説明

露光ヘッド、画像形成装置

【課題】長手方向に発光素子を並べた露光ヘッドにおいて、各発光素子の平均的な温度を検出可能とする技術を提供する。
【解決手段】光を結像して被露光面に照射する結像光学系と、結像光学系により結像される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した基板と、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材と、抵抗部材の抵抗値から温度を求める温度測定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子が発光する光により被露光面を露光する露光ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、長手方向に並ぶ複数の発光素子を備え、各発光素子からの光を結像することで、複数の光のスポットを被露光面に形成する露光ヘッドが提案されている。このような露光ヘッドを用いて適切な露光を実行するにあたっては、スポットの光量を所定の適正範囲に収めることが求められる。しかしながら、発光素子の光量は温度によって変化するといった性質を持つため、温度変化に応じて発光素子の光量が変化してしまい、スポットの光量が適正範囲から外れてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−017479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に記載されている技術を露光ヘッドに応用することが考えられる。すなわち、この特許文献1の技術では温度センサーが設けられており、温度センサーの検出温度に基づいて発光素子の発光を制御することで、発光素子の光量変化の抑制が試みられている。
【0005】
しかしながら、このような温度センサーによる方法は、露光ヘッドにおける発光素子の光量制御には必ずしも適さないおそれがあった。つまり、この方法では、温度センサーの配設位置近傍の局所的な温度を検出することになるため、この検出温度が、露光ヘッド内で長手方向に配設された複数の発光素子の温度を適切に反映しているとは限らない。言い換えれば、これら発光素子全体の平均的な温度から検出温度が大きくずれてしまっていることも想定され、このような場合、検出温度に基づいて光量制御することで、逆に発光素子の光量が不適切なものになるおそれがある。そこで、露光ヘッドが備える各発光素子の平均的な温度を検出可能とする技術が望まれていた。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、長手方向に発光素子を並べた露光ヘッドにおいて、各発光素子の平均的な温度を検出可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、光を結像して被露光面に照射する結像光学系と、結像光学系により結像される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した基板と、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材と、抵抗部材の抵抗値から温度を求める温度測定部と、を備えたことを特徴とする露光ヘッド。
【0008】
このように構成された発明(露光ヘッド)では、温度センサーではなく、温度により抵抗が変化する抵抗部材が用いられている。しかも、この抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向(発光素子の配設方向)に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設されている。したがって、この抵抗部材の抵抗値から温度を求めることで、第1の方向に配設された各発光素子の平均的な温度を検出することが可能となっている。
【0009】
なお、基板に配設されて、発光素子を駆動する薄膜トランジスターを備えることができるが、このような場合では、抵抗部材は金属を基材とし、薄膜トランジスターの金属配線層と同じ層に形成されるように構成しても良い。これにより、抵抗部材と薄膜トランジスターの金属配線を同時に形成することができ、抵抗部材用に新たにプロセスやフォトマスクを用意する必要がなく、製造工程の簡素化やコストアップの抑制を図ることが可能となる。
【0010】
また、抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って配設された、温度により抵抗が変化する線状の抵抗線を有し、温度測定部は、抵抗線の抵抗値に基づいて温度を求めるように構成しても良い。このように線状の抵抗線を用いることで、抵抗部材の抵抗値を高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができる。
【0011】
この際、抵抗線は、第1の方向の一端で折り返して、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域を往復するように配設されているように構成しても良い。このように、抵抗線を往復させることで、抵抗線を長くとって抵抗部材の抵抗値をさらに高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができる。
【0012】
また、抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って配設された、温度により抵抗が変化する線状の第1の抵抗線および第2の抵抗線を有し、温度測定部は、第1の抵抗線および第2の抵抗線の抵抗値から温度を求めるように構成しても良い。このように線状の抵抗線を用いることで、抵抗部材の抵抗値を高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができる。
【0013】
また、第1の抵抗線は、第2の抵抗線との境界で折り返して往復するように配設され、第2の抵抗線は、第1の抵抗線との境界で折り返して往復するように配設されるように構成しても良い。このように、抵抗線を往復させることで、抵抗線を長くとって抵抗部材の抵抗値をさらに高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができる。
【0014】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像担持体と、光を結像して潜像担持体に照射する結像光学系、結像光学系により結像される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した基板、および、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材を有する露光ヘッドと、抵抗部材の抵抗値から温度を求める温度測定部と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
このように構成された発明(画像形成装置)では、温度センサーではなく、温度により抵抗が変化する抵抗部材が用いられている。しかも、この抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向(発光素子の配設方向)に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設されている。したがって、この抵抗部材の抵抗値から温度を求めることで、第1の方向に配設された各発光素子の平均的な温度を検出することが可能となっている。
【0016】
また、露光ヘッドは、基板に配設されて発光素子を駆動する薄膜トランジスター、および、薄膜トランジスターの発光素子の駆動を制御するドライバーICを備えることができるが、このような場合では、ドライバーICは、抵抗部材の抵抗値を電圧値に変換して温度測定部に出力し、温度測定部は、ドライバーICより受け取った電圧値に基づいて温度を求めるように構成しても良い。このように、ドライバーICで抵抗値を電圧値に変換することで、抵抗部材を温度測定部まで引き出す必要がなくなり、抵抗部材に乗るノイズを低減して、高精度な温度検出を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す部分斜視図。
【図4】ヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図。
【図5】金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図。
【図6】図5の電圧Vを増幅するアンプを示す回路図。
【図7】ヘッド基板およびその周辺の別の構成を模式的に示す部分平面図。
【図8】ヘッド基板およびその周辺のさらに別の構成を模式的に示す部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1実施形態
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0019】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体(図示省略)の内部には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス(図示省略)が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および二次転写ユニット12もハウジング本体内に配設されている。
【0020】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0021】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の感光体カートリッジに保持されており、感光体カートリッジと一体的に装置本体に対して着脱自在に構成されている。さらに、感光体カートリッジそれぞれには、当該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性のメモリーが設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行なわれる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、必要に応じて各メモリーの情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各感光体カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0022】
また、感光体カートリッジが装着された状態において、各感光体ドラム21はその回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。このように本実施形態では、感光体ドラム21の回転軸と駆動モーターDMとの間にギア等の動力伝達機構を設けること無く、感光体ドラム21の回転軸を駆動モーターDMで直接駆動するダイレクトドライブ方式が採用されている。
【0023】
また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、スクイーズローラーSQ1、SQ2および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作等が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0024】
帯電部23はいわゆるコロナ帯電器で構成されており、感光体ドラム21表面に接触しない非接触型の帯電器である。この帯電部23は、帯電電圧発生部(図示省略)に接続されており、帯電電圧発生部からの給電を受けて帯電部23が感光体ドラム21に対向する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0025】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0026】
図3はラインヘッドの構造を示す部分斜視図である。ラインヘッド29が有するヘッド基板294の裏面には、複数の発光素子Eが解像度に応じたピッチで長手方向LGDに並んでいる。各発光素子Eはヘッド基板294の裏面に形成された有機EL素子であり、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子である。また、ヘッド基板294の表面には、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が対向して配置されている。したがって、発光素子Eが射出した光ビームは、ヘッド基板294の裏面から表面へと透過した後、ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像される。これにより、感光体ドラム21の表面にスポットSPが形成されて、感光体ドラム21表面に潜像が形成される。
【0027】
このようなラインヘッド29による潜像形成動作は、メインコントローラーMCおよびヘッドコントローラーHCにより制御される。なお、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29はそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0028】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0029】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッド29を制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにはメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させることで、形成すべき画像の幅を主走査方向MDに有する1ライン分のライン潜像を形成する。このライン潜像形成は、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて順次実行され、その結果、2次元の潜像が感光体ドラム21表面に形成される。こうして形成された潜像は現像部25(図1)によりトナー像として現像される。
【0030】
以上が、本発明を適用可能なラインヘッド29および画像形成装置の概要である。続いて、このラインヘッド29のより詳細な構成について説明する。図4は、ラインヘッドが備えるヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図である。上述したような主走査方向MDに画像幅を有するライン潜像を形成するために、ラインヘッド29が備える複数の発光素子Eは、画像幅に応じた幅を長手方向LGDに有する素子形成領域AReに渡って並んでいる。より詳しくは、これら発光素子Eは、所定の発光素子ピッチで2行千鳥で長手方向LGDへ並んでいる。
【0031】
これら発光素子Eに対して幅方向LTDの一方側には、駆動トランジスター2941として機能する薄膜トランジスター(TFT、thin film transistor)が形成されており、各発光素子Eは駆動トランジスター2941と配線によって電気的に接続されている。そして、発光素子Eは、駆動トランジスター2941からの駆動信号の供給を受けて、この駆動信号の大きさに応じた光量で発光する。
【0032】
この駆動トランジスター2941による発光素子Eの駆動の制御は、転送制御回路2943、フレキシブルプリント基板2945およびドライバーIC2947の協働により行なわれる。転送制御回路2943は、駆動トランジスター2941に対して幅方向LTDの一方側に配置されており、駆動トランジスター2941と配線によって電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2945は、ヘッド基板294から引き出されるようにして取り付けられており、ヘッド制御モジュール400(図2)との信号の送受信機能を果たす。また、ドライバーIC2947は、フレキシブルプリント基板2945の上に搭載されている。
【0033】
ヘッド制御モジュール400が出力したビデオデータVDは、フレキシブルプリント基板2945上のドライバーIC2947を介して、転送制御回路2943に受け渡される。そして、転送制御回路2943は、ビデオデータVDが示す光量で発光素子Eを発光させるように駆動トランジスター2941を制御し、この制御下で駆動トランジスター2941が発光素子Eを発光させる。
【0034】
また、ヘッド基板294には、温度により抵抗が変化する、線幅数μm〜数十μmを有する線状の金属抵抗線MR(抵抗部材)が、複数の発光素子Eに添って形成されている。この際、このような線幅の細い金属抵抗線MRを形成するために、ヘッド基板294は、ガラス基板やセラミック基板であることが望ましい。この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い抵抗配線領域ARrに渡って形成されている。換言すれば、金属抵抗線MRは、長手方向LGDにおいて素子形成領域AReの両端からはみ出すようにして形成されている。
【0035】
より詳しくは、この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947から幅方向LTDに階段状に引き出されている。こうして複数の発光素子Eの幅方向LTDの他方側にまで引き出された金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側から一方側にまで引き出された後に折り返されて、再び素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に引き戻される。そして、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に戻った金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947にまで幅方向LTDに階段状に引き戻される。こうして、金属抵抗線MRは、長手方向LGDの一方端で折り返して、素子形成領域AReよりも広い抵抗配線領域ARrを往復するように形成されている。
【0036】
ちなみに、この金属抵抗線MRは、アルミあるいはアルミと銅の合金を基材とするものであり、数十kΩの抵抗値を持ち、温度1℃あたり0.1〜1%程度の抵抗上昇を示す。また、この金属抵抗線MRは、駆動トランジスター2941(薄膜トランジスター)の金属配線層(具体的には、ゲート電極あるいはソース電極の配線層)と同じ層に形成されている。これにより、金属抵抗線MRと駆動トランジスター2941(薄膜トランジスター)の金属配線を同時に形成することができ、金属抵抗線MR用に新たにプロセスやフォトマスクを用意する必要がなく、製造工程の簡素化やコストアップの抑制を図ることが可能となる。また、このような金属配線層を多層に設ける場合は、他の層との交差を考慮して、ヘッド基板294からフレキシブルプリント基板2945への引き出しが容易になる配線層に金属抵抗線MRを設ければ良い。
【0037】
図5は、金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図であり、図6は、図5の電圧Vを増幅するアンプを示す回路図である。図5に示すように、金属抵抗線MRは、値が既知の3つの抵抗R1〜R3とホイートストンブリッジを構成しており、このホイートストンブリッジの中間点の電位差Vが、金属抵抗線MRの抵抗値に対応する電圧値となる。なお、金属抵抗線MR以外の図5に示す構成は、ドライバーIC2947に内蔵されている。この電位差Vは、ドライバーIC2947内の図6に示すアンプにより増幅された後に、同じくドライバーIC2947内のA/Dコンバーターに受け渡される。このA/Dコンバーターは、金属抵抗線MRの抵抗値に対応する電圧値をデジタル信号に変換してヘッド制御モジュール400(図2)に出力する。
【0038】
一方、ヘッド制御モジュール400は、受け取ったデジタル信号が示す金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める。具体的には、ある特定の温度における金属抵抗線MRの抵抗値を記憶するとともに、温度変化に対する金属抵抗線MRの抵抗値の変化率を予め記憶しておけば、金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求めることができる。そして、ヘッド制御モジュール400は、この求めた温度において発光素子Eを所望の光量で発光させるための駆動信号値を求め、以後の潜像形成動作では当該駆動信号値を発光素子Eに供給するように、ドライバーIC2947、転送制御回路2943および駆動トランジスター2941を制御する。
【0039】
以上のように第1実施形態では、温度センサーではなく、温度により抵抗が変化する金属抵抗線MRが用いられている。しかも、この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い領域ARrに渡ってヘッド基板294に配設されている。したがって、この金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求めることで、長手方向LGDに形成された各発光素子Eの平均的な温度を正確に検出することが可能となっている。
【0040】
また、第1実施形態は、線状の金属抵抗線MRの抵抗値に基づいて温度を求めるように構成しており、好適である。なぜなら、このように線状の抵抗線MRを用いることで、抵抗線MRの抵抗値を高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができるからである。
【0041】
また、第1実施形態では、金属抵抗線MRは、長手方向LGDの一端で折り返して、素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い領域ARrを往復するように形成されており、好適である。なぜなら、このように抵抗線を往復させることで、抵抗線を長くとって抵抗部材の抵抗値をさらに高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができるからである。さらには、往復させることで金属抵抗線MRの引き出し位置を一箇所にまとめることができるといった利点もある。
【0042】
また、第1実施形態では、ドライバーIC2947は、金属抵抗線MRの抵抗値を電圧値に変換してヘッド制御モジュール400に出力しており好適である。なぜなら、このように、ドライバーIC2947で抵抗値を電圧値に変換することで、金属抵抗線MRをヘッド制御モジュール400まで引き出す必要がなくなり、金属抵抗線MRに乗るノイズを低減して、高精度な温度検出を図ることができるからである。
【0043】
また、第1実施形態のように、有機EL素子を発光素子Eとして用いたラインヘッド29に対しては本発明を適用することが特に好適である。つまり、有機EL素子は温度によって光量が顕著に変化するという性質を有する。これに対して、本発明を適用すれば、平均的な温度を正確に検出することができるため、温度変化に伴う光量補正を確実に行うことができる。
【0044】
また、第1実施形態のように、駆動トランジスター2941により発光素子Eを駆動するラインヘッド29に対しては本発明を適用することが特に好適である。つまり、駆動トランジスター2941は動作することで発熱するため、これによって発光素子Eの光量が変化するおそれがある。これに対して、本発明を適用すれば、平均的な温度を正確に検出することができるため、温度変化に伴う光量補正を確実に行うことができる。
【0045】
第2実施形態
図7は、ラインヘッドが備えるヘッド基板およびその周辺の別の構成を模式的に示す部分平面図である。なお、第2実施形態と第1実施形態の違いは、金属抵抗線MRの配設態様とこの周囲構成のみであるので、以下ではこの違いについて主に説明することとし、共通点については相当符号を付して説明を省略する。なお、共通する構成から、第1実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0046】
第2実施形態では、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い抵抗配線領域ARrに渡って、2つの金属抵抗線MRa、MRb(抵抗部材)が長手方向LGDに若干の隙間を空けて並んでいる。換言すれば、長手方向LGDにおいて、金属抵抗線MRaの他方端が素子形成領域AReからはみ出すとともに、金属抵抗線MRbの一方端が素子形成領域AReからはみ出すように、2つの金属抵抗線MRa、MRbは形成されている。
【0047】
金属抵抗線MRaは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947から幅方向LTDに階段状に引き出されている。こうして複数の発光素子Eの幅方向LTDの他方側にまで引き出された金属抵抗線MRaは、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側から略中央にまで引き出された後に折り返されて、再び素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に引き戻される。そして、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に戻った金属抵抗線MRaは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947にまで幅方向LTDに階段状に引き戻される。一方、金属抵抗線MRbは、金属抵抗線MRaと左右対称となる配設態様を有する。こうして、金属抵抗線MRaは、金属抵抗線MRbとの境界で折り返して往復するように形成され、金属抵抗線MRbは、金属抵抗線MRaとの境界で折り返して往復するように形成されている。また、金属抵抗線MRa、MRbの引き出し位置に対応して、長手方向LGDの2箇所にフレキシブルプリント基板2945a、2945bが設けられるとともに、各フレキシブルプリント基板2945a、2945bにはドライバーIC2947a、2947bが搭載されている。
【0048】
以上のように第2実施形態では、温度センサーではなく、温度により抵抗が変化する金属抵抗線MRa、MRbが用いられている。しかも、この金属抵抗線MRa、MRbは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い領域ARrに渡ってヘッド基板294に配設されている。したがって、この金属抵抗線MRa、MRbの抵抗値から温度を求めることで、長手方向LGDに形成された各発光素子Eの平均的な温度を検出することが可能となっている。
【0049】
また、第2実施形態は、線状の金属抵抗線MRa、MRbの抵抗値に基づいて温度を求めるように構成しており、好適である。なぜなら、このように線状の抵抗線MRa、MRbを用いることで、抵抗線MRa、MRbの抵抗値を高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができるからである。
【0050】
また、第2実施形態では、金属抵抗線MRa、MRbは、互いとの境界で折り返して往復するように形成されており、好適である。なぜなら、このように抵抗線MRa、MRbを往復させることで、抵抗線MRa、MRbを長くとって抵抗線MRa、MRbの抵抗値をさらに高くすることができ、温度検出の感度を向上させることができるからである。
【0051】
第3実施形態
上記実施形態では、正立等倍の屈折率分布型のロッドレンズアレイを結像光学系として用いたラインヘッド29に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、ラインヘッド29で用いられる光学系はこれに限られず、例えば、特開2009−113204号公報に記載のように、正立等倍でないレンズを長手方向LGDに千鳥状に配置した光学系を用いることもできる。そこで、第3実施形態では、このようなラインヘッド29に対して本発明を適用する場合について説明する。なお、共通する構成から、上記実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0052】
図8は、ラインヘッドが備えるヘッド基板およびその周辺のさらに別の構成を模式的に示す部分平面図である。同図では、レンズLSが一点鎖線で記されているが、これは、ヘッド基板294上の構成とレンズLSの位置関係を示すためのものであり、ヘッド基板294上にレンズLSが配置されていることを示すものではない。
【0053】
このラインヘッド29では、12個の発光素子Eが1つの発光素子グループEGとしてグループ化されており、さらに、レンズLSの2行千鳥配列に対応して、複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに2行千鳥で並んでいる。各発光素子グループEGに対しては、幅方向LTDの両側に駆動トランジスター2941が形成されており、これらは電気的に接続されている。また、複数の発光素子グループEGを幅方向LTD両側から挟むようにして転送制御回路2943が設けられるとともに、さらに幅方向LTDの両外側にフレキシブルプリント基板2945が設けられている。
【0054】
そして、第3実施形態では、金属抵抗線MRは、2行千鳥で並ぶ複数のレンズLSの1行目のレンズLSと2行目のレンズLSの間を通り抜けるようにして形成されている。より詳しくは、金属抵抗線MRは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い抵抗配線領域ARrに渡って形成されている。
【0055】
以上のように第3実施形態では、温度センサーではなく、温度により抵抗が変化する金属抵抗線MRa、MRbが用いられている。しかも、この金属抵抗線MRa、MRbは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い領域ARrに渡ってヘッド基板294に配設されている。したがって、この金属抵抗線MRa、MRbの抵抗値から温度を求めることで、長手方向LGDに形成された各発光素子Eの平均的な温度を検出することが可能となっている。
【0056】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、主走査方向MDあるいは長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、ヘッド基板294が本発明の「基板」に相当し、ヘッド制御モジュール400が本発明の「温度測定部」に相当している。また、第1・第3実施形態では、金属抵抗線MRが本発明の「抵抗部材」に相当し、第2実施形態では、2つの金属抵抗線MRa、MRbが協働して本発明の「抵抗部材」として機能している。また、第1・第2実施形態では、レンズアレイ297が本発明の「結像光学系」として機能し、第3実施形態では、レンズLSが本発明の「結像光学系」として機能している。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、ヘッド基板294上の全ての発光素子Eが、結像光学系に結像されて露光(潜像形成)に供する光を射出するとして説明した。しかしながら、露光に供する光を射出することのないダミー発光素子Eをヘッド基板294に設けておくこともできる。ただし、このような場合は、金属抵抗線MRで測定する温度にダミー発光素子E近傍の温度を反映させなくても良い。したがって、結像光学系に結像されて露光に供する光を射出する発光素子Eが形成された領域を素子形成領域AReと定めて、金属抵抗線MRの形成位置を決めれば良く、ダミー発光素子Eの位置にまで素子形成領域AReを拡張しなくても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、素子形成領域AReにおいて金属抵抗線MRがまっすぐに形成されているが、例えば、ジグザグ状に形成することもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eの幅方向LTDの他方側で、金属抵抗線MR、は往復配置されているが、例えば、複数の発光素子E(や駆動トランジスター2941、転送制御回路2943)を取り囲むようにして、金属抵抗線MRを引き回しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、金属抵抗線MR、MRa、MRbは交差しないように引き回されているが、多層配線可能なヘッド基板294を用いた場合には、これらを交差させることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、薄膜トランジスター2941(駆動トランジスター2941)により発光素子Eを駆動するように構成したが、発光素子Eを駆動する構成はこれに限られず、種々の変更が可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、金属抵抗線MR、MRa、MRbを往復させていたが、このように構成することは必須ではない。
【0063】
また、上記実施形態では、ドライバーIC2947をフレキシブルプリント基板2945上に搭載していたが、ドライバーIC2947の搭載位置はこれに限られず、ヘッド基板294の上に搭載してもよく、この際、ドライバーIC2947と転送制御回路2943を一体的に構成しても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、ホイートストンブリッジにより金属抵抗線MR、MRa、MRbの抵抗値を測定していたが、抵抗値の測定方法はこれに限られない。
【0065】
また、上記実施形態では、抵抗値に相当する電圧値VをA/D変換していたが、これは必須ではなく、アナログ信号のまま電圧値Vのやりとりを行なうように構成しても良い。
【0066】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0067】
297…レンズアレイ、 LGD…長手方向、 MD…主走査方向、 294…ヘッド基板、 MR、MRa、MRb…金属抵抗線、 400…ヘッド制御モジュール、 2941…駆動トランジスター、 2943…転送制御回路、 2945…フレキシブルプリント基板、 2947…ドライバーIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を結像して被露光面に照射する結像光学系と、
前記結像光学系により結像される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した基板と、
前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って前記基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材と、
前記抵抗部材の抵抗値から温度を求める温度測定部と、
を備えたことを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記基板に配設されて、前記発光素子を駆動する薄膜トランジスターを備え、
前記抵抗部材は金属を基材とし、前記薄膜トランジスターの金属配線層と同じ層に形成される請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記抵抗部材は、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って配設された、温度により抵抗が変化する線状の抵抗線を有し、
前記温度測定部は、前記抵抗線の抵抗値に基づいて温度を求める請求項1または2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記抵抗線は、前記第1の方向の一端で折り返して、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域を往復するように配設されている請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記抵抗部材は、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って配設された、温度により抵抗が変化する線状の第1の抵抗線および第2の抵抗線を有し、
前記温度測定部は、前記第1の抵抗線および前記第2の抵抗線の抵抗値から温度を求める請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記第1の抵抗線は、前記第2の抵抗線との境界で折り返して往復するように配設され、前記第2の抵抗線は、前記第1の抵抗線との境界で折り返して往復するように配設される請求項5に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
潜像担持体と、
光を結像して前記潜像担持体に照射する結像光学系、前記結像光学系により結像される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した基板、および、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って前記基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材を有する露光ヘッドと、
前記抵抗部材の抵抗値から温度を求める温度測定部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記露光ヘッドは、前記基板に配設されて前記発光素子を駆動する薄膜トランジスター、および、前記薄膜トランジスターの発光素子の駆動を制御するドライバーICを備え、
前記ドライバーICは、前記抵抗部材の抵抗値を電圧値に変換して前記温度測定部に出力し、
前記温度測定部は、前記ドライバーICより受け取った電圧値に基づいて温度を求める請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−6230(P2012−6230A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143646(P2010−143646)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】