説明

非水電解質二次電池、組電池、車両及び組電池搭載機器

【課題】 異常過熱状態となっても、短絡の発生が防止でき、正電位や負電位を集電部材等を用いて適切に導出した非水電解質二次電池を提供する。この非水電解質二次電池を複数備えた組電池、この組電池を備えた車両及び組電池搭載機器を提供する。
【解決手段】 非水電解質二次電池1は、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間にセパレータ40を介在させ、正極板20,負極板30及びセパレータを捲回軸AXに長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素10及び電池ケース80を備え、扁平捲回型発電要素は、平行捲回部10Pと湾曲捲回部10Cとからなり、電池ケースは、平行捲回部を挟む2つの平行壁部83を有し、セパレータは、湾曲セパレータ部40Cがそれぞれ、捲回軸に沿う第1方向DX1及び第2方向DX2のうち少なくとも一方向に、平行セパレータ部40Pよりも膨らんだ形態とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板のうち負極板と対向する正極対向部と負極板のうち正極板と対向する負極対向部との間全体にセパレータを介在させて、正極板、負極板及びセパレータを捲回した扁平捲回型発電要素を備える非水電解質二次電池、このような非水電解質二次電池を複数備えた組電池、車両及び組電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、充放電可能なリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池(以下、単に電池ともいう)が利用されている。
このような電池として、セパレータが熱収縮しても、正極板と負極板とが接触し短絡しないように、特許文献1には、いずれも帯状の正極(正極板)、負極(負極板)、及び、正極と負極との間に介在されるセパレータを捲回した電極捲回体(扁平捲回型発電要素)を備える非水電解質電池(非水電解質二次電池)が開示されている。この電池では、セパレータの長辺方向及び短辺方向の長さを、セパレータの熱収縮率を考慮しつつ、正極,負極の長辺方向及び短辺方向の長さよりも大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−217674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極捲回体の1形態として、捲回軸を中心として扁平な長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素が挙げられる。この扁平捲回型発電要素は、正極板、負極板及びセパレータが平行に配置された平行捲回部と、この平行捲回部を挟み、正極板、負極板及びセパレータが、それぞれ半円筒状に湾曲して配置された湾曲捲回部とを有する。
【0005】
ところで、非水電解質二次電池のリチウムイオン二次電池では、充放電に伴って、発電要素をなす正極板及び負極板が膨張・収縮するため、発電要素を収容する電池ケースの寸法が変化する。このような寸法変化に伴う電池性能の変化を抑制すべく、扁平捲回型発電要素を有する電池では、互いに平行に配置され、平行捲回部を挟む2つの平行壁部を有する電池ケースに、扁平捲回型発電要素を収容する。そして、その平行壁部の外側から扁平捲回型発電要素を圧縮して用いることが多い。
この場合、この扁平捲回型発電要素のうち、平行捲回部は、電池ケースの平行壁部を通じて圧縮されるので、この平行捲回部において、セパレータはこれと隣りあう正極板(正極板のうち負極板と対向する正極対向部)及び負極板(負極板のうち正極板と対向する負極対向部)にそれぞれ拘束される。一方、扁平捲回型発電要素のうちの湾曲捲回部には、外部からの押圧力が掛かりにくいので、この湾曲捲回部において、セパレータはこれと隣りあう正極板(正極対向部)及び負極板(負極対向部)に拘束されにくい。
【0006】
このような扁平捲回型発電要素が、電池ケースの内部で、例えば過充電によって、異常過熱状態(例えば、電池内の温度が150℃以上となる状態)になることがある。すると、セパレータは熱収縮しようとするが、なかでも、平行捲回部に位置するセパレータ(後述の平行セパレータ部)に比して、湾曲捲回部に位置するセパレータ(後述の湾曲セパレータ部)は、捲回軸方向に熱収縮し易い。平行捲回部のセパレータは、正極板(正極対向部)と負極板(負極対向部)とに挟まれて拘束され熱収縮するのが妨げられるのに対し、湾曲捲回部のセパレータは、正極板(正極対向部)と負極板(負極対向部)との間に挟んで熱収縮を妨げる摩擦力が生じ難いために、大きく熱収縮してしまうためであると考えられる。
しかるに、湾曲捲回部のセパレータがその幅方向(捲回軸方向)に熱収縮すると、湾曲捲回部のうち幅方向(捲回軸方向)の端部において正極対向部と負極対向部との間(例えば、互いに対向する正極活物質層と負極活物質層との間や、負極活物質層の幅を正極活物質層に比して大きくした場合において、互いに対向する正極集電箔と負極活物質層との間)に一部セパレータが介在しなくなるために、これらが接触し、正極板と負極板とが短絡する虞がある。
【0007】
これに対し、特許文献1の電池では、セパレータの捲回軸方向(短辺方向)の長さを、セパレータの熱収縮率を考慮しつつ、正極及び負極の捲回軸方向の長さよりも一様に大きくするとしている。しかし、このようにしては、平行捲回部においても、セパレータが正極板や負極板を大きく覆ってしまい、これら正極板や負極板に集電部材(例えば、電池の内部から外部に延出する集電部材)やタブを接続し難くなるなど、平行捲回部で正電位や負電位を取り出す構造が形成しにくくなる。
【0008】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであって、異常過熱状態となっても、短絡の発生が防止でき、正電位や負電位を集電部材等を用いて適切に導出した非水電解質二次電池を提供することを目的とする。また、このような非水電解質二次電池を複数備えた組電池、この組電池を備えた車両及び組電池搭載機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、帯状の正極集電箔及びこの正極集電箔上に形成された帯状の正極活物質層からなる正極板と、帯状の負極集電箔及びこの負極集電箔上に形成された帯状の負極活物質層からなる負極板と、帯状のセパレータと、を有し、上記正極板のうち上記負極板に対向する正極対向部と上記負極板のうち上記正極板に対向する負極対向部との間全体に上記セパレータを介在させ、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータを、捲回軸を中心として横断面が扁平な長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素、及び、内部に上記扁平捲回型発電要素を収容する電池ケース、を備える非水電解質二次電池であって、上記扁平捲回型発電要素は、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが、互いに平行に配置された平行捲回部と、上記平行捲回部を挟む2つの湾曲捲回部であって、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが、それぞれ半円筒状に湾曲して配置された湾曲捲回部と、からなり、上記電池ケースは、それぞれ平板状で、互いに平行に配置され、上記平行捲回部を挟む2つの平行壁部を有し、上記セパレータは、上記扁平捲回型発電要素の上記湾曲捲回部に位置する湾曲セパレータ部がそれぞれ、上記捲回軸に沿う第1方向及びこれと逆方向の第2方向のうち、少なくとも一方向に、上記平行捲回部に位置する平行セパレータ部よりも膨らんだ形態とされてなる非水電解質二次電池である。
【0010】
上述の電池では、扁平捲回型発電要素の湾曲捲回部において、セパレータの湾曲セパレータ部が平行セパレータ部よりも、捲回軸に沿う第1方向及び第2方向のうち、少なくとも一方向に膨らんだ形態とされている。このため、平行壁部の外側から押圧するなど、平行捲回部を圧縮した状態において、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となったために、セパレータのうち湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮したとしても、この湾曲セパレータ部のうち捲回軸方向の少なくとも一方向において、平行セパレータ部よりも湾曲セパレータ部を膨らませて形成しておいた分、熱収縮の影響をなくし、正極板の正極対向部と負極板の負極対向部との間に湾曲セパレータ部を介在させ続けることができる。かくして、湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮することによる短絡の発生を防止することができ、信頼性の高い電池とすることができる。
その一方で、平行捲回部では、セパレータのうちの平行セパレータ部が相対的に幅狭となっており、正極板や負極板に集電部材等を接続し易い。このため、平行捲回部において、正電位や負電位を集電部材等を用いて適切に導出した電池とすることができる。
【0011】
なお、扁平捲回型発電要素としては、例えば、正極板及び負極板の少なくともいずれかに別体のタブを接続したものや、このようなタブを正極板及び負極板に接続しないで集電部材と直接接続したものが挙げられる。また、湾曲セパレータ部の形態としては、捲回軸に沿う第1方向及びこれと逆方向の第2方向のうち、少なくとも一方向に、例えば、矩形状、半円状、三角形状、台形状等に膨らんだ形態が挙げられる。
【0012】
さらに、上述の非水電解質二次電池であって、前記セパレータは、前記湾曲セパレータ部のうち、前記捲回軸から最も離れた最離隔湾曲セパレータ部が、最も膨らんだ形態とされてなる非水電解質二次電池とすると良い。
【0013】
扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となった際、セパレータの湾曲セパレータ部のうち、捲回軸から最も離れた最離隔湾曲セパレータ部が最も大きく熱収縮すると見込まれる。これは、湾曲セパレータ部のうち、捲回軸から離れた部位ほど、正極板(正極対向部)及び負極板(負極対向部)にそれぞれ拘束されている平行セパレータ部からも離れているので、最離隔湾曲セパレータ部が、正極板(正極対向部)及び負極板(負極対向部)に最も拘束されにくいからである。
これに対し、上述の電池では、セパレータの湾曲セパレータ部のうち、最も熱収縮が生じやすい最離隔湾曲セパレータ部を最も膨らませた形態にしてあるので、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となっても、湾曲捲回部において、正極対向部と負極対向部との間に、最離隔湾曲セパレータ部を含む湾曲セパレータ部を介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮することによる短絡の発生を適切に防止することができる。
【0014】
なお、湾曲セパレータ部の形態としては、捲回軸から最も離れた最離隔湾曲セパレータ部が湾曲セパレータ部のうちで最も膨らんだ形態であれば良く、第1方向及び第2方向のうち、少なくとも一方向に、例えば、半円状、三角形状のほか、矩形状、台形状等に膨らんだ形態が挙げられる。なかでも、湾曲セパレータ部の形態が、第1方向及び第2方向のうち、少なくとも一方向に、矩形状又は台形状に膨らんだ形態が、扁平捲回型発電要素を捲回する際に巻きずれが生じても、最離隔湾曲セパレータ部が湾曲セパレータ部のうちで最も膨らんだ形態に維持し易く、より好ましい。
【0015】
または、前述の非水電解質二次電池であって、前記正極板は、前記正極集電箔がアルミニウムからなり、この正極集電箔のうち、前記第1方向側に帯状に、この正極集電箔が露出する正極箔露出部を設ける形態で、前記正極活物質層が上記正極集電箔上に形成されてなり、前記負極板は、前記負極集電箔が銅からなり、この負極集電箔のうち、前記第2方向側に帯状に、この負極集電箔が露出する負極箔露出部を設ける形態で、前記負極活物質層が上記負極集電箔上に形成されてなり、前記セパレータは、前記湾曲セパレータ部が、上記第1方向及び上記第2方向のうち、少なくとも上記第1方向に膨らんだ形態とされてなる非水電解質二次電池とすると良い。
【0016】
湾曲セパレータ部における熱収縮の程度は、第1方向と第2方向とで異なることが判ってきた。これは、正極板の正極集電箔と負極板の負極集電箔との熱伝導の違いによるものと考えられる。即ち、正極集電箔をなすアルミニウムの熱伝導率(236W・m-1・K-1)は、負極集電箔をなす銅の熱伝導率(398W・m-1・K-1)よりも小さい。従って、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となった際に、負極箔露出部に比して熱が伝わり難い正極箔露出部は放熱しづらいので、負極箔露出部よりも高温になりがちである。このため、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となると、湾曲セパレータ部のうち、正極箔露出部に近い第1方向側の部位が、負極箔露出部に近い第2方向側の部位よりも大きく熱収縮すると考えられる。
そこで、上述の電池では、セパレータのうち湾曲セパレータ部を少なくとも第1方向に膨らんだ形態としてある。このため、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となっても、大きく熱収縮しがちな湾曲捲回部のうち第1方向端部において、正極対向部と負極対向部との間に、セパレータの湾曲セパレータ部を介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮することによる短絡の発生を適切に防止することができる。
【0017】
或いは、本発明の他の態様は、前述のいずれかの非水電解質二次電池を、前記平行壁部に直交する積層方向に複数積層し、これらを上記積層方向に圧縮して保持してなる組電池である。
【0018】
上述の組電池では、前述の電池を、積層方向に複数積層し、これらを積層方向に圧縮して保持してなる。このため、各電池の外部への膨れ(寸法変化)を防止しつつ、少なくとも1つの電池において、扁平捲回型発電要素が異常過熱状態となったために、セパレータのうちの湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮した場合でも、正極対向部と負極対向部との間に、湾曲セパレータ部を介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部が捲回軸方向に熱収縮することによる短絡の発生を防止することができ、信頼性の高い組電池とすることができる。
【0019】
或いは、本発明の他の態様は、前述の組電池を搭載し、この組電池に蓄えた電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両である。
【0020】
上述の車両は、短絡を防止した組電池を搭載しているので、安定して使用できる車両とすることができる。
【0021】
なお、車両としては、組電池による電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両であれば良く、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータが挙げられる。
【0022】
或いは、本発明の他の態様は、前述の組電池を搭載し、この組電池に蓄えた電気エネルギを駆動エネルギ源の全部又は一部に使用する組電池搭載機器である。
【0023】
上述の組電池搭載機器は、短絡を防止した組電池を搭載しているので、安定して使用できる組電池搭載機器とすることができる。
【0024】
なお、組電池搭載機器としては、組電池を搭載し、これをエネルギ源の全部又は一部に使用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池(組電池)駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池(組電池)で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態1,変形形態1にかかる組電池の部分破断斜視図である。
【図2】実施形態1,変形形態1にかかる組電池の平面図である。
【図3】実施形態1にかかる電池の斜視図である。
【図4】実施形態1,変形形態1にかかる電池の端面図(図3のA−A部,図9のB−B部)である。
【図5】実施形態1,変形形態1にかかる捲回前の正極板の斜視図である。
【図6】実施形態1,変形形態1にかかる捲回前の負極板の斜視図である。
【図7】実施形態1にかかる捲回前のセパレータの平面図である。
【図8】実施形態1にかかる扁平捲回型発電要素における正極板、負極板及びセパレータの関係を示す説明図である。
【図9】変形形態1にかかる電池の斜視図である。
【図10】変形形態1にかかる捲回前のセパレータの平面図である。
【図11】変形形態1にかかる扁平捲回型発電要素における正極板、負極板及びセパレータの関係を示す説明図である。
【図12】実施形態2にかかる車両の説明図である。
【図13】実施形態3にかかる電池搭載機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる組電池100について説明する。図1にこの組電池100の部分破断斜視図を、図2に組電池100の平面図をそれぞれ示す。組電池100は、50個の電池1,1と、積層された電池1を挟んで、積層方向DL両端側にそれぞれ配置された2つのエンドプレート(第1エンドプレート120,第2エンドプレート130)とを有する。なお、この組電池100は、積層方向DLに2列に列置された複数の電池1,1を組電池ケース150内に収容している。また、複数の電池1,1を、銅製で板状のバスバBBによって互いに直列に接続している。
このうち、金属製で矩形板状の第1エンドプレート120及び第2エンドプレート130は、複数の電池1,1の積層方向DLの両端側に配置され、各電池1,1における、積層方向DLの寸法変化を抑制している。具体的には、これら第1エンドプレート120及び第2エンドプレート130は、これらを積層方向DLに挿通する、図示しない棒状のボルトを複数用いて、積層方向DLに積層した電池1,1を、積層方向DLに所定の圧力で挟持している。このため、充放電による電池1の電池ケース80の寸法変化を抑制し、これに伴う電池性能の変化を抑制することができる。
【0027】
次に、電池1について、図面を参照しつつ説明する。この電池1は、いずれも帯状の正極板20と負極板30とセパレータ40とを有し、これらを捲回軸AXを中心として横断面が扁平な長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素(以下、単に発電要素ともいう)10、及び、内部にこの発電要素10を収容する電池ケース80を備える、非水電解質二次電池のリチウムイオン二次電池である(図3参照)。なお、この電池1は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合有機溶媒(体積比がEC:DMC:EMC=3:3:4)に、1mol/lの溶質(LiPF6)を添加してなる電解液(図示しない)を密閉して収容している。
【0028】
この電池1の電池ケース80は、共にアルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋88を有する。なお、この電池ケース80と発電要素10との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。
このうち封口蓋88は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋88には、発電要素10と接続している正極集電部材91及び負極集電部材92のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部91A及び負極端子部92Aが貫通しており、図3中、上方に向く蓋表面88aから突出している。これら正極端子部91A及び負極端子部92Aと封口蓋88との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋88には矩形板状の安全弁97も封着されている。
【0029】
また、電池ケース本体81は有底矩形箱形である。即ち、封口蓋88と対向する矩形平板状のケース底部82、及び、このケース底部82の四方の縁から、このケース底部82の垂直方向に延出する壁部(次述する第1壁部83及び第2壁部84)からなる(図3参照)。この壁部は、発電要素10の捲回軸AXに平行な位置にある、平板状の2つの第1壁部83,83と、捲回軸AXに垂直な位置にある、平板状の2つの第2壁部84,84とからなる。
このうち、2つの第1壁部83,83は、互いに平行に配置され、発電要素10の平行捲回部10P(後述)を挟む。
【0030】
また、発電要素10は、図3、及び、図3の電池1の端面図(A−A部)である図4に示すように、帯状の正極板20及び負極板30が、帯状のセパレータ40を介して、これらを捲回軸AXを中心として横断面が扁平な長円形状に捲回してなる捲回型である。なお、この発電要素10の最外側及び最内側には、セパレータ40のみが捲回されている。
【0031】
この発電要素10のうち、薄板帯状の正極板20は、帯状でアルミニウムからなる正極集電箔28(寸法が3000mm×66mm)と、この正極集電箔28のうち、短手方向DB(捲回軸AX方向)の第1方向DX1側に、この正極集電箔28が露出する正極箔露出部25(3000mm×16mm)を帯状に設ける形態で、正極集電箔28上に偏って形成されてなる正極活物質層21(3000mm×50mm)とを有している(図5参照)。このうち、正極活物質層21は、LiNiCoAlO2からなる正極活物質粒子、PVDFからなる結着剤、及び、アセチレンブラックからなる導電助剤を含む。
【0032】
上述の正極板20は、発電要素10を形成した場合に、負極板30(後述する負極対向部30F)と対向する正極対向部20Fと、対向しない正極非対向部20Nとに分けられる。なお、上述の正極活物質層21は、負極活物質層31よりも幅狭にされている。従って、正極対向部20Fは、図8に示すように、正極活物質層21全体と正極箔露出部25の一部(次述する露出対向部25F)とからなる。
【0033】
また、正極板20の正極箔露出部25は、発電要素10を形成した場合に、負極板30(負極対向部30F)と対向する露出対向部25Fと、逆に負極板30(負極対向部30F)とは非対向の露出非対向部25Nとに分けられる(図8参照)。なお、本実施形態1では、露出非対向部25Nは、正極非対向部20Nに一致する。
【0034】
一方、薄板帯状の負極板30は、帯状で銅からなる負極集電箔38(3300mm×69mm)と、この負極集電箔38のうち、短手方向DB(捲回軸AX方向)の第2方向DX2側に、この負極集電箔38が露出する負極箔露出部35(3300mm×13mm)を帯状に設ける形態で、負極集電箔38上に偏って形成されてなる負極活物質層31(3300mm×56mm)とを有している(図6参照)。このうち負極活物質層31は、グラファイトからなる負極活物質粒子、及び、PVDFからなる結着剤を含む。
【0035】
上述の負極板30は、発電要素10を形成した場合に、正極板20(正極対向部20F)と対向する負極対向部30Fと、対向しない負極非対向部30Nとに分けられる(図8参照)。なお、前述したように、負極活物質層31は、正極活物質層21よりも幅太である(これにより、電池1の使用時(充放電時)に、負極板30でリチウム金属が析出するのを防止できる)。このため、負極対向部30Fには、図8に示すように、負極活物質層31の一部(中央部分の活物質層対向部31F)が該当する。つまり、負極活物質層31について見ると、正極対向部20F(正極活物質層21及び露出対向部25F)と対向する活物質層対向部31Fと、正極活物質層21のみならず正極板20にも対向しない活物質層非対向部31Nとになる(図8参照)。
一方、負極非対向部30Nは、図8に示すように、活物質層非対向部31Nと負極箔露出部35とからなる。
【0036】
また、帯状のセパレータ40は、ポリエチレンを2層のポリプロピレンの間に挟んでなる三層セパレータである。このセパレータ40は、図7に示すように、このうちの短手方向DB(捲回軸AX方向)の両端が、それぞれ方形波状のジグザグに裁断されている。そして、このセパレータ40は、短手方向DBに第1寸法W1の平行セパレータ部40P、及び、この平行セパレータ部40Pよりも大きな第2寸法W2の湾曲セパレータ部40Cからなる。このセパレータ40は、捲回された状態で、正極対向部20F(正極活物質層21)と負極対向部30Fとの間に介在する。つまり、このセパレータ40は、発電要素10において、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間全体にわたって介在し、正極板20及び負極板30の間での短絡の発生を防止する。
【0037】
なお、湾曲セパレータ部40Cは、短手方向DBの両方向に、それぞれ平行セパレータ部40Pから突出寸法d1,d2(=(W2−W1)/2)だけ突出している。また、捲回された状態で、湾曲セパレータ部40Cは、発電要素10の湾曲捲回部10C(次述)に、平行セパレータ部40Pは、発電要素10の平行捲回部10P(次述)にそれぞれ位置する。
また、このセパレータ40を、図7中、左側から捲回して扁平捲回型発電要素10を作製した場合に、この発電要素10の湾曲捲回部10Cに、各々の湾曲セパレータ部40Cを位置させるため、このセパレータ40は、平行セパレータ部40Pの長手方向DAの第4寸法W4を一定にしつつ、湾曲セパレータ部40Cの長手方向DAの第5寸法W5を、図7中、右側ほど順に大きくなる形態としてある。
【0038】
上述の正極板20、負極板30及びセパレータ40を捲回してなる発電要素10は、これらが互いに平行に配置された平行捲回部10Pと、この平行捲回部10Pを挟み、正極板20、負極板30及びセパレータ40が、それぞれ半円筒状に湾曲して配置された、2つの湾曲捲回部10C,10Cとからなる(図4参照)。なお、この発電要素10の正極板20及び負極板30はそれぞれ、平行捲回部10Pにおいて、正極集電部材91又は負極集電部材92と接合している(図3参照)。また、湾曲捲回部10Cでは、セパレータ40の湾曲セパレータ部40Cがそれぞれ、捲回軸AXに沿う第1方向DX1及び第2方向DX2の両方向に、平行捲回部10Pの平行セパレータ部40Pよりも矩形状に突出した(膨らんだ)形態で配置されている(図3参照)。さらに、湾曲セパレータ部40Cのうち、捲回軸AXから最も離れた位置の最離隔湾曲セパレータ部40CLが、平行セパレータ部40Pから第1方向DX1及び第2方向DX2に最も膨らんだ形態、即ち、最離隔湾曲セパレータ部40CLでそれぞれ最大の突出寸法d1,d2となっている(図3参照)。従って、正極対向部20F,負極対向部30Fから第1方向DX1及び第2方向DX2に最も突出した形態となっている。
【0039】
ところで、本発明者らは、本実施形態1にかかる組電池100の電池1について、この電池1の内部で発電要素10が異常過熱状態となった際に、正極板20と負極板30とが短絡するかどうかを調べた。
具体的には、上述の電池1を用いて加熱試験を実施した。なお、この電池1の正極板20は、図8に示すように、短手方向DBの寸法が66mmの正極集電箔28の両主面上に、短手方向DBの寸法が50mmの正極活物質層21をそれぞれ配置してなる。一方、負極板30は、短手方向DBの寸法が69mmの負極集電箔38の両主面上に、短手方向DBの寸法が56mmの負極活物質層31をそれぞれ配置してなる。また、セパレータ40は、第1寸法W1が62mm、第2寸法W2が82mm、及び、突出寸法d1,d2がそれぞれ10mmである。また、正極対向部20F,負極対向部30Fから第1方向DX1又は第2方向DX2に延びる湾曲セパレータ部40Cの先端までの距離は、それぞれ16mmである。
【0040】
加熱試験では、まず、電池ケース80の第1壁部83において、金属製の2枚のエンドプレートを用いて挟持した電池1(充電状態をSOC80%に調整済)を恒温槽内に配置して、恒温槽の槽内温度を5℃/分の速度で160℃まで昇温させた。そして、槽内温度が160℃に達したところで、槽内温度を30分間保持させた。なお、試験中の電池1の電池温度及び端子間電圧を別途測定した。
なお、この加熱試験において、試料数を5(n=5)とした。
【0041】
また、比較例として、第2寸法W2を、第1寸法W1と同じ62mmとし、湾曲捲回部の湾曲セパレータ部が、捲回軸AX方向に平行セパレータ部から膨らんでいないセパレータを用いた以外は、電池1と同様の比較電池C1を用意して、電池1と同様にして加熱試験を実施した。なお、比較電池C1についても、電池1と同様、加熱試験における試料数を5(n=5)とした。
【0042】
上述の加熱試験の結果、比較電池C1については、いずれの試料とも、加熱試験中の端子間電圧が、著しく(1V以上も)低下した。このことから、加熱試験によって、比較電池C1で短絡が発生したことが判る。また、試験中の電池温度の最高値が約210℃まで上昇し、恒温槽の槽内温度の最高値(160℃)よりも高い。このことからも、試験中に短絡が発生して、恒温槽の槽内温度よりも高くなったと考えられる。
一方、電池1については、いずれの試料とも、加熱試験中に端子間電圧の著しい低下は確認できなかった。また、試験中の電池温度の最高値が、恒温槽の温度と同じ160℃であった。このことから、加熱試験によって、電池1で短絡が発生しなかったことが判る。
【0043】
これらから、以下のことが考えられる。即ち、エンドプレートを用いて、電池1及び比較電池C1の第1壁部83の外側から発電要素を圧縮した場合、この発電要素のうち、平行捲回部は、電池ケース80の第1壁部83を通じて圧縮される。このため、この平行捲回部において、セパレータ(各平行セパレータ部)は、これと隣りあう正極板20(正極対向部20F、更に詳しくは正極活物質層21及び露出対向部25F)と負極板30(負極対向部30F、更に詳しくは活物質層対向部31F)との間で圧縮され、それぞれ拘束され変形されにくくなっている。一方、発電要素のうちの湾曲捲回部には、外部から押圧力が掛かりにくいので、この湾曲捲回部において、セパレータ(各湾曲セパレータ部)は、これと隣りあう正極板20(正極対向部20F)及び負極板30(負極対向部30F)に拘束されにくい。
このような発電要素が、電池ケースの内部で、異常過熱状態となると、セパレータは熱収縮しようとするが、なかでも、平行捲回部に位置して拘束されている平行セパレータ部に比して、湾曲捲回部に位置して拘束されにくい湾曲セパレータ部は、捲回軸方向に熱収縮し易い。
【0044】
しかるに、湾曲捲回部のセパレータがその幅方向(捲回軸方向)に熱収縮すると、湾曲捲回部のうち幅方向(捲回軸方向)の端部において、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間にセパレータ(湾曲セパレータ部)が介在しない部分が生じ、正極板20と負極板30とが短絡する虞がある(具体的には、正極箔露出部25の露出対向部25Fと負極活物質層31の活物質層対向部31Fとの間で、或いは、正極活物質層21と活物質層対向部31Fとの間で短絡が生じる虞がある)。
比較電池C1では、湾曲捲回部の湾曲セパレータ部が、捲回軸AX方向に平行セパレータ部から膨らんでいない。このため、異常過熱状態で、湾曲セパレータ部が捲回軸方向AXに大きく熱収縮すると、湾曲捲回部において、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間にセパレータが介在しない部分が生じ、短絡に至ったと考えられる。
一方、電池1では、湾曲捲回部の湾曲セパレータ部が、捲回軸AX方向に平行セパレータ部から膨らませてある。このため、異常過熱状態となって、湾曲セパレータ部が熱収縮しても、湾曲捲回部において、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間全体にわたってセパレータを介在させ続けることができ、熱収縮による短絡の発生を防止できたと考えられる。
【0045】
このように、電池1では、発電要素10の湾曲捲回部10Cにおいて、セパレータ40の湾曲セパレータ部40Cが平行セパレータ部40Pよりも、捲回軸AXに沿う第1方向DX1及び第2方向DX2の両方向に膨らんだ形態とした。このため、平行捲回部10Pを圧縮した状態において、発電要素10が異常過熱状態となり、セパレータ40のうち湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AX方向に熱収縮したとしても、平行セパレータ部40Pよりも、この湾曲セパレータ部40Cを膨らませて形成しておいた分、熱収縮の影響をなくし、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間に、湾曲セパレータ部40Cを介在させ続けることができる。かくして、湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AX方向に熱収縮することによる短絡の発生を防止することができ、信頼性の高い電池1とすることができる。
【0046】
また、この電池1では、平行捲回部10Pにおいて、セパレータ40のうちの平行セパレータ部40Pが相対的に幅狭となっている。このため、平行捲回部10Pにおいて、正極板20(正極箔露出部25)に正極集電部材91、負極板30(負極箔露出部35)に負極集電部材92を接続させ易い。このため、平行捲回部10Pにおいて、正電位や負電位を集電部材91,92を用いて適切に導出した電池1とすることができる。
【0047】
特に、この電池1では、セパレータ40の湾曲セパレータ部40Cのうち、発電要素10が異常過熱状態となった場合に、最も大きく収縮すると見込まれる最離隔湾曲セパレータ部40CLを、最も膨らませた形態としてある。このため、発電要素10が異常過熱状態となっても、湾曲捲回部10Cにおいて、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間に、最離隔湾曲セパレータ部40CLを含む湾曲セパレータ部40Cを介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AX方向に熱収縮することによる短絡の発生を適切に防止することができる。
【0048】
また、組電池100では、上述の電池1を、積層方向DLに複数積層し、これらを積層方向DLに圧縮して保持してなる。このため、各電池1,1の外部への膨れ(寸法変化)を防止しつつ、少なくとも1つの電池1において、発電要素10が異常過熱状態となったために、セパレータ40のうちの湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AX方向に熱収縮した場合でも、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間に、湾曲セパレータ部40Cを介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AX方向に熱収縮することによる短絡の発生を防止することができ、信頼性の高い組電池100とすることができる。
【0049】
次に、本実施形態1にかかる組電池100の製造方法について説明する。
まず、組電池100をなす電池1の、正極板20を作製する。具体的には、正極活物質粒子、結着剤及び導電助剤を溶媒中で混練してできたペースト(図示しない)を、帯状の正極集電箔28の両主面に塗布した。なお、両主面とも、この正極集電箔28の短手方向DB(捲回軸AX)の第1方向DX1側にはペーストを塗布しない。これにより、短手方向DB(捲回軸AX)の第1方向DX1側には正極箔露出部25ができる(図5参照)。塗布後、ペーストを乾燥させた。
その後、図示しないロールプレスで、正極集電箔28の両主面上で乾燥させたペーストを圧縮し、正極活物質層21,21を有する正極板20を作製した(図5参照)。
【0050】
一方、負極板30を作製する。具体的には、負極活物質粒子及び結着剤を溶媒中で混練してできたペースト(図示しない)を、帯状の負極集電箔38の両主面に塗布した。なお、両主面とも、この負極集電箔38の短手方向DB(捲回軸AX)の第2方向DX2側にはペーストを塗布しない。これにより、短手方向DB(捲回軸AX)の第2方向DX2側には負極箔露出部35ができる(図6参照)。塗布後、ペーストを乾燥させた。
その後、図示しないロールプレスで、負極集電箔38の両主面上で乾燥させたペーストを圧縮し、負極活物質層31,31を有する負極板30を作製した(図6参照)。
【0051】
上述のように作製した正極板20及び負極板30を、前述した2つのセパレータ40,40と共に捲回し、発電要素10とする。具体的には、捲回軸AXを中心に径方向の外側に向かって、セパレータ40、負極板30、セパレータ40、正極板20の順に重ねた状態で捲回する。
まず、外径が30mmの円筒形状の巻芯材(図示しない)の周りに、セパレータ40を数周、捲回した後、そのセパレータ40の径方向外側に負極板30を配置し、セパレータ40と共に巻芯材の周りに捲回する。次いで、負極板30の径方向外側にもう1つのセパレータ40を、さらに、このセパレータ40の径方向外側に正極板20をそれぞれ配置し、これらセパレータ40及び正極板20を巻芯材の周りに捲回する。なお、セパレータ40を配置する際に、負極板30を介して、2つのセパレータ40,40の湾曲セパレータ部40Cが、径方向にそれぞれ重なるようにする。また、正極板20と負極板30とを配置する際に、負極活物質層31の短手方向DB中央に、セパレータ40を介して、正極活物質層21が位置するように配置する(図8参照)。
このようにして、正極板20、負極板30及びセパレータ40,40を、巻芯材の周りに捲回した後、巻芯材を捲回体の中心から抜き外した。そして、セパレータ40の湾曲セパレータ部40Cが捲回軸AXから最も離れるように、捲回体を押し潰して、扁平な長円形状に捲回してなる捲回型の発電要素10を製造する(図3,4参照)。
【0052】
その後は、平行捲回部10Pにおいて、正極板20の正極箔露出部25に正極集電部材91を、負極板30の負極箔露出部35に負極集電部材92をそれぞれ溶接した。なお、電池1の平行捲回部10Pでは、セパレータ40のうちの平行セパレータ部40Pが相対的に幅狭となっており、正極板20(正極箔露出部25)に正極集電部材91、負極板30(負極箔露出部35)に負極集電部材92を接続し易い。
正極集電部材91,負極集電部材92を接続した発電要素10を電池ケース本体81に挿入し、前述した電解液を注入後、封口蓋88で電池ケース本体81を溶接で封口する。かくして、電池1ができあがる(図3参照)。
【0053】
上述のようにして作製した複数の電池1,1を、組電池ケース150内で積層方向DLに2列に列置して、積層方向DLの両側からこれら電池1,1を挟持しつつ、第1エンドプレート120及び第2エンドプレート130を配置した。その後、複数の電池1,1が直列に接続するよう、各電池1,1間で端子部(正極端子部91A,負極端子部92A)を板状のバスバBBを用いて接続した。かくして組電池100が完成する(図1参照)。
【0054】
(変形形態1)
次に、本発明の変形形態1にかかる組電池200について、図1,2,4,9〜11を参照しつつ説明する。
この組電池200は、湾曲捲回部において、セパレータ240の湾曲セパレータ部240Cがそれぞれ、捲回軸AXに沿う第1方向DX1のみ、平行捲回部210Pの平行セパレータ部240Pよりも矩形状に延出した(膨らんだ)形態とされている電池を備えている点で、前述の実施形態1にかかる組電池100と異なり、それ以外は同様である。
そこで、実施形態1にかかる組電池100と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容のものには同番号を付して説明する。
【0055】
この組電池200は、50個の電池201,201と、実施形態1の組電池100と同様、積層された電池201を挟んで、積層方向DL両端側にそれぞれ配置された2つのエンドプレート(第1エンドプレート120,第2エンドプレート130)とを有する(図1,2参照)。
【0056】
このうち、電池201は、帯状のセパレータ240と、実施形態1の電池1と同様の、いずれも帯状の正極板20及び負極板30とを有し、これらを捲回軸AXを中心として横断面が扁平な長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素(発電要素)210、及び、実施形態1の電池1と同様の電池ケース80を備えるリチウムイオン二次電池である(図9参照)。
このうち、発電要素210に用いている、帯状のセパレータ240は、実施形態1の電池1と同じ、ポリエチレンを2層のポリプロピレンの間に挟んでなる三層セパレータである。但し、このセパレータ240は、図10に示すように、このうちの短手方向DB(捲回軸AX方向)のうちの第1方向DX1側の端縁のみが、方形波状のジグザグに裁断され、第2方向DX2側の端縁は直線状にされている点で、実施形態1とは異なる。
このセパレータ240は、短手方向DBが第1寸法W1の平行セパレータ部240P、及び、この平行セパレータ部240Pよりも大きな第3寸法W3の湾曲セパレータ部240Cからなる。なお、実施形態1と同様に、湾曲セパレータ部240Cは発電要素210の湾曲捲回部210Cに、平行セパレータ部240Pは、発電要素210の平行捲回部210Pにそれぞれ位置している。
【0057】
発電要素210は、正極板20、負極板30及びセパレータ240が互いに平行に配置された平行捲回部210Pと、この平行捲回部210Pを挟み、正極板20、負極板30及びセパレータ240が、それぞれ半円筒状に湾曲して配置された、2つの湾曲捲回部210C,210Cとからなる(図9参照)。なお、湾曲捲回部210Cには、セパレータ240の各湾曲セパレータ部240Cが位置しており、それぞれ平行捲回部210Pの平行セパレータ部240Pよりも捲回軸AXに沿う第1方向DX1に突出している(図9参照)。また、実施形態1と同様、湾曲セパレータ部240Cのうち、捲回軸AXから最も離れた位置の最離隔湾曲セパレータ部240CLが、平行セパレータ部240Pから第1方向DX1に最も膨らんだ形態とされている(図9参照)。
【0058】
ところで、実施形態1における比較電池C1を加熱試験後に解体して、セパレータのうち、湾曲捲回部に位置していた部位を観察すると、このうち、第1方向DX1側の端縁が、第2方向DX2側の端縁よりも、大きく熱収縮していることが判った。
これは、正極板20の正極集電箔28と負極板30の負極集電箔38との熱伝導の違いによるものと考えられる。即ち、正極集電箔28をなすアルミニウムの熱伝導率(236W・m-1・K-1)は、負極集電箔38をなす銅の熱伝導率(398W・m-1・K-1)よりも小さい。従って、発電要素が異常過熱状態となった際に、負極箔露出部35に比して熱が伝わり難い正極箔露出部25は放熱しづらいので、負極箔露出部35よりも高温になりがちである。このため、第1方向DX1側に正極箔露出部25、第2方向DX2側に負極箔露出部35をそれぞれ設けた、比較電池C1の発電要素が異常過熱状態になると、湾曲セパレータ部のうち、正極箔露出部25に近い第1方向DX1側の部位が、負極箔露出部35に近い第2方向DX2側の部位よりも大きく熱収縮したと考えられる。この結果から、セパレータの湾曲セパレータ部を、少なくとも第1方向DX1側に膨らませた形態とすることで、効果的に短絡の発生を防止できると考えられた。
【0059】
そこで、本発明者らは、本変形形態1にかかる組電池200の電池201について、電池1と同様にして、加熱試験を実施した(n=5)。
なお、この電池201の正極板20は、図11に示すように、短手方向DBの寸法が66mmの正極集電箔28の両主面上に、短手方向DBの寸法が50mmの正極活物質層21をそれぞれ配置してなる。一方、負極板30は、短手方向DBの寸法が69mmの負極集電箔38の両主面上に、短手方向DBの寸法が56mmの負極活物質層31をそれぞれ配置してなる。また、セパレータ240は、第1寸法W1が62mm、第3寸法W3が72mm、及び突出寸法d1が10mmである。
【0060】
上述の加熱試験の結果、電池201では、いずれの試料とも、加熱試験中、端子間電圧の著しい低下は確認できなかった。また、試験中の電池温度の最高値が、恒温槽の温度と同じ160℃であった。このことから、加熱試験によって、電池201で短絡が発生しなかったことが判る。
【0061】
かくして、本変形形態1の電池201では、セパレータ240のうち湾曲セパレータ部240Cが第1方向DX1に膨らんだ形態としてある。このため、発電要素210が異常過熱状態となっても、大きく熱収縮しがちな湾曲捲回部210Cのうち第1方向DX1端部において、正極対向部20Fと負極対向部30Fとの間に、セパレータ240の湾曲セパレータ部240Cを介在させ続けることができる。従って、湾曲セパレータ部240Cが捲回軸AX方向に熱収縮することによる短絡の発生を適切に防止することができる。
【0062】
次に、本変形形態1にかかる組電池200の製造方法について説明する。
まず、実施形態1の電池1と同様、正極板20及び負極板30を作製する。その後、これら正極板20及び負極板30を、前述した2つのセパレータ240,240と共に捲回し、発電要素210とする。具体的には、捲回軸AXを中心に径方向の外側に向かって、セパレータ240、負極板30、セパレータ240、正極板20の順に重ねた状態で捲回する。なお、正極板20又は負極板30を介して、2つのセパレータ240,240の湾曲セパレータ部240C同士が、発電要素210の径方向にそれぞれ重なるように、2つのセパレータ240,240を配置する。また、正極板20と負極板30とを配置する際に、負極活物質層31の短手方向DB中央に、セパレータ240を介して、正極活物質層21が位置するように配置する(図11参照)。
以降は、実施形態1と同様にして、扁平な長円形状に捲回してなる捲回型の発電要素210ができあがる(図4,9参照)。
【0063】
その後、平行捲回部210Pにおいて、正極板20の正極箔露出部25に正極集電部材91を、負極板30の負極箔露出部35に負極集電部材92をそれぞれ溶接した。そして、実施形態1と同様にして、発電要素210を電池ケース本体81に挿入し、前述した電解液を注入後、かくして電池201ができあがる(図9参照)。
さらに、上述のようにして作製した複数の電池201,201を、実施形態1と同様にして、組電池200が完成する(図1参照)。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態2にかかる車両300は、前述した組電池100,200を搭載したものである。具体的には、図12に示すように、車両300は、エンジン340、フロントモータ320及びリアモータ330を併用して駆動するハイブリッド自動車である。この車両300は、車体390、エンジン340、これに取り付けられたフロントモータ320、リアモータ330、ケーブル350、インバータ360、及び、組電池100,200を有している。
【0065】
本実施形態2にかかる車両300は、短絡を防止した組電池100,200を搭載しているので、安定して使用できる車両300とすることができる。
【0066】
(実施形態3)
また、本実施形態3のハンマードリル400は、前述した組電池100,200を搭載したものであり、図13に示すように、本体420を有する電池搭載機器である。なお、組電池100,200はハンマードリル400の本体420のうち底部421に脱着可能に収容されている。
【0067】
本実施形態3にかかるハンマードリル400は、短絡を防止した組電池100,200を搭載しているので、安定して使用できるハンマードリル400とすることができる。
【0068】
以上において、本発明を実施形態1〜3及び変形形態1に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,変形形態1では、湾曲セパレータ部の形態を矩形状としたが、例えば、半円状、三角形状のほか、台形状等に膨らんだ形態としても良い。なお、湾曲セパレータ部の形態を台形状に膨らんだ形態とした場合には、矩形状と同様、扁平捲回型発電要素を捲回する際に巻きずれが生じても、最離隔湾曲セパレータ部が湾曲セパレータ部のうちで最も膨らんだ形態に維持し易く、より好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1,201 電池(非水電解質二次電池)
10,210 発電要素(扁平捲回型発電要素)
10C,210C 湾曲捲回部
10P,210P 平行捲回部
20 正極板
21 正極活物質層
20F 正極対向部
25 正極箔露出部
28 正極集電箔
30 負極板
31 負極活物質層
30F 負極対向部
35 負極箔露出部
38 負極集電箔
40,240 セパレータ
40C,240C 湾曲セパレータ部
40CL,240CL 最離隔湾曲セパレータ部
40P,240P 平行セパレータ部
80 電池ケース
83 第1壁部(平行壁部)
100,200 組電池
300 車両
400 ハンマードリル(組電池搭載機器)
AX 捲回軸
DL 積層方向
DX1 第1方向
DX2 第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極集電箔及びこの正極集電箔上に形成された帯状の正極活物質層からなる正極板と、帯状の負極集電箔及びこの負極集電箔上に形成された帯状の負極活物質層からなる負極板と、帯状のセパレータと、を有し、上記正極板のうち上記負極板に対向する正極対向部と上記負極板のうち上記正極板に対向する負極対向部との間全体に上記セパレータを介在させ、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータを、捲回軸を中心として横断面が扁平な長円形状に捲回してなる扁平捲回型発電要素、及び、
内部に上記扁平捲回型発電要素を収容する電池ケース、を備える
非水電解質二次電池であって、
上記扁平捲回型発電要素は、
上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが、互いに平行に配置された平行捲回部と、
上記平行捲回部を挟む2つの湾曲捲回部であって、
上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが、それぞれ半円筒状に湾曲して配置された湾曲捲回部と、からなり、
上記電池ケースは、
それぞれ平板状で、互いに平行に配置され、上記平行捲回部を挟む2つの平行壁部を有し、
上記セパレータは、
上記扁平捲回型発電要素の上記湾曲捲回部に位置する湾曲セパレータ部がそれぞれ、上記捲回軸に沿う第1方向及びこれと逆方向の第2方向のうち、少なくとも一方向に、上記平行捲回部に位置する平行セパレータ部よりも膨らんだ形態とされてなる
非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池であって、
前記セパレータは、
前記湾曲セパレータ部のうち、前記捲回軸から最も離れた最離隔湾曲セパレータ部が、最も膨らんだ形態とされてなる
非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の非水電解質二次電池であって、
前記正極板は、
前記正極集電箔がアルミニウムからなり、
この正極集電箔のうち、前記第1方向側に帯状に、この正極集電箔が露出する正極箔露出部を設ける形態で、前記正極活物質層が上記正極集電箔上に形成されてなり、
前記負極板は、
前記負極集電箔が銅からなり、
この負極集電箔のうち、前記第2方向側に帯状に、この負極集電箔が露出する負極箔露出部を設ける形態で、前記負極活物質層が上記負極集電箔上に形成されてなり、
前記セパレータは、
前記湾曲セパレータ部が、上記第1方向及び上記第2方向のうち、少なくとも上記第1方向に膨らんだ形態とされてなる
非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池を、前記平行壁部に直交する積層方向に複数積層し、これらを上記積層方向に圧縮して保持してなる組電池。
【請求項5】
請求項4に記載の組電池を搭載し、この組電池に蓄えた電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両。
【請求項6】
請求項4に記載の組電池を搭載し、この組電池に蓄えた電気エネルギを駆動エネルギ源の全部又は一部に使用する組電池搭載機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−204652(P2011−204652A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73640(P2010−73640)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】