露光方法及びデバイス製造方法
【課題】動的移動平均により補正情報を作成する。
【解決手段】エンコーダシステムと干渉計システムとの計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて、適当な数ウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求める動的移動平均により、エンコーダシステムの計測結果を補正するための補正情報を求める。これにより、誤差(例えばX−X0)の変化が小さい時(例えば区間b)には、多くの誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差が急激に変化するとき(例えば区間c)には、少しの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを回避することが可能となる。
【解決手段】エンコーダシステムと干渉計システムとの計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて、適当な数ウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求める動的移動平均により、エンコーダシステムの計測結果を補正するための補正情報を求める。これにより、誤差(例えばX−X0)の変化が小さい時(例えば区間b)には、多くの誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差が急激に変化するとき(例えば区間c)には、少しの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを回避することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法及びデバイス製造方法に係り、特に、物体を露光する露光方法及び該露光方法を利用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが、主として用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージが、例えばリニアモータ等により2次元方向に駆動される。ウエハステージの位置は、一般的に、長期に渡って高い安定性を有するレーザ干渉計を用いて、計測されていた。
【0004】
近年の半導体素子の高集積化に伴うパターンの微細化により、さらに高精度なウエハステージの位置制御性能が要求されるようになった。そのため、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化や温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が、無視できなくなった。
【0005】
そこで、レーザ干渉計と同程度以上の計測分解能を有するエンコーダと面位置計測センサが採用された露光装置に関する発明がされている。例えば、特許文献1に記載される露光装置では、ウエハステージに設けられた計測面(を構成する反射型回折格子)に計測ビームを照射し、その反射光を検出することによって、計側面(すなわちウエハステージ)の回折格子の周期方向に関する変位又は面位置を計測するエンコーダシステム及び面位置計測システムが採用されている。
【0006】
しかし、これらの計測システムを採用しても、次世代の露光装置で要求されるウエハステージの位置の計測精度(及び制御精度)を達成することは、困難であることが、最近になって判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、複数の物体を連続して露光する露光方法であって、物体の露光の度毎に、露光対象の物体を保持して移動する移動体の位置を第1及び第2位置計測系により計測し、前記第1位置計測系の計測結果と、補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動しつつ該移動体に保持された物体を露光することと、前記露光することと並行して、前記第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差から前記物体についての誤差情報を作成することと、露光対象の物体の露光に先立ち、露光が終了した複数の物体の露光処理と並行して、前記作成することにより作成された前記複数の物体についての前記誤差情報のうち、前記誤差の変化の大小に応じた適当な数の物体についての前記誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求め、該移動平均から前記補正情報を求めることと、を含み、前記補正情報を求めることでは、前記誤差の変化が小さい場合に、前記適当な数を大きくし、前記誤差の変化が大きい場合に、前記適当な数を小さくする露光方法が、提供される。
【0009】
ここで、移動平均は、単純移動平均に限らず、荷重移動平均、指数移動平均等、その他の移動平均を含む。
【0010】
これによれば、第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて適当な数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めることで、第1位置計測系の計測結果を補正するための補正情報が求められる。この場合、誤差の変化が小さい場合には、多くの数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差の変化が大きい場合には、少しの数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による応答の遅れを回避することが可能となる。
【0011】
本発明は、第2の観点からすると、本発明の露光方法により物体上にパターンを形成することと、パターンが形成された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ウエハステージを示す平面図である。
【図3】図1のウエハステージとともに干渉計の配置を示す平面図である。
【図4】図1の露光装置が備える各種計測装置(エンコーダ、アライメント系、多点AF系、Zヘッドなど)の配置を示す平面図である。
【図5】エンコーダヘッド(Xヘッド、Yヘッド)とアライメント系の配置を示す平面図である。
【図6】Zヘッドと多点AF系の配置を示す平面図である。
【図7】一実施形態に係る露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【図8】ステップ・アンド・スキャン方式の露光におけるウエハステージの移動経路に対応する露光中心のウエハ上の移動経路を表す図である。
【図9】ウエハを露光すると同時に求められる誤差情報の例を表す図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、それぞれ、サンプル数1(MA1)及び10(MA9)の誤差情報の移動平均から求められた補正情報を示す図である。
【図11】サンプル数が固定の誤差情報の移動平均及び動的移動平均から求められる補正情報を用いてエンコーダシステム及び面位置計測システムの計測結果を補正した場合の補正残差を表す表である。
【図12】図12(A)は誤差情報の移動平均(MA1及びMA10)、並びに動的移動平均から求められる補正情報を示すグラフ、図12(B)は動的移動平均における平均回数(MA数)毎の使用回数の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図1〜図12(B)に基づいて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられている。以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0015】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハステージWSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1では、ウエハステージWST上にウエハWが載置されている。
【0016】
照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系10の構成は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0017】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図7参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0018】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図7参照)に送られる。
【0019】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、不図示のメインフレームに支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0020】
ステージ装置50は、図1に示されるように、ベース盤12上に配置されたウエハステージWST、ウエハステージWSTの位置情報を計測する計測システム200(図7参照)、及びウエハステージWSTを駆動するステージ駆動系124(図7参照)等を備えている。計測システム200は、図7に示されるように、干渉計システム118、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180などを含む。
【0021】
ウエハステージWSTは、不図示の非接触軸受、例えばエアベアリングなどにより、数μm程度の隙間(ギャップ/クリアランス)を介して、ベース盤12の上方に支持されている。また、ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系124(図7参照)によって、X軸方向及びY軸方向に所定ストロークで駆動可能である。
【0022】
ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。ウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、リニアモータ及びZ・レベリング機構(ボイスコイルモータなどを含む)を含む駆動系によって、ベース盤12に対し、6自由度方向(X軸,Y軸,Z軸,θx,θy及びθzの各方向)に駆動可能に構成されている。
【0023】
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。図2に示されるように、ウエハテーブルWTB上面のウエハホルダ(ウエハW)の+Y側には、計測プレート30が設けられている。この計測プレート30には、中央に基準マークFMが設けられ、基準マークFMのX軸方向の両側に一対の空間像計測用スリット板SLが、設けられている。各空間像計測用スリット板SLには、一例としてY軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Xスリット)と、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Yスリット)と、が形成されている。
【0024】
そして、各空間像計測用スリット板SLに対応して、ウエハテーブルWTBの内部には、レンズ等を含む光学系及び光電子増倍管(フォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT))等の受光素子が配置され、米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるものと同様の一対の空間像計測装置45A,45B(図7参照)が設けられている。空間像計測装置45A,45Bの計測結果(受光素子の出力信号)は、信号処理装置(不図示)により所定の信号処理が施されて、主制御装置20に送られる(図7参照)。
【0025】
また、ウエハテーブルWTB上面には、後述するエンコーダシステムで用いられるスケールが配置されている。詳述すると、ウエハテーブルWTB上面のX軸方向(図2における紙面内左右方向)の一側と他側の領域には、それぞれYスケール39Y1,39Y2が固定されている。Yスケール39Y1,39Y2は、例えば、X軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸方向に配列された、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0026】
同様に、ウエハテーブルWTB上面のY軸方向(図2における紙面内上下方向)の一側と他側の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態で、Xスケール39X1,39X2がそれぞれ固定されている。Xスケール39X1,39X2は、例えば、Y軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸方向に配列された、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0027】
なお、格子線37,38のピッチは、例えば1μmと設定される。図2及びその他の図においては、図示の便宜上から、格子のピッチは実際のピッチよりも大きく図示されている。
【0028】
また、回折格子を保護するために、低熱膨張率のガラス板でカバーすることも有効である。ここで、ガラス板としては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのものを用いることができ、そのガラス板の表面がウエハの表面と同じ高さ(同一面)になるよう、ウエハテーブルWTB上面に設置される。
【0029】
また、ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、図2に示されるように、後述する干渉計システムで用いられる反射面17a,反射面17bが形成されている。
【0030】
また、ウエハテーブルWTBの+Y側の面には、図2に示されるように、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示されるCDバーと同様の、X軸方向に延びるフィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略記する)46が取り付けられている。FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、センターラインLLに関して対称な配置で、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。また、FDバー46の上面には、複数の基準マークMが形成されている。各基準マークMとしては、後述するアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。
【0031】
本実施形態の露光装置100では、図4及び図5に示されるように、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV上で、光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1は、不図示のメインフレームの下面に固定されている。図5に示されるように、プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、可動式の支持部材を介してメインフレーム(不図示)の下面に固定されており、駆動機構601〜604(図7参照)により、X軸方向に関してそれらの検出領域の相対位置が調整可能となっている。
【0032】
本実施形態では、アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれとして、例えば画像処理方式のFIA(Field Image
Alignment)系が用いられている。アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
【0033】
干渉計システム118は、図3に示されるように、反射面17a又は17bにそれぞれ干渉計ビーム(測長ビーム)を照射し、その反射光を受光して、ウエハステージWSTのXY平面内の位置を計測するY干渉計16と、3つのX干渉計126〜128と、一対のZ干渉計43A,43Bとを備えている。詳述すると、Y干渉計16は、基準軸LVに関して対称な一対の測長ビームB41,B42を含む少なくとも3つのY軸に平行な測長ビームを反射面17a、及び後述する移動鏡41に照射する。また、X干渉計126は、図3に示されるように、光軸AXと基準軸LVとに直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LHに関して対称な一対の測長ビームB51,B52を含む少なくとも3つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計127は、プライマリアライメント系AL1の検出中心にて基準軸LVと直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LAを測長軸とする測長ビームB6を含む少なくとも2つのY軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計128は、Y軸に平行な測長ビームB7を反射面17bに照射する。
【0034】
干渉計システム118の上記各干渉計からの位置情報は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、Y干渉計16及びX干渉計126又は127の計測結果に基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX,Y位置に加え、θx方向の回転(すなわちピッチング)、θy方向の回転(すなわちローリング)、及びθz方向の回転(すなわちヨーイング)をも算出することができる。
【0035】
また、図1に示されるように、ステージ本体91の−Y側の側面に、凹形状の反射面を有する移動鏡41が取り付けられている。移動鏡41は、図2からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも長い。
【0036】
移動鏡41に対向して、干渉計システム118(図7参照)の一部を構成する一対のZ干渉計43A,43Bが設けられている(図1及び図3参照)。Z干渉計43A,43Bは、それぞれ2つのY軸に平行な測長ビームB1,B2を移動鏡41に照射し、該移動鏡41を介して測長ビームB1,B2のそれぞれを、例えばメインフレーム(不図示)に固定された固定鏡47A,47Bに照射する。そして、それぞれの反射光を受光して、測長ビームB1,B2の光路長を計測する。その結果より、主制御装置20は、ウエハステージWSTの4自由度方向(Y軸,Z軸,θy及びθzの各方向)の位置を算出する。
【0037】
本実施形態の露光装置100には、干渉計システム118とは独立に、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を計測するために、エンコーダシステム150を構成する複数のヘッドユニットが設けられている。
【0038】
図4に示されるように、投影ユニットPUの+X側、+Y側、−X側、及びプライマリアライメント系AL1の−Y側に、4つのヘッドユニット62A、62B、62C、及び62Dが、それぞれ配置されている。また、アライメント系AL1、AL21〜AL24のX軸方向の両外側にヘッドユニット62E、62Fが、それぞれ設けられている。ヘッドユニット62A〜62Fは、支持部材を介して、メインフレーム(不図示)に吊り下げ状態で固定されている。なお、図4において、符号UPは、ウエハステージWST上にあるウエハのアンロードが行われるアンローディングポジションを示し、符号LPは、ウエハステージWST上への新たなウエハのロードが行われるローディングポジションを示す。
【0039】
ヘッドユニット62A、62Cは、図5に示されるように、前述の基準軸LH上に間隔WDで配置された複数(ここでは5個)のYヘッド651〜655、Yヘッド641〜645を、それぞれ備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を、それぞれ、Yヘッド65及びYヘッド64とも表記する。
【0040】
ヘッドユニット62A,62Cは、Yスケール39Y1,39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼のYリニアエンコーダ70A,70C(図7参照)を構成する。なお、以下では、Yリニアエンコーダを、適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略記する。
【0041】
ヘッドユニット62Bは、図5に示されるように、投影ユニットPUの+Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、プライマリアライメント系AL1の−Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド665〜668及びXヘッド661〜664をXヘッド66とも記述する。
【0042】
ヘッドユニット62B,62Dは、Xスケール39X1,39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する多眼のXリニアエンコーダ70B,70D(図7参照)を構成する。なお、以下では、Xリニアエンコーダを、適宜、「エンコーダ」と略記する。
【0043】
ここで、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5個のYヘッド65,64(より正確には、Yヘッド65,64が発する計測ビームのスケール上の照射点)のX軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。同様に、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(より正確には、Xヘッド66が発する計測ビームのスケール上の照射点)のY軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するXスケール39X1又は39X2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。
【0044】
なお、ヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(つなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも狭く設定されている。
【0045】
ヘッドユニット62Eは、図5に示されるように、複数(ここでは4個)のYヘッド671〜674を備えている。
【0046】
ヘッドユニット62Fは、複数(ここでは4個)のYヘッド681〜684を備えている。Yヘッド681〜684は、基準軸LVに関して、Yヘッド674〜671と対称な位置に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド674〜671及びYヘッド681〜684を、それぞれYヘッド67及びYヘッド68とも表記する。
【0047】
アライメント計測の際には、少なくとも各1つのYヘッド67,68が、それぞれYスケール39Y2,39Y1に対向する。このYヘッド67,68(すなわち、Yヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E,70F(図7参照))によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
【0048】
また、本実施形態では、セカンダリアライメント系のベースライン計測時などに、セカンダリアライメント系AL21,AL24にX軸方向でそれぞれ隣接するYヘッド673,682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ70E2,70F2と呼ぶ。また、識別のため、Yスケール39Y2,39Y1に対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダを、Yエンコーダ70E1,70F1と呼ぶ。
【0049】
エンコーダシステム150(図7参照)を構成するエンコーダ70A〜70Fの上記各ヘッド(641〜645,651〜655,661〜668,671〜674,681〜684)として、例えば、米国特許第7,238,931号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されている回折干渉型のエンコーダヘッドを用いることができる。この種のエンコーダヘッドでは、2つの計測ビームを対応するスケールに照射し、それぞれの戻り光を1つの干渉光に合成して受光し、その干渉光の強度を光検出器により検出し、その干渉光の強度変化より、スケールの計測方向(回折格子の周期方向)への変位を計測する。
【0050】
上述したエンコーダ70A〜70Fの計測値は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、エンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又はエンコーダ70E1,70F1,70B及び70Dのうちの3つの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。また、主制御装置20は、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz方向の回転を制御する。
【0051】
さらに、本実施形態の露光装置100では、図4及び図6に示されるように、照射系90a及び受光系90bから成る多点焦点位置検出系(以下、「多点AF系」と略述する)が設けられている。多点AF系としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式が採用されている。本実施形態では、一例として、前述のヘッドユニット62Eの−X端部の+Y側に照射系90aが配置され、これに対峙する状態で、前述のヘッドユニット62Fの+X端部の+Y側に受光系90bが配置されている。なお、多点AF系(90a,90b)は、メインフレームの下面に固定されている。
【0052】
図4及び図6では、それぞれ検出ビームが照射される複数の検出点が、個別に図示されず、照射系90a及び受光系90bの間でX軸方向に延びる細長い検出領域(ビーム領域)AFとして示されている。検出領域AFは、X軸方向の長さがウエハWの直径と同程度に設定されているので、ウエハWをY軸方向に1回スキャンするだけで、ウエハWのほぼ全面でZ軸方向の位置情報(面位置情報)を計測できる。
【0053】
図6に示されるように、多点AF系(90a,90b)の検出領域AFの両端部近傍に、基準軸LVに関して対称な配置で、面位置計測システム180の一部を構成する各一対のZ位置計測用のヘッド(以下、「Zヘッド」と略記する)72a,72b、及び72c,72dが設けられている。これらのZヘッド72a〜72dは、不図示のメインフレームの下面に固定されている。
【0054】
Zヘッド72a〜72dとしては、例えば、CDドライブ装置などで用いられる光ピックアップと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられる。Zヘッド72a〜72dは、ウエハテーブルWTBに対し上方から計測ビームを照射し、その反射光を受光して、照射点におけるウエハテーブルWTBの面位置を計測する。なお、本実施形態では、Zヘッドの計測ビームは、前述のYスケール39Y1,39Y2を構成する反射型回折格子の面によって反射される。
【0055】
さらに、前述のヘッドユニット62A,62Cは、図6に示されるように、それぞれが備える5つのYヘッド65j,64i(i,j=1〜5)と同じX位置に、ただしY位置をずらして、それぞれ5つのZヘッド76j,74i(i,j=1〜5)を備えている。そして、ヘッドユニット62A,62Cのそれぞれに属する5つのZヘッド76j,74iは、互いに基準軸LVに関して対称に配置されている。なお、各Zヘッド76j,74iとしては、前述のZヘッド72a〜72dと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられる。
【0056】
上述したZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765は、図7に示されるように、信号処理・選択装置170を介して主制御装置20に接続されており、主制御装置20は、信号処理・選択装置170を介してZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765の中から任意のZヘッドを選択して作動状態とし、その作動状態としたZヘッドで検出した面位置情報を信号処理・選択装置170を介して受け取る。本実施形態では、Zヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765と、信号処理・選択装置170とを含んでウエハステージWSTのZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向の位置情報を計測する面位置計測システム180が構成されている。
【0057】
本実施形態では、主制御装置20は、面位置計測システム180(図7参照)を用いて、ウエハステージWSTの有効ストローク領域、すなわち露光及びアライメント計測のためにウエハステージWSTが移動する領域において、その2自由度方向(Z,θy)の位置座標を計測する。
【0058】
図7には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0059】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書の実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、アンローディングポジションUP(図4参照)でのウエハWのアンロード、ローディングポジションLP(図4参照)での新たなウエハWのウエハテーブルWTB上へのロード、計測プレート30の基準マークFMとプライマリアライメント系AL1とを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック前半の処理、エンコーダシステム及び干渉計システムの原点の再設定(リセット)、アライメント系AL1,AL21〜AL24を用いたウエハWのアライメント計測、これと並行したフォーカスマッピング、空間像計測装置45A,45Bを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理、並びにアライメント計測の結果求められるウエハ上の各ショット領域の位置情報と、最新のアライメント系のベースラインとに基づく、ステップ・アンド・スキャン方式でのウエハW上の複数のショット領域の露光などの、ウエハステージWSTを用いた一連の処理が、主制御装置20によって実行される。なお、詳細説明については省略する。
【0060】
なお、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン計測は、適宜なタイミングで、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示される方法と同様に、前述のエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz回転を調整した状態で、アライメント系AL1、AL21〜AL24を用いて、それぞれの視野内にあるFDバー46上の基準マークMを同時に計測することで行われる。
【0061】
次に、本実施形態の露光装置100における、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果の誤差補正について説明する。
【0062】
主制御装置20は、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWを露光する際に、これと並行して、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果の誤差情報を作成する。ここで、誤差情報を作成するために、干渉計システム118を基準計測系として採用する。
【0063】
露光にあたり、主制御装置20は、エンコーダシステム150を構成する複数のXヘッド及びYヘッドのうち、ウエハステージWSTの移動に伴って、Xスケール、Yスケールに対向するXヘッド、Yヘッド、及び面位置計測システム180を構成する複数のZヘッドのうち、ウエハステージWSTの移動に伴って、Yスケールに対向するZヘッドを用いて、ウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測する。主制御装置20は、その結果に基づいて、ウエハステージWSTをX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に駆動する。なお、以下では、説明の簡略化のため、主制御装置20は、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180を用いてウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測するものとする。
【0064】
ステップ・アンド・スキャン方式の露光におけるウエハステージWSTの移動経路は、ウエハWのショットマップ(ショット領域のサイズ及び配置)に応じて一意に定められているものとする。図8には、一例として、26個のショット領域Sm(m=1〜26)を有するウエハWに対する上記露光におけるウエハステージWSTの移動経路が示されている。この移動経路は、露光中心(露光領域IAの中心)の開始位置Bから終了位置Eまでの移動経路(以下、移動経路BEと呼ぶ)である。ステップ・アンド・スキャン方式の露光において、露光中心は、開始位置Bから、移動経路BEに沿って、終了位置Eまで、停止することなく、ウエハWに対して移動する。なお、実際には、露光中心が固定で、ウエハWが、移動経路BEとは、逆の経路に沿って移動するが、ここでは、説明を分かり易くする等のため、露光中心が移動経路BEに沿ってウエハW上を移動するものとしている。
【0065】
図8中に実線で示されるY軸に平行な直線区間では、それぞれのショット領域を走査露光するために、ウエハステージWSTは等速で駆動される。また、直線区間を繋ぐ破線で示される曲線区間では、あるショット領域Smに対する走査露光が終了し、次のショット領域Sm+1に対する走査露光を開始するために、ウエハステージWSTは非走査方向(X軸方向)にステッピング駆動される。このステッピングと並行して、ウエハステージWSTは、走査方向に関して速度ゼロまで減速され、さらに逆向きに加速される。
【0066】
主制御装置20は、上述の移動経路BE(に対応するステージ座標上の経路)に沿ってウエハステージWSTを駆動すると同時に、干渉計システム118を用いてウエハステージWSTの位置(X0,Y0,Z0)を計測し、その計測結果に対する(を基準とする)エンコーダシステム150の計測結果(X,Y,Z)の差、すなわち誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)を求める。ここで、主制御装置20は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光により1枚のウエハWを露光処理する時間、例えば約10秒の間に、計測クロックの発生周期(Δt=約100μ秒)毎に誤差を記録する。従って、1枚のウエハについて、105の誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)の集合である誤差情報が求められる。なお、計算機リソース、補正に求められる精度等に応じて、誤差情報をショット領域毎に平均化することにより、或いは間引くことによりその情報量を減らしても良い。なお、誤差情報は、n番目のウエハについて、計測点i(=1〜105)についての誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)iの離散値の集合W(n)i=(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)i(i=1〜105)として表すこととする。
【0067】
なお、ウエハステージWSTの移動経路は、上述の通り、一意に定められているため、計測点i(=1〜105)は移動経路BE上の位置に読み替えることができる。従って、主制御装置20は、誤差情報を、移動経路BE上の位置の関数として(マップ形式で)記録する。
【0068】
図9には、一例として、X位置計測に関する誤差情報(X−X0)の変動の一例が、横軸を時間として示されている。この図9に示されるように、誤差情報(X−X0)、すなわちこれに対応する信号波形は、区間aでは徐々に変化(例えば増加)し、区間bでは、ほぼ一定の状態を維持し、区間cでは、急激に変化(増減)している。このように、一言に変動と言っても、波形はいろいろ、変化が激しい時もあれば安定な時もある。
【0069】
主制御装置20は、露光対象のすべてのウエハについて、誤差情報W(n)iを記録する。主制御装置20は、記録された誤差情報W(n)iのうちのいくつかを平均する、特に直近の露光済みのいくつかのウエハについての誤差情報W(n)iを移動平均(単純移動平均)することにより、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果(X,Y,Z)を補正するための補正情報Δi=(ΔXi,ΔYi,ΔZi)を求める。
【0070】
図10(A)及び図10(B)には、ある計測点iについて、290から390番目に露光されたウエハ(n=290〜390)に対して求められた誤差情報W(n)iの変動が示されている。図10(A)中に円で囲んで示されるように、ランダムに発生する誤差(ランダム誤差)が頻繁に発生していることが分かる。従って、誤差情報を用いて補正情報を求めるに際し、ランダム誤差を除去しなければ、該ランダム誤差により補正誤差が生じ、計測精度の低下を招くこととなる。そこで、多くの数(サンプル数)のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求める、本実施形態では大きなサンプル数の移動平均を求めることにより、平均化効果により、ランダム誤差を抑制した補正情報を求めることとする。
【0071】
図10(A)及び図10(B)には、それぞれ、サンプル数1(MA1)及び10(MA9)の誤差情報の移動平均から求められた補正情報(図中、「Correction value」と表されている)が誤差情報(図中、「real
value」と表されている)とあわせてプロットされている。図10(A)より明らかなように、サンプル数1の場合、ランダム誤差は平均化されることなく補正情報に取り込まれる。これに対し、図10(B)より明らかなように、サンプル数10の場合、ランダム誤差は平均化され、ほとんど補正情報に取り込まれないことが分かる。
【0072】
上述の通り、大きなサンプル数の移動平均から補正情報を求めることにより、ランダム誤差が抑制された補正情報を求めることができる。しかし、その一方で、飛び値が発生した場合に、補正誤差が発生し、その回復の遅れが生ずることとなる。
【0073】
そこで、本実施形態では、誤差情報の変化の程度により移動平均のサンプル数を調整する動的移動平均を採用する。この結果、誤差情報W(n)iの変化が小さい場合、例えば図9におけるb区間では多くのサンプルを用いて誤差情報の移動平均を求め、誤差情報W(n)iの変化が大きい場合、例えば図9におけるc区間では少しのサンプルの誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求めることになる。
【0074】
複数(n)のウエハが露光され、誤差情報W(n’)i(n’=1〜n,i=1〜105)が記録されているものとして、誤差情報の動的移動平均による補正情報の作成について説明する。
【0075】
主制御装置20は、複数のウエハのうちn番目(直近)に露光されたウエハについての誤差情報W(n)iを基準情報とし、複数のウエハのうちのn−1番目からn−k番目に露光されたk枚のウエハについての誤差情報W(n−j)i(j=1〜k)の平均AW(n−1〜n−k)i=(1/k)Σj=1〜kW(n−j)iを用いて、ずれεki=AW(n−1〜n−k)i−W(n)iを、k=1〜K(例えばK=10とする)に対して求める。主制御装置20は、求められたずれεki(k=1〜K)の中から最小自乗値εki2を与えるkの値を選択する。そのkの値を用いて、補正情報Δ(n+1)i=1/(k+1)Σj=0〜kW(n−j)iを求める。
【0076】
主制御装置20は、ウエハを露光する毎に、上述の通り補正情報Δ(n+1)iを求め、その結果を記録するとともに、最小自乗値εki2を与えるkの値も記録する。ここで、記録された値(kの値)の中から直近の奇数個の値の中間値を、最小自乗値を与えるkの値に替えて用いて、補正情報Δ(n+1)iを求めることとしても良い。これにより、最小自乗値を与えるkの値の飛び値を取り除くことができる。
【0077】
図11には、平均回数(サンプル数−1)が固定で1〜9の移動平均(MA1〜MA9)及び動的移動平均(動的MA)を用いた場合の補正残差(補正後の残留誤差)が示されている。この図11の表から、平均回数が固定の移動平均を用いた場合、サンプル数(平均回数)が増すにつれ、補正残差は改善される傾向にあることが分かる。これに対し、動的移動平均(動的MA)を用いた場合の補正残差は、MA9の補正残差よりも小さいことがわかる。
【0078】
図12(A)には、109から154番目に露光されたウエハ(n=109〜154)に対して(かつ、ある複数の計測点iについて)、平均回数1及び10の移動平均MA1及びMA10により求めた補正情報と本実施形態の動的移動平均により求めた補正情報とがプロットされている。MA1より求められた補正情報は、ランダム誤差が抑制されていないため、そのばらつきの程度が大きいことが分かる。これに対し、MA10より求められた補正情報は、ランダム誤差が抑制され、そのばらつきの程度は小さい。しかし、130番目のウエハに対する補正情報について発生した飛び値の影響が131番目から139番目のウエハに対する補正情報に現れ、その回復の遅れが生じていることがわかる。これに対して、本実施形態の動的移動平均により求めた補正情報では、MA10より求められた補正情報と同様、ランダム誤差が抑制され、そのばらつきの程度は小さい。さらに、130番目のウエハに対する補正情報について発生した飛び値の影響も、132番目のウエハに対する補正情報には現れず、素早く回復していることが分かる。
【0079】
図12(B)には、動的移動平均における、平均回数(MA数)毎の使用回数の分布が示されている。MA10が最も多く、ほとんどはMA6以上である。従って、動的移動平均では、ランダム誤差が効率良く抑制されることが分かる。これに対し、僅かではあるが、MA4以下も確認することができる。これは稀に発生する飛び値に伴うもので、応答の遅れが回避されていることが期待される。
【0080】
主制御装置20は、次のn+1番目のウエハの露光において、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180を用いてウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測し、その結果と対応する補正情報Δ(n+1)i=(ΔX(n+1)i,ΔY(n+1)i,ΔZ(n+1)i)とに基づいて、換言すれば(X−ΔX(n+1)i,Y−ΔY(n+1)i,Z−ΔZ(n+1)i)に基づいて、ウエハステージWSTを駆動してn+1番目のウエハを露光する。ここで、iの値として、計測時間(あるいは移動経路BE上の位置)に対応する値が選択される。
【0081】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180と干渉計システム118との計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて、適当な数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均が求められ、該移動平均からエンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果を補正するための補正情報が求められる。主制御装置20は、誤差の変化が小さい場合には、多くの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差の変化が大きい場合には、少しの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを回避することが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態では、移動平均として、単純移動平均を採用したが、これに限らず、荷重移動平均、指数移動平均等、その他の移動平均を採用することもできる。
【0083】
また、本実施形態の露光装置100では、最小自乗値εki2を与える誤差情報の組み合わせを用いてそれらの移動平均から補正情報を求めるので、誤差の変化が小さい場合には、多くの誤差情報を用いて移動平均を求めることとなり、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となり、誤差の変化が大きい場合には、少しの誤差情報を用いて移動平均を求めることとなり、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを抑制することが可能となる。
【0084】
なお、上記実施形態で説明したエンコーダシステム及び面位置計測システムの構成は一例に過ぎないことは勿論である。例えば、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してYヘッド、Xヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、Zヘッドもウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。また、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部を設ける場合にも、2次元格子を設けても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、例えばヘッドユニット62A,62Cの内部にエンコーダヘッドとZヘッドとが、別々に設けられている場合について説明したが、エンコーダヘッドとZヘッドとの機能を備えた単一のヘッドを、エンコーダヘッドとZヘッドの組に代えて用いても良い。かかるヘッドとしては、例えば、米国特許第7,561,280号明細書に開示されている変位計測センサヘッドを用いることができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、露光装置が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、例えば国際公開第99/49504号、欧州特許出願公開第1420298号明細書、米国特許第6,952,253号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、露光装置が、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置である場合について説明したが、これに限らず、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも上記実施形態は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0088】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0089】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0090】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも上記実施形態を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0091】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0092】
また、例えば干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
【0093】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0094】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0095】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0096】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【符号の説明】
【0097】
20…主制御装置、39X1,39X2…Xスケール、39Y1,39Y2…Yスケール、50…ステージ装置、62A〜62F…ヘッドユニット、64,65,67,68…Yヘッド、66…Xヘッド、70A,70C…Yエンコーダ、70B,70D…Xエンコーダ、72a〜72d,74,76…Zヘッド、100…露光装置、118…干渉計システム、124…ステージ駆動系、150…エンコーダシステム、180…面位置計測システム、200…計測システム、PL…投影光学系、PU…投影ユニット、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WTB…ウエハテーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法及びデバイス製造方法に係り、特に、物体を露光する露光方法及び該露光方法を利用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが、主として用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージが、例えばリニアモータ等により2次元方向に駆動される。ウエハステージの位置は、一般的に、長期に渡って高い安定性を有するレーザ干渉計を用いて、計測されていた。
【0004】
近年の半導体素子の高集積化に伴うパターンの微細化により、さらに高精度なウエハステージの位置制御性能が要求されるようになった。そのため、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化や温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が、無視できなくなった。
【0005】
そこで、レーザ干渉計と同程度以上の計測分解能を有するエンコーダと面位置計測センサが採用された露光装置に関する発明がされている。例えば、特許文献1に記載される露光装置では、ウエハステージに設けられた計測面(を構成する反射型回折格子)に計測ビームを照射し、その反射光を検出することによって、計側面(すなわちウエハステージ)の回折格子の周期方向に関する変位又は面位置を計測するエンコーダシステム及び面位置計測システムが採用されている。
【0006】
しかし、これらの計測システムを採用しても、次世代の露光装置で要求されるウエハステージの位置の計測精度(及び制御精度)を達成することは、困難であることが、最近になって判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、複数の物体を連続して露光する露光方法であって、物体の露光の度毎に、露光対象の物体を保持して移動する移動体の位置を第1及び第2位置計測系により計測し、前記第1位置計測系の計測結果と、補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動しつつ該移動体に保持された物体を露光することと、前記露光することと並行して、前記第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差から前記物体についての誤差情報を作成することと、露光対象の物体の露光に先立ち、露光が終了した複数の物体の露光処理と並行して、前記作成することにより作成された前記複数の物体についての前記誤差情報のうち、前記誤差の変化の大小に応じた適当な数の物体についての前記誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求め、該移動平均から前記補正情報を求めることと、を含み、前記補正情報を求めることでは、前記誤差の変化が小さい場合に、前記適当な数を大きくし、前記誤差の変化が大きい場合に、前記適当な数を小さくする露光方法が、提供される。
【0009】
ここで、移動平均は、単純移動平均に限らず、荷重移動平均、指数移動平均等、その他の移動平均を含む。
【0010】
これによれば、第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて適当な数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めることで、第1位置計測系の計測結果を補正するための補正情報が求められる。この場合、誤差の変化が小さい場合には、多くの数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差の変化が大きい場合には、少しの数の物体についての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による応答の遅れを回避することが可能となる。
【0011】
本発明は、第2の観点からすると、本発明の露光方法により物体上にパターンを形成することと、パターンが形成された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ウエハステージを示す平面図である。
【図3】図1のウエハステージとともに干渉計の配置を示す平面図である。
【図4】図1の露光装置が備える各種計測装置(エンコーダ、アライメント系、多点AF系、Zヘッドなど)の配置を示す平面図である。
【図5】エンコーダヘッド(Xヘッド、Yヘッド)とアライメント系の配置を示す平面図である。
【図6】Zヘッドと多点AF系の配置を示す平面図である。
【図7】一実施形態に係る露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【図8】ステップ・アンド・スキャン方式の露光におけるウエハステージの移動経路に対応する露光中心のウエハ上の移動経路を表す図である。
【図9】ウエハを露光すると同時に求められる誤差情報の例を表す図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、それぞれ、サンプル数1(MA1)及び10(MA9)の誤差情報の移動平均から求められた補正情報を示す図である。
【図11】サンプル数が固定の誤差情報の移動平均及び動的移動平均から求められる補正情報を用いてエンコーダシステム及び面位置計測システムの計測結果を補正した場合の補正残差を表す表である。
【図12】図12(A)は誤差情報の移動平均(MA1及びMA10)、並びに動的移動平均から求められる補正情報を示すグラフ、図12(B)は動的移動平均における平均回数(MA数)毎の使用回数の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図1〜図12(B)に基づいて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられている。以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0015】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハステージWSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1では、ウエハステージWST上にウエハWが載置されている。
【0016】
照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系10の構成は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0017】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図7参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0018】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図7参照)に送られる。
【0019】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、不図示のメインフレームに支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0020】
ステージ装置50は、図1に示されるように、ベース盤12上に配置されたウエハステージWST、ウエハステージWSTの位置情報を計測する計測システム200(図7参照)、及びウエハステージWSTを駆動するステージ駆動系124(図7参照)等を備えている。計測システム200は、図7に示されるように、干渉計システム118、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180などを含む。
【0021】
ウエハステージWSTは、不図示の非接触軸受、例えばエアベアリングなどにより、数μm程度の隙間(ギャップ/クリアランス)を介して、ベース盤12の上方に支持されている。また、ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系124(図7参照)によって、X軸方向及びY軸方向に所定ストロークで駆動可能である。
【0022】
ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。ウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、リニアモータ及びZ・レベリング機構(ボイスコイルモータなどを含む)を含む駆動系によって、ベース盤12に対し、6自由度方向(X軸,Y軸,Z軸,θx,θy及びθzの各方向)に駆動可能に構成されている。
【0023】
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。図2に示されるように、ウエハテーブルWTB上面のウエハホルダ(ウエハW)の+Y側には、計測プレート30が設けられている。この計測プレート30には、中央に基準マークFMが設けられ、基準マークFMのX軸方向の両側に一対の空間像計測用スリット板SLが、設けられている。各空間像計測用スリット板SLには、一例としてY軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Xスリット)と、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Yスリット)と、が形成されている。
【0024】
そして、各空間像計測用スリット板SLに対応して、ウエハテーブルWTBの内部には、レンズ等を含む光学系及び光電子増倍管(フォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT))等の受光素子が配置され、米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるものと同様の一対の空間像計測装置45A,45B(図7参照)が設けられている。空間像計測装置45A,45Bの計測結果(受光素子の出力信号)は、信号処理装置(不図示)により所定の信号処理が施されて、主制御装置20に送られる(図7参照)。
【0025】
また、ウエハテーブルWTB上面には、後述するエンコーダシステムで用いられるスケールが配置されている。詳述すると、ウエハテーブルWTB上面のX軸方向(図2における紙面内左右方向)の一側と他側の領域には、それぞれYスケール39Y1,39Y2が固定されている。Yスケール39Y1,39Y2は、例えば、X軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸方向に配列された、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0026】
同様に、ウエハテーブルWTB上面のY軸方向(図2における紙面内上下方向)の一側と他側の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態で、Xスケール39X1,39X2がそれぞれ固定されている。Xスケール39X1,39X2は、例えば、Y軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸方向に配列された、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0027】
なお、格子線37,38のピッチは、例えば1μmと設定される。図2及びその他の図においては、図示の便宜上から、格子のピッチは実際のピッチよりも大きく図示されている。
【0028】
また、回折格子を保護するために、低熱膨張率のガラス板でカバーすることも有効である。ここで、ガラス板としては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのものを用いることができ、そのガラス板の表面がウエハの表面と同じ高さ(同一面)になるよう、ウエハテーブルWTB上面に設置される。
【0029】
また、ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、図2に示されるように、後述する干渉計システムで用いられる反射面17a,反射面17bが形成されている。
【0030】
また、ウエハテーブルWTBの+Y側の面には、図2に示されるように、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示されるCDバーと同様の、X軸方向に延びるフィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略記する)46が取り付けられている。FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、センターラインLLに関して対称な配置で、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。また、FDバー46の上面には、複数の基準マークMが形成されている。各基準マークMとしては、後述するアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。
【0031】
本実施形態の露光装置100では、図4及び図5に示されるように、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV上で、光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1は、不図示のメインフレームの下面に固定されている。図5に示されるように、プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、可動式の支持部材を介してメインフレーム(不図示)の下面に固定されており、駆動機構601〜604(図7参照)により、X軸方向に関してそれらの検出領域の相対位置が調整可能となっている。
【0032】
本実施形態では、アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれとして、例えば画像処理方式のFIA(Field Image
Alignment)系が用いられている。アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
【0033】
干渉計システム118は、図3に示されるように、反射面17a又は17bにそれぞれ干渉計ビーム(測長ビーム)を照射し、その反射光を受光して、ウエハステージWSTのXY平面内の位置を計測するY干渉計16と、3つのX干渉計126〜128と、一対のZ干渉計43A,43Bとを備えている。詳述すると、Y干渉計16は、基準軸LVに関して対称な一対の測長ビームB41,B42を含む少なくとも3つのY軸に平行な測長ビームを反射面17a、及び後述する移動鏡41に照射する。また、X干渉計126は、図3に示されるように、光軸AXと基準軸LVとに直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LHに関して対称な一対の測長ビームB51,B52を含む少なくとも3つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計127は、プライマリアライメント系AL1の検出中心にて基準軸LVと直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LAを測長軸とする測長ビームB6を含む少なくとも2つのY軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計128は、Y軸に平行な測長ビームB7を反射面17bに照射する。
【0034】
干渉計システム118の上記各干渉計からの位置情報は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、Y干渉計16及びX干渉計126又は127の計測結果に基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX,Y位置に加え、θx方向の回転(すなわちピッチング)、θy方向の回転(すなわちローリング)、及びθz方向の回転(すなわちヨーイング)をも算出することができる。
【0035】
また、図1に示されるように、ステージ本体91の−Y側の側面に、凹形状の反射面を有する移動鏡41が取り付けられている。移動鏡41は、図2からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも長い。
【0036】
移動鏡41に対向して、干渉計システム118(図7参照)の一部を構成する一対のZ干渉計43A,43Bが設けられている(図1及び図3参照)。Z干渉計43A,43Bは、それぞれ2つのY軸に平行な測長ビームB1,B2を移動鏡41に照射し、該移動鏡41を介して測長ビームB1,B2のそれぞれを、例えばメインフレーム(不図示)に固定された固定鏡47A,47Bに照射する。そして、それぞれの反射光を受光して、測長ビームB1,B2の光路長を計測する。その結果より、主制御装置20は、ウエハステージWSTの4自由度方向(Y軸,Z軸,θy及びθzの各方向)の位置を算出する。
【0037】
本実施形態の露光装置100には、干渉計システム118とは独立に、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を計測するために、エンコーダシステム150を構成する複数のヘッドユニットが設けられている。
【0038】
図4に示されるように、投影ユニットPUの+X側、+Y側、−X側、及びプライマリアライメント系AL1の−Y側に、4つのヘッドユニット62A、62B、62C、及び62Dが、それぞれ配置されている。また、アライメント系AL1、AL21〜AL24のX軸方向の両外側にヘッドユニット62E、62Fが、それぞれ設けられている。ヘッドユニット62A〜62Fは、支持部材を介して、メインフレーム(不図示)に吊り下げ状態で固定されている。なお、図4において、符号UPは、ウエハステージWST上にあるウエハのアンロードが行われるアンローディングポジションを示し、符号LPは、ウエハステージWST上への新たなウエハのロードが行われるローディングポジションを示す。
【0039】
ヘッドユニット62A、62Cは、図5に示されるように、前述の基準軸LH上に間隔WDで配置された複数(ここでは5個)のYヘッド651〜655、Yヘッド641〜645を、それぞれ備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を、それぞれ、Yヘッド65及びYヘッド64とも表記する。
【0040】
ヘッドユニット62A,62Cは、Yスケール39Y1,39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼のYリニアエンコーダ70A,70C(図7参照)を構成する。なお、以下では、Yリニアエンコーダを、適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略記する。
【0041】
ヘッドユニット62Bは、図5に示されるように、投影ユニットPUの+Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、プライマリアライメント系AL1の−Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド665〜668及びXヘッド661〜664をXヘッド66とも記述する。
【0042】
ヘッドユニット62B,62Dは、Xスケール39X1,39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する多眼のXリニアエンコーダ70B,70D(図7参照)を構成する。なお、以下では、Xリニアエンコーダを、適宜、「エンコーダ」と略記する。
【0043】
ここで、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5個のYヘッド65,64(より正確には、Yヘッド65,64が発する計測ビームのスケール上の照射点)のX軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。同様に、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(より正確には、Xヘッド66が発する計測ビームのスケール上の照射点)のY軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するXスケール39X1又は39X2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。
【0044】
なお、ヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(つなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも狭く設定されている。
【0045】
ヘッドユニット62Eは、図5に示されるように、複数(ここでは4個)のYヘッド671〜674を備えている。
【0046】
ヘッドユニット62Fは、複数(ここでは4個)のYヘッド681〜684を備えている。Yヘッド681〜684は、基準軸LVに関して、Yヘッド674〜671と対称な位置に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド674〜671及びYヘッド681〜684を、それぞれYヘッド67及びYヘッド68とも表記する。
【0047】
アライメント計測の際には、少なくとも各1つのYヘッド67,68が、それぞれYスケール39Y2,39Y1に対向する。このYヘッド67,68(すなわち、Yヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E,70F(図7参照))によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
【0048】
また、本実施形態では、セカンダリアライメント系のベースライン計測時などに、セカンダリアライメント系AL21,AL24にX軸方向でそれぞれ隣接するYヘッド673,682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ70E2,70F2と呼ぶ。また、識別のため、Yスケール39Y2,39Y1に対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダを、Yエンコーダ70E1,70F1と呼ぶ。
【0049】
エンコーダシステム150(図7参照)を構成するエンコーダ70A〜70Fの上記各ヘッド(641〜645,651〜655,661〜668,671〜674,681〜684)として、例えば、米国特許第7,238,931号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されている回折干渉型のエンコーダヘッドを用いることができる。この種のエンコーダヘッドでは、2つの計測ビームを対応するスケールに照射し、それぞれの戻り光を1つの干渉光に合成して受光し、その干渉光の強度を光検出器により検出し、その干渉光の強度変化より、スケールの計測方向(回折格子の周期方向)への変位を計測する。
【0050】
上述したエンコーダ70A〜70Fの計測値は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、エンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又はエンコーダ70E1,70F1,70B及び70Dのうちの3つの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。また、主制御装置20は、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz方向の回転を制御する。
【0051】
さらに、本実施形態の露光装置100では、図4及び図6に示されるように、照射系90a及び受光系90bから成る多点焦点位置検出系(以下、「多点AF系」と略述する)が設けられている。多点AF系としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式が採用されている。本実施形態では、一例として、前述のヘッドユニット62Eの−X端部の+Y側に照射系90aが配置され、これに対峙する状態で、前述のヘッドユニット62Fの+X端部の+Y側に受光系90bが配置されている。なお、多点AF系(90a,90b)は、メインフレームの下面に固定されている。
【0052】
図4及び図6では、それぞれ検出ビームが照射される複数の検出点が、個別に図示されず、照射系90a及び受光系90bの間でX軸方向に延びる細長い検出領域(ビーム領域)AFとして示されている。検出領域AFは、X軸方向の長さがウエハWの直径と同程度に設定されているので、ウエハWをY軸方向に1回スキャンするだけで、ウエハWのほぼ全面でZ軸方向の位置情報(面位置情報)を計測できる。
【0053】
図6に示されるように、多点AF系(90a,90b)の検出領域AFの両端部近傍に、基準軸LVに関して対称な配置で、面位置計測システム180の一部を構成する各一対のZ位置計測用のヘッド(以下、「Zヘッド」と略記する)72a,72b、及び72c,72dが設けられている。これらのZヘッド72a〜72dは、不図示のメインフレームの下面に固定されている。
【0054】
Zヘッド72a〜72dとしては、例えば、CDドライブ装置などで用いられる光ピックアップと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられる。Zヘッド72a〜72dは、ウエハテーブルWTBに対し上方から計測ビームを照射し、その反射光を受光して、照射点におけるウエハテーブルWTBの面位置を計測する。なお、本実施形態では、Zヘッドの計測ビームは、前述のYスケール39Y1,39Y2を構成する反射型回折格子の面によって反射される。
【0055】
さらに、前述のヘッドユニット62A,62Cは、図6に示されるように、それぞれが備える5つのYヘッド65j,64i(i,j=1〜5)と同じX位置に、ただしY位置をずらして、それぞれ5つのZヘッド76j,74i(i,j=1〜5)を備えている。そして、ヘッドユニット62A,62Cのそれぞれに属する5つのZヘッド76j,74iは、互いに基準軸LVに関して対称に配置されている。なお、各Zヘッド76j,74iとしては、前述のZヘッド72a〜72dと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられる。
【0056】
上述したZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765は、図7に示されるように、信号処理・選択装置170を介して主制御装置20に接続されており、主制御装置20は、信号処理・選択装置170を介してZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765の中から任意のZヘッドを選択して作動状態とし、その作動状態としたZヘッドで検出した面位置情報を信号処理・選択装置170を介して受け取る。本実施形態では、Zヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765と、信号処理・選択装置170とを含んでウエハステージWSTのZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向の位置情報を計測する面位置計測システム180が構成されている。
【0057】
本実施形態では、主制御装置20は、面位置計測システム180(図7参照)を用いて、ウエハステージWSTの有効ストローク領域、すなわち露光及びアライメント計測のためにウエハステージWSTが移動する領域において、その2自由度方向(Z,θy)の位置座標を計測する。
【0058】
図7には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0059】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書の実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、アンローディングポジションUP(図4参照)でのウエハWのアンロード、ローディングポジションLP(図4参照)での新たなウエハWのウエハテーブルWTB上へのロード、計測プレート30の基準マークFMとプライマリアライメント系AL1とを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック前半の処理、エンコーダシステム及び干渉計システムの原点の再設定(リセット)、アライメント系AL1,AL21〜AL24を用いたウエハWのアライメント計測、これと並行したフォーカスマッピング、空間像計測装置45A,45Bを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理、並びにアライメント計測の結果求められるウエハ上の各ショット領域の位置情報と、最新のアライメント系のベースラインとに基づく、ステップ・アンド・スキャン方式でのウエハW上の複数のショット領域の露光などの、ウエハステージWSTを用いた一連の処理が、主制御装置20によって実行される。なお、詳細説明については省略する。
【0060】
なお、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン計測は、適宜なタイミングで、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示される方法と同様に、前述のエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz回転を調整した状態で、アライメント系AL1、AL21〜AL24を用いて、それぞれの視野内にあるFDバー46上の基準マークMを同時に計測することで行われる。
【0061】
次に、本実施形態の露光装置100における、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果の誤差補正について説明する。
【0062】
主制御装置20は、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWを露光する際に、これと並行して、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果の誤差情報を作成する。ここで、誤差情報を作成するために、干渉計システム118を基準計測系として採用する。
【0063】
露光にあたり、主制御装置20は、エンコーダシステム150を構成する複数のXヘッド及びYヘッドのうち、ウエハステージWSTの移動に伴って、Xスケール、Yスケールに対向するXヘッド、Yヘッド、及び面位置計測システム180を構成する複数のZヘッドのうち、ウエハステージWSTの移動に伴って、Yスケールに対向するZヘッドを用いて、ウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測する。主制御装置20は、その結果に基づいて、ウエハステージWSTをX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に駆動する。なお、以下では、説明の簡略化のため、主制御装置20は、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180を用いてウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測するものとする。
【0064】
ステップ・アンド・スキャン方式の露光におけるウエハステージWSTの移動経路は、ウエハWのショットマップ(ショット領域のサイズ及び配置)に応じて一意に定められているものとする。図8には、一例として、26個のショット領域Sm(m=1〜26)を有するウエハWに対する上記露光におけるウエハステージWSTの移動経路が示されている。この移動経路は、露光中心(露光領域IAの中心)の開始位置Bから終了位置Eまでの移動経路(以下、移動経路BEと呼ぶ)である。ステップ・アンド・スキャン方式の露光において、露光中心は、開始位置Bから、移動経路BEに沿って、終了位置Eまで、停止することなく、ウエハWに対して移動する。なお、実際には、露光中心が固定で、ウエハWが、移動経路BEとは、逆の経路に沿って移動するが、ここでは、説明を分かり易くする等のため、露光中心が移動経路BEに沿ってウエハW上を移動するものとしている。
【0065】
図8中に実線で示されるY軸に平行な直線区間では、それぞれのショット領域を走査露光するために、ウエハステージWSTは等速で駆動される。また、直線区間を繋ぐ破線で示される曲線区間では、あるショット領域Smに対する走査露光が終了し、次のショット領域Sm+1に対する走査露光を開始するために、ウエハステージWSTは非走査方向(X軸方向)にステッピング駆動される。このステッピングと並行して、ウエハステージWSTは、走査方向に関して速度ゼロまで減速され、さらに逆向きに加速される。
【0066】
主制御装置20は、上述の移動経路BE(に対応するステージ座標上の経路)に沿ってウエハステージWSTを駆動すると同時に、干渉計システム118を用いてウエハステージWSTの位置(X0,Y0,Z0)を計測し、その計測結果に対する(を基準とする)エンコーダシステム150の計測結果(X,Y,Z)の差、すなわち誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)を求める。ここで、主制御装置20は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光により1枚のウエハWを露光処理する時間、例えば約10秒の間に、計測クロックの発生周期(Δt=約100μ秒)毎に誤差を記録する。従って、1枚のウエハについて、105の誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)の集合である誤差情報が求められる。なお、計算機リソース、補正に求められる精度等に応じて、誤差情報をショット領域毎に平均化することにより、或いは間引くことによりその情報量を減らしても良い。なお、誤差情報は、n番目のウエハについて、計測点i(=1〜105)についての誤差(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)iの離散値の集合W(n)i=(X−X0,Y−Y0,Z−Z0)i(i=1〜105)として表すこととする。
【0067】
なお、ウエハステージWSTの移動経路は、上述の通り、一意に定められているため、計測点i(=1〜105)は移動経路BE上の位置に読み替えることができる。従って、主制御装置20は、誤差情報を、移動経路BE上の位置の関数として(マップ形式で)記録する。
【0068】
図9には、一例として、X位置計測に関する誤差情報(X−X0)の変動の一例が、横軸を時間として示されている。この図9に示されるように、誤差情報(X−X0)、すなわちこれに対応する信号波形は、区間aでは徐々に変化(例えば増加)し、区間bでは、ほぼ一定の状態を維持し、区間cでは、急激に変化(増減)している。このように、一言に変動と言っても、波形はいろいろ、変化が激しい時もあれば安定な時もある。
【0069】
主制御装置20は、露光対象のすべてのウエハについて、誤差情報W(n)iを記録する。主制御装置20は、記録された誤差情報W(n)iのうちのいくつかを平均する、特に直近の露光済みのいくつかのウエハについての誤差情報W(n)iを移動平均(単純移動平均)することにより、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果(X,Y,Z)を補正するための補正情報Δi=(ΔXi,ΔYi,ΔZi)を求める。
【0070】
図10(A)及び図10(B)には、ある計測点iについて、290から390番目に露光されたウエハ(n=290〜390)に対して求められた誤差情報W(n)iの変動が示されている。図10(A)中に円で囲んで示されるように、ランダムに発生する誤差(ランダム誤差)が頻繁に発生していることが分かる。従って、誤差情報を用いて補正情報を求めるに際し、ランダム誤差を除去しなければ、該ランダム誤差により補正誤差が生じ、計測精度の低下を招くこととなる。そこで、多くの数(サンプル数)のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求める、本実施形態では大きなサンプル数の移動平均を求めることにより、平均化効果により、ランダム誤差を抑制した補正情報を求めることとする。
【0071】
図10(A)及び図10(B)には、それぞれ、サンプル数1(MA1)及び10(MA9)の誤差情報の移動平均から求められた補正情報(図中、「Correction value」と表されている)が誤差情報(図中、「real
value」と表されている)とあわせてプロットされている。図10(A)より明らかなように、サンプル数1の場合、ランダム誤差は平均化されることなく補正情報に取り込まれる。これに対し、図10(B)より明らかなように、サンプル数10の場合、ランダム誤差は平均化され、ほとんど補正情報に取り込まれないことが分かる。
【0072】
上述の通り、大きなサンプル数の移動平均から補正情報を求めることにより、ランダム誤差が抑制された補正情報を求めることができる。しかし、その一方で、飛び値が発生した場合に、補正誤差が発生し、その回復の遅れが生ずることとなる。
【0073】
そこで、本実施形態では、誤差情報の変化の程度により移動平均のサンプル数を調整する動的移動平均を採用する。この結果、誤差情報W(n)iの変化が小さい場合、例えば図9におけるb区間では多くのサンプルを用いて誤差情報の移動平均を求め、誤差情報W(n)iの変化が大きい場合、例えば図9におけるc区間では少しのサンプルの誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求めることになる。
【0074】
複数(n)のウエハが露光され、誤差情報W(n’)i(n’=1〜n,i=1〜105)が記録されているものとして、誤差情報の動的移動平均による補正情報の作成について説明する。
【0075】
主制御装置20は、複数のウエハのうちn番目(直近)に露光されたウエハについての誤差情報W(n)iを基準情報とし、複数のウエハのうちのn−1番目からn−k番目に露光されたk枚のウエハについての誤差情報W(n−j)i(j=1〜k)の平均AW(n−1〜n−k)i=(1/k)Σj=1〜kW(n−j)iを用いて、ずれεki=AW(n−1〜n−k)i−W(n)iを、k=1〜K(例えばK=10とする)に対して求める。主制御装置20は、求められたずれεki(k=1〜K)の中から最小自乗値εki2を与えるkの値を選択する。そのkの値を用いて、補正情報Δ(n+1)i=1/(k+1)Σj=0〜kW(n−j)iを求める。
【0076】
主制御装置20は、ウエハを露光する毎に、上述の通り補正情報Δ(n+1)iを求め、その結果を記録するとともに、最小自乗値εki2を与えるkの値も記録する。ここで、記録された値(kの値)の中から直近の奇数個の値の中間値を、最小自乗値を与えるkの値に替えて用いて、補正情報Δ(n+1)iを求めることとしても良い。これにより、最小自乗値を与えるkの値の飛び値を取り除くことができる。
【0077】
図11には、平均回数(サンプル数−1)が固定で1〜9の移動平均(MA1〜MA9)及び動的移動平均(動的MA)を用いた場合の補正残差(補正後の残留誤差)が示されている。この図11の表から、平均回数が固定の移動平均を用いた場合、サンプル数(平均回数)が増すにつれ、補正残差は改善される傾向にあることが分かる。これに対し、動的移動平均(動的MA)を用いた場合の補正残差は、MA9の補正残差よりも小さいことがわかる。
【0078】
図12(A)には、109から154番目に露光されたウエハ(n=109〜154)に対して(かつ、ある複数の計測点iについて)、平均回数1及び10の移動平均MA1及びMA10により求めた補正情報と本実施形態の動的移動平均により求めた補正情報とがプロットされている。MA1より求められた補正情報は、ランダム誤差が抑制されていないため、そのばらつきの程度が大きいことが分かる。これに対し、MA10より求められた補正情報は、ランダム誤差が抑制され、そのばらつきの程度は小さい。しかし、130番目のウエハに対する補正情報について発生した飛び値の影響が131番目から139番目のウエハに対する補正情報に現れ、その回復の遅れが生じていることがわかる。これに対して、本実施形態の動的移動平均により求めた補正情報では、MA10より求められた補正情報と同様、ランダム誤差が抑制され、そのばらつきの程度は小さい。さらに、130番目のウエハに対する補正情報について発生した飛び値の影響も、132番目のウエハに対する補正情報には現れず、素早く回復していることが分かる。
【0079】
図12(B)には、動的移動平均における、平均回数(MA数)毎の使用回数の分布が示されている。MA10が最も多く、ほとんどはMA6以上である。従って、動的移動平均では、ランダム誤差が効率良く抑制されることが分かる。これに対し、僅かではあるが、MA4以下も確認することができる。これは稀に発生する飛び値に伴うもので、応答の遅れが回避されていることが期待される。
【0080】
主制御装置20は、次のn+1番目のウエハの露光において、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180を用いてウエハステージWSTの位置(X,Y,Z)を計測し、その結果と対応する補正情報Δ(n+1)i=(ΔX(n+1)i,ΔY(n+1)i,ΔZ(n+1)i)とに基づいて、換言すれば(X−ΔX(n+1)i,Y−ΔY(n+1)i,Z−ΔZ(n+1)i)に基づいて、ウエハステージWSTを駆動してn+1番目のウエハを露光する。ここで、iの値として、計測時間(あるいは移動経路BE上の位置)に対応する値が選択される。
【0081】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180と干渉計システム118との計測結果の間の誤差の変化の程度に応じて、適当な数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均が求められ、該移動平均からエンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果を補正するための補正情報が求められる。主制御装置20は、誤差の変化が小さい場合には、多くの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となるとともに、誤差の変化が大きい場合には、少しの数のウエハについての誤差情報を用いて移動平均を求めるので、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを回避することが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態では、移動平均として、単純移動平均を採用したが、これに限らず、荷重移動平均、指数移動平均等、その他の移動平均を採用することもできる。
【0083】
また、本実施形態の露光装置100では、最小自乗値εki2を与える誤差情報の組み合わせを用いてそれらの移動平均から補正情報を求めるので、誤差の変化が小さい場合には、多くの誤差情報を用いて移動平均を求めることとなり、ランダムに発生する誤差を効率良く抑制することが可能となり、誤差の変化が大きい場合には、少しの誤差情報を用いて移動平均を求めることとなり、移動平均による飛び値に伴う応答の遅れを抑制することが可能となる。
【0084】
なお、上記実施形態で説明したエンコーダシステム及び面位置計測システムの構成は一例に過ぎないことは勿論である。例えば、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してYヘッド、Xヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、Zヘッドもウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。また、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部を設ける場合にも、2次元格子を設けても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、例えばヘッドユニット62A,62Cの内部にエンコーダヘッドとZヘッドとが、別々に設けられている場合について説明したが、エンコーダヘッドとZヘッドとの機能を備えた単一のヘッドを、エンコーダヘッドとZヘッドの組に代えて用いても良い。かかるヘッドとしては、例えば、米国特許第7,561,280号明細書に開示されている変位計測センサヘッドを用いることができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、露光装置が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、例えば国際公開第99/49504号、欧州特許出願公開第1420298号明細書、米国特許第6,952,253号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、露光装置が、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置である場合について説明したが、これに限らず、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも上記実施形態は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0088】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0089】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0090】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも上記実施形態を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0091】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0092】
また、例えば干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
【0093】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0094】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0095】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0096】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【符号の説明】
【0097】
20…主制御装置、39X1,39X2…Xスケール、39Y1,39Y2…Yスケール、50…ステージ装置、62A〜62F…ヘッドユニット、64,65,67,68…Yヘッド、66…Xヘッド、70A,70C…Yエンコーダ、70B,70D…Xエンコーダ、72a〜72d,74,76…Zヘッド、100…露光装置、118…干渉計システム、124…ステージ駆動系、150…エンコーダシステム、180…面位置計測システム、200…計測システム、PL…投影光学系、PU…投影ユニット、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WTB…ウエハテーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物体を連続して露光する露光方法であって、
物体の露光の度毎に、露光対象の物体を保持して移動する移動体の位置を第1及び第2位置計測系により計測し、前記第1位置計測系の計測結果と、補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動しつつ該移動体に保持された物体を露光することと、
前記露光することと並行して、前記第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差から前記物体についての誤差情報を作成することと、
露光対象の物体の露光に先立ち、露光が終了した複数の物体の露光処理と並行して、前記作成することにより作成された前記複数の物体についての前記誤差情報のうち、前記誤差の変化の大小に応じた適当な数の物体についての前記誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求め、該移動平均から前記補正情報を求めることと、を含み、
前記補正情報を求めることでは、前記誤差の変化が小さい場合に、前記適当な数を大きくし、前記誤差の変化が大きい場合に、前記適当な数を小さくする露光方法。
【請求項2】
前記補正情報を求めることでは、前記複数の物体のうちの少なくとの1つの物体についての誤差情報の組を複数用いて、前記誤差情報の基準情報からのずれを求め、該ずれの中の最小自乗値を与える前記複数の組のうちの1つの組に含まれる前記誤差情報の移動平均から前記補正情報を求める請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記誤差情報は、前記複数(n)の物体のそれぞれについて、前記移動体の駆動領域内の複数の計測点i(i≫1)に関する離散値の集合W(n’)i(n’=1〜n)として与えられ、
前記補正情報を求めることでは、前記複数の物体のうちのn番目に露光された物体についての前記誤差情報W(n)iを前記基準情報とし、前記複数の物体のうちのn−1番目からn−k番目に露光された物体についての前記誤差情報W(n−j)i(j=1〜k)の平均AW(n−1〜n−k)i=(1/k)Σj=1〜kW(n−j)iを用いて前記ずれεki=AW(n−1〜n−k)i−W(n)iをk=1〜K(K≧1)に対して求める請求項2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記補正情報を求めることでは、前記ずれεki(k=1〜K)の中から最小自乗値を与えるkの値を用いて、前記補正情報1/(k+1)Σj=0〜kW(n−j)iを求める請求項3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記補正情報を求めることでは、前記露光することを実行する毎に、前記最小自乗値を与えるkの値を記録し、該記録された値の中から直近の奇数個の値の中間値を前記最小自乗値を与えるkの値として用いる請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
前記第1位置計測系は、前記移動体と該移動体の外部との一方に配置されたヘッドから前記移動体と該移動体の外部との他方に配置された計測面に光を照射し、前記計測面からの光を受光して、前記移動体の位置を計測する請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項7】
前記第2位置計測系として干渉計が用いられる請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光方法により物体上にパターンを形成することと、
パターンが形成された前記物体を現像することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
複数の物体を連続して露光する露光方法であって、
物体の露光の度毎に、露光対象の物体を保持して移動する移動体の位置を第1及び第2位置計測系により計測し、前記第1位置計測系の計測結果と、補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動しつつ該移動体に保持された物体を露光することと、
前記露光することと並行して、前記第1及び第2位置計測系の計測結果の間の誤差から前記物体についての誤差情報を作成することと、
露光対象の物体の露光に先立ち、露光が終了した複数の物体の露光処理と並行して、前記作成することにより作成された前記複数の物体についての前記誤差情報のうち、前記誤差の変化の大小に応じた適当な数の物体についての前記誤差情報を用いて、誤差情報の移動平均を求め、該移動平均から前記補正情報を求めることと、を含み、
前記補正情報を求めることでは、前記誤差の変化が小さい場合に、前記適当な数を大きくし、前記誤差の変化が大きい場合に、前記適当な数を小さくする露光方法。
【請求項2】
前記補正情報を求めることでは、前記複数の物体のうちの少なくとの1つの物体についての誤差情報の組を複数用いて、前記誤差情報の基準情報からのずれを求め、該ずれの中の最小自乗値を与える前記複数の組のうちの1つの組に含まれる前記誤差情報の移動平均から前記補正情報を求める請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記誤差情報は、前記複数(n)の物体のそれぞれについて、前記移動体の駆動領域内の複数の計測点i(i≫1)に関する離散値の集合W(n’)i(n’=1〜n)として与えられ、
前記補正情報を求めることでは、前記複数の物体のうちのn番目に露光された物体についての前記誤差情報W(n)iを前記基準情報とし、前記複数の物体のうちのn−1番目からn−k番目に露光された物体についての前記誤差情報W(n−j)i(j=1〜k)の平均AW(n−1〜n−k)i=(1/k)Σj=1〜kW(n−j)iを用いて前記ずれεki=AW(n−1〜n−k)i−W(n)iをk=1〜K(K≧1)に対して求める請求項2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記補正情報を求めることでは、前記ずれεki(k=1〜K)の中から最小自乗値を与えるkの値を用いて、前記補正情報1/(k+1)Σj=0〜kW(n−j)iを求める請求項3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記補正情報を求めることでは、前記露光することを実行する毎に、前記最小自乗値を与えるkの値を記録し、該記録された値の中から直近の奇数個の値の中間値を前記最小自乗値を与えるkの値として用いる請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
前記第1位置計測系は、前記移動体と該移動体の外部との一方に配置されたヘッドから前記移動体と該移動体の外部との他方に配置された計測面に光を照射し、前記計測面からの光を受光して、前記移動体の位置を計測する請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項7】
前記第2位置計測系として干渉計が用いられる請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光方法により物体上にパターンを形成することと、
パターンが形成された前記物体を現像することと、
を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2013−45815(P2013−45815A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181032(P2011−181032)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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