説明

電磁駆動弁の制御装置、制御方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】電磁駆動弁の消費電力を小さくする。
【解決手段】ECUは、開弁用コイルおよび閉弁用コイルによる電磁力とスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように、開弁用コイルおよび閉弁用コイルの電流を制御するステップ(S300)と、電磁駆動弁が開弁状態または閉弁状態になった後において、スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように開弁用コイルおよび閉弁用コイルの電流を制御するステップ(S600)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁駆動弁の制御装置、制御方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体に関し、特に、コイルによる電磁力とスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁において、スプリングのサージングに応じた電流をコイルに通電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸気弁および排気弁を備えた内燃機関が知られている。一般的に、吸気弁および排気弁は、カムシャフトを回転させることにより開閉される。そのため、カムシャフトを回転させる際の摩擦力によりエネルギが損なわれる。したがって、内燃機関においてエネルギ効率を向上するためには、カムシャフトを用いずに吸気弁および排気弁を開閉させることが望ましい。そこで、コイルの電磁力により弁の開閉が行なわれる電磁駆動弁の開発が行なわれている。
【0003】
米国特許第6,467,441号明細書(特許文献1)は、電磁アクチュエータを用いて吸気弁もしくは排気弁を作動させる電磁駆動弁を開示する。特許文献1に記載の電磁駆動弁は、吸気弁および排気弁のうちの少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる電磁アクチュエータと、弁を付勢するスプリングとを含む。
【特許文献1】米国特許第6,467,441号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、米国特許第6,467,441号明細書に記載のような電磁駆動弁を作動させると、スプリングにサージングが発生する。サージングによりスプリングの弾性力が増加する。そのため、電磁駆動弁においては、サージングによる弾性力の増加分に対応した電磁力を発生する電流が必要になり、それだけ消費電力が増大するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、消費電力を小さくすることができる電磁駆動弁の制御装置、制御方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る電磁駆動弁の制御装置は、コイルによる電磁力とスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁の制御装置である。この制御装置は、電磁駆動弁が開いた状態および閉じた状態のうちの一方の状態から他方の状態になるようにコイルに流れる電流を制御するための手段と、電磁駆動弁が他方の状態になった後において、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための制御手段とを含む。第4の発明に係る電磁駆動弁の制御方法は、第1の発明に係る電磁駆動弁の制御装置と同様の要件を備える。
【0007】
第1または第4の発明によると、コイルによる電磁力とスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁が開いた状態および閉じた状態のうちの一方の状態から他方の状態になるようにコイルに流れる電流が制御される。電磁駆動弁が開いた状態または閉じた状態になった後において、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御される。これにより、継続的に電流を大きくせずに、サージングにより増加した弾性力に対応した電磁力を発生することができる。そのため、消費電力を小さくすることができる電磁駆動弁の制御装置または制御方法を提供することができる。
【0008】
第2の発明に係る電磁駆動弁の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御手段は、電磁駆動弁を他方の状態に維持するために必要な電流に対して、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための手段を含む。第5の発明に係る電磁駆動弁の制御方法は、第2の発明に係る電磁駆動弁の制御装置と同様の要件を備える。
【0009】
第2または第5の発明によると、電磁駆動弁を開いた状態または閉じた状態に維持するために必要な電流に対して、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御される。これにより、電流の増加を必要最小限にすることができる。
【0010】
第3の発明に係る電磁駆動弁の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加え、制御手段は、電磁駆動弁が他方の状態になる際の作動速度に応じて位相、周期、電流の増加量および回数のうちの少なくともいずれか一つを変化させて、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための手段を含む。第6の発明に係る電磁駆動弁の制御方法は、第3の発明に係る電磁駆動弁の制御装置と同様の要件を備える。
【0011】
第3または第6の発明によると、電磁駆動弁が開いた状態または閉じた状態になる際の作動速度に応じて位相、周期、電流の増加量および回数のうちの少なくともいずれか一つを変化させて、コイルの電流がスプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御される。これにより、電磁駆動弁の作動速度に応じた特性を有するサージングにより的確に対応させてコイルの電流を制御することができる。
【0012】
第7の発明に係るプログラムは、第4〜6のいずれかの発明に係る電磁駆動弁の制御方法をコンピュータに実現させるプログラムであって、第8の発明に係る記録媒体は、第4〜6のいずれかの発明に係る電磁駆動弁の制御方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0013】
第7または第8の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第4〜6のいずれかの発明に係る電磁駆動弁の制御方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のエンジンについて説明する。
【0016】
エンジン100には、エアクリーナ102から空気が吸入される。吸入空気量は、スロットルバルブ104により調整される。スロットルバルブ104はモータにより駆動される電子スロットルバルブである。
【0017】
空気は、シリンダ106(燃焼室)において燃料と混合される。シリンダ106には、インジェクタ108から燃料が直接噴射される。すなわち、インジェクタ108の噴射孔はシリンダ106内に設けられている。燃料は、シリンダ106の吸気側(空気が導入される側)から噴射される。
【0018】
燃料は吸気行程において噴射される。なお、燃料が噴射される時期は、吸気行程に限らない。また、本実施の形態においては、インジェクタ108の噴射孔がシリンダ106内に設けられた直噴エンジンとしてエンジン100を説明するが、直噴用のインジェクタ108に加えて、ポート噴射用のインジェクタを設けてもよい。さらに、ポート噴射用のインジェクタのみを設けるようにしてもよい。
【0019】
シリンダ106内の混合気は、点火プラグ110により着火され、燃焼する。燃焼後の混合気、すなわち排気ガスは、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。混合気の燃焼によりピストン114が押し下げられ、クランクシャフト116が回転する。
【0020】
シリンダ106の頭頂部には、吸気バルブ118および排気バルブ120が設けられる。シリンダ106に導入される空気の量および時期は吸気バルブ118により制御される。シリンダ106から排出される排気ガスの量および時期は排気バルブ120により制御される。
【0021】
本実施の形態における吸気バルブ118および排気バルブ120は電磁駆動弁である。この電磁駆動弁については後で詳述する。
【0022】
エンジン100は、ECU(Electronic Control Unit)200により制御される。ECU200は、エンジン100が所望の運転状態になるように、スロットル開度、点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量、吸気バルブ118の開閉タイミングを制御する。ECU200には、スロットル開度センサ300、クランク角センサ302、ノックセンサ304などから信号が入力される。
【0023】
スロットル開度センサ300は、スロットル開度を表す信号を出力する。クランク角センサ302は、クランクシャフト116の回転数(エンジン回転数)およびクランク角を表す信号を出力する。ノックセンサ304は、エンジン100の振動の強度を表す信号を出力する。
【0024】
ECU200は、これらのセンサから入力された信号、ROM(Read Only Memory)202に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン100を制御する。
【0025】
図2を参照して、吸気バルブ118もしくは排気バルブ120としての電磁駆動弁500について説明する。
【0026】
電磁駆動弁500は、弁軸としてのバルブステム512および傘部513を有し、バルブステム512が延びる方向(矢印510)に沿って往復運動する駆動弁514と、駆動弁514と連動する一方端532から他方端533へ延び、他方端533で延びる中心軸535を中心に揺動する揺動部材としてのディスク530と、本体551と、本体551に取付けられた閉弁用電磁石560および開弁用電磁石570とを含む。
【0027】
バルブステム512にはスプリングシート516が固定される。このスプリングシート516とシリンダヘッド541との間にスプリング518が配設される。このスプリング518により、駆動弁514が閉じる方向に付勢される。
【0028】
ディスク530は、閉弁用電磁石560および開弁用電磁石570の電磁力によりいずれか一方に吸引される。これにより、開弁用電磁石570および閉弁用電磁石560間でディスク530が往復運動する。ディスク530の往復運動はバルブステム512を介して駆動弁514へ伝えられる。
【0029】
バルブステム512の移動量、すなわち駆動弁514のリフト量は、リフトセンサ306により検出され、検出結果を表わす信号がECU200に送信される。
【0030】
ディスク530はアーム部531と軸受部538とを有し、アーム部531が一方端532から他方端533へ延びている。アーム部531は閉弁用電磁石560および開弁用電磁石570により吸引されて揺動(回動)する部材である。アーム部531の端部に軸受部538が取付けられ、アーム部531は軸受部538を中心として回動する。アーム部531の上側表面は閉弁用電磁石560と向かい合い、下側表面は開弁用電磁石570と向かい合う。下側表面はバルブステム512と接触している。
【0031】
軸受部538は円筒形状であり、その内部にはトーションバー536が収納されている。トーションバー536の第一の端部は本体551にスプライン嵌合で嵌め合わせられており、他方の端部は軸受部538に嵌め合わせられている。これにより、軸受部538が回動しようとすると、この回動に逆らう力がトーションバー536から軸受部538へ加えられる。そのため、軸受部538は常に中立状態に位置決めされる。
【0032】
「コ」の字型の本体551はベース部材であり、本体551にさまざまな機器が取付けられる。本体551はシリンダヘッド541上に設けられる。本体551では、下側に開弁用電磁石570が設けられ、上側に閉弁用電磁石560が設けられる。
【0033】
閉弁用電磁石560および開弁用電磁石570の各々は、磁性体からなるコア561,571と、コア561,571に巻付けられた閉弁用コイル562および開弁用コイル572とを有する。閉弁用コイル562および開弁用コイル572に通電されることで磁界が発生し、この磁界によりディスク530を駆動させる。
【0034】
開弁用コイル572および閉弁用コイル562は直列接続されている。ディスク530を開弁用コイル572および閉弁用コイル562の一方から他方へ移動させるときに開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流れる電流値を0より大きく保つように電源は開弁用コイル572および閉弁用コイル562に電流が供給される。
【0035】
シリンダヘッド541はエンジン上部に取付けられ、シリンダヘッド541の下部には吸気ポート544が設けられる。吸気ポート544は吸気を燃焼室内へ導入するための経路であり、吸気ポート544内を混合気または空気が通過する。吸気ポート544と燃焼室との間にはバルブシート542が設けられる。バルブシート542により駆動弁514の密閉性を高めることができる。
【0036】
図3に示すように、電源580に直列的に開弁用コイル572および閉弁用コイル562が接続される。これにより、閉弁用コイル562および開弁用コイル572には、等しい電流が流れる。
【0037】
以下、電磁駆動弁500の動作について説明する。図2に示すように、電磁駆動弁500が閉弁状態とされている場合には、図4において「閉弁」と記載されているように、予め定められた電流が開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流れている。
【0038】
このとき、閉弁用コイル562とディスク530との距離が開弁用コイル572とディスク530との距離よりも近いため、ディスク530と閉弁用コイル562との間で大きな力が働き、ディスク530は閉弁用コイル562に吸引されている。
【0039】
電磁駆動弁500が閉弁状態から開弁状態へ移行する場合には、開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流れる電流が漸減される。このとき、図4で示すように、電流値を「0」Aよりも大きく保持する。
【0040】
しかしながら、閉弁状態よりも電流を下げているため、閉弁用コイル562とディスク530との間で働く力は小さくなり、閉弁用コイル562による電磁力とスプリング518の弾性力との和が、トーションバー536による弾性力より小さくなる。その結果、ディスク530はトーションバー536の弾性力(捩り力)により図2の下方向へ動き、その後、図5で示す中立位置まで移動する。
【0041】
図5で示す中立位置では、ディスク530のアーム部531は開弁用電磁石570と閉弁用電磁石560との間に位置しており、さらにアーム部531は開弁用電磁石570に向かって移動している。その後、電流値を図4中の「吸引電流」まで大きくする。これにより開弁用コイル572に流れる電流が大きくなり、開弁用コイル572はアーム部531を大きな力で引付ける。その結果、図6で示すようにアーム部531が下方向へ動き、図4中の「着座」に至る。
【0042】
この状態が開弁状態であり、駆動弁を構成する傘部513が大きく開く。中立位置から開弁状態へ移動する間にトーションバー536が捩られ、スプリング518が縮められるため、トーションバー536およびスプリング518はアーム部531の動きを妨げるような力を発生する。しかしながら、開弁用コイル572がアーム部531を引付ける力がトーションバー536およびスプリング518から加えられる力よりも大きいため、アーム部531は下側へ移動する。
【0043】
開弁状態となった場合には、閉弁状態と同じ電流値が開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流される。さらに、図6で示す開弁状態から図2で示す閉弁状態へ移行する場合には、開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流れる電流値を減少させる。なお、このとき電流値を「0」Aまで下げることはない。これにより、開弁用コイル572がアーム部531を引付ける力を弱くする。その結果、トーションバー536およびスプリング518による力が開弁用コイル572による電磁力(吸引力)に勝り、ディスク530は図5で示す中立位置付近にまで移動する。この場合でも開弁用コイル572および閉弁用コイル562に流れる電流値は「0」Aよりも大きい。
【0044】
図5で示す中立位置付近で閉弁用コイル562および開弁用コイル572に流す電流値を大きくすることで閉弁用コイル562がディスク530を引付けて閉弁状態となる。このように開弁および閉弁を繰返すことで電磁駆動弁500を作動させることができる。
【0045】
ところで、電磁駆動弁500の作動時においては、スプリング518が伸縮される。スプリング518が伸縮する際、過渡時にはサージングが発生する。サージングにおいては、全長が均一に伸縮せずに、伸びが大きい部分と縮みが大きい部分とが混在し、さらに縮みが大きい部分が移動する。
【0046】
したがって、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態になった後または閉弁状態から開弁状態になった後は、図7に示すように、スプリング518の弾性力が周期的に増加する。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、図7に示すように、電磁駆動弁500を開弁状態または閉弁状態に維持するために必要な電流に対して、サージングの周期に応じたタイミングで開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流が増加される。すなわち、弾性力が増加する周期に合わせて電流が増加される。
【0048】
図8を参照して、ECU200の機能について説明する。なお、以下に説明する機能はハードウェアにより実現するようにしてもよく、ソフトウェアにより実現するようにしてもよい。
【0049】
ECU200は、第1電流制御部210と、第2電流制御部220とを含む。第1電流制御部210は、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように、開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を制御する。
【0050】
第2電流制御部220は、サージングの周期に応じたタイミングで増加するように開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を制御する。開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を増加する際の位相(着座から電流を増加するまでの時間)、周期、電流の増加量および回数は、駆動弁514の着座時の速度、すなわち電磁駆動弁500が開弁状態または閉弁状態になる際の作動速度に応じて変化される。
【0051】
たとえば、リフトセンサ306を用いて検出されるリフト量から駆動弁514の着座時の速度が算出され、算出された速度に応じて、予め定められたマップに従って開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を増加する際の位相、周期、電流の増加量および回数が定められる。なお、位相、周期、電流の増加量および回数の設定方法はこれに限らない。なお、位相、周期、電流の増加量および回数の少なくともいずれか一つを駆動弁514の着座時の速度に応じて設定するようにしてもよい。
【0052】
開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を増加する際の位相、周期、電流の増加量および回数を設定するために用いられるマップは、実験もしくはシミュレーションにより予め作成され、ECU200のROM202に記録される。
【0053】
図9を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0054】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU200は、クランク角センサ302から送信された信号に基づいてクランク角を検出する。
【0055】
S200にて、ECU200は、クランク角に基づいて、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように作動させる必要があるか否かを判断する。電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように作動させる必要があると(S200にてYES)、処理はS300に移される。もしそうでないと(S200にてNO)、この処理は終了する。
【0056】
S300にて、ECU200は、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように、開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を制御する。
【0057】
S400にて、ECU300は、リフトセンサ306を用いて検出されるリフト量を微分して、駆動弁514の着座時の速度を算出する。S500にて、ECU300は、駆動弁514の着座時の速度に基づいて、開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流の位相、周期、電流の増加量および回数を設定する。
【0058】
S600にて、ECU300は、電磁駆動弁500を開弁状態または閉弁状態に維持するために必要な電流に対して、サージングの周期に応じたタイミングで増加するように開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流を制御する。
【0059】
以上のような構造およびフロチャートに基づく本実施の形態に係る制御装置であるECU200の動作について説明する。
【0060】
エンジン100の運転中、クランク角センサ302から送信された信号に基づいてクランク角が検出される(S100)。このクランク角に基づいて、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように作動させる必要があるか否かが判断される(S200)。
【0061】
電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように作動させる必要があると(S200にてYES)、電磁駆動弁500が開弁状態から閉弁状態にもしくは閉弁状態から開弁状態になるように、開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流が制御される(S300)。
【0062】
さらに、リフトセンサ306を用いて検出されるリフト量を微分して、駆動弁514の着座時の速度が算出される(S400)。駆動弁514の着座時の速度に基づいて、開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流の位相、周期、電流の増加量および回数が設定される(S500)。
【0063】
その後、前述した図7に示すように、電磁駆動弁500を開弁状態または閉弁状態に維持するために必要な電流に対して、サージングの周期に応じたタイミングで増加するように開弁用コイル572および閉弁用コイル562の電流が制御される(S600)。
【0064】
これにより、図7において一点鎖線で示すように継続的に電流を大きくしなくても、サージングにより増加するスプリング518の弾性力に対抗する電磁力を発生することができる。そのため、消費電力を小さくしつつ、電磁駆動弁500を開弁状態または閉弁状態に確実に維持することができる。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、電磁駆動弁が開弁状態から閉弁状態になった後または閉弁状態から開弁状態になった後、スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように開弁用コイルおよび閉弁用コイルの電流が制御される。これにより、継続的に電流を大きくしなくても、サージングにより増加するスプリングの弾性力に対抗する電磁力を発生することができる。そのため、消費電力を小さくしつつ、電磁駆動弁を開弁状態または閉弁状態に確実に維持することができる。
【0066】
なお、電磁駆動弁500の構造は上記したものに限らない。その他、たとえば、図10に示すように、ディスク530を上下で2枚設けるようにしてもよい。この電磁駆動弁500においては、それぞれのディスク530がステム520で連結される。1つの電磁石590のコア591に開弁用コイル592と閉弁用コイル593とが巻きつけられる。
【0067】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施の形態に係る制御装置であるECUを搭載した車両のエンジンを示す概略構成図である。
【図2】電磁駆動弁の断面図(その1)である。
【図3】開弁用コイルおよび閉弁用コイルを示す図である。
【図4】電磁駆動弁における電流値とリフト量との関係を示す図である。
【図5】電磁駆動弁の断面図(その2)である。
【図6】電磁駆動弁の断面図(その3)である。
【図7】スプリングの弾性力と電磁駆動弁における電流値とを示す図である。
【図8】ECUの機能ブロック図である。
【図9】ECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図10】電磁駆動弁の断面図(その4)である。
【符号の説明】
【0069】
100 エンジン、118 吸気バルブ、120 排気バルブ、200 ECU、202 ROM、210 電流制御部、220 電流制御部、306 リフトセンサ、500 電磁駆動弁、512 バルブステム、513 傘部、514 駆動弁、516 スプリングシート、518 スプリング、518 吸気ポート、520 ステム、530 ディスク、531 アーム部、532 一方端、533 他方端、535 中心軸、536 トーションバー、538 軸受部、541 シリンダヘッド、542 バルブシート、551 本体、560 閉弁用電磁石、561 コア、562 閉弁用コイル、570 開弁用電磁石、571 コア、572 開弁用コイル、580 電源、590 電磁石、591 コア、592 開弁用コイル、593 閉弁用コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルによる電磁力およびスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁の制御装置であって、
前記電磁駆動弁が開いた状態および閉じた状態のうちの一方の状態から他方の状態になるように前記コイルに流れる電流を制御するための手段と、
前記電磁駆動弁が前記他方の状態になった後において、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための制御手段とを含む、電磁駆動弁の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電磁駆動弁を前記他方の状態に維持するために必要な電流に対して、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための手段を含む、請求項1に記載の電磁駆動弁の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電磁駆動弁が前記他方の状態になる際の作動速度に応じて位相、周期、電流の増加量および回数のうちの少なくともいずれか一つを変化させて、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するための手段を含む、請求項1または2に記載の電磁駆動弁の制御装置。
【請求項4】
コイルによる電磁力とスプリングによる弾性力により作動する電磁駆動弁の制御方法であって、
前記電磁駆動弁が開いた状態および閉じた状態のうちの一方の状態から他方の状態になるように前記コイルに流れる電流を制御するステップと、
前記電磁駆動弁が前記他方の状態になった後において、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するステップとを含む、電磁駆動弁の制御方法。
【請求項5】
前記コイルの電流を制御するステップは、前記電磁駆動弁を前記他方の状態に維持するために必要な電流に対して、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するステップを含む、請求項4に記載の電磁駆動弁の制御方法。
【請求項6】
前記コイルの電流を制御するステップは、前記電磁駆動弁が前記他方の状態になる際の作動速度に応じて位相、周期、電流の増加量および回数のうちの少なくともいずれか一つを変化させて、前記コイルの電流が前記スプリングのサージングの周期に応じたタイミングで増加するように制御するステップを含む、請求項4または5に記載の電磁駆動弁の制御方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−116003(P2008−116003A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301833(P2006−301833)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】