説明

静電容量式圧力検出装置

【課題】絶対圧力センサあるいは差圧センサのダイアフラムの変形による、差圧センサへの影響を抑制し、高精度の測定が可能な静電容量式圧力検出装置を提供することにある。
【解決手段】静電容量式圧力検出装置において、差圧センサ手段と絶対圧センサ手段とを基台上に分離して設置するように構成した。また、差圧センサ手段を構成する二つ以上の差圧センサを基台上に分離して設置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力に応じて変形するダイアフラムを備え、このダイアフラムの変位を、ダイアフラムと対向して設けた固定電極との間に形成される静電容量の変化から圧力を検出する、静電容量式圧力検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の静電容量式圧力検出装置としては、例えば特許文献1に開示される装置がある。
特許文献1に開示される静電容量式圧力検出置の構成を図8、図9に示す。
図8に示された圧力検出部本体41において、431はシリコン基板で、両面からプラズマエッチングによってダイアフラム432を形成する。ダイアフラム432は中央に基板431よりも若干薄い平坦部433と、その外周に円環状の薄肉部434を有する。435a、435bはパイレックス(登録商標)ガラスなどのシリコン基板431と膨張係数がほぼ等しい絶縁材料でできた基板で、静電接合等の方法によりシリコン基板431の周辺の部分で気密に接合され、ダイアフラム432の両面に空隙436a、436bが形成される。
【0003】
絶縁基板435a、435bのダイアフラム432の平坦部433に対向する部分にはスパッタなどの方法でCr/Auを二層に積層した固定電極437a、437bが形成され、ダイアフラム432との間にコンデンサC41,C42が形成される。438a、438bの内面と絶縁基板435a、435bの外表面の導圧口438a、438bを囲む部分に、スパッタなどの方法により電極439a、439bを設け、固定電極437a、437bと電気的に導通させている。
【0004】
440は圧力検出手段で、441はダイアフラム432の平坦部433と同程度の深さまで、シリコン基板431をプラズマエッチングによって加工した空隙(真空室)である。この空隙に対向する絶縁基板435aの面には電極442が設けられ、孔443の内面に形成したリード電極を介して、絶縁基板435aの外表面に設けた電極444と導通しており、ダイアフラム432との間に静電容量C43が形成される。また電極444の上には絶縁基板445が真空雰囲気で、拡散接合または静電接合等の方法により気密に接合され、空隙441の内部を真空に維持している。なお、基板445は絶縁材には限らない。
【0005】
446は温度検出手段で、誘電体基板455の両面に電極456a、456bを設けたコンデンサで形成し、絶縁基板435aの上に設けた配線457a、457bに接合固定し,静電容量C44が形成される。
【0006】
448は、圧力検出部本体41を保持するための基台、449は電極439bと基台448を絶縁するための絶縁板で、それぞれ接着や接合などの公知の方法で固定されている。450は、シリコン基板431を導通させるために設けた開口で、スパッタなどの方法により開口450の内面を介して電極451にシリコン基板431を導通させる。
【0007】
図8において、導入圧力として、P1,P2(P1<P2)の差圧が加わるとすると、ダイアフラム432は矢印の方向に変位する。この変位量、つまり圧力は、静電容量C41,C42を検出し、次式(1)の演算をすれば、圧力伝達流体410、411の誘電率の温度や圧力による変化の影響を受けずに求めることが可能である。
【0008】
(C41−C42)/(C41+C42)=Δ/d ・・・(1)
C41=ε・ε・S/(d−Δ) ・・・(2)
C42=ε・ε・S/(d+Δ) ・・・(3)
Δ:ダイアフラム432の変位量
S:電極面積
d:ダイアフラム432と電極439a、439bとの間隔
ε:圧力伝達流体の比誘電率
ε:真空の誘電率
しかしながら、圧力伝達流体の誘電率が温度や圧力に伴って変化する影響を除去することができるが、高圧流体の測定においては、検出部本体41全体が周囲から圧縮圧力や温度変化をうけるために、高精度で測定する場合は静電容量C43,C44を用いて補正を行う。
【0009】
すなわち、静電容量C43は真空室を形成している板の変形により変化するため、C43の測定により絶対圧力に対応した静電容量を得ることが可能で、静電容量C44はガラス等の絶縁基板の温度による誘電率変化で変化するため、C44の測定により温度変化に対応した静電容量を得ることが可能である。
【0010】
このように特許文献1の静電容量式圧力検出装置では、静電容量C43,C44から求めた絶対圧力、温度にて補正演算することで高精度の圧力測定が可能となっている。
また、特許文献2に開示される変位測定装置の構成を図10に示す。
502はシリコン基板で、両面からプラズマエッチングによってダイアフラム503および506を形成する。ダイアフラム503および506は中央部に基板502よりも若干薄い平坦部504および507と、その外周に円環上の薄肉部505および508を有する。このとき、例えばダイアフラム503を低圧領域用、ダイアフラム506を高圧領域用とすると、その圧力範囲に応じて薄肉部505および508の厚さを最適化する。509aおよび509bはパイレックスガラスなどのシリコン基板502と膨張係数がほぼ等しい絶縁材料でできた基板で、静電接合等の方法によりシリコン基板502の周辺の部分で気密に接合され、ダイアフラム503および506の両面に空隙510a、510bおよび514a、514bが形成される。
【0011】
絶縁基板509a、509bのダイアフラム503の平坦部504に対向する部分には、スパッタ等の方法でCr/Auを二層に積層した固定電極512a、512bが形成され、ダイアフラム503との間にはコンデンサ(静電容量)C51,C52が形成され、低圧領域用の圧力センサLとして作用する。ダイアフラム506についても同様に固定電極516a、516bが形成されることにより、静電容量C53,C54が形成され、高圧領域用の圧力センサHとして作用する。511a、511bおよび515a、515bは、空隙510a、510bおよび514a、514bを外部に連通させる導圧口である。この導圧口511a,511bおよび515a、515bの内面と絶縁基板509a、509bの外表面の導圧口511a、511bおよび515a、515bを囲む部分に、スパッタなどの方法により電極513a、513bおよび517a、517bを設け、固定電極512a、512bおよび516a、516bと電気的に導通させるようにしている。
【0012】
51は、圧力検出手段で、519はダイアフラム502の平坦部504、507と同程度の深さまで、シリコン基板502をプラズマエッチングによって加工した空隙である。この空隙519に対向する絶縁基板509aの面には電極520が設けられ、シリコン基板502との間に静電容量C55が形成される。電極520は穴521の内面に形成したリード電極522と導通させる。また、電極522の上には絶縁基板523が真空雰囲気で拡散接合または静電接合等の方法により気密に接合され、空隙519の内部を真空に維持している。なお、基板523は絶縁材には限らない。
【0013】
52は温度検出手段を示し、525は絶縁基板509aの外表面に設けた電極で、絶縁基板509aを挟んでシリコン基板502との間に静電容量C56が形成されている。53は寄生容量変化を補正するための基準容量で、531はダイアフラム502の平坦部504、507と同程度の深さまでシリコン基板502をプラズマエッチングによって加工した空隙である。この空隙531に対向する絶縁基板509aの面には電極532が設けられ、シリコン基板502との間に静電容量C57が形成される。電極532は穴533の内面に形成したリード電極を介して、絶縁基板509aの外表面に設けた電極534と導通させる。
【0014】
526は、図10の検出部(センサ部)全体を保持するための基台、527は電極513bおよび517bと基台526を絶縁するための絶縁板で、気密に接合することによって導圧口511b、515bに同一圧力を導く圧力ポート530を形成している。528は、シリコン基板502を導通するために設けた開口で、スパッタなどの方法により開口528の内面を介して電極529にシリコン基板502を導通させている。
【0015】
図10において、導入圧力として、P1,P2(P1<P2)の差圧が加わるとすると、ダイアフラム503と506は矢印の方向に変位するので、その変位量は静電容量C51,C52およびC53,C54をセンサL,Hでそれぞれ検出し、次の式(4)、(5)の如き演算をすることにより求められる。このとき、圧力伝達流体500、501の誘電率が温度や圧力で変化することが考えられるが、(4)、(5)式のような比の演算をすることで、これらの影響を除去することが可能となる。
センサLについて:
(C51−C52)/(C51+C52)=Δd1/d1 ・・・(4)
Δd1:ダイアフラム503の変位量
d1:ダイアフラム503と固定電極512aまたは512bとの間隔
センサHについて:
(C53−C54)/(C53+C54)=Δd2/d2 ・・・(5)
Δd1:ダイアフラム506の変位量
d1:ダイアフラム506と固定電極516aまたは516bとの間隔
そして、圧力が加わると、絶縁基板509aの空隙(真空室)519の壁面を形成している部分は、圧力P2で変形し静電容量C55が変化するので、圧力の絶対値に対応した信号が得られ、絶対圧力センサ51として作用する。また、温度変化は絶縁基板509aの誘電率を変化させる。すなわち、パイレックスガラス等の材料では、一般的に温度に比例して誘電率が増加し、静電容量C56が変化するので温度センサとして作用する。寄生容量変化は圧力伝達流体となる封液500および501の温度や圧力による誘電率変化の影響を受けるので、圧力センサC51〜C54と同一の封液で満たすことにより、誘電率のみを検出する寄生容量補正容量(基準容量)C57として作用することになる。
【0016】
このように特許文献2の変位測定装置では、絶対圧センサ、温度センサによる補正演算、および寄生容量補正を行うことで高精度の測定が可能となっている。
また、特許文献3には差圧センサと絶対圧センサを基台上に搭載する圧力センサを開示している。
【特許文献1】特開平9−145511号公報
【特許文献2】特開平9−257620号公報
【特許文献3】特開2003−42878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように従来の測定装置は、差圧センサに加えて、絶対圧力センサ、温度センサ、
寄生容量補正のための静電容量を備える構成となっており、高精度の測定が可能となっている。しかしながら、差圧センサと絶対圧力センサが連通してあり、特に高圧の絶対圧力を測定する場合、絶対圧力センサのダイアフラムは、高圧力の耐圧に耐えるためダイアフラム部が厚くなり、シリコン板厚に対するダイアフラムの板厚の比が小さくなることから、ダイアフラムの変形力が大きくなり、差圧センサを構成する静電容量(例えば特許文献2におけるC51〜C54)、および温度センサとしての静電容量(例えば特許文献2におけるC55)、寄生容量補正のための静電容量(例えば特許文献2におけるC57)等に影響を及ぼし、精度の再現性、ヒステリシスを悪化させていた。
【0018】
また、二つの差圧センサが連通している場合も同様である。二つの差圧センサが連通しているとは、例えば特許文献2で説明すると、低圧側を受け持つ差圧センサがC51とC52で構成され、高圧側を受け持つ差圧センサがC53とC54で構成されるようなことを言う。このような構成において低圧を測定する場合は、高圧側を受け持つ差圧センサのダイアフラムが変形してしまうが、連通していることから、その変形が低圧側の差圧センサ(例えば特許文献2におけるC51,C52)に影響を与える。逆に、高圧を測定する場合は、低圧側を受け持つ差圧センサのダイアフラムは過大圧のため、加圧側と反対側の電極に接触した状態となりダイアフラムが大きく変形してしまい、連通していることから、その変形が高圧側の差圧センサ(例えば特許文献2におけるC53、C54)に影響を与えてしまう。
【0019】
そこで、本発明の課題は、絶対圧力センサあるいは差圧センサのダイアフラムの変形による、差圧センサを構成する静電容量または温度センサとしての静電容量、寄生容量補正のための静電容量への影響を抑制し、高精度の測定が可能な静電容量式圧力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、本発明の静電容量式圧力検出装置では、差圧センサ部と絶対圧センサ部を基台に別々に設置するように構成した。
このような構成により、絶対圧センサ部のダイアフラムの変形による差圧センサ部への影響を小さくすることが可能である。
【0021】
更に、上述の静電容量式圧力検出装置の構成において、前記絶対圧センサ部に含まれる温度センサとしての静電容量、または寄生容量補正のための静電容量の側を基台に固定し、前記絶対圧センサ部に含まれる絶対圧力センサを構成する静電容量の側は自由端になるように構成した。
【0022】
このような構成により、絶対圧力センサのダイアフラムの変形を基台に伝わりにくくすることが可能となり、温度センサとしての静電容量、寄生容量補正のための静電容量への絶対圧力センサの影響を小さくすることができる。その結果当然のことながら、絶対圧力センサの差圧センサへの影響を小さくすることが可能である。
【0023】
更に、差圧センサ部と絶対圧センサ部とが基台に分離して設置される静電容量式圧力検出装置の構成において、差圧センサ部を構成する二つ以上の差圧センサを、共通の基台に対して独立に設置するようにした。また、基台上面の圧力検出手段側の第1の圧力と、基台下面側の第2の圧力との差圧を検出する差圧センサは、異なる圧力導入孔に独立分離して設置するようにした。
【0024】
このような構成により、差圧センサ部におけるダイアフラムの変形による、各差圧センサ相互の影響を小さくすることが可能となり、高精度に圧力を測定できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、静電容量式圧力検出装置を構成する差圧センサ部と絶対圧センサ部を基台に別々に設置するため、絶対圧センサ部の変形による差圧センサ部への影響を小さくすることが可能である。更に、前記絶対圧センサ部の構成において、温度センサとしての静電容量または寄生容量補正のための静電容量の側を基台に固定し、絶対圧力センサを構成する静電容量の側は自由端になるように構成することにより、絶対圧力センサにおけるダイアフラムの変形を基台に伝わりにくくすることが可能である。その結果、温度センサとしての静電容量、寄生容量補正のための静電容量への絶対圧力センサの影響を小さくでき、また、差圧センサへの影響も抑制することが可能である。
【0026】
また、差圧センサ部と絶対圧センサ部を基台に別々に設置する静電容量式圧力検出装置の構成において、二つ以上の差圧センサを共通の基台に対して独立に分離することで、差圧センサ部におけるダイアフラムの変形による影響を小さくすることが可能となり、高精度に圧力を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の第1の実施例について説明する。
図1に本発明の第1の実施例である、静電容量式圧力検出装置の構成を示す。
202、302はシリコン基板で、両面からプラズマエッチングによってダイアフラム203および206を形成する。ダイアフラム203および206は中央部に基板202、302よりも若干薄い平坦部204及び207と、その外周に円環状の薄肉部205および208を有する。このとき、例えばダイアフラム203を差圧力用(差圧センサ部1)、ダイアフラム206を絶対圧力用(絶対圧センサ部2)とすると、その圧力範囲に応じて薄肉部205および208の厚さを最適化する。
【0028】
209aおよび209bはパイレックスガラスなどのシリコン基板202と熱膨張係数がほぼ等しい絶縁材料でできた基板で、静電接合等の方法によりシリコン基板202の周辺の部分で気密に接合され、ダイアフラム203および206の両面に空隙210a、210bおよび214a、214bが形成される。ダイアフラム206は絶対圧力用のため、絶縁基板309a、309bおよびシリコン基板302と、真空雰囲気で拡散接合または静電接合等の方法により気密に接合され、空隙214bの内部を真空に維持している。
【0029】
絶縁基板209a、209bのダイアフラム203の平坦部204に対向する部分には、スパッタ等の方法でCr/Auを二層に積層した固定電極212a、212bが形成され、ダイアフラム203との間にはコンデンサ(静電容量)C1,C2が形成され、差圧力用の圧力センサ(差圧センサ)として作用する。
【0030】
ダイアフラム206についても、同様に固定電極216aが形成されることにより、静電容量C5が形成され、絶対圧力用の絶対圧力センサとして作用する。
211a、211bおよび215aは空隙210a、210bおよび214aを外部に連通させる導圧口である。この導圧口211a、211bおよび215aの内面と絶縁基板209a、209bの外表面の導圧口211a、211bおよび215aを囲む部分に、スパッタなどの方法により電極213a、213bおよび217aを設け、固定電極212a、212bおよび216aと電気的に導通させるようにしている。
【0031】
温度検出手段である温度センサ3の電極225は、絶縁基板309aの外表面に設けた電極で、絶縁基板309aを挟んでシリコン基板302との間に静電容量C6が形成されている。
【0032】
寄生容量検出手段4は、寄生容量を補正するための基準容量で、231はダイアフラム206の平坦部207と同程度の深さまで、シリコン基板302をプラズマエッチングによって加工した空隙である。この空隙231に対向する絶縁基板309aの面には電極232が設けられ、シリコン基板302との間に静電容量C7が形成される。電極232は穴233の内面に形成したリード電極を介して絶縁基板309aの外表面に設けた電極234と導通させる。
【0033】
226は、図1の圧力検出部全体を保持する基台、227は電極213bと基台226を絶縁するための絶縁板で、気密に接合することによって導圧口211b、圧力を導く圧力ポート230を形成している。絶対圧センサ部2は、差圧センサ部1とは別に、基台226にハンダや接着剤等の接合方法で固定されている。
【0034】
また、絶対圧センサ部2は、温度検出手段としての温度センサ3または寄生容量を補正するための静電容量を含む寄生容量検出手段4の存在する側のみ、基台226にハンダや接着剤等の接合方法で固定300され、絶対圧を検出する静電容量C7側は自由端となるように構成する(図2を横からみた図である、図3を参照)。これにより、ダイアフラムの変形が絶縁板309a、309bに伝わっても、その変形を抑制せず自由に動くことができる。尚、固定300は、図2に示すように、縦方向でも横方向でもよく、変形量が小さくなるような位置であればどこでもよいものとする。
【0035】
尚、固定300は、絶対圧力センサが自由に変形できるように、金属あるいは絶縁体等からあるスペーサを介して固定することとする。
基台226から、差圧センサ部1、絶対圧センサ部2を含むほうが容器5と圧力伝達隔壁7で囲まれ、圧力伝達流体200が封入されており、また、反対側が容器6と圧力伝達隔壁8で囲まれ、圧力伝達流体201が封入されている。
【0036】
図1の構成において、導入圧力P1,P2の大小関係は任意であるが、便宜上、P1<P2の場合を例にして説明を行うものとする。今、P1,P2(P1<P2)の差圧が図1に示したように加わると、ダイアフラム203は矢印(a)の方向に変位するので、その変位量は、静電容量C1,C2の計測値と、下記(6)の式を演算することにより求められる。このとき、圧力伝達流体200、201の誘電率が温度や圧力で変化することが考えられるが、(6)式のような比の演算をすることで、これらの影響を除去することが可能となる。
差圧センサ(C1,C2からなる部分)について:
(C1−C2)/(C1+C2)=Δd3/d3 ・・・(6)
Δd3:ダイアフラム203の変位量
d3:ダイアフラム203と固定電極212aまたは212bとの間隔
絶対圧力センサ(C5で構成される部分)の場合、圧力P2が加わると、ダイアフラム206は矢印(b)の方向に変位するので、その変位量は、静電容量C5が変化することにより計測可能である。このように、圧力の絶対値に対応した信号を計測し、絶対圧力センサとして作用する。
【0037】
また、温度変化は絶縁基板209a、309aの誘電率を変化させる。すなわち、パイレックスガラス等の材料では、一般的に温度に比例して誘電率が増加し、静電容量C6が変化するので温度センサ3として作用する。
【0038】
寄生容量変化は圧力伝達流体となる200および201の温度や圧力による誘電率変化の影響を受けるので、差圧センサを構成するC1、C2と同一の封液で満たすことにより、誘電率変化のみを検出する寄生容量補正用容量(基準容量)C7として作用することになる。このように、寄生容量検出手段4は静電容量C7により構成される。
【0039】
そして、静電容量C5,C7の計測値と、下記(7)の式を演算することにより、圧力伝達流体200、201の誘電率が温度や圧力で変化する影響を除去することが可能となる。
絶対圧力センサ(C5からなる部分)について:
(C7−C5)/(C5)=Δd4/d4 ・・・(7)
Δd4:ダイアフラム206の変位量
d4:ダイアフラム206と固定電極216aとの間隔
以上のように、静電容量式圧力検出装置において、差圧センサ部と絶対圧センサ部を基台に別々に設置することで、絶対圧センサ部の変形による差圧センサ部への影響を小さくすることが可能である。また、絶対圧センサ部の構成において、温度センサとしての静電容量または寄生容量補正のための静電容量の側を基台に固定し、絶対圧力センサを構成する静電容量の側は自由端になるように構成することにより、絶対圧力センサにおけるダイアフラムの変形を基台に伝わりにくくすることが可能で、温度センサとしての静電容量、寄生容量補正のための静電容量への絶対圧力センサの影響を小さくすることができ、その結果当然のことながら差圧センサへの影響も抑制することが可能である。
【0040】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図4に本発明の第2の実施例である、静電容量式圧力検出装置の構成を示す。
第2の実施例の静電容量式圧力検出装置は、実施例1のように差圧センサ部と絶対圧センサ部を分離して設置するのに加えて、差圧センサ部を構成する、低圧を受け持つ差圧センサ1Aと高圧を受け持つ差圧センサ1Bとを、共通の基台226に対してそれぞれ独立に分離して設置する構成である点に特徴がある。
【0041】
図4において、上記第1の実施例と同一の構成部分については同一の符号を付している。多少第1の実施例と重複する部分もあるが、以下に図4の構成について説明する。
図4に示すように、602、702、302はシリコン基板で、両面からプラズマエッチングによってダイアフラム603、703および206を形成する。ダイアフラム603、703および206は中央部にシリコン基板602、702、302よりも若干薄い平坦部604、704および207と、その外周に円環状の薄肉部605、705および208の厚さを最適化する。609a、709a、309aおよび609b、709b、309bはパイレックスガラスなどのシリコン基板602、702、302の周辺の部分で気密に接続され、ダイアフラム603、703および206の両面に空隙610a、610b、710a、710bおよび214a、214bが形成される。ダイアフラム206は絶対圧用のため、絶縁基板309a、309b及びシリコン302と、真空雰囲気で拡散接合または静電接合等の方法により機密に接合され、空隙214bの内部を真空に維持している。
【0042】
絶縁基板609a、609bのダイアフラム603の平坦部604に対向する部分には、スパッタ等の方法でCr/Auを二層に積層した固定電極612a、612bが形成され、ダイアフラム603との間にはコンデンサ(静電容量)C61,C62が形成され、たとえば低圧を受け持つ差圧センサ1Aとして作用する。
【0043】
絶縁基板709a、709bのダイアフラム703の平坦部704に対向する部分には、スパッタ等の方法でCr/Auを二層に積層した固定電極712a、712bが形成され、ダイアフラム703との間にはコンデンサ(静電容量)C71,C72が形成され、たとえば高圧を受け持つ差圧センサ1Bとして作用する。
【0044】
611a、611b、711a、711bおよび215aは空隙610a、610b、710a、710bおよび214aを外部に連通させる導圧口である。この導圧口611
a、611b、711a、711bおよび215aの内面と絶縁基板609a、609b、709a、709b、309aの外表面の導圧口611a、611b、711a、711bおよび215aを囲む部分に、スパッタなどの方法により電極613a、613b、713a、713bおよび217aを設け、固定電極612a、612b、712a、712bおよび216aと電気的に導通させるようにしている。
【0045】
温度検出手段である温度センサ3の電極225は、絶縁基板309aの外表面に設けた電極で、絶縁基板309aを挟んでシリコン基板302との間に静電容量C6が形成されている。
【0046】
寄生容量検出手段4は、寄生容量を補正するための基準容量で、231はダイアフラム206の平坦部207と同程度の深さまで、シリコン基板302をプラズマエッチングによって加工した空隙である。この空隙231に対向する絶縁基板309aの面には電極232が設けられ、シリコン基板302との間に静電容量C7が形成される。電極232は穴233の内面に形成したリード電極を介して絶縁基板309aの外表面に設けた電極234と導通させる。
【0047】
226は図示のセンサ部全体を保持するための基台であり、627、727は電極613b、713bと基台226を絶縁するための絶縁板で、気密に接続することによって導圧口611b、711b、圧力を導く圧力導入孔630、730を形成している。絶対圧センサ部2は、差圧センサ部1(1Aと1B)とは別に、基台226にハンダや接着剤等の接合方法で固定されている。
【0048】
絶対圧センサ部2は、温度検出手段としての温度センサ3または寄生容量検出手段4側のみ、基台226にハンダ(鉛フリーハンダや Au-Sn 半田等)や接着剤等の接合方法で固定300され、絶対圧を検出する静電容量C5側は、自由端となって、ダイアフラムの変形が絶縁板309a、309bに伝わっても、その変形を抑制せず自由に動くことができる構成である。図4に示した静電容量式圧力検出装置を上からみた図を図5に示す。
【0049】
図5には(a)と(b)の二つの図を示しているが、いずれも差圧センサ部1Aと1Bが分離されて基台上に設置されている。これにより、ダイアフラムの変形が絶縁板309a、309bに伝わってもその変形を抑制せず自由に動くことができる。
【0050】
基台226から、差圧センサ1A,1B、絶対圧センサ部2を含むほうが容器5と圧力伝達隔壁7で囲まれ、圧力伝達流体200が封入されており、また、反対側が容器6と圧力伝達隔壁8で囲まれ、圧力伝達流体201が封入されている。
【0051】
また、差圧センサ部1と絶対圧センサ部2との設置については、基台上に分離して独立に設置されていればよく、たとえば図6に示すように設置してもよい。
図6の断面MNを図7に示す。図7において、基台226の側面に設けられた穴から圧力を導き、独立に設けた絶縁板627、727を基台に気密に接続して圧力導入孔630、730を構成し、絶縁板627、727をそれぞれの差圧センサ1A,1Bに接合している。
【0052】
上記図4〜図7に示した構成において、静電容量式圧力検出装置の動作について説明する。導入圧力P1,P2の大小関係は通常任意であるが、ここでは説明のためにP1<P2として説明する。
【0053】
今、P1,P2(P1<P2)の差圧が図示したように加わると、ダイアフラム603は矢印(a)の方向に変位するので、その変位量は静電容量C1,C2の計測値と、下記
(8)式を演算することにより求められる。このとき、圧力伝達流体200、201の誘電率が温度や圧力で変化することが考えられるが、(8)式のような比の演算をすることで、これらの影響を除去することが可能となる。
【0054】
低圧用差圧センサ(1A)について:
(C61−C62)/(C61+C62)=Δd5/d5 ・・・(8)
Δd5:ダイアフラム603の変位量
d5:ダイアフラム603と固定電極612aまたは612bとの間隔
同様に高圧用の差圧センサについても同様に下記(9)式で示すことができる。
【0055】
高圧用差圧センサ(1B)について:
(C71−C72)/(C71+C72)=Δd6/d6 ・・・(9)
Δd6:ダイアフラム703の変位量
d6:ダイアフラム703と固定電極712aまたは712bとの間隔
また、絶対圧センサ部2については、上記第1の実施例で説明した式(7)と同一で、
絶対圧力センサについて:
(C7−C5)/(C5)=Δd4/d4 ・・・(7)
Δd4:ダイアフラム206の変位量
d4:ダイアフラム206と固定電極216aとの間隔
として、圧力伝達流体200、201の誘電率が温度や圧力で変化する影響を除去することが可能となる。
【0056】
以上のように、静電容量式圧力検出装置において、差圧センサ部と絶対圧センサ部を基台に別々に設置することで、絶対圧センサ部の変形による差圧センサ部への影響を小さくすることが可能であり、また、差圧センサ部において、二つ以上の差圧センサを分離して別々に配置することで、差圧センサ部におけるダイアフラムの変形による、各差圧センサ相互の影響を小さくすることができ、高精度な圧力測定が可能である。
【0057】
以上本発明の実施の形態について詳細に説明したが、上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち例えば、上述の実施例では差圧センサとして静電容量式のセンサを用いて説明したが、ピエゾ抵抗式や振動式など、圧力が検出可能なセンサであればいずれのセンサでもよい。このように、上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施例である、静電容量式圧力検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した静電容量式圧力検出装置を上からみた図を示す図である。
【図3】図2を横から見た図を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例である、静電容量式圧力検出装置の構成を示す図である。
【図5】図4に示した静電容量式圧力検出装置を上からみた図を示す図である。
【図6】第2の実施例における他の構成例を示す図である(上面図)。
【図7】第2の実施例における他の構成例を示す図である(断面図)。
【図8】特許文献1に開示される静電容量式圧力検出装置の構成を示す図(その1)である。
【図9】特許文献1に開示される静電式圧力検出装置の構成を示す図(その2)である。
【図10】特許文献2に開示される変位測定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 差圧センサ部
2 絶対圧センサ部
3 温度センサ
4 寄生容量検出手段
5、6 容器
7、8 圧力伝達隔壁
200 圧力伝達流体
201 圧力伝達流体
202、602、702 シリコン基板
203、603、703 ダイアフラム
204、604、704 平坦部
205、605、705 円環状の薄肉部
206 ダイアフラム
207 平坦部
208 円環状の薄肉部
209、609、709 基板
210、610、710 空隙
211、611、711 導圧口
212、612、712 固定電極
213、613、713 電極
214 空隙
215 導圧口
216 固定電極
217 電極
225 電極
226 基台
227、627、727 絶縁板
230、630、730 圧力導入孔
231 空隙
232 電極
234 電極
300 固定部
302 シリコン基板
309 絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差圧センサ手段と絶対圧センサ手段とを備える静電容量式圧力検出装置であって、
前記差圧センサ手段と前記絶対圧センサ手段とを基台上に分離して設置したことを特徴とする静電容量式圧力検出装置。
【請求項2】
圧力に応じて変形する導電性のダイアフラムの両側に固定電極を所定の間隔をとって配置し、該ダイアフラムとの間に対となる静電容量を形成し、該静電容量の変化から圧力を測定する差圧センサを含む差圧センサ手段と、
圧力に応じて変形する導電性のダイアフラムに固定電極を配置し、該ダイアフラムとの間に静電容量を形成し、該静電容量の変化から絶対圧力を検出する絶対圧力センサを含む絶対圧センサ手段と、
を備える静電容量式圧力検出装置であって、
前記差圧センサ手段と前記絶対圧センサ手段とを基台上に分離して設置したことを特徴とする静電容量式圧力検出装置。
【請求項3】
前記絶対圧センサ手段は、絶対圧力センサの他に温度検出手段と、寄生容量補正手段とを含み、
前記絶対圧力センサのダイアフラムが自由に変形可能な自由端になるように、前記絶対圧センサ手段において、前記温度検出手段または寄生容量補正手段の側を基台に固定することを特徴とする請求項2記載の静電容量式圧力検出装置。
【請求項4】
前記絶対圧センサ手段における基台への固定は、前記絶対圧力センサが自由に変形できるように、金属あるいは絶縁体などからなるスペーサを介して固定されることを特徴とする請求項3記載の静電容量式圧力検出装置。
【請求項5】
前記差圧センサ手段は、圧力測定範囲の異なる二つ以上の差圧センサで構成され、該二つ以上の差圧センサを、共通の基台上に分離して独立に設置したことを特徴とする請求項1記載の静電容量式圧力検出装置。
【請求項6】
前記二つ以上の差圧センサは、それぞれ異なる圧力導入孔を備えることを特徴とする請求項5記載の静電容量式圧力検出装置。
【請求項7】
前記差圧センサは、基台下面側の第1の圧力と、基台上面の該差圧センサ手段側の第2の圧力の差圧を検出するものであることを特徴とする請求項5または6記載の静電容量式圧力検出装置。
【請求項8】
前記差圧センサは、静電容量式、ピエゾ抵抗式、振動式など圧力を検出するいずれのセンサでもよいことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の静電容量式圧力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−2925(P2009−2925A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329376(P2007−329376)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】