説明

非水電解質二次電池パック

【課題】大電流を流すことができ、かつ、高い安全性を有する保護回路を備えた非水電解質二次電池パックを提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池パックは、トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なる複数のPTC素子31、32が並列に接続された保護回路を備えている。そして、この保護回路が非水電解質二次電池30に直列に接続された保護回路付非水電解質二次電池21を内蔵している。PTC素子31、32のうち、積IRが最小のPTC素子に接続された温度感知素子を有することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池パックに関し、特に、保護回路付非水電解質二次電池を備えた非水電解質二次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電を繰り返して使用できるため、廃棄物の低減に役立つとともに、AC電源を取ることのできないポータブル機器や、AC電源が切断・停止した場合のバックアップ用の電源として、広く用いられている。近年、その利用範囲の拡大とそれに伴う容量、温度特性、安全性などの性能向上要求はますます大きくなっている。
【0003】
二次電池としては、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素二次電池、非水電解質二次電池等が開発され、世界的に用いられている。中でも、非水電解質二次電池は小型軽量であり大容量を持つことから、小型パーソナルコンピュータ、携帯電話をはじめとして、デジタルカメラ、ビデオカメラ等に広く利用されてきた。
【0004】
現在、用いられている非水電解質二次電池は、正極材料としてリチウム含有コバルト複合酸化物やリチウム含有ニッケル複合酸化物を用い、負極材料として黒鉛系もしくはコークス系などのカーボン系材料を用い、電解液としてLiPFやLiBF等のリチウム塩を環状カーボネートや鎖状カーボネートなどの有機溶媒に溶解して用いている。正極および負極はシート状に成型され、前記電解液を保持し、正負極を電子的に絶縁するセパレータを介して対抗させ、各種形状の容器に納めて電池としている。
【0005】
非水電解質二次電池は、可燃性の有機電解液を用いている。さらに、正負極材料は過大電圧や高温により発熱反応を起こすものが多く用いられている。例えば、代表的な正極材料であるコバルト酸リチウムは、充電状態において高温環境下におかれると有機電解液と発熱反応を起こすことが知られている。また、通常の充電状態を越えて過充電を続けると、やはり発熱反応を起こす。このように、通常使用条件を外れた条件で電池が使用されると、発熱反応による電池温度上昇の潜在的可能性がある。このため、非水電解質二次電池は、過充電や過大電圧印加、加熱などがされないように、様々な保護手段が講じられている。
【0006】
この保護手段には、温度感知型電流遮断素子、圧力検知型電流遮断素子、電圧検知による過大電圧回避回路など様々なものが提案され、市販されている非水電解質二次電池では、複数の保護手段が講じられるのが一般的である。保護手段のひとつである温度感知型電流遮断素子は、温度上昇を感知して、電池と外部回路を遮断することで、外部から流れ込んでくる過充電電流や、短絡時の放電電流を遮断あるいは抑制して、それ以上の温度上昇や過充電過放電を停止させる機能を担う。
【0007】
非水電解質二次電池用の温度感知型電流遮断素子の一種としては、PTC(Positive Tempearture Coefficient)素子が搭載されることが多い。たとえば18650型と呼称される直径18mm、長さ65mmのPC用に多用されている円筒形セルでは、セルの内部にドーナツ形状の薄板型PTC素子が内蔵されている。電池の短絡による大電流や、電池発熱もしくは外部からの過熱によりPTC素子温度が上昇するとPTC素子がトリップ、すなわちPTC素子の電気抵抗値が極めて大きくなり、電池からの放電電流もしくは外部からの充電電流を遮断し、電池が異常発熱や発火などに至ることを防止することができる。
【0008】
従来、小型コンピュータや携帯電話などの小型携帯機器に搭載されてきた非水電解質二次電池では、大きな電流による充電や放電を必要とされなかったため、上述のようなセル内に内蔵できる小さな素子で十分であった。しかし、電動工具、電動アシスト自転車やHEV(ハイブリッド電気自動車)などで、非水電解質二次電池を用いようとすると、電池に要求される電流の大きさも、従来の小型コンピュータや携帯電話と比較して数十倍あるいはそれ以上となる。したがって、これまでのセル内組み込み型の小型PTC素子では、PTC素子の抵抗が大きく、電池の出力特性を大きく損ない、PTC素子のために十分な特性がえらえないという問題があった。加えて、非水電解質二次電池の通常動作の想定範囲内の電流であっても、電流量が大きいことからPTC素子がトリップしてしまう可能性があるという問題があった。
【0009】
これに対して、セルの外部に接続する形態のPTC素子では、素子そのものの大きさをより大きくできるので、大きな電流に対応できるものが市販されている。それでも非水電解質二次電池に使用できるものとしては10A程度が最大許容電流であり、これらであっても最大許容電流が小さいという問題があった。そこで、PTC素子とヒューズなどの別種の素子を接続して用いる提案もされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−369372号公報
【特許文献2】特開2007−135359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
もっとも、非復帰型の素子であるヒューズを用いる場合、ヒューズ動作後に交換の必要があったり、振動や衝撃耐性の低さ、溶断時の火花の可能性、瞬間的な大電流でも動作したりすることが懸念される。
【0011】
また、PTC素子の最大許容電流が小さいという問題を解決するため、単純に最大許容電流値を大きくするためにPTC素子を並列接続することも考えられる。しかし、この場合、PTC素子のもつ特性ばらつきのためトリップタイミングの制御が難しくなる。また、最大電流値が大きくなることと並行して、トリップするためのトリップ電流も大きくなりすぎてしまうという問題もある。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、大電流を流すことができ、かつ、高い安全性を有する保護回路を備えた非水電解質二次電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の非水電解質二次電池パックは、トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なる複数のPTC素子が並列に接続された保護回路が、非水電解質二次電池に直列に接続された保護回路付非水電解質二次電池を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、前記PTC素子のうち、積IRが最小のPTC素子に接続された温度感知素子を有することが望ましい。
【0015】
前記温度感知素子の出力をモニタすることによって、前記非水電解質二次電池パックと外部との電気的接続を切断する手段を有することが望ましい。
【0016】
ここで、複数の前記保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたことが望ましい。
【0017】
ここで、複数の前記保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたユニットが、複数個直列に接続されたことが望ましい。
【0018】
ここで、前記複数のPTC素子のトリップ電流値Iが同一であり、標準抵抗値Rが異なることが望ましい。
【0019】
ここで、前記非水電解質二次電池の容量を1時間で放電しうる電流値を1Cとしたとき、前記非水電解質二次電池の最大許容電流値が5C以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大電流を流すことができ、かつ、高い安全性を有する保護回路を備えた非水電解質二次電池パックを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の非水電解質二次電池パックについて、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なる2個のPTC素子が並列に接続された保護回路が、非水電解質二次電池に直列に接続された保護回路付非水電解質二次電池を備えていることを特徴とする。
【0023】
図1は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図である。非水電解質二次電池パック10には、保護回路付非水電解質二次電池21が内蔵されている。この保護回路付非水電解質二次電池21は、非水電解質二次電池30と、この非水電解質二次電池30に直列に接続される保護回路で構成される。そして、この保護回路は、第1のPTC素子31と、第2のPTC素子32が並列に接続されることで形成されている。さらに、第1のPTC素子31と、第2のPTC素子32とでは、トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なっており、第1のPTC素子31が第2のPTC素子32と比較して小さい積IRを有している。
【0024】
上記構成を有することで、本実施の形態の二次電池パック10は、大電流を流すことができるとともに、保護回路が動作する電流値を正確に特定することができる。以下、本実施の形態の二次電池パック10の構成および作用・効果について詳細に説明する。
【0025】
PTC素子は、温度が上昇すると抵抗値が増加する正の温度特性を有する。PTC素子は、通常一定の低い抵抗値の抵抗体として機能するが、過電流が流れると抵抗値が急激に増大(トリップ)し、電流を制限することができる。PTC素子には、例えば低融点のポリマー中にカーボン、ニッケル等の導電性粉末を分散させたポリマーPTC素子や、例えばチタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックPTC素子等がある。第1および第2のPTC素子31、32として、例えば、上記のポリマーPTC素子やセラミックPTC素子を適用することが可能である。
【0026】
本実施の形態の非水電解質二次電池30は、正極および負極とそれらを電子的に隔てるセパレータ、および正負電極とセパレータに含浸保持させた電解質からなり、これらをスパイラル状に捲回もしくはスタック状に重ね、外部取り出し用の電極リードを接続して、金属缶やラミネート等の外装容器に収めたものである。大きな電流を用いて、充電や放電を行うために、小型ではあるが抵抗値の大きい内蔵タイプのPTC素子を電池内部に設置しない。
【0027】
正極は、正極活物質を含有し、他に炭素等の導電材や、結着剤を含むことができ、電子導電性を有する金属等の基材を集電体として、その集電体に接して用いる。正極は、コバルト、マンガン、ニッケルの少なくともひとつを含むリチウム複合酸化物を正極活物質として含有し、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンを吸蔵放出できる。
【0028】
上記正極活物質は、大きな電池容量が得られることから、1電荷当りの重量が小さいリチウムイオンを吸蔵放出することのできる金属酸化物が望ましく、種々の酸化物、例えばリチウム含有コバルト複合酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物、リチウム含有ニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのカルコゲン化合物を正極活物質として用いることができる。中でも充放電電位がリチウム金属電位に対して3.8V以上を有するリチウム含有コバルト複合酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物、リチウム含有マンガン複合酸化物などが高い電池容量を実現できるため望ましい。また、60℃以上の高温における正極表面でのイオン液体の分解反応を抑制できるため、LiCoNiMn(x+y+z=1、0<x≦0.5、0≦y<1、0≦z<1)で表わされる正極化合物が特に望ましい。
【0029】
上記結着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等を用いることができる。上記集電体としては、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属箔、薄板もしくはメッシュ、金網等を用いることができる。
【0030】
上記正極活物質と上記導電材は、上記結着剤を加えて混練・圧延によりシート化することができる。あるいは、トルエン、N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒に溶解、懸濁してスラリーとした後、上記集電体上に塗布、乾燥してシート化することも可能である。
【0031】
上記負極は、負極活物質を含有し、導電剤や結着剤等を用いて、ペレット状、薄板状もしくはシート状に成形したものである。上記負極は、上記正極同様にリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンを吸蔵放出でき、組み合わせた正極よりも卑な電位で正極と同種の金属イオンを吸蔵放出しうる負極活物質を含有する。高い電池容量が得られることからリチウムイオンを吸蔵放出するものが望ましい。こうした特性を有するものとしては、リチウム金属もしくは人造および天然黒鉛、難黒鉛化カーボン、易黒鉛化低温焼成カーボン等の炭素質物、チタン酸リチウム、硫化鉄、酸化コバルト、リチウムアルミニウム合金、スズ酸化物などが挙げられる。
【0032】
さらに、負極の作動電位が金属リチウムの電位に対して0.5Vよりも貴となる活物質が望ましい。こうした活物質を選択することにより、過充電もしくは過大電圧充電時におけるリチウム金属の析出反応を抑制することができ、より高い安全性を実現できる。この点から、負極活物質としては、チタン酸リチウムが最も望ましい。さらに、2種以上の負極活物質を混合して用いることもできる。形状としてはりん片状、繊維状、球状など各種形状のものが可能である。上記導電材は、炭素、金属等の電子導電性を有する物質を用いることができる。粉末、繊維状粉末等の形状が望ましい。
【0033】
前記結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。前記集電体としては、銅、ステンレス、ニッケル等などの金属箔、薄板もしくはメッシュ、金網等を用いることができる。
【0034】
上記負極活物質と上記導電材は、前記結着剤を加えて混練・圧延によりペレット化もしくはシート化することができる。あるいは、水、N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒に溶解、懸濁してスラリー化した後、上記集電体上に塗布、乾燥してシート化することもできる。
【0035】
上記セパレータとしては、多孔質膜や不織布を用いることができる。多孔質膜としては、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、ポリエチレン/ポリプロピレン多層多孔質フィルム等を用いることができる。不織布としては、セルロース不織布、ポリエチレンテレフタレート不織布、ポリオレフィン不織布などを用いることができる。特に、セルロース不織布は強度が高く、安価であるため望ましい。
【0036】
上記電解質は、溶媒にアルカリ金属塩を溶かしたものである。溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、γ−ブチロラクトン(BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレンまたは酢酸メチル(MA)などを用いることができ、アルカリ金属塩としては過塩素酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化砒素リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、ビスペンタフルオロエチルスルホニルイミドリチウムなどのリチウム塩を用いることができる。
【0037】
上記外装容器としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の円筒型、角型など各種形状の容器を用いることができる。また、電極群を、アルミニウム箔等の金属箔もしくは金属シートの両面に熱融着製の高分子層を設けたラミネートによる袋に収めて用いることも可能である。
【0038】
PTC素子は、素子を流れる電流による発熱で、電気抵抗が急激に上昇するトリップ動作を起こさせるための最小電流値であるトリップ電流値I、非トリップ時の室温における素子の抵抗である標準抵抗値R、トリップ動作を起こすことなしに流すことのできる最大電流値である保持電流値Iなどによりその動作特性が決まる。本実施の形態においては、これらのうちトリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積であるIRの値が、異なる2個のPTC素子31、32を並列に接続して用いることにより、特性の異なる2個のPTC素子に電流が分散する。このため、単一のPTC素子を用いる場合よりも大きな電流を流すことが可能となる。したがって、大電流充電や大電流放電が可能な非水電解質二次電池パックを実現することができる。
【0039】
さらに、第1のPTC素子31と第2のPTC素子32の積IRを異なるものとすることで、電流を不均等とするとともに、電流を大きくしていった場合、あるいは大電流が一時に流れた場合に、先にトリップするPTC素子を積IRの小さい第1のPTC素子31に限定することができる。このため、保護回路が動作する電流値を正確に決めることができる。なぜなら、一般に積IRの小さいPTC素子の方が、積IRのバラツキも小さくなるからである。よって、本実施の形態により、トリップタイミングの制御が容易となり、大電流充電や大電流放電が可能で、かつ、安全性の高い非水電解質二次電池パックの実現が可能となる。
【0040】
なお、ここで2個のPTC素子のトリップ電流値Iが同一であり、標準抵抗値Rが異なることが望ましい。なぜなら、標準抵抗値Rが異なる複数のPTCを用いた場合は、実際の動作時に流れる電流の2乗が発熱量に比例するので、最初に動作するPTC素子をより正確に決めることができるからである。
【0041】
上述のように大電流を要求される用途において、本実施の形態は高い効果を発揮する。小さな電流しか流すことのできない非水電解質二次電池を多数、並列接続して、大電流を流すことのできる電池パックを構成することは可能である。しかし、この場合、単電池それぞれにPTC素子を接続すると、PTC素子数が非常に多くなるとともに、すべてのPTC素子がトリップする可能性があるため、すべてを監視する必要がある。すべてのPTC素子の監視を行わない場合、ひとつのPTC素子がトリップしても他の電池の負荷増大が小さく、電池パック全体としてはトリップ発生という異常事態を検知できずに、正常状態であるとされて、継続使用され、寿命短縮あるいは安全性低下を引き起こす。
【0042】
したがって、単電池で大きな電流値を流すことのできる大電流仕様の非水電解質二次電池が望ましい。具体的には、単位体積あるいは単位重量あたりのエネルギー密度を大きくするため、非水電解質二次電池の容量を1時間で放電しうる電流値を1Cとしたとき、最大許容電流値として5C以上を許容する非水電解質二次電池が望ましい。非水電解質二次電池の容量は公称容量として定義される。公称容量は、製造業者の指定する充電電圧まで、定電流充電もしくは定電流定電圧充電により、1C電流値で充電し、同じく1C充電値で、製造業者の指定する放電終止電圧まで放電したときの、放電容量として決めることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、PTC素子が2個ではなく、3個以上並列接続される以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記述を省略する。
【0044】
図2は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図である。非水電解質二次電池パック10には、保護回路付非水電解質二次電池21が内蔵されている。この保護回路付非水電解質二次電池21は、非水電解質二次電池30と、この非水電解質二次電池30に直列に接続される保護回路で構成される。そして、この保護回路は、第1、第2、第3、第4・・・第nのPTC素子31、32、32、33、34・・・3nが並列に接続されることで形成されている。さらに、n個のPTC素子のうち、第1のPTC素子31がもっとも小さい積IRを有している。
【0045】
本実施の形態の非水電解質二次電池パックにおいては、電流を大きくしていった場合、あるいは大電流が一時に流れた場合に、先にトリップするPTC素子を積IRのもっとも小さい第1のPTC素子31に限定することができる。また、PTC素子の数が多くなることから、第1の実施の形態よりも、さらに大電流を流すことが可能となる。
【0046】
ここで、PTC素子の個数については、必要とされる電流値を流すことができるように並列接続する各PTCの抵抗値Rから決まる分配電流が、それぞれの保持電流値Iを超えることがないように決定すればよい。なお、PTC素子のうち、最小の積IRをもつ素子、図2では第1のPTC素子31、が唯一でなければならい。それ以外の並列接続PTC素子は、同一の積IRを持っていてもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、複数の保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたこと以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については、記述を省略する。
【0048】
図3は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図である。非水電解質二次電池パック(以下、単に二次電池パックともいう)10には、n個の保護回路付非水電解質二次電池21〜2nが内蔵されている。そして、このn個の保護回路付非水電解質二次電池21〜2nは、並列に接続されている。それぞれの保護回路付非水電解質二次電池の、保護回路は、第1のPTC素子31と、第2のPTC素子32が並列に接続されることで形成されている。さらに、第1のPTC素子31と、第2のPTC素子32とでは、トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なっており、第1のPTC素子31が第2のPTC素子32と比較して小さい積IRを有している。
【0049】
図3の構成とすることで、非水電解質二次電池パック全体としてはより大きな電流を充放電することができるようなる。さらに、保護回路を直列接続することなしに、非水電解質二次電池が並列接続されている場合は、特定の非水電解質二次電池の内部での短絡時に、他のすべての非水電解質二次電池から電流が流入し、その大電流により短絡電池が発火する可能性が高まる。しかし、図3のように並列PTC素子を保護回路として直列接続した上で、非水電解質二次電池を並列接続すれば、上記のような短絡時においても各非水電解質二次電池に接続されている並列PTC素子が電流を制限・抑制し、二次電池パックとして高い安全性を保つことができる。
【0050】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、複数の保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたユニットが、複数個直列に接続されたこと以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については、記述を省略する。
【0051】
図4は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図である。非水電解質二次電池パック10には、n個の保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたユニット51〜5nが直列に接続されている。それぞれのユニットに内蔵される構成は、図3の非水電解質二次電池パック10内の構成と同様である。本実施の形態によれば、第1ないし第3の実施の形態の非水電解質二次電池パックよりも、高い電圧を得ることができる。
【0052】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、複数のPTC素子のうち、積IRが最小のPTC素子に接続して温度感知素子が設けられ、この温度感知素子の出力をモニタすることによって、非水電解質二次電池パックと外部との電気的接続を切断する手段を有すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記述を省略する。
【0053】
図5は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図である。図5は、PTC素子が2個の場合を示している。二次電池30に直列接続され、互いに並列接続された2個の第1および第2のPTC素子31、32のうち、第1のPTC素子31のほうがより小さい積IRをもつ。そして、温度感知素子61が、第1のPTC素子31の温度を測定可能なように、第1のPTC素子31に接続あるいは接触して設けられている。そして、温度感知素子61の出力をモニタする制御部70が、温度感知素子61に接続されている。
【0054】
温度感知素子61としては、例えば、熱電対、温度センサIC、測温抵抗体等を用いることが可能である。また、温度感知素子61の出力をモニタすることによって、非水電解質二次電池パック10と外部との電気的接続を切断する手段を構成する制御部70としては、例えば制御用ICや制御用基板等を用いることが可能である。また、同じく電気的接続を切断する手段を構成するスイッチとしては、半導体スイッチング回路等を用いることが可能である。なお、図5においては、制御部70とスイッチ80を独立したものとして、記載しているが、例えば、充放電コントローラのように制御部70とスイッチ80が一体化した構成をとっても構わない。
【0055】
温度感知素子61は、積IRが小さいため第2のPTC素子よりもトリップしやすい、第1のPTC素子31の温度を測定し、測定結果を制御部70に出力する。そして、制御部70はこの温度出力をモニタし、温度出力が第1のPTC素子31のPTC素子動作温度以上となったときに、外部回路との接続を制御するスイッチ80を切断状態とする。
【0056】
本実施の形態によれば、最小の積IRをもつPTC素子に温度感知素子を接続し、その出力をモニタすることで、PTC素子のトリップという、通常想定範囲外の電流が流れたことを検知する。そして、非水電解質二次電池パックを構成する特定の電池の内部短絡や、回路の部分短絡に対応して非水電解質二次電池パックの外部への接続を安全に遮断することが可能となる。したがって、電池パックの高い安全性を確保することができる。
【0057】
そして、最小の積IRをもつPTC素子が最も早くトリップするため、このPTC素子にのみ温度感知素子を設置しておけばよく、温度感知素子数を削減できるとともに、制御部の機能を限定することが可能となる。なお、図2に示す第2の実施の形態のように、3個以上のPTC素子が、二次電池に接続されている場合には、複数の積IRが最小のPTC素子に温度感知素子を接続すればよい。
【0058】
また、図6は、本実施の形態の変形例の非水電解質二次電池パックの回路図である。n個の保護回路付非水電解質二次電池21〜2nが並列に接続されている。そして、それぞれの保護回路付非水電解質二次電池に直列接続される複数のPTC素子のうちで、最小の積IRをもつPTC素子に最も近接して温度感知素子が設置されている。従って、温度感知素子数は保護回路付非水電解質二次電池数と等しくn個となる。この場合は、いずれかひとつの温度感知素子の温度出力がPTC素子動作温度を上回った時点で、外部回路との切断を行う。
【0059】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の非水電解質二次電池パックは、非水電解質二次電池パックと外部との電気的接続を切断する手段が、非水電解質二次電池パック外に設けられること以外は、第5の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記述を省略する。
【0060】
図7は、本実施の形態の非水電解質二次電池パックとその周辺回路の回路図である。図7は、PTC素子が2個の場合を示している。二次電池30に直列接続され、互いに並列接続された2個の第1および第2のPTC素子31、32のうち、第1のPTC素子31のほうがより小さい積IRをもつ。そして、第1のPTC素子31に温度感知素子61が接続あるいは接触して設けられている。そして、非水電解質二次電池パック10の外部に、温度感知素子61の出力をモニタする制御部70が備えられ、温度感知素子61に接続されている。
【0061】
本実施の形態によれば、非水電解質二次電池パックと外部との電気的接続を切断する手段が、非水電解質二次電池パック外に設けられることで、非水電解質二次電池パックのサイズを縮小できる。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、非水電解質二次電池、保護回路、非水電解質二次電池パック等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる非水電解質二次電池、保護回路、非水電解質二次電池パック等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0063】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての非水電解質二次電池パックは、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例)
正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO)粉末90重量%、アセチレンブラック2重量%、グラファイト3重量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン5重量%をN−メチルピロリドンを溶媒としてスラリー化し、アルミニウム箔の両面に塗布、乾燥、圧延して長さ96mm、幅70mmの正極シートを作成した。負極活物質としてLi4/3Ti5/3粉末90重量%、導電材として人造黒鉛5重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%を、N−メチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、得られたスラリーをアルミニウム箔に塗布し、乾燥後、圧延して、長さ96mm、幅70mm負極シートを作成した。セパレータには厚さ30μm、長さ2400mm、幅105mmのセルロース不織布を用いた。
【0065】
上記帯状正極シート、上記セパレータ、上記帯状負極シートをそれぞれこの順序で積層したのち、上記セパレータを上記正負極幅で折り返し、正極31枚、負極30枚をスタック状に収め、正極および負極の端部を束ねて、それぞれにアルミニウムリードを溶接し、正負極端子とした。これらをアルミラミネートを2つ折りしたものに収納し、2辺を熱融着し、80℃真空乾燥を行った。その後、アルゴングローブボックス中で、1.5Mのテトラフルオロホウ酸リチウムを、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンの混合溶媒(体積比率1:2)に溶かして調製した電解液を注入し、アルミラミネート外装の最後の1辺を熱融着して非水電解質二次電池とした。
【0066】
上記非水電解質二次電池を用いて図1に示した非水電解質二次電池パックを構成した。第1のPTC素子(図1中でのPTC素子31)には、標準抵抗値9mΩ、トリップ電流値14.1A、保持電流値7.3Aの素子を用いた。第2のPTC素子(図1中でのPTC素子32)には、標準抵抗値123mΩ、トリップ電流値2.7A、保持電流値1.2Aの素子2を用いた。積IRはそれぞれ126.9および332.1となった。
【0067】
電池パック端子に電源と電流電圧測定装置を接続した。上記外部電源を用いて電池の放電方向に7Aを通電し、問題なく放電できることを確認した。このときの第1のPTC素子を流れた電流は5.9A、第2のPTC素子を流れた電流は2.1Aとなった。次に、各非水電解質二次電池を2.8V充電した。充電後の非水電解質二次電池の開放電圧は2.68Vであった。さらに、外部回路での短絡状態を模擬するため、外部に170mΩの抵抗を接続して放電したところ、最小の積IRをもつ第1のPTC素子のみが、トリップ状態となった。このときのオームの法則による計算上の電流値は、第1のPTC素子で14.7A、第2のPTC素子で1.1Aとなった。
【0068】
(比較例1)
第1および第2のPTC素子に、標準抵抗値9mΩ、トリップ電流値14.1A、保持電流値7.3Aの同一の素子、すなわち同一の積IRを有する2個の素子を用いた以外は実施例と同様の非水電解質二次電池パックを構成した。実施例と同様に7A通電では、問題なく通電できることが確認できた。つぎに満充電状態の非水電解質二次電池を用いて同様の非水電解質二次電池パックを構成し、170mΩの外部抵抗を接続して放電したところ、どちらのPTC素子もトリップ状態には至らなかった。このときの各PTC素子を流れる電流値は、7.9Aとなる。
【0069】
(比較例2)
第1および第2のPTC素子に、標準抵抗値123mΩ、トリップ電流値2.7A、保持電流値1.2Aの同一の素子、すなわち同一の積IRを有する2個の素子を用いた以外は実施例と同様の非水電解質二次電池パックを構成した。実施例と同様に7A通電では、ほぼ同時に両方のPTC素子がトリップし、電流を流すことができなかった。
【0070】
以上、実施例および比較例1、2より、実施例の場合は、積IRが異なる複数のPTC素子を並列に接続した保護回路を非水電解質二次電池に直列に接続することにより、大電流を通電することができ、同時に外部短絡などのような異常時の極大電流に対しては予め決められたPTC素子がトリップ作動することで安全性を確保できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図2】第2の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図3】第3の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図4】第4の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図5】第5の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図6】第5の実施の形態の変形例の非水電解質二次電池パックの回路図。
【図7】第6の実施の形態の非水電解質二次電池パックの回路図。
【符号の説明】
【0072】
10 非水電解質二次電池パック
21〜2n 保護回路付非水電解質二次電池
30 非水電解質二次電池
31〜3n PTC素子
51〜5n ユニット
61〜6n 温度感知素子
70 制御部
80 スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリップ電流値Iと標準抵抗値Rの積IRが異なる複数のPTC素子が並列に接続された保護回路が、非水電解質二次電池に直列に接続された保護回路付非水電解質二次電池を有することを特徴とする非水電解質二次電池パック。
【請求項2】
前記PTC素子のうち、積IRが最小のPTC素子に接続された温度感知素子を有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項3】
前記温度感知素子の出力をモニタすることによって、前記非水電解質二次電池パックと外部との電気的接続を切断する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項4】
複数の前記保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項5】
複数の前記保護回路付非水電解質二次電池が並列に接続されたユニットが、複数個直列に接続されたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項6】
前記複数のPTC素子のトリップ電流値Iが同一であり、標準抵抗値Rが異なることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項7】
前記非水電解質二次電池の容量を1時間で放電しうる電流値を1Cとしたとき、前記非水電解質二次電池の最大許容電流値が5C以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項に記載の非水電解質二次電池パック。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−230900(P2009−230900A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71832(P2008−71832)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】