのであり、そのストローク量に対するコアからプランジャへの磁束の増加量は、本実施例の電磁式リニア弁92,94の方が比較例の電磁式リニア弁230より多いのである。したがって、本電磁式リニア弁92,94は、比較例の電磁式リニア弁230に比較して、吸引力の径方向の成分が大きくなる。本電磁式リニア弁92,94は、その吸引力の径方向成分に依拠して生じるプランジャ122とコア126と間の摩擦力が大きくなり、その大きくされた摩擦力によって、プランジャ122の自励振動を効果的に抑制することが可能である。
【0077】
また、本電磁式リニア弁92,94は、プランジャ122がフランジ部180を有するものとなっている。そのフランジ部180は、コア126とガイド筒128との間に形成された液室内に位置している。そして、そのコア126とガイド筒128との間の液室は、フランジ部180によって、そのフランジ部180とコア126との間と、フランジ部180とガイド筒128との間の液室に区画される。つまり、本電磁式リニア弁92,94は、フランジ部180が、コア126とガイド筒128との間を移動する際に、作動液が、フランジ部180によって区画された2つの液室の間を、スリーブ132とフランジ部180との間の隙間を通って流通することになる。そして、その作動液の流通によって抵抗力が発生し、プランジャ122の移動に対して減衰力が付与されるようになっている。したがって、本電磁式リニア弁92,94によれば、プランジャ122の移動に対する減衰力によって、そのプランジャ122の自励振動を抑制することが可能とされている。
【0078】
<増圧用リニア弁と減圧用リニア弁との相違に関する特徴>
本液圧制御弁装置90は、ブレーキシステムに搭載されており、増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とによって、ブレーキシリンダ22への供給圧を制御する。その供給圧は、アキュムレータ64が出力する液圧より、リザーバ40の液圧に近い値で推移する。つまり、高圧側作動液圧と低圧側作動液圧との差圧は、増圧用リニア弁92の方が、減圧用リニア弁94より大きい。本電磁式リニア弁92,94は、常閉弁であるため、差圧が小さくなるほど、大きな電流が必要となる。
【0079】
本液圧制御弁装置90が有する増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とは、図5の拡大図に示すように、コア126の第1凹部172の深さが相違し、増圧用リニア弁92の第1凹部172SLAが、減圧用リニア弁94の第1凹部172SLRより浅くされている。つまり、プランジャ122が着座した状態において、プランジャ122の上端部とコア126の第1凹部172とが径方向に重なる部分の面積が、増圧用リニア弁92の方が減圧用リニア弁94より小さくされている。そのような構成によって、減圧用リニア弁94においては、小さな差圧を制御するために、大きな電流の供給を受けても、コア126とプランジャ122との間に流れる磁束が多くされており、そのコア126とプランジャ122との間で磁気飽和が生じ難くされている。
【0080】
一方で、コアとプランジャとの間に流される磁束が多くなり、吸引力の径方向の成分が大きくなると、コアとプランジャとの間の摩擦力も大きくなる。その摩擦力は、閉弁状態から開弁状態に切り換わる時、換言すれば、プランジャが着座している状態から動き始める時の抵抗力となる。この時の摩擦力が大きくなり過ぎると、プランジャの離座時の加速度が大きくなり、開弁量が急増する虞がある。この開弁量の急増は、作動液が第2液室から第1液室へ急激に流入することになり、プランジャの自励振動を引き起こす虞がある。つまり、そのプランジャの離座時の摩擦力は、できる限り小さくされることが望ましい。
【0081】
増圧用リニア弁92は、高圧側作動液圧と低圧側作動液圧との差圧が大きく、比較的小さな電流で開弁させることができる。増圧用リニア弁92の第1凹部172SLAは、減圧用リニア弁94の第1凹部172SLRより浅くされている。そのため、増圧用リニア弁92は、プランジャ122が着座している状態においてコア126とプランジャ122との間に流れる磁束が、減圧用リニア弁94に比較して少なくされており、プランジャ122の離座時の摩擦力が小さくされ、プランジャ122の自励振動が生じ難くされている。
【0082】
また、増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とは、それらの各々のプランジャスリーブ200の長さが互いに相違しており、増圧用リニア弁92のフランジ部180SLAがハウジング120の内面に当接する構成であるのに対して、減圧用リニア弁94のフランジ部180SLRは当接しないように構成されている。
【0083】
ここで、プランジャ122が着座している場合の摩擦力について説明する。プランジャ122のロッド162の先端と当接部とにおいてハウジング120に2点支持されている場合に、コイル124に電流が供給されると、プランジャ122に吸引力が作用し、その吸引力の径方向成分に依拠して、当接部に摩擦力が作用する。つまり、ロッド162の先端が支点として、プランジャ122の上端部に吸引力の径方向成分が入力され、当接部が作用点となる。その作用点は、支点と力点と間に位置するため、作用点が力点に近いほど、作用点に作用する力は小さくなる。したがって、フランジ部180とスリーブ132とが当接する増圧用リニア弁92は、プランジャスリーブ200の上端がガイド筒128と当接する減圧用リニア弁94に比較して、力点となるプランジャ122の上端部に当接部が近いため、当接部に作用する摩擦力が小さくなっている。
【0084】
増圧用リニア弁92は、フランジ部180が当接する構成によって、プランジャ122の離座時の摩擦力が小さくされ、プランジャ122の自励振動が生じ難くされている。また、増圧用リニア弁92は、先にも述べたように、プランジャ122の上端部とコア126の第1凹部172とが径方向に重なる部分の面積が小さくされることによっても、プランジャ122の離座時の摩擦力が小さくされており、プランジャ122の自励振動の発生を抑えることに特化したものとなっている。
【0085】
それに対して、減圧用リニア弁94は、フランジ部180が当接しない構成によって、そのフランジ部180によるダンパ機能を効果的に発揮させることができ、プランジャ122の自励振動を減衰させることが可能である。また、減圧用リニア弁94は、プランジャ122の上端部とコア126の第1凹部172とが径方向に重なる部分の面積が大きくされ、そのプランジャ122の離座している場合の大きな摩擦力によっても、プランジャ122の自励振動を減衰させることが可能とされており、プランジャ122の自励振動の減衰に特化したものとなっている。
【0086】
以上のような構成から、本液圧制御弁装置90は、それが備える増圧用リニア弁92および減圧用リニア弁94が、供給される電流の大きさに応じて適切化されており、いずれの電磁式リニア弁においても、プランジャ122の自励振動を効果的に抑制することが可能に構成されているのである。
【0087】
<変形例>
上記の実施例において、増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とは、コア126の第1凹部172の深さが互いに相違するものとされていたが、プランジャ122とコア126のとが径方向に重なる部分の面積が互いに相違する構成であればよい。例えば、プランジャの凸部の軸線方向の寸法Laに対する、コアの第1凹部の軸線方向の寸法Lbの比である凸部凹部比r(=Lb/La)を、増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とで異なるように構成すればよい。ただし、前述のように、電磁式リニア弁92,94は、例えば、プランジャ122とコア126と間にコイルスプリング164やストッパ178が設けられており、形状を異ならせるもの以外の部品は、増圧用リニア弁92と減圧用リニア弁94とで、同一であることが望ましい。
【0088】
上記のことに鑑みれば、例えば、上記実施例の他に、図6に示すように、プランジャの形状を異ならせることで、凸部凹部比rが互いに異なるようにしてもよい。詳しく言えば、本変形例の増圧用リニア弁260と減圧用リニア弁262とは、コア270の第1凹部272の深さは同一とされ、プランジャ280の凸部282の高さLaが互いに相違する。ただし、プランジャ280の全長、つまり、ロッドの先端から凸部282の上面までの距離は等しくされ、その凸部282の上面からプランジャ本体部の上面284までの距離Laが互いに異なるものとなっている。本変形例の液圧制御弁装置においても、上記実施例の液圧制御弁装置90と同様に、プランジャ280とコア270のとが径方向に重なる部分の面積が、増圧用リニア弁260の方が、減圧用リニア弁262に比較して小さくされており、上記実施例の液圧制御弁装置90と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0089】
10:ブレーキペダル 14:動力式液圧源装置 16:車輪 18:液圧ブレーキ装置 40:リザーバ 64:アキュムレータ 76:共通通路 80:低圧通路 90:出力液圧制御弁装置〔液圧制御弁装置〕 92:増圧用リニア弁〔電磁式リニア弁〕 94:減圧用リニア弁〔電磁式リニア弁〕 120:ハウジング 122:プランジャ 124:コイル 126:コア〔コア部〕 128:ガイド筒〔強磁性筒〕 130:弁部材〔区画部〕 132:スリーブ〔非磁性筒〕 140:第1液室 142:第2液室 144:連通穴 146:開口(弁座) 150:開口〔流入ポート〕 152:開口〔流出ポート〕 160:プランジャ本体 162:ロッド 164:コイルスプリング〔弾性体〕 170:凸部 172:第1凹部 174:第2凹部 180:フランジ部 190:連通路 192:区画部側液室 194:第1コア部側液室 196:第2コア部側液室 260:増圧用リニア弁 262:減圧用リニア弁 270:コア 272:第1凹部 280:プランジャ 282:凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)筒状に形成されたハウジング筒部と、(b)そのハウジング筒部の一端を塞ぐようにして形成されたコア部と、(c)前記ハウジング筒部の内部を、前記コア部に近い第1液室と前記コア部と反対側の第2液室とに区画するとともに、それら第1液室と第2液室とを連通する連通穴が形成された区画部と、(d)前記第2液室と連通してその第2液室に作動液を流入させるための流入ポートと、(e)前記第1液室と連通してその第1液室から作動液を流出させるための流出ポートとを有するハウジングと、
一端部が前記コア部と対向するとともに他端部が前記連通穴の開口と対向する状態で、前記第1液室内に配設され、軸線方向に移動可能、かつ、その他端部が前記連通穴の開口に着座可能とされたプランジャと、
そのプランジャを、それの他端部が前記連通穴の開口に接近する方向とその開口から離間する方向との一方に付勢する弾性体と、
前記ハウジングの周りに配設され、前記プランジャをそれが前記弾性体によって付勢される方向とは逆方向に移動させるための磁界を形成するコイルと
を備えた電磁式リニア弁であって、
前記プランジャが、前記一端部に前記コア部に向かって突出する凸部が形成されたものであり、
前記コア部が、前記プランジャに対向する端面にそのプランジャの前記一端部が臨み入る第1凹部が形成されるとともに、その第1凹部の底面に前記凸部が臨み入る第2凹部が形成されたものである電磁式リニア弁。
【請求項2】
調圧した作動液を作動液被供給装置に供給すべく、高圧源から出力される作動液の液圧を調整するための液圧制御弁装置であって、
(A)前記高圧源と前記作動液被供給装置との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を増圧する増圧用リニア弁と、(B)前記作動液被供給装置と低圧源との間に設けられ、その作動液被供給装置に供給する作動液の液圧を減圧する減圧用リニア弁とを含んで構成され、
前記増圧用リニア弁および前記減圧用リニア弁の各々が、請求項1に記載の電磁式リニア弁とされ、
前記プランジャの前記凸部の軸線方向の寸法に対する前記コア部が有する前記第1凹部の軸線方向の寸法の比を、凸部凹部比と定義した場合に、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が、前記凸部凹部比が互いに異なるように構成された液圧制御弁装置。
【請求項3】
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が備える前記弾性体が、
前記プランジャを、それの他端部が前記連通穴の開口に接近する方向に付勢するものとされ、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁および前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の各々が、
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部凹部比が、前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記凸部凹部比に比較して大きくなるように構成された請求項2に記載の液圧制御弁装置。
【請求項4】
前記減圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記第1凹部の軸線方向の寸法が、前記増圧用リニア弁とされた前記電磁式リニア弁の前記第1凹部の軸線方向の寸法に比較して大きくされた請求項3に記載の液圧制御弁装置。
【請求項5】
(a)筒状に形成されたハウジング筒部と、(b)そのハウジング筒部の一端を塞ぐようにして形成されたコア部と、(c)前記ハウジング筒部の内部を、前記コア部に近い第1液室と前記コア部と反対側の第2液室とに区画するとともに、それら第1液室と第2液室とを連通する連通穴が形成された区画部と、(d)前記第2液室と連通してその第2液室に作動液を流入させるための流入ポートと、(e)前記第1液室と連通してその第1液室から作動液を流出させるための流出ポートとを有するハウジングと、
一端部が前記コア部と対向するとともに他端部が前記連通穴の開口と対向する状態で、前記第1液室内に配設され、軸線方向に移動可能、かつ、その他端部が前記連通穴の開口に着座可能とされたプランジャと、
そのプランジャを、それの他端部が前記連通穴の開口に接近する方向とその開口から離間する方向との一方に付勢する弾性体と、
前記ハウジングの周りに配設され、前記プランジャをそれが前記弾性体によって付勢される方向とは逆方向に移動させるための磁界を形成するコイルと
を備えた電磁式リニア弁であって、
前記ハウジング筒部が、
(a-1)強磁性体によって筒状に形成された強磁性筒と、(a-2)非磁性体によって筒状に形成され、一端に前記コア部が嵌入されるとともに他端に前記強磁性筒が嵌入され、それらコア部と強磁性筒とを、前記コア部の端面と前記強磁性筒の端面との間に間隔が設けられた状態で連結する非磁性筒とを含んで構成され、
前記プランジャが、
外周面から径方向に突出するフランジ部を有し、そのフランジ部が前記コア部と前記強磁性筒との間の前記間隔内に位置する状態で配設された電磁式リニア弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96543(P2013−96543A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242296(P2011−242296)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】