説明

露出装置

【課題】 モニタ装置に表示した被写体像を確認しながら適正露出を容易かつ迅速に決定することが可能な露出装置を提供する。
【解決手段】 レンズ系で結像された被写体像を撮像素子で撮像してモニタ装置11に表示する際に、被写体の明るさを所要のステップでエリア分けしエリア毎に色分けして被写体像OBを表示するとともに、色分けした明るさの露出基準を示す参照スケールSSを表示する。参照スケールSS上で被写体像と同じ色のエリアにポインタPTを移動させることで、被写体像を適正に露出補正を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラに内蔵し、あるいは独立して構成することが可能な露出装置に関し、特に撮像する被写体像を確認しながら適正露出の設定を可能にした露出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラや露出計では、適正露出を決定するために撮像素子を用いて撮像した被写体像をモニタとしての表示装置(以下、モニタ装置と称する)に表示させ、このモニタ装置に表示された被写体像を見ながら現在設定されている露出が適正露出であるか否かを判断することが行われる。しかしながら、モニタ装置に表示された被写体像を見るだけで露出が適正であるか否かを判断するにはある程度の熟練が必要であり、撮影者が適正露出を的確に判断することは難しい。このようなことから、撮像した被写体像が適正露出であるか否かを表示する装置が提案されている。特許文献1では撮像した被写体像をモニタ装置に表示する際に、入力された絞り値、シャッタ速度等の撮像条件のデータに基づいて、各データに対応して被写体像の明暗及び色を設定する技術が提案されている。この特許文献1の技術によれば、入力された撮像条件に応じてモニタ装置に表示される被写体像の各部は異なる明るさあるいは異なる色で表示されることになり、この明るさや色から被写体像の適正露出を判断することができるというものである。また、特許文献1では、適正露出を逸脱した部分にはマーキングを表示することも提案されている。
【特許文献1】特許第2632645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術は、モニタ装置に表示される明暗の程度や色彩が意味していることを理解していないと、モニタ装置に表示された被写体像の各部の明暗や色を見ても、どの部分が適正露出であるかを判断することが難しく、適正露出に設定することが難しい。この点、特許文献1では露出値を被写体像に重畳して表示する形態が開示されているが、この表示形態では特許文献1が対象とするような大型のモニタ装置では露出値を視認することは可能であるが、デジタルカメラのモニタ装置のような小型のモニタ装置では露出値を視認することは困難であり、結局どの程度露出を補正したらよいのかが判り難い。特に、引用文献1では、モニタ装置に表示される被写体像は実際に撮影する際の色彩で表示されることがないので、現在の状態から撮像条件を変化させたときには実際にどのように撮影されるのかをモニタ装置で確認することができない。また、撮像条件を変化させたときには再び撮像素子で撮像を行って適正露出であるか否かを判断する必要があり、操作が煩雑になるとともに時間がかかるという問題も生じる。
【0004】
本発明の目的は、実際に撮像する被写体像を確認しながら適正露出を容易かつ迅速に決定することが可能な露出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被写体を結像するためのレンズ系と、レンズ系で結像された被写体像を撮像する撮像素子と、被写体の明るさを測定する測光手段と、撮像素子で撮像した被写体像を表示する表示装置とを備え、この表示装置は被写体の明るさを所要のステップでエリア分けしエリア毎に色分けして被写体像を表示するとともに、色分けした明るさの露出基準を示す参照スケールを表示することが可能であることを特徴とする。例えば、表示装置は被写体像及び参照スケールをエリア毎に異なる色彩でカラー表示する。
【0006】
また、本発明において、表示装置は参照スケールの任意のエリアを指示するポインタを表示することが可能であり、当該ポインタで指示したエリアを適正露出に補正する露出補正手段を備える構成とする。この露出補正手段は露出補正用ダイヤルを備え、当該露出補正用ダイヤルによりポインタによる指示を行うように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示装置に被写体像を表示する際に、被写体の明るさを所要のステップでエリア分けしエリア毎に色分けして表示するとともに、色分けした明るさの露出基準を示す参照スケールを同時に表示するので、参照スケールを参照して被写体像の各部の色を認識するだけで、被写体の撮像対象部における露出のオーバやアンダー等の露出の適否を一目で判別することができ、露出を適正に補正することが可能になる。また、参照スケールのエリアを指示するためのポインタを表示させ、このポインタを利用して参照スケール上で被写体の撮像対象部と同じ色のエリアにポインタを移動させるだけで、当該撮像対象部を適正露出にする露出補正を行うことができる。したがって、本発明によれば露出に詳しくない初心者でも容易かつ迅速に適正な露出補正が実現できる。
【実施例1】
【0008】
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は本発明をデジタルカメラの露出装置として構成した実施例1のブロック構成図である。撮像光学系(レンズ系)1で結像した被写体像をCCDやCMOS等の撮像素子2で撮像し、画像信号を得る。画像信号はCDS(相関2重サンプリング)回路3においてサンプリングされ、A/D変換器4においてデジタルの画像信号に変換され、マイコン100に入力される。マイコン100では入力された画像信号に対してカラープロセス処理やガンマ補正等の所定の信号処理が施され、その後、例えば輝度信号と色信号に対応する画像データが生成される。生成された画像データはDRAM等のメモリ5に書き込まれた後、VRAM(ビデオメモリ)6に書き込まれる。VRAM6に書き込まれた画像データは、D/A変換器7においてアナログの画像信号に変換され、その後ビデオエンコーダ8においてビデオ信号に変換される。ビデオエンコーダ8において変換されたビデオ信号は、ミックスアンドキー等の合成器9に入力され、ここでOSD(オンスクリーンディスプレイ)回路10からのオンスクリーン信号と合成される。オンスクリーン信号と合成されたビデオ信号はLCD等からなるモニタ装置11に出力され、動画または静止画として表示される。前記メモリ5に書き込まれた画像データはマイコン(以下、CPUと称する)100によりインターフェース回路14を介してCFカード等の記録媒体15に記録可能である。
【0009】
前記撮像素子2はここではCCDで構成されており、CCDドライバ13により駆動制御される。また、このCCDドライバ13は前記CPU100により制御される。前記CPU100には、各種のスイッチが接続され、これらのスイッチのオン・オフに基づてい所定の制御動作を実行する。例えば、カメラをスリープ状態からオン状態にするためのメインスイッチ21が接続される。また、カメラを記録モード、再生モード、編集モード、さらに本発明にかかる露出補正モード等のモード設定を行うためのモード切替ダイヤル22が接続される。さらに、撮影動作に直接関係するスイッチとして、カメラに設けられている図外のレリーズボタンによって操作されるレリーズスイッチ23と、測光及びオートフォーカス動作を行うためのレリーズボタンの半押により操作される測光スイッチ24が接続される。
【0010】
これに加えて、前記CPU100には、撮像素子で被写体を撮像する際に蓄積した電荷に基づいて被写体の明るさを測光した測光値情報が前記A/D変換器4から入力される。また、シャッタ装置25に設定されるシャッタ速度情報と、絞り装置26に設定される絞り値情報と、感度設定ダイヤル27に設定されるISO感度情報と、露出補正ダイヤル28に設定される露出補正値情報がそれぞれ入力される。特に、本実施例では、前記露出補正ダイヤル28は、前記モード切替ダイヤル22により露出補正モードに設定したときには、モニタ装置11に表示する被写体像の表示形態を変更することが可能である。また、露出補正ダイヤル28は、後述するようにモニタ画面を見ながらポインタを操作し、かつポインタにより指示した露出補正値を決定することができるようになっている。
【0011】
また、前記CPU100は、入力された測光値情報に基づいて被写体像の各部の輝度情報を抽出し、輝度情報の正規化を行ない、正規化データをファイルし、階調に区分する。そして、各階調に異なる色を割り当て、得られた画像データを露出補正画像データとして前記VRAM6に出力する。VRAM6は、前記露出補正ダイヤルにより露出補正モードに設定されたときには、CPU100から入力される露出補正画像データに基づいて着色した被写体像を作成し、これを前記モニタ装置11に表示することが可能とされている。
【0012】
さらに、前記CPU100は入力されるシャッタ速度情報、絞り値情報、ISO感度情報、露出補正値情報に基づいてOSD回路10を制御し、このOSD回路10において後述する参照スケールを作成させる。この作成した参照スケールはオンスクリーン信号として前記合成器9において前記VRAM6で作成した被写体像に合成し、モニタ装置11のモニタ画面の一部に参照スケールを表示する。ここでは、図2に示すように、被写体像を表示するモニタ装置11のモニタ画面の右辺に沿って上下に帯状の参照スケールSSを形成する。この参照スケールSSは、適正露出値「0」を上下の中央に位置し、この適正露出値よりも上側を露出オーバ「+」、下側を露出アンダー「−」となるように所要のEv値(明るさ値)ステップでエリアを区画し、各エリアに異なる色を割り当ててスケールを形成したものである。例えば、参照スケールSSに割り当てる色として、色の波長に対応して露出アンダーの下端部を青色にし、これから上方に向けて緑色、黄色と変化させ、露出オーバの上端部を赤色となるようにスケールを形成する。なお、同図では実際に表示される色の代わりに斜線の密度で色の違いを表示しており、ここでは緑色を適正露出に設定したものとしている。また、この参照スケールSSには、後述するように参照スケールSSの各エリアを指示するポインタPTが表示可能である。
【0013】
以上の構成によれば、図3にメインフローのフローチャートを示すように、カメラのメインスイッチ21がオンされると(S101)、モニタリングが行われる(S102)。このモニタリングは、CCD2で撮像しようとする被写体像をモニタ画像としてモニタ装置11において表示する処理である。このモニタ画像はスルー画像であり、通常のカラー画像である。この状態においてレリーズボタンが押下されて測光スイッチSWRがオンされると(S103)、画像取込処理が行われる(S104)。この画像取込処理は、図1において説明した通りであり、取り込んだ被写体像の画像データをファイルし、同時に取り込んだ被写体像をモニタ装置11に表示する(図5(a))。次いで、モード切替スイッチ22によって露出補正モードに設定されているか否かを判定し(S105)、露出補正モードの場合には、露出補正処理を実行する(S106)。
【0014】
この露出補正処理S106は、図4にサブルーチンのフローチャートを示すように、ステップS104において取り込んだ被写体像の各部の輝度情報を抽出し(S201)、抽出した輝度情報について正規化を行ない(S202)、正規化データをファイルする(S203)。次いで、予め設定されたEv値ステップで階調に区分し、区分した各階調に異なる色を割り当てる(S204)。
【0015】
また、CPU100はカメラに設定されている絞り値、シャッター速度、ISO値等に基づいて適正露出を中心として露出オーバとアンダーを表示すべく、OSD回路10において前述した参照スケールSSを作成している(S205)。そして、ステップS204で着色した被写体像とステップS205で作成した参照スケールSSとを合成器9において合成する。これにより、モニタ装置11には、各部の輝度に対応してそれぞれ異なる色に着色された被写体像OBと、この被写体像の右辺に沿って露出値に対応して異なる色に着色された参照スケールSSが表示される(S206)(図5(b))。したがって、このモニタ装置11における表示形態では、撮像者は被写体像OBの各部の色を参照スケールSSの色と対比させ、参照スケールSSのいずれのエリアの色と一致するかを見るだけで被写体像における各部の露出が適正であるか、露出オーバあるいはアンダーであるかが容易に判断できる。また、適正露出からのエリアの位置により露出オーバあるいはアンダーの値も容易に判断できる。
【0016】
また、CPU100は前記OSD回路10によりモニタ装置11に表示した参照スケールSS上にポインタPTを表示させる(図5(c))。ここではポインタPTは露出補正値「0」を示しており、露出補正が行われていない状態である。このポインタPTは露出補正ダイヤル28に連動して参照スケールSS上で移動させることが可能であるので、撮影者が露出補正ダイヤル28を操作し、ポインタPTを参照スケールSS上の被写体像の適正露出を得たい部分の色と同じ色のエリアに移動させ、この状態で露出補正ダイヤル28を押下して決定を行う。このようなポインタPTの操作があったことをCPU100が検知すると(S207)、CPU100は参照スケールSS上でのポインタPTの位置、すなわち露出補正値を認識し、被写体像について各部の露出を演算し直し、これにより、モニタ装置11に表示される被写体像OBの各部の色を補正する(S208)(図5(d))。ここではポインタPTが補正値「+2」のエリアに位置されて露出をオーバにした状態である。ポインタPTが操作されない場合には露出補正は行わない。しかる後、メインフローに戻る。
【0017】
再び、図3のメインフローにおいて、露出補正処理S106が行われた後は、図には示されていないが、露出補正ダイヤル28を通常モードに戻すと、モニタ装置11に表示される被写体像は図5(a)に示したような通常カラーでの表示に戻るが、この際には露出が補正された明るさの通常カラーの表示となる。また、これと同時にモニタ装置11における参照スケールSSの表示も解消される。なお、露出補正モードの状態で所定時間の間何らの操作が行われないときには自動的に通常モードに戻すように設定することも可能である。
【0018】
さらに、露出補正モードのまま、あるいは通常モードに戻されたいずれの場合でも、測光スイッチSWRがオフされたときには、モニタリング処理S102に戻される(S107)。また、露出補正モードのとき、あるいは露出補正モードから通常モードに戻されたときにレリーズボタンの操作によりレリーズスイッチSWSがオンされたときには(S108)、モニタ装置11に表示されている被写体像が取り込まれて撮像処理が行われる(S109)。この撮像処理については図1に説明した通りであるので詳細な説明は省略する。
【0019】
このように、本実施例のカメラでは、露出補正モードに設定すれば、参照スケールを参照して被写体像の各部の色を認識するだけで、被写体の撮像対象部における露出のオーバやアンダー等の露出の適否を一目で判別することができ、露出を適正に補正することが可能になる。また、ポインタを利用して参照スケール上で被写体の撮像対象部と同じ色にポインタを移動させるだけで、当該撮像対象部を適正露出にする露出補正を行うことができる。したがって、露出に詳しくない初心者でも容易かつ迅速に適正な露出補正が実現できる。
【0020】
ここで、ポインタをパソコンのマウスポインタのように、直接被写体像の各部に移動位置させる構成も考えられるが、カメラのモニタ装置にスルー画像を表示している状態では被写体が移動することが多いためポインタを設定することが困難であり、またカメラにマウス機能を持たせることは構造上も極めて困難である。この点、本実施例ではポインタは参照スケール上で直線移動させるのみでよいので、露出補正ダイヤルの回動操作によって容易に露出補正指示を実現することが可能になる。
【0021】
なお、前記実施例では本発明をカメラに適用した例を示しているので露出補正モードのときにはモニタ装置に表示される被写体像はスルー画像であるとしたが、本発明を独立した露出計として構成するような場合には、測光スイッチがオンされたときの静止画を表示するようにしてもよい。あるいは、いずれかを選択するように構成してもよい。
【0022】
また、前記実施例では露出補正モード時のモニタ装置での被写体像及び参照スケールを有彩色で着色した例を示したが、無彩色、すなわち白、灰色、黒で表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明をカメラに適用した実施例のブロック構成図である。
【図2】モニタ装置に参照スケールを表示した状態のモニタ画面である。
【図3】本発明のメインフローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の露出補正処理を示すフローチャートである。
【図5】モニタ装置上での露出補正を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
1 撮像光学系
2 CCD(撮像素子)
11 モニタ装置
22 モード切替スイッチ
23 測光スイッチ
24 レリーズスイッチ
25 シャッター装置
26 絞り装置
27 ISO設定スイッチ
28 露出補正ダイヤル
SS 参照スケール
PT ポインタ
OB 被写体像



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を結像するためのレンズ系と、前記レンズ系で結像された被写体像を撮像する撮像素子と、前記被写体の明るさを測定する測光手段と、前記撮像素子で撮像した被写体像を表示する表示装置とを備え、前記表示装置は、前記被写体の明るさを所要のステップでエリア分けしエリア毎に色分けして前記被写体像を表示するとともに、前記色分けした明るさの露出基準を示す参照スケールを表示することが可能であることを特徴とする露出装置。
【請求項2】
前記表示装置は前記被写体像及び参照スケールをエリア毎に異なる色彩でカラー表示することを特徴とする請求項1に記載の露出装置。
【請求項3】
前記表示装置は前記参照スケールの任意のエリアを指示するポインタを表示することが可能であり、当該ポインタで指示したエリアを適正露出に補正する露出補正手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の露出装置。
【請求項4】
前記露出補正手段は露出補正用ダイヤルを備え、当該露出補正用ダイヤルにより前記ポインタによる指示を行うように構成したことを特徴とする請求項3に記載の露出装置。
【請求項5】
前記表示装置は、前記露出補正手段で補正された露出に基づいて前記被写体像をエリア毎に色分けして表示することが可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の露出装置。
【請求項6】
カメラの露出装置に適用され、前記表示装置は前記撮像素子で撮像した被写体像を表示するモニタ装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の露出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−115249(P2006−115249A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300932(P2004−300932)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】