説明

非対称光パターン化可能ゾル−ゲル前駆体およびその調製法

【課題】低い光損失と共に高い屈折率値を有する改善されたゾル−ゲル組成物およびその調製法を提供すること。
【手段】本明細書では、光パターン化可能ゾル−ゲル前駆体およびその調製法が記載される。ゾル−ゲル前駆体は、熱的に安定であり、高い屈折率および低い光損失値を有する組成物を形成する。該前駆体を使用して、通信波長の領域の光導波路用途に理想的に適したゾル−ゲル組成物を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第61/111454号(出願日:2008年11月5日、発明の名称“ASYMMETRIC PHOTO−PATTERNABLE SOL−GEL PRECURSORS AND THEIR METHODS OF PREPARATION”)の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、高屈折率光パターン化可能な有機および有機金属ゾル−ゲル前駆体、ならびにそれらを調製する方法に関する。本発明は、さらに、ゾル−ゲル前駆体から誘導されるゾル−ゲル組成物およびポリマーに関する。本明細書に記載されている物質は、種々の光導波路用途に有用である。
【背景技術】
【0003】
情報の高バンド幅伝送、特に通信への急速に増大する要求に取り組むために、光ファイバーおよび光集積回路が進歩している。しかし、それでもなお、光信号の伝送ならびに処理、スイッチングおよびルーティングの速度を増加させるというさらなる要求が高まっている。
【0004】
特に、伝送および処理に対する将来の要求は、おそらく100GHzより大きいバンド幅へのニーズであると考えられる。現在の伝送インフラは、ニオブ酸リチウムに基づく変調器に依存し、バンド幅は、現在、10GHzに限定されている。さらに、ニオブ酸リチウムは、結晶であるために成長させるのが難しく、光回路に集積するのも困難である。以下参照:Dalton,L.,“Nonlinear Optical Polymeric Materials:From Chromophore Design to Commercial Applications”、Advances in Polymer Science、第158巻、第1−86頁(2001)。有機および/または有機金属物質に基づく変調器は、これらの欠点を克服しうる。
【0005】
光変調器の望ましい特徴は、低い挿入損失、高い信号変調効率、および処理および操作によって課される条件下の耐久性を包含する。有機変調器が構築されるデバイス構造の例は、Mach−Zehnder変調器である。この変調器は、基板、電極、クラッドおよび導波路層から成る多層デバイスである。
【0006】
最近、クラッドおよび導波路層に必要とされる物質に、特に注目が集まっている。望ましくは、これらの物質は、下記を有する:(1)通信波長(1300〜1600nm)の範囲における、低い光伝送損失(<1dB/cm)、(2)ポーリング効率増大のための高伝導性、(3)ガラスおよび石英のような種々の基板との適合性、(4)1.40より高い屈折率、(5)優れた化学および熱安定性、ならびに(6)紫外−可視光パターン化能力。オルガノシリコーンを使用するゾル−ゲル化学作用が調査されている。Henchら、“The Sol−Gel Process”、Chem.Rev.1990,90,33−72参照。
【0007】
Suらの米国特許第6,391,515号(その内容は、参照により本明細書に組み入れられる)は、ゾル−ゲル光導波路を製造する方法を記載している。Fardadらの米国特許第6,054,253号(その内容は、参照により本明細書に組み入れられる)は、リッジ導波路を製造するフォトリソプロットィー法を開示している。しかし、これらの文献はいずれも、1300〜1600nmの通信波長範囲における、低い光損失、高い屈折率の導波路の製造に関する開示を含んでいない。Fardadらの米国特許第6,908,723号(その内容は、参照により本明細書に組み入れられる)は、金属屈折率調整剤、好ましくはチタンと共に、C−F結合を、ゾル−ゲルに導入することによって、1550nmにおいて約1.50の屈折率を有する光パターン化可能ゾル−ゲルを開示している。しかし、Fardadらによって開示されている最大屈折率は、約1.50にすぎなかった。さらに、該文献は、パターン化されたゾル−ゲル物質を得るための酸化ケイ素以外の金属酸化物、例えば、Ti−O結合およびZr−O結合を使用する方法を記載している。
【0008】
Matsumotoらの特開2005−290312号公報は、ビス置換ジアルコキシシランのフェニル誘導体を記載している。しかし、Matsumotoらによって記載されている組成物は、光導波路に関係していない。さらに、Matsumotoらは、ビス置換ジアルコキシシランの合成を記載していない。Oshitaら、“Convenient synthesis of alkoxyhalosilanes from hydrosilanes”、J.Organometallic Chem.689(2004)3258は、PdClを使用するフェニルジアルコキシシランの調製を記載している。しかし、Oshitaらによって記載されている触媒は、特定の置換パターンを有する芳香族化合物の場合にのみ作用し、オルト置換を有するアリールシランにおいて転位を生じない。Coreyら、Organometallic Chem.304(1986)93−105は、クロロ(トリス−トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を介する、シランへのアルコールのロジウム触媒脱水素カップリングを開示している。しかし、Coreyらは、得られる生成物がSi−H結合を有する、メタノールおよびエタノールを使用する制御付加を開示していない。制御付加下に行なわれた唯一の化学作用はt−ブチルアルコールを用いてなされ、これは、ケイ素中心を含む化学作用への、より大きいt−ブチル基の強化立体阻害により、より厳しい条件に耐えうるより安定した構造を生じる。この強化立体阻害は、さらなる転位においてSi−Hの反応性を有意に減少させ、おそらく、使用しうる触媒の選択に影響を与える。
【0009】
Koujiらの欧州特許出願公開第0277023号は、HPtClを使用する、アリルメタクリレートのトリアルコキシシランへのヒドロシリル化を記載している。Eilenstineらの国際公開第2005/103062号は、ロジウム触媒を使用して、トリアルコキシシランの末端オレフィンへのヒドロシリル化の方法を開示しているが、それは存在する官能基に適切でない高温で行なわれている。しかし、低い光損失と共に高い屈折率値を有する改善されたゾル−ゲル組成物およびその製造法が現在も必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
ゾル−ゲル化学は、特定の要求に応じて順応できる比較的簡単な化学に関係しているという点で、変調器用途にとって特に関心が持たれるものである。ゾル−ゲルは、触媒量の酸を用いて有機溶媒中でアルコキシシランを撹拌することによって、室温で製造される。得られるシラノールは、スピンキャストすることができ、真空下に中温で硬化させて、高品質光学フィルムを得ることができる。組成物を前記の方法で製造して、物質を特定の要求に合わせることができる。ゾル−ゲルは、感光性架橋性官能基、例えば、メタクリレート、アクリレート、アリルまたはエポキシ基を含有するように有機的に改質されたシロキシ化合物の導入によって、光パターン化可能にすることができる。
【0011】
導波路物質を製造するのに使用できる多官能性モノマー含有混合物は、必要とされる製造工程の数を減らせるので極めて望ましい。例えば、多官能性モノマー成分から重合する組成物は、多段処理工程を必要とせずに、単一容器で製造できる。そのようなモノマー成分は、多機能性を与えることができる。例えば、モノマーは、光パターン化可能基(例えば、架橋性基)、およびその物質の屈折率を高める基を含有しうる。さらに、モノマーは、製造を容易にするためにゾル−ゲル重合を可能にする基も有しうる。
【0012】
そのようなモノマーの合成は、導波路として有用な物質から所望される官能基の組合せを有する分子を合成する際に存在する障害により、困難である。このようなタイプの基のそれぞれを有する物質を合成することは、困難かつ特殊な合成上の課題を提起する。例えば、ゾル−ゲル重合を可能にしうるトリアルコキシシリル基は、光パターン化可能基に配置するのが困難であり、なぜなら、この合成を行なうために必要な塩基性条件が、光パーン化可能基のアニオン重合を生じうるからである。
【0013】
または、光パターン化可能基をトリアルコキシシリル含有芳香族化合物に組み込むことも困難であり、なぜなら、カップリングを生じるために、官能基、例えばアルコールが必要とされるからである。しかし、このようなタイプの官能基が実際に存在する場合、それらは、そもそもトリアルコキシシリル基の付加を阻害する傾向がある。従って、本明細書に開示されている実施形態は、ジアルコキシシランの非対称ビス置換によって、光パターン化可能基および芳香族官能基の両方を含有する多官能性モノマーを調製する方法である。分子上のアルコキシシラン基は、それを、ゾル−ゲル重合に付すことを可能にする。
【0014】
1つの実施形態は、式(I)のモノマーを含有するゾル−ゲル前駆体を提供する:
【化1】

[式中、
1aは、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1つを含有する光架橋性基であり;
各Rは、独立に、低級アルキル基または低級アルコキシアルキル基であるように選択され;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される]。
該モノマーを使用して、ゾル−ゲル組成物を形成することができ、該組成物をさらに処理して、高分子物質を形成することができる。ゾル−ゲル前駆体モノマーおよび光学デバイスを製造する方法も本明細書に記載される。
【0015】
本明細書に記載される多官能性モノマーの実施形態は、アルコキシシラン官能基の存在によって、ゾル−ゲル化学作用に関与することができる。このアルコキシシラン官能基は、酸水溶液への暴露時に加水分解し、シラノール(例えば、ゾル)を生じる。次に、ゾルをスピンキャストし、乾燥させて、ゲルにすることができる。次に、形成されたゲルを当業者によって選択される条件に依存して処理して、エアロゲルまたはキセロゲルにすることができる。そのような処理は、周知であり、かつ/または本開示によって導かれる日常実験によって決定してもよい。いったん乾燥すれば、ゾルは、変調器/多層デバイスにおける他の層の製造に使用される種々の一般的処理溶媒に不溶性の、優れたフィルムを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】PhAIO、NaAIOおよびPyrAIOの、重ね合わせ吸収スペクトルを示すプロットである。
【図2】、PhAIO、NaAIOおよびPyrAIOの、重ね合わせ正規化蛍光スペクトルを示すプロットである。
【図3】温度の関数としてのPhAIO、NaAIOおよびPyrAIO原液の熱分解を測定する、重ね合わせTGAトレースを示すプロットである。
【図4】ゾル−ゲル反応の前後の、NaAIOのTGAトレースを比較するプロットである。
【図5】ゾル−ゲル反応の前後の、PyrAIOのTGAトレースを比較するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1つの実施形態は、前記の式(I)のモノマーを含有するゾル−ゲル前駆体を提供する。1つの実施形態において、R1aは芳香族基である。R1aにおける芳香族基は、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択できる。
【0018】
1つの実施形態において、芳香族基は、1個以上の置換基で「任意に置換」されていてよい。例えば、芳香族基は、完全非置換、置換基での部分置換または完全置換であってよい。置換されている場合、各置換基(1個以上)は、独立に、ハロゲン原子または重水素原子から選択される。可能な置換基の非限定的な例は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素および重水素を包含する。1つの実施形態において、芳香族基は、過フッ素化または過塩素化することができる。ゾル−ゲル組成物中の各芳香族基上の置換の数は、独立に選択することができる。例えば、フェニル環は、1、2、3、4または5個の置換基で置換することができ、ナフチル環は、1、2、3、4、5、6または7個の置換基で置換することができる。
【0019】
1つの実施形態において、Rは光架橋性基である。光架橋性基は、光での照射時に架橋する種々の基を含有しうる。好ましくは、光架橋性基は、二重結合を含有する。1つの実施形態において、光架橋性基は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基を含有する。モノマーは重合させることができ、次に、架橋性基を架橋させることができる。1つの実施形態において、光、例えば紫外線での照射時に、光架橋性基が反応して、ポリマー内の種々の分子鎖を相互に結合させる共有結合を形成する。紫外線照射は、例えば、適切なマスキングおよびパターン化工程後に行なうことができる。
【0020】
ゾル−ゲルまたはポリマーが架橋する場合、架橋度は変化させることができ、当業者によって調節することができる。架橋度を制御するために使用される要素は、ゾル−ゲル組成物およびポリマーに分散している架橋性単位の数、架橋性単位間の距離、ゾル−ゲル組成物またはポリマーが照射に付される時間、および照射の強さを包含する。1つの実施形態において、光架橋性基は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基およびエポキシ基の少なくとも1つを含有する。
【0021】
式(I)における各Rは、独立に、低級アルキル基または低級アルコキシアルキル基であるように選択される。本明細書に記載されている「低級アルキル基」は、分岐または非分岐C〜Cアルキル基を意味する。好適な低級アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルおよびペンチル(および全てのそれらの異性体)を包含する。1つの実施形態において、式(I)における各R基は、独立に、メチルまたはエチルである。本明細書において定義される「低級アルコキシアルキル基」は、分岐または非分岐C〜Cアルコキシ基に続くC〜Cアルキル基を意味する。低級アルコキシアルキル基のいくつかの例は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチルおよびエトキシエチルである。1つの実施形態において、各Rは、独立に、メチル、エチル、プロピルおよびメトキシメチルから成る群から選択される。
【0022】
式(I)におけるmは、0〜約10の整数であるように選択される。1つの実施形態において、mは0〜約4の整数である。1つの実施形態において、mは0〜約2の整数である。1つの実施形態において、mは0である。1つの実施形態において、式(I)におけるnは、2〜約10の整数であるように選択される。1つの実施形態において、式(I)におけるnは、約3〜約7の整数であるように選択される。1つの実施形態において、式(I)におけるnは、3〜約5の整数であるように選択される。mの値は、Si原子と、任意に置換される芳香族基との間の分子間距離に影響し、nの値は、Si原子と、光架橋性基との間の分子間距離に影響する。
【0023】
好ましくは、式(I)におけるnおよびRは、Si原子からの好適な間隔を有する光架橋性基を与えるように選択される。1つの実施形態において、式(I)におけるnおよびRは、式(I)の−(CH−R部分がプロピルメタクリレート基、プロピルアクリレート基、アリル基またはエポキシプロピル基であるように選択される。1つの実施形態において、式(I)のゾル−ゲル前駆体は、γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシランおよびγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシランから成る群から選択される。
【0024】
他の実施形態は、芳香族基および光パターン化可能基を含有するゾル−ゲルシラン前駆体モノマーを製造する方法を提供する。1つの実施形態は、式(II)のゾル−ゲル前駆体を製造する方法を提供する:
【化2】

[式中、
は、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1つを含有する光架橋性基であり;
各Rは、独立に、低級アルキル基または低級アルコキシアルキル基であるように選択され;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される]。
【0025】
1つの実施形態において、該方法は、下記の工程を含む:
式(III)の構造を有する化合物を含有する溶液を提供する工程:
【化3】

[式中、Rおよびmは、式(II)において先に定義した通りである];
遷移金属触媒と該溶液とを混合する工程;
式R−OH[ここで、Rは式(II)において先に定義した通りである]の化合物と、該溶液とを混合する工程;および、
式R−(CHn−2−CH=CH[ここで、Rおよびnは、式(II)において先に定義した通りである]の化合物と、該溶液とを混合する工程。
種々の成分の混合は、任意の順序で行なうことができる。種々の成分、例えば、式R−OHの化合物、式(III)の構造を有する化合物、および式R−(CHn−2−CH=CHの化合物を、それぞれ、他の各成分との混合の前に、後に、または同時に、該溶液と混合することができる。
【0026】
シラン前駆体モノマーの形成に使用される遷移金属触媒は、単一遷移金属触媒を含むことができる。好ましくは、触媒は、反応において、2つの異なる役割を果たすことができる。単一遷移金属触媒が果たす1つの役割は、式R−OHの化合物のオルガノシランへの脱水素カップリングを触媒することである。単一遷移金属触媒が果たすもう1つの役割は、オルガノジアルコキシシランに、式R−(CHn−2−CH=CHの化合物の末端オレフィンをカップリングするのを触媒することである。1つの実施形態において、単一遷移金属触媒は、ロジウム系触媒を含む。例えば、単一遷移金属触媒は、ロジウム(I)系触媒を含むことができる。そのような触媒は、Rh(I)を含む。1つの実施形態において、単一遷移金属触媒は、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)を含む。
【0027】
本明細書に記載されている多官能性前駆体モノマー化合物は、ゾル−ゲル処理に使用することができ、重合させて、光学デバイスを製造することができる。1つの実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、光学デバイスにおいて導波路として有用なフィルム層に形成することができる。例えば、1つの実施形態において、ポリマーを形成するために、ゾル−ゲル組成物を基板にスピンコーティングし、乾燥させることができる。1つの実施形態は、式(IV)の繰り返し単位を含有するポリマーを提供する:
【化4】

[式中、R1aは、任意に置換される芳香族基である]。式(IV)の該芳香族基R1aは、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択できる。式(IV)におけるR、mおよびnは、それぞれ、前記の式(I)で定義した通りである。
【0028】
本明細書に記載されているゲル−ゾル組成物から形成されるポリマーの実施形態は、高い屈折率および低い光損失を有する。好ましくは、ゾル−ゲル前駆体は、通信用途に使用される1300〜1600nmの範囲において1.50より高い屈折率および低い光損失を有する導波路および光集積回路に使用するために、光パターン化可能である。
【0029】
1つの実施形態において、ポリマーまたはゾル−ゲルは、1550nmで測定した場合に、約1.50より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.55より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.60より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.61より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.62より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.63より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.64より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.65より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、1550nmで測定した場合に、約1.657より高い屈折率を有する。
【0030】
屈折率はより低い波長において測定することもできる。1つの実施形態において、ポリマーまたはゾル−ゲルは、633nmで測定した場合に、約1.50より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.55より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.60より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.62より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.64より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.66より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.67より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、約1.68より高い屈折率を有する。1つの実施形態において、ポリマーは、633nmで測定した場合に、1.69より高い屈折率を有する。
【0031】
本明細書に記載されているポリマーは、分子組成の性質に部分的に起因して、高い屈折率を達成する。例えば、ダイヤモンド、ベンゼンおよびヘキサンの屈折率は、それぞれ、2.41、1.501および1.375である。そのようなデータは、C−H結合の増加に伴って屈折率が比例的に減少すること、および炭素原子に対してより多い数の水素原子を有する試料は比較的低い屈折率を有することを示す。さらに、二酸化ケイ素は、1.45の屈折率を有する。屈折率は、通信波長における最適性能のために、望ましくは1.45より高いので、二酸化ケイ素の比較的低い重量分率を有する組成物を提供することが好ましい。本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物およびポリマーは、約1.50より高い屈折率を有する物質を提供するために、より少ないC−H結合、およびより少ない数のSi−O結合を有する傾向がある。
【0032】
ゾル−ゲル組成物へのメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの組込みは、組成物を光パターン化可能にするが、その添加は、C−HおよびC−O結合の存在の増加により、吸収損失を増加させる。さらに、トリメトキシシランは、付加的Si−O結合も含有する。本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物およびポリマーは、下記によって、高い屈折率を達成する好ましい実施形態に使用しうる:(1)芳香族系を増加させることによるC−H結合の最少化、および(2)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの減少または除去によるSi−O結合の最少化。ゾル−ゲル組成物およびポリマー組成物におけるメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの使用は、任意である。1つの実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用せずに製造される。メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの除去は、ゾル−ゲル物質の作製に必要な成分がより少なくて済むので、製造工程の数を減少させるという付加的利点を有する。
【0033】
本明細書に記載されている物質は、その後重合されることとなるモノマーに光架橋性基を含ませることにより、光パターン化可能にし得る。光架橋性基の一例は、メタクリレート官能基である。メタクリレート基は、光、例えば紫外線への暴露時に光重合するので、光パターン化可能である。芳香族基も結合している(直接的または(任意ヘテロ)アルキレンリンカーを介して)ケイ素原子に、光パターン化可能官能基を直接的に結合させることによって(または、(任意ヘテロ)アルキレンリンカーを介して)、光パターン化のためにメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランをゾル−ゲル組成物に添加することが任意となる。
【0034】
本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物およびポリマー組成物は、ゾル−ゲル前駆体から得られてもよい。ゾル−ゲル前駆体は、アルコキシシラン官能基の存在により、ゾル−ゲル化学作用に関与することができる。アルコキシシラン基は、酸水溶液、例えばHCl水溶液への暴露時に加水分解し、シラノール(ゾル)を生じる。次に、ゾルをスピンキャストし、乾燥させて、ゲルにすることができる。
【0035】
ゾル−ゲル組成物およびポリマーをさらに架橋させることができる。1つの実施形態において、式(IV)におけるRは、該光架橋性基を光架橋させることによって形成される基である。光架橋は、物質を紫外線に暴露することによって行なうことができる。
【0036】
ゲルは、処理条件の適切な選択により、高分子物質、例えばエアロゲルまたはキセロゲルへと処理することができる。当業者は、本明細書の開示に導かれて、該物質が優れたフィルム(該フィルムは、いったん乾燥すると、変調器または多層デバイスにおける他の層の製造に使用される種々の一般的処理溶媒に不溶性であり得る)を形成しうることを理解する。
【0037】
本明細書に記載されているポリマーの実施形態は、導波路を包含する種々のデバイスにおける使用のために優れた光学特性を有する。図1は、約200nm〜約400nmの波長の関数としての、種々のポリマーのモル吸光率を示すプロットである。γ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(PhAIO)、γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(NaAIO)、およびγ―(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(PyrAIO)から成るポリマーのスペクトルを測定した。図1に示すように、より長い波長吸収へのシフトが、ポリマーに結合した芳香族基の大きさの増加に伴って示された。当業者は、より大きい芳香族基を、ポリマーへの組み込み用に選択することによって、吸収が起こる光の波長を調節することができる。
【0038】
図2は、図1において測定したのと同じ物質の、正規化蛍光スペクトルを示すプロットである。ポリマーからの発光も、ポリマーに結合した芳香族基の大きさの増加に伴って、より長い波長へのシフトを示す。ポリマーの発光の波長をシフトさせることができるので、種々のデバイスに適用できる。
【0039】
原液におけるPhAIO、NaAIOおよびPyrAIOモノマーのそれぞれの安定性を、増加温度に対する重量損失の関数として測定した。図3は、芳香族環の大きさの増加に伴って、分解速度が減少することを示す熱重量分析(TGA)のプロットである。例えば、ゾル−ゲル反応前の原液中のPhAIOモノマーの分解温度は、約169℃であった。ゾル−ゲル反応前の原液中のNaAIOモノマーの分解温度は、約245℃であった。最後に、ゾル−ゲル反応前の原液中のPyrAIOモノマーの分解温度は、約294℃であった。
【0040】
モノマーがゾル−ゲル反応を受けて高分子物質を形成した後に、分子の安定性が増す。NaAIOおよびPyrAIOのそれぞれを、ゾル−ゲル中で重合させて、関連モノマーに対するそれらの安定性を測定した。図4は、ポリマー(NaAIO−SG)が、約412℃の温度に達するまで、分解し始めないことを示すプロットである。さらに、重量損失の速度は、温度がさらに高くなると共に安定化し始める。例えば、NaAIO−SGポリマーの重量損失の速度は、約600℃で有意に減少し始める。重量は、約800℃以上の温度で安定化する。図5は、ポリマーPyrAIO−SGでの同様の結果を示すプロットであり、これも同様に高い温度での安定性を示す。より高温で安定性を維持するポリマーの能力は、光学デバイスおよび導波路用途において、それらを特に有用なものにする。
【0041】
1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、約600℃以上において熱的に安定である。1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、約650℃以上において熱的に安定である。1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、約700℃以上において熱的に安定である。1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、約750℃以上において熱的に安定である。1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、約800℃以上において熱的に安定である。
【0042】
ゾル−ゲル組成物も本明細書に記載されている。1つの実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、式(V)の化合物を含有し、
【化5】

式中、Rは、式(II)に関して先に記載した任意に置換される芳香族基であり、Rは、式(I)および(II)に関して先に記載した光架橋性基である。式(V)におけるmおよびnはそれぞれ、前記の式(I)および(II)で定義した通りである。
【0043】
1つの実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、溶媒を含有する。1つの実施形態において、溶媒は、組成物の重量に基づいて少なくとも約10重量%の量で存在する。1つの実施形態において、溶媒は、少なくとも20重量%の量で存在する。1つの実施形態において、溶媒は、少なくとも30重量%の量で存在する。1つの実施形態において、溶媒は、少なくとも405重量%の量で存在する。1つの実施形態において、溶媒は、少なくとも50重量%の量で存在する。種々の溶媒を使用することができる。1つの実施形態において、溶媒はテトラヒドロフランを含む。
【0044】
本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物は、種々の方法によって製造することができる。例えば、ゾル−ゲル組成物は、単一のタイプの有機的改質ビ置換シラン前駆体を使用して、製造することができる。さらに、他の有機的改質シラン前駆体も使用することができる。当業者は、種々の他のタイプのシラン前駆体を、本明細書に記載されているシラン前駆体と共に使用して、コポリマー物質を形成しうることを理解する。
【0045】
本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物から製造されたポリマーを、光学デバイスに使用することができる。1つの実施形態において、光学デバイスは、式(VI)の繰り返し単位を有するポリマーを含有する:
【化6】

[式中、R、R、mおよびnは、式(II)で先に定義した通りである]。1つの実施形態において、光学デバイスは導波路の形態である。
【0046】
1つの実施形態において、光学デバイスは、フィルムに形成されるポリマーを含有する。光学デバイスは、湿式法、好ましくは比較的簡単かつ低コストで行なうことができる湿式法を使用して、製造することができる。例えば、スピン−コーティング、ブレードキャスティングまたはドロップキャスティング加工法を使用して、ポリマーを含有する光学デバイスを製造することができる。受動デバイス〜能動デバイスに及ぶ多くのタイプの光学デバイス(導波路および電子光学デバイスを包含する)を製造することができる。有機発光ダイオード、太陽電池および薄膜トランジスターのような、有機電子工学におけるデバイス用のシステム構成要素も製造することができる。1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、種々の方法(ホットエンボシング(ナノ−およびマイクロ−プリンティング)、インクジェットプリンティング、および多光子誘導重合を包含する)を使用して、1、2および3次元フォトニック結晶の製造に使用することができる。
【0047】
1つの実施形態において、本明細書に記載されているポリマーは、ホモポリマーとして式(IV)の繰り返し単位を含有する。ホモポリマーは、その製造工程が単一モノマーを使用して効率的に行なわれるので、有利になりうる。芳香族基および光パターン化可能基の両方を含有するように高分子物質を形成することができ、各基が単一モノマーに結合しているので、2個以上の容器を必要とする付加的処理工程を避けることができる。式(IV)の繰り返し単位から成るホモポリマーは、例えば、式(I)のモノマーを本明細書に記載の方法によって重合させ、かつ当分野において利用可能な知識を用いることによって、製造することができる。
【0048】
他の実施形態において、式(IV)の繰り返し単位を有するポリマーは、式(IV)以外の少なくとも1つの繰り返し単位を含有する。例えば、式(IV)の繰り返し単位を有するポリマーは、コポリマーであり得る。式(I)のモノマーと他のシランモノマーとの共重合は、導波路用途用のゾル−ゲルおよびポリマー組成物の開発に有用となりうる。例えば、他のタイプの官能基、例えば、他の芳香族基、ハロゲン化芳香族基、過ハロゲン化芳香族基、および他の光パターン化可能基を、与えることができる。重合に有用なモノマーおよびコポリマーへの組み込みに有用な繰り返し単位を、米国特許出願第12/057828号(出願日:2008年3月28日、発明の名称:“High Refractive Index Sol−gel Composition and Method of Making Photo−patterned Structures on a Substrate”)に見出すことができ、その全内容は、特に、本明細書に記載されているシランモノマーと共重合できる他のシランモノマーを記述することを目的として、ならびにそれに記載されているゾル−ゲルおよび重合法に関して、参照により本明細書に組み入れられる。
【0049】
1つの実施形態において、式(I)のモノマーゾル−ゲル前駆体が重合反応を受けて、式(IV)の繰り返し単位を含有するポリマーを形成することができる。1つの実施形態において、式(I)のモノマーゾル−ゲル前駆体を、下記の式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)のモノマーゾル−ゲル前駆体の1つ以上と共重合させることができ、
【化7】

式(VII)におけるRは、少なくとも1個のハロゲンまたは重水素原子で置換された芳香族基であり;式(VIII)におけるRは、光架橋性基であり;式(IX)および(X)におけるRおよびRは、それぞれ独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニル、キノリニル、テトラセニル、ペリレニルおよびペンタセニルから成る群から選択される芳香族基であるように選択され;式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)における各Rは、独立に、低級アルキル基であるように選択され;式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)における各mは、独立に、0〜約10の整数である。1つの実施形態において、式(VII)、(IX)および/または(X)における各mは、独立に、0〜約4の整数である。1つの実施形態において、式(VII)、(IX)および/または(X)における各mは、独立に、0〜約2の整数である。1つの実施形態において、式(VIII)におけるnは、2〜約8の整数である。1つの実施形態において、式(VIII)におけるnは、3〜約7の整数である。
【0050】
を含有する式(VII)のシロキサンモノマーは、少なくとも1個のハロゲンまたは重水素原子で置換された芳香族基を有するシロキサンモノマーの例である。種々のタイプの芳香族基を使用しうる。例えば、芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニル、キノリニル、テトラセニル、ペリレニルまたはペンタセニルであることができる。芳香族基は置換することができ、従って、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、重水素またはそれらの組合せを含有することができる。
【0051】
1つの実施形態において、Rの芳香族基は、フッ素または塩素で置換されている。1つの実施形態において、Rは、フッ素化芳香族基、過フッ素化芳香族基、臭素化芳香族基または過臭素化芳香族基である。1つの実施形態において、Rは、過フッ素化芳香族基または臭素化芳香族基である。例えば、Rは、ペンタフルオロフェニル基、ビスペンタフルオロフェニル基またはブロモフェニル基であることができる。芳香族基におけるハロゲンまたは重水素置換度は、変化させることができる。芳香族基上の1個の水素原子〜全部の水素原子の間の任意の数を、ハロゲンまたは重水素で置換することができる。例えば、芳香族基がフェニル基を含有する場合、フェニル基を1、2、3、4または5個のハロゲンおよび/または重水素原子で置換することができる。1つの実施形態において、芳香族基は臭素で置換されている。1つの実施形態において、ハロゲン化芳香族基は、ブロモアントラセニルを含む。
【0052】
を含有する式(VIII)のシロキサンモノマーは、光架橋性基を含有するシロキサンモノマーである。1つの実施形態において、光架橋性基は、式(I)で先に定義したのと同じ基から選択される。
【0053】
式(IX)および(X)におけるシロキサンモノマーRおよびRは、得られるゾル−ゲル組成物およびポリマーに高い屈折率を付与することができる。RおよびRは、それぞれ独立に、任意の芳香族基であるように選択できる。好適な芳香族基の非限定的な例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニル、キノリニル、テトラセニル、ペリレニルまたはペンタセニルを包含する。1つの実施形態において、芳香族基はアントラセニルである。芳香族基は、例えば、芳香族基の任意の好適な炭素原子によって、シロキサンモノマーに結合させることができる。例えば、芳香族基は、任意の水素原子の置き換えによって、直接的に、またはアルキルリンカーを介して、シロキサンモノマーに結合させることができる。
【0054】
コポリマーにおいて、式(IV)の繰り返し単位は、重合反応における各モノマーの量を変化させることによって、任意の量でゾル−ゲル組成物および/またはポリマーに存在しうる。例えば、1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約1mol%〜約99mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約10mol%〜約95mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約20mol%〜約80mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約30mol%〜約70mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約40mol%〜約60mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約30mol%〜約50mol%である。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位のモル分率は、約50mol%〜約70mol%である。本明細書に記載されているmol%値は、当業者に理解されるように、コポリマー中の繰り返し単位の合計モルに基づく。
【0055】
式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)の1つ以上のモノマーを式(I)のモノマーの重合反応に添加する場合、得られるゾル−ゲルまたはポリマーの各繰り返し単位のmol%は、添加されるモノマーの量を調節することによって変化させることもできる。
【0056】
1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位を含有するポリマー、および/または式(V)の繰り返し単位を含有するゾル−ゲル組成物は、さらに、(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上も含有する:
【化8】

【化9】

[式(XI)、(XII)、(XIII)および(XIV)における、R、R、各R、R、各R、ならびに各mおよびnは、独立に選択され、それぞれ、式(VII)、(VIII)、(IX)および(X)に関して先に定義した通りである]。
【0057】
ゾル−ゲル組成物またはポリマー中の、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の量は、独立に選択できる。例えば、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約0.1mol%〜約90mol%の量で存在できる。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約0.5mol%〜約70mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約1mol%〜約50mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約2mol%〜約40mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約5mol%〜約30mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約10mol%〜約25mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約25mol%〜約50mol%の量で存在する。1つの実施形態において、式(XI)、(XII)、(XIII)および/または(XIV)の繰り返し単位の1つ以上は、ゾル−ゲル組成物またはポリマー中に、約50mol%〜約75mol%の量で存在する。
【0058】
1つの実施形態において、光開始剤が、本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物またはポリマーに添加される。任意の好適な光開始剤を使用することができる。好適な光開始剤は、紫外線での活性化時に組成物の硬化を促進する。光開始剤の非限定的な例は、IRGACURE−184(登録商標)(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)またはIRGACURE−369(登録商標)(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1)である(両方ともCiba Specialty Chemicalsから入手可能)。光開始剤の量は変化しうる。1つの実施形態において、光開始剤は、ゾル−ゲル組成物の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する。1つの実施形態において、光開始剤は、ゾル−ゲル組成物の約0.2重量%〜約8重量%の量で存在する。1つの実施形態において、光開始剤は、ゾル−ゲル組成物の約0.5重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0059】
ゾル−ゲル組成物およびポリマーは、本明細書に記載されている工程および方法を使用するか、またはそのような方法の適応によって、製造することができる。1つの実施形態において、式(IV)の繰り返し単位を含有するホモポリマーであるポリマー、または式(V)の繰り返し単位を含有するホモポリマーであるゾル−ゲル組成物は、式(I)のゾル−ゲル前駆体と、酸水溶液とを混合することによって調製される。その溶液を、モノマーの−OR基が少なくとも部分的に加水分解されるまで、撹拌することができる。次に、その溶液をフィルムにキャストすることができ、次に、そのフィルムを、必要に応じて光開始剤の存在下に熱および/または紫外−可視光線への暴露によって硬化、例えば重合させることができる。
【0060】
1つの実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、2つ以上の有機的改質シラン前駆体と酸水溶液とを混合する初期工程を含む方法によって調製され、該シラン前駆体の1つは、式(I)のモノマーであり、少なくとも1つの他のシラン前駆体は、式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)のモノマーから選択される。本明細書に記載されている各モノマーを、ゾル−ゲル前駆体として使用することができる。
【0061】
ゾル−ゲルを製造する初期方法工程は、2つの有機的改質シラン前駆体ではなく、単一の有機的改質シラン前駆体と酸水溶液とを混合することを含みうると考えられる。例えば、式(IV)のモノマーであるシラン前駆体だけを、酸水溶液と混合することができる。その後、式(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)の任意の1つ以上のモノマーを添加することができ、ゾル−ゲル重合を開始させることができる。
【0062】
好ましくは、モノマー混合物を、モノマーの−OR基が少なくとも部分的に加水分解されるまで撹拌する。次に、溶液をかき混ぜ(例えば、撹拌による)、その間に、縮合および熟成を促進するために溶媒を除去することができる。部分的に加水分解され、次に、溶液中で撹拌された任意モノマーが、反応に関与することができる。1つの実施形態において、溶媒が除去される間またはその後に、加水分解をさらに完了させるために混合しながら追加の溶媒を添加しうる。この追加の溶媒を添加した後に、溶液を再び熟成させ、追加の溶媒を除去して粘稠液体を形成する。溶媒の除去後または除去中に、光開始剤を溶液に添加しうる。1つの実施形態において、いくつかの組成物において溶媒を完全に除去して、固形物を得ることもできる。この固形物は適切な溶媒に簡単に溶解させることができ、フィルムをキャストするのにすぐ使用できる。1つの実施形態において、フィルムをキャストする前に、光開始剤を溶液に添加できる。
【0063】
1つの実施形態において、式(VII)のモノマーは、下記から成る群から選択される:ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ブロモアントラセニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、ブロモアントラセニルトリエトキシシラン、およびブロモフェニルトリメトキシシラン。1つの実施形態において、式(VIII)のモノマーは、下記から成る群から選択される:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン。1つの実施形態において、式(VIII)のモノマーは、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。1つの実施形態において、式(IX)のモノマーは、下記から成る群から選択される:アントラセニルトリメトキシシラン、フェナントレニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ピレニルトリメトキシシラン、およびペリレニルトリエトキシシラン。1つの実施形態において、式(IX)のモノマーは、ペリレニル3,9−ビス(トリエトキシシラン)を含む。1つの実施形態において、式(IX)のモノマーは、下記から選択される:1−トリメトキシシリルアントラセン、2−トリメトキシシリルアントラセン、9−トリメトキシシリルアントラセン、およびそれらの組合せ。1つの実施形態において、式(IX)のモノマーは、9−トリメトキシシリルアントラセンである。
【0064】
式(VII)、(VIII)および(IX)のモノマーは、ケイ素原子に結合した3個のアルコキシ基を有し、それぞれ、R、RおよびR基のケイ素原子上の単一モノ置換を有する化合物である。しかし、ジ−およびトリ−置換アルコキシシラン基も使用できると考えられる。例えば、式(X)のモノマーは、式(IX)のモノマーのジ−置換変型である。式(X)のモノマーの非限定的な例は、ビス(ピレニル)ジメトキシシランおよびビス(ピレニル)ジエトキシシランを包含する。ハロゲン化芳香族基でジ置換されたアルコキシシランモノマーが既知である。そのような化合物の非限定的な例は、ビスペンタフルオロフェニルジメトキシシランおよびビスペンタフルオロフェニルジエトキシシランを包含する。
【0065】
本明細書に記載されている各モノマーは、種々の異性体型で存在しうる。特に、置換であれ非置換であれ、芳香族基を含有するモノマーは、芳香族基上の任意の数の炭素位置において直接的にまたはリンカーによってケイ素原子に結合した芳香族基を有しうる。特定の異性体の選択は、モノマーの合成のしやすさを包含するいくつかの要素に依存しうる。当業者は、本明細書の開示に導かれて、各異性体が本発明に使用可能として考えられることを理解する。
【0066】
本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物およびポリマーを使用して、基板上に光パターン化構造物を形成することができる。1つの実施形態において、基板上に光パターン化構造物を形成する方法が提供され、該方法は、基板の少なくとも一部にゾル−ゲルをコーティングしてフィルムを形成する初期工程を含み、該ゾル−ゲルは、前記の式(IV)の繰り返し単位を含有する。ゾル−ゲルフィルムが被覆された後、それを低温でソフトベークして溶媒を除去しうる。本明細書に使用される「ソフトベーク」という用語は、ゾル−ゲルフィルム中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させるための加熱操作を意味し、加熱条件は、ゾル−ゲルフィルムが堅くて曲がらなくなるまで硬化せず、軟性を維持するのに充分に低い温度および時間である。
【0067】
次に、ゾル−ゲルフィルムをマスクすることができる。マスクは、ゾル−ゲルフィルムを覆って配置され、好ましくは、パターンデザインを規定する少なくとも1つの開口部を有する。任意の好適なマスキング法およびマスキング材料を使用して、マスクを適用することができる。マスクは、ゾル−ゲルフィルムの被覆領域を、光による放射から保護する。非被覆領域、例えば、マスクの開口部に近接するゾル−ゲルの領域を、光に暴露し、放射によって不溶性にすることができる。
【0068】
マスクが配置され、パターンの所望アウトラインが形成された後に、ゾル−ゲルフィルムの非被覆領域の少なくとも一部を、マスクの少なくとも1つの開口部から紫外(UV)線に暴露して、フィルムの暴露部分を、フィルムの全厚さにおいて選択溶媒に不溶性にすることができる。次に、ゾル−ゲルフィルムを選択溶媒中で洗浄して、フィルムの非暴露部分を、例えば溶解によって、除去する。次に、ゾル−ゲルフィルムの溶解部分を除去することができ、それによって所望のゾル−ゲルフィルムパターンが残る。残っているゾル−ゲルフィルムパターンは、真空炉において高温でそのフィルムをハードベークすることによって硬化させることができる。ハードベークは、ソフトベーク工程から残留するどのような溶媒もさらに除去することができる。本明細書において使用される「ハードベーク」という用語は、ゾル−ゲル物質のさらなる重合および基板へのゾル−ゲル物質の密着を達成するのに充分な時間および温度での加熱操作を意味する。
【0069】
種々のタイプの基板を、それの上に光パターン化構造物を形成するために使用しうる。1つの実施形態において、基板は、シリコンウエハを含む。ゾル−ゲル組成物を基板上に形成する前に、シリコンウエハに緩衝層を与えることができる。1つの実施形態において、シリコンウエハはSiO緩衝層を含む。緩衝層は、任意の所望厚さに、基板上に熱成長させうる。例えば、緩衝層は、約3μm〜約20μmの厚さを有しうる。1つの実施形態において、緩衝層は、約4μm〜約10μmの厚さを有しうる。1つの実施形態において、緩衝層は、約10μm〜約15μmの厚さを有しうる。1つの実施形態において、緩衝層は、約16μm〜約20μmの厚さを有しうる。
【0070】
緩衝層に加えて、付加的層をシリコンウエハの最上部に付与しうる。1つの実施形態において、シリコンウエハは、SiO緩衝層の上方の(例えば、その上の)金属層をさらに含む。有用な金属層は、Au、Ag、Cu、Ti、Al、Cr、Moならびにそれらの組合せおよび合金を包含するが、それらに限定されない。ゾル−ゲル組成物を、シリコンウエハ、緩衝層、または緩衝層の最上部の金属層の上方に付着させることができる。
【0071】
基板は、ガラスおよび/または石英を含むこともできる。ガラスも、可変厚さの付加的緩衝層および/または金属層を有しうる。1つの実施形態において、ガラスは、金属層をさらに含む。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、Ti、Al、CrまたはMoから選択される。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、モリブデンである。
【0072】
ガラス上に付着される金属層の厚さは、変化しうる。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約50nm〜約700nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約200nm〜約500nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約50nm〜約150nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約150nm〜約250nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約250nm〜約350nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約350nm〜約450nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約450nm〜約550nmの厚さを有する。1つの実施形態において、ガラス上に付着される金属層は、約550nm〜約700nmの厚さを有する。
【0073】
1つの実施形態は、基板上に光パターン化構造物を形成する方法である。基板上に光パターン化構造物を形成する製造工程は、下記の工程を含みうる:
(a)基板の少なくとも一部にゾル−ゲルをコーティングして、フィルムを形成する工程であって、該ゾルゲルが式(I)の繰り返し単位を含有する工程;
(b)フィルムをソフトベークして、ゾル−ゲルフィルムを形成する工程;
(c)ゾル−ゲルフィルムを覆ってマスクを配置する工程であって、該マスクが、パターンデザインを規定する少なくとも1つの開口部を含む工程;
(d)ゾル−ゲルフィルムの少なくとも一部を、マスクの少なくとも1つの開口部を通じて紫外線に暴露して、フィルムの非暴露部分およびフィルムの暴露部分を形成する工程であって、フィルムの暴露部分がフィルムの全厚さにおいて選択溶媒に不溶性である工程;
(e)フィルムの非暴露部分を、選択溶媒で洗浄することによって除去する工程;および、
(f)減圧下にフィルムをハードベークする工程。
【0074】
ゾル−ゲル前駆体モノマーの合成
下記の合成法を、ゾル−ゲル前駆体の製造に使用することができる。全てのNMRデータは、JEOL Eclipse+ 400 FT NMRスペクトロメーターで得た。MSは、エレクトロスプレーイオン化陽イオンモードを使用して、Thermo Finnigan LCQdecaマススペクトロメーターで行なった。
合成A:γ−(メタクリルオキシ)プロピルフェニルジエトキシシラン(B)
【化10】

【0075】
約8.74g(80.9mmol)の量のフェニルシランを量り取って反応フラスコに入れ、約210mLの乾燥脱気ベンゼンを、アルゴン下にカニューレで添加した。次に、アルゴンをその中に泡立たせることによって、溶液を約5分間さらに脱気した。次に、少量のベンゼン中の約14.2mg(0.1mo%)のPdCl2の懸濁液を添加すると、溶液が暗色になった。約7.44g(161mmol)の量の乾燥無水エタノールをシリンジで添加し、これによって激しい発泡が生じた。次に、反応を室温(約17℃)で一晩撹拌して行った。Ohshitaら、J.Organometallic Chem.,689(2004),3258−3264参照。ジエトキシフェニルシラン(A)の収量は約10.5g(66%)であった。
【0076】
約500mg(2.55mmol)の量のジエトキシフェニルシランを量り取って反応フラスコに入れた。分離フラスコに、約290mg(2.30mmol)のアリルメタクリレートを量り取り、約1mLの脱気トルエンを添加した。この溶液を、ジエトキシフェニルシランを含有する反応フラスコに移し、追加の1mLのトルエンでリンスした。この溶液を、それにアルゴンを泡立たせることによって5分間脱気し、次に、テトラヒドロフラン中のHPtClの5mg/mL溶液(約46μL)を添加した。Shiozawaらの欧州特許出願公開第0277023号を参照。反応を室温で一晩撹拌して行った。反応混合物を30℃で蒸発させ、次に、カラムクトマトプロットィー(シリカゲル上、2:1の塩化メチレン:ヘキサンを使用)によって精製した。全ての関連画分を蒸発させて、無色液体を得た。
【0077】
γ−(メタクリルオキシ)プロピルフェニルジエトキシシラン(B)の収量は約600mg(73%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CDCl):δ=7.61(m;2H),7.45−7.32(m;3H),6.07(s;1H),5.52(s;1H),4.10(t;2H),3.82(q;4H),1.92(s;3H),1.73(m;2H),1.25(t;6H),0.88(m;2H).MS:m/z 323(M).n25 1.4828.
合成B:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)
【化11】

【0078】
2−ブロモナフタレン(約8.4g、40.6mmol)のテトラヒドロフラン(約50mL)溶液をアルゴン下に−78℃に冷却して調製した。次に、n−ブチルリチウム(約42.2mmol)を滴下した。この溶液を−78℃で1.5時間撹拌し、次に、クロロトリエトキシシラン(約24g、122mmol)を、シリンジによって素早い一押しで添加した。この溶液を室温に自然に温め、1.5時間撹拌した。
【0079】
氷冷ジエチルエーテルおよびNaOH(約81.2mmol)を含有する水を入れた分液漏斗に、反応混合物を添加した。有機相を氷冷ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、次に、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトプロットィー(3:2のヘキサン:ジクロロメタンを使用)によってさらに精製して、無色油状物を得た。(2−ナフチル)トリエトキシシラン(C)の収量は約10.5g(89%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CCl):δ=8.19(s;1H),7.90(d;J=8.8Hz;1H),7.84(d;J=8.4Hz;2H),7.70(d;J=8.1Hz;1H),7.52(m;2H),3.87(q;6H),1.24(t;9H).
【0080】
ジエチルエーテル(約100mL)中の(2−ナフチル)トリエトキシシラン(約20.3g、70mmol)の溶液を、添加漏斗で、ジエチルエーテル(約100mL)中の氷冷LiAlH(約5.5g、145mmol)の懸濁液に添加した。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌した。固形物を濾過し、濾液を蒸発させて、白色固形物を得た。この固形物をジクロロメタンに取り、すぐにシリカゲルでプラグ濾過して、無機塩を除去した。白色固形物を得た。
【0081】
(2−ナフチル)シラン(D)の収量は約10.5g(95%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CCl):δ=8.13(s;1H),7.83(m;3H),7.63(dd;J=8.4Hz,J=1.1Hz;1H),7.52(m;2H),4.33(s;3H).Riedmillerら、Organometallics,17,4444−4453(1998)参照。
【0082】
ベンゼン(約134mL)中の(2−ナフチル)シラン(約7.57g、47.9mmol)および(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)(約134mg、1mol%)の脱気溶液に、無水エタノール(約4.41g、47.9mmol)をシリンジで添加した。1.25時間撹拌した後、ベンゼン(約5mL)中のアリルメタクリレート(約6.16g、48.9mmol)の溶液を、30分間にわたって滴下した。この添加の間に、反応フラスコを室温水浴に入れて、反応温度を穏やかな範囲に調節した。反応を室温で1.25時間撹拌して進めた。トルエンと共に充填されたシリカゲルを含有するカラムに、反応混合物を直接添加した。第一副生成物が溶離し終えた後に、ジクロロメタンを添加して、生成物を溶離した。生成物は薄黄色油状物であった。
【0083】
γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)の収量は約6.1g(36%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった(400MHz,CDCl):δ=8.15(s;1H),7.83(m;3H),7.67(d;J=8.1Hz;1H),7.50(m;2H),6.06(s;1H),5.51(s;1H),4.08(t;2H),3.87(q;4H),1.91(s;3H),1.75(m;2H),1.28(t;6H),0.96(m;2H).Murataら、Tetrahedron,63,4087−4094(2007)、およびShiozawaらの欧州特許出願公開第0277023号を参照。MS:m/z 373(M).n25 1.5324.
合成C:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)
【化12】

【0084】
反応に使用される全てのガラス器を、使用前にオーブン乾燥した。50mLの一口丸底フラスコに、約3.29g(11.7mmol)のブロモピレンを添加した。フラスコにゴムセプタムで栓をし、シリンジ針に適合させた真空ラインによって排気した。針を素早く除去した後、出発物質が溶解するまで、THFを、両頭針を経てカニューレで反応フラスコに添加した(約35〜40mL)。アルゴンを装填したバルーンを使用して、不活性雰囲気を導入した。この溶液を−78℃に冷却し、ヘキサン中の約8.0mL(12.7mmol)のn−ブチルリチウムを約5分間にわたって滴下した。Beinhoffら、Eur.J.Org.Chem.,2001,3819−3829参照。黄色懸濁液を−78℃で40分間撹拌し、次に、CaHから新しく蒸留した約10g(50.3mmol)のトリエトキシクロロシランを、シリンジにより一押しで添加した。同時係属中のKathaperumalらの米国特許出願第12/057,828号を参照。色が消え、固形物がすぐに溶液となった。反応混合物を室温に自然に温め、一晩撹拌した(しかし、反応は数分以内にほぼ完了した)。
【0085】
過剰のトリエトキシクロロシランを、約10mLの無水エタノールでの処理によってクエンチし、次に、溶媒を回転蒸発によって除去した。得られた油状物を、約25mLの溶離溶媒に取り、濾過して、LiBrを除去し、多量のシリカゲルを含有するカラムに添加した。カラムを1:1のヘキサン:ジクロロメタンで溶離し(R 0.5)、蒸発させて、薄黄色油状物を得た。(1−ピレニル)トリエトキシシラン(F)の収量は約2.7g(63%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,1,1,2,2−テトラクロロエタン):δ=8.61(d;J=9.1Hz;1H),8.47(d;J=7.7Hz;1H),8.24−8.04(m;7H),3.90(q;6H),1.26(t;9H).
【0086】
ジエチルエーテル(約30mL)中の(1−ピレニル)トリエトキシシラン(約6.54g、17.9mmol)の溶液を、添加漏斗で、ジエチルエーテル(約45mL)中の氷冷LiAlH(約470mg、11.8mmol)の懸濁液に添加した。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌した。Riedmillerら、Organometallics,1998,17,4444−4453、およびMingeら、Organometallics,2002,21,680−684参照。固形物を濾過し、濾液を蒸発させて、白色固形物を得た。固形物をジクロロメタンに取り、すぐにシリカゲルでプラグ濾過して、無機塩を除去した。蛍光白色固形物を得た。(1−ピレニル)シラン(G)の収量は約3.2g(77%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CCl):δ=8.31−8.03(m;9H),4.68(s;3H).
【0087】
ベンゼン(約125mL)中の(1−ピレニル)シラン(約10.33g、44.5mmol)および(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)(約116mg、1mol%)の脱気溶液に、無水エタノール(約4.11g、89mmol)を、10℃で1.5時間にわたってシリンジで1mLずつ滴下した。反応を室温に温め、NMRによって監視し、さらに1.5時間撹拌した後に、反応が完了していることが分かった。次に、アリルメタクリレート(約2.85g、22.6mmol)を、10℃で15分間にわたってシリンジで0.5mLずつ滴下し、1時間撹拌した。さらにアリルメタクリレート(約2.84g、22.5mmol)を同様の条件下に添加した。反応を室温に自然に温め、さらに2時間撹拌し、NMRによって監視した。Murataら、Tetrahedron,63,4087−4094(2007)、およびShiozawaらの欧州特許出願公開第0277023号を参照。
【0088】
反応混合物を、シリカゲルを装填したクロマトプロットィーカラムに直接添加し、トルエンで溶離して、粘性琥珀色油状物を得た。γ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)の収量は約7.87g(40%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CDCl):δ=8.59(d;J=9.1Hz;1H),8.43(d;J=7.7Hz;1H),8.22−8.00(m;7H),5.98(s;1H),5.43(s;1H),4.04(t;2H),3.92(q;4H),1.84(s;3H),1.74−1.69(m;2H),1.31(t;6H),1.16−1.11(m;2H).MS:m/z 464[M+NH.n25 1.6157.
合成D:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(9−フェナントレニル)ジエトキシシラン(L)
【化13】

【0089】
化合物Jは、化合物Cに関して示した条件に従い、2−ブロモナフタレンの代わりに9−ブロモフェナントレンを出発成分に使用して、調製した。得られた生成物として、薄黄色油状物が存在した。(9−フェナントレニル)トリエトキシシラン)(J)の収量は、約15g(36%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CDCl):δ=8.72(dd;J=7.7Hz,J=1.8Hz;1H),8.71(d;J=8.4Hz;1H),8.40(dd;J=7.7Hz,J=1.8Hz;1H),8.32(s;1H),7.93(dd;J=8.1Hz,J=1.5Hz;1H),7.74−7.58(m;4H),3.94(q;6H),1.27(t;9H).
【0090】
LiAlH(520mg、13.7mmol)を、ジエチルエーテル(50mL)中の(9−フェナントレニル)トリエトキシシラン(4.04g、11.9mmol)の溶液に、0℃で少しずつ添加した。反応が完了したら、ヘキサン(50mL)を添加して、塩を沈殿させ、反応混合物を濾過した。濾液を回転蒸発によって濃縮した。残渣をジクロロメタンに取り、シリカゲルでプラグ濾過した。生成物を回転蒸発によって濃縮して、白色固形物を得た。9−フェナントレニルシラン(K)の収量は約2.26g(91%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CDCl):δ=8.72(d;J=7.3Hz,1H),8.68(d;J=8.4Hz;1H),8.15(s;1H),7.98(d;J=7.3Hz;1H),7.88(d;J=7.7Hz;1H),7.77−7.57(m;4H),4.52(s;3H).
【0091】
脱気ベンゼン(30mL)中の9−フェナントレニルシラン(2.1g、10.2mmol)および(acac)(CO)Rh(I)(30mg、1.15mol%)の溶液を調製し、それに、無水エタノール(844mg、18.4mmol)を4回で同量ずつ2時間にわたって添加した。泡立ちを止め、アルゴンガスをその中に泡立たせることによって、反応混合物を10分間脱気した。次に、さらに(acac)(CO)Rh(I)(20mg、0.78mol%)を添加し、次に、アリルメタクリレート(1.29g、10.2mmol)を3回で同量ずつ1時間にわたって添加した。
【0092】
反応が完了したら(NMRによって監視)、反応混合物をシリカゲルカラムに添加し、溶離して(1:1のヘキサン:ジクロロメタン〜100%ジクロロメタンの勾配を使用)、微かな琥珀色の油状物を得た。γ−(メタクリルオキシ)プロピル(9−フェナントレニル)ジエトキシシラン(K)の収量は約1.25g(28%)であった。H−NMRデータは以下の通りであった。(400MHz,CDCl):δ=8.73(dd;J=7.3Hz,J=1.5Hz;1H),8.68(d;J=8.4Hz;1H),8.35(dd;J1=7.7Hz,J=1.5Hz;1H),8.25(s;1H),7.93(d;J=7.7Hz,1H),7.72−7.57(m;4H),6.00(s;1H),5.47(s;1H),4.05(t;2H),3.91(q;4H),1.87(s;3H),1.70(m;2H),1.29(t;6H),1.08(m;2H). n25 1.5784.
【実施例】
【0093】
実施例1
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。スピンコーティングの前に、溶液を、数時間、室温で熟成させた。スピンコーティングしたフィルムを、炉において約150℃で約2時間硬化させた。
【0094】
実施例2
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure 369)を約0.020gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を約1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0095】
実施例3
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Irgacure 2959)を約0.020gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を約1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0096】
実施例4
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(H)、約0.3589gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約0.9690gのビス−ピレニルジメトキシシラン、約4gのテトラヒドロフラン、および約0.5136gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを約0.5473gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を約1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0097】
実施例5
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、スピンコーティングの前に、室温で数時間熟成させた。スピンコーティングしたフィルムを、炉において、約150℃で約2時間硬化させた。
【0098】
実施例6
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure 369)を約0.020gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0099】
実施例7
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184)を約0.020gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0100】
実施例8
1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(V)、0.3108gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、0.8391gのビス−ピレニルジエトキシシラン、4gのテトラヒドロフラン、および0.4447gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを0.5275gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0101】
実施例9
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)、約0.1942gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約1gのテトラヒドロフラン、および約0.530gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを約0.2179gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0102】
実施例10
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(E)、約0.333gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約1gのテトラヒドロフラン、および約0.530gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを約0.229gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0103】
実施例11
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(B)、約0.3589gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約0.9690gのビス−ピレニルジエトキシシラン、約4gのテトラヒドロフラン、および約0.5136gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、スピンコーティングの前に、室温で数時間熟成させた。スピンコーティングしたフィルムを、炉において、約150℃で約2時間硬化させた。
【0104】
実施例12
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピルフェニルジエトキシシラン(B)、約2gのテトラヒドロフラン、および約0.500gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure 369)を約0.020gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0105】
実施例13
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(B)、約0.3589gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約0.9690gのビス−ピレニルジエトキシシラン、約4gのテトラヒドロフラン、および約0.5136gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを約0.5473gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0106】
実施例14
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(B)、約0.2248gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約1gのテトラヒドロフラン、および約0.088gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、スピンコーティングの前に、室温で数時間熟成させた。スピンコーティングしたフィルムを、炉において、約150℃で約2時間硬化させた。
【0107】
実施例15
約1gのγ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(B)、約0.598gのペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、約1gのテトラヒドロフラン、および約0.148gのHCl水溶液(0.01N)を混合し、得られた混合物を周囲条件下に約12時間撹拌することによって、ゾル−ゲル組成物を調製した。溶液を、室温で数時間熟成させた。次に、光開始剤2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンを約0.20gの量で混合物に添加し、スピンコーティングの前に溶液を1時間撹拌した。スピンコーティングしたフィルムを、365nmの紫外線で約3分間硬化させた。次に、UV暴露フィルムを、2−プロパノール(溶媒)中でさらに展開させ、室温で乾燥させた。
【0108】
屈折率
前記の実施例で調製した種々のゾル−ゲル組成物のそれぞれの屈折率を、Metriconプリズムカプラで測定した。ゾルを、シリコンウエハ上に1000rpmで約45秒間スピンコーティングし、フィルムを形成した。これは、633nmおよび1550nmにおける薄膜の屈折率評価に使用される標準法である。屈折率測定の結果を表1に示す。フィルムが、これらの条件下で充分に硬化しなかったので、実施例12については屈折率を測定しなかった。
【0109】
表1に示されている数値およびパーセンテージは、ゾル−ゲルにおける繰り返し単位を形成するモノマー前駆体のモル分率を表わす。
【0110】
【表1】

【0111】
PhAIO:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(フェニル)ジエトキシシラン(化合物B)
NaAIO:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシラン(化合物E)
PyrAIO:γ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシラン(化合物H)
BpyrDES:ビス(ピレニル)ジエトキシシラン
PFPhTMS:ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のモノマーを含有するゾル−ゲル前駆体:
【化1】

[式中、
1aは、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1個を含有する光架橋性基であり;
各Rは、独立に、低級アルキル基または低級アルコキシアルキル基であるように選択され;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される]。
【請求項2】
mが0である、請求項1に記載のゾル−ゲル前駆体。
【請求項3】
nが3〜7の整数である、請求項1または2に記載のゾル−ゲル前駆体。
【請求項4】
式(I)のnおよびRは、−(CH−Rがプロピルメタクリレート基、プロピルアクリレート基、アリル基またはエポキシプロピル基であるように選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載のゾル−ゲル前駆体。
【請求項5】
上記モノマーが、γ−(メタクリルオキシ)プロピル(2−ナフチル)ジエトキシシランおよびγ−(メタクリルオキシ)プロピル(1−ピレニル)ジエトキシシランから成る群から選択される、請求項1に記載のゾル−ゲル前駆体。
【請求項6】
上記式(I)のモノマーの屈折率が、589nmで測定した場合に、1.45より高い、請求項1〜5のいずれか1つに記載のゾル−ゲル前駆体。
【請求項7】
式(II)のゾル−ゲル前駆体を製造する方法であって:
【化2】

[式中、
は、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1個を含有する光架橋性基であり;
各Rは、独立に、低級アルキル基または低級アルコキシアルキル基であるように選択され;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される];
下記の工程を含んで成る方法:
式(III)の構造を有する化合物を含有する溶液を提供する工程:
【化3】

[式中、Rおよびmは、式(II)において先に定義した通りである];
遷移金属触媒と該溶液とを混合する工程;
式R−OH[ここで、Rは式(II)において先に定義した通りである]の化合物と、該溶液とを混合する工程;および、
式R−(CHn−2−CH=CH[ここで、Rおよびnは、式(II)において先に定義した通りである]の化合物と、該溶液とを混合する工程。
【請求項8】
上記遷移金属触媒が、単一の遷移金属触媒である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記単一の遷移金属触媒が、上記式R−OHの化合物のオルガノシランへの脱水素カップリングを触媒することができる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記単一の遷移金属触媒が、上記式R−(CHn−2−CH=CHの化合物の末端オレフィンの、オルガノジアルコキシシランへのカップリングを触媒することができる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
上記単一の遷移金属触媒が、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)を含む、請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
式(IV)の繰り返し単位を含有するポリマー:
【化4】

[式中、
1aは、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1個を含有する光架橋性基であるか、またはRは、該光架橋性基を光架橋させることによって形成される基であり;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される]。
【請求項13】
mが0である、請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
nが3〜7の整数である、請求項12または13に記載のポリマー。
【請求項15】
式(IV)のnおよびRは、−(CH−Rがプロピルメタクリレート基、プロピルアクリレート基、アリル基、ビニル基またはエポキシプロピル基であるように選択される、請求項12〜14のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項16】
上記ポリマーの屈折率が、633nmで測定した場合に、1.50より高い、請求項12〜15のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項17】
上記ポリマーの屈折率が、1550nmで測定した場合に、1.50より高い、請求項12〜16のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項18】
が、上記光架橋性基を光架橋させることによって形成される基である、請求項12〜17のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項19】
上記光架橋が紫外線への暴露による、請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
ゾル−ゲル組成物であって、
式(V)の化合物:
【化5】

[式中、
は、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、ビニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1個を含有する光架橋性基であり;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される];および
組成物の重量に基づいて少なくとも約10重量%の量で存在する溶媒
を含む、ゾル−ゲル組成物。
【請求項21】
上記溶媒が、少なくとも20重量%の量で存在する、請求項20に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項22】
上記溶媒がテトラヒドロフランを含む、請求項20または21に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項23】
mが0である、請求項20〜22のいずれか1つに記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項24】
nが3〜7の整数である、請求項20〜23のいずれか1つに記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項25】
式(I)のnおよびRは、式(V)の−(CH−R部分がプロピルメタクリレート基、プロピルアクリレート基、アリル基またはエポキシプロピル基であるように選択される、請求項20〜24のいずれか1つに記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項26】
光学デバイスであって、
式(VI)の繰り返し単位を有するポリマーを含有する層:
【化6】

[式中、
は、任意に置換される芳香族基であり、該芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、キノリニル、テトラセニル、ペンタセニル、ピレニルおよびペリレニルから成る群から選択され;
は、メタクリレート基、アクリレート基、アルケニル基、エポキシ基またはアクリルオキシ基の少なくとも1個を含有する光架橋性基であり;
mは、0〜約10の整数であるように選択され;かつ
nは、2〜約10の整数であるように選択される]
を含む、光学デバイス。
【請求項27】
導波路の形態の、請求項26に記載の光学デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−507527(P2012−507527A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534569(P2011−534569)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/058098
【国際公開番号】WO2010/053629
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】