非接触形状測定装置
【課題】熱間鍛造異形品の形状評価の量産工程へのインライン化を可能とする非接触形状測定装置を提供する。
【解決手段】非接触形状測定装置130は、回転テーブル131、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、および、デジタイザ装置171を備えている。エアブロー部151は、回転テーブル131上のクランクシャフト200の上側に移動し、エアーノズル152からクランクシャフト200にエアを吹き付ける。続いて、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131上のクランクシャフト200の上側に移動し、クランクシャフト200表面に参照ポイントを設定する。次いで、デジタイザ装置171は、クランクシャフト200の計測位置に応じた位置調整後、スキャニングによりクランクシャフト200の形状測定を行う。
【解決手段】非接触形状測定装置130は、回転テーブル131、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、および、デジタイザ装置171を備えている。エアブロー部151は、回転テーブル131上のクランクシャフト200の上側に移動し、エアーノズル152からクランクシャフト200にエアを吹き付ける。続いて、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131上のクランクシャフト200の上側に移動し、クランクシャフト200表面に参照ポイントを設定する。次いで、デジタイザ装置171は、クランクシャフト200の計測位置に応じた位置調整後、スキャニングによりクランクシャフト200の形状測定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明確な測定基準を有しない複雑な形状をなす熱間鍛造異形品の形状を測定する非接触形状測定装置に係り、特に、非接触形状測定のインライン化を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフト等の熱間鍛造異形品は、複雑な形状をなしており、明確な測定基準を有しない。このような熱間鍛造異形品の形状検査では、2D図面を用いて、接触測定装置によるポイント測定およびライン測定により行っていた。たとえば、図9に示す接触測定装置10では、被測定物Mの形状は、その表面への測定針11の接触により得ている。ところが、そのような接触測定では、多くの準備時間や測定時間が費やされ、しかも、測定針11による測定が不可能な部位があるため、測定箇所が限定されるという問題があった。
【0003】
一方、カメラやレーザによる非接触測定方法が用いられる場合があるが、被測定物である熱間鍛造異形品は明確な測定基準を有しないため、高精度測定が困難である。そこで熱間鍛造異形品のように明確な測定基準を有しない被測定物の非接触測定方法では、図10に示すように、被測定物Mとは別に任意の基準面22を設定し、その基準面22と被測定物Mに光源21からビーム(図の破線の矢印)を照射し、基準面22と被測定物Mの測定形状との位置比較を行うことが考えられる(たとえば特許文献1)。ところが、この非接触測定では、基準面22を予め準備する必要がある上、基準面22と被測定物Mとの位置関係の精度が測定精度に大きな影響を与えるため、保持手段による被測定物Mの保持に高精度が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−32308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような背景から、被測定物とは別の基準面の設定が不要な非接触光学式3次元デジタイザ装置を用いた形状測定を行うことが考えられる。デジタイザ装置による測定手法では、1回の撮影では測定が困難な形状・大きさを有する被測定物を用いる場合、図11(A)に示すように、被測定物Mの表面の複数箇所に参照ポイントRを設け、撮像部30のCCDカメラで撮影する。この場合、最初に測定した領域と次に測定した領域との重なり合う部分にある共通の参照ポイントRを参照して各パッチを瞬時に自動合成し、3次元データを生成する。そして、これにより得られた測定形状の点群データD1と、目標設計データであるCADデータD2との誤差の和が最小になるような位置合わせを行い、それらデータの差異により形状の評価を行う(図11(B))。
【0006】
しかしながら、以上のようなデジタイザ装置による測定では、次のような測定前準備工程(参照ポイント設定工程および現像液塗布工程)およびスキャニング工程を手作業で行う必要がある。参照ポイント設定工程では、被測定物表面の脱脂後、参照ポイントとしてのシールを被測定物表面の複数箇所に手作業で貼り付ける必要がある。現像液塗布工程では、現像液を被測定物表面に手作業で塗布し、その表面の光沢を抑える必要がある。しかも、この場合、測定精度の向上のために、被測定物表面において現像液の厚みを均一に塗布しなければならなく、かつ参照ポイントに付着した現像液を除去しなければならないため、手間がかかる。スキャニング工程では、被測定物を様々な角度から撮影するために、CCDカメラに対する被測定物の位置を変更する必要がある。以上のように各工程を手作業で行っているため、デジタイザ装置による測定は、量産工程へのインライン化ができない。
【0007】
したがって、本発明は、被測定物として熱間鍛造異形品を用いた場合、形状の測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程およびスキャニング工程の自動化を図ることにより、非接触形状測定の量産工程へのインライン化を可能とする非接触形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触形状測定装置は、スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行うデジタイザ装置と、熱間鍛造異形品の表面の酸化スケールを除去するブロー手段と、酸化スケールが除去された熱間鍛造異形品の表面に参照ポイントを設ける参照ポイント設定手段と、参照ポイントが設けられた熱間鍛造異形品の表面をデジタイザ装置によりスキャンするときに、熱間鍛造異形品を回転させる回転手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明の非接触形状測定装置では、ブロー手段によって熱間鍛造異形品の表面にエア等のガスを吹き付けることにより、その表面の酸化スケールを除去する。これにより、熱間異形鍛造品の表面は、非光沢状態である鍛造肌となるから、光沢を抑制するための現像材料を手作業で塗布する必要がない。このような酸化スケールの除去後、参照ポイント設定手段によりその熱間鍛造異形品の表面に参照ポイントを設ける。このような下処理工程が施された熱間鍛造異形品の表面の形状測定を、デジタイザ装置によるスキャニングによって行う。このとき、熱間鍛造異形品を回転手段上に載置し、その回転手段を回転させることにより、スキャニングを熱間鍛造異形品の全周に対して行う。
【0010】
以上のように、デジタイザ装置を用いることにより測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程(酸化スケール除去工程および参照ポイント設定工程)およびスキャニング工程を自動化することにより、非接触形状測定の自動化を図ることができる。その結果、非接触形状測定の量産工程へのインライン化が可能となる。
【0011】
本発明の非接触形状測定装置は種々の構成を用いることができる。たとえば参照ポイントとしてシール等を用いることができるが、熱間鍛造異形品が磁性材料からなる場合、参照ポイントとしてマグネットを用いることができる。この態様では、参照ポイントの設定を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非接触形状測定装置によれば、被測定物である熱間鍛造異形品の形状の測定精度向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程およびスキャニング工程の自動化を図ることにより、非接触形状測定の量産工程へのインライン化を可能とする等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触形状測定装置が適用されたクランクシャフトの生産ラインの概念図を表している。
【図2】本発明に係る一実施形態の非接触形状測定装置の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1に示す非接触形状測定装置のロボットのチャック部の概略構成を表す側面図である
【図4】(A)〜(C)は、図1に示す参照ポイント設定部による各工程を表す概念図である。
【図5】図1に示す非接触形状測定装置による参照ポイント設定工程の変形例を表す概念図である。
【図6】図1に示す非接触形状測定装置のデジタイザ装置の撮影部の概略構成を表す前面図である。
【図7】図1に示す非接触形状測定装置による各工程を表し、(A)は酸化スケール除去工程、(B)は参照ポイント設定工程、(C)はスキャニング工程の概略構成を表す斜視図である。
【図8】本実施例および比較例のスキャニング工程で用いた熱間鍛造異形品の形状を表し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図9】従来の接触測定手法を表す斜視図である。
【図10】従来の非接触測定手法を表す斜視図である。
【図11】デジタイザ装置を用いた非接触測定手法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非接触形状測定装置130が適用されたクランクシャフト(熱間鍛造異形品)の生産ラインの概念図を表している。クランクシャフトの生産ラインでは、原材料である鋼材を切断部111で切断してビレットWを得る。
【0015】
続いて、ビレットWに連続熱処理部112で熱処理を施す。次いで、ビレットWを成形プレス部113で鍛造成形し、鍛造成形品Wをツイストプレス部114で矯正する。続いて、得られた製品Wの形状評価を検査部115で行う。次いで、製品Wをバケット116に搬送する。これら工程間のワークW(ビレット,鍛造成形品、製品)はコンベア121および冷却コンベア122で搬送され、全ての工程は自動化されている。
【0016】
検査部115では、製品Wであるクランクシャフト200の形状評価を非接触形状測定装置130により行っている。図2は、本発明に係る一実施形態の非接触形状測定装置130の概略構成を表す斜視図である。非接触形状測定装置130は、回転テーブル131、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、および、デジタイザ装置171を備えている。クランクシャフト200は、ジャーナル軸部201を備え、ジャーナル軸部201には、それと平行なクランクピン部203がアーム部202により連結されている。
【0017】
回転テーブル131は、冷却コンベア122に隣接し、回転可能に設けられている。回転テーブル131の角度位置の設定は、たとえば30度単位で行われる。回転テーブル131には、製品Wであるクランクシャフト200を支持する支持部132が設けられている。支持部132は、クランクシャフト200のジャーナル軸部201の両端部を支持する。支持部132は、回転テーブル131に固定された回転駆動部133に設けられている。支持部132に支持されたクランクシャフト200は、回転駆動部133によって、その軸線回りに回転する。
【0018】
回転テーブル131の周囲には、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、デジタイザ装置171が所定の間隔をおいて設けられている。
【0019】
ロボット141は、冷却コンベア122上の製品Wを回転テーブル131へ搬送する。ロボット141では、その本体部の回転テーブル131側にチャック部142が設けられ、ロボット141は回転テーブル131に対して接近離間する。製品Wを把持するチャック部142は、たとえば図3に示すように、中央部が凹状をなす上側爪142Aおよび下側爪142Bを有している。上側爪142Aおよび下側爪142Bは、互いに接近離間可能となるようにロボット141の本体部に設けられている。
【0020】
エアブロー部151は、回転テーブル131上のクランクシャフト200表面の酸化スケールを除去する。エアブロー部151は、その本体部の下面に多数のエアーノズル152を有し、回転テーブル131に対して接近離間する。エアブロー部151では、エアーノズル152からクランクシャフト200表面にエアを吹き付ける。
【0021】
参照ポイント設定部161は、クランクシャフト200表面に参照ポイントP(図5)を設定する。参照ポイント設定部161は、本体部の回転テーブル131側にポイントシャフト部162を有している。ポイントシャフト部162は、垂直方向に移動可能となるように、参照ポイント設定部161の本体部に設けられている。ポイントシャフト部162は、図4に示すようにホルダ162Aを備え、ホルダ162A内には複数のシャフト162Bが設けられている。
【0022】
参照ポイントPは、クランクシャフト200表面に固定されるものであればよく、本実施形態では、熱間鍛造異形品であるクランクシャフト200は鋼材からなるから、参照ポイントPとしてマグネットを用いることが好適である。この場合、シャフト162Bは、磁性がON/OFFが制御部(図示略)で制御されるマグネットを内蔵している。シャフト162Bの上面には、弾性部材162Cが設けられている。シャフト162Cの下面には、シャフト162C内のマグネットの磁性がONに設定されている時、参照ポイントPが磁気的に取り付けられる。
【0023】
デジタイザ装置171は、フェーズシフト法、ステレオ法、および、空間コード化法を組み合わせた測定原理を用い、スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行う非接触光学式3次元デジタイザ装置である。デジタイザ装置171は、本体部の回転テーブル131側に撮影部172を有している。撮影部172は、たとえば昇降可能に本体部に設けられている。
【0024】
撮影部172は、図6に示すように、プロジェクタ172AおよびCCDカメラ172Bを有している。プロジェクタ172Aは、撮影部172の中央部に設けられ、ランプおよび移動スライドを有している。ランプは被測定物に縦縞パターンを投影し、移動スライドはランプを移動させる。CCDカメラ172Bは、撮影部172の両端部に設けられ、被測定物を撮影する。デジタイザ装置171の演算部(図示略)は、撮影イメージに基づき被測定物の各領域の点群データを取得し、それら点群データを合成することにより、被測定物全体の3次元データを生成する。
【0025】
(2)実施形態の動作
非接触形状測定装置130を用いた検査部115によるクランクシャフト200の形状評価について、おもに図2,7を参照して説明する。図7は、非接触形状測定装置130による各工程を表し、(A)は酸化スケール除去工程、(B)は参照ポイント設定工程、(C)はスキャニング工程の概略構成を表す斜視図である。
【0026】
検査部115では、ロボット141が、図1に示す冷却コンベア122上の製品W(クランクシャフト200)を回転テーブル131へ搬送する。ロボット141による搬送では、チャック部142の爪142A,142Bにより製品Wのジャーナル軸部201の2箇所を把持する。回転テーブル131では、支持部132が、回転テーブル131へ搬送されたクランクシャフト200を支持する。ロボット141は、クランクシャフト200の搬送後、回転テーブル131から退避して冷却コンベア122側の所定位置に戻る。
【0027】
続いて、エアブロー部151は、図7(A)に示すように、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側に移動し、エアーノズル152からクランクシャフト200にエアを吹き付ける。この場合、回転駆動部133は、必要に応じてクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、エアの吹き付けをクランクシャフト200の全表面に行う。これにより、クランクシャフト200の表面の酸化スケールが除去され、クランクシャフト200の表面は、非光沢状態である鍛造肌となる。エアブロー部151は、クランクシャフト200の酸化スケールの除去後、回転テーブル131から退避して所定位置に戻る。
【0028】
次いで、参照ポイント設定部161は、図7(B)に示すように、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側に移動し、クランクシャフト200表面に参照ポイントPを設定する。
【0029】
具体的には、参照ポイント設定部161では、回転テーブル131への移動前に、図4(A)に示すように、制御部(図示略)がポイントシャフト部162のシャフト162Bの磁性をONに設定し、シャフト162Bの下面に参照ポイントPを磁気的に取り付ける。次いで、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側へ移動した後、クランクシャフト200に向けてシャフト162Bを下降させる。この場合、制御部は、参照ポイントPのクランクシャフト200への接触を検出したとき、シャフト162Bの磁性をOFFに設定することにより、クランクシャフト200表面に参照ポイントPを磁気的に取り付ける。
【0030】
参照ポイントPの設定では、クランクシャフト200における参照ポイントPの設定箇所には高低差があるが、その高低差による影響は、シャフト162B上面の弾性部材162Cに吸収される。これにより、参照ポイントPの設定箇所には高低差がある場合でも、参照ポイントPを確実に設けることができる。また、シャフト162Bの移動方向は、図4に示すように、垂直方向だけでなく、図5に示すように、任意の角度方向となるように構成してもよい。この構成では、クランクシャフト200におけるアーム部202のカウンタウェイト部の側面に参照ポイントPを取り付けることが可能となる。また、必要に応じて回転駆動部133によってクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、参照ポイントPをクランクシャフト200の全表面に取り付けることができる。
【0031】
シャフト162Bは、参照ポイントPの設定後、ホルダ162A内へ上昇し、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131から退避して所定位置に戻る。
【0032】
続いて、デジタイザ装置171では、撮影部172は、クランクシャフト200の計測位置に応じた位置調整後、次のようなスキャニングによりクランクシャフト200の形状測定を行う。
【0033】
プロジェクタ172Aのランプを移動スライドで所定ピッチで左右に移動させながらランプから縦縞パターンをクランクシャフト200に照射することにより、クランクシャフト200上に縦縞パターンを投影する。CCDカメラ172Bは、クランクシャフト200上で変化する縦縞パターンを高速に連続撮影する。この場合、回転テーブル131の角度位置を30度ずつ変更することにより、クランクシャフト200の全周の撮影を行う。また、回転駆動部133によってクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、クランクシャフト200の全表面の撮影を確実に行うことができる。
【0034】
デジタイザ装置171の演算部(図示略)では、ソフトウェアが、撮影部172により得られた撮影イメージに基づきクランクシャフト200の各領域の点群データを取得し、それら点群を合成することにより、クランクシャフト200全体の3次元データを生成する。この場合、最初に測定した領域と次に測定した領域との重なり合う部分にある共通の参照ポイントPを参照して各パッチを瞬時に自動合成することにより測定点群の合成を行う。そして、図11に示すように、クランクシャフト200の形状の3次元データD1と、目標設計データであるCADデータD2との誤差の和が最小になるような位置合わせを行い、そのデータの差異により形状の評価を行う。形状評価では、クランクシャフト200における各部位のデータの差異が所定値以下である場合、クランクシャフト200の形状を合格と判定し、所定値を超えている場合、クランクシャフト200の形状を不合格と判定する。
【0035】
以上のように本実施形態では、デジタイザ装置171を用いることにより、クランクシャフト200の形状の測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程(酸化スケール除去工程および参照ポイント設定工程)およびスキャニング工程を自動化することにより、非接触形状測定の自動化を図ることができる。その結果、非接触形状測定の量産工程へのインライン化が可能となる。特に、クランクシャフト200が鋼材等の磁性材料からなる場合、参照ポイントPとしてマグネットを用いることにより、参照ポイントPの設定を確実に行うことができる。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。実施例では、図8に示すクランクシャフト300の形状測定を行った。
【0037】
実験例では、クランクシャフト300の酸化スケール除去し、クランクシャフト300に参照ポイントPを設定した後、クランクシャフト300の形状測定をデジタイザ装置によるスキャニングで行った。比較実験例では、クランクシャフト300の酸化スケールを除去し、クランクシャフト300の形状測定を接触測定装置で行った。クランクシャフト300の形状の測定箇所は、クランクピン部303表面の直径l1、ジャーナル軸部301表面の直径l2、アーム部302の縁部の長さl3、l4、および、クランクピン部303の中央部の直径l5である。実験例および比較実験例の測定結果を表1に示す。表1の計測値(単位mm)は、同一箇所3点の平均値とした。
【0038】
【表1】
【0039】
実験例のデジタイザ装置では、クランクピン部303の裏側部分のように通常の測定装置では測定が困難な部位でも、その形状に沿ったスキャニングが可能であり、表1から判るように、実験例のスキャニングによる計測値は、比較実験例の接触式によるものとの誤差がほとんどないことを確認した。これにより、デジタイザ装置によるスキャニングは、複雑な形状をなすクランクシャフトの形状評価に適用可能であり、その評価を高精度に行うことができることが判った。
【符号の説明】
【0040】
130…非接触測定装置、131…回転テーブル(回転手段)151…エアブロー部(ブロー手段)、161…参照ポイント設定部(参照ポイント設定手段)、171…デジタイザ装置、200…クランクシャフト(熱間鍛造異形品)、P…参照ポイント、W…ワーク,ビレット、予備成形品、製品(熱間鍛造異形品)
【技術分野】
【0001】
本発明は、明確な測定基準を有しない複雑な形状をなす熱間鍛造異形品の形状を測定する非接触形状測定装置に係り、特に、非接触形状測定のインライン化を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフト等の熱間鍛造異形品は、複雑な形状をなしており、明確な測定基準を有しない。このような熱間鍛造異形品の形状検査では、2D図面を用いて、接触測定装置によるポイント測定およびライン測定により行っていた。たとえば、図9に示す接触測定装置10では、被測定物Mの形状は、その表面への測定針11の接触により得ている。ところが、そのような接触測定では、多くの準備時間や測定時間が費やされ、しかも、測定針11による測定が不可能な部位があるため、測定箇所が限定されるという問題があった。
【0003】
一方、カメラやレーザによる非接触測定方法が用いられる場合があるが、被測定物である熱間鍛造異形品は明確な測定基準を有しないため、高精度測定が困難である。そこで熱間鍛造異形品のように明確な測定基準を有しない被測定物の非接触測定方法では、図10に示すように、被測定物Mとは別に任意の基準面22を設定し、その基準面22と被測定物Mに光源21からビーム(図の破線の矢印)を照射し、基準面22と被測定物Mの測定形状との位置比較を行うことが考えられる(たとえば特許文献1)。ところが、この非接触測定では、基準面22を予め準備する必要がある上、基準面22と被測定物Mとの位置関係の精度が測定精度に大きな影響を与えるため、保持手段による被測定物Mの保持に高精度が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−32308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような背景から、被測定物とは別の基準面の設定が不要な非接触光学式3次元デジタイザ装置を用いた形状測定を行うことが考えられる。デジタイザ装置による測定手法では、1回の撮影では測定が困難な形状・大きさを有する被測定物を用いる場合、図11(A)に示すように、被測定物Mの表面の複数箇所に参照ポイントRを設け、撮像部30のCCDカメラで撮影する。この場合、最初に測定した領域と次に測定した領域との重なり合う部分にある共通の参照ポイントRを参照して各パッチを瞬時に自動合成し、3次元データを生成する。そして、これにより得られた測定形状の点群データD1と、目標設計データであるCADデータD2との誤差の和が最小になるような位置合わせを行い、それらデータの差異により形状の評価を行う(図11(B))。
【0006】
しかしながら、以上のようなデジタイザ装置による測定では、次のような測定前準備工程(参照ポイント設定工程および現像液塗布工程)およびスキャニング工程を手作業で行う必要がある。参照ポイント設定工程では、被測定物表面の脱脂後、参照ポイントとしてのシールを被測定物表面の複数箇所に手作業で貼り付ける必要がある。現像液塗布工程では、現像液を被測定物表面に手作業で塗布し、その表面の光沢を抑える必要がある。しかも、この場合、測定精度の向上のために、被測定物表面において現像液の厚みを均一に塗布しなければならなく、かつ参照ポイントに付着した現像液を除去しなければならないため、手間がかかる。スキャニング工程では、被測定物を様々な角度から撮影するために、CCDカメラに対する被測定物の位置を変更する必要がある。以上のように各工程を手作業で行っているため、デジタイザ装置による測定は、量産工程へのインライン化ができない。
【0007】
したがって、本発明は、被測定物として熱間鍛造異形品を用いた場合、形状の測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程およびスキャニング工程の自動化を図ることにより、非接触形状測定の量産工程へのインライン化を可能とする非接触形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触形状測定装置は、スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行うデジタイザ装置と、熱間鍛造異形品の表面の酸化スケールを除去するブロー手段と、酸化スケールが除去された熱間鍛造異形品の表面に参照ポイントを設ける参照ポイント設定手段と、参照ポイントが設けられた熱間鍛造異形品の表面をデジタイザ装置によりスキャンするときに、熱間鍛造異形品を回転させる回転手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明の非接触形状測定装置では、ブロー手段によって熱間鍛造異形品の表面にエア等のガスを吹き付けることにより、その表面の酸化スケールを除去する。これにより、熱間異形鍛造品の表面は、非光沢状態である鍛造肌となるから、光沢を抑制するための現像材料を手作業で塗布する必要がない。このような酸化スケールの除去後、参照ポイント設定手段によりその熱間鍛造異形品の表面に参照ポイントを設ける。このような下処理工程が施された熱間鍛造異形品の表面の形状測定を、デジタイザ装置によるスキャニングによって行う。このとき、熱間鍛造異形品を回転手段上に載置し、その回転手段を回転させることにより、スキャニングを熱間鍛造異形品の全周に対して行う。
【0010】
以上のように、デジタイザ装置を用いることにより測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程(酸化スケール除去工程および参照ポイント設定工程)およびスキャニング工程を自動化することにより、非接触形状測定の自動化を図ることができる。その結果、非接触形状測定の量産工程へのインライン化が可能となる。
【0011】
本発明の非接触形状測定装置は種々の構成を用いることができる。たとえば参照ポイントとしてシール等を用いることができるが、熱間鍛造異形品が磁性材料からなる場合、参照ポイントとしてマグネットを用いることができる。この態様では、参照ポイントの設定を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非接触形状測定装置によれば、被測定物である熱間鍛造異形品の形状の測定精度向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程およびスキャニング工程の自動化を図ることにより、非接触形状測定の量産工程へのインライン化を可能とする等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触形状測定装置が適用されたクランクシャフトの生産ラインの概念図を表している。
【図2】本発明に係る一実施形態の非接触形状測定装置の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1に示す非接触形状測定装置のロボットのチャック部の概略構成を表す側面図である
【図4】(A)〜(C)は、図1に示す参照ポイント設定部による各工程を表す概念図である。
【図5】図1に示す非接触形状測定装置による参照ポイント設定工程の変形例を表す概念図である。
【図6】図1に示す非接触形状測定装置のデジタイザ装置の撮影部の概略構成を表す前面図である。
【図7】図1に示す非接触形状測定装置による各工程を表し、(A)は酸化スケール除去工程、(B)は参照ポイント設定工程、(C)はスキャニング工程の概略構成を表す斜視図である。
【図8】本実施例および比較例のスキャニング工程で用いた熱間鍛造異形品の形状を表し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図9】従来の接触測定手法を表す斜視図である。
【図10】従来の非接触測定手法を表す斜視図である。
【図11】デジタイザ装置を用いた非接触測定手法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非接触形状測定装置130が適用されたクランクシャフト(熱間鍛造異形品)の生産ラインの概念図を表している。クランクシャフトの生産ラインでは、原材料である鋼材を切断部111で切断してビレットWを得る。
【0015】
続いて、ビレットWに連続熱処理部112で熱処理を施す。次いで、ビレットWを成形プレス部113で鍛造成形し、鍛造成形品Wをツイストプレス部114で矯正する。続いて、得られた製品Wの形状評価を検査部115で行う。次いで、製品Wをバケット116に搬送する。これら工程間のワークW(ビレット,鍛造成形品、製品)はコンベア121および冷却コンベア122で搬送され、全ての工程は自動化されている。
【0016】
検査部115では、製品Wであるクランクシャフト200の形状評価を非接触形状測定装置130により行っている。図2は、本発明に係る一実施形態の非接触形状測定装置130の概略構成を表す斜視図である。非接触形状測定装置130は、回転テーブル131、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、および、デジタイザ装置171を備えている。クランクシャフト200は、ジャーナル軸部201を備え、ジャーナル軸部201には、それと平行なクランクピン部203がアーム部202により連結されている。
【0017】
回転テーブル131は、冷却コンベア122に隣接し、回転可能に設けられている。回転テーブル131の角度位置の設定は、たとえば30度単位で行われる。回転テーブル131には、製品Wであるクランクシャフト200を支持する支持部132が設けられている。支持部132は、クランクシャフト200のジャーナル軸部201の両端部を支持する。支持部132は、回転テーブル131に固定された回転駆動部133に設けられている。支持部132に支持されたクランクシャフト200は、回転駆動部133によって、その軸線回りに回転する。
【0018】
回転テーブル131の周囲には、ロボット141、エアブロー部151、参照ポイント設定部161、デジタイザ装置171が所定の間隔をおいて設けられている。
【0019】
ロボット141は、冷却コンベア122上の製品Wを回転テーブル131へ搬送する。ロボット141では、その本体部の回転テーブル131側にチャック部142が設けられ、ロボット141は回転テーブル131に対して接近離間する。製品Wを把持するチャック部142は、たとえば図3に示すように、中央部が凹状をなす上側爪142Aおよび下側爪142Bを有している。上側爪142Aおよび下側爪142Bは、互いに接近離間可能となるようにロボット141の本体部に設けられている。
【0020】
エアブロー部151は、回転テーブル131上のクランクシャフト200表面の酸化スケールを除去する。エアブロー部151は、その本体部の下面に多数のエアーノズル152を有し、回転テーブル131に対して接近離間する。エアブロー部151では、エアーノズル152からクランクシャフト200表面にエアを吹き付ける。
【0021】
参照ポイント設定部161は、クランクシャフト200表面に参照ポイントP(図5)を設定する。参照ポイント設定部161は、本体部の回転テーブル131側にポイントシャフト部162を有している。ポイントシャフト部162は、垂直方向に移動可能となるように、参照ポイント設定部161の本体部に設けられている。ポイントシャフト部162は、図4に示すようにホルダ162Aを備え、ホルダ162A内には複数のシャフト162Bが設けられている。
【0022】
参照ポイントPは、クランクシャフト200表面に固定されるものであればよく、本実施形態では、熱間鍛造異形品であるクランクシャフト200は鋼材からなるから、参照ポイントPとしてマグネットを用いることが好適である。この場合、シャフト162Bは、磁性がON/OFFが制御部(図示略)で制御されるマグネットを内蔵している。シャフト162Bの上面には、弾性部材162Cが設けられている。シャフト162Cの下面には、シャフト162C内のマグネットの磁性がONに設定されている時、参照ポイントPが磁気的に取り付けられる。
【0023】
デジタイザ装置171は、フェーズシフト法、ステレオ法、および、空間コード化法を組み合わせた測定原理を用い、スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行う非接触光学式3次元デジタイザ装置である。デジタイザ装置171は、本体部の回転テーブル131側に撮影部172を有している。撮影部172は、たとえば昇降可能に本体部に設けられている。
【0024】
撮影部172は、図6に示すように、プロジェクタ172AおよびCCDカメラ172Bを有している。プロジェクタ172Aは、撮影部172の中央部に設けられ、ランプおよび移動スライドを有している。ランプは被測定物に縦縞パターンを投影し、移動スライドはランプを移動させる。CCDカメラ172Bは、撮影部172の両端部に設けられ、被測定物を撮影する。デジタイザ装置171の演算部(図示略)は、撮影イメージに基づき被測定物の各領域の点群データを取得し、それら点群データを合成することにより、被測定物全体の3次元データを生成する。
【0025】
(2)実施形態の動作
非接触形状測定装置130を用いた検査部115によるクランクシャフト200の形状評価について、おもに図2,7を参照して説明する。図7は、非接触形状測定装置130による各工程を表し、(A)は酸化スケール除去工程、(B)は参照ポイント設定工程、(C)はスキャニング工程の概略構成を表す斜視図である。
【0026】
検査部115では、ロボット141が、図1に示す冷却コンベア122上の製品W(クランクシャフト200)を回転テーブル131へ搬送する。ロボット141による搬送では、チャック部142の爪142A,142Bにより製品Wのジャーナル軸部201の2箇所を把持する。回転テーブル131では、支持部132が、回転テーブル131へ搬送されたクランクシャフト200を支持する。ロボット141は、クランクシャフト200の搬送後、回転テーブル131から退避して冷却コンベア122側の所定位置に戻る。
【0027】
続いて、エアブロー部151は、図7(A)に示すように、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側に移動し、エアーノズル152からクランクシャフト200にエアを吹き付ける。この場合、回転駆動部133は、必要に応じてクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、エアの吹き付けをクランクシャフト200の全表面に行う。これにより、クランクシャフト200の表面の酸化スケールが除去され、クランクシャフト200の表面は、非光沢状態である鍛造肌となる。エアブロー部151は、クランクシャフト200の酸化スケールの除去後、回転テーブル131から退避して所定位置に戻る。
【0028】
次いで、参照ポイント設定部161は、図7(B)に示すように、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側に移動し、クランクシャフト200表面に参照ポイントPを設定する。
【0029】
具体的には、参照ポイント設定部161では、回転テーブル131への移動前に、図4(A)に示すように、制御部(図示略)がポイントシャフト部162のシャフト162Bの磁性をONに設定し、シャフト162Bの下面に参照ポイントPを磁気的に取り付ける。次いで、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131上のクランクシャフト200上側へ移動した後、クランクシャフト200に向けてシャフト162Bを下降させる。この場合、制御部は、参照ポイントPのクランクシャフト200への接触を検出したとき、シャフト162Bの磁性をOFFに設定することにより、クランクシャフト200表面に参照ポイントPを磁気的に取り付ける。
【0030】
参照ポイントPの設定では、クランクシャフト200における参照ポイントPの設定箇所には高低差があるが、その高低差による影響は、シャフト162B上面の弾性部材162Cに吸収される。これにより、参照ポイントPの設定箇所には高低差がある場合でも、参照ポイントPを確実に設けることができる。また、シャフト162Bの移動方向は、図4に示すように、垂直方向だけでなく、図5に示すように、任意の角度方向となるように構成してもよい。この構成では、クランクシャフト200におけるアーム部202のカウンタウェイト部の側面に参照ポイントPを取り付けることが可能となる。また、必要に応じて回転駆動部133によってクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、参照ポイントPをクランクシャフト200の全表面に取り付けることができる。
【0031】
シャフト162Bは、参照ポイントPの設定後、ホルダ162A内へ上昇し、参照ポイント設定部161は、回転テーブル131から退避して所定位置に戻る。
【0032】
続いて、デジタイザ装置171では、撮影部172は、クランクシャフト200の計測位置に応じた位置調整後、次のようなスキャニングによりクランクシャフト200の形状測定を行う。
【0033】
プロジェクタ172Aのランプを移動スライドで所定ピッチで左右に移動させながらランプから縦縞パターンをクランクシャフト200に照射することにより、クランクシャフト200上に縦縞パターンを投影する。CCDカメラ172Bは、クランクシャフト200上で変化する縦縞パターンを高速に連続撮影する。この場合、回転テーブル131の角度位置を30度ずつ変更することにより、クランクシャフト200の全周の撮影を行う。また、回転駆動部133によってクランクシャフト200を軸線回りに適宜回転させることにより、クランクシャフト200の全表面の撮影を確実に行うことができる。
【0034】
デジタイザ装置171の演算部(図示略)では、ソフトウェアが、撮影部172により得られた撮影イメージに基づきクランクシャフト200の各領域の点群データを取得し、それら点群を合成することにより、クランクシャフト200全体の3次元データを生成する。この場合、最初に測定した領域と次に測定した領域との重なり合う部分にある共通の参照ポイントPを参照して各パッチを瞬時に自動合成することにより測定点群の合成を行う。そして、図11に示すように、クランクシャフト200の形状の3次元データD1と、目標設計データであるCADデータD2との誤差の和が最小になるような位置合わせを行い、そのデータの差異により形状の評価を行う。形状評価では、クランクシャフト200における各部位のデータの差異が所定値以下である場合、クランクシャフト200の形状を合格と判定し、所定値を超えている場合、クランクシャフト200の形状を不合格と判定する。
【0035】
以上のように本実施形態では、デジタイザ装置171を用いることにより、クランクシャフト200の形状の測定精度の向上を図ることができるのはもちろんのこと、測定前準備工程(酸化スケール除去工程および参照ポイント設定工程)およびスキャニング工程を自動化することにより、非接触形状測定の自動化を図ることができる。その結果、非接触形状測定の量産工程へのインライン化が可能となる。特に、クランクシャフト200が鋼材等の磁性材料からなる場合、参照ポイントPとしてマグネットを用いることにより、参照ポイントPの設定を確実に行うことができる。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。実施例では、図8に示すクランクシャフト300の形状測定を行った。
【0037】
実験例では、クランクシャフト300の酸化スケール除去し、クランクシャフト300に参照ポイントPを設定した後、クランクシャフト300の形状測定をデジタイザ装置によるスキャニングで行った。比較実験例では、クランクシャフト300の酸化スケールを除去し、クランクシャフト300の形状測定を接触測定装置で行った。クランクシャフト300の形状の測定箇所は、クランクピン部303表面の直径l1、ジャーナル軸部301表面の直径l2、アーム部302の縁部の長さl3、l4、および、クランクピン部303の中央部の直径l5である。実験例および比較実験例の測定結果を表1に示す。表1の計測値(単位mm)は、同一箇所3点の平均値とした。
【0038】
【表1】
【0039】
実験例のデジタイザ装置では、クランクピン部303の裏側部分のように通常の測定装置では測定が困難な部位でも、その形状に沿ったスキャニングが可能であり、表1から判るように、実験例のスキャニングによる計測値は、比較実験例の接触式によるものとの誤差がほとんどないことを確認した。これにより、デジタイザ装置によるスキャニングは、複雑な形状をなすクランクシャフトの形状評価に適用可能であり、その評価を高精度に行うことができることが判った。
【符号の説明】
【0040】
130…非接触測定装置、131…回転テーブル(回転手段)151…エアブロー部(ブロー手段)、161…参照ポイント設定部(参照ポイント設定手段)、171…デジタイザ装置、200…クランクシャフト(熱間鍛造異形品)、P…参照ポイント、W…ワーク,ビレット、予備成形品、製品(熱間鍛造異形品)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行うデジタイザ装置と、
前記熱間鍛造異形品の表面の酸化スケールを除去するブロー手段と、
前記酸化スケールが除去された熱間鍛造異形品の前記表面に参照ポイントを設ける参照ポイント設定手段と、
前記参照ポイントが設けられた熱間鍛造異形品の前記表面をデジタイザ装置によりスキャンするときに、前記熱間鍛造異形品を回転させる回転手段とを備えたことを特徴とする非接触形状測定装置。
【請求項2】
前記熱間鍛造異形品が磁性材料からなる場合、参照ポイントとしてマグネットを用いることを特徴とする請求項1に記載の非接触形状測定装置。
【請求項1】
スキャニングにより熱間鍛造異形品の形状測定を行うデジタイザ装置と、
前記熱間鍛造異形品の表面の酸化スケールを除去するブロー手段と、
前記酸化スケールが除去された熱間鍛造異形品の前記表面に参照ポイントを設ける参照ポイント設定手段と、
前記参照ポイントが設けられた熱間鍛造異形品の前記表面をデジタイザ装置によりスキャンするときに、前記熱間鍛造異形品を回転させる回転手段とを備えたことを特徴とする非接触形状測定装置。
【請求項2】
前記熱間鍛造異形品が磁性材料からなる場合、参照ポイントとしてマグネットを用いることを特徴とする請求項1に記載の非接触形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−217083(P2010−217083A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65999(P2009−65999)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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