静電吸引型インクジェット用基板、パターン形成方法及びパターン付基板
【課題】インクジェット技術を利用した回路パターン等のパターンの形成において、設計変更や多品種少量生産に迅速かつ低コストに対応可能な方法で、着弾精度を向上し、高精細、高精度の高密度パターン形成を実現する。
【解決手段】凸部(例えば、図1のように正方配列した突起)を有した基板Kに静電吸引型インクジェットでパターンを形成する。その際、基板側の凸部に電界が集中し、凸部上方から吐出された飛翔液滴を凸部へと誘引し、予め形成された凸部によって定められた位置に精度良く着弾させる。凸部は、結果的にパターンを形成しない部分も含めて予め描画面に一様に形成しておく。そのため、静電吸引型インクジェットによる液体吐出の工程前に、描画パターンに応じた前加工は必要無い。基板は異なる描画パターンに汎用可能。
【解決手段】凸部(例えば、図1のように正方配列した突起)を有した基板Kに静電吸引型インクジェットでパターンを形成する。その際、基板側の凸部に電界が集中し、凸部上方から吐出された飛翔液滴を凸部へと誘引し、予め形成された凸部によって定められた位置に精度良く着弾させる。凸部は、結果的にパターンを形成しない部分も含めて予め描画面に一様に形成しておく。そのため、静電吸引型インクジェットによる液体吐出の工程前に、描画パターンに応じた前加工は必要無い。基板は異なる描画パターンに汎用可能。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸引型インクジェット技術を利用した電気回路等のパターン形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インクジェット技術は、電気回路製造等において現行のリソグラフィ技術に代わり回路配線の微細化をさらに進展させる技術として有望視され、実用化に向けた開発が盛んである。回路配線の微細化は、あらゆる電子機器に高密度化、小型軽量化等の多くの利益をもたらすから、回路製造へのインクジェットの応用に対する期待も大きい(非特許文献1参照)。
また、インクジェット技術の利点として、リソグラフィ技術に比較して、製造工程や製造設備が簡素であること、回路の設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応可能な優れたオンデマンド性等が挙げられる(非特許文献1参照)。
さらに、インクジェット技術によれば、様々な材料を吐出することができるので、配線のみならず、抵抗、コンデンサなどの受動部品を形成することができるという利点がある(非特許文献1参照)。
また、非特許文献1には、近時開発されたインクジェット用のナノスケールの金属粒子や、インクジェットヘッドの構成や駆動方法などが紹介されている。
【0003】
実用化に向けた課題として、インクジェットヘッドから吐出された配線材料が基板に着弾する際にバラツキが生じ、吐出した配線材料のドットが途切れて断線する可能性があるという問題、ならびに、着弾したドットの広がりのため、配線を高密度で形成できないという問題がある。
かかる諸問題を解決するために、基板を予め加工する方法が提案されている。
非特許文献1及び特許文献1には、基板上の配線を形成すべき部分のみにレーザー光を照射して、該部分の表面特性を、配線材料との親和性を有する性質に変える方法が記載されている。
また非特許文献1には、集束イオンビームを使って基板上に溝を掘り、その溝に配線材料を吐出する方法が記載されている。
しかし、前者の方法では、基板上を、レーザー光とインクジェットとの2回にわたって、配線をなぞる必要があり、後者の方法では、基板ごとに集束イオンビームで溝を掘る必要がある。このように、いずれも、基板ごとに微細かつ手間のかかる工程を必要とする。
これを解決するための提案として、特許文献2記載には、金型を転写して基板に溝を形成し、溝に導電性材料をインクジェットにより注入して配線を形成する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2004−356255号公報
【非特許文献1】NIKKEI ELECTRONICS 2002.6.17,67-78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、以上のいずれの従来技術にあってもさらに次のような問題があった。
一つには、インクジェットによる液体吐出の工程前に、回路パターンに応じた前加工が必要となり、インクジェット技術による配線描画の利点が十分に生かされていない。レーザー光を照射する部分は回路パターンに応じたパターンでなければならず、金型は回路ごとの配線パターンに応じた形状の金型を作製しなければならない。インクジェットによる液体吐出のみ個々の回路パターンに応じて変更すればよいという手軽さがインクジェット技術を回路形成に適用する一つの魅力である。インクジェットによる液体吐出の工程以外の工程においてもソフトウエア又はハードウエアが個々の回路パターンに応じる必要が生じる上記の従来技術では、回路の設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応するオンデマンド性が損なわれる。
【0005】
金型を用いる場合、金型及びこれにより転写形成された基板を異なる回路に汎用することができず、回路パターンが変更されるごとに金型及びこれにより転写形成された回路形成前の基板を無駄にしなければならず、コスト高となり、オンデマンド性に鈍りを与える。
【0006】
また、基板に形成された溝にインクジェットにより導電材料を含有した液体を注入する従来技術においては、着弾位置にバラツキのある液滴を溝に受け入れるために、溝の一部には配線幅より大きな注入口を要する。例えば、配線を注入口部分無しに長く形成することはできず、最小幅のライン&スペースで並行配線を長く形成することができない。この注入口部分は配線間スペースなどに影響を与え、配線密度が低下するとともに、製造上の事情が回路設計の自由度に制限を与えることとなる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、インクジェット技術を利用したパターンの形成において、設計変更や多品種少量生産に迅速かつ低コストに対応可能な方法で、着弾精度を向上し、高精細、高精度の高密度パターン形成を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、描画面に凸部が形成されている静電吸引型インクジェット用基板である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項1記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項2に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記凸部の配置ピッチが静電吸引型インクジェットの最小描画単位を規定していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されたパターン形成材料を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とするパターン形成方法である。
【0014】
請求項7記載の発明は、静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、前記凸部に着弾した前記液体によるドットに一部重ねて隣接させて着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法である。
【0015】
請求項8記載の発明は、静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、既に形成されたドット上に着弾させてドットを積層させる静電吸引式工程を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法である。
【0016】
請求項9記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして導電材料を用い、これにより前記基板上に配線その他の導電パターンを形成することを特徴とする請求項6、請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法である。
【0017】
請求項10記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして前記配線より抵抗値の高い導電材料を用い、これにより前記基板上に抵抗を形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法である。
【0018】
請求項11記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして絶縁材料を用い、前記絶縁材料及び前記導電性材料により前記基板上にコンデンサを形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法である。
【0019】
請求項12記載の発明は、電鋳金型によるインプリントで前記描画面に前記凸部を転写形成して前記基板を作製することを特徴とする請求項6から請求項11のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0020】
請求項13記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成された金属微粒子を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記液体が着弾した前記基板を焼成して前記基板上に下地導電パターンを形成する下地形成工程と、
前記下地形成工程の後に、前記下地導電パターンに対して無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法である。
【0021】
請求項14記載の発明は、前記下地形成工程の後でかつ前記無電解めっき工程の前に、前記下地導電パターンを活性化する活性化工程を備えることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法である。
【0022】
請求項15記載の発明は、前記活性化工程では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなうことを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法である。
(1)前記下地導電パターンをエッチングするエッチング処理
(2)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒を前記下地導電パターンに付着させる触媒化処理
(3)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒と前記下地導電パターン中の前記金属超微粒子とを置換する置換めっき処理
【0023】
請求項16記載の発明は、前記下地形成工程の後でかつ前記活性化工程の前に、前記下地導電パターンを溶剤で洗浄・脱脂する洗浄・脱脂工程を備えることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法である。
【0024】
請求項17記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されためっき触媒を含有する液体のメニスカスとこれに対応する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記静電吸引式吐出工程の後に、無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法である。
【0025】
請求項18記載の発明は、前記無電解めっき工程では、スプレー方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0026】
請求項19記載の発明は、前記無電解めっき工程では、インクジェット方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0027】
請求項20記載の発明は、前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させ、前記電界による静電吸引力と前記圧力によりノズルの吐出孔に形成された液体のメニスカスに電界を集中させ、前記静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0028】
請求項21記載の発明は、前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させて前記ノズルの吐出孔に前記液体のメニスカスを隆起させて電界を集中させ、前記電界による静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0029】
請求項22記載の発明は、前記液体は、導電性溶媒を含有する液体であり、前記ノズルプレートの前記液体の吸収率が0.6%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法である。
【0030】
請求項23記載の発明は、前記液体は、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法である。
【0031】
請求項24記載の発明は、前記ノズルプレートの厚さが75μm以上であることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0032】
請求項25記載の発明は、前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であることを特徴とする請求項20から請求項24のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0033】
請求項26記載の発明は、前記ノズルプレートの前記吐出面側に撥液層が設けられていることを特徴とする請求項20から請求項25のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0034】
請求項27記載の発明は、前記圧力発生手段は、圧電素子アクチュエータであることを特徴とする請求項20から請求項26のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0035】
請求項28記載の発明は、基板と、前記基板上に静電吸引型インクジェットにより描画されたパターンとを有し、前記基板の前記パターンが描画された面に凸部が形成され、前記パターンは前記凸部に被着していることを特徴とするパターン付基板である。
【0036】
請求項29記載の発明は、前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項28記載のパターン付基板である。
【0037】
請求項30記載の発明は、前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項29に記載のパターン付基板である。
【0038】
請求項31記載の発明は、前記凸部の配置ピッチが前記回路パターンの最小幅とスペースの最小幅との和に等しくされていることを特徴とする請求項28、請求項29又は請求項30に記載のパターン付基板である。
【0039】
請求項32記載の発明は、前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項28から請求項31のうちいずれか一に記載のパターン付基板である。
【0040】
請求項33記載の発明は、前記パターンにより受動部品を含む電気回路が形成されていることを特徴とする請求項28から請求項32のうちいずれか一に記載のパターン付基板である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、描画面に凸部を有した基板に静電吸引型インクジェットでパターンを形成する。その際、基板側の凸部に電界が集中し、凸部上方から吐出された飛翔液滴を凸部へと誘引し、予め形成された凸部によって定められた位置に精度良く液滴を着弾させることができ、これにより、高精細、高精度の高密度パターン形成を実現することができるという効果がある。
凸部は、結果的にパターンを形成しない部分も含めて予め描画面に一様に形成しておくことができるから、静電吸引型インクジェットによる液体吐出の工程前に、描画パターンに応じた前加工は必要無く、基板は異なる描画パターンに汎用することができるとう効果があり、一品製作から大量生産まで迅速かつ低コストに対応可能である。最小描画単位を変更する場合を除き、基板を変更する必要がなく、金型や基板の無駄が抑えられる。
したがって、設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応するインクジェット本来のオンデマンド性を遺憾なく発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0043】
まず、基板につき説明する。図1は本発明一実施形態における基板の平面図(A)、回路基板の平面図(B)である。
図1中において点で示すように基板Kの表面には、微細な突起が形成されている。突起は基板K上に形成するドットより小さなものである。突起は正方状に均等分散配置されている。すなわち、突起は直交する2方向に等ピッチで配列している。突起の配列の方向は基板の縦横方向に一致している。
凸部の形態としては本実施形態のような均等分散した多数の点状の突起ほか、格子状のものが考えられる。格子状のものとは、並行な多数の線状の凸部が2組交わってできるパターンである。この場合、方眼状に縦横等間隔にすることが好ましい。本実施形態は、方眼の格子点に突起を配置したパターンである。
突起は少なくとも回路描画面に敷き詰めるように形成される。基板Kの表裏に回路を形成する場合には、基板Kの表裏に突起が形成される。回路描画面は、表又は/及び裏の全面とする。但し、基板Kの縁の一定幅は残しても良い。
【0044】
基板K上に静電吸引型インクジェットにより回路パターンを描画することにより、例えば図1(B)に示すような回路基板K2を作製する。回路基板K2は、基板K上に所定の回路パターンが付けられたものである。回路パターンとしては、配線40,41,42,45のほか、抵抗43、コンデンサ44などの受動部品、配線以外の導電パターン46、絶縁パターン、その他あらゆる素材の機能部分が形成できる。機能に応じて、吐出する液体に含ませるパターン形成材料(溶媒)を適宜選択する。回路パターン以外の文字等も静電吸引型インクジェットにより印刷可能である。配線には、最小幅の配線40も、最小幅より幅広の配線41,42,45も形成可能であり、例えば、半導体チップの接続用導電パターンなども形成される。
【0045】
図2に突起の断面図を示す。突起の形状としては、図2(A)に示す柱状突起47、図2(B)に示す断面台形の突起48、図2(C)に示す円錐形の突起49が挙げられる。電界を突起の先端に集中させて飛翔液滴を突起の中心に誘引するため、先細りの形状が好ましい。したがって、断面一様の柱状突起47より先細りする断面台形の突起48が好ましい。さらには、断面台形の突起48より円錐形の突起49が好ましい。
【0046】
突起の高さは、500nm以下が好ましい。高すぎる突起によって回路の電気的特性に影響を与えることがないようにするためである。また、この範囲であれば、電界を突起の先端に集中させて飛翔液滴を突起の中心に誘引するために、十分な突起を形成できる。突起の高さは、より好ましくは100nm以下、もっとも好ましくは50nm以下である。
【0047】
基板Kの材料としては、金型から転写され得る材料であれば特に限定されず、好ましくは非導電性材料が用いられる。導電性材料を用いる場合は、基板の表面を非導電性材料でコーティングすればよい。基板に用いられ得る非導電性材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、セラミックスなどが挙げられる。必要に応じて、離型剤が含まれていてもよい。
【0048】
現在、複数の装置メーカーから微細構造をナノインプリントできる装置が市販されている。ナノインプリント技術によれば、ミクロンからナノにいたる様々な凹凸のパターンを樹脂、アルミニウム、ガラス、シリコン等の素材の表面に簡便、低コストに転写形成できる。
本実施形態では、ナノインプリント装置を用い、電鋳金型で作製した型を、軟化した基板Kの素材の表面に押し当て、突起を転写形成しその後硬化させて基板Kを作製する。
【0049】
なお、本発明は回路パターンに限らず、広くパターンニング手段として使用することができる。代表的なものとしてはディスプレイ用途に使用することができる。具体的には、プラズマディスプレイの蛍光体の形成、プラズマディスプレイのリブの形成、プラズマディスプレイの電極の形成、CRTの蛍光体の形成、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ)の蛍光体の形成、FEDのリブの形成、液晶ディスプレイ用カラーフィルター(RGB着色層、ブラックマトリクス層)、液晶ディスプレイ用スペーサー(ブラックマトリクスに対応したパターン、ドットパターン等)などを挙げることができる。
【0050】
なお、リブとは一般的に障壁を意味し、プラズマディスプレイを例に取ると各色のプラズマ領域を分離するために用いられる。その他の用途としては、マイクロレンズ、半導体用途として磁性体、強誘電体、導電性ペースト(配線、アンテナ)などのパターンニング塗布、グラフィック用途としては、通常印刷、特殊媒体(フィルム、布、鋼板など)への印刷、曲面印刷、各種印刷版の刷版、加工用途としては粘着材、封止材などの本発明を用いた塗布、バイオ、医療用途としては医薬品(微量の成分を複数混合するような)、遺伝子診断用試料等の塗布等に応用することができる。
【0051】
次に、本実施形態に適用する静電吸引型インクジェット装置について説明する。図3は、本実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置の全体構成を示す断面図である。
【0052】
静電吸引型インクジェット装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出するノズル10が形成されたインクジェットヘッド2と、インクジェットヘッド2のノズル10に対向する対向面を有するとともにその対向面で液滴Dの着弾を受ける基板Kを支持する対向電極3とを備えている。なお、インクジェットヘッド2は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の静電吸引型インクジェット装置に適用可能である。
【0053】
インクジェットヘッド2の対向電極3に対向する側には、複数のノズル10を有する樹脂製のノズルプレート11が設けられている。インクジェットヘッド2は、ノズルプレート11の対向電極3に対向する吐出面12からノズル10が突出されない、或いはノズル10が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている(例えば、後述する図4(D)参照)。
【0054】
各ノズル10は、ノズルプレート11に穿孔されて形成されており、各ノズル10には、それぞれノズルプレート11の吐出面12に吐出孔13を有する小径部14とその背後に形成されたより大径の大径部15との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル10の小径部14および大径部15は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部14の吐出孔13の内部直径(以下、ノズル径という。)が10μm、大径部15の小径部14から最も離れた側の開口端の内部直径が75μmとなるように構成されている。
【0055】
なお、ノズル10の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図4(A)〜(E)に示すように、形状が異なる種々のノズル10を用いることが可能である。また、ノズル10は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
【0056】
ノズルプレート11の吐出面12と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル10内の液体Lを帯電させるための帯電用電極16が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極16は、ノズル10の大径部15の内周面17まで延設されており、ノズル内の液体Lに接する。
【0057】
また、帯電用電極16は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源18に接続されており、単一の帯電用電極16がすべてのノズル10内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、全ノズル10内の液体Lが同時に帯電され、インクジェットヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基板Kとの間に静電吸引力が発生される。
【0058】
帯電用電極16の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル10の大径部15の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
【0059】
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21によりインクジェットヘッド2が外界と画されている。
【0060】
なお、ボディ層19には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ20、共通流路、および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル10等の液体Lに所定の供給圧力が付与される。
【0061】
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
【0062】
駆動電圧電源23および帯電用電極16に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源18は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受ける。
【0063】
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM27等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源18および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル10の吐出孔13から液体Lを吐出させる。
【0064】
なお、本実施形態では、インクジェットヘッド2のノズルプレート11の吐出面12には、吐出孔13からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層28が吐出孔13以外の吐出面12全面に設けられている。撥液層28は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面12に成膜されている。なお、撥液層28は、ノズルプレート11の吐出面12に直接成膜してもよいし、撥液層28の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
【0065】
インクジェットヘッド2の下方には、基板Kを支持する平板状の対向電極3がインクジェットヘッド2の吐出面12に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3とインクジェットヘッド2との離間距離は、0.1〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
【0066】
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3のインクジェットヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じる。また、帯電した液滴Dが基板Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすこととなる。
【0067】
なお、対向電極3またはインクジェットヘッド2には、インクジェットヘッド2と基板Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これによりインクジェットヘッド2の各ノズル10から吐出された液滴Dは、基板Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
【0068】
静電吸引型インクジェット装置1による吐出を行う液体Lは、例えば、無機液体としては、水、COCl2、HBr、HNO3、H3PO4、H2SO4、SOCl2、SO2Cl2、FSO3Hなどが挙げられる。
【0069】
また、有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N',N'−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して用いてもよい。
【0070】
さらに、高電気伝導率の物質(銀粉等)が多く含まれるような導電性ペーストを液体Lとして使用し、吐出を行う場合には、前述した液体Lに溶解又は分散させる目的物質としては、ノズルで目詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限されない。
【0071】
PDP、CRT、FEDなどの蛍光体としては、従来より知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3:Eu、YO3:Euなど、緑色蛍光体として、Zn2SiO4:Mn、BaAl12O19:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al2O3:Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Euなどが挙げられる。
【0072】
上記の目的物質を記録媒体上に強固に接着させるために、各種バインダーを添加するのが好ましい。用いられるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体;アルキッド樹脂;ポリメタクリタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、ラウリルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル樹脂およびその金属塩;ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリルアミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン・n−ブチルメタクリレート共重合体などのスチレン・アクリル樹脂;飽和、不飽和の各種ポリエステル樹脂;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのポリアセタール樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂などのポリエチレン系樹脂;ベンゾグアナミンなどのアミド樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂及びそのアニオンカチオン変性;ポリビニルピロリドンおよびその共重合体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキシド単独重合体、共重合体及び架橋体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリエーテルポリオール;SBR、NBRラテックス;デキストリン;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン及びその誘導体、カゼイン、トロロアオイ、トラガントガム、プルラン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、アルブミン、各種澱粉類、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、大豆蛋白などの天然或いは半合成樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;ロジン及びロジンエステル;ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルフォン酸、ポリビニルスルフォン酸などを用いることができる。これらの樹脂は、ホモポリマーとしてだけでなく、相溶する範囲でブレンドして用いてもよい。
【0073】
ここで、液体Lの吐出原理について説明する。
【0074】
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧を印加し、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3のインクジェットヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させる。
【0075】
本実施形態のように、ノズルプレート11の絶縁性が高くなると、図5にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
【0076】
特に、図5でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基板Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基板Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
ノズルを基板K上の突起に対向させて吐出する場合には、液滴Dは突起先端に集中した高電界に吸引され、突起に引き寄せられるようにして着弾する。そのため、メニスカスが引きちぎられた直後の飛翔方向にバラツキが生じても、より正確に突起上に着弾させることができる。
【0077】
このように、インクジェットヘッド2における液体Lの吐出原理を利用すれば、フラットな吐出面を有するインクジェットヘッド2においても、高い絶縁性を有するノズルプレート11を用い、吐出面12に対して垂直方向の電位差を発生させることで強い電界集中を生じさせることができ、正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
さらに、突起を有した基板Kを用いることにより、突起先端にも強い電界集中を生じさせることができ、突起に着弾させる際には、より正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
【0078】
発明者らが、電極間の電界の電界強度が実用的な値である1.5kV/mmとなるように構成し、各種の絶縁体でノズルプレート11を形成して下記の実験条件に基づいて行った実験では、ノズル10から液滴Dが吐出される場合と吐出されない場合があった。
【0079】
[実験条件]
ノズルプレート11の吐出面12と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート11の厚さ:125mm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
【0080】
この実機による実験で、液滴Dがノズル10から安定に吐出されたすべての場合について、メニスカス先端部の電界強度を求めた。実際には、メニスカス先端部の電界強度を直接測定することが困難であるため、電界シミュレーションソフトである「PHOTO-VOLT」(商品名、株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより算出した。その結果、すべての場合においてメニスカス先端部の電界強度は3×107V/m(30kV/mm)以上であった。
【0081】
また、前記実験条件と同様のパラメータを同ソフトに入力してメニスカス先端部の電界強度を演算した結果、図6に示すように、電界強度はノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗率に強く依存することが分かった。文献等では絶縁体または誘電体とされる物質の体積抵抗率は1010Ωm以上のものを指すことが多く、代表的な絶縁体として知られているボロシリケイトガラス(例えば、PYREX(登録商標)ガラス)の体積抵抗率は1014Ωmである。
【0082】
しかし、このような体積抵抗率の絶縁体では、液滴Dは吐出されない。前記のように、ノズル10から液滴Dを安定に吐出させるためにはメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上であることが必要であり、図6から、少なくともノズルプレート11の体積抵抗率は1015Ωm以上であることが必要であることが分かった。
【0083】
ノズルプレート11の体積抵抗率とメニスカス先端部の電界強度との関係が図6のような特徴的な関係になるのは、ノズルプレート11の体積抵抗率が低いと、静電電圧を印加してもノズルプレート内で等電位線が図5に示したように吐出面12に対して略垂直方向に並ぶような状態にはならず、ノズル内の液体Lおよび液体Lのメニスカスへの電界集中が十分に行われないためであると考えられる。
【0084】
理論上、体積抵抗率が1015Ωm未満のノズルプレート11でも、静電電圧を非常に大きくすればノズル10から液滴Dが吐出される可能性はあるが、電極間でのスパークの発生等により基板Kが損傷される可能性がある。
【0085】
なお、図6に示したようなメニスカス先端部の電界強度のノズルプレート11の体積抵抗率に対する特徴的な依存関係は、ノズル径を種々に変化させてシミュレーションを行った場合でも同様に得られており、どの場合も体積抵抗率が1015Ωm以上の場合にメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上になることが分かっている。また、前記実験条件中のノズルプレート11の厚さとは、本実施形態の場合は、ノズル10の小径部14の長さと大径部15の長さの和に等しい。
【0086】
一方、体積抵抗率が1015Ωm以上の絶縁体を用いてノズルプレート11を作製しても、ノズル10から液滴Dが吐出されない場合がある。下記実施例1に示すように、液体Lとして水などの導電性溶媒を含有する液体を用いた実験では、ノズルプレート11の液体の吸収率が0.6%以下であることが必要であることが分かった。
【0087】
これは、ノズルプレート11が液体L中から導電性溶媒を吸収すると導電性の液体である水分子等の分子が本体絶縁性であるノズルプレート11内に存在することになるため、結果的にノズルプレート11の電気伝導度が高くなり、特に液体Lに接する局部の実効的な体積抵抗率の値が低下し、図6に示す関係に従ってメニスカス先端部の電界強度が弱まり、液体Lの吐出に必要な電界集中が得られなくなるためと考えられる。
【0088】
一方、下記実施例1によれば、液体Lとして絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を用いた場合には、ノズルプレート11は、その液体に対する吸収率に係わりなく体積抵抗率が1015Ωm以上であれば液体Lを吐出することが分かった。これは、絶縁性溶媒がノズルプレート11内に吸収されても絶縁性溶媒の電気伝導度が低いためノズルプレート11の電気伝導度が大きく変化せず、実効的な体積抵抗率が低下しないためであると考えられる。
【0089】
なお、前記絶縁性溶媒に分散されている帯電可能な粒子は、例えば、電気伝導度が極めて大きな金属粒子であってもノズルプレート11には吸収されないため、ノズルプレート11の電気伝導度を高めることはない。なお、前記絶縁性溶媒とは、単体では静電吸引力により吐出されない溶媒をいい、具体的には、例えば、キシレンやトルエン、テトラデカン等が挙げられる。また、導電性溶媒とは、電気伝導度が10−10S/cm以上の溶媒をいう。
【0090】
また、前記シミュレーションにおいて、ノズルプレート11の厚さを変化させた場合およびノズル径を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度を、図7および図8にそれぞれ示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズルプレート11の厚さおよびノズル径にも依存し、それぞれ75μm以上および15μm以下であることが好ましい。なお、ノズルプレート11の厚さおよびノズル径の前記適正範囲は、下記実施例2に示すように実機による実験でも確認されている。
【0091】
メニスカス先端部の電界強度がノズルプレート11の厚さに依存する理由としては、ノズルプレート11の厚さがより厚くなることで、ノズル10の吐出孔13と帯電用電極16との距離が遠くなり、ノズルプレート内の等電位線が略垂直方向に並び易くなるためメニスカス先端部への電界集中が生じ易くなることが考えられる。
【0092】
また、ノズル径が小径になることで、メニスカスの径が小さくなり、より小径となったメニスカス先端部に電界が集中することで電界集中の度合が大きくなる。そのため、メニスカス先端部の電界強度が強くなると考えられる。
【0093】
なお、図7に示したノズルプレート11の厚さとメニスカス先端部の電界強度との関係および図8に示したノズル径とメニスカス先端部の電界強度との関係は、本実施形態のような小径部14および大径部15よりなる2段構造のノズル10の場合のみならず、1段構造、すなわち、単純なテーパ状のノズルや円筒状のノズル、或いは多段構造のノズルの場合も同様のシミュレーション結果が得られている。
【0094】
さらに、前記シミュレーションにおいて、小径部14および大径部15の区別がないテーパ状または円筒状の1段構造のノズル10において、ノズル10のテーパ角を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度の変化を図9に示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズル10のテーパ角に依存することが分かる。ノズル10のテーパ角は30°以下であることが好ましい。なお、テーパ角とはノズル10の内面とノズルプレート11の吐出面12の法線とがなす角のことをいい、テーパ角が0°の場合はノズル10が円筒形状であることに対応する。
【0095】
次に、本実施形態のインクジェットヘッド2および静電吸引型インクジェット装置1の動作について説明する。
【0096】
図10は、本実施形態の静電吸引型インクジェット装置におけるインクジェットヘッドの駆動制御を説明する図である。本実施形態では、静電吸引型インクジェット装置1の動作制御手段24は、帯電電圧電源18から帯電用電極16に一定の静電電圧VCを印加させる。これにより、インクジェットヘッド2の各ノズル10には常時一定の静電電圧VCが印加され、インクジェットヘッド2と対向電極3との間に電界が生じる。
【0097】
また、動作制御手段24は、液滴Dを吐出させるべきノズル10ごとに、そのノズル10に対応する駆動電圧電源23からピエゾ素子22に対してパルス状の駆動電圧VDを印加させる。このような駆動電圧VDが印加されると、ピエゾ素子22が変形してノズル内部の液体Lの圧力を上げ、ノズル10の吐出孔13では、図中Aの状態からメニスカスが隆起し始め、Bのようにメニスカスが大きく隆起した状態となる。
【0098】
すると、前述したように、メニスカス先端部に高度な電界集中が生じて電界強度が非常に強くなり、メニスカスに対して前記静電電圧VCにより形成された電界から強い静電力が加わる。この強い静電力による吸引とピエゾ素子22による圧力とにより図中Cのようにメニスカスが引きちぎられて液滴Dが形成される。液滴Dは、電界で加速されて対向電極方向に吸引され、対向電極3に支持された基板Kに着弾する。
【0099】
その際、液滴Dには空気の抵抗等が加わるが、前述したように、静電力の作用で液滴Dはより近い所に着弾しようとするため、基板Kに対する着弾方向がぶれることなく安定し、基板Kに正確に着弾する。
【0100】
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に印加される一定の静電電圧VCは1.5kVに設定されており、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に印加されるパルス状の駆動電圧VDは20Vに設定されている。
【0101】
なお、ピエゾ素子22に印加する駆動電圧VDとしては、本実施形態のようにパルス状の電圧とすることも可能であるが、この他にも、例えば、電圧が漸増した後漸減するいわば三角状の電圧や、電圧が漸増した後一旦一定値を保ちその後漸減する台形状の電圧、或いはサイン波の電圧を印加するように構成することも可能である。また、図11(A)に示すように、ピエゾ素子22に常時電圧VDを印加しておいて一旦切り、再度電圧VDを印加してその立ち上がり時に液滴Dを吐出させるようにしてもよい。また、図11(B)、(C)に示すような種々の駆動電圧VDを印加するように構成してもよく適宜決定される。
【0102】
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッド2および静電吸引型インクジェット装置1によれば、インクジェットヘッド2は、フラットな吐出面12を有するヘッドとされているため、図示を省略するが、インクジェットヘッド2のクリーニング時に吐出面12にブレードやワイパ等の部材が接触してもノズル10が損傷する等の事態が生じることがなく、操作性に優れる。
【0103】
また、インクジェットヘッド2の製造においてノズル10の突起等の微細構造を形成する必要がなく構造が単純であるから、容易に製造することが可能で生産性に優れる。
【0104】
さらに、ノズル10が形成されるノズルプレート11として、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料を用いることで、帯電用電極16に印加する静電電圧が1.5kV程度の低い電圧であっても、ピエゾ素子22の変形によりノズル10の吐出孔部分に形成される液体Lのメニスカスに電界を集中することができ、メニスカスの先端部の電界強度を液滴Dが安定的に吐出される3×107V/m以上とすることが可能となる。
【0105】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド2は、フラットなヘッドでありながら、ノズルが突出されたヘッドと同様の電界集中をメニスカス先端部に効果的に生じさせることができるため、低電圧の静電電圧の印加でも効率良くかつ正確に液体を吐出することが可能となる。
【0106】
なお、本実施形態では、ピエゾ素子22の変形により形成されたメニスカスを静電吸引力で分離して液滴化し、静電電圧VCによる電界で加速して基板Kに着弾させる構成としているが、この他にも、例えば、ピエゾ素子22の変形による圧力のみで液体Lが液滴化する程度の強い駆動電圧を印加するように構成することも可能である。
【0107】
また、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせ、ノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成する圧力発生手段としてピエゾ素子22の変形を用いる場合について示したが、圧力発生手段はこの機能を有するものであればよく、この他にも、例えば、ノズル10やキャビティ20の内部の液体Lを加熱するなどして気泡を生じさせ、その圧力を用いるように構成することも可能である。
【0108】
また、本実施形態では、対向電極3を接地する場合について述べたが、例えば、電源から対向電極3に電圧を印加して、帯電用電極16との電位差が1.5kV等の所定の電位差になるようにその電源を動作制御手段24で制御するように構成することも可能である。
【0109】
次に、静電吸引式吐出工程につき説明する。
上記静電吸引型インクジェット装置1を用い、基板Kに対し液体を吐出してパターンを形成する。その際、まず、図12(A)に示すように、突起50に液滴を着弾させて吐出液体によるドット51を形成する。このとき、突起に形成された高電界により精度良く着弾位置が定まる。図12(A)には、3つの突起50を示した。まず、パターンを形成する範囲にあるすべての突起50にドットを形成する。
次に、図12(B)に示すように、突起50に着弾したドット51aに一部重ねて隣接させて液滴を着弾させ、ドット51bを形成する。これにより、突起50に形成されたドット51aからパターンを延設する。このとき、既に突起50に着弾したドット51aに一部重ねるように着弾させるから、ドット51bは、ドット51aに形成される強電界の作用と液体同士の親和性の作用により精度良く着弾位置が定まる。
さらに、ドット51cを形成して隣接する突起に形成されたドット51dとパターンを繋げる。同様に、ドット51e,ドット51fを形成し、突起50上のドット51dと突起50上のドット51gとを繋ぐ。
さらに、図12(B)に示す既に形成されたドット上に液滴を着弾させてドット(図示せず)を積層する。これにより必要な厚みのパターンを形成するとともに、パターンのエッジの直線度を高めることができる。
以上のようにしてパターンを一本に繋げ、積層することで必要な厚みに厚膜化するとともにエッジの整えて配線などのパターンを形成する。
【0110】
図12(B)は、突起50の配置ピッチに対してドット51を1/3ずつずらして形成する例を示す。図13(E)に示すように、1/2ずつずらして形成しても良い。
ドット半径と突起50の配置ピッチとの関係により、突起50に形成されるドット間を繋げるために必要な間のドットの数が異なってくるが、間のドットが突起50上のドットに対して相対的にあまり多くならないように設定することが好ましい。突起50に集中する電界による着弾位置の補正作用を大いに利用するためである。
【0111】
また、図13(A)→(B)→(C)→(D)→(E)のように、まず、パターンを形成する範囲の端にある1つの突起50上にドット51を形成し、さらにこれに連続してドットの一部を重ねながらパターンを一方向に連ねるように形成してもよい。
【0112】
以上の工程により、最小幅の線パターンを形成することができる。
図14に示すように、隣接する最小幅の線パターンを形成した後、ドットの一部を重ねながらパターンを前記線パターンと垂直な方向に延設することにより、隣接する最小幅の線パターンの間を繋げて、幅広の線パターンや広面積の任意のパターンを形成することができる。
図14に示すように、突起の配置ピッチP、ライン幅L、スペース幅Sは、P=L+Sの関係となり、突起の配置ピッチPが最小描画単位を規定する。L:Sは、吐出する液適量を制御して基板Kに形成するドット径を選択することにより吐出工程時に選択可能である。
【0113】
以上の静電吸引式吐出工程により、配線などの所望のパターンを形成することができる。なお、液体Lの種類により、静電吸引式吐出工程の後にパターンを形成する溶質を融着させるために所定の温度に加熱する必要がある場合がある。
以上の静電吸引式吐出工程により、配線などの所望のパターンを形成しても良いが、以下の無電界めっき法を取り入れることができる。
【0114】
図15は静電吸引式インクジェットと無電界めっき処理を適用した導電パターンの形成方法の流れを示す図である。
まず、図15(A)に示す通り、上記の静電吸引式吐出工程によって基板K上に金属超微粒子32を含有した液体33を所定パターン状に吐出する。
【0115】
「金属超微粒子32を含有した液体33」というのは、分散剤を用いて金属超微粒子32を水,有機溶媒などの分散媒に独立状態で分散させたものである。液体33に含有される金属超微粒子32は粒径が100nm以下(好ましくは10nm以下)のAu,Pt,Ag,Cu,Ni,Cr,Rh,Pd,Zn,Co,Mo,Ru,W,Os,Ir,Fe,Mn,Ge,Sn,Ga,Inなどである。これら複数の金属超微粒子32のうち、1種類の金属微粒子32を単独で使用してもよいし、2種類以上の金属超微粒子32を混合して使用してもよい。
【0116】
基板K上に液体33を吐出したら、図15(B)に示す通り、基板Kに着弾した液体3中の溶剤除去などの目的で基板Kを焼成し、基板K上に下地導電パターン34を形成する(下地形成工程)。ただし、焼成時間,焼成温度などの焼成処理に関する各種条件は、使用する液体32や基板Kの種類に応じて適宜設定してよく、焼成後に形成された下地導電パターン34は幅が50μm以下で厚みが1μm以下となることが好ましい。
【0117】
下地導電パターン34を形成したら、下地導電パターン34の活性化処理をおこなう(活性化工程)。下地導電パターン34の活性化処理では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなう。ただし、下地導電パターン34の活性化処理では、下記(1)〜(3)の3種類の処理のうち、1種類の処理だけを単独でおこなってもよいし、2種類以上の処理を互いに組み合わせておこなってもよい。
【0118】
(1)「エッチング処理」…下地導電パターン34の表面や端部をエッチングする処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kを硝酸水溶液,塩酸,クロム酸水溶液,スルファミン酸水溶液,有機酸水溶液などに数十秒間浸漬させる処理
下地導電パターン34をAgで構成する場合、エッチング処理の好ましい形態としては、下地導電パターン34付きの基板Kを10%硝酸水溶液に5〜30秒間浸漬する方法が挙げられる。
【0119】
(2)「触媒化処理」…次工程処理となる無電解めっき工程で、めっき金属が下地導電パターン34上に析出するのを促進する触媒を下地導電パターン34に付着させる処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kをパラジウム溶液などに浸漬させ、次工程処理となる無電解めっき処理の触媒(例えばパラジウム)を下地導電パターン34に付着させる処理
触媒を使用する場合、例えば、触媒(例えば、奥野製薬製OPC−50インデューサー、A,B)を30秒程度付与した後、水洗(30秒)し、常温で活性化液(例えば、奥野製薬製クリスターMO)を6分間付与し、水洗(30秒)後、次工程の無電解めっき処理へ移行する。
【0120】
(3)「置換めっき処理」…次工程処理となる無電解めっき工程で、めっき金属が下地導電パターン34上に析出するのを促進する触媒と下地導電パターン34中の金属超微粒子32とを置換する処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kをパラジウム溶液などに浸漬させ、次工程処理となる無電解めっき処理の触媒(例えばパラジウム)と下地導電パターン34中の金属超微粒子32とを置換する処理
下地導電パターン34をAgで構成する場合、置換めっき処理の好ましい形態としては、硫酸パラジウムや塩化パラジウムなどのパラジウム塩を0.01〜0.1g/l含有した溶液(スルファミン酸を20g/l程度含有してもよい。)中に下地導電パターン34付きの基板Kを30秒〜30分間程度浸漬させる方法が挙げられる。この場合、溶液を攪拌しながら基板Kを浸漬させるのがより好ましい。また置換めっき処理の後は基板Kを1分間以上水洗するのが好ましい。
【0121】
例えば上記(1)〜(3)の3種類の処理のうち、エッチング処理をおこなえば、下地形成工程を経て形成された下地導電パターン34の表面や端部に残存した液体33の組成物をエッチング(除去)することができる。これにより、無電解めっき処理液中のめっき金属を下地導電パターン34上に効率よく析出させることができる(図15(C)参照)。
【0122】
なお、下地導電パターン34を形成した後でかつ下地導電パターン34の活性化処理をおこなう前に、必要に応じて下地導電パターン34を溶剤などで洗浄・脱脂してもよい(洗浄・脱脂工程)。溶剤としてアセトンなどの公知の溶剤を適用することが可能であり、溶剤による洗浄・脱脂処理は1〜5分程度おこなうのが好ましい。また超音波を併用して洗浄・脱脂処理をおこなってもよい。
【0123】
下地導電パターン34の活性化処理をおこなったら、図15(D)に示す通り、公知の無電解めっき処理をおこなって活性化処理済みの下地導電パターン34上にめっき金属を被覆し(析出させ)、下地導電パターン34上に導電パターン35を形成する(無電解めっき工程)。下地導電パターン34上にめっきするめっき金属は特に限定しないが、Ni,Co,Pd,Cu,Ag,Au,Pt,Snなどを好適に用いることができる。無電解めっき処理液(浴)としては導電パターン35を構成するめっき金属の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、公知の無電解ニッケルめっき処理浴、無電解銅めっき処理浴、無電解合金めっき処理浴などをそのまま用いることができる。
【0124】
他の方法として、上記の静電吸引式吐出工程によって基板K上にめっき触媒を吐出した後、上記と同様に処理しても良い。具体的には、触媒(例えば、奥野製薬製OPC−50インデューサー、A,B)を含有する液体を静電吸引型インクジェットにより基板K上に吐出した後、水洗(30秒)し、常温で活性化液(例えば、奥野製薬製クリスターMO)を6分間付与し、水洗(30秒)後、無電解めっき処理へ移行する。
【0125】
無電解めっき処理では、下地導電パターン34付きの基板Kを無電解めっき処理浴中に浸漬させてもよいし、無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に選択的に供給するようにしてもよい。無電解めっき処理液を選択的に供給する場合には、公知のスプレー方式で無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に噴射してもよいし、公知のインクジェット方式で無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に吐出してもよい。公知のスプレー方式やインクジェット方式で選択的に無電解めっき処理液を供給すれば、無電解めっき処理浴中に基板K全体を浸漬させるほどの無電解めっき処理液を必要とせず、下地導電パターン34上に供給する無電解めっき処理液の供給量が少なくて済む。したがって無電解めっき処理液の使用量を節約することができ、ひいては無電解めっき処理にかかるコストの低減化を図ることができる。
【0126】
以上の方法により微細な導電パターン35を基板K上に形成することができる。
【0127】
また導電パターン35を形成する際には、電解めっき処理をおこなうのではなく無電解めっき処理をおこなうため、導電パターン35を構成するめっき金属を下地導電パターン34上に均一に析出させることができ、さらにはめっき処理用の専用設備の設置などにかかるコストも抑えることができる。これらのことより本実施形態では微細で信頼性の高い導電パターンを比較的低コストで作製することができる。
【0128】
さらに活性化工程で下地導電パターン34の活性化処理をおこなうため、無電解めっき工程でのめっき金属の下地導電パターン34上への析出が良好となり、下地導電パターン34上に形成される導電パターン35の品質を向上させることができる。
【0129】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなってもよい。
【0130】
上記の無電解めっき工程では下地導電パターン34上に導電パターン35を形成したが、無電解めっき工程で導電パターン35を形成したら、必要に応じて導電パターン35に公知の電解めっき処理を施してもよい。この電解めっき処理で用いるめっき金属は、無電解めっき処理で用いためっき金属と同種の金属であってもよいし、異種の金属であってもよい。
ドライブロール、ガイドロール等を有した周知の搬送装置を構成して、基板を搬送しても良い。静電吸引型インクジェット装置を通過した下流に、後工程の処理装置を配置して生産ラインを構成することができる。この生産ラインに、無電解めっき処理液などを供給するためのスプレー方式やインクジェット方式等の供給装置を配置する場合、基板K若しくは基板Kを支持する支持体の両側端に、基板Kに供給される液の流出を規制する土手状のガイドを予め形成しておくことにより、供給される液の流出、裏回りを発生させることなく処理可能である。
【0131】
図16、図17に突起及びその周囲の電界コンタ図を示す。図16は、幅0.1μm、高さ0.2μmの円錐形突起52を有したモデルM1に対してシミュレーションした突起片側領域の電界コンタ図である。図17の電界コンタ図は、幅1μm、高さ0.2μmの円錐形突起53を有したモデルM2に対してシミュレーションした突起片側領域の電界コンタ図である。図16及び図17に基づき両者における突起中心を原点として突起先端の最大電界強度を通る高さにおける幅手方向の位置と電界強度の関係を示したグラフを図18に示す。
図16〜図18より、突起の先端部に強い電界集中が生じることがわかる。
また、モデルM2の突起形状の方が、モデルM1より電界分布が巾手に及んでおり液滴を静電吸引力で精度良く着弾させる効果が高い。
【実施例】
【0132】
[実施例1]
本実施形態のインクジェットヘッド2のノズルプレート11を種々の材料を用いて実際に作製し、ノズル10の吐出孔13から液滴Dが吐出されるか否かを基材K(本実施例及び実施例2では凸部の無いフラットな描画面を有する基板を使用した。)に吐出させて確認した。
【0133】
インクジェットヘッド2の構成は、前記実験条件と同様の条件で作製し、ノズル10のテーパ角は4°で小径部14と大径部15とが連続した1段構造とした。
【0134】
また、液体L1は、水52重量%、エチレングリコールおよびプロピレングリコールをそれぞれ22重量%、染料(CIアシッドレッド1)3重量%、界面活性剤1重量%含有する導電性の液体として調製し、液体L2は、エタノールに染料(同上)を3重量%含有する導電性の液体として調整し、液体L3は、テトラデカンにAg粒子を分散させ、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体として調製した。
【0135】
なお、体積抵抗率は、JISC2151に準拠し、シート状被測定物の面間に電圧を印加した場合の電気抵抗値より算出した。また、ノズルプレート11の液体の吸収率は、23℃の使用対象である液体Lにノズルプレート11または代用のシート状被測定物を24時間浸漬し、浸漬前後のノズルプレート11または被測定物の重量変化率より算出した。液体Lが水溶性インクである場合には、ASTMD570に準拠した吸水率で代用することも可能である。
【0136】
前記液体L1〜L3に対する実験結果は下記の表1のようになった。なお、表1の吸収率の欄は、上段が水に対する吸収率(吸水率)、下段がエタノールに対する吸収率を表している。
【0137】
【表1】
【0138】
表1の結果から、液体L1や液体L2のように導電性溶媒を含有する場合、液体の吸収率が低くても体積抵抗率が1015Ωm未満の材料ではノズル10から液体Lは吐出されないことが分かる。これは、前記シミュレーションによる結果と同じ結果を示している。また、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料であればノズル10から液体Lが吐出され得るが、吸収率が少なくとも0.6%以下でなければ液体Lは吐出されないことが分かる。
【0139】
一方、液体L3のように絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を吐出する場合には、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料であればすべてノズル10から液体が吐出され得ることが分かる。
【0140】
[実施例2]
本実施形態のインクジェットヘッド2のノズルプレート11の厚さおよびノズル径を種々変えて作製し、前記液体L1の吐出の有無を基材Kに吐出させて確認した。また、参照実験として、液体L1の吐出が確認されなかった条件で静電電圧を3.0kVにして吐出の有無を確認した。
【0141】
実験結果は下記の表2のようになった。なお、ノズルプレート11は表1に記載されているポリエチレンテレフタレート(ルミラー(東レ株式会社製))を用いて形成した。
【0142】
【表2】
【0143】
表2の結果から、ノズルプレート11の厚さが125μmの場合の結果を比較すると、ノズル径は15μm以下であることが好ましいことが分かる。また、ノズル径を15μmとした場合の結果を比較すると、ノズルプレート11の厚さは75μm以上であることが好ましいことが分かる。なお、液体が吐出されなかった条件で静電電圧を3.0kVとしたところ、この場合は、液体が吐出された。
【0144】
[実施例3]
図1(A)に示すように正方配列する円錐形突起を有した基板を2種製作した。突起の配置ピッチを20μm、突起の高さを0.2μmとし、突起の底辺の直径を0.3μmと2μmの2種とした。
基板材質は、厚み500μmのポリイミドで、シリコン基材をフォトリソ後、エッチングすることで金型を形成し、インプリント成型により前記突起形状を付与した基板を製作した。静電吸引型インクジェット装置を使用し、ハリマ化成製のインクジェット用銀ナノインクを使用した。基板からノズル吐出口までのギャップを100μm、基板側に500V印加し、ヘッドインク側をアースに駆動周波数30khzで突起配列上に線状の回路パターンを幅10μmで形成した。
また、静電吸引型インクジェットによるドット形成は、図12(B)に示すように各1層を1/3ピッチずつずらして形成し、20層積層した。パターン形成後、200℃、60minで加熱し、顕微鏡で突起の無いフラットな描画面を有する基板に同様の条件で実施したものとの比較を行った。その結果を表3に示す。
回路巾の両端の直進性を評価してバラツキ範囲が2μm以上を△、2μm未満を○、1μm以下を◎とした。
【0145】
【表3】
【0146】
以上の実施例3からわかるように、静電吸引型インクジェットで形成するパターンのエッジの直進性は、突起が無い場合より突起がある方が良好で、突起があるもの同士では、パターン幅10μmに対しては0.3μm幅のものより、2μm幅のもののほうが良好な結果となった。
これは、図16、図17に示したシミュレーション結果で確認したように、裾の広い突起形状の方が高い電界分布が巾手に及び、液滴を静電吸引力でより精度良く着弾させることができたためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明一実施形態に係る基板の平面図(A)、回路基板の平面図(B)である。
【図2】本発明一実施形態に係る突起の断面図である。
【図3】本発明一実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置の全体構成を示す断面図である。
【図4】形状が異なるノズルの変形例を示す図である。
【図5】シミュレーションによるノズルの吐出孔付近の電位分布を示す模式図である。
【図6】メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの体積抵抗率との関係を示す図である。
【図7】メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの厚さとの関係を示す図である。
【図8】メニスカス先端部の電界強度とノズル径との関係を示す図である。
【図9】メニスカス先端部の電界強度とノズルのテーパ角との関係を示す図である。
【図10】本発明一実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置におけるインクジェットヘッドの駆動制御の一例を示し、駆動制御とメニスカスの動きとの関係を説明する図である。
【図11】ピエゾ素子に印加する駆動電圧の変形例を示す図である。
【図12】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図13】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図14】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図15】本発明一実施形態に係る静電吸引式インクジェットと無電界めっき処理を適用した導電パターンの形成方法の流れを示す図である。
【図16】本発明一実施形態に係る突起及びその周囲の電界コンタ図である。
【図17】本発明一実施形態に係る突起及びその周囲の電界コンタ図である。
【図18】電界強度と突起巾手位置との関係を示す図である
【符号の説明】
【0148】
1 静電吸引型インクジェット装置
2 インクジェットヘッド
3 対向電極
10 ノズル
11 ノズルプレート
12 吐出面
13 吐出孔
18 静電電圧電源
20 キャビティ
22 ピエゾ素子
23 駆動電圧電源
24 動作制御手段
28 撥液層
L 液体
K 基板
K2 回路基板
32 金属超微粒子
33 液体
34 下地導電パターン
35 導電パターン
40 最小配線
47,48,49,50,52.53 突起
51 ドットパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸引型インクジェット技術を利用した電気回路等のパターン形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インクジェット技術は、電気回路製造等において現行のリソグラフィ技術に代わり回路配線の微細化をさらに進展させる技術として有望視され、実用化に向けた開発が盛んである。回路配線の微細化は、あらゆる電子機器に高密度化、小型軽量化等の多くの利益をもたらすから、回路製造へのインクジェットの応用に対する期待も大きい(非特許文献1参照)。
また、インクジェット技術の利点として、リソグラフィ技術に比較して、製造工程や製造設備が簡素であること、回路の設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応可能な優れたオンデマンド性等が挙げられる(非特許文献1参照)。
さらに、インクジェット技術によれば、様々な材料を吐出することができるので、配線のみならず、抵抗、コンデンサなどの受動部品を形成することができるという利点がある(非特許文献1参照)。
また、非特許文献1には、近時開発されたインクジェット用のナノスケールの金属粒子や、インクジェットヘッドの構成や駆動方法などが紹介されている。
【0003】
実用化に向けた課題として、インクジェットヘッドから吐出された配線材料が基板に着弾する際にバラツキが生じ、吐出した配線材料のドットが途切れて断線する可能性があるという問題、ならびに、着弾したドットの広がりのため、配線を高密度で形成できないという問題がある。
かかる諸問題を解決するために、基板を予め加工する方法が提案されている。
非特許文献1及び特許文献1には、基板上の配線を形成すべき部分のみにレーザー光を照射して、該部分の表面特性を、配線材料との親和性を有する性質に変える方法が記載されている。
また非特許文献1には、集束イオンビームを使って基板上に溝を掘り、その溝に配線材料を吐出する方法が記載されている。
しかし、前者の方法では、基板上を、レーザー光とインクジェットとの2回にわたって、配線をなぞる必要があり、後者の方法では、基板ごとに集束イオンビームで溝を掘る必要がある。このように、いずれも、基板ごとに微細かつ手間のかかる工程を必要とする。
これを解決するための提案として、特許文献2記載には、金型を転写して基板に溝を形成し、溝に導電性材料をインクジェットにより注入して配線を形成する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2004−356255号公報
【非特許文献1】NIKKEI ELECTRONICS 2002.6.17,67-78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、以上のいずれの従来技術にあってもさらに次のような問題があった。
一つには、インクジェットによる液体吐出の工程前に、回路パターンに応じた前加工が必要となり、インクジェット技術による配線描画の利点が十分に生かされていない。レーザー光を照射する部分は回路パターンに応じたパターンでなければならず、金型は回路ごとの配線パターンに応じた形状の金型を作製しなければならない。インクジェットによる液体吐出のみ個々の回路パターンに応じて変更すればよいという手軽さがインクジェット技術を回路形成に適用する一つの魅力である。インクジェットによる液体吐出の工程以外の工程においてもソフトウエア又はハードウエアが個々の回路パターンに応じる必要が生じる上記の従来技術では、回路の設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応するオンデマンド性が損なわれる。
【0005】
金型を用いる場合、金型及びこれにより転写形成された基板を異なる回路に汎用することができず、回路パターンが変更されるごとに金型及びこれにより転写形成された回路形成前の基板を無駄にしなければならず、コスト高となり、オンデマンド性に鈍りを与える。
【0006】
また、基板に形成された溝にインクジェットにより導電材料を含有した液体を注入する従来技術においては、着弾位置にバラツキのある液滴を溝に受け入れるために、溝の一部には配線幅より大きな注入口を要する。例えば、配線を注入口部分無しに長く形成することはできず、最小幅のライン&スペースで並行配線を長く形成することができない。この注入口部分は配線間スペースなどに影響を与え、配線密度が低下するとともに、製造上の事情が回路設計の自由度に制限を与えることとなる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、インクジェット技術を利用したパターンの形成において、設計変更や多品種少量生産に迅速かつ低コストに対応可能な方法で、着弾精度を向上し、高精細、高精度の高密度パターン形成を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、描画面に凸部が形成されている静電吸引型インクジェット用基板である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項1記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項2に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記凸部の配置ピッチが静電吸引型インクジェットの最小描画単位を規定していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の静電吸引型インクジェット用基板である。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されたパターン形成材料を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とするパターン形成方法である。
【0014】
請求項7記載の発明は、静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、前記凸部に着弾した前記液体によるドットに一部重ねて隣接させて着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法である。
【0015】
請求項8記載の発明は、静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、既に形成されたドット上に着弾させてドットを積層させる静電吸引式工程を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法である。
【0016】
請求項9記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして導電材料を用い、これにより前記基板上に配線その他の導電パターンを形成することを特徴とする請求項6、請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法である。
【0017】
請求項10記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして前記配線より抵抗値の高い導電材料を用い、これにより前記基板上に抵抗を形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法である。
【0018】
請求項11記載の発明は、前記パターン形成材料の一つとして絶縁材料を用い、前記絶縁材料及び前記導電性材料により前記基板上にコンデンサを形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法である。
【0019】
請求項12記載の発明は、電鋳金型によるインプリントで前記描画面に前記凸部を転写形成して前記基板を作製することを特徴とする請求項6から請求項11のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0020】
請求項13記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成された金属微粒子を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記液体が着弾した前記基板を焼成して前記基板上に下地導電パターンを形成する下地形成工程と、
前記下地形成工程の後に、前記下地導電パターンに対して無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法である。
【0021】
請求項14記載の発明は、前記下地形成工程の後でかつ前記無電解めっき工程の前に、前記下地導電パターンを活性化する活性化工程を備えることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法である。
【0022】
請求項15記載の発明は、前記活性化工程では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなうことを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法である。
(1)前記下地導電パターンをエッチングするエッチング処理
(2)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒を前記下地導電パターンに付着させる触媒化処理
(3)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒と前記下地導電パターン中の前記金属超微粒子とを置換する置換めっき処理
【0023】
請求項16記載の発明は、前記下地形成工程の後でかつ前記活性化工程の前に、前記下地導電パターンを溶剤で洗浄・脱脂する洗浄・脱脂工程を備えることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法である。
【0024】
請求項17記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されためっき触媒を含有する液体のメニスカスとこれに対応する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記静電吸引式吐出工程の後に、無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法である。
【0025】
請求項18記載の発明は、前記無電解めっき工程では、スプレー方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0026】
請求項19記載の発明は、前記無電解めっき工程では、インクジェット方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0027】
請求項20記載の発明は、前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させ、前記電界による静電吸引力と前記圧力によりノズルの吐出孔に形成された液体のメニスカスに電界を集中させ、前記静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0028】
請求項21記載の発明は、前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させて前記ノズルの吐出孔に前記液体のメニスカスを隆起させて電界を集中させ、前記電界による静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0029】
請求項22記載の発明は、前記液体は、導電性溶媒を含有する液体であり、前記ノズルプレートの前記液体の吸収率が0.6%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法である。
【0030】
請求項23記載の発明は、前記液体は、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法である。
【0031】
請求項24記載の発明は、前記ノズルプレートの厚さが75μm以上であることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0032】
請求項25記載の発明は、前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であることを特徴とする請求項20から請求項24のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0033】
請求項26記載の発明は、前記ノズルプレートの前記吐出面側に撥液層が設けられていることを特徴とする請求項20から請求項25のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0034】
請求項27記載の発明は、前記圧力発生手段は、圧電素子アクチュエータであることを特徴とする請求項20から請求項26のいずれか一に記載のパターン形成方法である。
【0035】
請求項28記載の発明は、基板と、前記基板上に静電吸引型インクジェットにより描画されたパターンとを有し、前記基板の前記パターンが描画された面に凸部が形成され、前記パターンは前記凸部に被着していることを特徴とするパターン付基板である。
【0036】
請求項29記載の発明は、前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項28記載のパターン付基板である。
【0037】
請求項30記載の発明は、前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項29に記載のパターン付基板である。
【0038】
請求項31記載の発明は、前記凸部の配置ピッチが前記回路パターンの最小幅とスペースの最小幅との和に等しくされていることを特徴とする請求項28、請求項29又は請求項30に記載のパターン付基板である。
【0039】
請求項32記載の発明は、前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項28から請求項31のうちいずれか一に記載のパターン付基板である。
【0040】
請求項33記載の発明は、前記パターンにより受動部品を含む電気回路が形成されていることを特徴とする請求項28から請求項32のうちいずれか一に記載のパターン付基板である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、描画面に凸部を有した基板に静電吸引型インクジェットでパターンを形成する。その際、基板側の凸部に電界が集中し、凸部上方から吐出された飛翔液滴を凸部へと誘引し、予め形成された凸部によって定められた位置に精度良く液滴を着弾させることができ、これにより、高精細、高精度の高密度パターン形成を実現することができるという効果がある。
凸部は、結果的にパターンを形成しない部分も含めて予め描画面に一様に形成しておくことができるから、静電吸引型インクジェットによる液体吐出の工程前に、描画パターンに応じた前加工は必要無く、基板は異なる描画パターンに汎用することができるとう効果があり、一品製作から大量生産まで迅速かつ低コストに対応可能である。最小描画単位を変更する場合を除き、基板を変更する必要がなく、金型や基板の無駄が抑えられる。
したがって、設計変更や多品種少量生産にも迅速かつ低コストに対応するインクジェット本来のオンデマンド性を遺憾なく発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0043】
まず、基板につき説明する。図1は本発明一実施形態における基板の平面図(A)、回路基板の平面図(B)である。
図1中において点で示すように基板Kの表面には、微細な突起が形成されている。突起は基板K上に形成するドットより小さなものである。突起は正方状に均等分散配置されている。すなわち、突起は直交する2方向に等ピッチで配列している。突起の配列の方向は基板の縦横方向に一致している。
凸部の形態としては本実施形態のような均等分散した多数の点状の突起ほか、格子状のものが考えられる。格子状のものとは、並行な多数の線状の凸部が2組交わってできるパターンである。この場合、方眼状に縦横等間隔にすることが好ましい。本実施形態は、方眼の格子点に突起を配置したパターンである。
突起は少なくとも回路描画面に敷き詰めるように形成される。基板Kの表裏に回路を形成する場合には、基板Kの表裏に突起が形成される。回路描画面は、表又は/及び裏の全面とする。但し、基板Kの縁の一定幅は残しても良い。
【0044】
基板K上に静電吸引型インクジェットにより回路パターンを描画することにより、例えば図1(B)に示すような回路基板K2を作製する。回路基板K2は、基板K上に所定の回路パターンが付けられたものである。回路パターンとしては、配線40,41,42,45のほか、抵抗43、コンデンサ44などの受動部品、配線以外の導電パターン46、絶縁パターン、その他あらゆる素材の機能部分が形成できる。機能に応じて、吐出する液体に含ませるパターン形成材料(溶媒)を適宜選択する。回路パターン以外の文字等も静電吸引型インクジェットにより印刷可能である。配線には、最小幅の配線40も、最小幅より幅広の配線41,42,45も形成可能であり、例えば、半導体チップの接続用導電パターンなども形成される。
【0045】
図2に突起の断面図を示す。突起の形状としては、図2(A)に示す柱状突起47、図2(B)に示す断面台形の突起48、図2(C)に示す円錐形の突起49が挙げられる。電界を突起の先端に集中させて飛翔液滴を突起の中心に誘引するため、先細りの形状が好ましい。したがって、断面一様の柱状突起47より先細りする断面台形の突起48が好ましい。さらには、断面台形の突起48より円錐形の突起49が好ましい。
【0046】
突起の高さは、500nm以下が好ましい。高すぎる突起によって回路の電気的特性に影響を与えることがないようにするためである。また、この範囲であれば、電界を突起の先端に集中させて飛翔液滴を突起の中心に誘引するために、十分な突起を形成できる。突起の高さは、より好ましくは100nm以下、もっとも好ましくは50nm以下である。
【0047】
基板Kの材料としては、金型から転写され得る材料であれば特に限定されず、好ましくは非導電性材料が用いられる。導電性材料を用いる場合は、基板の表面を非導電性材料でコーティングすればよい。基板に用いられ得る非導電性材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、セラミックスなどが挙げられる。必要に応じて、離型剤が含まれていてもよい。
【0048】
現在、複数の装置メーカーから微細構造をナノインプリントできる装置が市販されている。ナノインプリント技術によれば、ミクロンからナノにいたる様々な凹凸のパターンを樹脂、アルミニウム、ガラス、シリコン等の素材の表面に簡便、低コストに転写形成できる。
本実施形態では、ナノインプリント装置を用い、電鋳金型で作製した型を、軟化した基板Kの素材の表面に押し当て、突起を転写形成しその後硬化させて基板Kを作製する。
【0049】
なお、本発明は回路パターンに限らず、広くパターンニング手段として使用することができる。代表的なものとしてはディスプレイ用途に使用することができる。具体的には、プラズマディスプレイの蛍光体の形成、プラズマディスプレイのリブの形成、プラズマディスプレイの電極の形成、CRTの蛍光体の形成、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ)の蛍光体の形成、FEDのリブの形成、液晶ディスプレイ用カラーフィルター(RGB着色層、ブラックマトリクス層)、液晶ディスプレイ用スペーサー(ブラックマトリクスに対応したパターン、ドットパターン等)などを挙げることができる。
【0050】
なお、リブとは一般的に障壁を意味し、プラズマディスプレイを例に取ると各色のプラズマ領域を分離するために用いられる。その他の用途としては、マイクロレンズ、半導体用途として磁性体、強誘電体、導電性ペースト(配線、アンテナ)などのパターンニング塗布、グラフィック用途としては、通常印刷、特殊媒体(フィルム、布、鋼板など)への印刷、曲面印刷、各種印刷版の刷版、加工用途としては粘着材、封止材などの本発明を用いた塗布、バイオ、医療用途としては医薬品(微量の成分を複数混合するような)、遺伝子診断用試料等の塗布等に応用することができる。
【0051】
次に、本実施形態に適用する静電吸引型インクジェット装置について説明する。図3は、本実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置の全体構成を示す断面図である。
【0052】
静電吸引型インクジェット装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出するノズル10が形成されたインクジェットヘッド2と、インクジェットヘッド2のノズル10に対向する対向面を有するとともにその対向面で液滴Dの着弾を受ける基板Kを支持する対向電極3とを備えている。なお、インクジェットヘッド2は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の静電吸引型インクジェット装置に適用可能である。
【0053】
インクジェットヘッド2の対向電極3に対向する側には、複数のノズル10を有する樹脂製のノズルプレート11が設けられている。インクジェットヘッド2は、ノズルプレート11の対向電極3に対向する吐出面12からノズル10が突出されない、或いはノズル10が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている(例えば、後述する図4(D)参照)。
【0054】
各ノズル10は、ノズルプレート11に穿孔されて形成されており、各ノズル10には、それぞれノズルプレート11の吐出面12に吐出孔13を有する小径部14とその背後に形成されたより大径の大径部15との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル10の小径部14および大径部15は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部14の吐出孔13の内部直径(以下、ノズル径という。)が10μm、大径部15の小径部14から最も離れた側の開口端の内部直径が75μmとなるように構成されている。
【0055】
なお、ノズル10の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図4(A)〜(E)に示すように、形状が異なる種々のノズル10を用いることが可能である。また、ノズル10は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
【0056】
ノズルプレート11の吐出面12と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル10内の液体Lを帯電させるための帯電用電極16が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極16は、ノズル10の大径部15の内周面17まで延設されており、ノズル内の液体Lに接する。
【0057】
また、帯電用電極16は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源18に接続されており、単一の帯電用電極16がすべてのノズル10内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、全ノズル10内の液体Lが同時に帯電され、インクジェットヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基板Kとの間に静電吸引力が発生される。
【0058】
帯電用電極16の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル10の大径部15の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
【0059】
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21によりインクジェットヘッド2が外界と画されている。
【0060】
なお、ボディ層19には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ20、共通流路、および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル10等の液体Lに所定の供給圧力が付与される。
【0061】
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
【0062】
駆動電圧電源23および帯電用電極16に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源18は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受ける。
【0063】
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM27等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源18および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル10の吐出孔13から液体Lを吐出させる。
【0064】
なお、本実施形態では、インクジェットヘッド2のノズルプレート11の吐出面12には、吐出孔13からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層28が吐出孔13以外の吐出面12全面に設けられている。撥液層28は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面12に成膜されている。なお、撥液層28は、ノズルプレート11の吐出面12に直接成膜してもよいし、撥液層28の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
【0065】
インクジェットヘッド2の下方には、基板Kを支持する平板状の対向電極3がインクジェットヘッド2の吐出面12に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3とインクジェットヘッド2との離間距離は、0.1〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
【0066】
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3のインクジェットヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じる。また、帯電した液滴Dが基板Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすこととなる。
【0067】
なお、対向電極3またはインクジェットヘッド2には、インクジェットヘッド2と基板Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これによりインクジェットヘッド2の各ノズル10から吐出された液滴Dは、基板Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
【0068】
静電吸引型インクジェット装置1による吐出を行う液体Lは、例えば、無機液体としては、水、COCl2、HBr、HNO3、H3PO4、H2SO4、SOCl2、SO2Cl2、FSO3Hなどが挙げられる。
【0069】
また、有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N',N'−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して用いてもよい。
【0070】
さらに、高電気伝導率の物質(銀粉等)が多く含まれるような導電性ペーストを液体Lとして使用し、吐出を行う場合には、前述した液体Lに溶解又は分散させる目的物質としては、ノズルで目詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限されない。
【0071】
PDP、CRT、FEDなどの蛍光体としては、従来より知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3:Eu、YO3:Euなど、緑色蛍光体として、Zn2SiO4:Mn、BaAl12O19:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al2O3:Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Euなどが挙げられる。
【0072】
上記の目的物質を記録媒体上に強固に接着させるために、各種バインダーを添加するのが好ましい。用いられるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体;アルキッド樹脂;ポリメタクリタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、ラウリルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル樹脂およびその金属塩;ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリルアミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン・n−ブチルメタクリレート共重合体などのスチレン・アクリル樹脂;飽和、不飽和の各種ポリエステル樹脂;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのポリアセタール樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂などのポリエチレン系樹脂;ベンゾグアナミンなどのアミド樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂及びそのアニオンカチオン変性;ポリビニルピロリドンおよびその共重合体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキシド単独重合体、共重合体及び架橋体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリエーテルポリオール;SBR、NBRラテックス;デキストリン;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン及びその誘導体、カゼイン、トロロアオイ、トラガントガム、プルラン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、アルブミン、各種澱粉類、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、大豆蛋白などの天然或いは半合成樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;ロジン及びロジンエステル;ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルフォン酸、ポリビニルスルフォン酸などを用いることができる。これらの樹脂は、ホモポリマーとしてだけでなく、相溶する範囲でブレンドして用いてもよい。
【0073】
ここで、液体Lの吐出原理について説明する。
【0074】
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧を印加し、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3のインクジェットヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させる。
【0075】
本実施形態のように、ノズルプレート11の絶縁性が高くなると、図5にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
【0076】
特に、図5でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基板Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基板Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
ノズルを基板K上の突起に対向させて吐出する場合には、液滴Dは突起先端に集中した高電界に吸引され、突起に引き寄せられるようにして着弾する。そのため、メニスカスが引きちぎられた直後の飛翔方向にバラツキが生じても、より正確に突起上に着弾させることができる。
【0077】
このように、インクジェットヘッド2における液体Lの吐出原理を利用すれば、フラットな吐出面を有するインクジェットヘッド2においても、高い絶縁性を有するノズルプレート11を用い、吐出面12に対して垂直方向の電位差を発生させることで強い電界集中を生じさせることができ、正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
さらに、突起を有した基板Kを用いることにより、突起先端にも強い電界集中を生じさせることができ、突起に着弾させる際には、より正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
【0078】
発明者らが、電極間の電界の電界強度が実用的な値である1.5kV/mmとなるように構成し、各種の絶縁体でノズルプレート11を形成して下記の実験条件に基づいて行った実験では、ノズル10から液滴Dが吐出される場合と吐出されない場合があった。
【0079】
[実験条件]
ノズルプレート11の吐出面12と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート11の厚さ:125mm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
【0080】
この実機による実験で、液滴Dがノズル10から安定に吐出されたすべての場合について、メニスカス先端部の電界強度を求めた。実際には、メニスカス先端部の電界強度を直接測定することが困難であるため、電界シミュレーションソフトである「PHOTO-VOLT」(商品名、株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより算出した。その結果、すべての場合においてメニスカス先端部の電界強度は3×107V/m(30kV/mm)以上であった。
【0081】
また、前記実験条件と同様のパラメータを同ソフトに入力してメニスカス先端部の電界強度を演算した結果、図6に示すように、電界強度はノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗率に強く依存することが分かった。文献等では絶縁体または誘電体とされる物質の体積抵抗率は1010Ωm以上のものを指すことが多く、代表的な絶縁体として知られているボロシリケイトガラス(例えば、PYREX(登録商標)ガラス)の体積抵抗率は1014Ωmである。
【0082】
しかし、このような体積抵抗率の絶縁体では、液滴Dは吐出されない。前記のように、ノズル10から液滴Dを安定に吐出させるためにはメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上であることが必要であり、図6から、少なくともノズルプレート11の体積抵抗率は1015Ωm以上であることが必要であることが分かった。
【0083】
ノズルプレート11の体積抵抗率とメニスカス先端部の電界強度との関係が図6のような特徴的な関係になるのは、ノズルプレート11の体積抵抗率が低いと、静電電圧を印加してもノズルプレート内で等電位線が図5に示したように吐出面12に対して略垂直方向に並ぶような状態にはならず、ノズル内の液体Lおよび液体Lのメニスカスへの電界集中が十分に行われないためであると考えられる。
【0084】
理論上、体積抵抗率が1015Ωm未満のノズルプレート11でも、静電電圧を非常に大きくすればノズル10から液滴Dが吐出される可能性はあるが、電極間でのスパークの発生等により基板Kが損傷される可能性がある。
【0085】
なお、図6に示したようなメニスカス先端部の電界強度のノズルプレート11の体積抵抗率に対する特徴的な依存関係は、ノズル径を種々に変化させてシミュレーションを行った場合でも同様に得られており、どの場合も体積抵抗率が1015Ωm以上の場合にメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上になることが分かっている。また、前記実験条件中のノズルプレート11の厚さとは、本実施形態の場合は、ノズル10の小径部14の長さと大径部15の長さの和に等しい。
【0086】
一方、体積抵抗率が1015Ωm以上の絶縁体を用いてノズルプレート11を作製しても、ノズル10から液滴Dが吐出されない場合がある。下記実施例1に示すように、液体Lとして水などの導電性溶媒を含有する液体を用いた実験では、ノズルプレート11の液体の吸収率が0.6%以下であることが必要であることが分かった。
【0087】
これは、ノズルプレート11が液体L中から導電性溶媒を吸収すると導電性の液体である水分子等の分子が本体絶縁性であるノズルプレート11内に存在することになるため、結果的にノズルプレート11の電気伝導度が高くなり、特に液体Lに接する局部の実効的な体積抵抗率の値が低下し、図6に示す関係に従ってメニスカス先端部の電界強度が弱まり、液体Lの吐出に必要な電界集中が得られなくなるためと考えられる。
【0088】
一方、下記実施例1によれば、液体Lとして絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を用いた場合には、ノズルプレート11は、その液体に対する吸収率に係わりなく体積抵抗率が1015Ωm以上であれば液体Lを吐出することが分かった。これは、絶縁性溶媒がノズルプレート11内に吸収されても絶縁性溶媒の電気伝導度が低いためノズルプレート11の電気伝導度が大きく変化せず、実効的な体積抵抗率が低下しないためであると考えられる。
【0089】
なお、前記絶縁性溶媒に分散されている帯電可能な粒子は、例えば、電気伝導度が極めて大きな金属粒子であってもノズルプレート11には吸収されないため、ノズルプレート11の電気伝導度を高めることはない。なお、前記絶縁性溶媒とは、単体では静電吸引力により吐出されない溶媒をいい、具体的には、例えば、キシレンやトルエン、テトラデカン等が挙げられる。また、導電性溶媒とは、電気伝導度が10−10S/cm以上の溶媒をいう。
【0090】
また、前記シミュレーションにおいて、ノズルプレート11の厚さを変化させた場合およびノズル径を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度を、図7および図8にそれぞれ示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズルプレート11の厚さおよびノズル径にも依存し、それぞれ75μm以上および15μm以下であることが好ましい。なお、ノズルプレート11の厚さおよびノズル径の前記適正範囲は、下記実施例2に示すように実機による実験でも確認されている。
【0091】
メニスカス先端部の電界強度がノズルプレート11の厚さに依存する理由としては、ノズルプレート11の厚さがより厚くなることで、ノズル10の吐出孔13と帯電用電極16との距離が遠くなり、ノズルプレート内の等電位線が略垂直方向に並び易くなるためメニスカス先端部への電界集中が生じ易くなることが考えられる。
【0092】
また、ノズル径が小径になることで、メニスカスの径が小さくなり、より小径となったメニスカス先端部に電界が集中することで電界集中の度合が大きくなる。そのため、メニスカス先端部の電界強度が強くなると考えられる。
【0093】
なお、図7に示したノズルプレート11の厚さとメニスカス先端部の電界強度との関係および図8に示したノズル径とメニスカス先端部の電界強度との関係は、本実施形態のような小径部14および大径部15よりなる2段構造のノズル10の場合のみならず、1段構造、すなわち、単純なテーパ状のノズルや円筒状のノズル、或いは多段構造のノズルの場合も同様のシミュレーション結果が得られている。
【0094】
さらに、前記シミュレーションにおいて、小径部14および大径部15の区別がないテーパ状または円筒状の1段構造のノズル10において、ノズル10のテーパ角を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度の変化を図9に示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズル10のテーパ角に依存することが分かる。ノズル10のテーパ角は30°以下であることが好ましい。なお、テーパ角とはノズル10の内面とノズルプレート11の吐出面12の法線とがなす角のことをいい、テーパ角が0°の場合はノズル10が円筒形状であることに対応する。
【0095】
次に、本実施形態のインクジェットヘッド2および静電吸引型インクジェット装置1の動作について説明する。
【0096】
図10は、本実施形態の静電吸引型インクジェット装置におけるインクジェットヘッドの駆動制御を説明する図である。本実施形態では、静電吸引型インクジェット装置1の動作制御手段24は、帯電電圧電源18から帯電用電極16に一定の静電電圧VCを印加させる。これにより、インクジェットヘッド2の各ノズル10には常時一定の静電電圧VCが印加され、インクジェットヘッド2と対向電極3との間に電界が生じる。
【0097】
また、動作制御手段24は、液滴Dを吐出させるべきノズル10ごとに、そのノズル10に対応する駆動電圧電源23からピエゾ素子22に対してパルス状の駆動電圧VDを印加させる。このような駆動電圧VDが印加されると、ピエゾ素子22が変形してノズル内部の液体Lの圧力を上げ、ノズル10の吐出孔13では、図中Aの状態からメニスカスが隆起し始め、Bのようにメニスカスが大きく隆起した状態となる。
【0098】
すると、前述したように、メニスカス先端部に高度な電界集中が生じて電界強度が非常に強くなり、メニスカスに対して前記静電電圧VCにより形成された電界から強い静電力が加わる。この強い静電力による吸引とピエゾ素子22による圧力とにより図中Cのようにメニスカスが引きちぎられて液滴Dが形成される。液滴Dは、電界で加速されて対向電極方向に吸引され、対向電極3に支持された基板Kに着弾する。
【0099】
その際、液滴Dには空気の抵抗等が加わるが、前述したように、静電力の作用で液滴Dはより近い所に着弾しようとするため、基板Kに対する着弾方向がぶれることなく安定し、基板Kに正確に着弾する。
【0100】
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に印加される一定の静電電圧VCは1.5kVに設定されており、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に印加されるパルス状の駆動電圧VDは20Vに設定されている。
【0101】
なお、ピエゾ素子22に印加する駆動電圧VDとしては、本実施形態のようにパルス状の電圧とすることも可能であるが、この他にも、例えば、電圧が漸増した後漸減するいわば三角状の電圧や、電圧が漸増した後一旦一定値を保ちその後漸減する台形状の電圧、或いはサイン波の電圧を印加するように構成することも可能である。また、図11(A)に示すように、ピエゾ素子22に常時電圧VDを印加しておいて一旦切り、再度電圧VDを印加してその立ち上がり時に液滴Dを吐出させるようにしてもよい。また、図11(B)、(C)に示すような種々の駆動電圧VDを印加するように構成してもよく適宜決定される。
【0102】
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッド2および静電吸引型インクジェット装置1によれば、インクジェットヘッド2は、フラットな吐出面12を有するヘッドとされているため、図示を省略するが、インクジェットヘッド2のクリーニング時に吐出面12にブレードやワイパ等の部材が接触してもノズル10が損傷する等の事態が生じることがなく、操作性に優れる。
【0103】
また、インクジェットヘッド2の製造においてノズル10の突起等の微細構造を形成する必要がなく構造が単純であるから、容易に製造することが可能で生産性に優れる。
【0104】
さらに、ノズル10が形成されるノズルプレート11として、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料を用いることで、帯電用電極16に印加する静電電圧が1.5kV程度の低い電圧であっても、ピエゾ素子22の変形によりノズル10の吐出孔部分に形成される液体Lのメニスカスに電界を集中することができ、メニスカスの先端部の電界強度を液滴Dが安定的に吐出される3×107V/m以上とすることが可能となる。
【0105】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド2は、フラットなヘッドでありながら、ノズルが突出されたヘッドと同様の電界集中をメニスカス先端部に効果的に生じさせることができるため、低電圧の静電電圧の印加でも効率良くかつ正確に液体を吐出することが可能となる。
【0106】
なお、本実施形態では、ピエゾ素子22の変形により形成されたメニスカスを静電吸引力で分離して液滴化し、静電電圧VCによる電界で加速して基板Kに着弾させる構成としているが、この他にも、例えば、ピエゾ素子22の変形による圧力のみで液体Lが液滴化する程度の強い駆動電圧を印加するように構成することも可能である。
【0107】
また、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせ、ノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成する圧力発生手段としてピエゾ素子22の変形を用いる場合について示したが、圧力発生手段はこの機能を有するものであればよく、この他にも、例えば、ノズル10やキャビティ20の内部の液体Lを加熱するなどして気泡を生じさせ、その圧力を用いるように構成することも可能である。
【0108】
また、本実施形態では、対向電極3を接地する場合について述べたが、例えば、電源から対向電極3に電圧を印加して、帯電用電極16との電位差が1.5kV等の所定の電位差になるようにその電源を動作制御手段24で制御するように構成することも可能である。
【0109】
次に、静電吸引式吐出工程につき説明する。
上記静電吸引型インクジェット装置1を用い、基板Kに対し液体を吐出してパターンを形成する。その際、まず、図12(A)に示すように、突起50に液滴を着弾させて吐出液体によるドット51を形成する。このとき、突起に形成された高電界により精度良く着弾位置が定まる。図12(A)には、3つの突起50を示した。まず、パターンを形成する範囲にあるすべての突起50にドットを形成する。
次に、図12(B)に示すように、突起50に着弾したドット51aに一部重ねて隣接させて液滴を着弾させ、ドット51bを形成する。これにより、突起50に形成されたドット51aからパターンを延設する。このとき、既に突起50に着弾したドット51aに一部重ねるように着弾させるから、ドット51bは、ドット51aに形成される強電界の作用と液体同士の親和性の作用により精度良く着弾位置が定まる。
さらに、ドット51cを形成して隣接する突起に形成されたドット51dとパターンを繋げる。同様に、ドット51e,ドット51fを形成し、突起50上のドット51dと突起50上のドット51gとを繋ぐ。
さらに、図12(B)に示す既に形成されたドット上に液滴を着弾させてドット(図示せず)を積層する。これにより必要な厚みのパターンを形成するとともに、パターンのエッジの直線度を高めることができる。
以上のようにしてパターンを一本に繋げ、積層することで必要な厚みに厚膜化するとともにエッジの整えて配線などのパターンを形成する。
【0110】
図12(B)は、突起50の配置ピッチに対してドット51を1/3ずつずらして形成する例を示す。図13(E)に示すように、1/2ずつずらして形成しても良い。
ドット半径と突起50の配置ピッチとの関係により、突起50に形成されるドット間を繋げるために必要な間のドットの数が異なってくるが、間のドットが突起50上のドットに対して相対的にあまり多くならないように設定することが好ましい。突起50に集中する電界による着弾位置の補正作用を大いに利用するためである。
【0111】
また、図13(A)→(B)→(C)→(D)→(E)のように、まず、パターンを形成する範囲の端にある1つの突起50上にドット51を形成し、さらにこれに連続してドットの一部を重ねながらパターンを一方向に連ねるように形成してもよい。
【0112】
以上の工程により、最小幅の線パターンを形成することができる。
図14に示すように、隣接する最小幅の線パターンを形成した後、ドットの一部を重ねながらパターンを前記線パターンと垂直な方向に延設することにより、隣接する最小幅の線パターンの間を繋げて、幅広の線パターンや広面積の任意のパターンを形成することができる。
図14に示すように、突起の配置ピッチP、ライン幅L、スペース幅Sは、P=L+Sの関係となり、突起の配置ピッチPが最小描画単位を規定する。L:Sは、吐出する液適量を制御して基板Kに形成するドット径を選択することにより吐出工程時に選択可能である。
【0113】
以上の静電吸引式吐出工程により、配線などの所望のパターンを形成することができる。なお、液体Lの種類により、静電吸引式吐出工程の後にパターンを形成する溶質を融着させるために所定の温度に加熱する必要がある場合がある。
以上の静電吸引式吐出工程により、配線などの所望のパターンを形成しても良いが、以下の無電界めっき法を取り入れることができる。
【0114】
図15は静電吸引式インクジェットと無電界めっき処理を適用した導電パターンの形成方法の流れを示す図である。
まず、図15(A)に示す通り、上記の静電吸引式吐出工程によって基板K上に金属超微粒子32を含有した液体33を所定パターン状に吐出する。
【0115】
「金属超微粒子32を含有した液体33」というのは、分散剤を用いて金属超微粒子32を水,有機溶媒などの分散媒に独立状態で分散させたものである。液体33に含有される金属超微粒子32は粒径が100nm以下(好ましくは10nm以下)のAu,Pt,Ag,Cu,Ni,Cr,Rh,Pd,Zn,Co,Mo,Ru,W,Os,Ir,Fe,Mn,Ge,Sn,Ga,Inなどである。これら複数の金属超微粒子32のうち、1種類の金属微粒子32を単独で使用してもよいし、2種類以上の金属超微粒子32を混合して使用してもよい。
【0116】
基板K上に液体33を吐出したら、図15(B)に示す通り、基板Kに着弾した液体3中の溶剤除去などの目的で基板Kを焼成し、基板K上に下地導電パターン34を形成する(下地形成工程)。ただし、焼成時間,焼成温度などの焼成処理に関する各種条件は、使用する液体32や基板Kの種類に応じて適宜設定してよく、焼成後に形成された下地導電パターン34は幅が50μm以下で厚みが1μm以下となることが好ましい。
【0117】
下地導電パターン34を形成したら、下地導電パターン34の活性化処理をおこなう(活性化工程)。下地導電パターン34の活性化処理では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなう。ただし、下地導電パターン34の活性化処理では、下記(1)〜(3)の3種類の処理のうち、1種類の処理だけを単独でおこなってもよいし、2種類以上の処理を互いに組み合わせておこなってもよい。
【0118】
(1)「エッチング処理」…下地導電パターン34の表面や端部をエッチングする処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kを硝酸水溶液,塩酸,クロム酸水溶液,スルファミン酸水溶液,有機酸水溶液などに数十秒間浸漬させる処理
下地導電パターン34をAgで構成する場合、エッチング処理の好ましい形態としては、下地導電パターン34付きの基板Kを10%硝酸水溶液に5〜30秒間浸漬する方法が挙げられる。
【0119】
(2)「触媒化処理」…次工程処理となる無電解めっき工程で、めっき金属が下地導電パターン34上に析出するのを促進する触媒を下地導電パターン34に付着させる処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kをパラジウム溶液などに浸漬させ、次工程処理となる無電解めっき処理の触媒(例えばパラジウム)を下地導電パターン34に付着させる処理
触媒を使用する場合、例えば、触媒(例えば、奥野製薬製OPC−50インデューサー、A,B)を30秒程度付与した後、水洗(30秒)し、常温で活性化液(例えば、奥野製薬製クリスターMO)を6分間付与し、水洗(30秒)後、次工程の無電解めっき処理へ移行する。
【0120】
(3)「置換めっき処理」…次工程処理となる無電解めっき工程で、めっき金属が下地導電パターン34上に析出するのを促進する触媒と下地導電パターン34中の金属超微粒子32とを置換する処理であって、具体的には下地導電パターン34付きの基板Kをパラジウム溶液などに浸漬させ、次工程処理となる無電解めっき処理の触媒(例えばパラジウム)と下地導電パターン34中の金属超微粒子32とを置換する処理
下地導電パターン34をAgで構成する場合、置換めっき処理の好ましい形態としては、硫酸パラジウムや塩化パラジウムなどのパラジウム塩を0.01〜0.1g/l含有した溶液(スルファミン酸を20g/l程度含有してもよい。)中に下地導電パターン34付きの基板Kを30秒〜30分間程度浸漬させる方法が挙げられる。この場合、溶液を攪拌しながら基板Kを浸漬させるのがより好ましい。また置換めっき処理の後は基板Kを1分間以上水洗するのが好ましい。
【0121】
例えば上記(1)〜(3)の3種類の処理のうち、エッチング処理をおこなえば、下地形成工程を経て形成された下地導電パターン34の表面や端部に残存した液体33の組成物をエッチング(除去)することができる。これにより、無電解めっき処理液中のめっき金属を下地導電パターン34上に効率よく析出させることができる(図15(C)参照)。
【0122】
なお、下地導電パターン34を形成した後でかつ下地導電パターン34の活性化処理をおこなう前に、必要に応じて下地導電パターン34を溶剤などで洗浄・脱脂してもよい(洗浄・脱脂工程)。溶剤としてアセトンなどの公知の溶剤を適用することが可能であり、溶剤による洗浄・脱脂処理は1〜5分程度おこなうのが好ましい。また超音波を併用して洗浄・脱脂処理をおこなってもよい。
【0123】
下地導電パターン34の活性化処理をおこなったら、図15(D)に示す通り、公知の無電解めっき処理をおこなって活性化処理済みの下地導電パターン34上にめっき金属を被覆し(析出させ)、下地導電パターン34上に導電パターン35を形成する(無電解めっき工程)。下地導電パターン34上にめっきするめっき金属は特に限定しないが、Ni,Co,Pd,Cu,Ag,Au,Pt,Snなどを好適に用いることができる。無電解めっき処理液(浴)としては導電パターン35を構成するめっき金属の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、公知の無電解ニッケルめっき処理浴、無電解銅めっき処理浴、無電解合金めっき処理浴などをそのまま用いることができる。
【0124】
他の方法として、上記の静電吸引式吐出工程によって基板K上にめっき触媒を吐出した後、上記と同様に処理しても良い。具体的には、触媒(例えば、奥野製薬製OPC−50インデューサー、A,B)を含有する液体を静電吸引型インクジェットにより基板K上に吐出した後、水洗(30秒)し、常温で活性化液(例えば、奥野製薬製クリスターMO)を6分間付与し、水洗(30秒)後、無電解めっき処理へ移行する。
【0125】
無電解めっき処理では、下地導電パターン34付きの基板Kを無電解めっき処理浴中に浸漬させてもよいし、無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に選択的に供給するようにしてもよい。無電解めっき処理液を選択的に供給する場合には、公知のスプレー方式で無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に噴射してもよいし、公知のインクジェット方式で無電解めっき処理液を下地導電パターン34上に吐出してもよい。公知のスプレー方式やインクジェット方式で選択的に無電解めっき処理液を供給すれば、無電解めっき処理浴中に基板K全体を浸漬させるほどの無電解めっき処理液を必要とせず、下地導電パターン34上に供給する無電解めっき処理液の供給量が少なくて済む。したがって無電解めっき処理液の使用量を節約することができ、ひいては無電解めっき処理にかかるコストの低減化を図ることができる。
【0126】
以上の方法により微細な導電パターン35を基板K上に形成することができる。
【0127】
また導電パターン35を形成する際には、電解めっき処理をおこなうのではなく無電解めっき処理をおこなうため、導電パターン35を構成するめっき金属を下地導電パターン34上に均一に析出させることができ、さらにはめっき処理用の専用設備の設置などにかかるコストも抑えることができる。これらのことより本実施形態では微細で信頼性の高い導電パターンを比較的低コストで作製することができる。
【0128】
さらに活性化工程で下地導電パターン34の活性化処理をおこなうため、無電解めっき工程でのめっき金属の下地導電パターン34上への析出が良好となり、下地導電パターン34上に形成される導電パターン35の品質を向上させることができる。
【0129】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなってもよい。
【0130】
上記の無電解めっき工程では下地導電パターン34上に導電パターン35を形成したが、無電解めっき工程で導電パターン35を形成したら、必要に応じて導電パターン35に公知の電解めっき処理を施してもよい。この電解めっき処理で用いるめっき金属は、無電解めっき処理で用いためっき金属と同種の金属であってもよいし、異種の金属であってもよい。
ドライブロール、ガイドロール等を有した周知の搬送装置を構成して、基板を搬送しても良い。静電吸引型インクジェット装置を通過した下流に、後工程の処理装置を配置して生産ラインを構成することができる。この生産ラインに、無電解めっき処理液などを供給するためのスプレー方式やインクジェット方式等の供給装置を配置する場合、基板K若しくは基板Kを支持する支持体の両側端に、基板Kに供給される液の流出を規制する土手状のガイドを予め形成しておくことにより、供給される液の流出、裏回りを発生させることなく処理可能である。
【0131】
図16、図17に突起及びその周囲の電界コンタ図を示す。図16は、幅0.1μm、高さ0.2μmの円錐形突起52を有したモデルM1に対してシミュレーションした突起片側領域の電界コンタ図である。図17の電界コンタ図は、幅1μm、高さ0.2μmの円錐形突起53を有したモデルM2に対してシミュレーションした突起片側領域の電界コンタ図である。図16及び図17に基づき両者における突起中心を原点として突起先端の最大電界強度を通る高さにおける幅手方向の位置と電界強度の関係を示したグラフを図18に示す。
図16〜図18より、突起の先端部に強い電界集中が生じることがわかる。
また、モデルM2の突起形状の方が、モデルM1より電界分布が巾手に及んでおり液滴を静電吸引力で精度良く着弾させる効果が高い。
【実施例】
【0132】
[実施例1]
本実施形態のインクジェットヘッド2のノズルプレート11を種々の材料を用いて実際に作製し、ノズル10の吐出孔13から液滴Dが吐出されるか否かを基材K(本実施例及び実施例2では凸部の無いフラットな描画面を有する基板を使用した。)に吐出させて確認した。
【0133】
インクジェットヘッド2の構成は、前記実験条件と同様の条件で作製し、ノズル10のテーパ角は4°で小径部14と大径部15とが連続した1段構造とした。
【0134】
また、液体L1は、水52重量%、エチレングリコールおよびプロピレングリコールをそれぞれ22重量%、染料(CIアシッドレッド1)3重量%、界面活性剤1重量%含有する導電性の液体として調製し、液体L2は、エタノールに染料(同上)を3重量%含有する導電性の液体として調整し、液体L3は、テトラデカンにAg粒子を分散させ、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体として調製した。
【0135】
なお、体積抵抗率は、JISC2151に準拠し、シート状被測定物の面間に電圧を印加した場合の電気抵抗値より算出した。また、ノズルプレート11の液体の吸収率は、23℃の使用対象である液体Lにノズルプレート11または代用のシート状被測定物を24時間浸漬し、浸漬前後のノズルプレート11または被測定物の重量変化率より算出した。液体Lが水溶性インクである場合には、ASTMD570に準拠した吸水率で代用することも可能である。
【0136】
前記液体L1〜L3に対する実験結果は下記の表1のようになった。なお、表1の吸収率の欄は、上段が水に対する吸収率(吸水率)、下段がエタノールに対する吸収率を表している。
【0137】
【表1】
【0138】
表1の結果から、液体L1や液体L2のように導電性溶媒を含有する場合、液体の吸収率が低くても体積抵抗率が1015Ωm未満の材料ではノズル10から液体Lは吐出されないことが分かる。これは、前記シミュレーションによる結果と同じ結果を示している。また、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料であればノズル10から液体Lが吐出され得るが、吸収率が少なくとも0.6%以下でなければ液体Lは吐出されないことが分かる。
【0139】
一方、液体L3のように絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を吐出する場合には、体積抵抗率が1015Ωm以上の材料であればすべてノズル10から液体が吐出され得ることが分かる。
【0140】
[実施例2]
本実施形態のインクジェットヘッド2のノズルプレート11の厚さおよびノズル径を種々変えて作製し、前記液体L1の吐出の有無を基材Kに吐出させて確認した。また、参照実験として、液体L1の吐出が確認されなかった条件で静電電圧を3.0kVにして吐出の有無を確認した。
【0141】
実験結果は下記の表2のようになった。なお、ノズルプレート11は表1に記載されているポリエチレンテレフタレート(ルミラー(東レ株式会社製))を用いて形成した。
【0142】
【表2】
【0143】
表2の結果から、ノズルプレート11の厚さが125μmの場合の結果を比較すると、ノズル径は15μm以下であることが好ましいことが分かる。また、ノズル径を15μmとした場合の結果を比較すると、ノズルプレート11の厚さは75μm以上であることが好ましいことが分かる。なお、液体が吐出されなかった条件で静電電圧を3.0kVとしたところ、この場合は、液体が吐出された。
【0144】
[実施例3]
図1(A)に示すように正方配列する円錐形突起を有した基板を2種製作した。突起の配置ピッチを20μm、突起の高さを0.2μmとし、突起の底辺の直径を0.3μmと2μmの2種とした。
基板材質は、厚み500μmのポリイミドで、シリコン基材をフォトリソ後、エッチングすることで金型を形成し、インプリント成型により前記突起形状を付与した基板を製作した。静電吸引型インクジェット装置を使用し、ハリマ化成製のインクジェット用銀ナノインクを使用した。基板からノズル吐出口までのギャップを100μm、基板側に500V印加し、ヘッドインク側をアースに駆動周波数30khzで突起配列上に線状の回路パターンを幅10μmで形成した。
また、静電吸引型インクジェットによるドット形成は、図12(B)に示すように各1層を1/3ピッチずつずらして形成し、20層積層した。パターン形成後、200℃、60minで加熱し、顕微鏡で突起の無いフラットな描画面を有する基板に同様の条件で実施したものとの比較を行った。その結果を表3に示す。
回路巾の両端の直進性を評価してバラツキ範囲が2μm以上を△、2μm未満を○、1μm以下を◎とした。
【0145】
【表3】
【0146】
以上の実施例3からわかるように、静電吸引型インクジェットで形成するパターンのエッジの直進性は、突起が無い場合より突起がある方が良好で、突起があるもの同士では、パターン幅10μmに対しては0.3μm幅のものより、2μm幅のもののほうが良好な結果となった。
これは、図16、図17に示したシミュレーション結果で確認したように、裾の広い突起形状の方が高い電界分布が巾手に及び、液滴を静電吸引力でより精度良く着弾させることができたためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明一実施形態に係る基板の平面図(A)、回路基板の平面図(B)である。
【図2】本発明一実施形態に係る突起の断面図である。
【図3】本発明一実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置の全体構成を示す断面図である。
【図4】形状が異なるノズルの変形例を示す図である。
【図5】シミュレーションによるノズルの吐出孔付近の電位分布を示す模式図である。
【図6】メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの体積抵抗率との関係を示す図である。
【図7】メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの厚さとの関係を示す図である。
【図8】メニスカス先端部の電界強度とノズル径との関係を示す図である。
【図9】メニスカス先端部の電界強度とノズルのテーパ角との関係を示す図である。
【図10】本発明一実施形態に係る静電吸引型インクジェット装置におけるインクジェットヘッドの駆動制御の一例を示し、駆動制御とメニスカスの動きとの関係を説明する図である。
【図11】ピエゾ素子に印加する駆動電圧の変形例を示す図である。
【図12】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図13】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図14】本発明一実施形態に係る静電吸引式吐出工程におけるドット形成の流れを示す図である。
【図15】本発明一実施形態に係る静電吸引式インクジェットと無電界めっき処理を適用した導電パターンの形成方法の流れを示す図である。
【図16】本発明一実施形態に係る突起及びその周囲の電界コンタ図である。
【図17】本発明一実施形態に係る突起及びその周囲の電界コンタ図である。
【図18】電界強度と突起巾手位置との関係を示す図である
【符号の説明】
【0148】
1 静電吸引型インクジェット装置
2 インクジェットヘッド
3 対向電極
10 ノズル
11 ノズルプレート
12 吐出面
13 吐出孔
18 静電電圧電源
20 キャビティ
22 ピエゾ素子
23 駆動電圧電源
24 動作制御手段
28 撥液層
L 液体
K 基板
K2 回路基板
32 金属超微粒子
33 液体
34 下地導電パターン
35 導電パターン
40 最小配線
47,48,49,50,52.53 突起
51 ドットパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画面に凸部が形成されている静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項2】
前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項1記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項3】
前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項2に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項4】
前記凸部の配置ピッチが静電吸引型インクジェットの最小描画単位を規定していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項5】
前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されたパターン形成材料を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、前記凸部に着弾した前記液体によるドットに一部重ねて隣接させて着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、既に形成されたドット上に着弾させてドットを積層させる静電吸引式工程を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記パターン形成材料の一つとして導電材料を用い、これにより前記基板上に配線その他の導電パターンを形成することを特徴とする請求項6、請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記パターン形成材料の一つとして前記配線より抵抗値の高い導電材料を用い、これにより前記基板上に抵抗を形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記パターン形成材料の一つとして絶縁材料を用い、前記絶縁材料及び前記導電性材料により前記基板上にコンデンサを形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
電鋳金型によるインプリントで前記描画面に前記凸部を転写形成して前記基板を作製することを特徴とする請求項6から請求項11のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成された金属微粒子を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記液体が着弾した前記基板を焼成して前記基板上に下地導電パターンを形成する下地形成工程と、
前記下地形成工程の後に、前記下地導電パターンに対して無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
前記下地形成工程の後でかつ前記無電解めっき工程の前に、前記下地導電パターンを活性化する活性化工程を備えることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記活性化工程では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなうことを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
(1)前記下地導電パターンをエッチングするエッチング処理
(2)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒を前記下地導電パターンに付着させる触媒化処理
(3)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒と前記下地導電パターン中の前記金属超微粒子とを置換する置換めっき処理
【請求項16】
前記下地形成工程の後でかつ前記活性化工程の前に、前記下地導電パターンを溶剤で洗浄・脱脂する洗浄・脱脂工程を備えることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されためっき触媒を含有する液体のメニスカスとこれに対応する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記静電吸引式吐出工程の後に、無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項18】
前記無電解めっき工程では、スプレー方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記無電解めっき工程では、インクジェット方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させ、前記電界による静電吸引力と前記圧力によりノズルの吐出孔に形成された液体のメニスカスに電界を集中させ、前記静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させて前記ノズルの吐出孔に前記液体のメニスカスを隆起させて電界を集中させ、前記電界による静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記液体は、導電性溶媒を含有する液体であり、前記ノズルプレートの前記液体の吸収率が0.6%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記液体は、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記ノズルプレートの厚さが75μm以上であることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であることを特徴とする請求項20から請求項24のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記ノズルプレートの前記吐出面側に撥液層が設けられていることを特徴とする請求項20から請求項25のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記圧力発生手段は、圧電素子アクチュエータであることを特徴とする請求項20から請求項26のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項28】
基板と、前記基板上に静電吸引型インクジェットにより描画されたパターンとを有し、前記基板の前記パターンが描画された面に凸部が形成され、前記パターンは前記凸部に被着していることを特徴とするパターン付基板。
【請求項29】
前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項28記載のパターン付基板。
【請求項30】
前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項29に記載のパターン付基板。
【請求項31】
前記凸部の配置ピッチが前記回路パターンの最小幅とスペースの最小幅との和に等しくされていることを特徴とする請求項28、請求項29又は請求項30に記載のパターン付基板。
【請求項32】
前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項28から請求項31のうちいずれか一に記載のパターン付基板。
【請求項33】
前記パターンにより受動部品を含む電気回路が形成されていることを特徴とする請求項28から請求項32のうちいずれか一に記載のパターン付基板。
【請求項1】
描画面に凸部が形成されている静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項2】
前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項1記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項3】
前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項2に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項4】
前記凸部の配置ピッチが静電吸引型インクジェットの最小描画単位を規定していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項5】
前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の静電吸引型インクジェット用基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されたパターン形成材料を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、前記凸部に着弾した前記液体によるドットに一部重ねて隣接させて着弾させる静電吸引式吐出工程を有することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させて、既に形成されたドット上に着弾させてドットを積層させる静電吸引式工程を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記パターン形成材料の一つとして導電材料を用い、これにより前記基板上に配線その他の導電パターンを形成することを特徴とする請求項6、請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記パターン形成材料の一つとして前記配線より抵抗値の高い導電材料を用い、これにより前記基板上に抵抗を形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記パターン形成材料の一つとして絶縁材料を用い、前記絶縁材料及び前記導電性材料により前記基板上にコンデンサを形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
電鋳金型によるインプリントで前記描画面に前記凸部を転写形成して前記基板を作製することを特徴とする請求項6から請求項11のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成された金属微粒子を含有する液体のメニスカスとこれに対向する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記液体が着弾した前記基板を焼成して前記基板上に下地導電パターンを形成する下地形成工程と、
前記下地形成工程の後に、前記下地導電パターンに対して無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
前記下地形成工程の後でかつ前記無電解めっき工程の前に、前記下地導電パターンを活性化する活性化工程を備えることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記活性化工程では下記(1)〜(3)の少なくとも一の処理をおこなうことを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
(1)前記下地導電パターンをエッチングするエッチング処理
(2)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒を前記下地導電パターンに付着させる触媒化処理
(3)前記無電解めっき工程でめっき金属が前記下地導電パターン上に析出するのを促進する触媒と前記下地導電パターン中の前記金属超微粒子とを置換する置換めっき処理
【請求項16】
前記下地形成工程の後でかつ前記活性化工程の前に、前記下地導電パターンを溶剤で洗浄・脱脂する洗浄・脱脂工程を備えることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の基板をノズルとこれに対向する対向電極間に配置し、
前記ノズルの吐出孔に形成されためっき触媒を含有する液体のメニスカスとこれに対応する前記凸部とに周囲より高い電界を形成し、前記電界による静電吸引力により前記ノズルから前記液体を吐出させ前記凸部に着弾させる静電吸引式吐出工程と、
前記静電吸引式吐出工程の後に、無電解めっき処理をおこない導電パターンを形成する無電解めっき工程とを備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項18】
前記無電解めっき工程では、スプレー方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記無電解めっき工程では、インクジェット方式で無電解めっき処理液を前記下地導電パターン上に供給することを特徴とする請求項13から請求項17のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させ、前記電界による静電吸引力と前記圧力によりノズルの吐出孔に形成された液体のメニスカスに電界を集中させ、前記静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記静電吸引式吐出工程において、
前記液体を吐出するノズルが設けられ、フラットで体積抵抗率が1015Ωm以上のノズルプレートを有するインクジェットヘッドのノズルおよびキャビティ内の前記液体に静電電圧を印加して前記インクジェットヘッドと前記対向電極との間に電界を形成するとともに、圧力発生手段により前記ノズル内の前記液体に圧力を発生させて前記ノズルの吐出孔に前記液体のメニスカスを隆起させて電界を集中させ、前記電界による静電吸引力により前記液体を吸引して吐出させることを特徴とする請求項6から請求項19のうちいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記液体は、導電性溶媒を含有する液体であり、前記ノズルプレートの前記液体の吸収率が0.6%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記液体は、絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記ノズルプレートの厚さが75μm以上であることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であることを特徴とする請求項20から請求項24のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記ノズルプレートの前記吐出面側に撥液層が設けられていることを特徴とする請求項20から請求項25のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記圧力発生手段は、圧電素子アクチュエータであることを特徴とする請求項20から請求項26のいずれか一に記載のパターン形成方法。
【請求項28】
基板と、前記基板上に静電吸引型インクジェットにより描画されたパターンとを有し、前記基板の前記パターンが描画された面に凸部が形成され、前記パターンは前記凸部に被着していることを特徴とするパターン付基板。
【請求項29】
前記凸部は均等分散した多数の点状の突起であることを特徴とする請求項28記載のパターン付基板。
【請求項30】
前記突起は、円錐形であることを特徴とする請求項29に記載のパターン付基板。
【請求項31】
前記凸部の配置ピッチが前記回路パターンの最小幅とスペースの最小幅との和に等しくされていることを特徴とする請求項28、請求項29又は請求項30に記載のパターン付基板。
【請求項32】
前記凸部の高さが500nm以下であることを特徴とする請求項28から請求項31のうちいずれか一に記載のパターン付基板。
【請求項33】
前記パターンにより受動部品を含む電気回路が形成されていることを特徴とする請求項28から請求項32のうちいずれか一に記載のパターン付基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−253482(P2006−253482A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69364(P2005−69364)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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