説明

電磁駆動弁

【課題】 小型化が可能な電磁駆動弁を提供する。
【解決手段】 電磁駆動弁10は、弁軸としてのステム12を有し、ステム12が延びる方向に沿って往復する駆動弁14と、ステム12に揺動自在に連結された一方端22,32と、ディスクベース51に揺動自在に支持された他方端23,33とを有し、互いに距離を隔てて設けられた第1および第2の揺動部材としてのロアディスク21,アッパディスク31と、開閉兼用コイル62を有し、ロアディスク21およびアッパディスク31との間に配置される電磁石60と、駆動弁14、ロアディスク21およびアッパディスク31の少なくとも1つの位置を検出する検出部としての検出コイル501とを備える。開閉兼用コイル62に電流が流れることによって、ロアディスク21およびアッパディスク31に電磁力が作用する。検出コイル501が検出した駆動弁14の位置に応じて、開閉兼用コイル62に流れる電流量が決められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には電磁駆動弁に関し、より特定的には、内燃機関に用いられる回転駆動式の電磁駆動弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁駆動弁は、たとえば特開2000−130123号公報(特許文献1)、特開2000−130124号公報(特許文献2)に開示されている。また、移動体における変位検出装置が、実開昭63−126817号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特開2000−130123号公報
【特許文献2】特開2000−130124号公報
【特許文献3】実開昭63−126817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、アーマチャーシャフトのテーパ部の周囲にリング式センサを設置し、アーマチャーの移動速度および位置を検出し、フィードバック制御を行なう技術が開示されている。
【0004】
特許文献2では、電磁アクチュエータの駆動軸の変位を検出する変位センサが開示されており、渦電流変位センサを駆動軸の支持部材に取付ける構造が開示されている。
【0005】
特許文献3では、変位を検出する面にテーパ面を形成することが開示されている。
【0006】
従来の電磁駆動弁の分野においては、電磁駆動弁の変位を測定するための検出部を設けると、これにより電磁駆動弁が大型化するという問題があった。
【0007】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、小型化が可能な電磁駆動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った電磁駆動弁は電磁力と弾性力との協働により作動する電磁駆動弁であって、弁軸を有し、弁軸が延びる方向に沿って往復運動する駆動弁と、弁軸に揺動自在に連結された一方端と、ベース部材に揺動自在に連結された他方端とを有し、互いに間隔を隔てて設けられた第1および第2の揺動部材と、コイルを有し、第1の揺動部材と第2の揺動部材との間に配置される電磁石と、駆動弁ならびに第1および第2の揺動部材の少なくとも1つの位置を検出する検出部とを備える。コイルに電流が流れることによって第1および第2の揺動部材に電磁力が作用し、検出部が検出した駆動弁の位置に応じてコイルに流れる電流量が決められる。
【0009】
このように構成された電磁駆動弁では、駆動弁ならびに第1および第2の揺動部材の少なくとも1つの位置を検出する検出部が設けられる。そのため、駆動弁と電磁石とが直列に並び、その駆動弁の位置を検出する従来の装置に比べて小型化が可能となる。
【0010】
より好ましくは、駆動弁の一部の断面積が連続的に変化しており、その断面積が変化した部分の位置に基づいて検出部が駆動弁の位置を検出する。この場合、断面積が変化した部分の位置を検出部が検出するため、検出部により、より確実に駆動弁の位置を検出することができる。
【0011】
好ましくは、検出部は基準軸からの駆動弁のずれを検出する。この場合、ずれに応じて駆動弁を修正することができる。
【0012】
好ましくは、駆動弁の上端部に検出部が配置される。
【0013】
好ましくは、電磁石に引き寄せられた状態でコイルに流す電流の向きを逆転させると、電磁石に引き寄せられていた第1および第2の揺動部材のいずれか一方に、電磁石から離脱する方向に電磁力が作用するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
この発明に従えば、小型化が可能な電磁駆動弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った電磁駆動弁を示す断面図である。この実施の形態における電磁駆動弁は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関の機関バルブ(吸気弁または排気弁)を構成している。本発明では、電磁駆動弁が吸気弁を構成している場合について説明を行なうが、排気弁を構成する場合であっても、同様の構造を備える。
【0017】
図1を参照して、電磁駆動弁10は、回転駆動式の電磁駆動弁であり、その運動機構に平行リンク機構が採用されている。電磁駆動弁10は一方向に延びるステム12を有する駆動弁14と、ステム12の異なる位置に連結され、作用された電磁力および弾性力によって揺動するロアディスク21およびアッパディスク31と、その電磁力を発生する開閉兼用電磁石60(以下、単に電磁石60とも呼ぶ)と、その弾性力を有するロアスプリング26およびアッパスプリング36とを備える。駆動弁14は、ロアディスク21およびアッパディスク31の揺動運動を受けて、ステム12が延びる方向(矢印103に示す方向)に往復運動をする。
【0018】
駆動弁14は、吸気ポート17が形成されたシリンダヘッド41に搭載されている。シリンダヘッド41の吸気ポート17から図示しない燃焼室に連通する位置には、バルブシート42が設けられている。駆動弁14は、さらに、ステム12の先端に形成された傘部13を有する。駆動弁14の往復運動に伴って、傘部13がバルブシート42に密着したり、バルブシート42から離脱することによって、吸気ポート17の開閉が行なわれる。つまり、ステム12が上昇することによって駆動弁14が閉弁位置へと位置決めされ、ステム12が下降することによって、駆動弁14が開弁位置へと位置決めされる。
【0019】
ステム12は、傘部13から連続する下部ステム12mと、下部ステム12mに接続された上部ステム12nとから構成されている。下部ステム12mと上部ステム12nとの間にラッシュアジャスタを設けてもよい。上部ステム12nには、その外周面から突出する連結ピン12p,12qが互いに離れた位置に設けられている。
【0020】
シリンダヘッド41には、下部ステム12mを軸方向に摺動可能なように案内するバルブガイド43が設けられており、バルブガイド43から離れた位置には、上部ステム12nを軸方向に摺動可能なように案内するステムガイド45が設けられている。バルブガイド43およびステムガイド45は、ステム12との高速摺動に耐えられるように、たとえば、ステンレスなどの金属材料から形成されている。
【0021】
シリンダヘッド41上にはディスクベース51が配置される。ディスクベース51は、ロアディスク21およびアッパディスク31を保持し、かつ電磁石60を位置決めする作用を有する。ディスクベース51には、ロアディスク21およびアッパディスク31が回動可能に固定される。ロアディスク21およびアッパディスク31の一方端22,32が連結ピン12p,12qと接続され、他方端23,33がロアスプリング26およびアッパスプリング36を介して支点35に取付けられる。ロアディスク21とアッパディスク31の間には電磁石60が配置される。電磁石60は、コア体としての開閉兼用コア61と、その開閉兼用コア61に巻かれた開閉兼用コイル62とにより構成される。開閉兼用コイル62に電流が流されることにより磁界が生じ、この磁力によりロアディスク21およびアッパディスク31を駆動させる。ロアディスク21は表面21a,21bを有し、表面21bに向かい合うように開弁用永久磁石55が配置される。開弁用永久磁石55は表面21bに向かい合う吸着面55aを有する。アッパディスク31の表面31bに向かい合うように閉弁用永久磁石56がディスクベース51に配置される。閉弁用永久磁石56の吸着面56aが表面31bに向かい合う。開弁時には、開弁用永久磁石55とロアディスク21が接触し、閉弁時には閉弁用永久磁石56とアッパディスク31とが接触する。
【0022】
駆動弁14およびステム12の位置を検出するための検出コイル501がディスクベース51に設けられる。検出コイル501はステム12のうち断面積が連続的に変化するテーパ部511の位置を検出することで、ステム12がどの位置にあるかを検出する。なお、この実施の形態では検出コイル501をディスクベース51に設けているが、シリンダヘッド41に検出コイル501を設けることも可能である。検出コイル501はECU(エンジンコントロールユニット)502に接続される。ECU502は、検出コイル501から送られた信号をもとに、ステム12の位置を決定する。この位置情報がEDU(エンジン駆動ユニット)503に送られ、EDU503は開閉兼用コイル62に流す電流を決定し、所定の電流を開閉兼用コイル62に流す。
【0023】
この実施の形態では、2枚のフラップとしてのロアディスク21,アッパディスク31を結合するステム12にテーパ状の断面積が変化する部分(テーパ部511)を設けている。検出コイル501をテーパ部511の横に配置する。ステム12は角柱で構成し、検出コイル501に対向する部分に直線のテーパ部511を設ける。テーパ部511のみ、ステム本体よりも体格を大きくしてもよい。大きくした場合に、センサ感度をさらに向上させることができる。
【0024】
検出コイル501とテーパ部511との距離は検出の感度を上げるために近いほうが好ましいため、ステム12の加工前の外径(テーパをつける前の形状)と比べて50μm以内とすることが好ましい。すなわち、テーパ部511とステム12との外径の差は50μm以下であることが好ましい。なお、テーパ部511および検出コイル501をステムガイド45に設けてもよい。
【0025】
図2は、ステムを詳細に示す斜視図である。図2を参照して、上部ステム12nは角柱形状であり、その一部分が削られてノッチ形状とすることによりテーパ部511が設けられている。テーパ部511は直線状に形成されている。テーパ部511の長さはLであり、連続的に変化する厚みtを有する。検出コイル501は非接触方式でテーパ部511の側面積を測定し、この面積に応じて上部ステム12nの位置を検出する。
【0026】
図3は、テーパ部の長さと厚みとの関係を示すグラフである。図3を参照して、上部ステム12nの長さxが0からLの範囲がテーパ部であり、この部分では厚みtが連続的に変化している。なお、テーパ部の厚みは連続的に変化していれば、直線状に変化している必要はない。すなわち、図3で示すように、一次関数的にテーパ部の厚みが増加する場合だけでなく、下に凸の曲線または上に凸の曲線となるようにテーパ部の厚みが変化してもよい。
【0027】
図4は、アッパディスクのなす角度を示す側面図である。図4を参照して、アッパディスク11は中立位置から角度θの位置まで揺動(回動)することが可能である。アッパディスク31が角度θだけ回動した場合に、上部ステム12nの変位はxとなる。このとき、角度θは以下の式で表わされる。
【0028】
θ=tan-1(x/A)
図1の検出コイル501は上部ステム12nのリフト量x(図4参照)を検出し、このデータをECU502に送る。ECU502は上式より角度θを算出し、この角度情報をもとにEDU503が開閉兼用コイル62に電流を流す。
【0029】
図5は図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。図1および図5を参照して、ロアディスク21は、一方端22と他方端23とを有し、一方端22から他方端23に向けて、ステム12に交差する方向に延びている。ロアディスク21は、一方端22を含む位置において、矩形形状の表面21a,21bを有する平板状に形成されている。ロアディスク21は、他方端23に位置して、孔27が形成された中空円筒状に形成されている。ロアディスク21には、一方端22側に位置して、切欠き部28が形成されており、その切欠き部28の互いに向かい合う壁面には、長孔24が形成されている。
【0030】
アッパディスク31は、ロアディスク21と同様の構成を備え、ロアディスク21の一方端22、他方端23、表面21a、表面21b、切欠き部28および長孔24に対応して、一方端32、他方端33、表面31b、表面31a、孔37、切欠き部38および長孔34が形成されている。ロアディスク21およびアッパディスク31は、軟磁性材料から構成されている。
【0031】
ロアディスク21の一方端22は、孔27に連結ピン12pが挿通されることによって、上部ステム12nに対して揺動自在に連結されている。アッパディスク31の一方端32は、孔37に連結ピン12qが挿通されることによって、上部ステム12nに対して揺動自在に連結されている。シリンダヘッド41の頂面上には、ステム12と平行に延びるディスクベース51が設けられている。ロアディスク21の他方端はディスクベース51の支点25を中心に揺動自在に支持されており、アッパディスク31の他方端33は、ディスクベース51の支点35を中心に揺動自在に支持されている。このような構成により、ロアディスク21およびアッパディスク31を支点25,35をそれぞれ中心に揺動させることによって、駆動弁14を往復運動させることができる。
【0032】
他方端23,33には、ロアスプリング26およびアッパスプリング36がそれぞれ設けられている。ロアスプリング26により、ロアディスク21へは、支点25を中心に時計回りの方向に付勢する弾性力が加えられている。アッパスプリング36により、アッパディスク31には、支点35を中心に反時計回りの方向に付勢する弾性力が与えられている。後に説明する電磁石60による電磁力が加わっていない状態(中立状態)で、ロアディスク21およびアッパディスク31は、ロアスプリング26およびアッパスプリング36によって、開弁側の変位端と閉弁側の変位端との中間位置に位置決めされている。
【0033】
図6は、図1中の電磁石を示す斜視図である。図1および図6を参照して、ディスクベース51には、ロアディスク21とアッパディスク31との間に位置するように電磁石60が設けられている。電磁石60は、開閉兼用コイル62と、磁性材料から形成され、アッパディスク31の表面31aおよびロアディスク21の表面21aにそれぞれ向かい合う吸着面61a,61bを有する開閉兼用コア61とから構成されている。開閉兼用コア61は、ロアディスク21またはアッパディスク31の一方端から他方端に向かう方向に延びる軸部61pを有する。開閉兼用コイル62は、軸部61pのまわりを旋回するように設けられており、モノコイルから構成されている。
【0034】
ディスクベース51には、さらに、開弁用永久磁石55と、電磁石60とを挟んで開弁用永久磁石55の反対側に位置する閉弁用永久磁石56とが設けられている。開弁用永久磁石55は、ロアディスク21の表面21bに向かい合う吸着面55aを有する。吸着面55aと電磁石60の吸着面61bとの間には、ロアディスク21が揺動する空間72が規定されている。また、閉弁用永久磁石56は、アッパディスク31の表面31bに向かい合う吸着面56aを有する。吸着面56aと電磁石60の吸着面61aとの間には、アッパディスク31が揺動する空間71が規定されている。
【0035】
図7は、開弁側の変位端にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。図8は、中間位置にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。図9は、閉弁側の変位端にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。これらの図を用いて、電磁駆動弁10の動作について説明を行なう。
【0036】
図7を参照して、駆動弁14が開弁位置にある場合、開閉兼用コイル62には、開閉兼用コア61の軸部61pのまわりで矢印111に示す方向に流れる電流が供給されている。これにより、開閉兼用コア61に矢印112で示す方向に磁束が流れ、アッパディスク31を電磁石60の吸着面61aに引き寄せる電磁力が発生する。一方、ロアディスク21は、開弁用永久磁石55によって、吸着面55aに引き寄せられている。その結果、アッパディスク31およびロアディスク21は、支点25まわりに配置されたロアスプリング26の弾性力に抗して、図4で示す開弁側の変位端に保持されている。
【0037】
図8を参照して、開閉兼用コイル62への電流の供給を停止すると、電磁石60に発生していた電磁力が消滅する。これにより、アッパディスク31およびロアディスク21は、ロアスプリング26の弾性力によって、吸着面61a,55aからそれぞれ離脱し、中間位置に向けて揺動し始める。ロアスプリング26およびアッパスプリング36による弾性力は、アッパディスク31およびロアディスク21を中間位置に保持しようとする。このため、中間位置を越えた位置では、アッパスプリング36によってアッパディスク31およびロアディスク21に揺動方向と逆方向の力が作用する。しかし、アッパディスク31およびロアディスク21には、揺動する方向に沿って慣性力が作用しているため、アッパディスク31およびロアディスク21は、中間位置を越えた位置まで揺動する。
【0038】
図9を参照して、その中間位置を越えた位置において、再び開閉兼用コイル62に矢印111で示す方向に電流を流す。これにより、開閉兼用コア61に、矢印132で示す方向に磁束が流れ、ロアディスク21を電磁石60の吸着面61bに引き寄せる電磁力が発生する。一方、アッパディスク31は、閉弁用永久磁石56によって、吸着面56aに引き寄せられる。
【0039】
なお、電磁石60で発生する電磁力によって、アッパディスク31も電磁石60の吸着面61aに引き寄せられる。しかし、電磁力は、互いの間隔が狭いロアディスク21と電磁石60との間でより大きく作用するため、アッパディスク31およびロアディスク21は、中間位置を越えた位置から図9で示す閉弁側の変位端へと揺動する。
【0040】
以後、開閉兼用コイル62への電流供給の開始と停止とを、以上に説明したタイミングで繰返す。このとき、アッパディスク31およびロアディスク21を開弁側および閉弁側の変位端の間で揺動させ、この揺動運動を介して駆動弁14を往復運動させることができる。
【0041】
この往復運動の間、図1で示す検出コイル501は、テーパ部511の位置、すなわち、ステム12の位置を検出する。この検出した位置情報がECU502に送られ、ECU502は適切な情報をEDU503へ送る。その結果EDU503は必要な電流を開閉兼用コイル62に流す。これにより確実に開閉兼用コイル62に必要な電流量を供給することが可能となる。
【0042】
このように構成された、実施の形態1に従った電磁駆動弁10は、電磁力と弾性力との協働により作動する電磁駆動弁であって、弁軸としてのステム12を有し、ステム12が延びる方向に沿って往復運動する駆動弁14と、ステム12に揺動自在に連結された一方端22,32と、ベース部材としてのディスクベース51に揺動自在に支持された他方端23,33とを有し、互いに距離を隔てて設けられた第1および第2の揺動部材としてのロアディスク21およびアッパディスク31と、開閉兼用コイル62を有し、ロアディスク21とアッパディスク31との間に配置される電磁石60と、駆動弁14ならびにロアディスク21およびアッパディスク31の少なくとも1つの位置を検出する検出部としての検出コイル501とを備える。開閉兼用コイル62に電流が流れることによって、ロアディスク21およびアッパディスク31に電磁力が作用する。検出コイル501が検出した駆動弁14の位置に応じて、開閉兼用コイル62に流れる電流量が決定される。駆動弁14の一部のテーパ部511では、断面積が連続的に変化しており、そのテーパ部511の位置に基づいて検出コイル501が駆動弁14の位置を検出する。
【0043】
このように構成された実施の形態1に従った電磁駆動弁10では、検出コイル501によりステム12の位置を検出しているため、電磁駆動弁10の全高を低くできる。さらに、ステム12横に検出コイル501を設けているため、組付け性、調整性、メンテナンス性(交換性)に優れている。また、非接触式変位センサでは簡素で最もよく用いられるギャップセンサを用いることができ、コスト、対ノイズ性能、対環境性能、耐久性などを向上させることができる。
【0044】
さらに、電磁石60の真横にリフトセンサとしての検出コイル501を配置できるため、電磁石60から漏れる磁束の影響を受けにくく、リフト検出誤差(ノイズ)が小さくなり、その結果、電磁駆動弁(アクチュエータ)の通電時間の制御が向上する。その結果作動安定性が向上し、着座速度が低減し、低消費電力化を図ることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図10は、この発明の実施の形態2に従った上部ステムの斜視図である。図10を参照して、この発明の実施の形態2に従った上部ステム12nでは、本体が円柱形状に構成される。このテーパ部512には、図1で示す検出コイル501が向かい合う。テーパ部512の半径をrとし、テーパ部の最も細い位置からテーパ部各部分の距離をxとすると、半径rは以下の式で表わされる。
【0046】
r={(ax+b)/π}1/2
ここで、上述のaおよびbは、センサの出力特性と上部ステム12nの剛性とから決定する。テーパ部512の長さLは、以下の値以上とする。
【0047】
(上部ステム12nのストローク+2×検出コイル501の直径)
図11は図10で示すテーパ部の長さと断面積との関係を示すグラフである。図12は、図10のテーパ部の長さと半径との関係を示すグラフである。図11および図12を参照して、テーパ部の断面積はテーパ部の一方端から他方端に向かうにつれてリニアに増加する。すなわち、センサ出力の直線性が改善し、その結果、電磁駆動弁10の通電制御の精度が向上するという効果がある。
【0048】
(実施の形態3)
図13は、この発明の実施の形態3に従った電磁駆動弁の平面図である。図13を参照して、この発明の実施の形態3に従った電磁駆動弁10では、1対の検出コイル501を設けることにより、ステム12の軸ずれを求めている点で、実施の形態1に従った電磁駆動弁とは異なる。具体的には、駆動弁の中心軸としての基準軸14cと、ステム12との中心軸とのずれを2つの検出コイル501およびこれらの検出コイル501に接続されたセンスアンプ515を用いて測定する。センスアンプ515には、加算器515aが設けられ、加算器515aはECU502に接続されている。図13では、ステム12は矢印513で示す方向にずれている。検出コイル501はステム12に対向するように配置される。対向する検出コイル501の出力を加算器515aが加算し、最終出力とする。対向する検出コイル501のペアは2組以上あってもよく、その場合でも、それぞれの加算後の出力をさらに加算したものを最終出力とする。
【0049】
実施の形態3に従った電磁駆動弁10は基準軸14cからの駆動弁の一部である弁軸としてのステム12のずれを検出している。
【0050】
このように構成された、実施の形態3に従った電磁駆動弁10では、傾きなどによるステムの軸ずれがあっても正確な出力が得られる。
【0051】
また、検出コイルが増加するためS/N比が向上し、その結果、電磁駆動弁10の通電制御の精度が向上する。これにより、作動の安定性が向上し、着座速度が低減し、消費電力を低減することができる。
【0052】
(実施の形態4)
図14は、この発明の実施の形態4に従った電磁駆動弁の平面図である。図14を参照して、この発明の実施の形態4に従った電磁駆動弁10では、対向する検出コイル501のコイル出力の差分を出力する減算器515bを設けている点で、実施の形態3に従った電磁駆動弁10とは異なる。減算器515bは2つの検出コイル501の検出データの差を求め、その値をECU502に伝える。この差分信号に基づき、ECU502により、ステム12の検出コイル501に対する偏心量を演算し、検出コイル501の位置を考慮してステム12の傾き角度θを計算する。
【0053】
図15は、傾きを説明するためのステムの側面図である。傾き角度θから軸受であるステムガイド45に加わる抗力Rを、ステムガイド45の端部のモーメントの釣り合いから求めた近似式により演算する。これにより、軸受にかかる摺動抵抗Fを計算する。なお、傾き角度θ、振れ量z、抗力Rおよび摺動抵抗Fは以下の式に基づき算出する。
【0054】
【数1】

【0055】
このようにして求めた摺動抵抗を電磁駆動弁10の通電制御に使うモデル式に反映させることで制御の精度を大幅に向上させることができる。
【0056】
なお、式中の軸ずれy、軸受間距離Lk、上軸受からステム端部までの距離Lup、上ばね荷重Pusp、ステム径d、振れ量z、上ばねモーメントMusp、上ばね横力Huspは、それぞれ図15中で示されている。
【0057】
このように構成された電磁駆動弁10では、摺動抵抗をリアルタイムに測定することが可能となる。この摺動抵抗はリフト量によって変化する。そのため、電磁駆動弁の通電制御に使うモデル式の摺動抵抗部分に測定した摺動抵抗を反映させることで制御精度を大幅に向上でき、作動安定性の向上、着座速度の低減、低消費電力化を図ることができる。
【0058】
(実施の形態5)
図16は、この発明の実施の形態5に従った電磁駆動弁の模式図である。図16を参照して、この発明の実施の形態5に従った電磁駆動弁10では、検出コイル501がロアディスク21およびアッパディスク31に向かい合うように設けられている点で、実施の形態1に従った電磁駆動弁10とは異なる。すなわち、検出コイル501は、ロアフラップとしてのロアディスク21の下部およびアッパフラップとしてのアッパディスク31の上部に設けられている。検出コイル501は、ともにディスクベース51に配置される。ロアディスク21およびアッパディスク31そのものが稼働部の被検出部材となる。
【0059】
図17は検出コイルを詳細に示す図である。図17を参照して、ロアディスク21に非磁性体のスペーサ531を設け、このスペーサ531に接触するように磁性体のディスク532を設ける。非磁性体のスペーサ531を設けることで、ロアディスク21とディスク532とを磁気遮蔽し、電磁石60が発生させる磁束が検出コイル501に影響を与えることを防止する。これにより誤作動を未然に防ぐことができる。
【0060】
検出コイル501はロアディスク21のリフト量xを検出する。この検出したリフト量xをもとにアーマチャーディスクとしてのロアディスク21およびアッパディスク31の揺動角度θを算出する。算出に対しては、以下の式を用いる。
【0061】
θ=tan-1(x/B)
Bは支点25から検出コイル501までの距離である。
【0062】
このようにして求めた揺動時の角度θをもとに、開閉兼用コイル62に流す電流制御を行なう。
【0063】
なお、開弁用永久磁石55および閉弁用永久磁石56と、検出コイル501との関係は、図16および図17で示す位置と異なるように設定してもよい。すなわち、図16および図17では、支点25,35に対して、開弁用永久磁石55および閉弁用永久磁石56が遠い側に位置し、検出コイル501が近い側に位置しているが、検出コイル501が遠い側に位置し、開弁用永久磁石55および閉弁用永久磁石56が近い側に位置していてもよい。この場合、支点25,35から遠い位置にセンサとしての検出コイル501を配置するため、検出精度はより向上する。
【0064】
このように構成された、実施の形態5に従った電磁駆動弁では、電磁駆動弁10の真上または真下にリフトセンサを配置する必要がなく、電磁駆動弁10の全高を低くすることができる。
【0065】
また、アッパディスク31に向かい合うように検出コイル501を配置するため、組付け性、調整性、メンテナンス性に優れる。なお、上述の実施の形態では、ロアディスク21およびアッパディスク31の両方の動きを検出するための検出コイル501を2つ用いたが、これに限られるものではなく、ロアディスク21の動作を検出する検出コイルだけを設けてもよく、また、アッパディスク31の動きだけを検出する検出コイルだけを設けてもよい。
【0066】
さらに、ロアディスク21およびアッパディスク31そのものを検出部材とするために、組付け性に優れ、部品点数が少なくなるためコストを低く抑えることができる。
【0067】
さらに、非接触式変位センサとして簡素でよく用いられるギャップセンサを用いることができ、コスト、対ノイズ性能、対環境性能、耐久性などに有利である。
【0068】
さらに、ステム12にテーパを設ける必要がないため、ステム12の剛性を向上させることができ耐久性が向上する。また、テーパを設ける場合には、剛性が低下するため、これを補償するためにステム12の体格が大きく重くなっていた。これに対して、本発明ではステム12を軽量化することができ、稼働部材の重量を低減できるため、消費電力が低減し、エンジンの性能向上を図ることができる。
【0069】
(実施の形態6)
図18は、この発明の実施の形態6に従った電磁駆動弁の模式図である。図18を参照して、この発明の実施の形態6に従った電磁駆動弁では、駆動弁14の上端部14eに向かい合うように検出コイル501が設けられている点で、実施の形態1に従った電磁駆動弁10とは異なる。駆動弁14の上端部14e、すなわち、上部ステム12nの端部そのものが検出コイル501の被検出部材(コア)となる。検出コイル501は、リフト量xを検出し、このリフト量からロアディスク21およびアッパディスク31の角度θを求める。角度θの算出にあたっては、以下の式を用いる。
【0070】
θ=tan-1(x/A)
Aは、図4中のアッパディスク31の長さAと同一である。角度θをもとにECU502はEDU503に対して信号を送る。この信号によりEDU503は開閉兼用コイル62に流す電流を決定する。
【0071】
このように構成された、実施の形態6に従った電磁駆動弁10では、ステム12そのものを検出部材とするため組付け性に優れ、部品点数が少なくなるためコストを低く抑えることができる。
【0072】
また、コア部材を結合する必要がないため、結合部分(ねじ部)の長さがなくて済み、全高を低くすることができる。
【0073】
また、本構造によりステム12を軽量にでき、稼働部重量を低減できるため、低消費電力、エンジン性能向上を期待できる。
【0074】
さらに、ステム12により構成されるコア部の剛性を向上させることができるため、センサおよびアクチュエータアッシーの耐久性を向上させることができる。
【0075】
また、検出コイル501の組付け性、調整性、メンテナンス性(交換性)に優れる。
【0076】
さらに、電磁石60から距離を隔ててセンサコイルにより構成される検出コイル501を配置できるため、電磁石60から上下に漏れる磁束の影響が小さくなる。その結果、リフト検出誤差(ノイズ)が小さくなり、これにより電磁駆動弁10の通電制御の精度が向上する。よって作動安定性が向上し、着座速度を低減させることができ、かつ消費電力を低減させることができる。
【0077】
(実施の形態7)
図19は、この発明の実施の形態7に従った電磁駆動弁の模式図である。図19を参照して、この発明の実施の形態7に従った電磁駆動弁10では、検出コイル501をステム12の横に配置する。具体的には、ステム12から分岐部分14bを設け、この分岐部分のストロークを検出コイル501が検出する。
【0078】
分岐部分14bから支点35までの距離はCとする。分岐部分14bそのものがセンサコアとなっていてもよい。検出コイル501が検出したステム12のリフト量xからロアディスク21およびアッパディスク31の角度θを算出する。算出にあたっては、以下の式を用いる。
【0079】
θ=tan-1(x/C)
この揺動角のデータがECU502に送られ、ECUは開閉兼用コイル62に流す電流値を設定する。この電流値の値がEDU503に伝えられて、EDU503から開閉兼用コイル62へ電流が流される。
【0080】
このように構成された実施の形態7に従った電磁駆動弁10では、検出コイル501の組付け性、調整性、メンテナンス性(交換性)に優れる。
【0081】
さらに、電磁駆動弁10の真下または真上にリフトセンサを配置する必要がなく、電磁駆動弁10の全高を低くすることができる。
【0082】
電磁石60の真横にリフトセンサとしての検出コイル501を配置できるため、電磁石60から上下に漏れる磁束の影響を受けにくく、リフト検出誤差(ノイズ)が小さくなる。その結果、電磁駆動弁10の通電制御の精度が向上する。これにより、作動安定性が向上し、着座速度が低減し、低消費電力化を図ることができる。
【0083】
また、電磁石60より距離を隔てて検出コイル501を配置できるため、電磁石60から上下に漏れる磁束の影響が小さくて済み、リフト検出誤差(ノイズ)が小さくなる。
【0084】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態はさまざまに変形することが可能である。まず、開閉兼用コイル62を構成するコイルとしては、モノコイルだけでなく、複数のコイルを用いることができる。すなわち、複数の磁気回路が構成されるように開閉兼用コイル62を設けることが可能である。
【0085】
また、検出コイル501で検出したデータはECU502へ送られたが、これに限られるものではなく、他の演算装置に検出したデータが送られて、この演算装置で通電量が決定されてもよい。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この発明は車両に搭載される電磁駆動弁の分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の実施の形態1に従った電磁駆動弁を示す断面図である。
【図2】ステムを詳細に示す斜視図である。
【図3】テーパ部の長さと厚みとの関係を示すグラフである。
【図4】アッパディスクのなす角度を示す側面図である。
【図5】図1中のロアディスク(アッパディスク)を示す斜視図である。
【図6】図1中の電磁石を示す斜視図である。
【図7】開弁側の変位端にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。
【図8】中間位置にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。
【図9】閉弁側の変位端にあるアッパディスクおよびロアディスクを示す模式図である。
【図10】この発明の実施の形態2に従った上部ステムの斜視図である。
【図11】図10で示すテーパ部の長さと断面積との関係を示すグラフである。
【図12】図10のテーパ部の長さと半径との関係を示すグラフである。
【図13】この発明の実施の形態3に従った電磁駆動弁の平面図である。
【図14】この発明の実施の形態4に従った電磁駆動弁の平面図である。
【図15】傾きを説明するためのステムの側面図である。
【図16】この発明の実施の形態5に従った電磁駆動弁を示す断面図である。
【図17】検出コイルを詳細に示す図である。
【図18】この発明の実施の形態6に従った電磁駆動弁の断面図である。
【図19】この発明の実施の形態7に従った電磁駆動弁の模式図である。
【符号の説明】
【0089】
10 電磁駆動弁、12 ステム、12m 下部ステム、12n 上部ステム、21 ロアディスク、22,32 一方端、23,33 他方端、31 アッパディスク、60 磁石、62 開閉兼用コイル、501 検出コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力と弾性力との協働により作動する電磁駆動弁であって、
弁軸を有し、前記弁軸が延びる方向に沿って往復運動する駆動弁と、
前記弁軸に揺動自在に連結された一方端と、ベース部材に揺動自在に支持された他方端とを有し、互いに距離を隔てて設けられた第1および第2の揺動部材と、
コイルを有し、前記第1の揺動部材と前記第2の揺動部材との間に配置される電磁石と、
前記駆動弁ならびに前記第1および第2の揺動部材の少なくとも1つの位置を検出する検出部とを備え、
前記コイルに電流が流れることによって前記第1および第2の揺動部材に前記電磁力が作用し、
前記検出部が検出した前記駆動弁の位置に応じて前記コイルに流れる電流量が決められる、電磁駆動弁。
【請求項2】
前記駆動弁の一部の断面積が連続的に変化しており、その断面積が変化した部分の位置に基づいて前記検出部が前記駆動弁の位置を検出する、請求項1に記載の電磁駆動弁。
【請求項3】
前記検出部は基準軸からの前記駆動弁のずれを検出する、請求項1に記載の電磁駆動弁。
【請求項4】
前記駆動弁の上端部に前記検出部が配置される、請求項1に記載の電磁駆動弁。
【請求項5】
前記電磁石に引き寄せられた状態で前記コイルに流す電流の向きを逆転させると、前記電磁石に引き寄せられていた前記第1および第2の揺動部材のいずれか一方に、前記電磁石から離脱する方向に電磁力が作用するように構成されている、請求項1に記載の電磁駆動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−57715(P2006−57715A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239776(P2004−239776)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】