電磁駆動弁
【課題】 初期駆動を容易に行なうことができる電磁駆動弁を提供する。
【解決手段】 電磁駆動弁10は、コイル62を有し、電磁力を発生する電磁石60と、支持端33および23を有し、電磁力が作用されて、支持端33および23を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動するアッパディスク31およびロアディスク21とを備える。アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、アッパディスク31およびロアディスク21の位置X1およびX2に作用する。電磁石60は、位置X1および支持端33間の距離L1と、位置X2および支持端23間の距離L2とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【解決手段】 電磁駆動弁10は、コイル62を有し、電磁力を発生する電磁石60と、支持端33および23を有し、電磁力が作用されて、支持端33および23を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動するアッパディスク31およびロアディスク21とを備える。アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、アッパディスク31およびロアディスク21の位置X1およびX2に作用する。電磁石60は、位置X1および支持端33間の距離L1と、位置X2および支持端23間の距離L2とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、電磁駆動弁に関し、より特定的には、モノコイルにより構成された電磁石を備える電磁駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁駆動弁に関して、たとえば、米国特許第6467441号明細書には、電磁力とスプリングとの協働によって内燃機関のバルブが作動する電磁アクチュエータが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された電磁アクチュエータは、回転駆動式と呼ばれており、回転自在に支持された揺動アームの揺動運動から直線運動を取り出し、バルブを開弁位置と閉弁位置との間で往復運動させている。揺動アームの両側には、鉄芯とその鉄芯の周りに巻かれたコイルとから構成される電磁石が1つずつ配置されている。揺動アームを揺動させるため、これらの電磁石に交互に電流供給し、揺動アームの上下に電磁力を作用させている。
【0003】
また、特開2002−115515号公報には、車両への搭載性を向上させるとともに、重量の低減およびコストの削減を図ることを目的とした電磁駆動弁用アクチュエータが開示されている(特許文献2)。また、特開2001−214764号公報には、電磁石と可動子との衝突速度を小さくして、騒音や振動を抑え、電力消費を少なくすることを目的とした内燃機関の動弁装置が開示されている(特許文献3)。
【0004】
また、特開平11−141319号公報には、一対の電磁石に同等の励磁電流を供給しつつ、開弁方向と閉弁方向とに同等の動作特性を実現することを目的とした内燃機関の電磁駆動弁が開示されている(特許文献4)。特許文献2から4に開示された電磁駆動弁用アクチュエータ等は、特許文献1に開示された回転駆動式に対して並進駆動式と呼ばれており、バルブのステムに設けられた鍔状のアーマチャに電磁力を直接、作用させ、バルブを往復運動させている。
【特許文献1】米国特許第6467441号明細書
【特許文献2】特開2002−115515号公報
【特許文献3】特開2001−214764号公報
【特許文献4】特開平11−141319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された回転駆動式の電磁アクチュエータでは、始動前、揺動アームの揺動支点に設けられたトーションバーの弾性力と、バルブのステムに設けられた渦巻きばねの弾性力とによって、揺動アームが、開弁位置と閉弁位置との中間位置に位置決めされている。電磁アクチュエータを初期駆動させる場合、上下に配置された電磁石のいずれか一方に電流供給する。すると、その電流供給した電磁石で、揺動アームを引き寄せる電磁力が発生し、揺動アームが揺動し始める。
【0006】
しかしながら、揺動アームの上下に配置された電磁石が、モノコイル(連続する一続きのコイル)から構成されている場合、電磁石に電流供給すると、揺動アームの上下に等しい大きさの電磁力が作用する。この場合、揺動アームが、中間位置に静止したままとなり、電磁アクチュエータを初期駆動させることができない。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、初期駆動を容易に行なうことができる電磁駆動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の1つの局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、可動子の第1および第2の位置に作用する。電磁石は、第1の位置および支持部間の距離と、第2の位置および支持部間の距離とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【0009】
なお、モノコイルとは、連続する一続きのコイルを指す(以下に続くモノコイルに関しても、同様に理解する)。モノコイルに電流を供給すると、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、同時に可動子に作用する。また、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置とは、開弁位置からの距離と閉弁位置からの距離とが等しくなる、開弁位置と閉弁位置との中心位置を指す(以下に続く中間位置に関しても、同様に理解する)。
【0010】
このように構成された電磁駆動弁によれば、可動子が中間位置に保持された始動前の状態で、電磁石と可動子との間の隙間が、開弁方向の電磁力が作用する第1の位置と、閉弁方向の電磁力が作用する第2の位置とで異なる大きさとなる。これにより、モノコイルへの電流供給によって、電磁石と可動子との間の隙間が小さい方の位置では、相対的に大きい電磁力が可動子に作用し、電磁石と可動子との間の隙間が大きい方の位置では、相対的に小さい電磁力が可動子に作用する。したがって、可動子を、始動前に保持された中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0011】
この発明の別の局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を、開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力をそれぞれ生じさせる第1および第2の磁束が、可動子内に流れる。電磁石は、第1の磁束と第2の磁束とが異なる大きさとなるように設けられている。
【0012】
このように構成された電磁駆動弁によれば、開弁方向の電磁力を発生させる第1の磁束と、閉弁方向の電磁力を発生させる第2の磁束とが異なる大きさとなるように、電磁石が設けられている。このため、モノコイルへの電流供給により、可動子内に大きい磁束が流れた方では、相対的に大きい電磁力が発生し、小さい磁束が流れた方では、相対的に小さい電磁力が発生する。したがって、可動子を、始動前に保持された中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0013】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1のコア部に旋回されるモノコイルの巻き数と、第2のコア部に旋回されるモノコイルの巻き数とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、モノコイルの巻き数の多い方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、モノコイルの巻き数が少ない方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、モノコイルの巻き数に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0014】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1のコア部を形成する材料の透磁率と、第2のコア部を形成する材料の透磁率とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、透磁率が大きい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、透磁率が小さい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、コア部を形成する材料の透磁率に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0015】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の第1のコア部の最小断面積と、第2の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の第2のコア部の最小断面積とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、最小断面積が大きい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、最小断面積が小さい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、磁束の通り道となるコア部の最小断面積に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0016】
この発明のさらに別の局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間にある中立位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、可動子に作用する。中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている。
【0017】
このように構成された電磁駆動弁によれば、可動子が中立位置に保持された始動前の状態で、電磁石と可動子との間の隙間が、開弁方向の電磁力が作用する位置と、閉弁方向の電磁力が作用する位置とで異なる大きさとなる。これにより、モノコイルへの電流供給によって、電磁石と可動子との間の隙間が小さい方の位置では、相対的に大きい電磁力が可動子に作用し、電磁石と可動子との間の隙間が大きい方の位置では、相対的に小さい電磁力が可動子に作用する。したがって、可動子を、始動前に保持された中立位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0018】
また、可動子は、互いに間隔を隔てて複数、設けられている。電磁石は、複数の可動子の間に配置されている。このような並行リンク機構を採用した電磁駆動弁においても、上述のいずれかに記載の効果を同様に得ることができる。また同時に、電磁駆動弁の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明に従えば、初期駆動を容易に行なうことができる電磁駆動弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における電磁駆動弁を示す断面図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関の機関バルブ(吸気弁または排気弁)を構成している。本実施の形態では、電磁駆動弁が排気弁を構成している場合について説明を行なうが、吸気弁を構成する場合であっても、電磁駆動弁は、同様の構造を備える。
【0022】
図1を参照して、電磁駆動弁10は、回転駆動式の電磁駆動弁であり、その運動機構には、並行リンク機構が適用されている。
【0023】
電磁駆動弁10は、一方向に延びるステム12を有する駆動弁14と、ステム12の異なる位置に連結され、作用された電磁力および弾性力によって揺動するアッパディスク31およびロアディスク21と、その電磁力を発生する電磁石60と、アッパディスク31およびロアディスク21にそれぞれ設けられ、これらのディスクに弾性力を作用させるアッパトーションバー36およびロアトーションバー26とを備える。電磁石60は、モノコイルからなるコイル62によって構成されている。駆動弁14は、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動運動を受けて、ステム12が延びる方向(矢印101に示す方向)に往復運動する。
【0024】
駆動弁14は、排気ポート17が形成されたシリンダヘッド41に搭載されている。シリンダヘッド41の排気ポート17から図示しない燃焼室に連通する位置には、バルブシート42が設けられている。駆動弁14は、さらに、ステム12の先端に形成された傘部13を有する。駆動弁14の往復運動に伴って、傘部13がバルブシート42に密着したり、バルブシート42から離脱することによって、排気ポート17の開閉が行なわれる。つまり、ステム12が上昇することによって、駆動弁14が閉弁位置へと位置決めされ、ステム12が下降することによって、駆動弁14が開弁位置へと位置決めされる。
【0025】
ステム12は、傘部13から連続する下部ステム12mと、ラッシュアジャスタ16を介して下部ステム12mに接続された上部ステム12nとから構成されている。ラッシュアジャスタ16は、上部ステム12nと下部ステム12mとの間で緩衝部材として機能し、縮みやすく伸びにくい特性を有する。ラッシュアジャスタ16は、閉弁位置にある駆動弁14の位置決め誤差を吸収し、傘部13をバルブシート42に確実に密着させる。下部ステム12mには、その外周面から突出する連結ピン12pが形成されており、上部ステム12nには、その外周面から突出する連結ピン12qが、連結ピン12pから離れた位置で形成されている。
【0026】
シリンダヘッド41には、下部ステム12mを軸方向に摺動可能なように案内するバルブガイド43が設けられており、バルブガイド43から離れた位置には、上部ステム12nを軸方向に摺動可能なように案内するステムガイド45が設けられている。バルブガイド43およびステムガイド45は、ステム12との高速摺動に耐えられるように、たとえば、ステンレスなどの金属材料から形成されている。シリンダヘッド41の頂面には、ステム12と間隔を隔てた位置に、ディスク支持台51が取り付けられている。
【0027】
図2は、図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。図1および図2を参照して、ロアディスク21は、支持端23および連結端22を有し、支持端23から連結端22に向けてステム12に交差する方向に延びている。支持端23と連結端22との間には、互いに反対側に面する表面21aおよび21bが形成されている。支持端23には、支持端23から連結端22に向かう方向の直交方向に延び、ロアディスク21の揺動中心となる中心軸25が規定されている。支持端23には、中心軸25に沿って延びる貫通孔27が形成されている。連結端22には、切欠き部29が形成されている。切欠き部29の互いに向い合う壁面には、長孔24が形成されている。
【0028】
アッパディスク31は、ロアディスク21と同様の形状を備え、ロアディスク21の支持端23、連結端22、表面21a、表面21b、切欠き部29、長孔24、貫通孔27および中心軸25に対応して、支持端33、連結端32、表面31b、表面31a、切欠き部39、長孔34、貫通孔37および中心軸35を有する。
【0029】
ロアディスク21の連結端22は、長孔24に連結ピン12pが挿通されることによって、下部ステム12mに対して揺動自在に連結されている。アッパディスク31の連結端32は、長孔34に連結ピン12qが挿通されることによって、上部ステム12nに対して揺動自在に連結されている。ロアディスク21の支持端23は、貫通孔27に挿入されたロアトーションバー26を介して、ディスク支持台51に揺動自在に支持されている。アッパディスク31の支持端33は、貫通孔37に挿入されたアッパトーションバー36を介して、ディスク支持台51に揺動自在に支持されている。このような構成により、ロアディスク21およびアッパディスク31をそれぞれ、中心軸25および35を中心に揺動させ、駆動弁14を往復運動させる。
【0030】
ロアトーションバー26により、ロアディスク21には、中心軸25を中心に時計周りに付勢する弾性力が作用している。アッパトーションバー36により、アッパディスク31には、中心軸35を中心に反時計周りに付勢する弾性力が作用している。電磁石60による電磁力が加わっていない状態で、ロアディスク21およびアッパディスク31は、ロアトーションバー26およびアッパトーションバー36によって、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に位置決めされる。
【0031】
図3は、図1中の電磁石を示す斜視図である。図1および図3を参照して、ディスク支持台51には、アッパディスク31とロアディスク21との間に位置するように電磁石60が設けられている。電磁石60は、モノコイルからなるコイル62と、磁性材料から形成されたコア61とを備える。コア61は、コイル62が旋回される軸部61yを有する。
【0032】
コア61は、アッパディスク31に向い合って位置する開弁用コア61qと、ロアディスク21に向い合って位置する閉弁用コア61pとから構成されている。軸部61yの中心を通り、表面31aおよび表面21aに平行に延在する平面を想定すると、閉弁用コア61pおよび開弁用コア61qは、その平面を中心に上下対称の形状を有する。閉弁用コア61pと開弁用コア61qとは、その平面を境に、ロアディスク21が支持端23から連結端22に向けて延びる方向(アッパディスク31が支持端33から連結端32に向けて延びる方向)にずれるように、組み合わされている。
【0033】
開弁用コア61qは、表面31aに向い合う吸着面61aを有し、閉弁用コア61pは、表面21aに向い合う吸着面61bを有する。アッパディスク31が吸着面61aに引き寄せられた状態で、支持端33から連結端32に向かう方向の吸着面61aの中心位置と合致する表面31a上の位置をX1とし、ロアディスク21が吸着面61bに引き寄せられた状態で、支持端23から連結端22に向かう方向の吸着面61bの中心位置と合致する表面21a上の位置をX2とする。本実施の形態では、電磁石60で発生した電磁力が、アッパディスク31の位置X1およびロアディスク21の位置X2に作用するとみなす。
【0034】
開弁用コア61qおよび閉弁用コア61pは、支持端33にある中心軸35から位置X1までの距離L1が、支持端23にある中心軸25から位置X2までの距離L2よりも小さくなるように、互いに組み合わされている。つまり、開弁用コア61qは、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動中心から相対的に近い位置に設けられており、閉弁用コア61pは、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動中心から相対的に遠い位置に設けられている。このような構成により、アッパディスク31およびロアディスク21が、中間位置に位置決めされた状態で、吸着面61aと表面31aとの間の隙間C1は、吸着面61bと表面21aとの間の隙間C2よりも小さくなる。
【0035】
開弁用コア61qと閉弁用コア61pとがずれて組み合わされた構成により、開弁用コア61qから露出するように、閉弁用コア61pに表面64が形成され、閉弁用コア61pから露出するように、開弁用コア61qに表面63が形成される。これにより、ずれた構成が採られていないコアと比較して、コア61の表面積を増大させることができる。この場合、電磁駆動弁10の駆動時に、電磁石60の冷却性能を向上させることができる。
【0036】
図4は、図1中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。なお、以下に続く図4から図11では、図1中のラッシュアジャスタ16等、詳細な構造が省略されて描かれている。
【0037】
図1および図4を参照して、電磁駆動弁10の始動前、アッパディスク31およびロアディスク21は、アッパトーションバー36およびロアトーションバー26によって、中間位置に保持されている。電磁駆動弁10を始動させるため、電磁石60のコイル62に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、開弁用コア61qおよびアッパディスク31の間、閉弁用コア61pおよびロアディスク21の間に、それぞれ磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印111および112に示す方向に磁束が流れる。
【0038】
これにより、アッパディスク31を、電磁石60の吸着面61aに引き付ける電磁力と、ロアディスク21を、電磁石60の吸着面61bに引き寄せる電磁力とが発生する。電磁力は、電磁石60との間の距離が小さい位置で、相対的に大きく作用し、電磁石60との間の距離が大きい位置で、相対的に小さく作用する。本実施の形態では、吸着面61aと表面31aとの間の隙間C1は、吸着面61bと表面21aとの間の隙間C2よりも小さいため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0039】
なお、アッパディスク31およびロアディスク21を、それぞれ中心軸35および25を中心に回転する「てこ」と見ると、図1中のL1<L2の関係から、ロアディスク21に作用した電磁力が、アッパディスク31に作用した電磁力よりも、より効果的に駆動弁14を往復運動させる力としてステム12に作用する。しかしながら、電磁石およびディスク間の距離によって生じる電磁力の変化の度合いは、上述の「てこの原理」に起因して生じる差よりも格段に大きいため、始動時、駆動弁14は、中間位置から開弁位置に向けて揺動し始める。
【0040】
また、駆動弁14が、閉弁位置から開弁位置に向けて運動する時、燃焼室には、爆発工程によるシリンダ内圧が生じている。このため、そのシリンダ内圧に打ち勝つだけの引き付け力を、電磁石60で発生させる必要がある。しかしながら、本実施の形態では、駆動弁14が閉弁位置から開弁位置に向けて運動する時に、より大きい電磁力でアッパディスク31を電磁石60に引き寄せることができる。このため、コイル62に供給する電流値を小さく抑えたまま、駆動弁14を安定して運動させることができ、消費電力の節減を図ることができる。このような効果は、駆動弁14が排気弁を構成している場合に、始動時に揺動し始める方向が、閉弁位置から開弁位置に向かう方向と合致すれば得ることができ、以下に続く実施の形態でも同様に得ることができる。
【0041】
この発明の実施の形態1における電磁駆動弁10は、モノコイルとしてのコイル62を有し、電磁力を発生する電磁石60と、回転自在に支持された支持部としての支持端33および23を有し、電磁力が作用されて、支持端33および23を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子としてのアッパディスク31およびロアディスク21とを備える。アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、アッパディスク31およびロアディスク21の第1および第2の位置としての位置X1およびX2に作用する。電磁石60は、位置X1および支持端33間の距離L1と、位置X2および支持端23間の距離L2とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【0042】
このように構成された、この発明の実施の形態1における電磁駆動弁10によれば、コイル62がモノコイルにより構成されているにもかかわらず、コイル62に電流供給するだけで、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動運動を開始させることができる。これにより、複雑な制御が伴わない容易な初期駆動を実現することができる。また、モノコイルからなるコイル62を用いることで、開弁用および閉弁用の2つの電磁石を設ける場合と比較して、コストウェイトが高い電磁石の部品点数を1/2に削減できる。また、コイル62への電流供給のみで良いため、EDU(electronic driver unit)に設けられ、コイル1つに対して1つ必要となる回路素子の数を、電磁石と同様、1/2に削減できる。したがって、電磁駆動弁10の製造コストを大幅に削減することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0044】
図5を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石65が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石65は、モノコイルからなるコイル67と、磁性材料から形成されたコア66とを備える。コア66は、アッパディスク31に向い合って位置し、支持端33から連結端32に向かう方向の直交方向に延びる軸部66yと、ロアディスク21に向い合って位置し、支持端23から連結端22に向かう方向の直交方向に延びる軸部66wとを有する。
【0045】
コイル67は、まず軸部66yの周りを旋回し、さらに軸部66wの周りを旋回するようにコア66に設けられており、軸部66yに旋回された部分67qと、軸部66wに旋回された部分67pとから構成されている。コイル67は、部分67qの巻き数が、部分67pの巻き数よりも多くなるようにコア66に設けられている。なお、コイル67の巻き方は、上記の方法に限定されない。
【0046】
図6は、図5中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。図6を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石65のコイル67に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、コア66と、アッパディスク31およびロアディスク21とのそれぞれの間に、磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印116および117に示す方向に磁束が流れる。このとき、アッパディスク31に流れる磁束は、軸部66yに旋回されたコイル67の部分67qによって形成され、ロアディスク21に流れる磁束は、軸部66wに旋回されたコイル67の部分67pによって形成される。
【0047】
一方、磁束(Φ)は、磁気回路の磁気抵抗(Rm)、電流(I)およびコイルの巻き数(N)を用いて、Φ=(I×N)/Rmで表わされる。本実施の形態では、部分67qの巻き数が、部分67pの巻き数よりも多いため、アッパディスク31に流れる磁束が、ロアディスク21に流れる磁束よりも大きくなる。
【0048】
さらに、電磁力(F)は、空気の透磁率(μ0)、コアの断面積(A)および磁束(Φ)を用いて、F=Φ2/(μ0×A)で表わされる。このため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0049】
この発明の実施の形態2における電磁駆動弁では、電磁石65は、モノコイルとしてのコイル67が旋回され、アッパディスク31およびロアディスク21のそれぞれとの間で、矢印116および117に示す方向に磁束が通る磁気回路が形成される第1および第2のコア部としての軸部66yおよび軸部66wをさらに有する。軸部66yに旋回されるコイル67の巻き数と、軸部66wに旋回されるコイル67の巻き数とが異なる。
【0050】
このように構成された、この発明の実施の形態2における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図7は、この発明の実施の形態3における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0052】
図7を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石70が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石70は、モノコイルからなるコイル72と、磁性材料から形成されたコア71とを備える。コア71は、アッパディスク31に向い合って位置する開弁用コア71qと、ロアディスク21に向い合って位置する閉弁用コア71pとから構成されている。コア71は、開弁用コア71qを、磁束の流れ方向の直交平面で切断した時の最小断面積Aqが、閉弁用コア71pを、磁束の流れ方向の直交平面で切断した時の最小断面積Apよりも大きくなるように形成されている。
【0053】
図8は、図7中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。図8を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石70のコイル72に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、開弁用コア71qおよびアッパディスク31の間と、閉弁用コア71pおよびロアディスク21の間とに、それぞれ磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印121および122に示す方向に磁束が流れる。
【0054】
磁束(Φ)は、磁束密度(B)およびコアの断面積(A)を用いて、Φ=B×Aで表わされる。本実施の形態では、開弁用コア71qの最小断面積Aqが、閉弁用コア71pの最小断面積Apよりも大きいため、アッパディスク31に流れる磁束が、ロアディスク21に流れる磁束よりも大きくなる。このため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル72への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0055】
また、アッパディスク31に流れる磁束をロアディスク21に流れる磁束よりも大きくするため、開弁用コア71qを、相対的に大きい透磁率を有する材料により形成し、閉弁用コア71pを、相対的に小さい透磁率を有する材料により形成しても良い。この場合、開弁用コア71qの方が、閉弁用コア71pよりも磁束が流れ易くなり、コイル72への電流供給によって、アッパディスク31およびロアディスク21を、開弁位置に向けて揺動させることができる。
【0056】
この発明の実施の形態3における電磁駆動弁では、電磁石70は、モノコイルとしてのコイル72が旋回され、アッパディスク31およびロアディスク21のそれぞれとの間で矢印121および122に示す方向に磁束が通る磁気回路が形成される第1および第2のコア部としての開弁用コア71qおよび閉弁用コア71pをさらに有する。矢印121に示す方向に直交する平面で切断された時の開弁用コア71qの最小断面積Aqと、矢印122に示す方向に直交する平面で切断された時の閉弁用コア71pの最小断面積Apとが異なる。あるいは、開弁用コア71qを形成する材料の透磁率と、閉弁用コア71pを形成する材料の透磁率とが異なる。
【0057】
このように構成された、この発明の実施の形態3における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、実施の形態1から3で説明した電磁石の構造が適当に組み合わされて、電磁駆動弁が構成されていても良い。
【0059】
(実施の形態4)
図9は、この発明の実施の形態4における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0060】
図9を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石75が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石75は、モノコイルからなるコイル77と、磁性材料から形成されたコア76とを備える。電磁石75は、アッパディスク31とロアディスク21との間でこれらのディスクに平行に延在する平面に対して、上下対称の形状を有する。つまり、その平面を境に、アッパディスク31側およびロアディスク21側で同様の形状を有する。電磁石75は、アッパディスク31の表面31aに向い合う吸着面76aと、ロアディスク21の表面21aに向い合う吸着面76bとを有する。
【0061】
電磁石75による電磁力が加わっていない状態で、アッパディスク31およびロアディスク21は、アッパトーションバー36およびロアトーションバー26によって、図中の中立位置に位置決めされる。この中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置よりも、駆動弁14の往復運動方向に距離L3だけ開弁位置の方に寄った位置である。このような構成により、アッパディスク31およびロアディスク21が中立位置に位置決めされた状態で、アッパディスク31の表面31aと電磁石75の吸着面76aとの間の隙間は、ロアディスク21の表面21aと電磁石75の吸着面76bとの間の隙間よりも小さくなる。
【0062】
図10は、図9中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0063】
図10を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石75のコイル77に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、コア76と、アッパディスク31およびロアディスク21とのそれぞれの間に、磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印126および127に示す方向に磁束が流れる。
【0064】
これにより、アッパディスク31を、電磁石60の吸着面61aに引き付ける電磁力と、ロアディスク21を、電磁石60の吸着面61bに引き寄せる電磁力とが発生する。本実施の形態では、吸着面76aと表面31aとの間の隙間が、吸着面76bと表面21aとの間の隙間よりも小さいため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル77への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0065】
この発明の実施の形態4における電磁駆動弁では、アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間にある中立位置に保持されている。モノコイルとしてのコイル77への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、アッパディスク31およびロアディスク21に作用する。中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている。
【0066】
このように構成された、この発明の実施の形態4における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、実施の形態4における電磁駆動弁は、実施の形態1から3で説明した電磁石が適当に組み込まれて構成されていても良い。
【0068】
(実施の形態5)
図11は、この発明の実施の形態5における電磁駆動弁を示す模式図である。図11を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石80が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石80は、相対的に駆動弁14に近い位置に配置された電磁石81と、相対的に駆動弁14に遠い位置に配置された電磁石82とが組み合わされて構成されている。電磁石81は、実施の形態1から3における電磁石60、65および70のいずれかと同様の形状を有し、電磁石82は、実施の形態4における電磁石75と同様の形状を有する。電磁石81および82には、モノコイルからなるコイル83が旋回されている。なお、コイル83の巻き方は、特定の方法に限定されず、図中の縦、横いずれの方向に巻き付けても良い。
【0069】
このように構成された、この発明の実施の形態5における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、電磁石82を電磁石81に組み合わせることで、アッパディスク31およびロアディスク21に作用させる電磁力を増大させることができる。これにより、駆動力の向上を図ることができる。
【0070】
(実施の形態6)
図12は、この発明の実施の形態6における電磁駆動弁を示す断面図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0071】
図12を参照して、本実施の形態では、図1中のロアディスク21が設けられておらず、アッパディスク31のみが設けられている。下部ステム12mの外周面には、鍔状のロアリテーナ88が設けられている。シリンダヘッド41には、頂面側に開口する開口部87が形成されている。開口部87には、開口部87の底面とロアリテーナ88との間に挟まれてロアスプリング86が収容されている。ロアスプリング86は、図1中のロアトーションバー26に代わって、駆動弁14を閉弁位置に向けて付勢している。
【0072】
ディスク支持台51には、電磁石90が取り付けられている。電磁石90は、アッパディスク31の上下にそれぞれ位置する閉弁用コア94および開弁用コア93と、これらのコアに旋回されたモノコイルからなるコイル92とから構成されている。閉弁用コア94および開弁用コア93は、実施の形態1から3における電磁石60、65および70のように、支持端33とコアとの間の距離が互いに異なっていたり、コイル92の巻き数が互いに異なっていたり、コアの最小断面積やコア材料の透磁率が互いに異なっていたりする。また、電磁石90がこのような形状に形成されていない場合であっても、アッパディスク31が始動時にアッパトーションバー36およびロアスプリング86によって保持される位置が、実施の形態4で説明した中立位置となるように、電磁駆動弁が構成されていても良い。
【0073】
このように構成された、この発明の実施の形態6における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の実施の形態1における電磁駆動弁を示す断面図である。
【図2】図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。
【図3】図1中の電磁石を示す斜視図である。
【図4】図1中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態2における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図6】図5中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態3における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図8】図7中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態4における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図10】図9中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図11】この発明の実施の形態5における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態6における電磁駆動弁を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 電磁駆動弁、21 ロアディスク、31 アッパディスク、23,33 支持端、60,65,70,75,80,90 電磁石、62,67,72,77,83,92 コイル、66y,66w 軸部、71p,94 閉弁用コア、71q,93 開弁用コア。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、電磁駆動弁に関し、より特定的には、モノコイルにより構成された電磁石を備える電磁駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁駆動弁に関して、たとえば、米国特許第6467441号明細書には、電磁力とスプリングとの協働によって内燃機関のバルブが作動する電磁アクチュエータが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された電磁アクチュエータは、回転駆動式と呼ばれており、回転自在に支持された揺動アームの揺動運動から直線運動を取り出し、バルブを開弁位置と閉弁位置との間で往復運動させている。揺動アームの両側には、鉄芯とその鉄芯の周りに巻かれたコイルとから構成される電磁石が1つずつ配置されている。揺動アームを揺動させるため、これらの電磁石に交互に電流供給し、揺動アームの上下に電磁力を作用させている。
【0003】
また、特開2002−115515号公報には、車両への搭載性を向上させるとともに、重量の低減およびコストの削減を図ることを目的とした電磁駆動弁用アクチュエータが開示されている(特許文献2)。また、特開2001−214764号公報には、電磁石と可動子との衝突速度を小さくして、騒音や振動を抑え、電力消費を少なくすることを目的とした内燃機関の動弁装置が開示されている(特許文献3)。
【0004】
また、特開平11−141319号公報には、一対の電磁石に同等の励磁電流を供給しつつ、開弁方向と閉弁方向とに同等の動作特性を実現することを目的とした内燃機関の電磁駆動弁が開示されている(特許文献4)。特許文献2から4に開示された電磁駆動弁用アクチュエータ等は、特許文献1に開示された回転駆動式に対して並進駆動式と呼ばれており、バルブのステムに設けられた鍔状のアーマチャに電磁力を直接、作用させ、バルブを往復運動させている。
【特許文献1】米国特許第6467441号明細書
【特許文献2】特開2002−115515号公報
【特許文献3】特開2001−214764号公報
【特許文献4】特開平11−141319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された回転駆動式の電磁アクチュエータでは、始動前、揺動アームの揺動支点に設けられたトーションバーの弾性力と、バルブのステムに設けられた渦巻きばねの弾性力とによって、揺動アームが、開弁位置と閉弁位置との中間位置に位置決めされている。電磁アクチュエータを初期駆動させる場合、上下に配置された電磁石のいずれか一方に電流供給する。すると、その電流供給した電磁石で、揺動アームを引き寄せる電磁力が発生し、揺動アームが揺動し始める。
【0006】
しかしながら、揺動アームの上下に配置された電磁石が、モノコイル(連続する一続きのコイル)から構成されている場合、電磁石に電流供給すると、揺動アームの上下に等しい大きさの電磁力が作用する。この場合、揺動アームが、中間位置に静止したままとなり、電磁アクチュエータを初期駆動させることができない。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、初期駆動を容易に行なうことができる電磁駆動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の1つの局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、可動子の第1および第2の位置に作用する。電磁石は、第1の位置および支持部間の距離と、第2の位置および支持部間の距離とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【0009】
なお、モノコイルとは、連続する一続きのコイルを指す(以下に続くモノコイルに関しても、同様に理解する)。モノコイルに電流を供給すると、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、同時に可動子に作用する。また、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置とは、開弁位置からの距離と閉弁位置からの距離とが等しくなる、開弁位置と閉弁位置との中心位置を指す(以下に続く中間位置に関しても、同様に理解する)。
【0010】
このように構成された電磁駆動弁によれば、可動子が中間位置に保持された始動前の状態で、電磁石と可動子との間の隙間が、開弁方向の電磁力が作用する第1の位置と、閉弁方向の電磁力が作用する第2の位置とで異なる大きさとなる。これにより、モノコイルへの電流供給によって、電磁石と可動子との間の隙間が小さい方の位置では、相対的に大きい電磁力が可動子に作用し、電磁石と可動子との間の隙間が大きい方の位置では、相対的に小さい電磁力が可動子に作用する。したがって、可動子を、始動前に保持された中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0011】
この発明の別の局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を、開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力をそれぞれ生じさせる第1および第2の磁束が、可動子内に流れる。電磁石は、第1の磁束と第2の磁束とが異なる大きさとなるように設けられている。
【0012】
このように構成された電磁駆動弁によれば、開弁方向の電磁力を発生させる第1の磁束と、閉弁方向の電磁力を発生させる第2の磁束とが異なる大きさとなるように、電磁石が設けられている。このため、モノコイルへの電流供給により、可動子内に大きい磁束が流れた方では、相対的に大きい電磁力が発生し、小さい磁束が流れた方では、相対的に小さい電磁力が発生する。したがって、可動子を、始動前に保持された中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0013】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1のコア部に旋回されるモノコイルの巻き数と、第2のコア部に旋回されるモノコイルの巻き数とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、モノコイルの巻き数の多い方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、モノコイルの巻き数が少ない方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、モノコイルの巻き数に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0014】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1のコア部を形成する材料の透磁率と、第2のコア部を形成する材料の透磁率とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、透磁率が大きい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、透磁率が小さい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、コア部を形成する材料の透磁率に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0015】
また好ましくは、電磁石は、モノコイルが旋回され、可動子との間で第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有する。第1の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の第1のコア部の最小断面積と、第2の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の第2のコア部の最小断面積とが異なる。このように構成された電磁駆動弁によれば、最小断面積が大きい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に大きくなり、最小断面積が小さい方のコア部では、そのコア部と可動子との間で流れる磁束が、相対的に小さくなる。したがって、磁束の通り道となるコア部の最小断面積に差を設けることによって、初期駆動が容易な電磁駆動弁を実現することができる。
【0016】
この発明のさらに別の局面に従った電磁駆動弁は、モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、回転自在に支持された支持部を有し、電磁力が作用されて、支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備える。可動子は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間にある中立位置に保持されている。モノコイルへの電流供給により、可動子を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、可動子に作用する。中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている。
【0017】
このように構成された電磁駆動弁によれば、可動子が中立位置に保持された始動前の状態で、電磁石と可動子との間の隙間が、開弁方向の電磁力が作用する位置と、閉弁方向の電磁力が作用する位置とで異なる大きさとなる。これにより、モノコイルへの電流供給によって、電磁石と可動子との間の隙間が小さい方の位置では、相対的に大きい電磁力が可動子に作用し、電磁石と可動子との間の隙間が大きい方の位置では、相対的に小さい電磁力が可動子に作用する。したがって、可動子を、始動前に保持された中立位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方の側に揺動させ始めることができる。このため、電磁駆動弁の初期駆動を容易に行なうことができる。
【0018】
また、可動子は、互いに間隔を隔てて複数、設けられている。電磁石は、複数の可動子の間に配置されている。このような並行リンク機構を採用した電磁駆動弁においても、上述のいずれかに記載の効果を同様に得ることができる。また同時に、電磁駆動弁の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明に従えば、初期駆動を容易に行なうことができる電磁駆動弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における電磁駆動弁を示す断面図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関の機関バルブ(吸気弁または排気弁)を構成している。本実施の形態では、電磁駆動弁が排気弁を構成している場合について説明を行なうが、吸気弁を構成する場合であっても、電磁駆動弁は、同様の構造を備える。
【0022】
図1を参照して、電磁駆動弁10は、回転駆動式の電磁駆動弁であり、その運動機構には、並行リンク機構が適用されている。
【0023】
電磁駆動弁10は、一方向に延びるステム12を有する駆動弁14と、ステム12の異なる位置に連結され、作用された電磁力および弾性力によって揺動するアッパディスク31およびロアディスク21と、その電磁力を発生する電磁石60と、アッパディスク31およびロアディスク21にそれぞれ設けられ、これらのディスクに弾性力を作用させるアッパトーションバー36およびロアトーションバー26とを備える。電磁石60は、モノコイルからなるコイル62によって構成されている。駆動弁14は、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動運動を受けて、ステム12が延びる方向(矢印101に示す方向)に往復運動する。
【0024】
駆動弁14は、排気ポート17が形成されたシリンダヘッド41に搭載されている。シリンダヘッド41の排気ポート17から図示しない燃焼室に連通する位置には、バルブシート42が設けられている。駆動弁14は、さらに、ステム12の先端に形成された傘部13を有する。駆動弁14の往復運動に伴って、傘部13がバルブシート42に密着したり、バルブシート42から離脱することによって、排気ポート17の開閉が行なわれる。つまり、ステム12が上昇することによって、駆動弁14が閉弁位置へと位置決めされ、ステム12が下降することによって、駆動弁14が開弁位置へと位置決めされる。
【0025】
ステム12は、傘部13から連続する下部ステム12mと、ラッシュアジャスタ16を介して下部ステム12mに接続された上部ステム12nとから構成されている。ラッシュアジャスタ16は、上部ステム12nと下部ステム12mとの間で緩衝部材として機能し、縮みやすく伸びにくい特性を有する。ラッシュアジャスタ16は、閉弁位置にある駆動弁14の位置決め誤差を吸収し、傘部13をバルブシート42に確実に密着させる。下部ステム12mには、その外周面から突出する連結ピン12pが形成されており、上部ステム12nには、その外周面から突出する連結ピン12qが、連結ピン12pから離れた位置で形成されている。
【0026】
シリンダヘッド41には、下部ステム12mを軸方向に摺動可能なように案内するバルブガイド43が設けられており、バルブガイド43から離れた位置には、上部ステム12nを軸方向に摺動可能なように案内するステムガイド45が設けられている。バルブガイド43およびステムガイド45は、ステム12との高速摺動に耐えられるように、たとえば、ステンレスなどの金属材料から形成されている。シリンダヘッド41の頂面には、ステム12と間隔を隔てた位置に、ディスク支持台51が取り付けられている。
【0027】
図2は、図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。図1および図2を参照して、ロアディスク21は、支持端23および連結端22を有し、支持端23から連結端22に向けてステム12に交差する方向に延びている。支持端23と連結端22との間には、互いに反対側に面する表面21aおよび21bが形成されている。支持端23には、支持端23から連結端22に向かう方向の直交方向に延び、ロアディスク21の揺動中心となる中心軸25が規定されている。支持端23には、中心軸25に沿って延びる貫通孔27が形成されている。連結端22には、切欠き部29が形成されている。切欠き部29の互いに向い合う壁面には、長孔24が形成されている。
【0028】
アッパディスク31は、ロアディスク21と同様の形状を備え、ロアディスク21の支持端23、連結端22、表面21a、表面21b、切欠き部29、長孔24、貫通孔27および中心軸25に対応して、支持端33、連結端32、表面31b、表面31a、切欠き部39、長孔34、貫通孔37および中心軸35を有する。
【0029】
ロアディスク21の連結端22は、長孔24に連結ピン12pが挿通されることによって、下部ステム12mに対して揺動自在に連結されている。アッパディスク31の連結端32は、長孔34に連結ピン12qが挿通されることによって、上部ステム12nに対して揺動自在に連結されている。ロアディスク21の支持端23は、貫通孔27に挿入されたロアトーションバー26を介して、ディスク支持台51に揺動自在に支持されている。アッパディスク31の支持端33は、貫通孔37に挿入されたアッパトーションバー36を介して、ディスク支持台51に揺動自在に支持されている。このような構成により、ロアディスク21およびアッパディスク31をそれぞれ、中心軸25および35を中心に揺動させ、駆動弁14を往復運動させる。
【0030】
ロアトーションバー26により、ロアディスク21には、中心軸25を中心に時計周りに付勢する弾性力が作用している。アッパトーションバー36により、アッパディスク31には、中心軸35を中心に反時計周りに付勢する弾性力が作用している。電磁石60による電磁力が加わっていない状態で、ロアディスク21およびアッパディスク31は、ロアトーションバー26およびアッパトーションバー36によって、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に位置決めされる。
【0031】
図3は、図1中の電磁石を示す斜視図である。図1および図3を参照して、ディスク支持台51には、アッパディスク31とロアディスク21との間に位置するように電磁石60が設けられている。電磁石60は、モノコイルからなるコイル62と、磁性材料から形成されたコア61とを備える。コア61は、コイル62が旋回される軸部61yを有する。
【0032】
コア61は、アッパディスク31に向い合って位置する開弁用コア61qと、ロアディスク21に向い合って位置する閉弁用コア61pとから構成されている。軸部61yの中心を通り、表面31aおよび表面21aに平行に延在する平面を想定すると、閉弁用コア61pおよび開弁用コア61qは、その平面を中心に上下対称の形状を有する。閉弁用コア61pと開弁用コア61qとは、その平面を境に、ロアディスク21が支持端23から連結端22に向けて延びる方向(アッパディスク31が支持端33から連結端32に向けて延びる方向)にずれるように、組み合わされている。
【0033】
開弁用コア61qは、表面31aに向い合う吸着面61aを有し、閉弁用コア61pは、表面21aに向い合う吸着面61bを有する。アッパディスク31が吸着面61aに引き寄せられた状態で、支持端33から連結端32に向かう方向の吸着面61aの中心位置と合致する表面31a上の位置をX1とし、ロアディスク21が吸着面61bに引き寄せられた状態で、支持端23から連結端22に向かう方向の吸着面61bの中心位置と合致する表面21a上の位置をX2とする。本実施の形態では、電磁石60で発生した電磁力が、アッパディスク31の位置X1およびロアディスク21の位置X2に作用するとみなす。
【0034】
開弁用コア61qおよび閉弁用コア61pは、支持端33にある中心軸35から位置X1までの距離L1が、支持端23にある中心軸25から位置X2までの距離L2よりも小さくなるように、互いに組み合わされている。つまり、開弁用コア61qは、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動中心から相対的に近い位置に設けられており、閉弁用コア61pは、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動中心から相対的に遠い位置に設けられている。このような構成により、アッパディスク31およびロアディスク21が、中間位置に位置決めされた状態で、吸着面61aと表面31aとの間の隙間C1は、吸着面61bと表面21aとの間の隙間C2よりも小さくなる。
【0035】
開弁用コア61qと閉弁用コア61pとがずれて組み合わされた構成により、開弁用コア61qから露出するように、閉弁用コア61pに表面64が形成され、閉弁用コア61pから露出するように、開弁用コア61qに表面63が形成される。これにより、ずれた構成が採られていないコアと比較して、コア61の表面積を増大させることができる。この場合、電磁駆動弁10の駆動時に、電磁石60の冷却性能を向上させることができる。
【0036】
図4は、図1中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。なお、以下に続く図4から図11では、図1中のラッシュアジャスタ16等、詳細な構造が省略されて描かれている。
【0037】
図1および図4を参照して、電磁駆動弁10の始動前、アッパディスク31およびロアディスク21は、アッパトーションバー36およびロアトーションバー26によって、中間位置に保持されている。電磁駆動弁10を始動させるため、電磁石60のコイル62に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、開弁用コア61qおよびアッパディスク31の間、閉弁用コア61pおよびロアディスク21の間に、それぞれ磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印111および112に示す方向に磁束が流れる。
【0038】
これにより、アッパディスク31を、電磁石60の吸着面61aに引き付ける電磁力と、ロアディスク21を、電磁石60の吸着面61bに引き寄せる電磁力とが発生する。電磁力は、電磁石60との間の距離が小さい位置で、相対的に大きく作用し、電磁石60との間の距離が大きい位置で、相対的に小さく作用する。本実施の形態では、吸着面61aと表面31aとの間の隙間C1は、吸着面61bと表面21aとの間の隙間C2よりも小さいため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0039】
なお、アッパディスク31およびロアディスク21を、それぞれ中心軸35および25を中心に回転する「てこ」と見ると、図1中のL1<L2の関係から、ロアディスク21に作用した電磁力が、アッパディスク31に作用した電磁力よりも、より効果的に駆動弁14を往復運動させる力としてステム12に作用する。しかしながら、電磁石およびディスク間の距離によって生じる電磁力の変化の度合いは、上述の「てこの原理」に起因して生じる差よりも格段に大きいため、始動時、駆動弁14は、中間位置から開弁位置に向けて揺動し始める。
【0040】
また、駆動弁14が、閉弁位置から開弁位置に向けて運動する時、燃焼室には、爆発工程によるシリンダ内圧が生じている。このため、そのシリンダ内圧に打ち勝つだけの引き付け力を、電磁石60で発生させる必要がある。しかしながら、本実施の形態では、駆動弁14が閉弁位置から開弁位置に向けて運動する時に、より大きい電磁力でアッパディスク31を電磁石60に引き寄せることができる。このため、コイル62に供給する電流値を小さく抑えたまま、駆動弁14を安定して運動させることができ、消費電力の節減を図ることができる。このような効果は、駆動弁14が排気弁を構成している場合に、始動時に揺動し始める方向が、閉弁位置から開弁位置に向かう方向と合致すれば得ることができ、以下に続く実施の形態でも同様に得ることができる。
【0041】
この発明の実施の形態1における電磁駆動弁10は、モノコイルとしてのコイル62を有し、電磁力を発生する電磁石60と、回転自在に支持された支持部としての支持端33および23を有し、電磁力が作用されて、支持端33および23を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子としてのアッパディスク31およびロアディスク21とを備える。アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置に保持されている。コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、アッパディスク31およびロアディスク21の第1および第2の位置としての位置X1およびX2に作用する。電磁石60は、位置X1および支持端33間の距離L1と、位置X2および支持端23間の距離L2とが、異なる大きさとなるように設けられている。
【0042】
このように構成された、この発明の実施の形態1における電磁駆動弁10によれば、コイル62がモノコイルにより構成されているにもかかわらず、コイル62に電流供給するだけで、アッパディスク31およびロアディスク21の揺動運動を開始させることができる。これにより、複雑な制御が伴わない容易な初期駆動を実現することができる。また、モノコイルからなるコイル62を用いることで、開弁用および閉弁用の2つの電磁石を設ける場合と比較して、コストウェイトが高い電磁石の部品点数を1/2に削減できる。また、コイル62への電流供給のみで良いため、EDU(electronic driver unit)に設けられ、コイル1つに対して1つ必要となる回路素子の数を、電磁石と同様、1/2に削減できる。したがって、電磁駆動弁10の製造コストを大幅に削減することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0044】
図5を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石65が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石65は、モノコイルからなるコイル67と、磁性材料から形成されたコア66とを備える。コア66は、アッパディスク31に向い合って位置し、支持端33から連結端32に向かう方向の直交方向に延びる軸部66yと、ロアディスク21に向い合って位置し、支持端23から連結端22に向かう方向の直交方向に延びる軸部66wとを有する。
【0045】
コイル67は、まず軸部66yの周りを旋回し、さらに軸部66wの周りを旋回するようにコア66に設けられており、軸部66yに旋回された部分67qと、軸部66wに旋回された部分67pとから構成されている。コイル67は、部分67qの巻き数が、部分67pの巻き数よりも多くなるようにコア66に設けられている。なお、コイル67の巻き方は、上記の方法に限定されない。
【0046】
図6は、図5中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。図6を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石65のコイル67に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、コア66と、アッパディスク31およびロアディスク21とのそれぞれの間に、磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印116および117に示す方向に磁束が流れる。このとき、アッパディスク31に流れる磁束は、軸部66yに旋回されたコイル67の部分67qによって形成され、ロアディスク21に流れる磁束は、軸部66wに旋回されたコイル67の部分67pによって形成される。
【0047】
一方、磁束(Φ)は、磁気回路の磁気抵抗(Rm)、電流(I)およびコイルの巻き数(N)を用いて、Φ=(I×N)/Rmで表わされる。本実施の形態では、部分67qの巻き数が、部分67pの巻き数よりも多いため、アッパディスク31に流れる磁束が、ロアディスク21に流れる磁束よりも大きくなる。
【0048】
さらに、電磁力(F)は、空気の透磁率(μ0)、コアの断面積(A)および磁束(Φ)を用いて、F=Φ2/(μ0×A)で表わされる。このため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル62への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0049】
この発明の実施の形態2における電磁駆動弁では、電磁石65は、モノコイルとしてのコイル67が旋回され、アッパディスク31およびロアディスク21のそれぞれとの間で、矢印116および117に示す方向に磁束が通る磁気回路が形成される第1および第2のコア部としての軸部66yおよび軸部66wをさらに有する。軸部66yに旋回されるコイル67の巻き数と、軸部66wに旋回されるコイル67の巻き数とが異なる。
【0050】
このように構成された、この発明の実施の形態2における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図7は、この発明の実施の形態3における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0052】
図7を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石70が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石70は、モノコイルからなるコイル72と、磁性材料から形成されたコア71とを備える。コア71は、アッパディスク31に向い合って位置する開弁用コア71qと、ロアディスク21に向い合って位置する閉弁用コア71pとから構成されている。コア71は、開弁用コア71qを、磁束の流れ方向の直交平面で切断した時の最小断面積Aqが、閉弁用コア71pを、磁束の流れ方向の直交平面で切断した時の最小断面積Apよりも大きくなるように形成されている。
【0053】
図8は、図7中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。図8を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石70のコイル72に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、開弁用コア71qおよびアッパディスク31の間と、閉弁用コア71pおよびロアディスク21の間とに、それぞれ磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印121および122に示す方向に磁束が流れる。
【0054】
磁束(Φ)は、磁束密度(B)およびコアの断面積(A)を用いて、Φ=B×Aで表わされる。本実施の形態では、開弁用コア71qの最小断面積Aqが、閉弁用コア71pの最小断面積Apよりも大きいため、アッパディスク31に流れる磁束が、ロアディスク21に流れる磁束よりも大きくなる。このため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル72への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0055】
また、アッパディスク31に流れる磁束をロアディスク21に流れる磁束よりも大きくするため、開弁用コア71qを、相対的に大きい透磁率を有する材料により形成し、閉弁用コア71pを、相対的に小さい透磁率を有する材料により形成しても良い。この場合、開弁用コア71qの方が、閉弁用コア71pよりも磁束が流れ易くなり、コイル72への電流供給によって、アッパディスク31およびロアディスク21を、開弁位置に向けて揺動させることができる。
【0056】
この発明の実施の形態3における電磁駆動弁では、電磁石70は、モノコイルとしてのコイル72が旋回され、アッパディスク31およびロアディスク21のそれぞれとの間で矢印121および122に示す方向に磁束が通る磁気回路が形成される第1および第2のコア部としての開弁用コア71qおよび閉弁用コア71pをさらに有する。矢印121に示す方向に直交する平面で切断された時の開弁用コア71qの最小断面積Aqと、矢印122に示す方向に直交する平面で切断された時の閉弁用コア71pの最小断面積Apとが異なる。あるいは、開弁用コア71qを形成する材料の透磁率と、閉弁用コア71pを形成する材料の透磁率とが異なる。
【0057】
このように構成された、この発明の実施の形態3における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、実施の形態1から3で説明した電磁石の構造が適当に組み合わされて、電磁駆動弁が構成されていても良い。
【0059】
(実施の形態4)
図9は、この発明の実施の形態4における電磁駆動弁を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0060】
図9を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石75が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石75は、モノコイルからなるコイル77と、磁性材料から形成されたコア76とを備える。電磁石75は、アッパディスク31とロアディスク21との間でこれらのディスクに平行に延在する平面に対して、上下対称の形状を有する。つまり、その平面を境に、アッパディスク31側およびロアディスク21側で同様の形状を有する。電磁石75は、アッパディスク31の表面31aに向い合う吸着面76aと、ロアディスク21の表面21aに向い合う吸着面76bとを有する。
【0061】
電磁石75による電磁力が加わっていない状態で、アッパディスク31およびロアディスク21は、アッパトーションバー36およびロアトーションバー26によって、図中の中立位置に位置決めされる。この中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置よりも、駆動弁14の往復運動方向に距離L3だけ開弁位置の方に寄った位置である。このような構成により、アッパディスク31およびロアディスク21が中立位置に位置決めされた状態で、アッパディスク31の表面31aと電磁石75の吸着面76aとの間の隙間は、ロアディスク21の表面21aと電磁石75の吸着面76bとの間の隙間よりも小さくなる。
【0062】
図10は、図9中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0063】
図10を参照して、電磁駆動弁を始動させるため、電磁石75のコイル77に所定の方向に流れる電流を供給する。すると、コア76と、アッパディスク31およびロアディスク21とのそれぞれの間に、磁気回路が形成され、アッパディスク31およびロアディスク21に、矢印126および127に示す方向に磁束が流れる。
【0064】
これにより、アッパディスク31を、電磁石60の吸着面61aに引き付ける電磁力と、ロアディスク21を、電磁石60の吸着面61bに引き寄せる電磁力とが発生する。本実施の形態では、吸着面76aと表面31aとの間の隙間が、吸着面76bと表面21aとの間の隙間よりも小さいため、アッパディスク31に作用する電磁力が、ロアディスク21に作用する電磁力よりも大きくなる。結果、コイル77への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアトーションバー26の弾性力に抗して、開弁位置に向けて揺動し始める。
【0065】
この発明の実施の形態4における電磁駆動弁では、アッパディスク31およびロアディスク21は、電磁力が作用されていない状態で、開弁位置と閉弁位置との間にある中立位置に保持されている。モノコイルとしてのコイル77への電流供給により、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁位置および閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、アッパディスク31およびロアディスク21に作用する。中立位置は、開弁位置と閉弁位置との間の中間位置から、開弁位置および閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている。
【0066】
このように構成された、この発明の実施の形態4における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、実施の形態4における電磁駆動弁は、実施の形態1から3で説明した電磁石が適当に組み込まれて構成されていても良い。
【0068】
(実施の形態5)
図11は、この発明の実施の形態5における電磁駆動弁を示す模式図である。図11を参照して、本実施の形態では、図1中の電磁石60に替えて、電磁石80が、アッパディスク31とロアディスク21との間に配置されている。電磁石80は、相対的に駆動弁14に近い位置に配置された電磁石81と、相対的に駆動弁14に遠い位置に配置された電磁石82とが組み合わされて構成されている。電磁石81は、実施の形態1から3における電磁石60、65および70のいずれかと同様の形状を有し、電磁石82は、実施の形態4における電磁石75と同様の形状を有する。電磁石81および82には、モノコイルからなるコイル83が旋回されている。なお、コイル83の巻き方は、特定の方法に限定されず、図中の縦、横いずれの方向に巻き付けても良い。
【0069】
このように構成された、この発明の実施の形態5における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、電磁石82を電磁石81に組み合わせることで、アッパディスク31およびロアディスク21に作用させる電磁力を増大させることができる。これにより、駆動力の向上を図ることができる。
【0070】
(実施の形態6)
図12は、この発明の実施の形態6における電磁駆動弁を示す断面図である。本実施の形態における電磁駆動弁は、実施の形態1における電磁駆動弁10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0071】
図12を参照して、本実施の形態では、図1中のロアディスク21が設けられておらず、アッパディスク31のみが設けられている。下部ステム12mの外周面には、鍔状のロアリテーナ88が設けられている。シリンダヘッド41には、頂面側に開口する開口部87が形成されている。開口部87には、開口部87の底面とロアリテーナ88との間に挟まれてロアスプリング86が収容されている。ロアスプリング86は、図1中のロアトーションバー26に代わって、駆動弁14を閉弁位置に向けて付勢している。
【0072】
ディスク支持台51には、電磁石90が取り付けられている。電磁石90は、アッパディスク31の上下にそれぞれ位置する閉弁用コア94および開弁用コア93と、これらのコアに旋回されたモノコイルからなるコイル92とから構成されている。閉弁用コア94および開弁用コア93は、実施の形態1から3における電磁石60、65および70のように、支持端33とコアとの間の距離が互いに異なっていたり、コイル92の巻き数が互いに異なっていたり、コアの最小断面積やコア材料の透磁率が互いに異なっていたりする。また、電磁石90がこのような形状に形成されていない場合であっても、アッパディスク31が始動時にアッパトーションバー36およびロアスプリング86によって保持される位置が、実施の形態4で説明した中立位置となるように、電磁駆動弁が構成されていても良い。
【0073】
このように構成された、この発明の実施の形態6における電磁駆動弁によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の実施の形態1における電磁駆動弁を示す断面図である。
【図2】図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。
【図3】図1中の電磁石を示す斜視図である。
【図4】図1中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態2における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図6】図5中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態3における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図8】図7中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態4における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図10】図9中の電磁駆動弁の始動時の状態を示す模式図である。
【図11】この発明の実施の形態5における電磁駆動弁を示す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態6における電磁駆動弁を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 電磁駆動弁、21 ロアディスク、31 アッパディスク、23,33 支持端、60,65,70,75,80,90 電磁石、62,67,72,77,83,92 コイル、66y,66w 軸部、71p,94 閉弁用コア、71q,93 開弁用コア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、前記可動子の第1および第2の位置に作用し、
前記電磁石は、前記第1の位置および前記支持部間の距離と、前記第2の位置および前記支持部間の距離とが、異なる大きさとなるように設けられている、電磁駆動弁。
【請求項2】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を、前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力をそれぞれ生じさせる第1および第2の磁束が、前記可動子内に流れ、
前記電磁石は、前記第1の磁束と前記第2の磁束とが異なる大きさとなるように設けられている、電磁駆動弁。
【請求項3】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1のコア部に旋回される前記モノコイルの巻き数と、前記第2のコア部に旋回される前記モノコイルの巻き数とが異なる、請求項2に記載の電磁駆動弁。
【請求項4】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1のコア部を形成する材料の透磁率と、前記第2のコア部を形成する材料の透磁率とが異なる、請求項2または3に記載の電磁駆動弁。
【請求項5】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の前記第1のコア部の最小断面積と、前記第2の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の前記第2のコア部の最小断面積とが異なる、請求項2から4のいずれか1項に記載の電磁駆動弁。
【請求項6】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間にある中立位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、前記可動子に作用し、
前記中立位置は、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置から、前記開弁位置および前記閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている、電磁駆動弁。
【請求項7】
前記可動子は、互いに間隔を隔てて複数、設けられており、前記電磁石は、複数の前記可動子の間に配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の電磁駆動弁。
【請求項1】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、それぞれ、前記可動子の第1および第2の位置に作用し、
前記電磁石は、前記第1の位置および前記支持部間の距離と、前記第2の位置および前記支持部間の距離とが、異なる大きさとなるように設けられている、電磁駆動弁。
【請求項2】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を、前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力をそれぞれ生じさせる第1および第2の磁束が、前記可動子内に流れ、
前記電磁石は、前記第1の磁束と前記第2の磁束とが異なる大きさとなるように設けられている、電磁駆動弁。
【請求項3】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1のコア部に旋回される前記モノコイルの巻き数と、前記第2のコア部に旋回される前記モノコイルの巻き数とが異なる、請求項2に記載の電磁駆動弁。
【請求項4】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1のコア部を形成する材料の透磁率と、前記第2のコア部を形成する材料の透磁率とが異なる、請求項2または3に記載の電磁駆動弁。
【請求項5】
前記電磁石は、前記モノコイルが旋回され、前記可動子との間で前記第1および第2の磁束が通る磁気回路が、それぞれ形成される第1および第2のコア部をさらに有し、
前記第1の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の前記第1のコア部の最小断面積と、前記第2の磁束が流れる方向に直交する平面で切断された時の前記第2のコア部の最小断面積とが異なる、請求項2から4のいずれか1項に記載の電磁駆動弁。
【請求項6】
モノコイルを有し、電磁力を発生する電磁石と、
回転自在に支持された支持部を有し、前記電磁力が作用されて、前記支持部を中心に開弁位置と閉弁位置との間で揺動運動する可動子とを備え、
前記可動子は、前記電磁力が作用されていない状態で、前記開弁位置と前記閉弁位置との間にある中立位置に保持されており、前記モノコイルへの電流供給により、前記可動子を前記開弁位置および前記閉弁位置に運動させる方向の電磁力が、前記可動子に作用し、
前記中立位置は、前記開弁位置と前記閉弁位置との間の中間位置から、前記開弁位置および前記閉弁位置のいずれか一方にオフセットされている、電磁駆動弁。
【請求項7】
前記可動子は、互いに間隔を隔てて複数、設けられており、前記電磁石は、複数の前記可動子の間に配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の電磁駆動弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−152916(P2006−152916A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344450(P2004−344450)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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