説明

露光装置、露光方法、及びデバイスの製造方法

【課題】 露光パターンの線幅精度の悪化を抑制する露光装置、露光方法、及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】第1の波長を有し、パルス発振された第1照明光と、第1の波長とは異なる第2の波長を有し、パルス発振された第2照明光とをマスクへ照射する照射ユニットを備え、照射ユニットは、第1照明光がマスクに照射されるタイミングと、第2照明光がマスクに照射されるタイミングとが所定時間ずれるように、第1照明光と第2照明光との照射のタイミングを設定する遅延設定部を含む露光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクのパターンを基板に転写する露光装置、露光方法、及びデバイスの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マスク又はレチクル(以下「マスク」と総称する)上に形成されたパターンを感光性基板上に転写する、いわゆるリソグラフィ工程において、マスクのパターンを投影光学系を介して感光性基板上のショット(露光領域)に投影する露光装置が使用されている。
【0003】
上記露光装置の解像度及び焦点深度は、投影光学系の解像度R及び焦点深度δで表される。(1)式に示すように解像度Rは、使用する露光波長が短くなるほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。一方で、(2)式に示すように焦点深度δは、露光波長が短くなるほど、また開口数が大きいほど小さくなる。
【0004】
R=k1・λ/NA ・・・(1)
δ=±k2・λ/NA2 ・・・(2)
ここで、λは露光波長、NAは投影露光系の開口数、k1、k2はプロセス係数である。
近年の高解像度化のニーズから、露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大している。65nm〜32nmサイズのノード世代では、露光波長はArFエキシマレーザ193nmで、液浸法を利用した液浸露光装置が利用されている。液浸法とは、特許文献1に開示されているように、投影光学系の下面と基板表との間を純水等の液体で満たし、液体中での露光光の波長が空気中の1/n(nは空気中の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上させる露光方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/49504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の高解像度化に伴い、露光波長が短くなり、開口数が大きくなると、(2)式より焦点深度δが小さくなる。つまり、所定パターンの露光において確保できる焦点深度が小さくなる。
【0007】
また、エキシマレーザ光は空間コヒーレンスが非常に高く、同位相の光が干渉し合うためマスクを照明する光の照度分布にむらが生じ、基板に形成されたパターン(以下、露光パターンとする)の線幅のばらつきを悪化させる。
【0008】
これらの要因のため、投影光学系の収差変動や露光装置の装置間誤差等により、露光パターンの線幅のばらつきが大きくなり、露光パターンの線幅精度が悪化することがある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、焦点深度を拡大しつつ、マスクを照明する光の照度分布のむらを抑制することで、露光パターンの線幅のばらつきを抑え、露光パターンの線幅精度の悪化を抑制する露光装置、露光方法、並びにデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る露光装置は、第1の波長を有し、パルス発振された第1照明光と、第1の波長とは異なる第2の波長を有し、パルス発振された第2照明光とをマスクへ照射する照射ユニットを備え、照射ユニットは、第1照明光がマスクに照射されるタイミングと、第2照明光がマスクに照射されるタイミングとが所定時間ずれるように、第1照明光と第2照明光との照射のタイミングを設定する遅延設定部を含む。
【0011】
本発明の第2の態様に係る露光方法は、パルス発振される第1照明光の波長を第1の波長に設定することと、パルス発振される第2照明光の波長を第1の波長とは異なる第2の波長に設定することと、第1照明光がマスクに照射されるタイミングと第2照明光がマスクに照射されるタイミングとを所定時間ずらすことと、マスクを第1照明光と第2照明光とで照明し、パターンを基板に転写することとを有する。
【0012】
本発明の第3の態様に係るデバイス製造方法は、本発明の第2の態様に係る露光方法を用い、マスクのパターンを基板に転写することと、基板を現像することとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る露光装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る光源ユニットの平面図である。
【図3】第1実施形態に係る2波長及び遅延時間を決定してから、基板を露光していく露 光動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る光源ユニットを示す概略構成図である。
【図5】第2実施形態に係る2波長分岐装置及び遅延分岐装置の構成を示す概略構成図で ある。
【図6】第3実施形態に係る光源ユニットを示す概略構成図である。
【図7】第3実施形態に係る遅延光学系の概略構成図である。
【図8】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限
されない。
【0015】
また、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しながら説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
【0017】
まず、本実施形態の露光装置EXの構成について図1を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における露光装置EXを示す概略構成図である。
【0019】
露光装置EXは、パルス発振された照明光ELを射出する光源ユニットELSUと、射出された照明光ELでマスクMを照明する照明光学系ILと、マスクMを保持可能なマスクステージ1と、照明光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板Pに投影する投影光学系PLと、基板Pを保持可能な基板テーブル3と、基板テーブル3を駆動する基板ステージ2と、基板テーブル3上に液体LQを供給する液体供給装置4と、供給された液体LQを回収する液体回収装置5と、マスクM及び基板Pのアライメントを行うアライメント系(不図示)と、露光装置EXの動作を制御する主制御装置CONTを備えている。
【0020】
光源ユニットELSUは、相異なる2つの波長の光を射出する。光源ユニットELSUの構成の詳細については後述する。
【0021】
照明光学系ILは、光源ユニットELSUから射出された照明光ELでマスクステージ1に保持されているマスクMを照明するものである。具体的には、光源ユニットELSUから射出された照明光ELを、オプティカルインテグレータ、コンデンサレンズ、可変視野絞り等を介してマスクMを照明することで、マスクMを照明する照明領域IRを規定し、照明領域IRの照度分布を均一化する。本実施形態において、光源ユニットELSUから照明光学系ILを介して射出される照明光ELはArFエキシマレーザ光(波長193nm)である。なお、この他にも照明光ELは、水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などを用いても良い。
【0022】
マスクステージ1は、リニアモータで構成されるマスクステージ駆動装置6により駆動され、マスクMをXY平面とほぼ平行に保持して、X軸方向及びY軸方向に2次元移動可能でθZ方向に回転可能である。また、マスクMは、基板Pに投影されるデバイスのパターンが形成されたマスク又はレチクルである。マスクMは、例えばガラス基板等の透明板上にクロム等の遮光膜を用いて所定のパターンが形成された透過型マスクを含む。なお、マスクMとして、反射型マスクを用いることも出来る。
【0023】
マスクステージ1上に設けられた移動鏡7に対向する位置にマスク側レーザ干渉計8が設置されている。マスク側レーザ干渉計8は、移動鏡7に計測光を照射し、その移動鏡7を介した計測光を用いて、マスクステージ1のXY平面における位置、及びθZ方向の回転角をリアルタイムに計測する。
【0024】
投影光学系PLは、複数の光学素子(不図示)と、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子9と、複数の光学素子(不図示)及び終端光学素子9を保持する鏡筒PKとを含む。投影光学系PLは、投影領域AR1にパルス光ELを照射し、投影領域AR1に入るように配置された基板Pにおいて、基板Pの少なくとも一部に所定の投影倍率でマスクMのパターン像を投影する。投影光学系PLの投影倍率は、1/4、1/5又は1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでも良い。投影光学系PLの光軸AXは、Z軸とほぼ平行である。
【0025】
基板ステージ2は、基板Pを保持して移動可能な基板テーブル3と、基板テーブル3を支持するステージ本体10と、ステージ本体10を支持するベース11とを備えている。リニアモータで構成される基板ステージ駆動装置15により、基板テーブル3及びステージ本体10が駆動される。
【0026】
ステージ本体10は、基板ステージ駆動装置15によりX軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能となる。つまり、ステージ本体10に支持されている基板テーブル3に保持された基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。
【0027】
基板テーブル3は、基板ステージ駆動装置15により、ステージ本体10に対してZ軸、θX、及びθY方向に移動可能である。すなわち、基板テーブル3は、基板ステージ駆動装置15により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZの6つの方向に移動可能である。
【0028】
また、基板Pの周囲を覆うように保持された補助プレート13と、基板P及び補助プレート13を吸着保持可能な保持部(不図示)と、基板テーブル3上に設けられた移動鏡14とが設けられている。
【0029】
補助プレート13は、基板Pを配置可能な開口を有しており、基板Pの周縁近傍を露光する場合に、補助プレート13により投影光学系PLの下に液体LQを保持することができるように基板Pの周囲に設けられている。補助プレート13の表面は、液体LQに対して撥液性を有している。補助プレート14は、ステンレスの基材と、その基材上に形成された撥液性材料の膜とで構成される。なお、基材は、ステンレス以外の金属であっても良いし、金属以外のガラスやプラスチックであっても良い。また、補助プレート13自体が撥液性材料で形成されていても良い。液体LQに対する補助プレート13の表面の接触角は、例えば90度以上である。
【0030】
なお、基板Pは、補助プレート13とは独立に吸着保持可能な保持部(不図示)に吸着保持される。基板Pは、シリコンウエハの基材と、基材上に、照明光ELの投影により形成された露光領域であるショットと、基材及びショットの上面に形成された感光膜とで構成されている。基板Pの表面は、液体LQに対して撥液性を有する。また、基板Pの表面は感光膜の表面を含む。感光膜は、液体LQに対して撥液性を有する。また、基板Pの表面が感光膜を覆う保護膜で形成されても良い。保護膜はトップコートと呼ばれる膜であり、感光膜を液体LQから保護する。
【0031】
基板Pが吸着保持された状態で基板Pの上面と補助プレート13の上面とはほぼ同一平面内になる(ほぼ面一であり)。また、基板Pの直径に対して、補助プレート13の開口(基材の中央に形成された円形開口)の直径は大きくなっており、基板P上面の外側エッジと補助プレート13上面の内側エッジとの間にギャップが形成されている。ギャップの開口幅は、液浸領域AR2の形成に伴い、液体LQがその液体LQに作用する表面張力によりギャップに浸入しないように0.1mm〜1.0mmとなっており、ギャップを形成する基板Pの表面と、補助プレート13の表面とが、液体LQに対して撥液性を有する。
【0032】
また、基板テーブル3上に設けられた移動鏡11に対向する位置に設置された基板側レーザ干渉計16が設けられている。なお、基板テーブル3とステージ本体10とを一体的に設けても良い。基板側レーザ干渉計14は、移動鏡14に計測光を照射し、その移動鏡14を介した計測光を用いて、基板テーブル3のXY平面における位置、及びθZ方向の回転角をリアルタイムに計測する。
【0033】
液体供給機構4は、液浸領域AR2を形成するために基板テーブル3上に所定の液体LQを供給するものであって、液体LQを送出可能な液体供給装置17と、液体供給装置17に供給管18を介して接続され、この液体供給装置17から送出された液体LQを基板P上に供給する供給口を有する供給ノズル19とを備えている。供給ノズル19は基板Pの表面に近接して配置されている。
【0034】
液体供給装置17は、液体LQを収容するタンク及び加圧ポンプ等を備えており、供給管18及び供給ノズル19を介して基板テーブル3上に液体LQを供給する。また、液体供給装置17は液体LQの温度調整機構を有しており、液体供給装置17が収容されるチャンバ内の温度とほぼ同じ温度(例えば23℃)の液体LQを基板P上に供給するようになっている。なお、液体LQを供給するためのタンクや加圧ポンプは必ずしも露光装置EXで備えている必要はなく、露光装置EXが設置されている工場などの設備を利用することもできる。
【0035】
液体回収機構5は、基板テーブルPT上の液体LQを回収するものであって、基板Pの表面に近接して配置された回収ノズル20と、この回収ノズル20に回収管21を介して接続された液体回収装置22とを備えている。
【0036】
液体回収装置22は、真空ポンプ等の真空系(吸引装置)及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えており、基板テーブル3上の液体LQを回収ノズル20及び回収管21を介して回収する。なお、液体LQを回収するための真空系やタンクは必ずしも露光装置EXで備えている必要はなく、露光装置EXが設置されている工場などの設備を利用することもできる。
【0037】
次に、本実施形態における光源ユニットELSUの構成について図2を用いて説明する。
【0038】
図2は、本実施形態における光源ユニットELSUの平面図である。
【0039】
本実施形態において、光源ユニットELSUは、第1照明光EL1をパルス発振する第1光源ELS1と、第2照明光EL2をパルス発振する第2光源ELS2と、第1光源ELS1から射出される第1照明光EL1の進路を曲げるミラー23と、第2光源ELS2から射出される第2照明光EL2と第1照明光EL1とを合成する光合成器56とを備えている。
【0040】
第1光源ELS1は、波長λ1の第1照明光EL1を所定の周期でパルス発振する。また、本実施形態において、第1光源ELS1は、第1照明光EL1を発生させる第1共振器25と、発振する第1照明光EL1の波長λ1を設定する第1波長設定装置24と、第1光源ELS1の動作を統括する第1制御装置CONT1とを備えている。
【0041】
本実施形態において、第1照明光EL1はArFエキシマレーザであり、第1共振器25は、アルゴンガス及びフッ素ガスを励起することによって第1照明光EL1を発生させる。
【0042】
第1波長設定装置24は、特開平11−248913号に開示されているように、第1照明光EL1を複数の波長に分割するプリズム(不図示)と、プリズムで分割された所定波長の光線を狭帯化して反射する回動可能な回折格子(不図示)とで構成され、第1照明光EL1の波長λ1を所望の波長に設定する。
【0043】
なお、第1波長設定装置24は、第1照明光EL1の波長λ1を設定可能であれば以上の構成でなくてもよい。例えば、特開平7−263779号、特開平3−157917号に開示されているように、反射鏡及びエタロンを備えたものであってもよい。
【0044】
第1制御装置CONT1は、第1照明光EL1の波長λ1を所定の波長に設定する信号である第1波長信号27を主制御装置CONTから受信し、第1波長設定装置24を制御して第1照明光EL1の波長λ1を設定させる。また、第1光源ELS1から第1照明光EL1を発振するタイミングを規定する信号である第1トリガパルス28を主制御装置CONTから受信し、第1共振器25を制御して第1照明光EL1を発振させる。
【0045】
一方で、第2光源ELS2は、波長λ2の第2照明光EL2を所定の周期でパルス発振する。第2光源ELS2の構成は、第1光源ELS1の構成と同様であり、第2照明光EL2を発生させる第2共振器30と、発振する第2照明光EL2の波長λ2を設定する第2波長設定装置29と、第2光源ELS2の動作を統括する第2制御装置CONT2とを備えている。
【0046】
また、本実施形態において、第1光源ELS1が第1照明光EL1を発振する周期と、第2光源ELS2が第2照明光EL2を発振する周期はほぼ同一である。
【0047】
第2制御装置CONT2は、第1制御装置CONT1と同様に、第2照明光EL2の波長λ2を所定の波長に設定する信号である第2波長信号32を主制御装置CONTから受信し、第2波長設定装置29を制御して第2照明光EL2の波長λ2を設定させる。また、第2光源ELS2から第2照明光EL2を発振するタイミングを規定する信号である第2トリガパルス33を主制御装置CONTから受信し、第2共振器30を制御して第2照明光EL2を発振させる。
【0048】
反射ミラー23は、第1光源ELS2から射出された第1照明光EL1の進路を90度曲げる。
【0049】
光合成器56は、反射ミラー2で進路を90度曲げられた第1照明光EL1と第2光源ELS2から射出された第2照明光EL2とを合成するハーフミラーである。なお、光合成器56は、第1照明光EL1と第2照明光EL2とを合成可能であればハーフミラーでなくてもよく、例えば、予め第1照明光EL1と第2照明光EL2とを偏光させて合成する偏光カプラであってもよい。
【0050】
主制御装置CONTは、第1波長信号27及び第1トリガパルス28を第1制御装置CONT1へ送信し、第2波長信号32及び第2トリガパルス33を第2制御装置CONT2へ送信する。
【0051】
このとき、主制御装置CONTは、第1トリガパルス28を第1制御装置CONT1に送信するタイミングと第2トリガパルス33を第2制御装置CONT2に送信するタイミングとをずらす。詳しくは、主制御装置CONTは、第1トリガパルス28を第1制御装置CONT1に送信してから所定時間だけ遅延させて第2トリガパルス33を第2制御装置CONT2に送信する。本実施形態において、第1トリガパルス28に対し第2トリガパルス33の送信を遅らせる時間は130ns〜1000nsの中で設定される。
【0052】
また、主制御装置CONTは、第1照明光EL1と第2照明光EL2とが相異なる波長となるように、第1波長信号27と第2波長信号32とをそれぞれ、第1制御装置CONT1と第2制御装置CONT2へ送信する。本実施形態において、第1照明光EL1の波長λ1と第2照明光EL2の波長λ2とは、基準波長±80fm内で設定される。ここで、基準波長はArFエキシマレーザの場合、193nmである。
【0053】
つまり、本実施形態の露光装置EXにおいて、主制御装置CONTから送信された第1波長信号27と第2波長信号32とをそれぞれ、第1光源ELS1と第2光源ELS2で受信し、第1照明光EL1と第2照明光EL2とを相異なる2つの波長に設定すると共に、主制御装置CONTから所定時間ずらして送信された第1トリガパルス28と第2トリガパルス33とをそれぞれ第1光源ELS1と第2光源ELS2とで受信することで、合成された照明光ELに含まれる相異なる波長の第1照明光EL1と第2照明光EL2とをマスクMへ入射するタイミングをずらしてマスクMを照明し、マスクMのパターン像を基板Pに投影することができる。
【0054】
以上より、第1照明光EL1と第2照明光EL2とを相異なる波長に設定することで、基板P上でそれぞれの波長に応じた2つの結像点が生じるため、焦点のずれ量に対するパターン像のコントラスト変化が低減され、投影光学系PLの焦点深度を拡大させることができる。また、第1照明光EL1と第2照明光EL2とのマスクMへの入射のタイミングを所定時間ずらすことで、合成された照明光ELの空間コヒーレンスが低減し、マスクM上における照明光ELの照度分布のむらを抑制することができる。
【0055】
したがって、焦点深度を拡大しつつ、マスクMを照明する照明光ELの照度分布のむらが抑制され、露光パターンの線幅精度の悪化を抑制することができる。
【0056】
次に、露光パラメータの決定から露光装置EXで基板Pを露光処理していく流れについて図3を用いて説明する。
【0057】
ここでは、第1照明光EL1と第2照明光EL2とでマスクMに入射するタイミングをずらすことに関して、例として、第2照明光EL2を第1照明光EL1に対して所定の時間(以下、遅延時間とする)遅延させてマスクMに入射させることについて説明する。
【0058】
まず、基板Pに転写しようとする設計パターンから、数学的モデルやシミュレーションを使用し、マスクMに形成するマスクパターンや、投影光学系PLの瞳面上の光源分布等が最適化される。また、露光量、フォーカス(焦点深度)、照明光ELの基準波長、2波長λ1及びλ2、遅延時間等の各値がショット毎に振られ、初期パラメータが作成される(ステップ101)。このとき、初期パラメータは上記の各値を変化させて複数作成される。
【0059】
2波長λ1及びλ2は、それぞれ複数の波長が複数の初期パラメータに割り振られる。本実施形態において、第1光源ELS1と第2光源ELS2の変更波長幅が、基準波長から±80fmであり、その波長幅の中から複数の2波長λ1及びλ2が選択され複数の初期パラメータに割り振られる。
【0060】
このとき、遅延時間の下限は、第1照明光EL1及び第2照明光EL2のパルス幅とする。また、遅延時間の上限は、遅延させた第1照明光EL1と第2照明光EL2とが照明光学系ILのインテグレータセンサ(不図示)にて1つのパルスとして認識される最長の時間とする。その上限と下限の時間幅の中から複数の時間が複数の初期パラメータに割り振られる。例えば、本実施形態においては、第1照明光EL1及び第2照明光EL2のパルス幅が共に130nsecであり、第1照明光EL1と第2照明光EL2とを1つのパルスとして応答しうる最長時間が1000nsecであるため、遅延時間は130nsec〜1000nsecの時間幅の中から複数の時間が選択され複数の初期パラメータに割り振られる。
【0061】
次に、ステップ101で作成された複数の初期パラメータが上述の露光装置EXに備えられた主制御装置CONTに記憶され、初期パラメータ毎にテスト基板を露光装置EXでテスト露光後、現像、レジストの成膜、露光が繰り返され、テスト基板上にマスクMのパターンが形成される(ステップ102)。
【0062】
続いて、テスト基板に形成されたパターンの仕上がり寸法が半導体検査装置(不図示)で計測され(ステップ103)、予め設計された理想の設計パターンの寸法である設計寸法と仕上がり寸法とが比較され、ステップ101で作成された複数の初期パラメータのうち、形成されたパターンの仕様が満たされている初期パラメータがあるかどうかが判断される(ステップ104)。ここで、本実施形態において仕様とはパターンの設計寸法±0.5%とする。
【0063】
ステップ104でパターンの仕上がり寸法が仕様を満たす初期パラメータがないと判断された場合、2波長λ1及びλ2や遅延時間等のパラメータを振り直し、ステップ101で作成された初期パラメータを修正して再度テスト露光を実施し、テスト基板に形成されたパターンを計測する。
【0064】
一方、ステップ104でパターンの仕上がり寸法が仕様を満たす初期パラメータがあると判断された場合、ステップ103の計測結果に基づいて、パターンの仕上がり寸法が最も設計寸法に近い初期パラメータが露光パラメータとして決定され、露光装置EXの制御装置CONTに記憶される(ステップ105)。
【0065】
次に、マスクMが、ロボットアーム(不図示)を含む搬送装置の駆動により、マスクステージ1にロード(吸着保持)される(ステップ106)。
【0066】
続いて、基板Pが、ロボットアーム(不図示)を含む搬送装置の駆動により、基板テーブル3にロード(吸着保持)される(ステップ107)。
【0067】
続いて、液浸領域AR2が形成される。液浸領域AR2は、液体供給機構4の駆動により、基板テーブル3上への液体供給動作が開始されると共に、液体回収機構5の駆動により、基板テーブル3上からの液体回収動作が開始されることで投影光学系PLと基板テーブル3との間に形成される(ステップ108)。この時、液体供給装置17による基板テーブル3上への単位時間あたりの液体供給量が制御されると共に、液体回収装置22による単位時間あたりの液体回収量が制御される。
【0068】
次に、主制御装置CONTに記憶された露光パラメータに基づいて、2波長λ1、λ2がそれぞれ、第1光源ELS1及び第2光源ELS2で設定される(ステップ109)。より詳しくは、露光パラメータに基づいて主制御装置CONTから送信された第1波長信号27と第2波長信号32とがそれぞれ、第1制御装置CONT1と第2制御装置CONT2で受信され、第1波長設定装置24及び第2波長設定装置29が駆動されることで、2波長λ1及びλ2がそれぞれ、第1光源ELS1及び第2光源ELS2で設定される。
【0069】
また、本実施形態において、任意のショットを露光する2波長λ1、λ2は、任意のショットの露光とその前のショットの露光との間で第1波長設定装置24及び第2波長設定装置29で設定される。
【0070】
また、本ステップで、露光装置EXにおいて第1光源ELS1及び第2光源ELS2以外の構成のパラメータも露光パラメータに基づいて設定される。
【0071】
そして、露光パラメータに基づいて所定の遅延時間で射出された波長λ1の第1照明光EL1と波長λ2の第2照明光EL2とが合成された照明光ELにより基板Pのショットが露光される(ステップ110)。
【0072】
より詳しくは、主制御装置CONTから第1トリガパルス28と第2トリガパルス33とがそれぞれ、第1光源ELS1の第1制御装置CONT1と第2光源ELS2の第2制御装置CONT2とへ送信される。このとき、第2トリガパルス33は第1トリガパルス28に対してステップ105で決定された遅延時間分、遅れて送信され、第2照明光EL2は第1照明光EL1に対して遅延時間分、遅れて発振される。
【0073】
次に、ステップ110のショットの露光で基板Pの全てのショットが露光されたかどうかが判断される(ステップ111)。
【0074】
ステップ111で全てのショットが露光されていない場合、ステップ109に戻り、次のショットを露光する2波長λ1及びλ2やその他の露光装置EXの装置パラメータが露光パラメータに基づいて設定され、次のショットが露光される。
【0075】
一方、ステップ111で全てのショットが露光された場合、ロットが終了し、マスクMを交換するかどうかが判断され(ステップ112)、マスクMを変更しない場合、新たな基板Pがロボットアーム(不図示)の駆動によりロード(吸着保持)される。
【0076】
ロットが終了し、ステップ112でマスクMを変更する場合、新たなマスクMがロボットアーム(不図示)の駆動によりロード(吸着保持)された後、露光が繰り返されていく。
【0077】
以上、第1パルス光Pa1(第1照明光EL1)と第2パルス光Pa2(第2照明光EL2)とを相異なる2波長λ1及びλ2に設定し、第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を遅延させて、第1照明光EL1と第2照明光EL2とのマスクMへの入射のタイミングをずらすことで、投影光学系PLの焦点深度が拡大されつつ、マスクMを照明する照明光ELの照度分布のむらが抑制されるため、露光パターンの線幅精度の悪化を抑制することができる。
【0078】
なお、ステップ101において、第1光源ELS1と第2光源ELS2の変更波長幅が、基準波長から±80fmであり、その波長幅の中から複数の2波長λ1及びλ2が選択されるが、光源を改造又は変更することによって変更波長幅を拡大しても良い。
【0079】
なお、ステップ101において、遅延時間は、130nsec〜1000nsecの時間幅としているが、下限では、第1照明光EL1及び第2照明光EL2のパルス幅は130nsecでなくても良く、上限では、照明光学系ILのインテグレータセンサを改造又は変更することで1000nsec以上にしても良い。また、第1照明光EL1及び第2照明光EL2のパルス幅は等しくなくても良い。
【0080】
なお、ステップ104において、仕様は設計寸法±0.5%でなくても良い。例えば、パターンのレイアウトや製造するデバイスに基づいて仕様を変更しても良い。
【0081】
なお、ステップ105において、2波長λ1、λ2と遅延時間とは、ショット毎に露光パラメータとして決定したが、ショット毎に決定しなくてもよく、例えば、基板毎やロット毎に決定しても良い。
【0082】
なお、ステップ105において、設計寸法に対してパターンの仕上がり寸法が最も近い初期パラメータが露光パラメータとして決定される際に、Bossung曲線を作成して露光パラメータを決定してもよい。ここで、Bossung曲線とは、任意の露光量に対し、横軸をフォーカス量、縦軸をパターンの仕上がり寸法とした曲線である。この場合、ステップ104でパターンの仕上がり寸法が仕様を満たすと判断された初期パラメータでテスト露光された結果を用いてBossung曲線が作成される。そして、このBossung曲線に基づいてフォーカス量を変化させてもパターンの仕上がり寸法の変化が最も少ないパラメータを露光パラメータとして決定する。
【0083】
なお、ステップ110において、第2トリガパルスPa2は第1トリガパルスPa1に対して遅延時間分、遅らせて主制御装置CONTから第2光源ELS2の第2制御装置CONT2に送信されるが、第2制御装置CONT2が第2トリガパルスPa2を受信するタイミングを遅延時間分、遅らせるようにしても良い。この場合、第1トリガパルスPa1と第2トリガパルスPa2は、ほぼ同じタイミングで主制御装置CONTから送信される。
【0084】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0085】
以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0086】
以下、本実施形態の露光装置EXの構成について図4を用いて説明する。
【0087】
図4は、本実施形態における光源ユニットELSUを示す概略構成図である。
【0088】
本実施形態の光源ユニットELSUは、主制御装置CONTから送信される第1波長信号27を2つの該信号に分岐し、一方の第1波長信号27を第2波長信号32に変換することで、第1波長信号27と第2波長信号32とを生成する2波長分岐装置34と、主制御装置CONTから送信される第1トリガパルス28を2つの該トリガパルスに分岐し、一方の第1トリガパルス28を所望の遅延時間だけ遅延させて第2トリガパルス33とすることで、第1トリガパルス28と第2トリガパルス33とを生成する遅延分岐装置35とを備える。
【0089】
次に、2波長分岐装置34と遅延分岐装置35の詳細な構成について図5を用いて説明する。
【0090】
図5は、本実施形態における2波長分岐装置34と遅延分岐装置35の概略構成図である。
【0091】
図5(a)に示すように、2波長分岐装置34は、主制御装置CONTから送信される第1波長信号27(デジタル信号)を2つの第1波長信号27に分岐する分岐回路36と、分岐された2つの第1波長信号27の一方の信号と、主制御装置CONTから送信された信号であって第1波長信号27を第2波長信号32へと変換するシフト波長信号37(デジタル信号)とを加算して第2波長信号32を生成する加算器38とを備える。2波長分岐装置34で生成された第1波長信号27と第2波長信号32とはそれぞれ、第1実施形態の露光装置EXと同様に第1制御装置CONT1及び第2制御装置CONT2で受信され、第1パルス光Pa1(第1照明光EL1)と第2パルス光Pa2(第2照明光EL2)の波長が設定される。
【0092】
分岐回路36は、デジタル信号を2つのデジタル信号に分岐する信号分岐回路である。
【0093】
加算器38は、デジタル信号同士を論理加算する論理演算素子である。
【0094】
なお、加算器38は、デジタル信号同士を加算する素子に限らない。例えば、デジタル信号同士を減算する減算器のほか、乗算器や除算器のような論理演算素子であっても良い。
【0095】
また、図5(b)に示すように、遅延分岐装置35は、主制御装置CONTから送信される第1トリガパルス28(光信号)を第1トリガ信号42(電気信号)に光電変換する第1光電変換素子44と、第1トリガ信号42を2つの第1トリガ信号42に分岐する分岐回路40と、主制御装置CONTから送信された信号であって、第1トリガ信号42を所望の遅延時間だけ遅延させる遅延カウント39を受信し、該遅延カウントをカウント後、2つの第1トリガ信号42の一方の信号を通過させることで他方の信号に対して所望の遅延時間だけ遅延させた第2トリガ信号43を生成するカウンタ41と、該他方の信号(電気信号)を第1トリガパルス光28(光信号)に変換する第2光電変換素子46と、第2トリガ信号(電気信号)を第2トリガパルス(光信号)に変換する第3光電変換素子45とを備える。
【0096】
遅延分岐装置35で生成された第1トリガパルス28と第2トリガパルス33とはそれぞれ、第1実施形態の露光装置EXと同様に第1制御装置CONT1及び第2制御装置CONT2で受信され、第1照明光EL1と第2照明光EL2とが射出される。
【0097】
分岐回路40は、デジタル信号を2つのデジタル信号に分岐する信号分岐回路である。
【0098】
カウンタ41は、遅延カウント39の受信に応じてダウンカウントを開始し、0になると、第2トリガ信号を第2光電変換素子へと通すダウンカウンタである。
【0099】
なお、カウンタ41は、ダウンカウンタでなくても良い。例えば、遅延カウントに応じてカウントを数え上げるアップカウンタであっても良い。
【0100】
なお、本実施形態において、第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を遅延させているが、第2照明光EL2に対して第1照明光EL1を遅延させても良い。
【0101】
次に、本実施形態の露光装置EXの基本動作の中で、上述の各実施形態との差異について図3を用いて説明する。
【0102】
ステップ108において、液浸領域AR2が形成された後、本実施形態では、ステップ105で決定された露光パラメータに基づいて、主制御装置CONTから2波長分岐装置34へと第1波長信号27とシフト波長信号37とが送信され、2波長分岐装置34において、第2波長信号32が生成され、分岐された第1波長信号27と共に第1制御装置CONT1及び第2制御装置CONT2で受信される。そして、これらの信号により第1波長設定装置24及び第2波長設定装置29が駆動されることで、2波長λ1及びλ2がそれぞれ、第1光源ELS1及び第2光源ELS2で設定される(ステップ109)。
【0103】
続いて、露光パラメータに基づいて、主制御装置CONTから遅延分岐装置35へと第1トリガパルス28と遅延カウント39とが送信され、遅延分岐装置35において、第2トリガパルス33が生成され、分岐された第1トリガパルス28と共に第1制御装置CONT1と第2制御装置CONT2とで受信され、所望の遅延時間で射出された波長λ1の第1照明光EL1と波長λ2の第2照明光EL2とにより基板Pのショットが露光される(ステップ110)。
【0104】
以上、説明した本実施形態の露光装置EXにおいて、例えば、現状で1種類の波長を使用して基板を露光する露光装置の場合、主制御装置CONTから送信した第1波長信号27から2波長分岐装置34にて第2波長信号32を生成するため、制御装置CONTに同系統の信号線を増やすことなく、2波長分岐装置34を外付けするだけで簡便に2つの波長信号を生成することが可能となる。
【0105】
また、第1トリガパルス28に対して第2トリガパルス33を遅延させる構成を主制御装置CONTに設けることなく、遅延分岐装置35を外付けするだけで簡便に遅延発振させることが可能となる。つまり、1波長の照明光で露光を行う露光装置を相異なる波長の照明光を遅延させて発振する構成に変更する場合であっても主制御装置CONTの改造を極力抑えて簡便に変更することが可能となる。
【0106】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0107】
以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0108】
以下、本実施形態の露光装置EXの構成について図6、図7用いて説明する。
【0109】
図6は、本実施形態における光源ユニットELSUの一例を示す概略構成図である。
【0110】
図7は、本実施形態における遅延光学系47の概略構成図である。
【0111】
図6に示すように、上述の第2実施形態の露光装置EXと本実施形態の差異は、光源ユニットELSUが、第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を遅延させる遅延部として第2照明光EL2の光路上に設置された遅延光学系47を備えていることである。
【0112】
図7に示すように、本実施形態の遅延光学系47は、入射窓48と、4枚のミラー49〜52と、4枚のプリズム51〜54と、射出窓55とを含んでいる。
【0113】
第2光源ELS2から射出された第2照明光EL2は入射窓48を介してミラー49で90度曲げられ、プリズム51、52で光路調整されてミラー50、51を介して180度曲げられ、プリズム53、54で再度光路調整され、ミラー52で90度曲げられて、射出窓55からレーザ結合器24へと進行する。すなわち、第2照明光EL2が遅延光学系47に進入することで、第2照明光EL2の光路を延伸することができ、第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を遅延させることができる。
【0114】
また、第1照明光EL1に対する第2照明光EL2の遅延時間の調節は、XY平面上において4枚のミラー49〜52と4枚のプリズム51〜54を駆動機構(不図示)で回動させ、第1照明光EL1に対する第2照明光EL2の光路の長さを調節することで行う。
【0115】
なお、ミラー及びプリズムの枚数は4枚でなくても良く、それらの配置についても図7に限定されない。例えば、設定する遅延時間に応じて延長する光路の長さを見積もり、その光路の長さに基づいてミラー及びプリズムの枚数と配置を決めても良い。
【0116】
なお、遅延光学系47は、第2パルス光Pa2を第1パルス光Pa1に対して所望の遅延時間だけ遅延させることが可能であればミラー及びプリズムを用いなくても良い。例えば、遅延光学系47は第2照明光EL2の光路上に設置された所定の長さの光学ガラスを含み、第2照明光EL2が光学ガラスを透過することにより遅延させても良い。また、光学ガラスは、光が透過する材質であればガラスでなくても良く、プラスチックでも良い。また、遅延光学系47は、光学ガラスとミラーとプリズムを併用しても良い。
【0117】
なお、本実施形態において、第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を遅延させているが、第2照明光EL2に対して第1照明光EL1を遅延させても良い。この場合、遅延光学系47は、第1照明光EL1の光路上に設置する。
【0118】
次に、本実施形態の露光装置EXの基本動作の中で、上述の各実施形態との差異について図3を用いて説明する。
【0119】
ステップ109において、決定された露光パラメータに基づいて、ショットを露光する2波長λ1及びλ2がそれぞれ、第1光源ELS1及び第2光源ELS2で設定された後、本実施形態では、露光パラメータに基づいて、第1照明光EL1に対する第2照明光EL2の遅延時間が所望の遅延時間となるように、主制御装置CONTにより遅延光学系47のミラー49〜52及びプリズム51〜54が駆動され、第2照明光EL2の光路が所望の長さに調整される。そして、所望の遅延時間で射出された波長λ1の第1照明光EL1と波長λ2の第2照明光EL2とが合成され、照明光ELにより基板Pのショットが露光される(ステップ110)。
【0120】
以上、説明した本実施形態の露光装置EXにおいて、遅延光学系47を用いて第1照明光EL1に対して第2照明光EL2を光学的に遅延させることで、露光パラメータに基づいて、より高精度に遅延時間を設定することが可能となる。
【0121】
なお、上述の実施形態において、2つの光源(第1光源ELS1と第2光源ELS2)から第1照明光EL1と第2照明光EL2とを射出しているが、1つの光源から射出した光線を2つの光線に分離して第1照明光EL1及び第2照明光EL2としても良い。この場合、2つの光線への分離は、例えば、射出された光線を2つのハーフミラーを介して分離しても良いし、偏光変調素子と偏光ビームスプリッタとを組み合わせ、射出された光線をp偏光及びs偏光として分離しても良い。
【0122】
また、2波長λ1及びλ2の設定は、第1照明光EL1と第2照明光EL2とのそれぞれの光路上に波長設定機構を設置して行う。波長設定機構は、例えば、回動可能なエタロンである。このとき、例えば、第2照明光EL2の光路上に遅延光学系(図7参照)を設置して第1照明光EL1に対する第2照明光EL2を所定の時間だけ遅延させる。
【0123】
なお、上述の各実施形態において、投影光学系PLは、終端光学素子10の射出側(像面側)の光路空間を液体LQで満たしているが、米国特許第7,362,508号に開示されているように、終端光学素子9の入射側(物体面側)の光路空間も液体LQで満たす投影光学系を採用することも出来る。また、露光対象の基板Pの表面全体が液体LQで覆われる液浸露光装置にも適用出来る。
【0124】
なお、上述の実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、照明光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系、あるいは基板の表面を形成する感光材(フォトレジスト)の膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル、セダー油等を用いることも可能である。また、液体LQとして、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。更に、石英及び蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で、液体LQと接触する投影光学系PLの光学素子(終端光学素子など)を形成してもよい。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
【0125】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスク又はレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0126】
なお、露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを、液体LQを介して走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の液浸スキャナの他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを、液体LQを介して一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の液浸ステッパにも適用することが出来る。また、上述の各実施形態において、露光装置EXとして、液体LQを介さずに、マスクMのパターンを基板Pに露光していくスキャナ及びステッパにも適用することが出来る。
【0127】
また、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用出来る。
【0128】
更に、例えば米国特許6,611,316号に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することが出来る。
【0129】
また、本発明は、米国特許第6,400,441号、国際公開98/28665号、米国特許6,341,007号、米国特許6,400,441号、米国特許6,549,269号、及び米国特許6,590,634号、米国特許6,208,407号、米国特許6,262,796号などに開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用出来る。
【0130】
なお、露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用出来る。
【0131】
なお、上述の各実施形態においては、マスク側レーザ干渉計8及び基板側レーザ干渉計16を用いてマスクステージ1及び基板テーブル3の各位置を計測するものとしたが、これに限らず、例えば、マスクステージ1及び基板テーブル3に設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。この場合、マスク側レーザ干渉計8及び基板側レーザ干渉計16の少なくともどちらか一方とエンコーダシステムとの両方を備えるハイブリッドシステムとし、マスク側レーザ干渉計8及び基板側レーザ干渉計16の少なくともどちらか一方の計測結果を用いてエンコーダシステムの計測結果の較正(キャリブレーション)を行うことが好ましい。また、マスク側レーザ干渉計8及び基板側レーザ干渉計16の少なくともどちらか一方とエンコーダシステムとを切り換えて用いる、あるいはその両方を用いて、ステージの位置制御を行うようにしても良い。
【0132】
なお、上述の各実施形態では、照明光ELとしてArFエキシマレーザ光を発生する光源装置として、ArFエキシマレーザを用いているが、例えば、米国特許第7,023,610号に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、前述の各照明領域と、投影領域がそれぞれ矩形状であるものとしたが、他の形状、例えば円弧状などでも良い。
【0133】
なお、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。可変成形マスクは、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)等を含む。また、可変成形マスクとしては、DMDに限られるものでなく、DMDに代えて、以下に説明する非発光型画像表示素子を用いても良い。ここで、非発光型画像表示素子は、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子であり、透過型空間光変調器としては、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)以外に、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が例として挙げられる。また、反射型空間光変調器としては、上述のDMDの他に、反射ミラーアレイ、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(または電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)等が例として挙げられる。
【0134】
また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。この場合、照明系は不要となる。ここで自発光型画像表示素子としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)、LEDディスプレイ、LDディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等が挙げられる。また、パターン形成装置が備える自発光型画像表示素子として、複数の発光点を有する固体光源チップ、チップを複数個アレイ状に配列した固体光源チップアレイ、または複数の発光点を1枚の基板に作り込んだタイプのもの等を用い、該固体光源チップを電気的に制御してパターンを形成しても良い。なお、固体光源素子は、無機、有機を問わない。
【0135】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0136】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0137】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図8に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0138】
なお、上述の各実施形態の要件は適宜組み合わせることが出来る。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した露光装置等の全ての公開公報、及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0139】
EX:露光装置、EL1:第1照明光、EL2:第2照明光、EL:照明光、ELSU:光源ユニット、ELS1:第1光源、ELS2:第2光源、CONT1:第1制御装置、CONT2:第2制御装置、CONT:主制御装置、24:第1波長設定装置、29:第2波長設定装置、28:第1トリガパルス、33:第2トリガパルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクのパターンを基板に転写する露光装置において、
第1の波長を有し、パルス発振された第1照明光と、該第1の波長とは異なる第2の波 長を有し、パルス発振された第2照明光とを前記マスクへ照射する照射ユニットを備え、
前記照射ユニットは、前記第1照明光が前記マスクに照射されるタイミングと、前記第2照明光が前記マスクに照射されるタイミングとが所定時間ずれるように、前記第1照明 光と前記第2照明光との照射のタイミングを設定する遅延設定部を含むことを特徴とする 露光装置。
【請求項2】
請求項1記載の露光装置において、
前記遅延設定部は、前記第1照明光がパルス発振されるタイミングと前記第2照明光がパルス発振されるタイミングとが前記所定時間ずれるように、前記第1照明光と前記第2照明光とのパルス発振のタイミングを設定することを特徴とする露光装置。
【請求項3】
請求項2記載の露光装置において、
前記遅延設定部は、前記第1パルス光を発振するタイミングを規定する信号である第1トリガと、前記第2パルス光を発振するタイミングを規定する信号である第2トリガとを生成し、前記第1照明光を発振する第1光源へ前記第1トリガを送信するタイミングと、 前記第2照明光を発振する第2光源へ前記第2トリガを送信するタイミングとを前記所定時間ずらすことを特徴とする露光装置。
【請求項4】
請求項3記載の露光装置において、
前記遅延設定部は、
前記第1トリガを生成するトリガ生成部と、
前記第1トリガを2つの前記第1トリガに分岐するトリガ分岐部と、
分岐された前記第1トリガの一方を前記所定時間だけ遅延させて前記第2トリガとするトリガ遅延部と、
前記第1トリガと前記第2トリガとをそれぞれ、前記第1光源と前記第2光源とに送信するトリガ送信部と、
を含むことを特徴とする露光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記遅延設定部は、前記第1照明光と前記第2照明光とのうち、少なくとも第2照明光の光路に設けられ、前記第2照明光の光路の長さを延伸する光学系を含むことを特徴とする露光装置。
【請求項6】
マスクのパターンを基板に転写する露光方法において、
パルス発振される第1照明光の波長を第1の波長に設定することと、
パルス発振される第2照明光の波長を前記第1の波長とは異なる第2の波長に設定することと、
前記第1照明光が前記マスクに照射されるタイミングと前記第2照明光が前記マスクに照射されるタイミングとを所定時間ずらすことと、
前記マスクを前記第1照明光と前記第2照明光とで照明し、前記パターンを前記基板に転写することと、
を有することを特徴とする露光方法。
【請求項7】
請求項6記載の露光方法において、
前記タイミングをずらすことは、前記第1照明光がパルス発振されるタイミングと前記第2照明光がパルス発振されるタイミングとを所定時間ずらすことを特徴とする露光方法。
【請求項8】
請求項7記載の露光方法において、
前記タイミングを所定時間ずらすことは、
前記第1照明光を発振するタイミングを規定する信号である第1トリガを生成することと、
前記第2照明光を発振するタイミングを規定する信号である第2トリガを生成することと、
前記第1照明光を発振する前記第1光源に前記第1トリガを送信するタイミングと、前記第2照明光を発振する前記第2光源に前記第2トリガを送信するタイミングとを前記所定時間ずらすことと、
を含むことを特徴とする露光方法。
【請求項9】
請求項8記載の露光方法において、
前記タイミングを所定時間ずらすことは、
前記第1照明光を発振するタイミングを規定する信号である第1トリガを生成することと、
生成された前記第1トリガを2つの前記第1トリガに分岐することと、
分岐した一方の前記第1トリガを他方の前記第1トリガに対して前記所定時間だけ遅延させ、前記第2パルスを発振するタイミングを規定する第2トリガとすることと、
前記第1照明光を発振する第1光源に前記第1トリガを送信することと、
前記第2照明光を発振する第2光源に前記第2トリガを送信することと、
を含むことを特徴とする露光方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記タイミングを所定時間ずらすことは、前記第1照明光と前記第2照明光とのうち、少なくとも前記第2照明光の光路の長さを延伸することを含むことを特徴とする露光方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の露光方法を用いて前記マスクのパターンを前記基板に転写することと、
前記基板を現像することと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−174883(P2012−174883A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35413(P2011−35413)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】