説明

非水電解質電池

【課題】 充放電に伴う電極の膨張により、電極リード接続部分に大きな圧力がかかった際の、電極リードによるセパレータの損傷を抑制する。
【解決手段】 正極と負極とをセパレータを介して積層した際に、正極リードまたは負極リードのうち、電極の膨張により圧力のかかりやすい少なくとも一方の電極リードの電極接続側一端を、正極および負極のうち一方の電極のみに対向する位置か正極および負極の両電極と対向しない位置となるように調整して電極リードと電極とを接続する。そして、電極リードの電極接続側一端は、少なくともセパレータ端部と同じ位置もしくはセパレータ端部よりも内側に位置することが好ましい。電極リードは、電極接続側端部のエッジが面取り加工されることが好ましい。面取り加工は、C面取りおよびR面取りの少なくとも一方が施されることが好ましい。また、電極リードの電極接続側端部の主面形状が、R形状もしくは鈍角形状とされてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質電池に関し、特に、正極および負極に電流を取り出すための電極リードを接続した非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、例えば、リチウムイオン電池のような非水電解質電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるので、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
一般的にリチウムイオン電池は、帯状の集電体の両面に正極活物質層を形成してなる正極と、帯状の集電体の両面に負極活物質層を形成してなる負極とを、セパレータを介して積層するか、もしくはこの積層体を多数回巻回した電池素子を備える。正極および負極からなる電極には、電流を取り出すためにそれぞれ電極リードが接続されている。電極リードは、例えば、電極に設けた集電体露出部に対して超音波溶着等により接続される。また、下記特許文献1のように、負極が蒸着方式や溶射方式など、パターン形成が製法上難しい方式で形成される場合において、電極リードが電極とともにかしめられて接続される方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電池素子では、電池外部から衝撃が加わったり、押圧された場合、または充放電による電極の膨張等により、電極リードが隣接するセパレータを破損するおそれがある。特に、電極リード端部の角部はよりセパレータを破損しやすい。電極リードがセパレータを破損すると、正極および負極が短絡して異常な発熱や電池特性の低下を招いたり、電極が切断される原因となる。また、電極リードの端部に切断によるバリが生じることがあり、この場合にはさらにセパレータの破損が生じ易くなる。
【0006】
特に、例えば充放電による活物質層の膨張・収縮がより顕著になるシリコン(Si)やスズ(Sn)等を主体とした合金系活物質を用いた電極を備える電池素子では、充放電時に電池内の圧力が上昇して電極リードの端部に応力が集中する。これにより、電極リードの端部がセパレータを損傷しやすくなる。正極と負極との対向面の間に電極リードが配置された電池素子構成の場合、このような問題がより生じやすくなる。
【0007】
また、巻回型電池素子において電極リードを電池素子の最外周部分に配置した場合であっても、電極活物質層の膨張・収縮に伴って電極リードのエッジ応力が電極リードを接続した集電体を変形させるおそれがある。変形した集電体は、セパレータを破損するおそれがある。
【0008】
この発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、セパレータの破損の原因となる電極リード端部への応力の集中を抑制し、安全性の高い非水電解質電池を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、第1の発明である非水電解質電池は、帯状の第1の電極と、
帯状の第2の電極と、
第1の電極と重なり合った一端部側が第1の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を第1の電極の一側縁から突出するように延長して配設された第1の電極リードと、
第2の電極と重なり合った一端部側が第2の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を第2の電極の一側縁から突出するように延長して配設された第2の電極リードと、
第1の電極および第2の電極との間に配置され、上記第1の電極および上記第2の電極の双方よりも外寸が大きい帯状のセパレータと、
非水電解質と
を備え、
第1の電極と第2の電極とが、第1の電極リードが接続された第1の電極の一端部と対向しない第2の電極の他端部に第2の電極リードが位置するようにセパレータを介して積層された積層電極体が、第1の電極リードが接続された一端を始端として長手方向に巻回されてなる巻回電極体を有し、
積層電極体において、第2の電極リードの第2の電極と接続された電極接続側一端が、第1の電極および第2の電極のうち一方の電極のみに対向する位置、もしくは第1の電極および第2の電極の両電極と対向しない位置となるように第2の電極と第2の電極リードとが接続され、
巻回電極体が、非水電解質とともに巻回電極体を覆って密封する電池外装体内に収納される
ことを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明である非水電解質電池は、複数枚の矩形状の第1の電極と、
複数枚の矩形状の第2の電極と、
第1の電極と重なり合った一端部側が第1の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を第1の電極の一側縁から突出するように延長して配設された複数本の第1の電極リードと、
第2の電極と重なり合った一端部側が第2の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を第2の電極の一側縁から突出するように延長して配設された複数本の第2の電極リードと、
第1の電極および第2の電極との間に配置され、上記第1の電極および上記第2の電極の双方よりも外寸が大きい1または複数枚の矩形状のセパレータと、
非水電解質と
を備え、
第1の電極と第2の電極とが第2の電極リードおよび第1の電極リードが対向しないようにセパレータを介して積層された積層電極体を有し、
積層電極体において、第2の電極リードの第2の電極と接続された電極接続側一端が、第1の電極および第2の電極のうち一方の電極のみに対向する位置、もしくは第1の電極および第2の電極の両電極と対向しない位置となるように第2の電極と第2の電極リードとが接続され、
積層電極体が、非水電解質とともに積層電極体を覆って密封する電池外装体内に収納される
ことを特徴とする。
【0011】
なお、第1および第2の発明では、少なくとも第2の電極リードの第2の電極接続側端部のエッジが面取り加工されることが好ましい。面取り加工は、C面取りおよびR面取りの少なくとも一方が施されることが好ましい。また、少なくとも第2の電極リードの第2の電極接続側端部の主面形状が、R形状もしくは鈍角形状とされてもよい。なお、第1および第2の発明において、例えば第1の電極および第2の電極はそれぞれ正極および負極である。
【0012】
第1の発明では、巻回電極体の外周側に設けられた電極リードの端部位置を、第1の電極および第2の電極のうち一方の電極のみと対向する位置、もしくは両電極と対向しない位置となるように調整して接続する。これにより、電極の膨張時に応力がかかりやすくなる巻回外周側の電極リードの端部に応力がかかりにくくなり、セパレータの損傷を防止することができる。
【0013】
また、第2の発明では、積層電極体を構成する負極のそれぞれと接続された電極リードの端部位置を、第1の電極および第2の電極のうち一方の電極のみと対向する位置、もしくは両電極と対向しない位置となるように調整して接続する。これにより、電極の膨張時において各電極リードの端部に応力がかかりにくくなり、セパレータの損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、セパレータの破損を抑制し、正極および負極間の短絡を抑制して高い安全性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態による円筒型非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態による円筒型非水電解質電池に用いる正極および負極の一構成例を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態による円筒型非水電解質電池に用いる積層電極体の一構成例を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態による負極および負極リードの接続位置の一例を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態による負極リードの一構成例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態による図5の負極リードを用いた場合の一構成例を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態による負極リードの一構成例を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態による負極リードの一構成例を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態による負極および負極リードの他の接続方法を示す斜視図である。
【図10】図9の負極および負極リードの接続部分を詳細に説明する上面図および断面図である。
【図11】この発明の第4の実施の形態による非水電解質電池の一構成例を示す斜視図および断面図である。
【図12】この発明の第4の実施の形態による非水電解質電池に用いる正極および負極の一構成例を示す斜視図である。
【図13】この発明の第4の実施の形態による積層電極体の一構成例を示す斜視図である。
【図14】この発明の第4の実施の形態による非水電解質電池に用いる外装材の構成を示す断面図である。
【図15】この発明の第5の実施の形態による角型の非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。
【図16】この発明の実施例を説明する上面図である。
【図17】この発明の実施例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電極リードの端部位置の調整および電極リードのエッジの加工を行う例)
2.第2の実施の形態(電極リードの端部を被覆する例)
3.第3の実施の形態(他の電極リード接続方法を用いる例)
【0017】
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解質電池の全体構成
図1は、この発明の実施の一形態による非水電解質電池1の一例であるリチウムイオン二次電池の断面図である。この電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、図示しない非水電解液とともに帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルめっきが施された鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板18a、18bがそれぞれ配置されている。
【0018】
電池缶11の材料としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等が挙げられる。この電池缶11には、電池の充放電に伴う電気化学的な非水電解液による腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていても良い。電池缶11の開放端部には、正極リード板である電池蓋12と、この電池蓋12の内側に設けられた安全弁機構およびPTC素子(熱感抵抗素子:Positive Temperature Coefficient)14とが、絶縁封口ガスケット15を介してかしめられることにより取り付けられている。
【0019】
電池蓋12は、例えば電池缶11と同様の材料により構成されており、電池内部で発生したガスを排出するための開口部が設けられている。安全弁機構は、安全弁13とディスクホルダ16と遮断ディスク17とが順に重ねられている。安全弁13の突出部13aは遮断ディスク17の中心部に設けられた孔部17aを覆うように配置されたサブディスク19を介して巻回電極体20から導出された正極リード25と接続されている。サブディスク19を介して安全弁13と正極リード25とが接続されることにより、安全弁13の反転時に正極リード25が孔部17aから引き込まれることを防止する。また、安全弁機構は、PTC素子14を介して電池蓋12と電気的に接続されている。
【0020】
安全弁機構は、電池内部短絡あるいは電池外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に、安全弁13が反転し、突出部13aと電池蓋12と巻回電極体20との電気的接続を切断するものである。すなわち、安全弁13が反転した際には遮断ディスク17により正極リード25が押さえられて安全弁13と正極リード25との接続が解除される。ディスクホルダ16は絶縁性材料からなり、安全弁13が反転した場合には安全弁13と遮断ディスク17とが絶縁される。
【0021】
また、電池内部でさらにガスが発生し、電池内圧がさらに上昇した場合には、安全弁13の一部が裂壊してガスを電池蓋12側に排出可能としている。
【0022】
また、遮断ディスク17の孔部17aの周囲には例えば複数のガス抜き孔17bが設けられており、巻回電極体20からガスが発生した場合にはガスを効果的に電池蓋12側に排出可能な構成としている。
【0023】
PTC素子14は、温度が上昇した際に抵抗値が増大し、電池蓋12と巻回電極体20との電気的接続を切断することによって電流を遮断し、過大電流による異常な発熱を防止する。絶縁封口ガスケット15は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0024】
非水電解質電池内に収容される巻回電極体20は、センターピン27を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21には正極リード25が接続されており、負極22には負極リード26が接続されている。正極リード25は、上述のように、安全弁13に溶接されて電池蓋12と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接されて電気的に接続されている。
【0025】
(1−2)積層電極体における電極リードの接続位置
積層電極体における電極リードの接続位置を説明するにあたり、積層電極体を構成する正極21、負極22およびセパレータ23の構成を説明する。
【0026】
[正極]
図2Aに示すように、正極21は、帯状の正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを設けたものである。正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度のアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔により構成されている。正極集電体21Aはその一部が露出しており、正極集電体21Aの露出部には、後述するように、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料からなる正極リード25が接続されている。正極リード25は、例えば超音波溶着、抵抗溶接等によって正極集電体21Aに接続される。また、正極リード25は金属材料に限らず、正極21と電池蓋12との導通を図ることができ、電池内部で安定な材料であればいずれも用いることができる。なお、正極リード25は、ビッカース硬度Hvが40以上200以下の範囲にあるものが好ましい。ビッカース硬度Hvをこの範囲とすることにより、リード体が適度な硬さを有し、取り扱い性が高くなるとともに、ビッカース硬度Hvが高すぎないため、短絡がおきにくくなる。
【0027】
[負極]
図2Bに示すように、負極22は、帯状の負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを設けたものである。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの厚みは、例えば5μm〜50μmである。負極集電体22Aはその一部が露出しており、負極集電体22Aの露出部には、後述するように、例えばニッケル(Ni)等の金属材料からなる負極リード26が接続されている。負極リード26は、例えば超音波溶着、抵抗溶接等によって負極集電体22Aに接続される。また、負極リード26は金属材料に限らず、負極22と電池缶11との導通を図ることができ、電池内部で安定な材料であればいずれも用いることができる。なお、負極リード26は、ビッカース硬度Hvが40以上200以下の範囲にあるものが好ましい。ビッカース硬度Hvをこの範囲とすることにより、リード体が適度な硬さを有し、取り扱い性が高くなるとともに、ビッカース硬度Hvが高すぎないため、短絡がおきにくくなる。
【0028】
なお、この発明では、図1に示すように負極22の短手方向の幅が正極21の短手方向の幅よりも大きく、負極22の長手方向の両辺が、正極21の長手方向の両辺よりも巻回電極面において外側に位置する構成として説明する。
【0029】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21および負極22を絶縁するとともに、微少な孔を備えて非水電解質を保持し、充放電に伴うイオンを通過させるものである。セパレータ23は、長手方向、短手方向ともに正極21および負極22双方の長手方向、短手方向のよりも大きいサイズを有する。これにより、正極21および負極22を絶縁する。
【0030】
[積層電極体]
上述の様な正極21および負極22は、図3に示すように、正極21、セパレータ23、負極22、セパレータ23の順に積層されて積層電極体24とされる。積層電極体24は、セパレータ23を介して正極活物質層21Bと負極活物質層22Bとが対向している。第1の実施の形態では、図3の左手方向の正極リード25接続側端部を巻回始端部、図3の右手方向の負極リード26接続側端部を巻回終端部として積層電極体24が長手方向に巻回されて巻回電極体20が形成される。巻回電極体20においては、正極リード25が巻回内周側(巻回中心部)に位置し、負極リード26が巻回外周側に位置する。巻回電極体20の最外周は、負極集電体露出部が電池外周側に向かって一周以上位置するように巻回される。
【0031】
正極リード25は、その一端部が電池蓋12と電気的に接続された安全弁13に接続される。このため、正極リード25は、その一端が積層電極体24から飛び出すように正極21に接続されている。同様に、負極リード26は、その一端部が電池缶11に接続される。このため、負極リード26は、その一端が積層電極体24から飛び出すように負極22に接続されている。
【0032】
巻回電極体20の外周側に接続される負極リード26は、充放電に伴う正極活物質層21B、負極活物質層22Bの膨張・収縮による影響を受けやすい。このため、この発明では、負極リード26の負極22に対する接続位置を調整することにより、負極リード26によるセパレータ23の損傷を抑制する。
【0033】
図4に積層電極体24の巻回終端部における負極リード26の接続位置を示す。なお、図4は、図3における下面側、すなわち負極22の負極リード26接続側面から見た状態を示している。正極21は負極22およびセパレータ23の双方よりも小さいサイズとされているため、点線で示す。
【0034】
図4Aおよび図4Bに示すように、負極リード26は、負極リード26の電池缶11接続側一端が負極22から飛び出すように接続されている。そして、負極リード26は、負極リード26の電池缶11接続側でない他端(以下、電極接続側一端と適宜称する)が、正極21の主面と、負極22の主面の両面に挟まれない位置に負極リード26が接続される。具体的には、積層電極体24の短手方向(巻回電極体20の高さ方向)において正極21の端部と同位置か、正極21の端部よりも外側に位置するように負極22に接続される。
【0035】
図4Aは、負極リード26の電極接続側一端が、正極21と負極22の両電極のうち、負極22のみと対向する位置となるように負極リード26が設けられた例である。また、図4Bは、負極リード26の電極接続側一端が、正極21と負極22の両電極と対向せず、セパレータ23のみと対向する位置となるように負極リード26が設けられた例である。これにより、負極リード26の電極接続側一端は、正極21および負極22が対向する位置と比べて、電極1枚分もしくは2枚分のクリアランスが生じる部分に位置するため、電極膨張時においても大きな圧力がかかりにくくなる。
【0036】
なお、負極リード26は、負極リード26の電極接続側一端が、積層電極体24の短手方向においてセパレータ23の端部と同位置かセパレータ23の端部よりも内側に位置することが好ましく、負極22の端部と同位置か負極22の端部よりも内側に位置することがより好ましい。すなわち、図4Aに示すように、積層電極体24の短手方向において、負極リード26の電極接続側一端が、正極21の端部とセパレータ23の端部との間に位置していることが好ましい。また、図4Bに示すように、積層電極体24の短手方向において、負極リード26の電極接続側一端が、正極21の端部と負極22の端部との間に位置していることがより好ましい。
【0037】
これは、特にセパレータ23を損傷しやすい負極リード26の電極接続側一端部が、少なくとも正極21の厚み分だけ薄くなっている部分に位置するためである。すなわち、負極リード26の電極接続側一端部が正極21の主面上に位置している時よりも、正極21の端部より外に位置している時の方が負極リード26の電極接続側一端部に大きな力がかかりにくい。したがって、セパレータ23の損傷が抑制される。また、負極リード26の電極接続側一端部が負極22の端部とセパレータ23の端部との間に位置している場合には、負極リード26が長く、負極リード26の電極接続側一端部が回り込んで正極21と短絡する可能性も否定できない。このため、負極リード26の電極接続側一端が、正極21の端部と負極22の端部との間に位置していることがより好ましい。
【0038】
負極リード26は、金属板を切断して形成される。このため、一方の主面を囲む4辺のエッジおよび他方の主面を囲む4辺のエッジがほぼ直角で尖った状態となっている。これらエッジは、正極21および負極22の膨張により応力が集中しやすく、セパレータ23を損傷しやすい。このため、負極リード26は、少なくとも電極接続側一端を含む電極接続側端部近傍のエッジについて面取り加工等が施されて鈍角形状とされることが好ましい。特に、負極リード26の端部(切断面)にバリが形成されている場合には、少なくともバリの除去が必要となる。
【0039】
図5Aおよび図5Bは、図4Aのa−a断面の一例である。負極リード26は、図5Aに示すように、例えばエッジ部分がR面取されることにより、R形状を有している。また、負極リード26は、図5Bに示すようにエッジ部分がC面取されることにより、鈍角形状を有するようにしてもよい。また、負極リード26のエッジ部分に対してR面取りおよびC面取りの双方がなされてもよい。
【0040】
図5Aおよび図5Bのようなエッジの面取形状は、少なくとも、負極リード26の負極集電体22A側主面と対向するセパレータ対向側主面のエッジに設けられる必要がある。これにより、図6に示すように、セパレータ23に対向する負極リード26のエッジが鈍るため、セパレータ23を損傷しにくくなる。なお、図6Aは、積層電極体24の巻回終端部および巻回電極体20の巻回外周側端部の上面図であり、図6Bは、図6Aの積層電極体24のb−b断面を示す断面図である。また、図6Aにおいて、斜線部は負極22全体を示す。
【0041】
また、図示しないものの、負極リード26の電極接続側一端の短辺のエッジも同様に面取形状とされることが好ましい。
【0042】
製造工程の観点からは、負極リード26の負極集電体22A側主面のエッジと、セパレータ対向側主面のエッジとの双方に面取形状が設けられることが好ましい。負極集電体22Aに負極リード26を接続する際に、表面、裏面の区別なく接続することが可能となるためである。
【0043】
さらに、図7Aおよび図7Bに示すように、少なくとも負極リード26の電極接続側一端の主面の形状がR形状もしくは鈍角形状等の面取り形状とされてもよい。これにより、さらに負極リード26のエッジによるセパレータ23の損傷を抑制することができる。また、負極リード26の両端がR形状もしくは鈍角形状とされてもよい。
【0044】
なお、負極リード26の電極接続側一端が正極21の端部と同位置にある場合には、負極リード26に面取り加工を行うことが特に望ましい。セパレータ3の損傷を抑制効果が顕著に高くなる。
【0045】
巻回電極体20の内周側に位置する正極リード25は、負極リード26のように大きな応力がかからないため、巻回電極体20中心部における正極リード25のエッジによるセパレータ23の損傷は考慮する必要性が低い。しかしながら、正極リード25の電極接続側一端がセパレータ23を回り込んで負極22と接触する等の問題を避けるために、正極リード25の電極接続側一端が負極リード26と同様の位置となるように調整することが好ましい。また、負極リード26と同様に、正極リード25主面を囲む4辺のエッジおよび正極リード25の電極接続側一端を面取形状に加工してもよい。
【0046】
(1−3)電池の各部の構成
[正極]
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、セレン化ニオブ(NbSe2)あるいは酸化バナジウム(V25)などのリチウムを含有しない金属硫化物、金属セレン化物あるいは金属酸化物など、またはリチウムを含有するリチウム含有化合物が挙げられる。
【0047】
中でも、リチウム含有化合物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が挙げられ、特にコバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧を得ることができるからである。その化学式は、例えば、LixM1O2あるいはLiyM2PO4で表される。式中、M1およびM2は1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0048】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-aCoa2(0<a<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)などが挙げられる。中でも、ニッケルを含む複合酸化物が好ましい。高い容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性も得ることができるからである。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-bMnbPO4(0<b<1))が挙げられる。
【0049】
[負極]
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質を含んでおり、必要に応じて導電材および結着剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極活物質としては、例えば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む負極材料が挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0050】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えばリチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などが挙げられる。
【0051】
中でも、この負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。具体的には、例えば、ケイ素の単体、合金、あるいは化合物、またはスズの単体、合金、あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0052】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0053】
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0054】
中でも、この負極材料としては、スズと、コバルトと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0055】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム、チタン、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0056】
なお、このSnCoC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0057】
負極活物質としては、また、天然黒鉛,人造黒鉛,難黒鉛化炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料を用いてもよい。炭素材料を用いれば優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。また、負極活物質としては、リチウム金属も挙げられる。負極活物質はこれらの1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
なお、この発明では、充放電に伴う負極の膨張・収縮が大きい合金系負極材料を用いた負極22を用いることにより、より高いセパレータ損傷抑制効果を得ることができる。
【0059】
[セパレータ]
セパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。また、上述の多孔質膜の表面に、セパレータ23の耐熱性、耐酸化性の向上を目的として、無機粒子を含む表面層が設けられていてもよい。
【0060】
[非水電解液]
セパレータ23には、液状の電解質である非水電解液が含浸されている。この非水電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1, 3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
電解質塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(CH3SO3Li)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3SO23)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C242)などが挙げられる。これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)やリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C242)を混合して用いるようにすれば、より高い特性を得ることができるので好ましい。
【0062】
(1−4)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0063】
[正極の作製]
正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aにドクターブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。最後に、正極集電体21Aの露出部に正極リード25を溶接などにより取り付けて正極21とする。ロールプレス機は加熱して用いてもよい。また、目的の物性値になるまで複数回圧縮成型してもよい。更に、ロールプレス機以外のプレス機を用いてもよい。
【0064】
このとき、正極リード25は、(1−2)で説明した位置に接続することが好ましい。また、好ましくは、図5に示すように、エッジを面取形状に加工した正極リード25、図7に示すように、電極接続側一端の形状を加工した正極リード25、図5および図7の断面および主面形状を有する正極リード25を用いてもよい。
【0065】
[負極]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aにドクターブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機により圧縮成型して負極活物質層22Bを形成する。最後に、負極集電体22Aの露出部に負極リード26を溶接などにより取り付けて負極22とする。
【0066】
また、金属系負極活物質もしくは合金系負極活物質を用いる場合には、例えば上述の様な塗布方式の他、気相法、液相法、溶射法もしくは焼成法等を用いることができる。また、それらの2種以上の方法を用いる場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散し、あるいは負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
【0067】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0068】
このとき、負極リード26は、(1−2)で説明した位置に接続する。また、好ましくは、図5に示すように、エッジを面取形状に加工した負極リード26、図7に示すように、電極接続側一端の形状を加工した負極リード26、図5および図7の断面および上面形状を有する負極リード26を用いることが好ましい。
【0069】
[センターピンの作製]
薄い板状のセンターピン材料を用意し、このセンターピン材料を例えばプレス加工により所望の大きさに切断する。続いて、センターピン材料を丸めて筒状に成形し、両端にテーパーをつけてテーパー部を設けることにより、センターピン27を形成する。
【0070】
[非水電解質電池の組み立て]
正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して積層電極体24を形成し、積層電極体24を巻回して巻回電極体20を作製する。次に、センターピン27を巻回電極体20の中心に挿入する。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板18,19で挟み、負極リード26を電池缶11の缶底部に溶接すると共に、正極リード25を安全弁13の突出部13aに溶接する。次に、巻回電極体20を電池缶11の内部に収容し、非水電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋12,安全弁13等の安全弁機構、およびPTC素子14を絶縁封口ガスケット15を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示したこの発明の非水電解質電池1が完成する。
【0071】
この非水電解質電池1では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された非水電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された非水電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0072】
<効果>
この非水電解質電池1では、電極膨張時であっても負極リード26の電極接続側一端を含む電極接続側端部近傍に大きな圧力がかかりにくくなる。このため、セパレータ23の損傷が抑制され、正負極間の短絡が抑制される。特に、負極22が、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含むようにした場合には、負極22の膨張が大きくなるとともに、電池のエネルギー密度が大きく、より高い安全性が求められるので、より高い効果を得ることができる。
【0073】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態では、負極リード26の電極接続側の端部に絶縁処理を施す例について説明する。なお、第2の実施の形態では、負極リード26の絶縁処理と、負極リード26の接続位置以外は第1の実施の形態と同様の構成であるため、第1の実施の形態と異なる部分のみ説明する。
【0074】
なお、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に負極22の短手方向の幅が正極21の短手方向の幅よりも大きく、負極22の長手方向の両辺が、正極21の長手方向の両辺よりも巻回電極面において外側に位置する。また、セパレータ23は、長手方向、短手方向ともに正極21および負極22双方の長手方向、短手方向のよりも大きいサイズを有する。
【0075】
[負極リードの絶縁処理および接続位置]
図8は、第2の実施の形態における積層電極体24の巻回終端部における負極リード26の接続位置の一例を示す。第2の実施の形態では、負極リード26の電極接続側一端がセパレータ23の端部よりも外側に位置する場合に、負極リード26の電極接続側一端を絶縁処理する。具体的には、図8に示すように、負極リード26のセパレータ23の端部よりも外側に突出した領域を、斜線で示す絶縁部28とする。
【0076】
負極リード26のセパレータ23の端部よりも外側に突出した部分は、正極21と接触する可能性がある。負極リード26のセパレータ23の端部よりも外側に突出した部分を絶縁処理することにより、負極リード26と正極21とが接触しても短絡が生じないようにすることができる。
【0077】
また、このような絶縁処理は、負極リード26の負極22の端部よりも外側に突出した領域に対して行ってもよい。また、図8の負極リード26の端部位置は一例であり、電極接続側一端を含む電極接続側端部近傍を絶縁処理した負極リード26を第1の実施の形態と同様の位置に接続してもよい。この場合、負極集電体22Aと負極リード26の絶縁処理領域は、一般的に用いられる超音波溶着等の方法では接続できないが、負極リード26の絶縁処理領域を除く部分と負極集電体22Aとが接続されていれば十分に電流を取り出すことができる。
【0078】
負極リード26に対する絶縁処理は、負極リード26の所定の領域に樹脂材料を被覆する方法や、陽極酸化処理を施して陽極酸化被膜を形成する方法が用いられる。負極リード26の所定の領域に被覆する樹脂材料としては、金属との接着性の高い樹脂材料が好ましく、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらを変性させた変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等により構成されることが好ましい。これらの樹脂材料は、フィルム状の樹脂片を負極リード26の所定領域に貼着されるか、もしくは溶融させて負極リード26の所定領域に塗布されることが好ましい。
【0079】
また、負極リード26の所定の領域に被覆する樹脂材料として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらを変性させた変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料を主体とし、粘着層を有する保護テープを用いてもよい。
【0080】
なお、正極リード25についても同様の絶縁処理を行ってもよい。
【0081】
[負極リードの形状]
負極リード26は、第1の実施の形態と同様に、エッジをR面取りしたR形状またはC面取りした鈍角形状とすることが好ましい。また、負極リード26は、第1の実施の形態と同様に、少なくとも負極リード26の電極接続側一端の主面の形状がR面取りされたR形状もしくはC面取りした鈍角形状とされてもよい。上述の絶縁処理は、負極リード26のエッジの面取り加工後に行う。これにより、さらに正極21および負極リード26の短絡を抑制することができる。
【0082】
<効果>
このような方法により、負極リード26の端部と正極21との短絡を防止することができる。第1の実施の形態における負極リード26の接続位置の調整、エッジの面取り加工等を組み合わせることにより、さらにセパレータ23の損傷を抑制するため、より高い安全性を得ることができる。
【0083】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、負極に対する負極リードの接続方法として、かしめ方式を用いた場合の例について説明する。なお、第3の実施の形態では、負極リードが接続された負極以外は第1の実施の形態と同様の構成であるため、負極についてのみ説明する。
【0084】
(3−1)負極の構成
図9に、第3の実施の形態で用いる負極22を示す。第3の実施の形態の負極22は、第1の実施の形態と同様に、負極集電体22A上に負極活物質層22Bが形成されたものである。負極22には負極リード26がかしめ方式により接続されている。かしめ方式による負極リード26の接続方法を用いる場合、負極リード26は、負極活物質層22B上から負極22と接続することができる。負極22および負極リード26には、かしめにより形成された穿孔Hが形成される。図9においては、3カ所でかしめ方式による接続を行っているため、3つの穿孔H1、H2およびH3が形成されている。
【0085】
第3の実施の形態における負極集電体22Aは、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。特に、負極集電体22Aを構成する金属材料としては、負極活物質と金属間酸化物を形成しない1種あるいは2種以上の金属元素を含有するものが好ましい。負極活物質と金属間酸化物を形成すると、電池の充放電時において負極集電体22Aが負極活物質層22Bの膨張および収縮による応力の影響を受けやすくなるため、集電性が低下したり、負極活物質層22Bが剥離する可能性があるからである。
【0086】
また、金属材料としては、負極活物質層22Bと合金化する1種あるいは2種以上の金属元素を含有するものが好ましい。負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上し、負極活物質層22Bが負極集電体22Aから剥離しにくくなるからである。
【0087】
なお、負極集電体22Aは、単層構造あるいは多層構造のいずれであってもよい。多層構造である場合には、負極活物質層22Bに隣接する層がそれと合金化する金属材料により構成されており、負極活物質層22Bに隣接しない層が他の金属材料により構成されているのが好ましい。
【0088】
また、負極集電体22Aの表面は、粗面化されているのが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bに隣接する部分の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中で電解法により金属の表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。この金属として銅箔を用いた場合、電解処理が施された銅箔は電解銅箔と呼ばれている。
【0089】
負極活物質層22Bは、電極反応に寄与する1種あるいは2種以上の負極活物質を含んでいる。この負極活物質の種類については、負極22の種類やその用途などの条件に応じて任意に選択可能である。第3の実施の形態では、特に、蒸着方式や溶射方式などのパターン形成が製法上難しい負極活物質層22B形成時に好適に用いられる。蒸着方式や溶射方式は、負極活物質として例えば金属材料あるいは合金材料などを用いる場合に適用されるこのような負極活物質層22Bは、図9に示すように負極集電体22Aの両面に設けられていてもよいし、片面だけに設けられていてもよい。
【0090】
負極活物質層22Bは、例えば、負極集電体22Aの両面全体を被覆するように設けられており、気相法、液相法等の蒸着方式、溶射方式あるいはそれらの2種以上を用いた方法などの全面形成が可能な方法により形成されている。ただし、負極リード26が負極活物質層22Bに設けられていれば、その負極活物質層22Bは塗布法などのパターン形成が可能な方法により形成されていてもよい。
【0091】
負極リード26は、第1の実施の形態と同様の材料により構成されている。
【0092】
図10Aは、図9の負極22の穿孔H1の周辺部の負極リード26主面の上面図であり、図10Bは、図10Aのc−c断面に沿った断面図である。なお、以下かしめ方式において穿孔H1に限定されない場合には、穿孔Hと適宜称する。
【0093】
第3の実施の形態では、図10Aおよび図10Bに示すように、負極22と負極リード26とがかしめられて固定されている。具体的には、負極22および負極リード26を貫通するように穿孔Hが設けられており、それらは例えば穿孔Hの周囲において負極22を内側にしながら穿孔Hから離れる方向に折り返された折り返し部T1〜T4を有している。なお、折り返し部の形成個数は4個に限定されない。
【0094】
負極22では、負極リード26が設けられていない領域(負極22と負極リード26とがかしめられていない領域)における負極活物質層22Bの厚さが均一であるのに対して、負極リード26が設けられている領域(負極22と負極リード26とがかしめられている領域)における負極活物質層22Bの厚さが不均一になっている。この「均一」とは、負極集電体22Aに負極活物質層22Bが形成された時の厚さ(負極22と負極リード26とがかしめられる前における負極活物質層22Bの厚さ)を基準とした場合に、その厚さが領域内においてほぼ維持されている状態をいう。これに対して、「不均一」とは、上記した負極活物質層22Bの厚さが領域内において維持されていない状態をいい、この状態は、負極活物質層22Bの厚さが局所的に薄くなっている状態や負極活物質層22Bが途中で途切れている状態を含む。
【0095】
負極リード26が設けられている領域では、例えば、負極22が座屈して多重(例えば2重)に折り返されている。この場合には、負極活物質層22Bの一部が伸長し、その厚さが局所的に薄くなっているため、負極リード26が負極集電体22Aに近づいている。また、負極活物質層22Bの一部が負極集電体22Aから脱落し、その負極活物質層22Bが途中で途切れているため、負極集電体22Aが負極活物質層22Bから部分的に露出して負極リード26と接触している。すなわち、負極集電体22Aと負極リード26とは、負極活物質層22Bが途切れた箇所を接点として電気的に導通している。
【0096】
なお、上述のかしめによる負極リード26の接続は、一般的なかしめ方式を用いることにより実現される。
【0097】
<効果>
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態では、正極と負極とが積層された積層電極体を用いた非水電解質電池について説明する。
【0099】
(4−1)非水電解質電池の構成
図11Aは、第4の実施の形態における非水電解質電池30の外観を示す斜視図であり、図11Bは、非水電解質電池30の構成を示す斜視分解図である。また、図11Cは、図11Aに示す非水電解質電池30の下面の構成を示す斜視図であり、図11Dは、図11Aの非水電解質電池30のc−c断面を示す断面図である。なお、下記の説明では、非水電解質電池30のうち、正極リード32および負極リード33が導出される部分をトップ部、トップ部に対向する部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。
【0100】
この発明の非水電解質電池30は、積層電極体40がラミネートフィルム31にて外装されたものであり、ラミネートフィルム31同士が封止された部分からは、積層電極体40と接続された正極リード32および負極リード33が電池外部に導出されている。
【0101】
なお、正極リード32および負極リード33の一部分には、ラミネートフィルム31と正極リード32および負極リード33との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント34がそれぞれ設けられる。シーラント34は、金属材料との接着性の高い樹脂材料により構成され、例えば正極リード32および負極リード33が上述した金属材料から構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0102】
非水電解質電池30に収容される積層電極体40は、図12Aに示す矩形状の正極41と、図12Bに示す矩形状の負極42とが、セパレータ43を介して積層された構成である。具体的には、例えば図13Aおよび図13Bに示すように、正極41および負極42がつづら折りに折り曲げられたセパレータ43を介して交互に積層された構成である。また、矩形状のセパレータ43を複数枚準備し、正極41および負極42と交互に積層しても良い。
【0103】
[積層電極体]
積層電極体40は、矩形状の正極41と、矩形状の負極42とがセパレータ43を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。正極41および負極42の表面には、ゲル電解質層が設けられていても良い。
【0104】
積層電極体40からは、複数枚の正極41とそれぞれ接続された正極リード32と、複数枚の負極42とそれぞれ接続された負極リード33とが導出されている。複数枚重ねられた正極リード32は、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた正極リード32の先端部には、例えば超音波溶接または抵抗溶接正極等の方法により正極タブ32Aが接続されている。
【0105】
また、正極41と同様に、負極リード33は、複数枚重ねられた上で、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた負極リード33の先端部には、超音波溶接または抵抗溶接正極等の方法により負極タブ33Aが接続されている。
【0106】
以下、正極41および負極42の構成について説明する。
【0107】
[正極]
図12Aに示すように、正極41は、正極活物質を含有する正極活物質層41Bが、正極集電体41Aの両面上に形成されてなる。正極集電体41A、正極活物質41Bは、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0108】
正極リード32は、正極集電体41A上に設けられた正極集電体露出部に接続されている。正極リード32は、第1の実施の形態と同様に超音波溶着、抵抗溶接等によって正極集電体41Aに接続される。
【0109】
このとき、正極リード32は、正極リード32の電極接続側一端が第1の実施の形態で記載した負極リードの位置関係と同様となるように接続されてもよい。また、正極リード32のエッジは、第1の実施の形態と同様に面取り加工されることが好ましい。さらに、正極リード32の少なくとも電極接続側端部の主面形状が、角部が面取り加工された形状とされてもよい。
【0110】
なお、第4の実施の形態では、積層された複数枚の正極41のそれぞれに正極リード32が接続されている。このため、正極41は積層電極体40の内面側および表面側のどちらに位置しているかに関わらず、電極の膨張によって大きな圧力を受ける。したがって、第4の実施の形態では、正極リード32の電極接続側一端についても、第1の実施の形態の負極リード26と同様に、正極41端部よりも外側の位置とすることが好ましい。
【0111】
[負極]
図12Bに示すように、負極42は、負極活物質を含有する負極活物質層42Bが、負極集電体42Aの両面上に形成されてなる。負極42は、正極41よりも外形寸法が大きく形成されることが好ましい。負極集電体42A、負極活物質42Bは、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0112】
負極リード33は、負極集電体42A上に設けられた負極集電体露出部に接続されている。正極リード32は、第1の実施の形態と同様に超音波溶着、抵抗溶接等によって負極集電体42Aに接続される。
【0113】
また、負極活物質層42Bを、金属材料、合金材料等からなる層として形成し、負極活物質層42B上に負極リード33を接続するようにしても良い。このような負極42は、第3の実施の形態と同様の方法により作製することができる。
【0114】
このとき、負極リード33は、負極リード33の電極接続側一端が第1の実施の形態で記載した位置関係となるように接続される。また、負極リード33のエッジは、第1の実施の形態と同様に面取り加工されることが好ましい。さらに、負極リード33の少なくとも電極接続側端部の主面形状が、角部が面取り加工された形状とされてもよい。
【0115】
[非水電解質電池の構成]
非水電解質電池30は、上述の様な積層電極体40が非水電解質とともにラミネートフィルム31に封入されたものである。積層電極体40と電気的に接続された複数枚の正極リード32は、それぞれ正極タブ32Aと接続されて、正極タブ32Aがラミネートフィルム31の封止部から電池外部に導出される。また、積層電極体40と電気的に接続された複数枚の負極リード33は、それぞれ負極タブ33Aと接続されて、負極タブ33Aがラミネートフィルム31の封止部から電池外部に導出される。なお、セパレータ43は、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0116】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、積層電極体40とともにラミネートフィルム31内に封入される。非水電解質は、第1の実施の形態と同様の、非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液を用いることができる。また、非水電解液をマトリクスポリマに取り込むことで形成されるポリマー電解質を用いてもよい。
【0117】
ポリマー電解質を用いる場合、マトリクスポリマとして、非水溶媒に相溶可能な性質を有する高分子材料を用いる。このようなマトリクスポリマとしては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0118】
[ラミネートフィルム]
積層電極体40を外装する外装材であるラミネートフィルム31は、図14に示すように、金属箔からなる金属層31aの両面に樹脂層を設けた構成とされている。ラミネートフィルムの一般的な構成は、外側樹脂層31b/金属層31a/内側樹脂層31cの積層構造で表すことができ、内側樹脂層31cが積層電極体40に対向するように形成されている。外側樹脂層31bおよび内側樹脂層31cと、金属層31aとの間には、厚さ2μm以上7μm以下程度の接着層を設けても良い。外側樹脂層31bおよび内側樹脂層31cは、それぞれ複数層で構成されてもよい。
【0119】
金属層31aを構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔およびメッキを施した鉄(Fe)箔などを使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることが好ましい。特に、加工性の点から、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いるのが好ましい。
【0120】
金属層31aの厚みは、電池外装材として必要とされる強度が得られれば任意に設定可能であるが、30μm以上100μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、充分な材料強度を備えるとともに、高い加工性を得ることができる。また、ラミネートフィルム31の厚さが増大することによる非水電解質電池30の体積効率の低下も抑制することができる。
【0121】
内側樹脂層31cは、熱で溶けて互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0122】
内側樹脂層31cの厚みは、20μm以上90μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、ラミネートフィルム31の封止性が高くなり、また封止時の圧力緩衝作用を十分に得ることができため、短絡の発生を抑制できる。また、電池外部からの水分浸入経路となる内側樹脂層31cを必要以上に厚くしないことで、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下を抑制することができる。なお、内側樹脂層31cの厚みは、積層電極体40に外装前の状態における厚みである。積層電極体40に対してラミネートフィルム31を外装し、封止した後は、2層の内側樹脂層31cが互いに融着されるため、内側樹脂層31cの厚みは上記範囲から外れる場合もある。
【0123】
外側樹脂層31bとしては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0124】
なお、内側樹脂層31c同士を熱融着により溶融させてラミネートフィルム31を接着するため、外側樹脂層31bは、内側樹脂層31cよりも高い融点を有することが好ましい。熱融着時に内側樹脂層31cのみを溶融させるためである。このため、外側樹脂層31bは、内側樹脂層31cとして選択された樹脂材料によって使用可能な材料を選択可能である。
【0125】
外側樹脂層31bの厚みは、25μm以上50μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、保護層としての機能を十分に得ることができ、また不必要に厚みを増大させないため、非水電解質電池30の体積効率の低下を抑制する。
【0126】
積層電極体40は、ラミネートフィルム31で外装される。このとき、正極リード32と接続された正極タブ32Aおよび負極リード33と接続された負極タブ33Aがラミネートフィルム31の封止部から電池外部に導出される。図11Bに示されるように、ラミネートフィルム31には、予め深絞り加工により形成された電極体収納部36が設けられている。積層電極体40は、電極体収納部36に収納される。
【0127】
この発明では、積層電極体40の周辺部をヒータヘッドによって加熱することにより、積層電極体40を両面から覆うラミネートフィルム31同士を熱融着させて封止する。特に、リード導出辺においては、正極リード32および負極リード33を避ける形状に切り欠きが設けられたヒータヘッドによってラミネートフィルム31を熱融着することが好ましい。正極リード32および負極リード33にかかる負荷を小さくして電池を作製することができるためである。この方法により、電池作製時のショートを防ぐことができる。
【0128】
この発明の非水電解質電池30は、熱融着によるラミネートフィルム31の封止後におけるリード導出部の厚みを制御することにより、高い安全性および電池特性を備えている。
【0129】
(4−2)非水電解質電池の製造方法
上述のような非水電解質電池は、以下のような工程で作製することができる。
【0130】
積層電極体40は、第1の実施の形態の正極21および負極22を矩形状に形成した正極41および負極42を積層したものであり、従来の積層電極体と同様の方法により作製することができる。なお、第4の実施の形態では、つづら折りにしたセパレータ43間に正極41および負極42を交互に挿入して積層する。正極41および負極42を積層した後、密着するように押圧した状態で固定して積層電極体40を作製する。固定を強固にするために、接着テープ等の固定部材35を用いてもよい。図11Bに示すように、固定部材35は、例えば積層電極体40の両サイド部およびボトム部に設ける。
【0131】
なお、ゲル電解質を用いる場合は、正極41および負極42の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ43を介して積層する。
【0132】
また、他のゲル電解質形成方法として、予めセパレータ43の両面にマトリクスポリマを付着させておく方法がある。この場合、ラミネートフィルム31で外装後、非水電解液を注液して封止するとともに、電池外部から加圧・加熱することにより、非水電解液をマトリクスポリマに保持させてゲル電解質を形成することができる。
【0133】
次に、複数枚の正極リード32および複数枚の負極リード33を断面U字状となるように折り曲げ、正極タブ32Aおよび負極タブ33Aをそれぞれ接続する。
【0134】
[外装工程]
このあと、作製した積層電極体40をラミネートフィルム31で外装し、サイド部の一方と、ボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。また、正極リード32および負極リード33が導出されたトップ部も、切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、必要に応じて非水電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部のラミネートフィルム31を熱融着し、積層電極体40をラミネートフィルム31内に封止する。マトリクスポリマを付着させたセパレータ43を用いた場合には、この後、ラミネートフィルム31の外部から、積層電極体40を加圧するとともに加熱し、非水電解液をマトリクスポリマに保持させてゲル電解質を形成する。
【0135】
5.第5の実施の形態
第5の実施の形態では、第1の実施の形態の負極を適用した角型電池について説明する。
【0136】
図15は、第5の実施の形態の角型電池50である。角型電池50には、第1の実施の形態と同様にして負極リード位置を調整した巻回電極体53が収容されている。角型電池50に用いる負極リードは、エッジの面取り加工や絶縁処理など、第1および第2の実施の形態で説明した各構成を適用することができる。巻回電極体53は、扁平状に巻回する以外は、第1の実施の形態における巻回電極体20と同様の方法により作製することができる。
【0137】
角型電池50は、以下のようにして作製する。まず、巻回電極体53を例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)などの金属よりなる角型缶である外装缶51内に収容する。
【0138】
そして、電池蓋52に設けられた電極ピン54と、巻回電極体53から導出された電極端子55とを接続した後、電池蓋52にて封口する。その後、非水電解液注入口56から非水電解液を注入して封止部材57にて封止する。これにより、第5の実施の形態の角型電池50が得られる。
【0139】
<効果>
第5の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
上述の第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、負極のサイズが正極のサイズよりも大きい場合について説明したが、この発明はこれに限られたものではない。負極のサイズよりも正極のサイズが大きい電池系では、各実施の形態で説明した負極リードの位置を、正極リードの位置として調整することが好ましい。また、負極のサイズが正極のサイズよりも大きい場合であっても、巻回電極体において正極リードが巻回外周側に位置する場合には、正極リードのエッジ部分において応力が集中しやすくなるため、正極リードの位置を調整することが好ましい。
【実施例】
【0141】
以下、実施例によりこの発明をより詳細に説明する。なお、図16A〜図16Dは、実施例で用いる負極の負極リード位置を示す。
【0142】
図16Aは、負極リードが正極端部と負極端部との間に位置している状態を示し、負極リードが正極の端部よりも外側に突出した領域の突出長さをfで示している。図16Bでは、負極リードが負極端部とセパレータ端部との間に位置している状態を示し、負極リードが負極の端部よりも外側に突出した領域の突出長さをgで示している。図16Cでは、負極リードがセパレータの端部よりも外側に位置している状態を示し、負極リードがセパレータの端部よりも外側に突出した領域の突出長さをhで示している。図16Dは、負極リードが正極上に位置している状態を示している。なお、各突出長さf、g、およびhは、電極体外側に向かう方向を正の方向とした。
【0143】
<実施例1>
実施例1では、負極リードの接続位置を調整した角型電池と円筒型電池を用いて、安全性の確認を行った。
【0144】
<実施例1−1>
[負極の作製]
電解銅箔からなり、厚さ24μm、十点平均粗さRzが3.0μmの負極集電体を準備した。続いて、チャンバ内に連続的に酸素ガスおよび必要に応じて水蒸気を導入しながら偏向式電子ビーム蒸着源を用いた電子ビーム蒸着法によって、負極集電体の片面に負極活物質層を形成した。具体的には、負極活物質としてケイ素(Si)を1400回に亘って堆積させることにより、多層構造の負極活物質粒子を複数形成した。負極活物質粒子の厚み(総膜厚)が8.4μmとなるようにした。また、負極集電体のもう一方の面についても同様に、ケイ素(Si)が堆積した負極活物質層を形成した。
【0145】
続いて、負極集電体の全面に負極活物質層が形成された負極に対して、かしめ方式によりニッケル(Ni)からなる幅5mm、厚さ100μmの負極リードを接続した。このとき、負極リードの負極接続側端部が、図16Aに示すように、のちに正極および負極を積層した積層電極体において正極端部と負極端部との間に位置するように調整した。
【0146】
なお、負極集電体の十点平均粗さRzは、触針式膜厚計(株式会社アルバック製、Dektak3ST)により測定した。
【0147】
[正極の作製]
正極活物質である平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末96質量部と、導電材であるカーボンブラック1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを混合し、これを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解して正極合剤スラリーとした。こののち、正極合剤スラリーをアルミニウム(Al)よりなる厚み15μmの正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層を形成した。
【0148】
なお、正極活物質層形成時には、図2Aに示すように帯状に連続する正極集電体上に、正極集電体の短手方向の一辺が露出するようにして正極合剤スラリーを塗布した。続いて、正極集電体露出部に対して、アルミニウム(Al)からなる幅3mm、厚さ100μmの正極リードを超音波溶接により接続した。
【0149】
[非水電解液の調整]
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)30質量部と、ジエチルカーボネート(DEC)60質量部と、ビニレンカーボネート(VC)10質量部とを混合した混合溶媒を用いた。この混合溶媒に対して、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/L添加して非水溶媒を調整した。
【0150】
[非水電解質電池の組み立て]
上述の様にして作製した正極および負極を、図3に示すようにセパレータを介して積層し、積層電極体を作製した。セパレータとしては、多孔性ポリエチレンを主成分とする中心材フィルムの両面を多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムで挟み込んだ構造の厚み23μmのセパレータを用いた。このあと、積層電極体の正極リード接続側の一端を巻回始端として巻回し、扁平型の巻回電極体を作製した。最後に、図15に示すような角型電池用外装缶に挿入して角型電池からなる試験用電池とした。
【0151】
<実施例1−2>
巻回電極体を円筒状に巻回して形成し、図1に示すような円筒型外装缶に挿入して円筒型電池とした以外は、実施例1−1と同様にして試験用電池を作製した。なお、実施例1−2の円筒型電池は、次のようにして作製した。
【0152】
積層電極体を円筒状に巻回して巻回電極体を作製し、この巻回電極体から導出された負極リードを、図1に示す円筒型電池缶の缶底に接続した後、絶縁版で挟まれた巻回電極体を電池缶に挿入し、非水電解液を注液した。次に、巻回電極体から導出された正極リードを電池蓋と電気的に接続された安全弁と接続し、電池蓋を絶縁封口ガスケットを介して電池缶にかしめることにより、試験用電池を作製した。
【0153】
<比較例1−1>
負極リード接続時に、負極リードの負極接続側端部が、図16Dに示すように正極および負極を積層した積層電極体において正極上に位置するように調整した以外は、実施例1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0154】
<比較例1−2>
負極リード接続時に、負極リードの負極接続側端部が、図16Dに示すように正極および負極を積層した積層電極体において正極上に位置するように調整した負極を用い、円筒型電池とした以外は、実施例1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0155】
[電池の評価:短絡試験]
各実施例および比較例の電池を10個ずつ準備し、充放電を行って、試験用電池の初回充放電時のショートの有無を確認した。それぞれの正極リードおよび負極リード間の抵抗を測定し、ショート個数を確認した。作製直後の電池は十分に大きい直流抵抗があるが、ショートしているとmΩオーダーの小さな抵抗値となる。
【0156】
なお、各実施例および比較例の試験用電池は、1Cの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧で充電時間の合計が2.5時間となるまで定電圧充電した。次に、1Cの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行った。
【0157】
上述の評価結果を表1に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
表1から分かるように、負極リードの負極接続側端部を正極端部と負極端部との間に位置するようにした各実施例では、電池形状にかかわらず短絡が生じなかった。これに対して、負極リードの負極接続側端部を正極上に位置するようにした各比較例では、電池形状にかかわらず全ての試験用電池が短絡した。
【0160】
<実施例2>
実施例2では、負極リードの接続位置を調整した角型電池と円筒型電池を用いて、安全性の確認を行った。
【0161】
<実施例2−1>
負極活物質層を、負極活物質としてケイ素(Si)を用い、塗布により形成するとともに、負極表面に形成した負極集電体露出部に対して負極リードを溶接方式により接続した以外は実施例1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0162】
なお、負極活物質層は次のようにして形成した。まず、負極結着剤の前駆体であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とするポリアミック酸溶液を調製した。続いて、負極活物質としてケイ素(Si)粉末と、ポリアミック酸溶液とを80:20の乾燥質量比で混合したのち、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置によって電解銅箔からなり、厚さ15μm、十点平均粗さRzが1.1μmの負極集電体の両面に負極合剤スラリーを均一にパターン塗布して乾燥させた。この後、負極表面をロールプレス機で圧縮成型し、400℃の真空雰囲気中において1時間の条件で熱処理した。これにより、負極結着剤としてポリイミド(PI)が生成されると共に、そのポリイミドの一部が炭化して存在する、片面当たり40μmの負極活物質層を形成した。
【0163】
なお、負極集電体の十点平均粗さRzは、触針式膜厚計(株式会社アルバック製、Dektak3ST)により測定した。
【0164】
<実施例2−2>
巻回電極体を円筒状に巻回して形成し、図1に示すような円筒型外装缶に挿入して円筒型電池とした以外は、実施例2−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0165】
<実施例2−3>
原料としてコバルト(Co)粉末とスズ(Sn)粉末と炭素(C)粉末とリン(P)粉末とを用意し、コバルト粉末およびスズ粉末を合金化してコバルト・スズ合金粉末としたのち、その合金粉末に炭素粉末およびリン粉末を加えて活物質混合物を作製した。原料の割合(原料比:質量%)は、リンの原料比を1.5質量%、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合を37質量%に固定し、炭素の原料比は20質量%、すなわち、質量比がリン:コバルト:スズ:炭素=1.5:37:41.5:20となるように混合した。このような混合物を、アルゴン(Ar)雰囲気のボールミルで20時間乾式混合処理を行い、負極活物質を合成した。
【0166】
続いて、上述の様にして作製した負極活物質粉末70質量部と、導電剤としての機能を兼ね備えた他の負極活物質である黒鉛20質量部と、導電剤であるアセチレンブラック1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン4質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極合剤スラリーとして用いた。これ以外は、実施例2−2と同様にして試験用電池を作製した。
【0167】
<比較例2−1>
負極リード接続時に、負極リードの負極接続側端部が、図16Dに示すように正極および負極を積層した積層電極体において正極上に位置するように調整した以外は、実施例2−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0168】
<比較例2−2>
負極リード接続時に、負極リードの負極接続側端部が、図16Dに示すように正極および負極を積層した積層電極体において正極上に位置するように調整した以外は、実施例2−2と同様にして試験用電池を作製した。
【0169】
<比較例2−3>
負極リード接続時に、負極リードの負極接続側端部が、図16Dに示すように正極および負極を積層した積層電極体において正極上に位置するように調整した以外は、実施例2−3と同様にして試験用電池を作製した。
【0170】
[電池の評価:短絡試験]
各実施例および比較例の電池を10個ずつ準備し、実施例1と同様の方法により試験用電池の初回充放電時のショートの有無を確認した。
【0171】
上述の評価結果を表2に示す。
【0172】
【表2】

【0173】
表2から分かるように、負極リードの負極接続側端部を正極端部と負極端部との間に位置するようにした各実施例では、負極を塗布により形成し、負極リードを溶接により接続した場合であっても、電池形状にかかわらず短絡が生じなかった。これに対して、負極リードの負極接続側端部を正極上に位置するようにした各比較例では、電池形状にかかわらず試験用電池の短絡が多く生じた。また、比較例1−1および比較例1−2と、比較例2−1〜比較例2−3とを比較することにより、負極リードを溶接により接続する方がやや短絡を抑制する効果が高かった。
【0174】
また、実施例2−3および比較例2−3から分かるように、合金系負極活物質を用いた場合であっても同様に短絡抑制効果を確認できた。
【0175】
<実施例3>
実施例3では、負極リードの接続位置を調整した円筒型電池を用い、負極リード端部を加工することによる安全性の向上を確認した。なお、実施例3では、図16Aに示すように、正極端部と負極端部とのクリアランスを2mm、負極端部とセパレータ端部とのクリアランスが1mmとなるように形成した。
【0176】
なお、各実施例および比較例で示す突出長さf、gおよびhは、図16A〜図16Cに示す部分である。また、突出長さf、gおよびhは、電極中心から外側方向を正とした。したがって、突出長さfが負の場合には、負極リードの負極接続側一端が正極端部よりも電極内側方向、すなわち負極リードの負極接続側一端が正極上にあることを示す。
【0177】
<実施例3−1>
負極リードの端部形状の加工は行わず、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが1mmとなるように負極リードの位置を調整した以外は、実施例1−2と同様の方法により円筒型の試験用電池を作製した。すなわち、負極活物質層は蒸着により形成されたものであり、負極リードはかしめ方式により接続されたものである。
【0178】
<実施例3−2>
負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが2mm、すなわち、負極リードの負極接続側一端が負極端部と同じ位置となるように負極リードの位置を調整した以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0179】
<実施例3−3>
負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが0mm、すなわち、負極リードの負極接続側一端が正極端部と同じ位置となるように負極リードの位置を調整した以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0180】
<実施例3−4>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を、図7Aに示すR形状とした以外は実施例3−1と同様にしてにして円筒型の試験用電池を作製した。
【0181】
<実施例3−5>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を図7Aに示すR形状とした。また、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが0mm、すなわち、負極リードの負極接続側一端が正極端部と同じ位置となるように負極リードの位置を調整した。これ以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0182】
<実施例3−6>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を図7Aに示すR形状とした。また、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが3mm、負極端部からの突出長さgが1mm、すなわち、負極リードの負極接続側一端がセパレータ端部と同じ位置となるように負極リードの位置を調整した。これ以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0183】
<実施例3−7>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を図7Aに示すR形状とした。また、負極リードの負極接続側一端にポリエチレン(PE)樹脂を被覆した。また、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが4mm、負極端部からの突出長さgが2mm、セパレータ端部からの突出長さhが1mm、すなわち、負極リードの負極接続側一端がセパレータ端部と同じ位置となるように負極リードの位置を調整した。これ以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0184】
<比較例1−1>
負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが−1mm、すなわち正極端部から1mm電極中心側に位置する(負極リードの負極接続側一端が正極上にある)ように負極リードの位置を調整した以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0185】
<比較例1−2>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を図7Aに示すR形状とした。また、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが−1mm、すなわち正極端部から1mm電極中心側に位置する(負極リードの負極接続側一端が正極上にある)ように負極リードの位置を調整した。これ以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0186】
<比較例1−3>
負極リードの負極接続側一端の主面部形状を図7Aに示すR形状とした。また、負極リードの負極接続側一端の正極端部からの突出長さfが−5mm、すなわち正極端部から5mm電極中心側に位置する(負極リードの負極接続側一端が正極上にある)ように負極リードの位置を調整した。これ以外は、実施例3−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0187】
[電池の評価:短絡試験]
各実施例および比較例の電池を10個ずつ準備し、実施例1と同様の方法により試験用電池の初回充放電時のショートの有無を確認した。
【0188】
上述の評価結果を表3に示す。
【0189】
【表3】

【0190】
表3から分かるように、負極リードの負極接続側一端が正極上にある場合には、負極リードの端部の形状を加工しても短絡個数が6個以上と多くなる。
【0191】
これに対して、負極リードの負極接続側一端が正極と同じ位置にある場合には、負極リードの端部の形状を加工しなくても短絡が5個以下となる。また、負極リードの負極接続側一端が正極端部よりも外側にある場合には、負極リードの端部の形状を加工しなくても短絡が2個以下となる。
【0192】
特に、実施例3−3と実施例3−5とを比較して分かるように、負極リードの負極接続側一端が正極と同じ位置にある場合には、負極リードの端部の形状を加工することにより、短絡を顕著に抑制することができる。
【0193】
<実施例4>
実施例4では、負極リードの接続位置を調整した円筒型電池を用い、負極リードのエッジを面取り加工することによる安全性の向上を確認した。
【0194】
<実施例4−1>
負極リードの負極集電体対向面およびセパレータ対向面の両面において、負極リードのエッジを、面取り半径50μmでR面取り加工した負極リードを用いた以外は、実施例3−3と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。すなわち、負極活物質層は塗布により形成されたものであり、負極リードは溶着方式により接続されたものである。
【0195】
<実施例4−2>
負極リードの負極対向面のみにR面取り加工した負極リードを用いた以外は、実施例4−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0196】
<実施例4−3>
負極リードのセパレータ対向面のみにR面取り加工した負極リードを用いた以外は、実施例4−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0197】
<実施例4−4>
負極リードの負極集電体対向面およびセパレータ対向面の両面において、負極リードのエッジを、図17に示す面取り角θを135°としてC面取り加工した負極リードを用いた以外は、実施例4−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0198】
<実施例4−5>
負極リードの負極集電体対向面およびセパレータ対向面の両面において、負極リードのエッジを、図17に示す面取り角θを150°としてC面取り加工した負極リードを用いた以外は、実施例4−1と同様にして円筒型の試験用電池を作製した。
【0199】
<実施例4−6>
実施例3−3と同様にして、面取りされていない負極リードを用いた円筒型の試験用電池を作製した。
【0200】
[電池の評価:短絡試験]
各実施例および比較例の電池を10個ずつ準備し、実施例1と同様の方法により試験用電池の初回充放電時のショートの有無を確認した。
【0201】
上述の評価結果を表4に示す。
【0202】
【表4】

【0203】
表4から分かるように、負極リード位置を同位置にした場合、実施例4−1〜実施例4−5と実施例4−6とから分かるように、負極リードのエッジに対して面取り加工を施すことにより、安全性が高まった。特に、実施例4−1〜実施例4−3のように、負極リードの面取り加工は、少なくとも負極リードの一方の面に施すことが好ましく、負極リードのセパレータ対向面に施すことがより好ましく、負極リードの負極対向面およびセパレータ対向面の双方に施すことがさらに好ましかった。また、実施例4−4および実施例4−5のように、C面取り加工を施す場合には、負極に対する角度が大きくなるようにC面取りを行ったほうがより安全性が高くなった。
【0204】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0205】
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、および構成はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値および構成を用いてもよい。特に、この発明は電極リードの接続位置が重要であり、電池素子の構成、材料等は任意に選択可能である。
【符号の説明】
【0206】
1・・・非水電解質電池
20・・・巻回電極体
21・・・正極
21A・・・正極集電体
21B・・・正極活物質層
22・・・負極
22A・・・負極集電体
22B・・・負極活物質層
23・・セパレータ
24・・・積層電極体
25・・・正極リード
26・・・負極リード
30・・・非水電解質電池
31・・・ラミネートフィルム
32・・・正極リード
33・・・負極リード
40・・・積層電極体
41・・・正極
41A・・・正極集電体
41B・・・正極活物質層
42・・・負極
42A・・・負極集電体
42B・・・負極活物質層
43・・・セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1の電極と、
帯状の第2の電極と、
上記第1の電極と重なり合った一端部側が上記第1の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を上記第1の電極の一側縁から突出するように延長して配設された第1の電極リードと、
上記第2の電極と重なり合った一端部側が上記第2の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を上記第2の電極の一側縁から突出するように延長して配設された第2の電極リードと、
上記第1の電極および上記第2の電極との間に配置され、上記第1の電極および上記第2の電極の双方よりも外寸が大きい帯状のセパレータと、
非水電解質と
を備え、
上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記第1の電極リードが接続された該第1の電極の一端部と対向しない該第2の電極の他端部に上記第2の電極リードが位置するように上記セパレータを介して積層された積層電極体が、該第1の電極リードが接続された一端を始端として長手方向に巻回されてなる巻回電極体を有し、
上記積層電極体において、上記第2の電極リードの上記第2の電極と接続された電極接続側一端が、該第1の電極および該第2の電極のうち一方の電極のみに対向する位置、もしくは該第1の電極および該第2の電極の両電極と対向しない位置となるように上記第2の電極と上記第2の電極リードとが接続され、
上記巻回電極体が、上記非水電解質とともに該巻回電極体を覆って密封する電池外装体内に収納される
非水電解質電池。
【請求項2】
上記第2の電極は、上記第1の電極よりも外寸が大きく、
上記第1の電極と上記第2の電極とが、該第2の電極の短手方向の両端である長辺がそれぞれ該第1の電極の短手方向の両端である長辺よりも外側に位置するように積層され、
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端が、上記積層電極体短手方向において上記第1の電極の端部と同位置か、もしくは該第1の電極の端部よりも外側に位置するように接続される
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端が、上記積層電極体短手方向において上記セパレータの端部と同位置か、該セパレータの端部よりも内側に位置するように接続される
請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端を含む上記第2の電極リードの電極接続側端部近傍のエッジが、面取り加工された面取形状とされている
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の非水電解質電池。
【請求項5】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側端部の主面形状が、面取形状とされている
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の非水電解質電池。
【請求項6】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側端部が、絶縁部とされた
請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記絶縁部は、上記第2の電極リードの電極接続側端部に、樹脂材料が設けられるかもしくは陽極酸化被膜が形成されてなる
請求項6に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記電池外装体が金属外装体であり、
上記第1の電極リードが上記金属外装体の第1の電極端子と電気的に接続され、上記第2の電極リードが該金属外装体の第2の電極端子と電気的に接続される
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項9】
複数枚の矩形状の第1の電極と、
複数枚の矩形状の第2の電極と、
上記第1の電極と重なり合った一端部側が上記第1の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を上記第1の電極の一側縁から突出するように延長して配設された複数本の第1の電極リードと、
上記第2の電極と重なり合った一端部側が上記第2の電極の一短辺近傍に接続され、他端側を上記第2の電極の一側縁から突出するように延長して配設された複数本の第2の電極リードと、
上記第1の電極および上記第2の電極との間に配置され、上記第1の電極および上記第2の電極の双方よりも外寸が大きい複数枚の矩形状のセパレータと、
非水電解質と
を備え、
上記第1の電極と上記第2の電極とが上記第2の電極リードおよび上記第1の電極リードが対向しないように上記セパレータを介して積層された積層電極体を有し、
上記積層電極体において、上記第2の電極リードの上記第2の電極と接続された電極接続側一端が、該第1の電極および該第2の電極のうち一方の電極のみに対向する位置、もしくは該第1の電極および該第2の電極の両電極と対向しない位置となるように上記第2の電極と上記第2の電極リードとが接続され、
上記積層電極体が、上記非水電解質とともに該積層電極体を覆って密封する電池外装体内に収納される
非水電解質電池。
【請求項10】
上記第2の電極は、上記第1の電極よりも外寸が大きく、
上記第1の電極と上記第2の電極とが、該第2の電極の短手方向の両端である長辺がそれぞれ該第1の電極の短手方向の両端である長辺よりも外側に位置するように積層され、
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端が、該第2の電極リードの長手方向において上記第1の電極の端部と同位置か、もしくは該第1の電極の端部よりも外側に位置するように接続される
請求項9に記載の非水電解質電池。
【請求項11】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端が、該第2の電極リードの長手方向において上記セパレータの端部と同位置か、該セパレータの端部よりも内側に位置するように接続される
請求項10に記載の非水電解質電池。
【請求項12】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側一端を含む上記第2の電極リードの電極接続側端部近傍のエッジが、面取り加工された面取形状とされている
請求項9〜請求項11のいずれかに記載の非水電解質電池。
【請求項13】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側端部の主面形状が、面取形状とされている
請求項9〜請求項12のいずれかに記載の非水電解質電池。
【請求項14】
少なくとも上記第2の電極リードの電極接続側端部が、絶縁部とされた
請求項10に記載の非水電解質電池。
【請求項15】
上記絶縁部は、上記第2の電極リードの電極接続側端部に、樹脂材料が設けられるかもしくは陽極酸化被膜が形成されてなる
請求項14に記載の非水電解質電池。
【請求項16】
上記電池外装体がラミネートフィルムであり、
上記第1の電極リードおよび上記第2の電極リードの電極接続側一端と対向する他端、もしくは該第1の電極リードおよび該第2の電極リードの電極接続側一端と対向する他端と接続された第1の電極タブおよび第2の電極タブが、上記ラミネートフィルムの封口部から該ラミネートフィルムの外部に突出された
請求項9に記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−113995(P2012−113995A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262760(P2010−262760)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】