説明

非凝集・球状のエチレン系重合体微粒子からの無機物除去方法

【課題】さまざまな機能性材料用途に好適に用いられ得る、粒径が非常に小さく、また微粒子間の凝集がなく、粒度分布の極めて狭く、超高分子量球状ポリエチレン微粒子からの無機物除去方法を提供すること。
【解決手段】(A)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が6〜50dl/gの範囲にあり、(B)レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が、100μm以下であり、かつ(C)その変動係数(Cv) が20%以下であるエチレン系重合体微粒子を、炭素数2〜10のアルコールとキレート性化合物の混合溶液と接触させることを特徴とする、該重合体微粒子中に含有される無機物の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな機能性材料用途に好適なエチレン系重合体微粒子からの無機物除去法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー微粒子の開発が活発化しており、産業上さまざまな用途で幅広く使用されている。なかでも、粒子形状が球形で粒度分布の狭いポリマー微粒子は、その加工性、流動性、表面物性の良さからフィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤等に用いられている。これらポリマー粒子の材質は、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、メラミン樹脂系、ポリオレフィン系など多種にわたるが、結晶性や融点が高く、高い化学的安定性といった特長から、ポリオレフィン系、特にポリエチレン系樹脂の微粒子が注目されている。ポリエチレン系微粒子は、他の材料に見られない耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった特長を活かし、さまざまな新材料、新用途が考案・実用化されている。さらに、超高分子量のポリエチレン系微粒子は、通常のポリエチレン微粒子と比べて高い耐熱性、表面耐摩耗性を示し、より有用かつ付加価値の高い用途が期待される。
【0003】
このような、超高分子量ポリエチレン微粒子をそのまま、あるいは表面改質などを施したものは、化学や生物系物質の高効率な分離用カラム充填剤として、また高比表面積の吸着材や触媒担体などとして利用できる。また、薬物などの送達と除放を担わせた担体としての利用、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための散布剤や、化粧品素材として肌への良好な感触効果をもたらす安全性の高い微粒子材料に活用される。
【0004】
その他、リチウム電池やリチウムイオン2次電池のセパレータ用部材、光拡散・反射・反射防止などの機能を持った光学フィルター用部材、セラミックなどの焼結多孔体の高性能バインダー、通気性フィルムなどの賦孔材、免疫化学的活性物質固定化用担体、微小細孔・高比表面積焼結フィルターなど機能性新材料用途への応用が積極的に検討されている。
【0005】
このような機能性新材料分野においては、さらなる機能発現や性能・品質向上のために、ポリマー中の無機成分等の異物含有量が少なく、より小さい粒径、より狭い粒度分布、粒子間の凝集のない、球状のポリエチレン超微粒子が切望されている。
【0006】
超高分子量のポリエチレン粒子の製造法法としては、固体状オレフィン重合触媒を用い、直接エチレンモノマーから重合反応によってポリエチレン微粒子を得る懸濁重合法が知られている。 しかしながら、懸濁重合法によって製造される微粒子は、その粒子内部に触媒成分由来の無機成分を含有し、製品物性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0007】
懸濁重合によって生成したポリマー中の無機成分を脱灰操作によって除去する方法としては、公知で広く知られた方法として、重合終了後のポリマースラリーにアルコールを加える方法、無機酸、有機酸を加える方法、塩基を加える方法、酸化剤を加える方法、界面活性剤を加える方法等が知られている。しかしながら、これらの方法では超高分子量エチレン系重合体の粒子中の無機物を効率的に取り除くことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、さまざまな機能性材料用途に好適に用いられ得る、粒径が非常に小さく、また微粒子間の凝集がなく、粒度分布の極めて狭く、超高分子量球状ポリエチレン微粒子からの無機物除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、i)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が6〜50dl/gの範囲にあり、ii))レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が、100μm以下であって、かつ、iii)その変動係数(Cv)が20%以下の超高分子量エチレン系重合体粒子を、炭素数2〜10のアルコールとキレート性化合物の混合溶液と接触させ、該重合体微粒子中に含有される無機物を効率よく除去することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、様々な機能性新材料用途において有用な超高分子量ポリエチレン微粒子中から無機物を効率良く短時間で除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、各項目毎に課題を解決するための手段について詳細に述べる。なお、以下の説明では「無機物除去」を「脱灰」と呼称する場合がある。
【0012】
本発明の超高分子量エチレン系重合体粒子の脱灰方法は、 (A)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が6〜50dl/g、好ましくは10〜50dl/g、より好ましくは14〜50の範囲にあり、(B)レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が、100μm以下、好ましくは25μm以下でありかつ(C)その変動係数(Cv) が20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下であるエチレン系重合体粒子を、炭素数2〜10のアルコールとキレート性化合物の混合溶液と混合し、好ましくは75℃以上の温度で攪拌することにより、重合体中の無機物を除去する事を特徴としている。
【0013】
炭素数2〜10のアルコールとしては、エタノール、n―プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t―ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール等が挙げられるが、これに限らない。この中で、好ましくはイソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t―ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールが用いられる。
【0014】
キレート性化合物とは、ポリマー中の無機金属であるマグネシウムやアルミニウムとキレート錯体を形成しうる化合物であれば任意に使用できるが、好ましくはジケトン化合物であり、より好ましくはアセチルアセトンが用いられる。
【0015】
脱灰反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、
[1] 微粒子と、アルコール、キレート性化合物を室温で混合する工程(混合工程)、
[2] 次いで攪拌しながら所定温度まで昇温させる工程、
[3] 所定の反応温度で所定の時間反応させる工程(反応工程)、
[4] 得られたスラリーを濾過、洗浄、乾燥する工程、からなる。
【0016】
最初の混合工程では、ポリマー1重量部に対し、アルコール3〜100重量部、キレート性化合物2〜100重量部が混合される。この時、アルコールとキレート性化合物の量比は、98/2〜50/50の間にあることが好ましい。反応工程における反応温度は75℃〜130℃、好ましくは80℃〜120℃であり、反応時間は10分〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間で行なわれ、反応後、濾過、洗浄、乾燥することで微粒子を得る。
【0017】
本発明に係る、エチレン系重合体微粒子中の無機物除去に際して、キレート化合物と触媒成分との反応によって生成する塩酸を捕集する目的で、必要に応じてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸吸収剤(E)を加えることもできる。
酸吸収剤(E)は、脱灰溶媒であるアルコール100重量部に対し、3〜10重量部添加することができる。酸吸収剤の添加時期は、混合工程でもよいし、反応工程であってもよい。
【0018】
本発明に係る無機物除去方法においては、エチレン系重合体微粒子は、脱灰に用いるアルコール溶媒のスラリー状態、あるいは乾燥状態で用いることができる。スラリー、または乾燥パウダーは、通常の空気中で取り扱ってもよいし、重合器中で生成した状態から窒素等の不活性ガス雰囲気下で取り扱ってもよい。本発明による無機物の除去方法によって、ポリエチレン微粒子中の灰分(アッシュ成分)を1000ppm以下、好ましくは600ppm以下、より好ましくは300ppm以下にすることができる。
【0019】
本発明で使用するエチレン系重合体粒子の分子量、粒子性状の測定方法、アッシュ成分の測定方法並びにそれを製造するオレフィン重合触媒成分について述べる
【0020】
極限粘度[η]
本発明の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち造粒ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める。
【0021】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0022】
メジアン径(d50)、変動係数(Cv)
本発明で使用されるメジアン径(d50)及び、変動係数(Cv)はレーザー回折散乱法によって測定される。また、本発明では上記の他に、ポリエチレン微粒子の球形度または円形度が高いものが好ましい。これらの粒子形状指数は、一般に3次元または2次元の光学的画像解析によって測定できる。
【0023】
アッシュ成分測定法
アッシュ成分は、所定量の成分を650℃の電気炉で恒量になるまで灰化して、ICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量分析を行なった。
【0024】
本発明に係わるエチレン系重合体粒子を製造するための重合触媒は、
A)Mg含有担体成分に、
B)遷移金属化合物、が担持された固体触媒成分と、
C)有機金属化合物
を必須成分として含む。
以下、本発明に係わるオレフィン重合触媒の各成分について説明する。
A)Mg含有担体成分
【0025】
本発明のMg含有担体成分(以下、単に「担体」と略称する場合がある)は、マグネシウム原子、アルミニウム原子および炭素数1〜20のアルコキシ基を共に含有し、炭化水素溶媒に不溶であり、平均粒径が0.1〜5μmであり、好ましくは0.1〜4.5μm、より好ましくは0.1〜4.0μmの範囲にある。
【0026】
本発明の担体成分は、ハロゲン化マグネシウムと炭素数1〜20のアルコールまたはフェノール化合物を接触(以下、この接触を「第1接触」と呼ぶ場合がある。)させ、次いで、特定の条件下で、有機アルミニウム化合物と接触(以下、この接触を「第2接触」と呼ぶ場合がある。)させることにより得られる。
【0027】
ハロゲン化マグネシウムとしては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムが好んで用いられる。このようなハロゲン化マグネシウムは市販品をそのまま使用しても良いし、別途アルキルマグネシウムから調製しても良いし、また後者の場合はハロゲン化マグネシウムを単離することなく用いることもできる。
【0028】
炭素数1〜20のアルコールとしては、前記の炭素数1〜20のアルコキシ基に対応したアルコールを例示でき、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-アミルアルコール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、クミルアルコール、i-プロピルベンジルアルコール等、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール、フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトール等の低級アルキル基含有フェノール等を例示するこができるが、これらの中ではメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、i-アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノールが好ましい。
【0029】
ハロゲン化マグネシウムと炭素数1〜20のアルコール、フェノール化合物を接触させる場合は、溶媒存在下で行ってもよい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンジクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを例示することができる。
【0030】
接触は通常、加熱下で行なわれる。加熱する場合は、その温度は使用する溶媒の沸点までの温度を任意に選択することができる。接触時間は接触温度にもよるが、例えば溶媒としてn-デカンを使用し、加熱温度130℃の条件下では約4時間の接触により、内容物の均一化現象を呈し、これが接触完了の目安となる。接触する際には、通常撹拌等により接触を促す装置を利用して実施される。接触の開始時は通常不均一な系であるが、接触が進行するとともに内容物は徐々に均一化し、最終的には液状化する。
【0031】
本発明の担体成分は、生成するエチレン系重合体超微粒子の粉体性状の視点から完全液状化を経由する調製法の方が好ましい。
【0032】
このようにして調製されたハロゲン化マグネシウムと炭素数1〜20のアルコール、フェノール化合物の接触化物(以下、「第1接触化物」と呼ぶ場合がある。)は、接触時に使用した溶媒類を除去して用いてもよいし、溶媒を留去することなく使用してもよい。通常は溶媒を留去することなく次段の工程に供される。
【0033】
上記の方法で得られた第1接触化物は、次いで特定の条件下で、下記一般式(Z)で表される有機アルミニウム化合物と接触(=第2接触)される。
【0034】
AlRnX3-n ・・・(Z)
一般式(Z)において、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、を例示することができる。Xは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子または水素原子を示す。nは1〜3の実数を示し、好ましくは2または3である。Rが複数ある場合は各Rは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合は、各Xは同じでも異なっていてもよい。有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が用いられる。このような要件を満たす有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示できるが、これらの中では、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましい。
【0035】
本発明の大きなポイントの一つは、この第2接触における接触方法および接触条件にある。具体的には、強力な剪断力で高速混合された第1接触化物に、前記一般式(Z)で表される有機アルミニウム化合物を、添加する方法によって実施される。第1接触化物の高速混合に用いる装置としては、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業社製)、ナショナルクッキングミキサー(松下電器産業社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(日本精機社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業社製)等のバッチ又は連続両用乳化機、マイクロフルイダイザー(みづほ工業社製)、ナノメーカー、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVゴーリン(ゴーリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等を挙げることができる。
【0036】
第2接触時、第1接触化物は溶剤に希釈された状態が好ましく、このような溶剤としては活性水素を保有しない炭化水素類であれば特に制限なく使用できるが、通常は第1接触時に使用した溶媒を留去することなく第2接触時の溶媒としてそのまま使用するのが効率的である。第1接触化物に添加する有機アルミニウム化合物は、溶媒に希釈して使用しても良いし、溶媒に希釈せず添加してもよいが、通常はn-デカン、n-ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒に希釈された形態で用いられる。有機アルミニウム化合物を添加する際には、通常5分〜5時間かけて第1接触化物に添加される。接触系内の徐熱能力が十分であれば短時間の添加で済ませることができ、一方能力が不十分な場合は長時間かけて添加するのがよい。有機アルミニウム化合物の添加は一括して添加してもよいし、何回かに分けて分割添加をしてもよい。分割添加を行なう場合は、各々の添加における有機アルミニウム化合物は同一でも異なっていてもよく、また各々の添加における第1接触化物の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0037】
第2接触時における、前記一般式(Z)で表される有機アルミニウム化合物の使用量は、通常は第1接触化物中のマグネシウム原子の量に対して0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モル、より好ましくは1.0〜20倍モル、さらに好ましくは1.5〜15倍モル、特に好ましくは2.0〜10倍モルのアルミニウム原子となるように有機アルミニウム化合物が使用される。
【0038】
第2接触により担体を調製する方法のうち、特に好ましい第2接触の形態を以下に述べる。
【0039】
第1接触化物と前記一般式(Z)で表される有機アルミニウム化合物の接触に際しては、例えばマグネシウム化合物の炭化水素希釈溶液と、炭化水素溶媒に希釈した有機アルミニウム化合物とを接触させる等の両液状物の反応による手段が好ましい。その際の有機アルミニウム化合物の使用量は、その種類、接触条件によって異なるが、マグネシウム化合物1モルに対し、通常2〜10モルとするのが好ましい。固体生成物は、その形成条件によって形状や大きさなどが異なってくる。形状、粒径がそろった固体生成物を得るためには、前述のように高剪断・高速混合を維持しつつ、急速な粒子形成反応を避けるのが好ましく、例えばマグネシウム化合物と有機アルミニウム化合物を互いに液状状態で接触混合して相互反応によって固体生成物を形成させる場合には、それらの接触によって急速に固体が生じないような低い温度で両者を混合した後、昇温して徐々に固体生成物を形成させるのがよい。この方法によれば、固体生成物の超微粒領域での粒径制御が容易で、粒度分布の極めて狭い超微粒・球状固体生成物を得やすい。
【0040】
(B)遷移金属化合物、
本発明のエチレン系重合体粒子の製造方法で用いられる遷移金属化合物については、特に限定はないが、好ましくは下記一般式(I)で示される遷移金属化合物が挙げられる。
【0041】
【化1】

【0042】
(なお、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。)
【0043】
一般式(I)中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜9族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および9族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、ロジウム、イットリウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウムなどであり、好ましくはスカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、ロジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ロジウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0044】
mは、1〜6、好ましくは1〜4の整数を示す。 R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0045】
なお、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
以下に、上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0048】
nは金属Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。たとえば金属がTi(IV)の場合はn=2であり、Zr(IV)の場合はn=2であり、Hf(IV)の場合はn=2である。
【0049】
【化2】

本発明では、上記化合物においてジルコニウム金属をチタン、ハフニウム、バナジウム、クロムに置き換えた化合物を用いることもできる。
【0050】
(C)有機金属化合物、本発明において、用いられる(C)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物を任意に用いることができる。
【0051】
(C-1a) 一般式 RamAl(ORb)npq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、より好ましくは1〜8の炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドを例示することができる。
【0052】
(C-1b) 一般式 MAlRa4
(式中、MはLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C25)4、LiAl(C715)4 などを例示することができる。
【0053】
(C-1c) 一般式 Rab
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、MはMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
上記した特定の有機金属化合物(C)のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましく、とりわけ前記(C-1a)の有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(C-1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
なお、上記触媒成分の他に、必要に応じて(D)非イオン性界面活性剤を用いることもできる。
(D)を用いることによって、微粒子製造時の反応基へのポリマー付着、微粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0055】
次に、非イオン性界面活性剤(D)について説明する。
(D)非イオン性界面活性剤 成分(D)は下記の(D-1)ポリアルキレンオキサイドブロック、(D-2)高級脂肪族アミド、(D-3)ポリアルキレンオキサイド、(D-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、(D-5)アルキルジエタノールアミン、(D-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる1種以上の化合物が好んで使用される。
【0056】
(D-1)ポリアルキレンオキサイドブロック
本発明で用いられる(D-1)ポリアルキレンオキサイドブロックは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドブロックであれば何ら制限なく使用できる。
【0057】
(D-2)高級脂肪族アミド
本発明で用いられる(D-2)高級脂肪族アミドは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知の高級脂肪族アミドであれば何ら制限なく使用できる。
【0058】
(D-3)ポリアルキレンオキサイド
本発明で用いられる(B-3)ポリアルキレンオキサイドは、従来公知のポリアルキレンオキサイドであれば何ら制限なく使用できる。
【0059】
(D-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル
本発明で用いられる(B-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルであれば何ら制限なく使用できる。
【0060】
(D-5)アルキルジエタノールアミン
本発明で用いられる(D-5)アルキルジエタノールアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のアルキルジエタノールアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0061】
(D-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン
本発明で用いられる(D-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリオキシアルキレンアルキルアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0062】
このような非イオン系界面活性剤は、室温で液体であるものが取り扱い性の点で好ましい。また、このような非イオン系界面活性剤は、原液又は溶媒で希釈後、溶液で使用することが出来る。なお、本発明でいう「希釈」とは、非イオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤に対して不活性な液体とが混合された状態のもの又は分散された状態のものも全て含む。すなわち、溶液又は分散体であり、より具体的には、溶液、サスペンジョン(懸濁液)又はエマルジョン(乳濁液)である。その中でも、非イオン系界面活性剤と溶媒が混合し、溶液状態となるものが好ましい。
【0063】
不活性な液体として例えば、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。この中でも脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素の場合は、非イオン系界面活性剤と混合することにより溶液状態となるものが好ましい。更に好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油、鉱物油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素と非イオン系界面活性剤と混合することにより溶液状態となるものがよい。
【0064】
以下実施例に基づき、本発明を説明する。
【0065】
[合成例1]
成分(B1)の調製
無水塩化マグネシウム 95.2g(1.0モル)、デカン 442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール 390.6g(3.0モル)を130℃で2時間反応を行い均一溶液(成分(B1))を得た。
【0066】
Mg含有担体成分(B1-1)の調製
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(B1)50ml(マグネシウム原子換算で50ミリモル)、精製デカン 283ml、およびクロロベンゼン117mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM-0.8Sを用い、回転数15000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム 52ミリモルを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム 98ミリモルを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mlのトルエンを加えてMg含有担体成分(B1-1)のトルエンスラリーとした。得られた固体成分の平均粒径は1.5μmであった。
【0067】
また、以上の操作によって調製したMg含有担体成分(B1-1)の一部を乾燥し、組成を調べたところ、マグネシウムが19.0重量%であり、アルミニウムが2.9重量%であり、2-エチルヘキソキシ基が21.0重量%であり、塩素が53.0重量%であり、マグネシウムとアルミニウムのモル比(Mg/Al)は、7.3、2-エチルヘキソキシ基とアルミニウムのモル比(2-エチルヘキソキシ基/Al)は、1.5であった。
【0068】
固体触媒成分(B1−1−A2−172I)の調製
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、Mg含有担体成分(B1−1)をマグネシウム原子換算で20ミリモル、および精製トルエン 600mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記成分(A2−172)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)20mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B1−1−A2−172I)の200mlデカンスラリーとした。
【0069】
【化3】

【0070】
固体触媒成分(B1−1−A2−172II)の調製
充分に窒素置換した内容積400mlのフラスコに、Mg含有担体成分(B1−1)をマグネシウム原子換算で5ミリモル、および精製トルエン 170mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、上記成分(A2−172)のトルエン溶液(0.0005mmol/ml)20mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B1−1−A2−172II)の100mlデカンスラリーとした。
【実施例1】
【0071】
重合
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mlを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、48℃に昇温し、エチレン雰囲気にて、トリエチルアルミニウム 1.25ミリモル、上記で調製した固体触媒成分(B1−1−A2−172I)をスラリーとして4.5ml、エマルゲン108(花王製) 28.8mgをこの順に装入した。エチレン圧を0.78MPa・Gとし、120分間重合を行った。重合中は、50℃、エチレン圧0.78MPa・Gを保持した。重合終了後、生成物スラリーを窒素雰囲気下で取り出し、そのまま濾過後、イソブチルアルコール200mlでリスラリーした。スラリーを全量、十分に窒素置換した内容積0.5リットルのガラス製反応器に移し、アセチルアセトン60ミリリットルを加え、100℃で1時間加熱攪拌した。その後反応物を濾過し、イソブチルアルコールで洗浄した後、メタノール、ヘキサンで洗浄し得られたポリマーを10時間、真空乾燥させてポリエチレン 21.9gを得た。得られたポリエチレンは[η]25.9dl/g、メジアン径(d50) 12.1μm、CV値13.8%、Ash成分は100ppmであった。
【0072】
[比較例1]
重合操作は実施例1と同様に行なった。重合終了後の反応生成物を大量のヘキサンで洗浄し、10時間、真空乾燥させてポリエチレン 21.9gを得た。
【0073】
このポリエチレンの[η]は25.9dl/gであり、Ash成分は18000ppmであった。
【実施例2】
【0074】
重 合
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mlを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、48℃に昇温し、エチレン雰囲気にて、トリエチルアルミニウム 1.25ミリモル、上記で調製した固体触媒成分(B1−1−A2−172II)をスラリーとして4.0ml、エマルゲン108 25.6mgをこの順に装入した。エチレン圧を0.05MPa・Gとし、30分間重合を行った。重合中は、50℃、エチレン圧0.05MPa・Gを保持した。その後エチレン圧を0.78MPa・Gとし、さらに40分間重合を行った。重合中は、50℃、エチレン圧0.78MPa・Gを保持した。重合終了後、生成物スラリーを窒素雰囲気下で取り出し、そのまま濾過後、イソブチルアルコール400mlでリスラリーした。スラリーを全量、十分に窒素置換した内容積1リットルのガラス製反応器に移し、アセチルアセトン120ミリリットルを加え、100℃で1時間加熱攪拌した。その後反応物を濾過し、イソブチルアルコールで洗浄した後、メタノール、ヘキサンで洗浄し得られたポリマーを10時間、真空乾燥させてポリエチレン59.0gを得た。このポリエチレンの[η]は22.0dl/g、メジアン径(d50)は24.1μm、CV値は15.0%、Ash成分は200ppmであった。
【0075】
[比較例2]
重合操作は実施例2と同様に行なった。重合終了後の反応生成物を大量のヘキサンで洗浄し、10時間、真空乾燥させてポリエチレン59.0gを得た。このポリエチレンの[η]は22.0dl/g、Ash成分は3000ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によって、様々な機能性新材料用途において有用な超高分子量ポリエチレン微粒子中から無機物を効率良く短時間で除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が6〜50dl/gの範囲にあり、
(B)レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が、100μm以下であり、かつ
(C)その変動係数(Cv) が20%以下であるエチレン系重合体微粒子を、
炭素数2〜10のアルコールとキレート性化合物の混合溶液と接触させることを特徴とする、該重合体微粒子中に含有される無機物の除去方法。
【請求項2】
キレート性化合物がジケトンであることを特徴とする請求項1に記載の無機物除去方法。
【請求項3】
75℃以上の温度で接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の無機物除去方法。
【請求項4】
エチレン系重合体粒子のレーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が25μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機物除去方法。
【請求項5】
前記エチレン系重合体粒子が
(1)Mg含有担体と
(2)遷移金属化合物と
(3)有機金属化合物からなるオレフィン重合触媒の存在下、エチレン単独、エチレンとα-オレフィン、またはエチレンと環状オレフィンを重合させることによって生成したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機物除去方法。

【公開番号】特開2006−206769(P2006−206769A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21603(P2005−21603)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】