説明

非線形素子の製造方法、非線形素子、電気光学装置、および反応性スパッタ成膜装置

【課題】反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素の含有量について基板面内ばらつきを抑えることにより、反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができる非線形素子の製造方法、非線形素子、電気光学装置、および反応性スパッタ成膜装置を提供すること。
【解決手段】反応性スパッタ成膜法により反応生成膜を形成する際、ヒータ7と基板20xとの間に、被成膜面21の内側領域21aと重なる領域に矩形の開口部8bが形成された温度分布調整板8を配置し、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定する。このため、内側領域21aでは反応性ガス由来の元素が薄膜に取り込まれやすいので、反応性ガス由来の元素がプラズマの中心に到達しにくいとしても、反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素量に面内ばらつきを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下電極、絶縁層および下電極を備えた非線形素子の製造方法、この方法で製造した非線形素子、この非線形素子を用いた電気光学装置、および反応性スパッタ成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶装置などの技術分野では、各種薄膜を形成するにあたって、スパッタ成膜法が一般に採用されている。このスパッタ成膜法では、真空状態にした成膜室内にアルゴンガスなどの不活性ガス(放電ガス)を導入し、プラズマ中の正イオンを陰極上のターゲット表面に衝突させてターゲット原子をはじき出すことにより基板上に金属膜を形成する。ここで、成膜室内に、不活性ガスとともに、窒素ガスや酸素ガスなどの反応性ガスを導入すると、反応性ガスとターゲット物質との反応生成膜を基板上に形成することができ、このような方法は反応性スパッタ成膜法と称せられている。
【0003】
ここで、反応性スパッタ法に限らず、スパッタ成膜法では、成膜された薄膜の性質が基板温度の影響を受ける。そのため、基板面内の温度ばらつきを抑えることを目的に、基板より大きな基板ホルダを用い、かつ、基板ホルダにおいて基板から張り出した領域を基板と同一材料で構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、放射温度計での検出結果に基づいて分割ヒータを制御することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、基板に対して反応性ガスを吹き付けて基板面を加熱することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらにまた、冷媒の引き回しを工夫することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平5−251360号公報
【特許文献2】特開平8−162415号公報
【特許文献3】特開平10−121250号公報
【特許文献4】特開2005−15883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4の記載の技術はいずれも、スパッタ成膜法全般において、基板面の温度分布を一定にすることにより基板内の膜質ばらつきを抑えようとする技術であり、反応性スパッタ成膜法特有の膜質の面内ばらつきを抑えることができないという問題点がある。
【0008】
すなわち、本願発明者が繰り返し行った実験によれば、反応性スパッタ成膜法では、基板面内の温度ばらつきを抑えても、反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素の含有量が面内でばらつき、膜質に面内ばらつきが発生するという問題点がある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素の含有量の面内ばらつきを抑えることにより、反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができる非線形素子の製造方法、この方法で製造した非線形素子、この非線形素子を
用いた電気光学装置、および反応性スパッタ成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本願発明者が上記課題を解決するために行った種々の検討で得られた新たな知見に基づくものである。すなわち、本願発明者は、反応性スパッタ成膜法で得られた反応生成膜において、反応性ガス由来の元素量が面内でばらつくのは、反応性ガス由来の元素がプラズマの中心に到達しにくいことに起因するという新たな知見を得た。また、本願発明者は、反応性スパッタ成膜法の場合、反応生成膜への反応性ガス由来の元素の取り込み量が基板温度の影響を受けるという新たな知見を得、基板温度による反応性ガス由来の元素の取り込み量の変化を逆に利用して、反応性ガス由来の元素がプラズマの中心に到達しにくいことに起因する反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができると考え、本願発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明では、基板上に、下電極、該下電極の表面側を覆う絶縁層、および該絶縁層を介して前記下電極に対向する上電極を備えた非線形素子の製造方法において、成膜室内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入しながら当該反応性ガスとターゲット物質との反応生成膜を前記基板上に堆積させる反応性スパッタ成膜工程と、少なくとも前記反応生成膜を含む導電膜をパターニングして前記下電極を形成するパターニング工程と、前記下電極の表面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、を有し、前記反応性スパッタ成膜工程では、前記基板によって構成された被成膜面の内側領域を外周側領域に比して低い温度に設定することを特徴とする。本発明において、非線形素子の下電極は、前記反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜のみからなる場合、あるいは前記反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜と他の層との複数の層から構成されている場合のいずれであってもよく、複数の層からなる場合、前記反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜は、下電極の下層、中間層あるいは上層のいずれの位置に形成されていてもよい。
【0012】
本発明では、反応性スパッタ成膜法により反応生成膜を形成する際、プラズマ中の反応性ガス由来の元素濃度が等しい条件下では、被成膜面の温度が低い方が反応性ガス由来の元素の反応生成膜からの脱離が起こりにくいので、かかる元素の反応生成膜への取り込み量が多くなることを利用する。すなわち、反応性ガス由来の元素は、プラズマの中心に到達しにくいため、プラズマの中心部では反応性ガス由来の元素濃度が低くなってしまうが、本発明では、反応性スパッタ成膜工程において、被成膜面の内側領域を外周側領域に比して低い温度に設定したため、被成膜面の内側領域では反応性ガス由来の元素が反応生成膜に取り込まれやすいので、反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素量に面内ばらつきを解消することができる。それ故、反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができる。
【0013】
本発明において、前記反応性スパッタ成膜工程では、例えば、前記ターゲットとしてタンタルターゲットを用い、前記反応性ガスとして窒素ガスを用い、前記反応生成膜として、窒素含有タンタル膜を形成する。
【0014】
本発明は、前記反応性スパッタ成膜工程において、前記反応生成膜として、Ta35、Ta2N、TaNなどとして表わされる窒化タンタル膜よりも窒素含有量が少ない窒素含有タンタル膜を形成するのに適用すると効果が大きい。窒化タンタル膜よりも窒素含有量が少ない窒素含有タンタル膜では、窒素含有量の多い窒化タンタル膜と比較して、窒素含有量がタンタル膜の膜質に与える影響が大きく、例えば、窒素含有量によってタンタル膜の比抵抗が大きく変動する。従って、本発明を適用することにより、窒素含有量が少ない窒素含有タンタル膜において窒素含有量の面内ばらつきを抑えれば、窒素含有タンタル膜の比抵抗の面内ばらつきを抑えることができる。それ故、窒素含有タンタル膜によって下
電極あるいは下電極と同時形成されたタンタル配線において、比被抵抗の面内ばらつきを抑えることができる。
【0015】
本発明において、「タンタルターゲット」とは、主成分がタンタルであるターゲットを意味し、タングステンやニオブなどを少量含むタンタルターゲットも含む意味である。また、「タンタルターゲット」とは、窒素を含むタンタルターゲットも含む意味であり、この場合、タンタルターゲット由来の窒素と、反応性ガス由来の窒素とによって、窒素含有タンタル膜が形成されることになる。なお、前記反応性スパッタ成膜工程では、例えば、前記ターゲットとしてニオブターゲット、ニオブ−タンタル合金ターゲットを用い、前記反応性ガスとして窒素ガスや酸素ガスを用い、前記反応生成膜として、窒化や酸素を含有するニオブ膜、あるいは窒化や酸素を含有するニオブ−タンタル合金を形成してもよい。
【0016】
本発明において、前記被成膜面は、例えば、1枚の前記基板によって構成されている。すなわち、基板とターゲットとが1対1で配置されている構成を採用することができ、この場合、1枚の基板の内側領域を外周側領域よりも低い温度に設定する。
【0017】
本発明において、前記被成膜面は、面内方向に配置された複数枚の前記基板によって構成されていることもある。この場合、複数枚の基板によって構成された被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に設定する。
【0018】
本発明では、前記反応性スパッタ工程において、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に設定するにあたっては、前記基板の背面側に当該基板を加熱するためのヒータを配置するとともに、当該基板と前記ヒータとの間には、当該ヒータから前記被成膜面の内側領域に向けての熱伝導性が前記ヒータから前記被成膜面の外周側領域に向けての熱伝導性に比して低い温度分布調整部材を配置することが好ましい。成膜室内では真空状態にあるため、熱伝達は、主に熱伝導によるので、ヒータから被成膜面の内側領域に向けての熱伝導性がヒータから被成膜面の外周側領域に向けての熱伝導性に比して低い温度分布調整部材を基板とヒータとの間に配置すれば、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に確実かつ容易に設定することができる。
【0019】
本発明において、前記温度分布調整部材は金属板であって、当該金属板には、前記被成膜面の内側領域と重なる領域に開口部が形成されている構成を採用することができる。このように構成すると、金属板に開口部を形成するだけで、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に設定することができ、かつ、温度分布調整部材は、外周側領域に対しては周方向での温度ばらつきを解消する均熱板として機能する。また、基板(被成膜面)が大型である場合でも、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に確実かつ容易に設定することができる。
【0020】
本発明において、前記温度分布調整部材は基材が金属板であって、当該金属板には、前記被成膜面の内側領域と重なる領域に熱伝導性の低い障壁層が形成されている構成を採用してもよい。この場合、前記障壁層としては、セラミックス層を用いることができる。このように構成すると、金属板に障壁層を形成するだけで、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に設定することができ、かつ、温度分布調整部材は、外周側領域に対しては周方向での温度ばらつきを解消する均熱板として機能する。また、基板(被成膜面)が大型である場合でも、被成膜面の内側領域を外周側領域よりも低い温度に確実かつ容易に設定することができる。
【0021】
本発明に係る方法により製造された非線形素子は、例えば、電気光学装置において画素スイッチング素子として用いることができる。
【0022】
本発明は、非線形素子の下電極を構成するための薄膜の形成に限らず、各種薄膜の形成に適用することができる。すなわち、本発明では、成膜室と、該成膜室内で被成膜面に対向配置されたターゲットと、前記真空内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入するガス導入手段とを有し、前記被成膜面と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させて前記反応性ガスとターゲット物質との反応生成膜を前記被成膜面上に堆積させる反応性スパッタ装置において、前記被成膜面に対する加熱手段と、当該被成膜面の内側領域を外周側領域に比して低い温度に設定する温度分布調整手段とを備えていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、反応性スパッタ成膜装置および反応性スパッタ成膜方法を説明した後、本発明を非線形素子およびその製造方法に適用した例を説明し、しかる後に、この非線形素子をアクティブマトリスクス型の電気光学装置において画素スイッチング素子として用いた例を説明する。また、以下の説明で参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺が各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、本発明を適用した反応性スパッタ成膜装置の概略構成を模式的に示す説明図である。図2(a)(b)は各々、図1に示す反応性スパッタ成膜装置に用いた温度分布調整部材の説明図である。
【0025】
図1に示すように、本形態の反応性スパッタ成膜装置1は、成膜室2と、この成膜室2内に配置されたターゲットホルダ4と、このターゲットホルダ4に対向対置された基板ホルダ6とを有しており、ターゲットホルダ4および基板ホルダ6は各々、直流電源あるいは高周波電源を備えた電源装置9に電気的に接続されて陰極および陽極として機能する。図1には、ターゲットホルダ4と基板ホルダ6が上下に配置された例を示してあるが、その上下関係が反転した構成や、ターゲットホルダ4および基板ホルダ6が起立した状態で配置されることもある。
【0026】
成膜室2の側面部には排気口2aが形成されており、この排気口2aに繋がる排気経路にはターボ分子ポンプなどの排気ポンプ(図示せず)が接続されている。また、成膜室2において、ターゲットホルダ4の背面側にはプロセスガス供給管3(ガス導入手段)が開口しており、プロセスガス供給管3は、不活性ガス供給管3aおよび反応性ガス供給管3bに接続されている。不活性ガス供給管3aにはバルブ3eが介挿されているとともに、アルゴンガスなどの不活性ガスが充填されたガスボンベ3cが接続されている。反応性ガス供給管3bにはバルブ3fが介挿されているとともに、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスなどの反応性ガスが充填されたガスボンベ3dが接続されている。2つのバルブ3e、3fは、各ガスの流量を調整するためのバルブであり、マスフローコントローラ(図示せず)による制御の下、開度が調整される。
【0027】
ターゲットホルダ4には、タンタルターゲット、タングステンターゲット、ニオブターゲット、アルミニウムターゲット、チタンターゲット、インジウムターゲット、すずターゲット、亜鉛ターゲット、これらの金属の合金ターゲットなどの各種金属のターゲット5が保持される一方、基板ホルダ6には1枚あるいは複数枚の基板20xが保持され、基板20xはターゲット5と対向配置される。基板ホルダ6には面状のヒータ7(加熱手段)が構成されており、ヒータ7は、基板20xを背面側から加熱する。また、基板ホルダ6には、ヒータ7と基板20xとの間に温度分布調整板8(温度分布調整部材/温度分布調整手段)が配置されており、この温度分布調整板8の詳細な構成は、図2を参照して後述する。
【0028】
基板ホルダ6には、例えば、図2(a)に示すように、基板20xが1枚、保持され、この場合、1枚の基板20xの表面によって被成膜面21が構成される。これに対して、基板ホルダ6に対して複数枚の基板20xが保持される場合、例えば、図2(b)に示すように、基板ホルダ6に対して4枚の基板20xが面内方向に並んで保持される場合があり、この場合には、4枚の基板20xの表面によって被成膜面21が構成される。
【0029】
このような被成膜面21の温度分布を所定の条件に調整するため、本形態では、図2(a)、(b)に示すように、温度分布調整板8は、矩形のアルミニウム合金板やステンレス板などからなる金属板8aで構成されているとともに、この金属板8aには、被成膜面21の内側領域21aと重なる領域に矩形の開口部8bが形成されている。このため、ヒータ7から被成膜面21の内側領域21aに向けての熱伝導性がヒータ7から被成膜面21の外周側領域21bに向けての熱伝導性に比して低い。また、成膜室2内では真空状態にあるため、熱伝達は、主に熱伝導による。従って、反応性スパッタ成膜時、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bよりも低い温度に設定することができる。また、温度分布調整部材は、被成膜面21の外周側領域21bに対しては周方向での温度ばらつきを解消する均熱板として機能する。
【0030】
このように構成した反応性スパッタ成膜装置1において、基板20xの表面にターゲット物質と反応性ガス由来の元素との反応生成膜(薄膜)を形成するには、まず、排気ポンプにより成膜室2の内部を真空にした後、バルブ3e、3fの開度を調整して、成膜室2に不活性ガスと反応性ガスを供給する。また、ヒータ7に通電し、温度分布調整板8を介して基板20xを加熱する。その結果、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bよりも低い温度に設定される。
【0031】
そして、ターゲットホルダ4と基板ホルダ6との間に給電を行い、ターゲット5と基板20xとの間にプラズマ1aを発生させる。なお、マグネトロン磁気回路を設けて、ターゲットホルダ4と基板ホルダ6の間にループ状の磁場を形成し、プラズマ1aの高密度化を図ることもある。
【0032】
このようにしてプラズマ1aを発生させると、プラズマ1a中のアルゴンイオンがターゲット5の表面に衝突してターゲット原子をはじき出す結果、基板20x上に金属膜を形成される。その際、反応性ガス由来の元素とターゲット原子が反応し、基板20x上には反応生成膜が形成される。
【0033】
以上説明した反応性スパッタ成膜装置1および反応性スパッタ成膜法において、本形態では、反応性スパッタ成膜法により反応生成膜を形成する際、プラズマ1a中の反応性ガス由来の元素濃度が等しければ、被成膜面21の温度が高い方が反応性ガス由来の元素の反応生成膜からの脱離が起こりやすいので、かかる元素の反応生成膜への取り込み量が少なくなるのに対して、被成膜面21の温度が低い場合には反応性ガス由来の元素の反応生成膜からの脱離が起こりにくいので、かかる元素の薄膜への取り込み量が多いことを利用する。すなわち、反応性ガス由来の元素は、プラズマ1aの中心に到達しにくいため、プラズマ1aの中心部では反応性ガス由来の元素濃度が低いが、本形態では、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定したため、内側領域21aでは反応性ガス由来の元素が反応生成膜に取り込まれやすい。従って、被成膜面21の内側領域21aと外周側領域21bとの間では、反応性ガス由来の元素が反応生成膜に取り込まれる量が同等である。それ故、反応性スパッタ成膜法により形成された反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素量に面内ばらつきが発生しないので、反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができる。
【0034】
また、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定する
にあたって、本形態では、ヒータ7と基板20xとの間に、被成膜面21の内側領域21aと重なる領域に開口部8bが形成された温度分布調整板8を配置しただけであるので、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bよりも低い温度に確実に設定することができ、かつ、反応性スパッタ成膜装置1に対して大掛かりな改造を必要としない。
【0035】
[実施の形態2]
図3(a)(b)は各々、本発明の実施の形態2に用いた温度分布調整部材の説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と共通するので、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0036】
本形態の反応性スパッタ成膜装置は、実施の形態1と同様、図1と同様な構成を有しており、図3(a)に示すように、基板20xの背面側にはヒータ7を備えている。また、ヒータ7と基板20xとの間には、温度分布調整板8(温度分布調整部材/温度分布調整手段)が配置されている。ここで、基板ホルダ6には、基板20xが1枚、保持されているので、1枚の基板20xの表面が被成膜面21となる。これに対して、図3(b)に示すように、基板ホルダ6に対して4枚の基板20xが保持される場合には、4枚の基板20xの表面によって被成膜面21が構成される。
【0037】
このような被成膜面21の温度分布を所定の条件に調整するため、本形態では、図3(a)、(b)に示すように、温度分布調整板8が矩形のアルミニウム合金板やステンレス板などからなる金属板8aで構成されているとともに、この金属板8aの表面および裏面には、被成膜面21の内側領域21aと重なる領域に障壁層8cが矩形に形成されている。ここで、障壁層8cは、金属板8aの表面にチタン酸化物などのセラミックスを溶射した層である。このため、本形態では、ヒータ7から被成膜面21の内側領域21aに向けての熱伝導性がヒータ7から被成膜面21の外周側領域21bに向けての熱伝導性に比して低い。また、成膜室2内では真空状態にあるため、熱伝達は、主に熱伝導による。従って、反応性スパッタ成膜時、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bよりも低い温度に確実かつ容易に設定することができる。また、温度分布調整部材は、被成膜面21の外周側領域21bに対しては周方向での温度ばらつきを解消する均熱板として機能する。
【0038】
このように本形態でも、実施の形態1と同様、反応性スパッタ成膜を行う際、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定したため、内側領域21aでは反応性ガス由来の元素が薄膜に取り込まれやすい。それ故、反応性ガス由来の元素がプラズマ1aの中心に到達しにくい場合でも、反応性スパッタ成膜法により形成された反応生成膜に含まれる反応性ガス由来の元素量の面内ばらつきを解消することができ、反応生成膜の膜質の面内ばらつきを抑えることができる。
【0039】
また、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定するにあたって、ヒータ7と基板20xとの間に、被成膜面21の内側領域21aと重なる領域に障壁層8cが形成された温度分布調整板8を配置しただけであるので、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bよりも低い温度に確実かつ容易に設定することができる。
【0040】
[他の温度分布調整手段の例]
上記形態では、ヒータ7と基板20xとの間に配置した温度分布調整板8によって被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定したが、ヒータ7自身の構造や、基板20xに対する冷却方法あるいは加熱方法などを改良して被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定してもよい。
【0041】
また、上記形態では、基板20xの背面側にヒータ7が配置された構成であったが、外部加熱方式の反応性スパッタ成膜装置および反応性スパッタ成膜方法に本発明を適用してもよい。
【0042】
[非線形素子およびその製造方法]
次に、非線形素子およびその製造方法を例に本発明をより具体的に説明する。図4は、本発明を適用した非線形素子の製造方法を示す工程断面図である。図5(a)、(b)、(c)は、非線形素子の下電極を形成するための窒素含有タンタル膜を反応性スパッタ成膜法により形成した際の窒素ガス流量(N2flow Rate)と、得られた窒素含有タンタル膜の比抵抗(Resistivity)との関係を示すグラフ、非線形素子の下電極を形成するための窒素含有タンタル膜を反応性スパッタ成膜法により形成した際の窒素ガス流量と、得られた窒素含有タンタル膜の格子定数(Lattice parameter)との関係を示すグラフ、および格子定数に対して比抵抗をプロットしたときのグラフである。ここで、窒素ガス流量が多いほど、窒素含有タンタル膜の窒素含有量が増大する。なお、図5(a)、(b)において、基板温度を150℃に設定したときの結果を実線L150で示し、基板温度を250℃に設定したときの結果を実線L250で示してある。また、図5(b)に示す格子定数は、X線回折時の2θより算出した。
【0043】
図4(d)に示すように、非線形素子10xは、窒素含有タンタル膜からなる下電極13x、この下電極13xの表面側を覆うタンタル酸化膜からなる絶縁層14x、およびこの絶縁層14xを介して下電極13xに対向する上電極15xを備えたTFD素子である。基板20xの表面にはタンタル酸化膜などからなる下地絶縁層201xが形成されており、非線形素子10xは、下地絶縁層201xの表面に形成されている。
【0044】
このような構成の非線形素子10xを形成するには、まず、図4(a)に示すように、基板20xの表面に下地絶縁層201xを形成する。
【0045】
次に、反応性スパッタ成膜工程において、図1〜図3を参照して説明した反応性スパッタ成膜装置1において、ターゲット5としてタンタルターゲットを用い、不活性ガスとしてアルゴンガスを用い、反応性ガスとして窒素ガスを用い、窒素含有タンタル膜13を反応性スパッタ成膜法により形成する。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて窒素含有タンタル膜13をパターニングし、図4(b)に示すように、下電極13xを形成する(パターング工程)。
【0047】
次に、図4(c)に示す絶縁層形成工程において、下電極13xの表面を酸化し、絶縁層14xを形成する。より具体的には、下電極13xの表面に陽極酸化を行い、窒素含有のタンタル酸化膜からなる絶縁層14xを形成する。また、下電極13xの表面に気相酸化を行い、窒素含有のタンタル酸化膜からなる絶縁層14xを形成してもよい。気相酸化法の場合には、例えば、基板20xを収容した処理室内を350℃の温度条件に設定した状態で、酸素を含有するガス(O2、O3、H2O)を処理室内に導入し、熱酸化法、水蒸気酸化法やオゾン酸化法などの気相酸化法により、絶縁層14bを形成する。その際、活性な原子状酸素を素子基板20の表面に効率よく供給することを目的に、下電極13bの表面に対して、Krプラズマ照射、紫外線照射、レーザ照射を併用してもよい。
【0048】
次に、スパッタ成膜法などにより、上電極形成用の導電膜を形成した後、パターニングし、図4(d)に示すように、上電極15xを形成する。
【0049】
このような非線形素子10xを製造するにあたっては、本形態では、下電極13xの膜質を最適化して非線形素子10xの電気的特性の向上や、下電極13xと同時形成される
タンタル配線の配線抵抗の低減を目的に、タンタル膜として、窒素含有タンタル膜13を反応性スパッタ成膜法により形成し、これにより、下電極13xやタンタル配線を形成する。その際、窒素含有タンタル膜13(下電極13x)の窒素含有量を多く設定すると、この窒素含有タンタル膜13(下電極13x)を酸化してなるタンタル酸化膜を非線形素子10xの絶縁層14xとして用いた場合に非線形素子10xの非線形性が向上する。
【0050】
また、窒素含有タンタル膜13(下電極13x)を反応性スパッタ成膜法で形成する際の窒素ガス流量を増やして窒素含有量を増大させると、比非抵抗は、図5(a)に実線L150および点線L250で示すように変化する。すなわち、窒素を含有しないタンタル膜をスパッタ形成しただけでは、正方晶系(β相)のタンタルが形成されるので、比抵抗が高いが、タンタル膜中の窒素含有量を増大させていくと、まず、立方晶系のタンタルと正方晶系のタンタルとが混在した状態になるので、比非抵抗が低下していく。そして、タンタル膜中の窒素含有量が所定条件になると、立方晶系の単相のタンタルとなるため、比非抵抗が最小値を示す。そして、タンタル膜中の窒素含有量をさらに増大させると、擬似立方晶系の単相のタンタルとなって比抵抗が上昇する。さらに、タンタル膜中の窒素含有量が増えると、擬似立方晶系のタンタルと窒化タンタルとの混合相となり、比抵抗がさらに上昇する。
【0051】
従って、同一基板20x上に複数の非線形素子10xや複数本のタンタル配線を形成する場合、非線形素子10xの電気的特性や、タンタル配線の配線抵抗の面内ばらつきを抑えるには、窒素含有タンタル膜13の窒素含有量の面内ばらつきを抑える必要があるが、従来の方法では、反応性ガス由来の元素がプラズマ1aの中心に到達しにくいことに起因して、被成膜面21の内側領域21aに形成された窒素含有タンタル膜13(下電極13xやタンタル配線)では窒素含有量が少なく、被成膜面21の外側領域に形成された窒素含有タンタル膜13(下電極13xやタンタル配線)では窒素含有量が多くなってしまう。
【0052】
ここに、本願発明者は、反応性スパッタ成膜の際、窒素含有タンタル膜13での反応性ガス(窒素ガス)由来の元素(窒素)の取り込み量は、基板温度の影響を受けるという新たな知見に基づいて、面内ばらつきを解消する。すなわち、図5(a)に示すように、基板温度が150℃と250℃の場合では、反応性スパッタ成膜法で形成する際の窒素ガス流量と比非抵抗の関係が相違している。そこで、基板温度が150℃と250℃で反応性スパッタ成膜法で形成した窒素含有タンタル膜13をX線回折により分析したところ、図5(b)に示すように、窒素ガス流量が同一であっても、基板温度が低い方が格子定数が長いという結果が得られ、かかる結果は、基板温度が低い方が窒素含有量が多いことを示唆する。また、図4(a)、(b)に示す結果を、図4(c)に示すように、格子定数と比抵抗との関係でプロットすると、略直線の関係にあることから、窒素含有タンタル膜13の比抵抗は、格子定数、すなわち窒素含有量によって支配されていると見なすことができる。
【0053】
このような知見に基づいて、本形態では、図1〜図3を参照して説明したように、反応性スパッタ成膜を行う際、被成膜面21の内側領域21aを外周側領域21bに比して低い温度に設定したため、内側領域21aでは窒素ガス由来の窒素が窒素含有タンタル膜13に取り込まれやすい。それ故、窒素ガス由来の窒素がプラズマ1aの中心に到達しにくい場合でも、窒素含有タンタル膜13に含まれる窒素含有量の面内ばらつきを解消することができ、窒素含有タンタル膜13の膜質の面内ばらつきを抑えることができる。
【0054】
特に本形態では、反応生成膜として、Ta35、Ta2N、TaNなどとして表わされる窒化タンタル膜よりも窒素含有量が少ない窒素含有タンタル膜13を形成するので、窒素含有量がタンタル膜の膜質に与える影響が大きいが、本形態によれば、含有量が少ない
窒素含有タンタル膜13での窒素含有量の面内ばらつきを抑えることができる。それ故、下電極13xあるいはそれと同時形成されたタンタル配線の窒素含有量の面内ばらつきを抑えることができるので、同一基板上に複数の非線形素子10xや複数本のタンタル配線を形成した場合において、非線形素子10xの電気的特性や、タンタル配線の配線抵抗の面内ばらつきを抑えることができる。
【0055】
[非線形素子の他の実施の形態]
上記形態では、非線形素子10xの下電極13xが前記の反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜(窒素含有タンタル膜13)のみからなる例であったが、反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜(窒素含有タンタル膜13)と他のタンタル層との複数の層からなる導電膜によって構成されている場合に本発明を適用してもよい。また、下電極13xが複数のタンタル層からなる場合、前記反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜(窒素含有タンタル膜13)は、下電極13xの下層、中間層あるいは上層のいずれの位置に形成されていてもよい。すなわち、前記の反応性スパッタ成膜工程で形成された反応生成膜(窒素含有タンタル膜13)については、それ自身のみで下電極13xを構成する場合、あるいは上層に形成されるタンタル膜を立方晶系とするための下地膜として機能する場合のいずれであってもよい。
【0056】
また、前記反応性スパッタ成膜工程において、下電極13xを形成するための反応生成膜を形成するにあたっては、ターゲット5としてニオブターゲット、ニオブ−タンタル合金ターゲットを用い、反応性ガスとして窒素ガスや酸素ガスを用い、反応生成膜として、窒化や酸素を含有するニオブ膜、あるいは窒化や酸素を含有するニオブ−タンタル合金を形成する場合に本発明を適用してもよい。
【0057】
また、上記形態では、下電極13xを構成する材料を中心に説明したが、絶縁層14xは、水素およびタングステンのうちの少なくとも一方を含有するタンタル酸化膜であることが好ましい。特に、絶縁層14xは、水素およびタングステンの双方を含有しているタンタル酸化膜であることが好ましい。
【0058】
このような絶縁層14xのタングステンの含有は、下電極13xにタングステンを含有させておくことによって実現できる。タングステンの含有量は、数at%以下、さらには1at%以下でも十分である。また、絶縁層14xの水素の含有は、絶縁層14xを形成した後、絶縁層14xに対する水素含有雰囲気中でのアニール処理、あるいは水素プラズマの照射により実現することができる。なお、絶縁層14xの水素の含有量は、例えば、温度が250℃以上の雰囲気中で絶縁層14xに水蒸気を接触させることにより導入される程度の濃度でよく、好ましくは、温度が約320℃の条件下で水蒸気と接触させることが好ましい。
【0059】
図6〜図9を参照して水素およびタングステンを含有させた場合の作用、効果を説明する。図6は、非線形素子において絶縁層が含有するタングステン、水素、窒素が非線形素子に及ぼす影響の説明図である。図7は、非線形素子の絶縁層として、窒素含有のタンタル膜を用いた場合、および窒素を含有しないタンタル酸化膜を用いた場合にける水素導入量と素子ドリフト量との関係を示すグラフである。図8は、非線形素子に用いた絶縁層(タンタル酸化膜)におけるタングステンの含有量と、素子ドリフト量との関係を示すグラフである。図9は、非線形素子に用いた絶縁層(タンタル酸化膜)におけるタングステンの含有量と、非線形性の不可逆的なシフト量との関係を示すグラフである。
【0060】
素子ドリフト現象とは、1回目の電流−電圧特性の測定を行った後、2回目の電流−電圧特性を測定すると、測定結果に差が発生し、2回目の測定では絶縁性が高いという現象である。かかる素子ドリフト現象では、2回目の測定を行ってから、例えば1時間が経過
した後、再度、電流−電圧特性を測定すると、1回目の測定結果と同等の結果が得られ、その直後に電流−電圧特性を測定すると、2回目の測定結果と同様、高い絶縁性を示す結果が得られる。このような素子ドリフト現象は、絶縁層14x中のイオン性の酸素空乏が下電極13x/絶縁層14x界面あるいは絶縁層14x/上電極15x界面の一方に引き寄せられることが原因で発生すると考えられ、絶縁層14x中のイオン性の酸素空乏が一方の界面に引き寄せられた高抵抗化態から、酸素空乏が均一分布した低抵抗化状態にゆるやかに戻る際に、酸素空乏の移動により逆電流が発生し、それに液晶が応答する結果、残像現象が発生するのである。
【0061】
また、シフト現象は、絶縁層14xからの水素の脱離が原因で起こる現象であり、非線形性の向上のために添加した水素が脱離すると、非線形素子10xの線形性が非可逆的に低下し、画像を表示するために非線形素子10xに通電していた画素においては、画像を切り換えたときでも、それまで表示していた画像の跡が常に残ってしまい、焼き付き現象が発生させるのである。
【0062】
図6に示すように、絶縁層14xにおいて、タングステンは、非線形性には影響を及ぼさないが、素子ドリフト現象を減少させる一方、シフト現象を増大させる。水素は、非線形性を向上させるとともに、素子ドリフト現象を減少させる。窒素は、非線形性を向上させる一方、素子ドリフト現象を増大させる。また、窒素は、水素の脱離を防止することにより、シフト現象を減少させる。
【0063】
図7を参照して、かかる窒素および水素と素子ドリフト現象との関係を説明する。図7に示すグラフにおいて、四角および実線L11でプロットしたのが、窒素含有のタンタル膜を用いた場合の結果であり、丸および点線L12でプロットしたのが、窒素を含有しないタンタル膜を用いた場合の結果である。なお、縦軸のドリフト値とは、非線形素子10の電流−電圧特性において1回目の測定と、その直後の2回目の測定でともに電流値が1×10-8Aを示す電圧値の差であり、この値が大きいほど、残像現象が発生しやすいといえる。なお、図2に示す値は、下電極13xと上電極15xとの対向面積が2.5μm×3.0μmで、絶縁層14xの厚さが50nmの非線形素子10xで得られた結果である。なお、図7に示すデータを得るにあたって、絶縁層14xを構成するタンタル酸化膜中への窒素の導入は、窒素含有タンタル膜13により下電極13xを形成した後、その表面に陽極酸化を施して絶縁層14xを形成することにより実現した。これに対して、窒素を含有しないタンタル膜により下電極を形成した後、その表面に陽極酸化を施して絶縁層を形成した場合には、絶縁層を構成するタンタル酸化膜には窒素が導入されないことになる。また、絶縁層14xを構成するタンタル酸化膜中への水素の導入は、絶縁層14xを形成した後、水素を含有する雰囲気中でのアニール処理により行うことより行った。従って、アニール温度が高い方がタンタル酸化膜中への水素導入量が多くなる。
【0064】
図7に示すように、水素導入のためのアニール温度が0℃、すなわち、水素導入のためのアニール処理を行わない場合、窒素含有のタンタル酸化膜を絶縁層14xとして用いた非線形素子10xは、窒素を含有しないタンタル酸化膜を絶縁層14xとして用いた非線形素子10xと比較してドリフト値が著しく高い。また、窒素を含有しないタンタル酸化膜において水素を導入すると、水素導入量が増えるほど、ドリフト値が大きくなっていく。これに対して、窒素含有タンタル酸化膜において水素を導入すると、水素導入量が増えるほど、ドリフト値が小さくなっていき、アニール温度が250℃以上の場合、ドリフト値を十分なレベルにまで低減でき、アニール温度を320℃まで高めると、残像現象の発生を確実に防止することができる。
【0065】
次に、図8および図9を参照して、タングステン、水素、窒素の影響を説明する、図8および図9に示すグラフにおいて、丸および実線L11でプロットしたのは、水素添加ア
ニール工程を320℃で行った窒素を含有しないタンタル酸化膜の結果であり、四角および点線L12でプロットしたのが、水素添加アニール工程を260℃で行った窒素含有のタンタル酸化膜の結果である。また、図8および図9には、水素添加アニール工程を260℃で行った窒素(含有量1.5at%)含有のタンタル酸化膜の結果も三角でプロットし、水素添加アニール工程を260℃で行った窒素(含有量2.0at%)含有のタンタル酸化膜の結果も×印でプロットしてある。図8に示すグラフにおいて、縦軸のドリフト値とは、非線形素子10の電流−電圧特性において1回目の測定と、その直後の2回目の測定でともに電流値が1×10-8Aを示す電圧値の差であり、この値が大きいほど、残像現象が発生しやすいといえる。なお、図8に示す値は、下電極13xと上電極15xとの対向面積が2.5μm×3.0μmで、絶縁層14xの厚さが50nmの非線形素子10xで得られた結果である。また、図9に示すグラフにおいて、縦軸のシフト値とは、非線形素子10に1×10-7Aの電流が流れるような正および負の矩形パルスを1秒ずつ交互に印加し続けた場合において、印加開始時からみて100秒経過後の電流値の変化率を百分率で表わした値であり、その値が大きいほど、焼き付きが発生しやすいといえる。
【0066】
まず、図8に示すように、絶縁層14xを構成するタンタル酸化膜において、タングステンの含有量が多いほど、素子ドリフト値が小さくなる。但し、図9に示すように、絶縁層14xを構成するタンタル酸化膜において、タングステンの含有量が多いほど、非線形性の不可逆的なシフト量が大きくなり、表示した画像に焼き付きが発生する傾向にある。すなわち、絶縁層14xに対してタングステンを添加すると絶縁層14xの比抵抗が増大するため、同一レベルの電流を液晶に流そうとしたときに必要な駆動電圧が、タングステンを添加しない場合と比較して高くなってしまい、絶縁層14xに添加した水素が脱離し、非線形性が非可逆的に低下してしまうのである。その結果、画像を表示するために非線形素子10xに通電していた画素においては、非線形素子10xの線形性が低下し、画像を切り換えたときでも、それまで表示していた画像の跡が常に残ってしまう現象(焼き付き現象)が発生してしまう。しかるに本形態では、非線形素子10xの絶縁層14xが窒素を含有しており、窒素は水素の脱離を抑制する効果があるので、絶縁層14xに対してタングステンおよび水素を添加して、非線形性の向上、および素子ドリフト現象の防止の双方を図った場合でも、但し、絶縁層14xを構成するタンタル酸化膜において窒素を含有させると、非線形性の不可逆的なシフト量を低く抑えることができる。
【0067】
[電気光学装置への適用例]
(全体構成)
図10は、本発明の実施の形態1に係るアクティブマトリクス型の電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図11は、本発明が適用される電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。なお、以下、後述する実施の形態で共通の構成を説明した後、本形態の特徴部分を説明する。
【0068】
図10に示すように、本形態の電気光学装置100では、複数本の走査線51が行(X)方向に延在して形成され、また、複数本のデータ線52が列(Y)方向に延在して形成されている。また、走査線51とデータ線52との各交差点に対応する位置に画素53が形成され、これらの画素53は、マトリクス状に配置されている。各画素53では、液晶層54と、TFDからなる非線形素子10とが直列接続しており、図10に示す例では、液晶層54が走査線51の側に、非線形素子10がデータ線52の側にそれぞれ接続されている。なお、液晶層54がデータ線52の側に、非線形素子10が走査線51の側にそれぞれ接続されることもある。ここで、各走査線51は、走査線駆動回路57によって駆動される一方、各データ線52は、データ線駆動回路58によって駆動される。
【0069】
このような電気光学装置100は、具体的には、例えば、図11に示すように構成される。ここで、対向配置された一対の基板のうち、一方の基板は、前記の非線形素子10や
画素電極が形成された素子基板20であり、他方の基板は、対向基板30である。これらの基板のうち、素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線52と、それらのデータ線52に接続される複数の非線形素子10と、それらの非線形素子10と1対1に接続される画素電極23とが形成されている。データ線52は、図11において紙面に対して垂直方向に延在して形成される一方、非線形素子10および画素電極23は、ドットマトリクス状に配列している。そして、画素電極23などの表面には、一軸配向処理、例えばラビング処理が施された配向膜24が形成されている。
【0070】
対向基板30の内側表面には、カラーフィルタ38が形成されており、「R」、「G」、「B」の3色の着色層を構成している。なお、これら3色の着色層の隙間には、ブラックマトリクス39が形成されて、着色層の隙間からの入射光を遮蔽する構成となっている。カラーフィルタ38およびブラックマトリクス39の表面には平坦化膜37が形成され、さらにその表面には、走査線51として機能する対向電極31が、データ線52と直交する方向に形成されている。なお、平坦化膜37は、カラーフィルタ38およびブラックマトリクス39の平滑性を高めて、対向電極31の断線を防止する目的などのために設けられる。さらに、対向電極31の表面には、ラビング処理が施された配向膜34が形成されており、配向膜24、34は、一般にポリイミドなどから形成される。
【0071】
素子基板20と対向基板30とは、スペーサ(図示省略)を含むシール材104によって一定の間隙を保って接合され、この間隙に、液晶105が封入された構成となっている。素子基板20の外側表面には、配向膜24へのラビング方向に対応した光軸を有する偏光板217などが貼着され、対向基板30の外側表面には、配向膜34へのラビング方向に対応した光軸を有する偏光板317などが貼着されている。なお、本形態の電気光学装置100は、COG(Chip On Glass)技術が適用されており、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ260が実装されている。
【0072】
(画素53の構成)
図12は、本発明が適用された電気光学装置において、TFDを含む数画素分のレイアウトを示す平面図であり、図13は、図12に示す各画素に形成されたTFDの説明図である。
【0073】
図12および図13に示すように、本形態の非線形素子10は、第1のTFD10aおよび第2のTFD10bを備えたBack−to−Back構造を有している。すなわち、非線形素子10は、素子基板20の表面に形成された下地層201上において、下電極13bと、この下電極13bの表面に、後述するように、陽極酸化法あるいは気相酸化法によって形成された絶縁層14bと、この表面に形成されて相互に離間した上電極15a、15bとを備えており、下電極13bの上面および側面と上電極15a、15bとは、絶縁層14bを介して対向している。上電極15aは、そのままデータ線52となる金属層15cと一体に形成されている一方、上電極15bは、画素電極23に接続されている。なお、データ線52は、下電極13bと同時形成されたタンタル配線13aを備えており、このタンタル配線13aの表面には、絶縁層14bと同時形成された絶縁層14aが形成されている。下地層201は、例えば、厚さが50〜200nm程度のタンタル酸化膜などの絶縁層によって構成され、下電極13bの構成によっては省略してもよい。
【0074】
本形態の非線形素子10において、下電極13bは、図1〜図4を参照して説明した窒素含有タンタル膜からなる。また、データ線52を構成するタンタル配線13aも、図1〜図4を参照して説明した窒素含有タンタル膜からなる。これらの窒素含有タンタル膜の膜の膜厚は例えば50〜150nmである。
【0075】
絶縁層14a、14bは、後述するように、陽極酸化法あるいは気相酸化法によってタ
ンタル配線13aおよび下電極13bの表面を酸化することによって形成された厚さが20〜40nm程度のタンタル酸化膜である。上電極15a、15bは、例えばクロム(Cr)などといった金属膜によって100〜500nm程度の厚さに形成されている。
【0076】
第1のTFD10aは、データ線52の側からみると順番に、上電極15a/絶縁層14b/下電極13bとなって、金属(導電体)/絶縁体/金属(導電体)のサンドイッチ構造を採るため、ダイオードスイッチング特性を有することになる。一方、第2のTFD10bは、データ線52の側からみると順番に、下電極13b/絶縁層14b/上電極15bとなって、第1のTFD10aとは、反対のダイオードスイッチング特性を有することになる。従って、非線形素子10は、2つのダイオードを互いに逆向きに直列接続した形となっているため、1つのダイオードを用いる場合と比べると、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称化されることになる。なお、このように非線形特性を厳密に対称化する必要がないのであれば、1つの非線形素子のみを用いても良い。
【0077】
画素電極23は、透過型として用いられる場合には、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電性の透明膜から形成される一方、反射型として用いられる場合には、アルミニウムや銀などの反射率の大きな反射性金属膜から形成されることがある。なお、画素電極23は、反射型であってもITOなどの透明性金属から形成される場合もある。この場合には、反射層としての反射性金属が形成された後、絶縁層を介して透明な画素電極23が形成される。一方、半透過反射型として用いられる場合には、反射層を薄く形成して半透過反射膜とするか、あるいは、スリットが設けられる構成となる。素子基板20自体は、例えば、石英やガラスなどの絶縁性を有するものが用いられる。なお、透過型として用いる場合には、透明であることも素子基板20の要件となるが、反射型として用いる場合には、透明であることが要件にならない。また、素子基板20の表面に下地層201が設けられる理由は、熱処理により、下電極13bなどが下地から剥離しないようにするとともに、下電極13bに不純物が拡散しないようにするためである。従って、これが問題とならない場合には、下地層201は省略可能である。
【0078】
(電気光学装置100および非線形素子10の製造方法)
図14は、本形態の電気光学装置100の製造方法の一例を示す工程図である。図15は、素子基板形成工程の一部(非線形素子の製造工程など)を示す工程図である。図16は、素子基板形成工程の一部(非線形素子の製造工程など)を示す説明図であり、その左側には断面図を示し、右側には平面図を示してある。
【0079】
本形態において、電気光学装置100を製造するにあたっては、図14に示す非線形素子形成工程P1〜シール材印刷工程P5からなる素子基板形成工程と、カラーフィルタ形成工程P6〜ラビング処理工程P10からなる対向基板形成工程とは別々に行われる。また、これらの工程は、素子基板20および対向基板30を多数取りできる大型の元基板の状態で行われるが、以下の説明では、単品サイズおよび大型の元基板については区別せず、素子基板20および対向基板30と称する。
【0080】
本形態では、大型の素子基板20に対して非線形素子形成工程P1を行うことにより、電気光学装置複数個分のデータ線52および非線形素子10を形成する。この非線形素子形成工程P1では、図15に示す工程順序に従って、図16に示す以下の工程が行われる。
【0081】
まず、図16(a)に示す下地膜形成工程ST101において、大型の素子基板20の表面全体に、厚さが50〜200nm程度のタンタル酸化物などの絶縁層を一様な厚さに成膜して下地層201を形成する。
【0082】
次に、下電極形成工程ST110を行う。この下電極形成工程ST110として、本形態では、まず、タンタル膜形成工程ST111(反応性スパッタ成膜工程)において、図1〜図4を参照して説明した反応性スパッタ装置1および反応性スパッタ成膜方法により、膜厚が例えば50〜150nmの窒素含有タンタル膜13を形成する。その際、ターゲットとして、タングステン含有のタンタルターゲットを用い、窒素含有タンタル膜13として、タングステンを含有する窒素含有タンタル膜13を形成することが好ましい。
【0083】
次に、タンタル膜パターニング工程ST112(パターニング工程)において、窒素含有タンタル膜13の上層にレジストマスクを形成した状態で、窒素含有タンタル膜13に対して、CF4あるいはSF6などを含むエッチングガスを用いてドライエッチングを行い、図16(b)に示すように、窒素含有タンタル膜13を下電極13bと、データ線52の下層側を構成するタンタル配線13aとにパターニングした後、レジストマスクを除去する。この状態で、データ線52のタンタル配線13aと下電極13bとはブリッジ部13cで繋がっている。
【0084】
次に、図16(c)に示す陽極酸化工程ST120(絶縁層形成工程)においては、大型の素子基板20を電解槽内で電解液に浸漬した状態で、素子基板20に給電し、陽極酸化を行う。その際、データ線52のタンタル配線13aおよびブリッジ部13cを介して下電極13bに給電され、それらの下電極13bの表面(上面および側面)には、厚さが15〜40nm程度のタンタル酸化膜からなる絶縁層14bが形成される。この段階で、絶縁層14bは、窒素含有のタンタル酸化膜からなる。なお、タンタル配線13aの表面にも、絶縁層14bと同様な絶縁層14aが形成される。
【0085】
次に、水素添加アニール工程ST130(水素導入工程)において、水素を含有する雰囲気中で素子基板20を加熱する。その結果、絶縁層14bは、窒素原子および水素原子を含有するタンタル酸化膜となる。このため、絶縁層14b内の転位や空孔などの欠陥密度が低減されるので、非線形素子10の非線形性を高くすることができるなどの効果を奏する。さらに、窒素を含有することに起因する素子ドリフト現象を防止することができる。このような水素添加アニール工程を行うにあたっては、具体的には、素子基板20を収容した処理室を窒素ガス雰囲気とするとともに、320℃の温度に設定し、この状態で、処理室内に水蒸気を含むガス、例えば大気を導入する。
【0086】
なお、水素添加アニール工程ST130では、素子基板20を所定の温度に加熱した状態で素子基板20に対して、加圧水蒸気を供給してもよい。また、水素導入工程としては、水素添加アニールに代えて、水素プラズマを照射してもよい。
【0087】
次に、図16(d)に示すブリッジ部除去工程ST140においては、例えば、ドライエッチングによりブリッジ部13cを大型の素子基板20から除去する。これにより、第1TFD10aおよび第2TFD10bの下電極13bおよび絶縁層14bが、データ線52から島状に分断される。なお、この工程では、ブリッジ部の他に、給電パターンのうち、大型の素子基板20を切断した際に素子基板20に残ってしまう不要な部分についても除去する。また、必要に応じて、画素電極23に相当する領域の下地層201を除去する。
【0088】
次に、上電極形成工程ST150においては、まず、クロム膜形成工程ST151において、厚さが100〜500nm程度のCrをスパッタなどによって一様な厚さで成膜した後、クロム膜パターニング工程ST152において、フォトリソグラフィ技術を利用して、クロム膜をパターニングし、図16(e)に示すように、データ線52の最上層としての金属層15c、第1のTFD10aの上電極15a、および第2のTFD10bの上電極15bを形成する。以上により、非線形素子10(TFD10a、10b)が素子基
板20の表面に必要な数だけ形成される。
【0089】
次に、図14に示す画素電極形成工程P2においては、ITO膜形成工程ST201において、画素電極23を形成するためのITOをスパッタなどによって一様な厚さで成膜した後、ITO膜パターニング工程ST202において、フォトリソグラフィ技術により、1画素分の大きさに相当する所定形状の画素電極23をその一部が上電極15bに重なるように形成する。これらの一連の工程により、図12および図13に示す非線形素子10および画素電極23が形成される。
【0090】
しかる後には、図14の配向膜工程P3において、素子基板20の表面にポリイミド、ポリビニルアルコールなどを一様な厚さに形成することによって配向膜24を形成した後、ラビング処理工程P4において、配向膜24に対してラビング処理その他の配向処理を行う。次に、シール材印刷工程P5において、ディスペンサーやスクリーン印刷などによってシール材104(図11参照)を環状に塗布する。なお、シール材104の一部分には、液晶注入口を形成しておく。
【0091】
以上の素子基板形成工程とは別に、対向基板形成工程(カラーフィルタ形成工程P6〜ラビング処理工程P10)を行う。それには、まず、ガラス基板などといった透光性材料によって形成された大型の対向基板30を用意した後、カラーフィルタ形成工程P6において、大型の対向基板30の表面上にブラックマトリクス39、およびカラーフィルタ38を形成する。ここで、カラー表示が必要でない場合には、カラーフィルタ38を形成する必要はない。次に、平坦化層形成工程P7において、カラーフィルタ38の上に平坦化膜37を一様な厚さに形成して表面を平坦化する。次に、対向電極形成工程P8において、ITO膜などによりストライプ状の対向電極31、すなわち、走査線51を形成する。次に、配向膜形成工程P9において、走査線51などの上にポリイミドなどによって一様な厚さの配向膜34を形成した後、ラビング処理工程P10において、配向膜34に対してラビング処理などといった配向処理を施す。
【0092】
その後、大型の素子基板20と大型の対向基板30とを位置合わせした上でシール材104を間に挟んで貼り合わせ(貼り合わせ工程P11)、さらに紫外線硬化その他の方法でシール材104を硬化させる(シール材硬化工程P12)。これにより、液晶装置複数個分を含んでいる空のパネル構造体が形成される。その後、空のパネル構造体を短冊状のパネル構造体に切断する(1次切断工程P13)。この短冊状のパネル構造体の切断個所では、シール材104の途切れ部分からなる液晶注入口が外部に開口しているので、露出した液晶注入口からパネル構造体の内側に液晶を減圧注入した後(液晶注入工程P14)、各液晶注入口に対して樹脂などの封止材を塗布して、各液晶注入口を封止する(注入口封止工程P15)。なお、この工程により、パネル構造体に液晶が付着するので、液晶を注入し終えたパネル構造体を洗浄する(洗浄工程P16)。その後、パネル構造体をさらに切断することにより、複数個の電気光学装置100が切り出される(2次切断工程P17)。しかる後に、電気光学装置100に液晶駆動用ICチップ260などを実装し、電気光学装置100が完成する(実装工程P18)。
【0093】
[電気光学装置への他の適用例]
上記形態では、TNモードあるいはVANモードの液晶装置(電気光学装置)を例に説明したため、対向基板に対向電極が形成された構成であったが、素子基板に画素電極および対向電極(共通電極)の双方が形成されたIPS(In−Plane Switching)モードやFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶装置(電気光学装置)に本発明を適用してもよい。
【0094】
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した電気光学装置は、携帯電話機やモバイル型のパーソナルコンピュータの他、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどの電子機器に適用できる他、30インチを越えるような大画面を備えた電子機器を構成するのに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を適用した反応性スパッタ成膜装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る反応性スパッタ成膜装置に用いた温度分布調整部材の説明図である。
【図3】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態2に係る反応性スパッタ成膜装置に用いた温度分布調整部材の説明図である。
【図4】本発明を適用した非線形素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は、非線形素子の下電極を形成するための窒素含有タンタル膜を反応性スパッタ成膜法により形成した際の窒素ガス流量と、得られた窒素含有タンタル膜の比抵抗との関係を示すグラフ、非線形素子の下電極を形成するための窒素含有タンタル膜を反応性スパッタ成膜法により形成した際の窒素ガス流量と、得られた窒素含有タンタル膜の格子定数との関係を示すグラフ、および格子定数に対して比抵抗をプロットしたときのグラフである。
【図6】非線形素子において絶縁層が含有するタングステン、水素、窒素が非線形素子に及ぼす影響の説明図である。
【図7】非線形素子の絶縁層として、窒素含有のタンタル膜を用いた場合、および窒素を含有しないタンタル酸化膜を用いた場合にける水素導入量と素子ドリフト量との関係を示すグラフである。
【図8】非線形素子に用いた絶縁層(タンタル酸化膜)におけるタングステンの含有量と、素子ドリフト量との関係を示すグラフである。
【図9】非線形素子に用いた絶縁層(タンタル酸化膜)におけるタングステンの含有量と、非線形性の不可逆的なシフト量との関係を示すグラフである。
【図10】本発明を適用した電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明が適用される電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】図10に示す電気光学装置において、非線形素子を含む数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図13】図10に示す電気光学装置において、各画素に形成された非線形素子の説明図である。
【図14】図10に示す電気光学装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】図10に示す電気光学装置の製造工程のうち、素子基板形成工程の一部を示す工程図である。
【図16】図15に示す素子基板形成工程の一部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1・・反応性スパッタ成膜装置、1a・・プラズマ、2・・成膜室、3・・プロセスガス供給管(ガス導入手段)、5・・ターゲット、7・・ヒータ(加熱手段)、8・・温度分布調整板(温度分布調整部材/温度分布調整手段)、8b・・温度分布調整板の開口部、8c・・温度分布調整板の障壁層、10、10x・・非線形素子(TFD)、13a・・タンタル配線、13b、13x・・下電極、14b、14x・・絶縁層、15b、15x・・上電極、20、20x・・素子基板、21・・被成膜面、21a・・被成膜面の内側領域、21b・・被成膜面の外周側領域、100・・電気光学装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、下電極、該下電極の表面側を覆う絶縁層、および該絶縁層を介して前記下電極に対向する上電極を備えた非線形素子の製造方法において、
成膜室内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入しながら当該反応性ガスとターゲット物質との反応生成膜を前記基板上に堆積させる反応性スパッタ成膜工程と、
少なくとも前記反応生成膜を含む導電膜をパターニングして前記下電極を形成するパターニング工程と、
前記下電極の表面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、を有し、
前記反応性スパッタ成膜工程では、前記基板によって構成された被成膜面の内側領域を外周側領域に比して低い温度に設定することを特徴とする非線形素子の製造方法。
【請求項2】
前記反応性スパッタ成膜工程では、前記ターゲットとしてタンタルターゲットを用い、前記反応性ガスとして窒素ガスを用い、前記反応生成膜として、窒素含有タンタル膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項3】
前記反応性スパッタ成膜工程では、前記反応生成膜として、窒化タンタル膜よりも窒素含有量が少ない窒素含有タンタル膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項4】
前記被成膜面は、1枚の前記基板によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項5】
前記被成膜面は、面内方向に配置された複数枚の前記基板によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項6】
前記反応性スパッタ工程では、前記基板の背面側に当該基板を加熱するためのヒータを配置するとともに、当該基板と前記ヒータとの間には、当該ヒータから前記被成膜面の内側領域に向けての熱伝導性が前記ヒータから前記被成膜面の外周側領域に向けての熱伝導性に比して低い温度分布調整部材を配置することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項7】
前記温度分布調整部材は金属板であって、当該金属板には、前記被成膜面の内側領域と重なる領域に開口部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項8】
前記温度分布調整部材は基材が金属板であって、当該金属板には、前記被成膜面の内側領域と重なる領域に熱伝導性の低い障壁層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項9】
前記障壁層は、セラミックス層であることを特徴とする請求項8に記載の非線形素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法により製造されたことを特徴とする非線形素子。
【請求項11】
請求項10に記載の非線形素子を画素スイッチング素子として用いたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
成膜室と、該成膜室内で被成膜面に対向配置されたターゲットと、前記真空内に不活性
ガスおよび反応性ガスを導入するガス導入手段とを有し、前記被成膜面と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させて前記反応性ガスとターゲット物質との反応生成膜を前記被成膜面上に堆積させる反応性スパッタ装置において、
前記被成膜面に対する加熱手段と、当該被成膜面の内側領域を外周側領域に比して低い温度に設定する温度分布調整手段とを備えていることを特徴とする反応性スパッタ成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−10614(P2008−10614A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179098(P2006−179098)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】