静電チャック
【課題】本発明の態様は、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる静電チャックを提供する。
【解決手段】被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には第1の凹部が形成され、前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックが提供される。
【解決手段】被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には第1の凹部が形成され、前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシング、露光、検査などを行う基板処理装置において、被吸着物(半導体ウェーハやガラス基板など)を吸着保持する手段として静電チャックが用いられている。
ここで、静電チャックの載置面と被吸着物とが擦れ合うとパーティクルが発生するおそれがある。また、静電チャックの載置面と被吸着物との接触面積が大きくなると被吸着物の吸着脱離応答性が悪くなるおそれがある。
そのため、静電チャックの載置面側に突起部を設けることで接触面積を小さくし、パーティクル汚染の抑制と被吸着物の吸着脱離応答性の向上とを図る技術が知られている。
【0003】
そして、静電チャックの載置面側に突起部を設けるとともに、突起部の頂面をバフ研磨して、頂面に表面粗さRaが0.25S以下の平坦面を形成する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示された技術は、突起部の頂面や側面、および突起部の周辺の平面部(凹部の底面)を鏡面研磨することで、これらの部分に被吸着物の裏面が接触した場合であってもパーティクルの発生を抑制することができるようにしたものである(特許文献1の[0008]、[0029]、[0035]などを参照)。
【0004】
しかしながら、突起部の頂面を平坦面とすれば、平坦面である頂面と被吸着物の裏面とが擦れることでかえってパーティクルが増加するおそれがある。特に、近年においては、被吸着物の裏面などに付着するパーティクルの数の制限が厳しくなる傾向にあり、突起部の頂面を平坦面とするとパーティクルの数の制限に対応することができなくなるおそれがある。
なお、突起部の頂面を平坦面とすれば、被吸着物の吸着脱離応答性も悪化するおそれがある。
【0005】
また、静電チャックの載置面側に突起部を設けるとともに、突起部の頂面をショットブラスト加工して、頂面に中心線平均粗さRaが0.5μm以上の粗面領域を形成する技術が提案されている(特許文献2の[0035]、[0043]を参照)。
この粗面領域は、被吸着物の面内温度の均一性の向上、被吸着物の吸着脱離応答性の向上などのために設けられたものである。また、粗面領域は、被吸着物の裏面と接触しない非接触面となるので、粗面領域と被吸着物の裏面とが擦れることを抑制することができる(特許文献2の[0011]、[0014]を参照)。
【0006】
しかしながら、粗面領域の周辺には中心線平均粗さRaが0.5μm以下の平滑領域が形成されている。すなわち、特許文献1に開示された技術の場合と同様に、頂面の平滑領域と被吸着物の裏面とが擦れることでパーティクルが増加するおそれがある。特に、近年においては、被吸着物の裏面などに付着するパーティクルの数の制限が厳しくなる傾向にあり、突起部の頂面に平滑領域を設けることでパーティクルの数の制限に対応することができなくなるおそれがある。
なお、突起部の頂面に平滑領域を設けるようにすれば、被吸着物の吸着脱離応答性も悪化するおそれがある。
【0007】
また、サンドブラスト法などを用いて突起部を形成した場合には、突起部の表面領域や平面部の表面領域にクラックなどの欠陥部が発生している場合がある。この様な欠陥部が表面領域に内在している場合、欠陥部を基点として表面領域の一部が脱離してパーティクルが発生するおそれがある。
この様な表面領域に内在する欠陥部は、バフ研磨法では除去することができず、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いてはさらに欠陥部が増加するおそれもある。
また、突起部の頂面や側面、および突起部の周辺の平面部を構成する材料の結晶粒子径に関する考慮がされておらず、パーティクルが増加するおそれもある。
【0008】
また、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いて特許文献2に開示された粗面領域を形成するものとすれば、細くて深い穴が形成されることになる。この様な穴に捕捉された微小な異物の清掃による除去は困難であり、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができなくなるおそれがある。
なお、捕捉された微小な異物は、静電チャックの動作時に発生した電界により粗面領域から浮き上がり、被吸着物の裏面に付着するおそれがある。すなわち、粗面領域に捕捉された微小な異物は清掃による除去が困難なため、残留した異物がいずれはパーティクルとなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−86664号公報
【特許文献2】特開2001−341043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる静電チャックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には表面に現れた結晶粒に対応して第1の凹部が形成され、前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1の凹部、第2の凹部の内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
頂面は曲面となっているうえに第1の凹部が形成されている。そのため、頂面と被吸着物の裏面との接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を第1の凹部の内部に捕捉することもできる。
また、平坦部には第2の凹部が形成されているので、仮に、被吸着物が撓んで被吸着物の裏面と平面部とが接触しても接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を第2の凹部の内部に捕捉することもできる。
すなわち、被吸着物の裏面との接触部分の面積を低減させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。また、第1の凹部、第2の凹部の内部に微細な異物を捕捉することでパーティクルの発生を抑制することができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記頂面は、吸着力により湾曲した前記被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さい曲率半径を有したこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、頂面の形状を板状の被吸着物が静電吸着された際の撓み形状に応じたものとすることができる。そのため、頂面と被吸着物の裏面との接触部分における面圧を低下させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の凹部の深さ寸法と、前記第2の凹部の深さ寸法と、は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態の回復がより容易となる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第1の凹部の側面は斜面とされ、前記第1の凹部の底面と前記第1の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、前記第1の凹部の側面と前記頂面とが交わる部分と、前記第1の凹部の側面と前記第1の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い第1の凹部の側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
【0015】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第2の凹部の側面は斜面とされ、前記第2の凹部の底面と前記第2の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、前記第2の凹部の側面と前記平坦部とが交わる部分と、前記第2の凹部の側面と前記第2の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い第2の凹部の側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
【0016】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記平面部は、前記平面部に開口する複数の穴を有し、前記平坦部は前記穴の周辺に形成されたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、平面部に開口する複数の穴に異物を捕捉させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0017】
また、第7の発明は、第6の発明において、前記穴の深さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする静電チャックである。 この静電チャックによれば、穴に捕捉された異物の除去が容易となる。
【0018】
また、第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記突起部の高さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒が仮に脱粒したとしても、突起部の形状が変化することを抑制することができる。
【0019】
また、第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記誘電体基板は、多結晶アルミナ焼結体から形成され、前記平均粒子径が1.5μm以下、粒子径分布の標準偏差が1μm以下、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、下地となる多結晶アルミナ焼結体を緻密な組織とすることができるので、CMP法を用いて第1の凹部や第2の凹部を均一かつ安定的に形成することができる。その結果、パーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
【0020】
また、第10の発明は、第9の発明において、前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な静電チャックはクーロン力を利用して被吸着物を吸着するものである。クーロン力を利用すれば強い吸着力を発現させることができるが、この様な静電チャックの場合であってもパーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
また、第11の発明は、第1〜第10のいずれか1つの発明において、前記頂面の曲率半径は、20ミリメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、頂面の曲率半径が吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることができる。
また、第12の発明は、第1〜第11のいずれか1つの発明において、前記第1の凹部の深さ寸法は、30nm以上、150nm以下であり、前記第2の凹部の深さ寸法は、5nm以上、30nm以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1の凹部、第2の凹部の内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
また、第13の発明は、第9の発明において、前記誘電体基板は、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な静電チャックはジョンセン・ラーベック力を利用して被吸着物を吸着するものである。ジョンセン・ラーベック力を利用すれば、クーロン力を利用する場合よりも吸着力が強くなるが、この様な静電チャックの場合であってもパーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
また、第14の発明は、第13の発明において、前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.4wt%以上、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な高純度のアルミナから形成されるものとすれば、アルミナ以外の物質による汚染を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる静電チャックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるA部の模式拡大図である。
【図2】突起部と平面部の表面性状、断面形状などを例示するためのグラフ図である。
【図3】突起部の頂面に形成された微細な凹部を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図4】平坦部に形成された微細な凹部を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】頂面を平坦面とした場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図6】頂面3a1に形成された凹部13aの形状を例示するための図である。(a)は凹部13aの3次元画像、(b)、(c)は凹部13aのプロファイルを例示するための図である。
【図7】平坦部3b2に形成された凹部13bの形状を例示するための図である。(a)は凹部13bの3次元画像、(b)、(c)は凹部13bのプロファイルを例示するための図である。
【図8】平面部に開口する穴の深さ寸法を例示するためのグラフ図である。
【図9】微細な凹部の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図10】多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図11】誘電体基板の表面領域に発生したクラックを例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】表面領域の一部が脱離しそうな様子を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、(b)は(a)におけるB−B線断面の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真である。また、(c)は(b)におけるD部の拡大写真、(d)は(a)と同じ部分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、(b)は(a)におけるC−C線断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】2値化処理された画像を例示するための写真である。
【図16】CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。
【図17】CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
【図18】CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。
【図19】CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
【図20】(a)は結晶粒の平均粒子径が1.8μm程度の場合、(b)は結晶粒の平均粒子径が1.4μm程度の場合である。
【図21】レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。
【図22】結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
【図23】結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
【図24】微細な凹部の深さの測定を例示するための図である。(a)は測定値のプロファイルを例示するためのグラフ図、(b)は測定位置を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図25】頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法と、被吸着物の裏面に付着したパーティクルの数との関係を示すグラフ図である。
【図26】(a)は結晶粒の平均粒子径が20μm〜50μm、嵩密度が3.7、アルミナ含有率が90wt%の場合、(b)は結晶粒の平均粒子径が1.5μm以下、嵩密度が3.96、アルミナ含有率が99.9wt%の場合である。
【図27】半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数を例示するための模式図である。なお、(a)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(a)に示したものの場合、(b)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(b)に示したものの場合である。
【図28】(a)は他の実施形態に係る静電チャックを例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるF部の模式拡大図である。
【図29】静電チャックの製造方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る静電チャックを例示するための模式断面図である。 なお、図1(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、図1(b)は図1(a)におけるA部の模式拡大図である。
図1(a)、(b)に示すように、静電チャック1には、基台2、誘電体基板3、電極4が設けられている。
【0024】
基台2の一方の主面(電極4の側の表面)には、無機材料からなる絶縁体層5が形成されている。また、誘電体基板3は、被吸着物を載置する側の主面(載置面側)に形成された突起部3aと、突起部3aの周辺に形成された平面部3bと、を有している。この突起部3aの頂面が、半導体ウェーハ等の被吸着物を載置する際に載置面となる。なお、突起部3aや平面部3bの表面性状、断面形状などに関する詳細は後述する。
また、電極4が設けられた誘電体基板3の主面と、絶縁体層5が設けられた基台2の主面とが絶縁性接着剤で接着されている。この絶縁性接着剤が硬化したものが接合層6となる。
【0025】
電極4と電源10a、電源10bとは、電線9で接続されている。なお、電線9は基台2を貫通するようにして設けられているが、電線9と基台2とは絶縁されている。図1に例示をしたものは、正極、負極の電極を互いに隣接させるようにして誘電体基板3に形成させたいわゆる双極型静電チャックである。ただし、これに限定されるわけではなく、1つの電極を誘電体基板3に形成させたいわゆる単極型静電チャックであってもよいし、三極型、その他多極型であってもよい。また、電極の数、形状、配置も適宜変更することができる。
【0026】
また、静電チャック1を貫通するように貫通孔11が設けられている。貫通孔11の一端は平面部3bに開口し、他端は図示しない圧力制御手段や流量制御手段を介して、これも図示しないガス供給手段と接続されている。図示しないガス供給手段はヘリウムガスまたはアルゴンガスなどを供給する。そして、平面部3bを形成することで設けられた空間3cが供給されたガスの通路となる。空間3c同士はそれぞれ連通し、供給されたガスが全体にいきわたるようになっている。
【0027】
また、半導体ウェーハ等の被吸着物を載置した際に被吸着物の外周部を支持する位置に図示しないリング状の突起部を配設し、前述したガスが漏出しないようにすることもできる。また、前述したガス供給用の貫通孔11以外の貫通孔が設けられている場合には、その貫通孔の周囲に図示しないリング状の突起部を配設し、前述したガスが漏出しないようにすることもできる。
このような図示しないリング状突起部の表面性状、断面形状なども、突起部3aと同様とすることができる。
さらに、貫通孔11と連通する放射状や同心円状の図示しないガス分配溝(凹状の溝)を平面部3bに設けることができる。この様なガス分配溝を設けるようにすれば、ガス分配速度を早めることができる。
【0028】
基台2は、例えば、アルミニウム合金や銅などのような熱伝導率の高い金属で形成することができる。そして、その内部には冷却液または加熱液が流れる流路8を設けることができる。なお、流路8は必ずしも必要ではないが、被吸着物の温度制御の観点からは設けられていた方が好ましい。
【0029】
また、基台2の一方の主面に設けられた絶縁体層5は、例えば、アルミナ(Al2O3)やイットリア(Y2O3)等の多結晶体で形成することができる。また、絶縁体層5の熱伝導率が、接合層6の熱伝導率よりも大きくなるようにすることが好ましい。この場合、絶縁体層5の熱伝導率を2W/mK以上にすることがより好ましい。そのようにすれば、接合層単独の場合よりも熱伝達性が良好となり、被吸着物の温度制御性と面内温度の均一性をより向上させることができる。
【0030】
接合層6においては、その熱伝導率を高くすることが好ましい。例えば、熱伝導率を1W/mK以上とすることが好ましく、1.6W/mK以上とすればより好ましい。このような熱伝導率は、例えば、シリコーン樹脂等にアルミナや窒化アルミニウムをフィラーとして添加することで得ることができる。また、添加の割合で熱伝導率を調整することもできる。
【0031】
接合層6の厚みは、熱伝達性を考慮すればできるだけ薄い方が好ましい。一方、基台2の熱膨張率と誘電体基板3の熱膨張率との差に起因する熱せん断応力により、接合層6が剥離することなどを考慮すれば、接合層6の厚みはできるだけ厚い方が好ましい。そのため、接合層6の厚みはこれらを考慮して0.1mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。
【0032】
誘電体基板3には、静電チャックに求められる様々な要求により種々の材料を用いることができる。この場合、熱伝導率、電気絶縁の信頼性を考慮すると、多結晶セラミックス焼結体とすることが好ましい。多結晶セラミックス焼結体としては、例えば、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウム、炭化珪素などからなる多結晶セラミックス焼結体を例示することができる。
誘電体基板3の材料の体積抵抗率は、静電チャックの使用温度領域で108Ωcm以上とすることができる。
なお、本明細書における体積抵抗率は、JIS規格(JIS C 2141:1992電気絶縁用セラミックス材料試験方法)に示される方法を用いて測定した値である。この場合測定は、静電チャックの使用温度領域(例えば、室温(25℃程度))で行うようにすることができる。
【0033】
また、誘電体基板3は、結晶粒の平均粒子径が0.8μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすることが好ましい。また、誘電体基板3は、結晶粒の平均粒子径が1μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすることがさらに好ましい。結晶粒の平均粒子径が0.8μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすれば、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのをより確実に抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。なお、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径に関する詳細は後述する。
【0034】
電極4の材料としては、酸化チタン、チタンの単体あるいはチタンと酸化チタンの混合体、窒化チタン、炭化チタン、タングステン、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、金−白金合金などを例示することができる。
【0035】
次に、突起部3aや平面部3bの表面性状、断面形状などに関してさらに例示をする。 突起部3aの頂面は、被吸着物を載置する際に載置面となる。そのため、パーティクルの発生を低減させるために、従来においては、突起部の頂面を平坦面とし、バフ研磨や鏡面研磨を行うことで頂面に微細な凹凸が形成されないようにしていた(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
しかしながら、本発明者らの検討の結果、突起部の頂面を平坦面とし、頂面に微細な凹部が形成されないようにすれば、かえってパーティクルの数が増加することが判明した。 そのため、本実施の形態においては、突起部3aの頂面3a1を曲面とするとともに、頂面3a1に微細な凹部13a(第1の凹部)を形成するようにしている(図2、図3、図4を参照)。
微細な凹部13aの深さは、結晶粒子径に基づく寸法となっている。この場合、微細な凹部13aの深さ寸法は、30nm以上、150nm以下とすることが好ましい(図25を参照)。
ここで、突起部3aとなる部分の周辺をサンドブラスト法などを用いて削り込むことで突起部3aと平面部3bとのあらかたの形状を形成するようにしている。そのため、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1が形成されることになる。また、後述するように、平面部3bに開口する穴3b1の開口周辺には平坦部3b2が形成されている。
そして、本実施の形態においては、平坦部3b2にも微細な凹部13b(第2の凹部)を形成するようにしている。
微細な凹部13bの深さ寸法は、30nm以下となっており、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは5nm以上、20nm以下となっている。
【0036】
図2は、突起部と平面部の表面性状、断面形状などを例示するためのグラフ図である。 なお、図2は、接触式粗さ計を用いて突起部と平面部の表面を測定したものである。
図2に示すように、突起部3aの頂面3a1は外側に向けて突出する曲面を有している。そして、突起部3aの頂面3a1には微細な凹部13aが形成されている。
また、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1と、穴3b1の開口周辺に形成された平坦部3b2とが設けられている。そして、平坦部3b2には微細な凹部13bが形成されている。
【0037】
ここで、本明細書における「頂面」について説明する。
図2に示すように、本明細書における「頂面」とは、突起部3aの中心軸から振り分けにL2の長さの範囲内に有る部分をいう。ここで、L2は、突起部3aの底部の長さL1の80%の長さである。
なお、突起部3aの頂面3a1が曲面を有しておればよく、頂面3a1の外側は曲面であってもよいし、直線状の面であってもよい。
【0038】
次に、本明細書における曲面の「曲率半径R」について説明する。
図2に示すように、頂面3a1の両端部分の位置をP1、P3とし、頂面3a1の中心位置(頂面3a1と突起部3aの中心軸との交点位置)をP2とする。P1、P2、P3を通る円の半径が本明細書における曲面の「曲率半径R」である。
なお、P1、P2、P3を通る円の中心位置は、P1とP2とを結ぶ線分の垂直二等分線と、P3とP2とを結ぶ線分の垂直二等分線と、の交点となる。そのため、P1、P2、P3の位置からP1、P2、P3を通る円の中心位置を求め、円の中心位置からP1、P2、P3のいずれかまでの距離を求めることで曲面の「曲率半径R」を得ることができる。
【0039】
本発明者らの得た知見によれば、頂面3a1の曲率半径Rは、吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることが好ましい。
その様にすれば、頂面3a1の形状を板状の被吸着物が静電吸着された際の撓み形状に応じたものとすることができる。そのため、頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分における面圧を低下させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0040】
この場合、曲率半径Rを20ミリメートル以下とすれば、頂面3a1の曲率半径が吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることができる。
【0041】
次に、頂面3a1、平坦部3b2に形成された微細な凹部について説明する。
図3は、突起部の頂面に形成された微細な凹部を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図4は、平坦部に形成された微細な凹部を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
図5は、頂面3a1を平坦面とした場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図3に示すように、突起部3aの頂面3a1には、微細な凹部13aが形成されている。
また、図4に示すように、平坦部3b2には、微細な凹部13bが形成されている。
また、図5に示すものの場合には、頂面3a1に微細な凹部13aが形成されていない。
【0042】
図3、図4に例示をしたものの場合には、頂面3a1が曲面となっているうえに凹部13aが形成されている。そのため、頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を凹部13aの内部に捕捉させることもできる。 これに対して、図5に例示をしたものの場合には、頂面3a1に微細な凹部13aが形成されていないため頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分の面積が大きくなってしまう。また、微細な異物を捕捉することもできない。
また、平坦部3b2には凹部13bが形成されているので、仮に、被吸着物が撓んで被吸着物の裏面と平面部3bとが接触しても接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を凹部13bの内部に捕捉させることもできる。
すなわち、被吸着物の裏面との接触部分の面積を低減させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。また、凹部13a、凹部13bの内部に微細な異物を捕捉させることでパーティクルの発生を抑制することができる。
【0043】
表1、表2は、パーティクルの発生を抑制する効果を例示するためのものである。
なお、表1は図3、図4に例示をしたものの場合、表2は図5に例示をしたものの場合である。
なお、表1、表2は、被吸着物を半導体ウェーハとし、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数をパーティクルの粒径毎に集計したものである。
表1、表2中のパーティクルの数は、所定の面積におけるパーティクルの数を計測し、その値を直径300mmの半導体ウェーハにおけるパーティクルの数に換算したものである。
【表1】
【表2】
表1から分かるように、図3、図4に例示をしたような微細な凹部が形成されたものの場合には、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハの吸着を繰り返したとしてもパーティクルの発生を抑制することができる。
また、頂面3a1に形成された凹部13aの深さ寸法は、平坦部3b2に形成された凹部13bの深さ寸法よりも大きくなっている。
そして、凹部13a、凹部13bは、面積が広く深さが浅くなっており、凹部13a、凹部13bの側面は斜面となっている。
そのため、凹部13a、凹部13bの内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
これに対して、表2から分かるように、図5に例示をしたような微細な凹部が形成されていないものの場合には、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハの吸着を繰り返すようにすれば、パーティクルの数が多いまま安定してしまうことになる。
なお、凹部13a、凹部13bの深さ寸法や側面の形状などに関する詳細は後述する。
【0044】
表3、表4は、静電チャック表面の清浄状態の回復を例示するためのものである。
なお、表3は図3、図4に例示をしたものの場合、表4は図5に例示をしたものの場合である。
表3、表4は、被吸着物を半導体ウェーハとし、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数をパーティクルの粒径毎に集計したものである。
表3、表4中のパーティクルの数は、所定の面積におけるパーティクルの数を計測し、その値を直径300mmの半導体ウェーハにおけるパーティクルの数に換算したものである。
また、「初期状態」は、静電チャック表面に異物が付着している状態で半導体ウェーハを吸着させた場合である。また、「No.1〜No.5」は、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハを吸着させた場合である。なお、清掃は、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭くことにより行うこととした。
【表3】
【表4】
図3、図4に例示をしたような微細な凹部が形成されたものの場合には、表3のNo.1から分かるように、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても、半導体ウェーハの裏面に付着するパーティクルの数を大幅に低減させることができる。このことは、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができることを意味している。
【0045】
また、凹部13aの深さ寸法と、凹部13bの深さ寸法とは、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さくなっている。
この様にすれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態の回復がより容易となる。
【0046】
後述するCMP法を用いることで以下に説明する微細な凹部13a、13bが形成されている。
図6は、頂面3a1に形成された凹部13aの形状を例示するための図である。図6(a)は凹部13aの3次元画像、図6(b)、(c)は凹部13aのプロファイルを例示するための図である。
図7は、平坦部3b2に形成された凹部13bの形状を例示するための図である。図7(a)は凹部13bの3次元画像、図7(b)、(c)は凹部13bのプロファイルを例示するための図である。
図6に示すように、凹部13aの側面は斜面とされ、凹部13aの底面と凹部13aの側面とがなす角度(斜面の角度)は鈍角となっている。凹部13aの側面と頂面3a1とが交わる部分と、凹部13aの側面と凹部13aの底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされている。
図7に示すように、凹部13bの側面は斜面とされ、凹部13bの底面と凹部13bの側面とがなす角度(斜面の角度)は鈍角となっている。凹部13bの側面と平坦部3b2とが交わる部分と、凹部13bの側面と凹部13bの底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされている。
なお、本明細書において鈍角とは、90度より大きく、180度より小さい角度をいう。
また、連続的な丸みを帯びた形状とは、後述するCMP法を用いた際に化学的に浸食されることで角が丸まり、凹部13aの側面と頂面3a1とが交わる部分、凹部13aの側面と凹部13aの底面とが交わる部分、凹部13bの側面と平坦部3b2とが交わる部分、凹部13bの側面と凹部13bの底面とが交わる部分が、なだらかにつながっている様子をいう。
【0047】
そのため、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い凹部13a、凹部13bの側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
これに対して、表4から分かるように、図5に例示をしたような微細な凹部が形成されていないものの場合には、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃ではパーティクルの数を大幅に低減させることはできない。
【0048】
また、本実施の形態に係る静電チャック1においては、突起部3aの側面と頂面3a1とが交わる部分と、突起部3aの側面と平面部3bとが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状となっている。すなわち、突起部3aの側面と頂面3a1とが曲面で滑らかに接続されている。また、突起部3aの側面と平面部3bとが曲面で滑らかに接続されている。
【0049】
(CMP法による加工)
バフ研磨法、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法、サンドブラスト法などの機械的加工法を用いたのでは、以上に説明したような形状を有する凹部13aや凹部13bを頂面3a1や平坦部3b2に形成することができない。また、これらの機械的加工法を用いたのでは、以上に説明したような形状を有する突起部3aを形成することができない。
【0050】
以下、突起部3a、平面部3b、平坦部3b2、穴3b1、凹部13a、凹部13bなどの形成方法について説明する。
まず、突起部3a、平面部3bのあらかたの形状を形成する。
例えば、突起部3aとなる部分をマスクし、マスクされていない部分をサンドブラスト法などを用いて削り込むことで突起部3aと平面部3bのあらかたの形状を形成する。この際、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1が形成されることになる。この様な穴3b1が形成されるものとすれば、複数の穴3b1に異物を捕捉させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0051】
この場合、穴3b1の深さ寸法は、後述する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径(0.8μm以上、1.5μm以下)より小さくなるようにすることが好ましい。その様な浅い穴とすれば、穴3b1に捕捉された異物の除去が容易となる。なお、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径についての詳細は後述する。
【0052】
図8は、平面部3bに開口する穴3b1の深さ寸法を例示するためのグラフ図である。 図8に示すように、穴3b1の深さ寸法は1μm未満となっており、穴3b1の内部に多結晶セラミックス焼結体から脱粒した結晶粒が入り込んだ場合であっても容易に除去することができる。なお、穴3b1の深さ寸法は、サンドブラスト法などのプロセス条件(例えば、用いられる研磨材の大きさなど)により制御することができる。
【0053】
次に、マスクを除去し、突起部3aを前述した形状に加工する。また、この際、平面部3bに開口する複数の穴3b1の開口周辺に平坦部3b2を形成する。そして、突起部3aの頂面3a1に前述した微細な凹部13aを形成するとともに、平坦部3b2に前述した微細な凹部13bを形成する。
【0054】
この場合、本発明者らの得た知見によれば、CMP(Chemical Mechanical Polishing;化学機械研磨)法を用いれば、前述した突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを一度に形成することができる。
CMP法は、一般的には平坦化加工を行う際に用いられる。そのため、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができず、ましてや微細な凹部13a、凹部13bを形成することができないように考えられる。
【0055】
しかしながら、本発明者らの得た知見によれば、研磨液(スラリー)に含まれる化学成分の作用を利用すれば、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。
すなわち、多結晶セラミックス焼結体の有するエッチング速度に対する結晶面方位依存性を利用することで、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。つまり、多結晶セラミックス焼結体の表面領域において、エッチングされやすい結晶面方位となっている部分が先にエッチングされるので、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。
また、研磨液に含まれる砥粒による機械的研磨効果と、研磨液に含まれる化学成分による化学的研磨効果と、により突起部3a、平坦部3b2を形成することができる。この場合、平坦部3b2は穴3b1の周辺に形成されることになる。
【0056】
ここで、CMP法におけるプロセス条件を例示する。
研磨布は、例えば、硬質発泡ポリウレタン研磨クロスなどとすることができる。研磨盤の回転速度は60rpm、荷重負荷は0.2kg/cm2などとすることができる。研磨液に含まれる砥粒は、SiO2(酸化珪素)、CeO2(酸化セリウム)、TiO2(酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)、Y2O3(酸化イットリウム)、SnO2(酸化スズ)などからなるものとすることができる。また、研磨液に対する砥粒の割合は10〜20wt%程度とすることができる。研磨液に含まれる化学成分としては、pH調整剤、砥粒の分散剤、界面活性剤などとすることができる。この場合、前述した結晶異方性エッチングを考慮すると研磨液がアルカリ性であることが好ましい。そのため、研磨液の水素イオン指数は、pH8〜13程度としている。なお、研磨液の供給量は、例えば、20cc/分程度とすることができる。
【0057】
そして、本発明者らの得た知見によれば、加工時間が重要な要素となる。
すなわち、加工時間が短ければ平坦化加工となり、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができず、また、微細な凹部13a、凹部13bを形成することもできない。例えば、数分程度の加工時間では平坦化加工となる。
【0058】
一方、数時間程度の加工時間とすれば、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができる、また、微細な凹部13a、凹部13bを形成することもできる。
また、平面部3bよりも突起部3aの頂面3a1の方が加工されやすくなるので、前述した凹部13aの深さ寸法と凹部13bの深さ寸法との関係を構成することができる。すなわち、頂面3a1に形成された凹部13aの深さ寸法が、平坦部3b2に形成された凹部13bの深さ寸法よりも大きくなるようにすることができる。
なお、前述した加工時間は、CMP法におけるその他のプロセス条件(例えば、研磨液の水素イオン指数など)に応じて適宜変更することができる。
また、後述する干渉縞占有面積率をも考慮することができる。すなわち、凹部13aや凹部13bの形成のみならず、後述する干渉縞占有面積率が1%未満となるまでCMP法による加工を行うようにすることができる。なお、干渉縞占有面積率などに関する詳細は後述する。
また、突起部3aの高さ寸法が後述する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径より大きくなるようにすることができる。あるいは、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径が突起部3aの高さ寸法よりも小さくなるようにすることができる。
その様にすれば、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのを抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。
【0059】
図9は、微細な凹部の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図10は、多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図9、図10中の数値は測定箇所および測定番号を表している。
また、表5は図9における測定結果を示す表であり、表6は図10における測定結果を示す表である。
【表5】
【表6】
表5、表6から分かるように、微細な凹部の長さと、多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さとは同程度であるといえる。
このことは、微細な凹部が多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒に対応して形成されたことを示している。
【0060】
本実施の形態に係るCMP法によれば、突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを容易かつ確実に形成することができる。また、後述する干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすることもできる。
【0061】
(欠陥部に対する定量評価法)
次に、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部に対する定量評価法について説明する。
まず、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部について説明する。
図11は、誘電体基板3の表面領域に発生したクラックを例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
図12は、表面領域の一部が脱離しそうな様子を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
サンドブラスト法などの機械的加工法を用いて突起部3a、平面部3bを形成した場合には、図11に示すように、誘電体基板3の表面領域にクラックなどの欠陥部が発生している場合がある。
そして、この様な欠陥部が表面領域に内在している場合には、図12に示すように、表面領域の一部が脱離しそうになり、やがては脱離する場合がある。
なお、発生するクラックとしては、結晶粒界に生じたもの、結晶粒界内を貫通するようにして生じたもの、これらが不規則に繋がったものなどがある。
この様にして脱離した表面領域の一部はパーティクルとなるので、欠陥部を所定の割合まで除去するようにすることが好ましい。そのためには、欠陥部の発生位置、発生の程度(発生割合)などを定量評価する必要がある。
ところが、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部は、外部から直接視認することができない。すなわち、従来においては、欠陥部に対する非破壊での定量評価が困難であった。
【0062】
次に、本実施の形態に係る欠陥部に対する定量評価法について説明する。
本発明者らの得た知見によれば、レーザ顕微鏡により誘電体基板3の表面を撮影すると、欠陥部が内在している部分に干渉縞が生ずる。すなわち、誘電体基板3の表面と、欠陥部の面という2つの界面からの反射光の光路長差に基づいて干渉縞が生ずる。
図13は、突起部3aの頂面3a1に欠陥部が内在している場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。なお、図13(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、図13(b)は図13(a)におけるB−B線断面の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真である。また、図13(c)は図13(b)におけるD部の拡大写真、図13(d)は図13(a)と同じ部分の走査型電子顕微鏡写真である。
図14は、平面部3bの平坦部3b2に欠陥部が内在している場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。なお、図14(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、図14(b)は図14(a)におけるC−C線断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0063】
この場合、図13(d)に示すように、走査型電子顕微鏡を用いた観察では表面領域に内在する欠陥部を特定することができない。
一方、本実施の形態に係る定量評価法によれば、図13(a)〜(c)、図14(a)、(b)に示すように、外部から直接的に視認することができないクラックなどの欠陥部を干渉縞により特定することができる。このことは、欠陥部の発生や発生の程度などを非破壊で定量評価することができるようになることを意味する。
また、干渉縞の大きさ、方向、周期数などに基づいて、欠陥部の状態を知ることもできる。
また、この様な干渉縞を利用した定量評価は、製造ラインにおいて各静電チャック毎に行うことができる。そのため、静電チャックの品質、信頼性、生産性の向上などを図ることができる。
【0064】
次に、干渉縞を利用した欠陥部に対する定量評価についてさらに説明する。
まず、レーザ顕微鏡を用いて干渉縞を撮影する。
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×50対物レンズzoom1
光学モード:非共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :442
オフセット:−16
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
まず、誘電体基板3または静電チャック1に設けられた誘電体基板3をレーザ顕微鏡のステージに載置する。そして、計測したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影視野を決定する。
また、「非共焦点モード」のスナップショット(積算8枚)で撮影する。「共焦点モード」にすると、輝度ムラが生じて、画像処理計測の際、干渉縞を抽出するための閾値設定が難しくなるからである。なお、「非共焦点モード」としても充分な分解能を得ることができる。
【0065】
次に、レーザ顕微鏡を用いて撮影した画像を画像処理(2値化処理)計測する。
図15は、2値化処理された画像を例示するための写真である。
なお、写真中の明るい点状部分Eが干渉縞がある部分である。
画像処理計測は、以下の画像処理ソフトを用いて行うことができる。
画像処理ソフト:Win−ROOF(三谷商事)
2値化処理 :2800−4095
画像処理 :削除0.2μm>、穴埋め
測定 :面積率
次に、画像処理計測された結果に基づいて欠陥部に対する定量評価を行う。
欠陥部に対する定量評価は、干渉縞占有面積率(画像面積に対する干渉縞部分面積の比)に基づいて行うことができる。例えば、図15の場合は、干渉縞占有面積率は0.97%程度である。
本発明者らの得た知見によれば、レーザ顕微鏡を用いて求められた被吸着物を載置する側の主面における干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすれば、表面領域の一部が脱離することで発生するパーティクルの数を大幅に低下させることができる。
【0066】
この場合、誘電体基板3の表面領域に内在する欠陥部は、バフ研磨法では除去することができない。また、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いてはさらに欠陥部が増加するおそれがある。
そのため、本実施の形態においては、前述したCMP法を用いて、突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを形成するとともに、干渉縞占有面積率が1%未満となるまで内在する欠陥部の除去を行うようにしている。
【0067】
図16は、CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。 図17は、CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図16、図17は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3としては、多結晶セラミックス焼結体から形成され、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上のものを例示することができる。
なお、本明細書における嵩密度は、JIS規格(JISR1634)に示されるアルキメデス法により測定した値である。この場合、飽水方法は真空法とすることができ、溶媒には蒸留水を用いるようにすることができる。
図17に示すように、干渉縞占有面積率が最大3.5%程度であった状態の場合でも、本実施の形態に係るCMP法を用いることで、図16に示すように、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
【0068】
図18は、CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。 図19は、CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図18、図19は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3としては、多結晶セラミックス焼結体から形成され、アルミナ含有率が99.4wt%以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下のものを例示することができる。
図19に示すように、干渉縞占有面積率が最大5%程度であった状態の場合でも、本実施の形態に係るCMP法を用いることで、図18に示すように、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
すなわち、誘電体基板3の組成が変わったとしても、前述したCMP法を用いることで、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
【0069】
ここで、誘電体基板3の体積抵抗率は焼成時に制御することができる。
次に、誘電体基板3の製造方法を説明する。
まず、原料としてアルミナと酸化チタンを用意する。用いるアルミナ及び酸化チタンは微粒のものが好ましく、アルミナ粉末は平均粒子径0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下のものが用いられる。一方、酸化チタン粉末は平均粒子径0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下のものが用いられる。原料に微粒粉を用いることで分散が良くなり、粒子径の大きなチタン化合物の偏析物ができにくくなる。
なお、好ましいアルミナ粉末の平均粒子径の下限値は10nmである。また、好ましい酸化チタン粉末の平均粒子径の下限値は5nmである。
【0070】
次に、スラリー調整、造粒、生加工を行う。
前記原料を所定量秤量し、さらに分散剤・バインダー・離型剤を加えてボールミルによる粉砕攪拌混合を行う。混合にはイオン交換水等を用い、不純物が混入しないようにすることが好ましい。混合後スプレードライヤーによる造粒を行い、得られた造粒粉末をプレス成形することで、生成形体を作製することができる。さらに、前記生成形体はCIP成形を行うことが好ましい。CIP成形することで生成形体の密度が上がり、焼成体の密度を上げることができる。なお、成形は乾式成形に限るものではなく、押し出し成形、射出成形、シート成形、鋳込み成形、ゲルキャスト成形などの成形方法を利用しても生成形体を得ることができる。
【0071】
次に、焼成を行う。
前記生成形体を窒素、水素ガス還元雰囲気下で焼成することにより、誘電体基板3を製造できる。
還元焼成を行うことで、酸化チタンが非化学量論組成となり、体積抵抗率を制御することが可能となる。
例えば、以下のような焼成を行うことで、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下の誘電体基板3を製造することができる。
焼成温度としては、1150〜1350℃、より好ましくは1150〜1200℃の温度範囲とすることができる。低温で焼成することにより、アルミナ粒子の粒子成長を抑制することができ、偏析するチタン化合物の成長も抑えることができる。そのため、アルミナ粒子の最大粒子径をより小さくすることができる。
また、焼成の最高温度での保持時間は、焼成体の物性値を安定化させるために2時間以上、より好ましくは4時間以上とすることが望ましい。
なお、得られた焼結体にはさらにHIP処理を施すことが好ましい。これにより緻密質な誘電体基板3を得ることができる。
以上のようにして誘電体基板3を製造することができる。
【0072】
本実施の形態に係る欠陥部に対する定量評価法によれば、欠陥部の発生や発生の程度などを非破壊で定量評価することができる。また、この定量評価に基づいて干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすることができる。そのうえ、この定量評価は、製造ラインにおいて各静電チャック毎に行うことができる。そのため、表面領域の一部が脱離することで発生するパーティクルの数を大幅に低下させることができる。また、静電チャックの品質、信頼性、生産性の向上などを図ることができる。
【0073】
なお、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価する場合を例示したが、他の形態に係る誘電体基板の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価することもできる。例えば、凹部13a、凹部13bが形成されていない突起部、平面部が形成された誘電体基板や、突起部、平面部が形成されていない平板状の誘電体基板などの表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価することもできる。
【0074】
(多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径)
次に、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径について説明する。
まず、結晶粒の平均粒子径の測定について説明する。
測定対象となる多結晶セラミックス焼結体の表面を傷のない鏡面に仕上げる。鏡面仕上げは、ダイヤモンドラップ法により行うようにすることができる。そして、鏡面仕上げされた面をサーマルエッチングする。サーマルエッチングの条件は、温度が1330℃程度、時間が2時間程度とすることができる。
次に、表面にAu(金)をスパッタコーティングする。コーティングの厚みは20nm程度とすることができる。Au(金)のスパッタコーティングは、レーザ顕微鏡を用いる場合に、結晶粒界におけるコントラストが鮮明になるようにすることを目的としている。すなわち、Au(金)のスパッタコーティングは、レーザ光が多結晶セラミックス焼結体の内部へ侵入することを防ぐ為に施される。
Au(金)のスパッタコーティングは、イオンスパッタ装置(日立製作所製、E−105)などを用いて行うようにすることができる。
【0075】
次に、サーマルエッチングした多結晶セラミックス焼結体をレーザ顕微鏡を用いて多結晶セラミックス焼結体を撮影する。
多結晶セラミックス焼結体をレーザ顕微鏡のステージに載置する。そして、計測したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影視野を決定する。
また、「非共焦点モード」のスナップショット(積算8枚)で撮影する。「共焦点モード」にすると、レーザ光の輝度ムラが生じて、画像処理計測の際、結晶粒界を抽出するための閾値設定が難しくなるからである。なお、「非共焦点モード」としても充分な分解能を得ることができる。
【0076】
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×100対物レンズzoom1
光学モード:非共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :400
オフセット:−30
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
図20は、レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。なお、図20は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。また、図20(a)は結晶粒の平均粒子径が1.8μm程度の場合、図20(b)は結晶粒の平均粒子径が1.4μm程度の場合である。
図21は、レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。なお、図21は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
また、図21は結晶粒の平均粒子径が1μm程度の場合である。
【0077】
次に、レーザ顕微鏡を用いて撮影した画像に基づいて、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径を求める。
結晶粒の平均粒子径の演算は、以下のソフトウェアを用いて行うようにすることができる。
画像処理ソフト :Win−ROOF(三谷商事)
キャリブレーション :0.125μm/pixel
バックグラウンド処理 :12.5μm/100pixcel
2値化処理 :2100−2921
円形分離 :自動処理
計測 :円相当径
図22は、結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
図23も、結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
なお、図22は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合、図23は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
本発明者らの得た知見によれば、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすれば、誘電体基板3の表面から結晶粒が脱粒することを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生を抑制することができる。また、仮に脱粒が生じたとしても、粒子径が小さいため凹凸部に保持されにくく容易に除去することができる。また、脱粒により突起部3aなどの形状が変化することを抑制することができる。
また、粒子径分布の標準偏差を1μm以下とすれば、誘電体基板3の表面から結晶粒が脱粒することをさらに抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。
この場合、焼成条件を制御することで結晶粒の平均粒子径の範囲を制御することができる。例えば、焼成温度(例えば、1370℃程度)や温度プロファイルなどを制御することで結晶粒の成長が妨げられるようにすればよい。
【0078】
(微細な凹部の深さ寸法)
次に、微細な凹部の測定について説明する。
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
撮影条件は以下の通りとすることができる。
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×100対物レンズzoom4.0
光学モード:共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :400
オフセット:0
画像取込みモード:3次元取込み(上下限)
ステップ量:0.01μm
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
撮影は以下の手順で行うことができる。
まず、誘電体基板3または静電チャック1に設けられた誘電体基板3をレーザ顕微鏡のステージに載置する。
測定したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。
次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影倍率にする。
光学モードを共焦点に設定し、高さ方向の取込み条件を設定して、画像撮影する。
【0079】
微細な凹部の深さの測定条件は以下の通りとすることができる。
測定モード:段差測定
断面方向 :水平及び垂直
平均モード:線
断面幅 :1
ポイント :波形位置
図24は、微細な凹部の深さの測定を例示するための図である。なお、図24(a)は測定値のプロファイルを例示するためのグラフ図、図24(b)は測定位置を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
微細な凹部の深さの測定は、以下の手順で行うことができる。
まず、撮影した画像において、測定条件を設定する。
図24(a)、(b)に例示をしたように、水平方向及び垂直方向における測定値のプロファイルをスクロールし、画像内の凹凸が大きい箇所を12ポイント以上計測する。ただし、欠陥部100(脱粒により形成されたもの)は除く。
測定した12ポイント以上の段差の中で、最も大きい段差を凹凸MAXとする。
ここで、頂面3a1に形成された微細な凹部13aは以下の手順で求めることにした。 誘電体基板3または静電チャック1の中心から外周に向けて3等配ピッチ(測定画像は4枚)以上で行うことにした。
各測定位置における凹凸段差のMAX値の中で最大値を頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法とした。
【0080】
図25は、頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法と、被吸着物の裏面に付着したパーティクルの数との関係を示すグラフ図である。
サンプル1〜3における凹部13aの深さ寸法を前述した撮影条件、測定条件のもとで測定した。
サンプル1における凹部13aの深さ寸法は、150nm程度、サンプル2における凹部13aの深さ寸法は30nm程度、サンプル3における凹部13aの深さ寸法は20nm程度であった。
凹部13aの深さ寸法が20nm程度となると被吸着物の裏面に付着するパーティクルの数が600個となった。
これに対し、凹部13aの深さ寸法を30nm以上、150nm以下とすれば被吸着物の裏面に付着するパーティクルの数を250個以下とすることができる。
また、凹部13aの深さ寸法が150nmを超えるものとなれば、凹部13aの内部に入り込んだパーティクルの除去が困難となる。
そのため、微細な凹部13aの深さ寸法は、30nm以上、150nm以下とすることが好ましい。
【0081】
(多結晶アルミナ焼結体の嵩密度とアルミナ含有率)
前述したCMP法を用いて微細な凹部13aや凹部13bを形成するためには、下地となる多結晶セラミックス焼結体の嵩密度と純度(含有率)が重要となる。
ここでは、一例として、多結晶アルミナ焼結体の場合を説明する。
図26は、多結晶アルミナ焼結体表面の走査型電子顕微鏡写真である。なお、図26(a)は結晶粒の平均粒子径が20μm〜50μm、嵩密度が3.7、アルミナ含有率が90wt%の場合である。図26(b)は結晶粒の平均粒子径が1.5μm以下、嵩密度が3.96、アルミナ含有率が99.9wt%の場合である。
【0082】
図26(a)と図26(b)との比較からも分かるように、嵩密度を3.96以上、アルミナ含有率を99.9wt%以上とすれば、下地となる多結晶アルミナ焼結体を緻密な組織とすることができるので、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのをより確実に抑制することができる。
【0083】
この場合、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすればより緻密な組織とすることができる。なお、嵩密度および純度(含有率)の少なくともいずれかを所定の範囲内とすれば、緻密な組織とすることができる。ただし、前述したもののように嵩密度および純度(含有率)の両方を所定の範囲内とすることが好ましい。また、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすることがより好ましい。この場合、前述したように粒子径分布の標準偏差が1μm以下となるようにすることが好ましい。
【0084】
下地となる多結晶セラミックス焼結体を緻密な組織とすれば、前述したCMP法を用いて微細な凹部13aや凹部13bを均一かつ安定的に形成することができる。その結果、パーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
この場合、嵩密度はHIP処理(熱間等方圧加圧)などを行うことで制御するようにすることができる。また、結晶粒の平均粒子径は、前述したように焼成条件(焼成温度や温度プロファイルなど)により制御するようにすることができる。
【0085】
図27は、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数を例示するための模式図である。なお、図27(a)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(a)に示したものの場合、図27(b)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(b)に示したものの場合である。
図27(a)の場合には、8インチ半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数が1058個、図27(b)の場合には、8インチ半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数が67個であった。
(静電チャックの他の実施形態)
図28は、他の実施形態に係る静電チャック1aを例示するための模式断面図である。なお、図28(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、図28(b)は図28(a)におけるF部の模式拡大図である。
本実施の形態に係る静電チャック1aにおいては、誘電体基板30の内部に電極4が埋め込まれている。
この様な静電チャック1aは、例えば、グリーンシート印刷積層法などを用いて製造することができる。
【0086】
例えば、まず、多結晶セラミックス焼結体(例えば、多結晶アルミナ焼結体)からなるグリーンシートに、タングステンペーストをスクリーン印刷することにより、電極を形成する。その後、電極を埋設するように、複数のグリーンシートを加圧積層し、焼成前の積層体を形成する。この積層体を所望の形状に切削加工し、還元雰囲気中において焼成することにより、電極が内部に埋設された誘電体基板30を製造することができる。
【0087】
(静電チャックの製造方法)
次に、本実施の形態に係る静電チャックの製造方法について例示する。
なお、静電チャックに設けられる誘電体基板3は前述のようにして製造することができる。また、電極4などの各要素の形成、接合、取り付けなどに関する工程には既知の技術を適用することができるので、これらの説明は省略するものとし、特徴的な工程のみを説明する。
図29は、本実施の形態に係る静電チャックの製造方法を例示するためのフローチャートである。
まず、既知のサンドブラスト法などを用いて、誘電体基板3の被吸着物を載置する側の主面に突起部3a、平面部3bのあらかたの形状を形成する。
次に、図29に示すように、前述したCMP法を用いて突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを形成する。
この際、前述した欠陥部に対する定量評価法を用いて欠陥部が占める割合を求め、欠陥部が占める割合が所定の値以下となるまでCMP法による加工を継続する。
すなわち、レーザ顕微鏡を用いて求められた前記主面における干渉縞占有面積率が1%未満となるまで前記主面における加工が継続される。
なお、CMP法、欠陥部に対する定量評価法などに関する詳細は前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0088】
1 静電チャック、1a 静電チャック、2 基台、3 誘電体基板、3a 突起部、3a1 頂面、3b 平面部、3b1 穴、3b2 平坦部、3c 空間、4 電極、10a 電源、10b 電源、13a 凹部、13b 凹部、30 誘電体基板
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシング、露光、検査などを行う基板処理装置において、被吸着物(半導体ウェーハやガラス基板など)を吸着保持する手段として静電チャックが用いられている。
ここで、静電チャックの載置面と被吸着物とが擦れ合うとパーティクルが発生するおそれがある。また、静電チャックの載置面と被吸着物との接触面積が大きくなると被吸着物の吸着脱離応答性が悪くなるおそれがある。
そのため、静電チャックの載置面側に突起部を設けることで接触面積を小さくし、パーティクル汚染の抑制と被吸着物の吸着脱離応答性の向上とを図る技術が知られている。
【0003】
そして、静電チャックの載置面側に突起部を設けるとともに、突起部の頂面をバフ研磨して、頂面に表面粗さRaが0.25S以下の平坦面を形成する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示された技術は、突起部の頂面や側面、および突起部の周辺の平面部(凹部の底面)を鏡面研磨することで、これらの部分に被吸着物の裏面が接触した場合であってもパーティクルの発生を抑制することができるようにしたものである(特許文献1の[0008]、[0029]、[0035]などを参照)。
【0004】
しかしながら、突起部の頂面を平坦面とすれば、平坦面である頂面と被吸着物の裏面とが擦れることでかえってパーティクルが増加するおそれがある。特に、近年においては、被吸着物の裏面などに付着するパーティクルの数の制限が厳しくなる傾向にあり、突起部の頂面を平坦面とするとパーティクルの数の制限に対応することができなくなるおそれがある。
なお、突起部の頂面を平坦面とすれば、被吸着物の吸着脱離応答性も悪化するおそれがある。
【0005】
また、静電チャックの載置面側に突起部を設けるとともに、突起部の頂面をショットブラスト加工して、頂面に中心線平均粗さRaが0.5μm以上の粗面領域を形成する技術が提案されている(特許文献2の[0035]、[0043]を参照)。
この粗面領域は、被吸着物の面内温度の均一性の向上、被吸着物の吸着脱離応答性の向上などのために設けられたものである。また、粗面領域は、被吸着物の裏面と接触しない非接触面となるので、粗面領域と被吸着物の裏面とが擦れることを抑制することができる(特許文献2の[0011]、[0014]を参照)。
【0006】
しかしながら、粗面領域の周辺には中心線平均粗さRaが0.5μm以下の平滑領域が形成されている。すなわち、特許文献1に開示された技術の場合と同様に、頂面の平滑領域と被吸着物の裏面とが擦れることでパーティクルが増加するおそれがある。特に、近年においては、被吸着物の裏面などに付着するパーティクルの数の制限が厳しくなる傾向にあり、突起部の頂面に平滑領域を設けることでパーティクルの数の制限に対応することができなくなるおそれがある。
なお、突起部の頂面に平滑領域を設けるようにすれば、被吸着物の吸着脱離応答性も悪化するおそれがある。
【0007】
また、サンドブラスト法などを用いて突起部を形成した場合には、突起部の表面領域や平面部の表面領域にクラックなどの欠陥部が発生している場合がある。この様な欠陥部が表面領域に内在している場合、欠陥部を基点として表面領域の一部が脱離してパーティクルが発生するおそれがある。
この様な表面領域に内在する欠陥部は、バフ研磨法では除去することができず、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いてはさらに欠陥部が増加するおそれもある。
また、突起部の頂面や側面、および突起部の周辺の平面部を構成する材料の結晶粒子径に関する考慮がされておらず、パーティクルが増加するおそれもある。
【0008】
また、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いて特許文献2に開示された粗面領域を形成するものとすれば、細くて深い穴が形成されることになる。この様な穴に捕捉された微小な異物の清掃による除去は困難であり、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができなくなるおそれがある。
なお、捕捉された微小な異物は、静電チャックの動作時に発生した電界により粗面領域から浮き上がり、被吸着物の裏面に付着するおそれがある。すなわち、粗面領域に捕捉された微小な異物は清掃による除去が困難なため、残留した異物がいずれはパーティクルとなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−86664号公報
【特許文献2】特開2001−341043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる静電チャックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には表面に現れた結晶粒に対応して第1の凹部が形成され、前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1の凹部、第2の凹部の内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
頂面は曲面となっているうえに第1の凹部が形成されている。そのため、頂面と被吸着物の裏面との接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を第1の凹部の内部に捕捉することもできる。
また、平坦部には第2の凹部が形成されているので、仮に、被吸着物が撓んで被吸着物の裏面と平面部とが接触しても接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を第2の凹部の内部に捕捉することもできる。
すなわち、被吸着物の裏面との接触部分の面積を低減させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。また、第1の凹部、第2の凹部の内部に微細な異物を捕捉することでパーティクルの発生を抑制することができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記頂面は、吸着力により湾曲した前記被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さい曲率半径を有したこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、頂面の形状を板状の被吸着物が静電吸着された際の撓み形状に応じたものとすることができる。そのため、頂面と被吸着物の裏面との接触部分における面圧を低下させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の凹部の深さ寸法と、前記第2の凹部の深さ寸法と、は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態の回復がより容易となる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第1の凹部の側面は斜面とされ、前記第1の凹部の底面と前記第1の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、前記第1の凹部の側面と前記頂面とが交わる部分と、前記第1の凹部の側面と前記第1の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い第1の凹部の側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
【0015】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第2の凹部の側面は斜面とされ、前記第2の凹部の底面と前記第2の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、前記第2の凹部の側面と前記平坦部とが交わる部分と、前記第2の凹部の側面と前記第2の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い第2の凹部の側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
【0016】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記平面部は、前記平面部に開口する複数の穴を有し、前記平坦部は前記穴の周辺に形成されたこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、平面部に開口する複数の穴に異物を捕捉させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0017】
また、第7の発明は、第6の発明において、前記穴の深さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする静電チャックである。 この静電チャックによれば、穴に捕捉された異物の除去が容易となる。
【0018】
また、第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記突起部の高さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも大きいこと、を特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒が仮に脱粒したとしても、突起部の形状が変化することを抑制することができる。
【0019】
また、第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記誘電体基板は、多結晶アルミナ焼結体から形成され、前記平均粒子径が1.5μm以下、粒子径分布の標準偏差が1μm以下、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、下地となる多結晶アルミナ焼結体を緻密な組織とすることができるので、CMP法を用いて第1の凹部や第2の凹部を均一かつ安定的に形成することができる。その結果、パーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
【0020】
また、第10の発明は、第9の発明において、前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な静電チャックはクーロン力を利用して被吸着物を吸着するものである。クーロン力を利用すれば強い吸着力を発現させることができるが、この様な静電チャックの場合であってもパーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
また、第11の発明は、第1〜第10のいずれか1つの発明において、前記頂面の曲率半径は、20ミリメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、頂面の曲率半径が吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることができる。
また、第12の発明は、第1〜第11のいずれか1つの発明において、前記第1の凹部の深さ寸法は、30nm以上、150nm以下であり、前記第2の凹部の深さ寸法は、5nm以上、30nm以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1の凹部、第2の凹部の内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
また、第13の発明は、第9の発明において、前記誘電体基板は、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な静電チャックはジョンセン・ラーベック力を利用して被吸着物を吸着するものである。ジョンセン・ラーベック力を利用すれば、クーロン力を利用する場合よりも吸着力が強くなるが、この様な静電チャックの場合であってもパーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
また、第14の発明は、第13の発明において、前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.4wt%以上、とされたことを特徴とする静電チャックである。
この様な高純度のアルミナから形成されるものとすれば、アルミナ以外の物質による汚染を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる静電チャックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるA部の模式拡大図である。
【図2】突起部と平面部の表面性状、断面形状などを例示するためのグラフ図である。
【図3】突起部の頂面に形成された微細な凹部を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図4】平坦部に形成された微細な凹部を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】頂面を平坦面とした場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図6】頂面3a1に形成された凹部13aの形状を例示するための図である。(a)は凹部13aの3次元画像、(b)、(c)は凹部13aのプロファイルを例示するための図である。
【図7】平坦部3b2に形成された凹部13bの形状を例示するための図である。(a)は凹部13bの3次元画像、(b)、(c)は凹部13bのプロファイルを例示するための図である。
【図8】平面部に開口する穴の深さ寸法を例示するためのグラフ図である。
【図9】微細な凹部の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図10】多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図11】誘電体基板の表面領域に発生したクラックを例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】表面領域の一部が脱離しそうな様子を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、(b)は(a)におけるB−B線断面の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真である。また、(c)は(b)におけるD部の拡大写真、(d)は(a)と同じ部分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、(b)は(a)におけるC−C線断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】2値化処理された画像を例示するための写真である。
【図16】CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。
【図17】CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
【図18】CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。
【図19】CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
【図20】(a)は結晶粒の平均粒子径が1.8μm程度の場合、(b)は結晶粒の平均粒子径が1.4μm程度の場合である。
【図21】レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。
【図22】結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
【図23】結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
【図24】微細な凹部の深さの測定を例示するための図である。(a)は測定値のプロファイルを例示するためのグラフ図、(b)は測定位置を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
【図25】頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法と、被吸着物の裏面に付着したパーティクルの数との関係を示すグラフ図である。
【図26】(a)は結晶粒の平均粒子径が20μm〜50μm、嵩密度が3.7、アルミナ含有率が90wt%の場合、(b)は結晶粒の平均粒子径が1.5μm以下、嵩密度が3.96、アルミナ含有率が99.9wt%の場合である。
【図27】半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数を例示するための模式図である。なお、(a)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(a)に示したものの場合、(b)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(b)に示したものの場合である。
【図28】(a)は他の実施形態に係る静電チャックを例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるF部の模式拡大図である。
【図29】静電チャックの製造方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る静電チャックを例示するための模式断面図である。 なお、図1(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、図1(b)は図1(a)におけるA部の模式拡大図である。
図1(a)、(b)に示すように、静電チャック1には、基台2、誘電体基板3、電極4が設けられている。
【0024】
基台2の一方の主面(電極4の側の表面)には、無機材料からなる絶縁体層5が形成されている。また、誘電体基板3は、被吸着物を載置する側の主面(載置面側)に形成された突起部3aと、突起部3aの周辺に形成された平面部3bと、を有している。この突起部3aの頂面が、半導体ウェーハ等の被吸着物を載置する際に載置面となる。なお、突起部3aや平面部3bの表面性状、断面形状などに関する詳細は後述する。
また、電極4が設けられた誘電体基板3の主面と、絶縁体層5が設けられた基台2の主面とが絶縁性接着剤で接着されている。この絶縁性接着剤が硬化したものが接合層6となる。
【0025】
電極4と電源10a、電源10bとは、電線9で接続されている。なお、電線9は基台2を貫通するようにして設けられているが、電線9と基台2とは絶縁されている。図1に例示をしたものは、正極、負極の電極を互いに隣接させるようにして誘電体基板3に形成させたいわゆる双極型静電チャックである。ただし、これに限定されるわけではなく、1つの電極を誘電体基板3に形成させたいわゆる単極型静電チャックであってもよいし、三極型、その他多極型であってもよい。また、電極の数、形状、配置も適宜変更することができる。
【0026】
また、静電チャック1を貫通するように貫通孔11が設けられている。貫通孔11の一端は平面部3bに開口し、他端は図示しない圧力制御手段や流量制御手段を介して、これも図示しないガス供給手段と接続されている。図示しないガス供給手段はヘリウムガスまたはアルゴンガスなどを供給する。そして、平面部3bを形成することで設けられた空間3cが供給されたガスの通路となる。空間3c同士はそれぞれ連通し、供給されたガスが全体にいきわたるようになっている。
【0027】
また、半導体ウェーハ等の被吸着物を載置した際に被吸着物の外周部を支持する位置に図示しないリング状の突起部を配設し、前述したガスが漏出しないようにすることもできる。また、前述したガス供給用の貫通孔11以外の貫通孔が設けられている場合には、その貫通孔の周囲に図示しないリング状の突起部を配設し、前述したガスが漏出しないようにすることもできる。
このような図示しないリング状突起部の表面性状、断面形状なども、突起部3aと同様とすることができる。
さらに、貫通孔11と連通する放射状や同心円状の図示しないガス分配溝(凹状の溝)を平面部3bに設けることができる。この様なガス分配溝を設けるようにすれば、ガス分配速度を早めることができる。
【0028】
基台2は、例えば、アルミニウム合金や銅などのような熱伝導率の高い金属で形成することができる。そして、その内部には冷却液または加熱液が流れる流路8を設けることができる。なお、流路8は必ずしも必要ではないが、被吸着物の温度制御の観点からは設けられていた方が好ましい。
【0029】
また、基台2の一方の主面に設けられた絶縁体層5は、例えば、アルミナ(Al2O3)やイットリア(Y2O3)等の多結晶体で形成することができる。また、絶縁体層5の熱伝導率が、接合層6の熱伝導率よりも大きくなるようにすることが好ましい。この場合、絶縁体層5の熱伝導率を2W/mK以上にすることがより好ましい。そのようにすれば、接合層単独の場合よりも熱伝達性が良好となり、被吸着物の温度制御性と面内温度の均一性をより向上させることができる。
【0030】
接合層6においては、その熱伝導率を高くすることが好ましい。例えば、熱伝導率を1W/mK以上とすることが好ましく、1.6W/mK以上とすればより好ましい。このような熱伝導率は、例えば、シリコーン樹脂等にアルミナや窒化アルミニウムをフィラーとして添加することで得ることができる。また、添加の割合で熱伝導率を調整することもできる。
【0031】
接合層6の厚みは、熱伝達性を考慮すればできるだけ薄い方が好ましい。一方、基台2の熱膨張率と誘電体基板3の熱膨張率との差に起因する熱せん断応力により、接合層6が剥離することなどを考慮すれば、接合層6の厚みはできるだけ厚い方が好ましい。そのため、接合層6の厚みはこれらを考慮して0.1mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。
【0032】
誘電体基板3には、静電チャックに求められる様々な要求により種々の材料を用いることができる。この場合、熱伝導率、電気絶縁の信頼性を考慮すると、多結晶セラミックス焼結体とすることが好ましい。多結晶セラミックス焼結体としては、例えば、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウム、炭化珪素などからなる多結晶セラミックス焼結体を例示することができる。
誘電体基板3の材料の体積抵抗率は、静電チャックの使用温度領域で108Ωcm以上とすることができる。
なお、本明細書における体積抵抗率は、JIS規格(JIS C 2141:1992電気絶縁用セラミックス材料試験方法)に示される方法を用いて測定した値である。この場合測定は、静電チャックの使用温度領域(例えば、室温(25℃程度))で行うようにすることができる。
【0033】
また、誘電体基板3は、結晶粒の平均粒子径が0.8μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすることが好ましい。また、誘電体基板3は、結晶粒の平均粒子径が1μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすることがさらに好ましい。結晶粒の平均粒子径が0.8μm以上、1.5μm以下の多結晶セラミックス焼結体からなるものとすれば、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのをより確実に抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。なお、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径に関する詳細は後述する。
【0034】
電極4の材料としては、酸化チタン、チタンの単体あるいはチタンと酸化チタンの混合体、窒化チタン、炭化チタン、タングステン、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、金−白金合金などを例示することができる。
【0035】
次に、突起部3aや平面部3bの表面性状、断面形状などに関してさらに例示をする。 突起部3aの頂面は、被吸着物を載置する際に載置面となる。そのため、パーティクルの発生を低減させるために、従来においては、突起部の頂面を平坦面とし、バフ研磨や鏡面研磨を行うことで頂面に微細な凹凸が形成されないようにしていた(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
しかしながら、本発明者らの検討の結果、突起部の頂面を平坦面とし、頂面に微細な凹部が形成されないようにすれば、かえってパーティクルの数が増加することが判明した。 そのため、本実施の形態においては、突起部3aの頂面3a1を曲面とするとともに、頂面3a1に微細な凹部13a(第1の凹部)を形成するようにしている(図2、図3、図4を参照)。
微細な凹部13aの深さは、結晶粒子径に基づく寸法となっている。この場合、微細な凹部13aの深さ寸法は、30nm以上、150nm以下とすることが好ましい(図25を参照)。
ここで、突起部3aとなる部分の周辺をサンドブラスト法などを用いて削り込むことで突起部3aと平面部3bとのあらかたの形状を形成するようにしている。そのため、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1が形成されることになる。また、後述するように、平面部3bに開口する穴3b1の開口周辺には平坦部3b2が形成されている。
そして、本実施の形態においては、平坦部3b2にも微細な凹部13b(第2の凹部)を形成するようにしている。
微細な凹部13bの深さ寸法は、30nm以下となっており、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは5nm以上、20nm以下となっている。
【0036】
図2は、突起部と平面部の表面性状、断面形状などを例示するためのグラフ図である。 なお、図2は、接触式粗さ計を用いて突起部と平面部の表面を測定したものである。
図2に示すように、突起部3aの頂面3a1は外側に向けて突出する曲面を有している。そして、突起部3aの頂面3a1には微細な凹部13aが形成されている。
また、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1と、穴3b1の開口周辺に形成された平坦部3b2とが設けられている。そして、平坦部3b2には微細な凹部13bが形成されている。
【0037】
ここで、本明細書における「頂面」について説明する。
図2に示すように、本明細書における「頂面」とは、突起部3aの中心軸から振り分けにL2の長さの範囲内に有る部分をいう。ここで、L2は、突起部3aの底部の長さL1の80%の長さである。
なお、突起部3aの頂面3a1が曲面を有しておればよく、頂面3a1の外側は曲面であってもよいし、直線状の面であってもよい。
【0038】
次に、本明細書における曲面の「曲率半径R」について説明する。
図2に示すように、頂面3a1の両端部分の位置をP1、P3とし、頂面3a1の中心位置(頂面3a1と突起部3aの中心軸との交点位置)をP2とする。P1、P2、P3を通る円の半径が本明細書における曲面の「曲率半径R」である。
なお、P1、P2、P3を通る円の中心位置は、P1とP2とを結ぶ線分の垂直二等分線と、P3とP2とを結ぶ線分の垂直二等分線と、の交点となる。そのため、P1、P2、P3の位置からP1、P2、P3を通る円の中心位置を求め、円の中心位置からP1、P2、P3のいずれかまでの距離を求めることで曲面の「曲率半径R」を得ることができる。
【0039】
本発明者らの得た知見によれば、頂面3a1の曲率半径Rは、吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることが好ましい。
その様にすれば、頂面3a1の形状を板状の被吸着物が静電吸着された際の撓み形状に応じたものとすることができる。そのため、頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分における面圧を低下させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0040】
この場合、曲率半径Rを20ミリメートル以下とすれば、頂面3a1の曲率半径が吸着力により湾曲した板状の被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さくなるようにすることができる。
【0041】
次に、頂面3a1、平坦部3b2に形成された微細な凹部について説明する。
図3は、突起部の頂面に形成された微細な凹部を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図4は、平坦部に形成された微細な凹部を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
図5は、頂面3a1を平坦面とした場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図3に示すように、突起部3aの頂面3a1には、微細な凹部13aが形成されている。
また、図4に示すように、平坦部3b2には、微細な凹部13bが形成されている。
また、図5に示すものの場合には、頂面3a1に微細な凹部13aが形成されていない。
【0042】
図3、図4に例示をしたものの場合には、頂面3a1が曲面となっているうえに凹部13aが形成されている。そのため、頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を凹部13aの内部に捕捉させることもできる。 これに対して、図5に例示をしたものの場合には、頂面3a1に微細な凹部13aが形成されていないため頂面3a1と被吸着物の裏面との接触部分の面積が大きくなってしまう。また、微細な異物を捕捉することもできない。
また、平坦部3b2には凹部13bが形成されているので、仮に、被吸着物が撓んで被吸着物の裏面と平面部3bとが接触しても接触部分の面積を大幅に低減させることができる。微細な異物を凹部13bの内部に捕捉させることもできる。
すなわち、被吸着物の裏面との接触部分の面積を低減させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。また、凹部13a、凹部13bの内部に微細な異物を捕捉させることでパーティクルの発生を抑制することができる。
【0043】
表1、表2は、パーティクルの発生を抑制する効果を例示するためのものである。
なお、表1は図3、図4に例示をしたものの場合、表2は図5に例示をしたものの場合である。
なお、表1、表2は、被吸着物を半導体ウェーハとし、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数をパーティクルの粒径毎に集計したものである。
表1、表2中のパーティクルの数は、所定の面積におけるパーティクルの数を計測し、その値を直径300mmの半導体ウェーハにおけるパーティクルの数に換算したものである。
【表1】
【表2】
表1から分かるように、図3、図4に例示をしたような微細な凹部が形成されたものの場合には、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハの吸着を繰り返したとしてもパーティクルの発生を抑制することができる。
また、頂面3a1に形成された凹部13aの深さ寸法は、平坦部3b2に形成された凹部13bの深さ寸法よりも大きくなっている。
そして、凹部13a、凹部13bは、面積が広く深さが浅くなっており、凹部13a、凹部13bの側面は斜面となっている。
そのため、凹部13a、凹部13bの内部に捕捉された異物を除去することが容易となる。すなわち、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができる。
これに対して、表2から分かるように、図5に例示をしたような微細な凹部が形成されていないものの場合には、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハの吸着を繰り返すようにすれば、パーティクルの数が多いまま安定してしまうことになる。
なお、凹部13a、凹部13bの深さ寸法や側面の形状などに関する詳細は後述する。
【0044】
表3、表4は、静電チャック表面の清浄状態の回復を例示するためのものである。
なお、表3は図3、図4に例示をしたものの場合、表4は図5に例示をしたものの場合である。
表3、表4は、被吸着物を半導体ウェーハとし、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数をパーティクルの粒径毎に集計したものである。
表3、表4中のパーティクルの数は、所定の面積におけるパーティクルの数を計測し、その値を直径300mmの半導体ウェーハにおけるパーティクルの数に換算したものである。
また、「初期状態」は、静電チャック表面に異物が付着している状態で半導体ウェーハを吸着させた場合である。また、「No.1〜No.5」は、静電チャック表面を清掃し、その後、半導体ウェーハを吸着させた場合である。なお、清掃は、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭くことにより行うこととした。
【表3】
【表4】
図3、図4に例示をしたような微細な凹部が形成されたものの場合には、表3のNo.1から分かるように、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても、半導体ウェーハの裏面に付着するパーティクルの数を大幅に低減させることができる。このことは、静電チャック表面に異物が付着した場合であっても、静電チャック表面の清浄状態を容易に回復させることができることを意味している。
【0045】
また、凹部13aの深さ寸法と、凹部13bの深さ寸法とは、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さくなっている。
この様にすれば、パーティクルの発生を抑制することができるとともに、静電チャック表面の清浄状態の回復がより容易となる。
【0046】
後述するCMP法を用いることで以下に説明する微細な凹部13a、13bが形成されている。
図6は、頂面3a1に形成された凹部13aの形状を例示するための図である。図6(a)は凹部13aの3次元画像、図6(b)、(c)は凹部13aのプロファイルを例示するための図である。
図7は、平坦部3b2に形成された凹部13bの形状を例示するための図である。図7(a)は凹部13bの3次元画像、図7(b)、(c)は凹部13bのプロファイルを例示するための図である。
図6に示すように、凹部13aの側面は斜面とされ、凹部13aの底面と凹部13aの側面とがなす角度(斜面の角度)は鈍角となっている。凹部13aの側面と頂面3a1とが交わる部分と、凹部13aの側面と凹部13aの底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされている。
図7に示すように、凹部13bの側面は斜面とされ、凹部13bの底面と凹部13bの側面とがなす角度(斜面の角度)は鈍角となっている。凹部13bの側面と平坦部3b2とが交わる部分と、凹部13bの側面と凹部13bの底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされている。
なお、本明細書において鈍角とは、90度より大きく、180度より小さい角度をいう。
また、連続的な丸みを帯びた形状とは、後述するCMP法を用いた際に化学的に浸食されることで角が丸まり、凹部13aの側面と頂面3a1とが交わる部分、凹部13aの側面と凹部13aの底面とが交わる部分、凹部13bの側面と平坦部3b2とが交わる部分、凹部13bの側面と凹部13bの底面とが交わる部分が、なだらかにつながっている様子をいう。
【0047】
そのため、静電チャック表面を清浄化する際に陰になる部分をなくすことができるので、静電チャック表面の清浄状態の回復をより確実且つ容易に行うことができる。
すなわち、深さの浅い凹部13a、凹部13bの側面部分は連続的でなだらかな形状となっているので不織布などの清掃具との接触面積を大きくすることができる。そのため、有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃であっても微小な異物をスムーズに除去することができる。
これに対して、表4から分かるように、図5に例示をしたような微細な凹部が形成されていないものの場合には、静電チャック表面を有機溶剤を含ませた不織布で拭く程度の清掃ではパーティクルの数を大幅に低減させることはできない。
【0048】
また、本実施の形態に係る静電チャック1においては、突起部3aの側面と頂面3a1とが交わる部分と、突起部3aの側面と平面部3bとが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状となっている。すなわち、突起部3aの側面と頂面3a1とが曲面で滑らかに接続されている。また、突起部3aの側面と平面部3bとが曲面で滑らかに接続されている。
【0049】
(CMP法による加工)
バフ研磨法、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法、サンドブラスト法などの機械的加工法を用いたのでは、以上に説明したような形状を有する凹部13aや凹部13bを頂面3a1や平坦部3b2に形成することができない。また、これらの機械的加工法を用いたのでは、以上に説明したような形状を有する突起部3aを形成することができない。
【0050】
以下、突起部3a、平面部3b、平坦部3b2、穴3b1、凹部13a、凹部13bなどの形成方法について説明する。
まず、突起部3a、平面部3bのあらかたの形状を形成する。
例えば、突起部3aとなる部分をマスクし、マスクされていない部分をサンドブラスト法などを用いて削り込むことで突起部3aと平面部3bのあらかたの形状を形成する。この際、平面部3bには、平面部3bに開口する複数の穴3b1が形成されることになる。この様な穴3b1が形成されるものとすれば、複数の穴3b1に異物を捕捉させることができるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0051】
この場合、穴3b1の深さ寸法は、後述する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径(0.8μm以上、1.5μm以下)より小さくなるようにすることが好ましい。その様な浅い穴とすれば、穴3b1に捕捉された異物の除去が容易となる。なお、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径についての詳細は後述する。
【0052】
図8は、平面部3bに開口する穴3b1の深さ寸法を例示するためのグラフ図である。 図8に示すように、穴3b1の深さ寸法は1μm未満となっており、穴3b1の内部に多結晶セラミックス焼結体から脱粒した結晶粒が入り込んだ場合であっても容易に除去することができる。なお、穴3b1の深さ寸法は、サンドブラスト法などのプロセス条件(例えば、用いられる研磨材の大きさなど)により制御することができる。
【0053】
次に、マスクを除去し、突起部3aを前述した形状に加工する。また、この際、平面部3bに開口する複数の穴3b1の開口周辺に平坦部3b2を形成する。そして、突起部3aの頂面3a1に前述した微細な凹部13aを形成するとともに、平坦部3b2に前述した微細な凹部13bを形成する。
【0054】
この場合、本発明者らの得た知見によれば、CMP(Chemical Mechanical Polishing;化学機械研磨)法を用いれば、前述した突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを一度に形成することができる。
CMP法は、一般的には平坦化加工を行う際に用いられる。そのため、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができず、ましてや微細な凹部13a、凹部13bを形成することができないように考えられる。
【0055】
しかしながら、本発明者らの得た知見によれば、研磨液(スラリー)に含まれる化学成分の作用を利用すれば、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。
すなわち、多結晶セラミックス焼結体の有するエッチング速度に対する結晶面方位依存性を利用することで、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。つまり、多結晶セラミックス焼結体の表面領域において、エッチングされやすい結晶面方位となっている部分が先にエッチングされるので、微細な凹部13a、凹部13bを形成することができる。
また、研磨液に含まれる砥粒による機械的研磨効果と、研磨液に含まれる化学成分による化学的研磨効果と、により突起部3a、平坦部3b2を形成することができる。この場合、平坦部3b2は穴3b1の周辺に形成されることになる。
【0056】
ここで、CMP法におけるプロセス条件を例示する。
研磨布は、例えば、硬質発泡ポリウレタン研磨クロスなどとすることができる。研磨盤の回転速度は60rpm、荷重負荷は0.2kg/cm2などとすることができる。研磨液に含まれる砥粒は、SiO2(酸化珪素)、CeO2(酸化セリウム)、TiO2(酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)、Y2O3(酸化イットリウム)、SnO2(酸化スズ)などからなるものとすることができる。また、研磨液に対する砥粒の割合は10〜20wt%程度とすることができる。研磨液に含まれる化学成分としては、pH調整剤、砥粒の分散剤、界面活性剤などとすることができる。この場合、前述した結晶異方性エッチングを考慮すると研磨液がアルカリ性であることが好ましい。そのため、研磨液の水素イオン指数は、pH8〜13程度としている。なお、研磨液の供給量は、例えば、20cc/分程度とすることができる。
【0057】
そして、本発明者らの得た知見によれば、加工時間が重要な要素となる。
すなわち、加工時間が短ければ平坦化加工となり、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができず、また、微細な凹部13a、凹部13bを形成することもできない。例えば、数分程度の加工時間では平坦化加工となる。
【0058】
一方、数時間程度の加工時間とすれば、前述したような形状を有する突起部3aを形成することができる、また、微細な凹部13a、凹部13bを形成することもできる。
また、平面部3bよりも突起部3aの頂面3a1の方が加工されやすくなるので、前述した凹部13aの深さ寸法と凹部13bの深さ寸法との関係を構成することができる。すなわち、頂面3a1に形成された凹部13aの深さ寸法が、平坦部3b2に形成された凹部13bの深さ寸法よりも大きくなるようにすることができる。
なお、前述した加工時間は、CMP法におけるその他のプロセス条件(例えば、研磨液の水素イオン指数など)に応じて適宜変更することができる。
また、後述する干渉縞占有面積率をも考慮することができる。すなわち、凹部13aや凹部13bの形成のみならず、後述する干渉縞占有面積率が1%未満となるまでCMP法による加工を行うようにすることができる。なお、干渉縞占有面積率などに関する詳細は後述する。
また、突起部3aの高さ寸法が後述する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径より大きくなるようにすることができる。あるいは、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径が突起部3aの高さ寸法よりも小さくなるようにすることができる。
その様にすれば、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのを抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。
【0059】
図9は、微細な凹部の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図10は、多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さの測定を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
図9、図10中の数値は測定箇所および測定番号を表している。
また、表5は図9における測定結果を示す表であり、表6は図10における測定結果を示す表である。
【表5】
【表6】
表5、表6から分かるように、微細な凹部の長さと、多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒の長さとは同程度であるといえる。
このことは、微細な凹部が多結晶セラミックス焼結体の表面に現れた結晶粒に対応して形成されたことを示している。
【0060】
本実施の形態に係るCMP法によれば、突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを容易かつ確実に形成することができる。また、後述する干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすることもできる。
【0061】
(欠陥部に対する定量評価法)
次に、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部に対する定量評価法について説明する。
まず、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部について説明する。
図11は、誘電体基板3の表面領域に発生したクラックを例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
図12は、表面領域の一部が脱離しそうな様子を例示するための走査型電子顕微鏡写真である。
サンドブラスト法などの機械的加工法を用いて突起部3a、平面部3bを形成した場合には、図11に示すように、誘電体基板3の表面領域にクラックなどの欠陥部が発生している場合がある。
そして、この様な欠陥部が表面領域に内在している場合には、図12に示すように、表面領域の一部が脱離しそうになり、やがては脱離する場合がある。
なお、発生するクラックとしては、結晶粒界に生じたもの、結晶粒界内を貫通するようにして生じたもの、これらが不規則に繋がったものなどがある。
この様にして脱離した表面領域の一部はパーティクルとなるので、欠陥部を所定の割合まで除去するようにすることが好ましい。そのためには、欠陥部の発生位置、発生の程度(発生割合)などを定量評価する必要がある。
ところが、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部は、外部から直接視認することができない。すなわち、従来においては、欠陥部に対する非破壊での定量評価が困難であった。
【0062】
次に、本実施の形態に係る欠陥部に対する定量評価法について説明する。
本発明者らの得た知見によれば、レーザ顕微鏡により誘電体基板3の表面を撮影すると、欠陥部が内在している部分に干渉縞が生ずる。すなわち、誘電体基板3の表面と、欠陥部の面という2つの界面からの反射光の光路長差に基づいて干渉縞が生ずる。
図13は、突起部3aの頂面3a1に欠陥部が内在している場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。なお、図13(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、図13(b)は図13(a)におけるB−B線断面の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真である。また、図13(c)は図13(b)におけるD部の拡大写真、図13(d)は図13(a)と同じ部分の走査型電子顕微鏡写真である。
図14は、平面部3bの平坦部3b2に欠陥部が内在している場合を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。なお、図14(a)は欠陥部が内在している部分に生じる干渉縞を例示するためのレーザ顕微鏡写真、図14(b)は図14(a)におけるC−C線断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0063】
この場合、図13(d)に示すように、走査型電子顕微鏡を用いた観察では表面領域に内在する欠陥部を特定することができない。
一方、本実施の形態に係る定量評価法によれば、図13(a)〜(c)、図14(a)、(b)に示すように、外部から直接的に視認することができないクラックなどの欠陥部を干渉縞により特定することができる。このことは、欠陥部の発生や発生の程度などを非破壊で定量評価することができるようになることを意味する。
また、干渉縞の大きさ、方向、周期数などに基づいて、欠陥部の状態を知ることもできる。
また、この様な干渉縞を利用した定量評価は、製造ラインにおいて各静電チャック毎に行うことができる。そのため、静電チャックの品質、信頼性、生産性の向上などを図ることができる。
【0064】
次に、干渉縞を利用した欠陥部に対する定量評価についてさらに説明する。
まず、レーザ顕微鏡を用いて干渉縞を撮影する。
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×50対物レンズzoom1
光学モード:非共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :442
オフセット:−16
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
まず、誘電体基板3または静電チャック1に設けられた誘電体基板3をレーザ顕微鏡のステージに載置する。そして、計測したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影視野を決定する。
また、「非共焦点モード」のスナップショット(積算8枚)で撮影する。「共焦点モード」にすると、輝度ムラが生じて、画像処理計測の際、干渉縞を抽出するための閾値設定が難しくなるからである。なお、「非共焦点モード」としても充分な分解能を得ることができる。
【0065】
次に、レーザ顕微鏡を用いて撮影した画像を画像処理(2値化処理)計測する。
図15は、2値化処理された画像を例示するための写真である。
なお、写真中の明るい点状部分Eが干渉縞がある部分である。
画像処理計測は、以下の画像処理ソフトを用いて行うことができる。
画像処理ソフト:Win−ROOF(三谷商事)
2値化処理 :2800−4095
画像処理 :削除0.2μm>、穴埋め
測定 :面積率
次に、画像処理計測された結果に基づいて欠陥部に対する定量評価を行う。
欠陥部に対する定量評価は、干渉縞占有面積率(画像面積に対する干渉縞部分面積の比)に基づいて行うことができる。例えば、図15の場合は、干渉縞占有面積率は0.97%程度である。
本発明者らの得た知見によれば、レーザ顕微鏡を用いて求められた被吸着物を載置する側の主面における干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすれば、表面領域の一部が脱離することで発生するパーティクルの数を大幅に低下させることができる。
【0066】
この場合、誘電体基板3の表面領域に内在する欠陥部は、バフ研磨法では除去することができない。また、砥石加工法、レーザ彫刻法、ショットブラスト法などを用いてはさらに欠陥部が増加するおそれがある。
そのため、本実施の形態においては、前述したCMP法を用いて、突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを形成するとともに、干渉縞占有面積率が1%未満となるまで内在する欠陥部の除去を行うようにしている。
【0067】
図16は、CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。 図17は、CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図16、図17は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3としては、多結晶セラミックス焼結体から形成され、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上のものを例示することができる。
なお、本明細書における嵩密度は、JIS規格(JISR1634)に示されるアルキメデス法により測定した値である。この場合、飽水方法は真空法とすることができ、溶媒には蒸留水を用いるようにすることができる。
図17に示すように、干渉縞占有面積率が最大3.5%程度であった状態の場合でも、本実施の形態に係るCMP法を用いることで、図16に示すように、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
【0068】
図18は、CMP法を用いて欠陥部を除去する様子を例示するためのグラフ図である。 図19は、CMP法を用いて欠陥部を除去する前の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図18、図19は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3としては、多結晶セラミックス焼結体から形成され、アルミナ含有率が99.4wt%以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下のものを例示することができる。
図19に示すように、干渉縞占有面積率が最大5%程度であった状態の場合でも、本実施の形態に係るCMP法を用いることで、図18に示すように、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
すなわち、誘電体基板3の組成が変わったとしても、前述したCMP法を用いることで、干渉縞占有面積率が1%未満の状態となるようにすることができる。
【0069】
ここで、誘電体基板3の体積抵抗率は焼成時に制御することができる。
次に、誘電体基板3の製造方法を説明する。
まず、原料としてアルミナと酸化チタンを用意する。用いるアルミナ及び酸化チタンは微粒のものが好ましく、アルミナ粉末は平均粒子径0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下のものが用いられる。一方、酸化チタン粉末は平均粒子径0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下のものが用いられる。原料に微粒粉を用いることで分散が良くなり、粒子径の大きなチタン化合物の偏析物ができにくくなる。
なお、好ましいアルミナ粉末の平均粒子径の下限値は10nmである。また、好ましい酸化チタン粉末の平均粒子径の下限値は5nmである。
【0070】
次に、スラリー調整、造粒、生加工を行う。
前記原料を所定量秤量し、さらに分散剤・バインダー・離型剤を加えてボールミルによる粉砕攪拌混合を行う。混合にはイオン交換水等を用い、不純物が混入しないようにすることが好ましい。混合後スプレードライヤーによる造粒を行い、得られた造粒粉末をプレス成形することで、生成形体を作製することができる。さらに、前記生成形体はCIP成形を行うことが好ましい。CIP成形することで生成形体の密度が上がり、焼成体の密度を上げることができる。なお、成形は乾式成形に限るものではなく、押し出し成形、射出成形、シート成形、鋳込み成形、ゲルキャスト成形などの成形方法を利用しても生成形体を得ることができる。
【0071】
次に、焼成を行う。
前記生成形体を窒素、水素ガス還元雰囲気下で焼成することにより、誘電体基板3を製造できる。
還元焼成を行うことで、酸化チタンが非化学量論組成となり、体積抵抗率を制御することが可能となる。
例えば、以下のような焼成を行うことで、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下の誘電体基板3を製造することができる。
焼成温度としては、1150〜1350℃、より好ましくは1150〜1200℃の温度範囲とすることができる。低温で焼成することにより、アルミナ粒子の粒子成長を抑制することができ、偏析するチタン化合物の成長も抑えることができる。そのため、アルミナ粒子の最大粒子径をより小さくすることができる。
また、焼成の最高温度での保持時間は、焼成体の物性値を安定化させるために2時間以上、より好ましくは4時間以上とすることが望ましい。
なお、得られた焼結体にはさらにHIP処理を施すことが好ましい。これにより緻密質な誘電体基板3を得ることができる。
以上のようにして誘電体基板3を製造することができる。
【0072】
本実施の形態に係る欠陥部に対する定量評価法によれば、欠陥部の発生や発生の程度などを非破壊で定量評価することができる。また、この定量評価に基づいて干渉縞占有面積率が1%未満となるようにすることができる。そのうえ、この定量評価は、製造ラインにおいて各静電チャック毎に行うことができる。そのため、表面領域の一部が脱離することで発生するパーティクルの数を大幅に低下させることができる。また、静電チャックの品質、信頼性、生産性の向上などを図ることができる。
【0073】
なお、誘電体基板3の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価する場合を例示したが、他の形態に係る誘電体基板の表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価することもできる。例えば、凹部13a、凹部13bが形成されていない突起部、平面部が形成された誘電体基板や、突起部、平面部が形成されていない平板状の誘電体基板などの表面領域に内在するクラックなどの欠陥部を定量評価することもできる。
【0074】
(多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径)
次に、誘電体基板3を構成する多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径について説明する。
まず、結晶粒の平均粒子径の測定について説明する。
測定対象となる多結晶セラミックス焼結体の表面を傷のない鏡面に仕上げる。鏡面仕上げは、ダイヤモンドラップ法により行うようにすることができる。そして、鏡面仕上げされた面をサーマルエッチングする。サーマルエッチングの条件は、温度が1330℃程度、時間が2時間程度とすることができる。
次に、表面にAu(金)をスパッタコーティングする。コーティングの厚みは20nm程度とすることができる。Au(金)のスパッタコーティングは、レーザ顕微鏡を用いる場合に、結晶粒界におけるコントラストが鮮明になるようにすることを目的としている。すなわち、Au(金)のスパッタコーティングは、レーザ光が多結晶セラミックス焼結体の内部へ侵入することを防ぐ為に施される。
Au(金)のスパッタコーティングは、イオンスパッタ装置(日立製作所製、E−105)などを用いて行うようにすることができる。
【0075】
次に、サーマルエッチングした多結晶セラミックス焼結体をレーザ顕微鏡を用いて多結晶セラミックス焼結体を撮影する。
多結晶セラミックス焼結体をレーザ顕微鏡のステージに載置する。そして、計測したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影視野を決定する。
また、「非共焦点モード」のスナップショット(積算8枚)で撮影する。「共焦点モード」にすると、レーザ光の輝度ムラが生じて、画像処理計測の際、結晶粒界を抽出するための閾値設定が難しくなるからである。なお、「非共焦点モード」としても充分な分解能を得ることができる。
【0076】
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×100対物レンズzoom1
光学モード:非共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :400
オフセット:−30
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
図20は、レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。なお、図20は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。また、図20(a)は結晶粒の平均粒子径が1.8μm程度の場合、図20(b)は結晶粒の平均粒子径が1.4μm程度の場合である。
図21は、レーザ顕微鏡により撮影された多結晶セラミックス焼結体を例示するための写真である。なお、図21は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
また、図21は結晶粒の平均粒子径が1μm程度の場合である。
【0077】
次に、レーザ顕微鏡を用いて撮影した画像に基づいて、多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径を求める。
結晶粒の平均粒子径の演算は、以下のソフトウェアを用いて行うようにすることができる。
画像処理ソフト :Win−ROOF(三谷商事)
キャリブレーション :0.125μm/pixel
バックグラウンド処理 :12.5μm/100pixcel
2値化処理 :2100−2921
円形分離 :自動処理
計測 :円相当径
図22は、結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
図23も、結晶粒の平均粒子径と粒子径分布の標準偏差を例示するためのグラフ図である。
なお、図22は、クーロン力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合、図23は、ジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックに用いる誘電体基板3の場合である。
本発明者らの得た知見によれば、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすれば、誘電体基板3の表面から結晶粒が脱粒することを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生を抑制することができる。また、仮に脱粒が生じたとしても、粒子径が小さいため凹凸部に保持されにくく容易に除去することができる。また、脱粒により突起部3aなどの形状が変化することを抑制することができる。
また、粒子径分布の標準偏差を1μm以下とすれば、誘電体基板3の表面から結晶粒が脱粒することをさらに抑制することができる。また、仮に結晶粒が脱粒したとしても、突起部3aの形状が変化することを抑制することができる。
この場合、焼成条件を制御することで結晶粒の平均粒子径の範囲を制御することができる。例えば、焼成温度(例えば、1370℃程度)や温度プロファイルなどを制御することで結晶粒の成長が妨げられるようにすればよい。
【0078】
(微細な凹部の深さ寸法)
次に、微細な凹部の測定について説明する。
レーザ顕微鏡としては以下のものを用いることができる。
走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパスOLS−1100)
撮影条件は以下の通りとすることができる。
レーザ種 :Ar
波長 :488nm
撮影レンズ:×100対物レンズzoom4.0
光学モード:共焦点
レーザ強度:100
検出感度 :400
オフセット:0
画像取込みモード:3次元取込み(上下限)
ステップ量:0.01μm
撮影像 :輝度像
撮影 :スナップショット 8枚積算
撮影は以下の手順で行うことができる。
まず、誘電体基板3または静電チャック1に設けられた誘電体基板3をレーザ顕微鏡のステージに載置する。
測定したい領域(撮影したい領域)を対物レンズの直下に移動する。
次に、対物レンズの倍率を選択するなどして撮影倍率にする。
光学モードを共焦点に設定し、高さ方向の取込み条件を設定して、画像撮影する。
【0079】
微細な凹部の深さの測定条件は以下の通りとすることができる。
測定モード:段差測定
断面方向 :水平及び垂直
平均モード:線
断面幅 :1
ポイント :波形位置
図24は、微細な凹部の深さの測定を例示するための図である。なお、図24(a)は測定値のプロファイルを例示するためのグラフ図、図24(b)は測定位置を例示するためのレーザ顕微鏡写真である。
微細な凹部の深さの測定は、以下の手順で行うことができる。
まず、撮影した画像において、測定条件を設定する。
図24(a)、(b)に例示をしたように、水平方向及び垂直方向における測定値のプロファイルをスクロールし、画像内の凹凸が大きい箇所を12ポイント以上計測する。ただし、欠陥部100(脱粒により形成されたもの)は除く。
測定した12ポイント以上の段差の中で、最も大きい段差を凹凸MAXとする。
ここで、頂面3a1に形成された微細な凹部13aは以下の手順で求めることにした。 誘電体基板3または静電チャック1の中心から外周に向けて3等配ピッチ(測定画像は4枚)以上で行うことにした。
各測定位置における凹凸段差のMAX値の中で最大値を頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法とした。
【0080】
図25は、頂面3a1に形成された微細な凹部13aの深さ寸法と、被吸着物の裏面に付着したパーティクルの数との関係を示すグラフ図である。
サンプル1〜3における凹部13aの深さ寸法を前述した撮影条件、測定条件のもとで測定した。
サンプル1における凹部13aの深さ寸法は、150nm程度、サンプル2における凹部13aの深さ寸法は30nm程度、サンプル3における凹部13aの深さ寸法は20nm程度であった。
凹部13aの深さ寸法が20nm程度となると被吸着物の裏面に付着するパーティクルの数が600個となった。
これに対し、凹部13aの深さ寸法を30nm以上、150nm以下とすれば被吸着物の裏面に付着するパーティクルの数を250個以下とすることができる。
また、凹部13aの深さ寸法が150nmを超えるものとなれば、凹部13aの内部に入り込んだパーティクルの除去が困難となる。
そのため、微細な凹部13aの深さ寸法は、30nm以上、150nm以下とすることが好ましい。
【0081】
(多結晶アルミナ焼結体の嵩密度とアルミナ含有率)
前述したCMP法を用いて微細な凹部13aや凹部13bを形成するためには、下地となる多結晶セラミックス焼結体の嵩密度と純度(含有率)が重要となる。
ここでは、一例として、多結晶アルミナ焼結体の場合を説明する。
図26は、多結晶アルミナ焼結体表面の走査型電子顕微鏡写真である。なお、図26(a)は結晶粒の平均粒子径が20μm〜50μm、嵩密度が3.7、アルミナ含有率が90wt%の場合である。図26(b)は結晶粒の平均粒子径が1.5μm以下、嵩密度が3.96、アルミナ含有率が99.9wt%の場合である。
【0082】
図26(a)と図26(b)との比較からも分かるように、嵩密度を3.96以上、アルミナ含有率を99.9wt%以上とすれば、下地となる多結晶アルミナ焼結体を緻密な組織とすることができるので、誘電体基板3から結晶粒が脱粒するのをより確実に抑制することができる。
【0083】
この場合、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすればより緻密な組織とすることができる。なお、嵩密度および純度(含有率)の少なくともいずれかを所定の範囲内とすれば、緻密な組織とすることができる。ただし、前述したもののように嵩密度および純度(含有率)の両方を所定の範囲内とすることが好ましい。また、結晶粒の平均粒子径を0.8μm以上、1.5μm以下とすることがより好ましい。この場合、前述したように粒子径分布の標準偏差が1μm以下となるようにすることが好ましい。
【0084】
下地となる多結晶セラミックス焼結体を緻密な組織とすれば、前述したCMP法を用いて微細な凹部13aや凹部13bを均一かつ安定的に形成することができる。その結果、パーティクルの発生を大幅に低減させることができる。
この場合、嵩密度はHIP処理(熱間等方圧加圧)などを行うことで制御するようにすることができる。また、結晶粒の平均粒子径は、前述したように焼成条件(焼成温度や温度プロファイルなど)により制御するようにすることができる。
【0085】
図27は、半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数を例示するための模式図である。なお、図27(a)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(a)に示したものの場合、図27(b)は下地となる多結晶アルミナ焼結体が図26(b)に示したものの場合である。
図27(a)の場合には、8インチ半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数が1058個、図27(b)の場合には、8インチ半導体ウェーハの裏面に付着したパーティクルの数が67個であった。
(静電チャックの他の実施形態)
図28は、他の実施形態に係る静電チャック1aを例示するための模式断面図である。なお、図28(a)は静電チャックを例示するための模式断面図、図28(b)は図28(a)におけるF部の模式拡大図である。
本実施の形態に係る静電チャック1aにおいては、誘電体基板30の内部に電極4が埋め込まれている。
この様な静電チャック1aは、例えば、グリーンシート印刷積層法などを用いて製造することができる。
【0086】
例えば、まず、多結晶セラミックス焼結体(例えば、多結晶アルミナ焼結体)からなるグリーンシートに、タングステンペーストをスクリーン印刷することにより、電極を形成する。その後、電極を埋設するように、複数のグリーンシートを加圧積層し、焼成前の積層体を形成する。この積層体を所望の形状に切削加工し、還元雰囲気中において焼成することにより、電極が内部に埋設された誘電体基板30を製造することができる。
【0087】
(静電チャックの製造方法)
次に、本実施の形態に係る静電チャックの製造方法について例示する。
なお、静電チャックに設けられる誘電体基板3は前述のようにして製造することができる。また、電極4などの各要素の形成、接合、取り付けなどに関する工程には既知の技術を適用することができるので、これらの説明は省略するものとし、特徴的な工程のみを説明する。
図29は、本実施の形態に係る静電チャックの製造方法を例示するためのフローチャートである。
まず、既知のサンドブラスト法などを用いて、誘電体基板3の被吸着物を載置する側の主面に突起部3a、平面部3bのあらかたの形状を形成する。
次に、図29に示すように、前述したCMP法を用いて突起部3a、平坦部3b2、凹部13a、凹部13bを形成する。
この際、前述した欠陥部に対する定量評価法を用いて欠陥部が占める割合を求め、欠陥部が占める割合が所定の値以下となるまでCMP法による加工を継続する。
すなわち、レーザ顕微鏡を用いて求められた前記主面における干渉縞占有面積率が1%未満となるまで前記主面における加工が継続される。
なお、CMP法、欠陥部に対する定量評価法などに関する詳細は前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0088】
1 静電チャック、1a 静電チャック、2 基台、3 誘電体基板、3a 突起部、3a1 頂面、3b 平面部、3b1 穴、3b2 平坦部、3c 空間、4 電極、10a 電源、10b 電源、13a 凹部、13b 凹部、30 誘電体基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、
前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、
前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には表面に現れた結晶粒に対応して第1の凹部が形成され、
前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、
前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記頂面は、吸着力により湾曲した前記被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さい曲率半径を有したこと、を特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1の凹部の深さ寸法と、前記第2の凹部の深さ寸法と、は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1の凹部の側面は斜面とされ、前記第1の凹部の底面と前記第1の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、
前記第1の凹部の側面と前記頂面とが交わる部分と、前記第1の凹部の側面と前記第1の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記第2の凹部の側面は斜面とされ、前記第2の凹部の底面と前記第2の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、
前記第2の凹部の側面と前記平坦部とが交わる部分と、前記第2の凹部の側面と前記第2の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記平面部は、前記平面部に開口する複数の穴を有し、前記平坦部は前記穴の周辺に形成されたこと、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項7】
前記穴の深さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする請求項6記載の静電チャック。
【請求項8】
前記突起部の高さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも大きいこと、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項9】
前記誘電体基板は、多結晶アルミナ焼結体から形成され、前記平均粒子径が1.5μm以下、粒子径分布の標準偏差が1μm以下、とされたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項10】
前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上、とされたことを特徴とする請求項9記載の静電チャック。
【請求項11】
前記頂面の曲率半径は、20ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項12】
前記第1の凹部の深さ寸法は、30nm以上、150nm以下であり、
前記第2の凹部の深さ寸法は、30nm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項13】
前記誘電体基板は、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下とされたことを特徴とする請求項9記載の静電チャック。
【請求項14】
前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.4wt%以上、とされたことを特徴とする請求項13記載の静電チャック。
【請求項1】
被吸着物を載置する側の主面に形成された突起部と、前記突起部の周辺に形成された平面部と、を有する誘電体基板を備えた静電チャックであって、
前記誘電体基板は、多結晶セラミックス焼結体から形成され、
前記突起部の頂面は曲面とされ、前記頂面には表面に現れた結晶粒に対応して第1の凹部が形成され、
前記平面部は、平坦部を有し、前記平坦部には第2の凹部が形成され、
前記第1の凹部の深さ寸法は、前記第2の凹部の深さ寸法よりも大きいこと、を特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記頂面は、吸着力により湾曲した前記被吸着物の撓み曲線の曲率半径より小さい曲率半径を有したこと、を特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1の凹部の深さ寸法と、前記第2の凹部の深さ寸法と、は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1の凹部の側面は斜面とされ、前記第1の凹部の底面と前記第1の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、
前記第1の凹部の側面と前記頂面とが交わる部分と、前記第1の凹部の側面と前記第1の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記第2の凹部の側面は斜面とされ、前記第2の凹部の底面と前記第2の凹部の側面とがなす角度は鈍角であり、
前記第2の凹部の側面と前記平坦部とが交わる部分と、前記第2の凹部の側面と前記第2の凹部の底面とが交わる部分と、は連続的な丸みを帯びた形状とされたこと、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記平面部は、前記平面部に開口する複数の穴を有し、前記平坦部は前記穴の周辺に形成されたこと、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項7】
前記穴の深さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも小さいこと、を特徴とする請求項6記載の静電チャック。
【請求項8】
前記突起部の高さ寸法は、前記多結晶セラミックス焼結体の結晶粒の平均粒子径よりも大きいこと、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項9】
前記誘電体基板は、多結晶アルミナ焼結体から形成され、前記平均粒子径が1.5μm以下、粒子径分布の標準偏差が1μm以下、とされたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項10】
前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.9wt%以上、嵩密度が3.96以上、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において1014Ωcm以上、とされたことを特徴とする請求項9記載の静電チャック。
【請求項11】
前記頂面の曲率半径は、20ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項12】
前記第1の凹部の深さ寸法は、30nm以上、150nm以下であり、
前記第2の凹部の深さ寸法は、30nm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項13】
前記誘電体基板は、体積抵抗率が静電チャックの使用温度領域において108Ωcm以上、1013Ωcm以下とされたことを特徴とする請求項9記載の静電チャック。
【請求項14】
前記誘電体基板は、アルミナ含有率が99.4wt%以上、とされたことを特徴とする請求項13記載の静電チャック。
【図1】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図25】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図24】
【図26】
【図27】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図25】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図24】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−60108(P2012−60108A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171021(P2011−171021)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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