説明

電線接続スリーブおよびワイヤハーネス

【課題】電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、ワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】本発明は、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブ10であって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板12の一方の面に複数の凹部11を形成し、この一方の面を内側にして金属板12を筒状に形成したものであり、導体21,31が被覆22,32によって覆われてなる電線20,30の導体21,31が両端開口に挿入されて圧着されることにより一対の電線20,30が導通可能に接続される構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続スリーブおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両工場やディーラー等においてワイヤハーネスの取り回しの際に電線が切断されてしまった場合などには、その修繕をするために電線の継ぎ足しがなされることが多い。電線を継ぎ足す方法としては、金属製のシームレスパイプ(スリーブ)を用いて電線を接続する方法が知られている(例えば特許文献1)。この方法は、一の電線の導体をスリーブの一端に挿入し、他の電線の導体をスリーブの他端に挿入して、両電線の導体にスリーブを圧着させる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−66034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導体とスリーブとの間に、導体の表面に形成された酸化皮膜が介在すると、導体とスリーブとの間の接触抵抗が大きくなって、電線の接続部分の接続信頼性が低下する傾向がある。
【0005】
また、近年においては、主に自動車のワイヤハーネス等の分野で従来より一般的に用いられていた銅合金からなる導体に替えて、電線の軽量化等のため、アルミニウム合金からなる導体を用いることが多くなっている。アルミニウム合金は、銅合金に比べて酸化皮膜の除去が難しいという事情もあるため、導体の酸化皮膜を除去して電線の接続部分における接続信頼性を高めたいという要望が強くなっていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に複数の凹部を形成し、この一方の面を内側にして金属板を筒状に形成したものであり、導体が被覆によって覆われてなる電線の導体が両端開口に挿入されて圧着されることにより一対の電線が導通可能に接続される構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によれば、電線接続スリーブの両端開口に、一の電線の導体と他の電線の導体とをそれぞれ挿入して圧着させると、電線接続スリーブの内面に形成された凹部の開口縁部が導体の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブとが接触した状態になる。特にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板は、銅または銅合金からなる金属板よりも硬いため、凹部に対する導体の食い込みがよくなる。したがって、導体と電線接続スリーブとの間に酸化皮膜が介在している場合に比べて、導体と電線接続スリーブとの間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
また、本発明は、導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ電線が、上記の電線接続スリーブの一端開口から挿入されて圧着されているワイヤハーネスとしてもよい。
このようにすると、導体の表面に酸化皮膜が形成されやすいアルミ電線を使用したワイヤハーネスであっても電線の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0010】
アルミ電線とは導体の種類が異なる他の電線が、電線接続スリーブの他端開口から挿入されて圧着されている構成としてもよい。
このようにすると、異種金属の導体からなる電線同士を接続する場合に両電線の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、ワイヤハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電線接続スリーブおよび一対の電線の端末部を表す斜視図
【図2】電線接続スリーブの両端開口に一対の電線の導体をそれぞれ挿入した状態を表す斜視図
【図3】電線接続スリーブを圧着して一対の電線の導体を接続した状態を表す斜視図
【図4】図3における導体が凹部に食い込んだ状態を表す断面図
【図5】金属板の一方の面に形成された複数の凹部を表す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図5の図面を参照しながら説明する。本実施形態における電線接続スリーブ10は、一の電線20と他の電線30とを接続するものであり、両端が開口した筒状をなしている。
【0014】
電線接続スリーブ10は、図5に示すような、略矩形状をなす金属板12を略円筒状に巻いてなるものである。金属板12は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。金属板12の板面には、複数の凹部11が形成され、金属板12は、この凹部11が形成された面を内側にして巻かれている。電線接続スリーブ10の径寸法は、軸方向の全長にわたり略一定とされている。なお、以下においては電線接続スリーブ10の軸方向を前後方向という。
【0015】
凹部11は、金属板12の巻き方向に延びる溝、すなわち電線接続スリーブ10の周方向(電線接続スリーブ10に接続される電線20の軸方向に対して略直交方向)に延びる溝である。各凹部11は、金属板12の巻き方向に所定のピッチ(本実施形態では一定のピッチ)で並んで形成されている。なお、以下においては金属板12の巻き方向を幅方向という。
【0016】
また、幅方向に並んだ一列の凹部11は、前後方向にも所定のピッチ(本実施形態では一定のピッチ)で並んで形成されている。さらに、前後方向に隣り合う各凹部11は、幅方向に所定の寸法(本実施形態では凹部11の幅方向における寸法の半分の寸法)だけ交互にずれて配置されている。換言すると、複数の凹部11は、金属板12の板面の略全体に千鳥状に並んで配置されている。
【0017】
凹部11の断面形状は、平面視で幅方向に横長の長方形状をなし、底面側から開口側に向かって幅寸法がほぼ一定となる形状をなしている。この凹部11が、電線接続スリーブ10の圧着に伴って電線20の導体21が食い込むセレーションを構成している。なお、図4、図5を除く図面において、凹部11は省略されている。
【0018】
金属板12の幅方向両端部13,15は、図1に示すように、突き合わせた状態に保持されている。一方の端部13には、先端に向かうほど幅広に形成された逆三角形状をなす係止突部14が周方向に突出して設けられている。また、他方の端部15には、あり溝状をなす係止凹部16が周方向に凹んで設けられている。これにより、係止突部14を係止凹部16に対して金属板12の板厚方向に嵌合させると、係止突部14と係止凹部16が周方向に係止するため、両端部13,15を突き合わせた状態に保持できる。
【0019】
一の電線20は、複数本の金属素線からなる導体21を絶縁性の合成樹脂からなる被覆22で覆った構成である。本実施形態の一の電線20は、11本の金属素線を束ねたものであり、これらの金属素線を束ねた総断面積は0.75mmである。金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などを用いることができる。なお、本実施形態の一の電線20は、金属素線がアルミニウム合金によって構成されたアルミ電線である。
【0020】
他の電線30は、一の電線20と同様な構成であって、複数本の金属素線からなる導体31を絶縁性の合成樹脂からなる被覆32で覆った構成である。金属素線は、銅、銅合金など任意の金属を用いることができる。なお、本実施形態の他の電線30は、金属素線が銅合金によって構成された銅電線である。
【0021】
本実施形態は以上のような構成であって、続いて電線接続スリーブ10の圧着方法の一例を説明する。
まず、図1に示すように、電線20,30の端部における被覆22,32を除去して、導体21,31を露出させる。次に、電線接続スリーブ10の一端開口に一の電線20の導体21を挿入し、電線接続スリーブ10の他端開口に他の電線30の導体31を挿入し、両導体21,31を重ねるように配置する。そして、図3に示すように、電線接続スリーブ10をかしめて圧着すると、図4に示すように、導体21,31が凹部11に食い込む。これにより、両電線20,30が電線接続スリーブ10によって接続されたワイヤハーネスが完成する。
【0022】
圧着の際には、アルミニウム合金からなる凹部11の開口縁部が導体21,31の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、これと同時に新生面と電線接続スリーブ10を接触させることができる。したがって、導体21,31と電線接続スリーブ10との間に酸化皮膜が介在している場合に比べて、導体21,31と電線接続スリーブ10との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20,30の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0023】
以上のように本実施形態では電線接続スリーブ10の内面に複数の凹部11を形成し、圧着により導体21,31が凹部11に食い込むようにしたから、導体21,31の表面に形成された酸化皮膜を突き破って新生面を露出させることができる。ここで、銅合金よりも硬いアルミニウム合金からなる金属板12を用いているため、凹部11に導体21,31が食い込みやすくなっている。したがって、異種金属同士を接続する場合であっても、圧着という簡易な接合方法によって電線20,30の接続信頼性を向上させることができる。さらに、圧着により異種金属同士が一体となって接合されることにより、異種金属接触による腐食の進行を改善することができる。
【0024】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では電線接続スリーブ10の内面におけるほぼ全面に凹部11を形成しているものの、本発明によると、電線接続スリーブ10の内面のうち圧着に寄与する部分のみに凹部11を形成してもよい。
【0025】
(2)上記実施形態では平面視で長方形状をなす凹部11を例示しているものの、本発明によると、平面視で正方形状をなす凹部としてもよいし、平面視で平行四辺形状をなす凹部としてもよい。
【0026】
(3)上記実施形態では金属板12の両端部13,15を突き当てた状態で保持しているものの、本発明によると、金属板12の両端部13,15を重ねた状態で保持してもよい。
【0027】
(4)上記実施形態ではアルミ電線からなる一の電線20と銅電線からなる他の電線30が電線接続スリーブ10によって接続されたワイヤハーネスについて説明したものの、本発明によると、アルミ電線からなる一の電線20同士が電線接続スリーブ10によって接続されたワイヤハーネスとしてもよい。
【0028】
(5)上記実施形態ではアルミ電線からなる一の電線20と銅電線からなる他の電線30が電線接続スリーブ10によって接続されたワイヤハーネスについて説明したものの、本発明によると、電線接続スリーブ10の一端開口のみにアルミ電線からなる一の電線20を挿入して圧着しておき、電線接続スリーブ10の他端開口を圧着前の状態としたワイヤハーネスとしてもよい。
【0029】
(6)上記実施形態では一枚の金属板12を筒状に巻いた電線接続スリーブ10としているものの、本発明によると、半円形状をなす一対の半割体からなる金属板を互いに組み付けることにより筒状に形成される電線接続スリーブとしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…電線接続スリーブ
11…凹部
12…金属板
20…一の電線
21…導体
22…被覆
30…他の電線
31…導体
32…被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に複数の凹部を形成し、この一方の面を内側にして前記金属板を筒状に形成したものであり、
導体が被覆によって覆われてなる電線の前記導体が両端開口に挿入されて圧着されることにより一対の前記電線が導通可能に接続されることを特徴とする電線接続スリーブ。
【請求項2】
導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ電線が、請求項1に記載の電線接続スリーブの一端開口から挿入されて圧着されているワイヤハーネス。
【請求項3】
前記アルミ電線とは導体の種類が異なる他の電線が、前記電線接続スリーブの他端開口から挿入されて圧着されている請求項2に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−272301(P2010−272301A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122143(P2009−122143)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】