説明

音楽アプリケーション装置、電子楽器、及びプログラム

【課題】 電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)のリソース管理。
【解決手段】 音楽アプリケーション装置は、所定の機能のライセンス情報を接続済みの1乃至複数の電子楽器から取得し、該取得したライセンス情報に基づきシステム全体で利用できるリソースの範囲を決定した上で、該決定したリソースの範囲のうち、接続済みの1乃至複数の電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)に対して使用許可するリソースの割り当てを行い、該割り当てたリソースを各電子楽器に対して通知する。電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)は、音楽アプリケーション装置から通知された使用許可するリソースに応じて、リソースを制限して所定の機能を実行する。このようにすると、ユーザは個別に割り当て済みのリソースに関わらずにリソースを拡張/制限して、電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)において各機能を実行することが容易にできるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の音楽アプリケーションプログラムを動作することができる音楽アプリケーション装置、前記音楽アプリケーションプログラムが実現する機能と同等の機能を少なくとも有する電子楽器、及びそれらの装置に用いるプログラムに関する。特に、所定のライセンス情報に従って、音楽アプリケーションプログラム及び電子楽器のそれぞれで使用するリソースに制限をかけることができる音楽アプリケーション装置、電子楽器、及びそれらの装置に用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンと呼ぶ)上で動作され、シンセサイザー機能やシーケンサー機能などの所定の音楽機能を実現する音楽アプリケーションプログラム(ソフトウェア)は、当該音楽アプリケーションプログラムが記録されている例えばコンパクトディスクなどの記憶媒体と、ハードウェアキー(例えば、USBドングルなど)とが一緒に同梱されて頒布されるようになっており、このハードウェアキーに当該音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報(音楽アプリケーションプログラムを利用するユーザが使用許諾を得たユーザであることを証明する情報)が保持されている。ユーザは、こうしたライセンス情報を保持しているUSBドングルを、所定のインタフェース(例えば、USBインタフェース)を介してパソコンに接続することにより、USBドングルが接続された該パソコン上でのみ、前記記憶媒体に記憶されている音楽アプリケーションプログラムをインストールなどして動作させることができるようになっている(この場合、パソコンが音楽アプリケーション装置に該当する)。こうしたものの一例を示すと、例えば下記に示す特許文献1に記載の装置がある。また、こうした装置では、パソコン(音楽アプリケーション装置)上で音楽アプリケーションプログラムを動作することに従い、該パソコンに所定のインタフェースを介して接続されている電子楽器に対して生成した楽曲データなどを送信することにより、生成した楽曲データに基づく楽音を電子楽器側で発生させることができるようになっている。
【特許文献1】特開2004−212603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような従来知られた音楽アプリケーション装置では、USBドングルに記憶されているライセンス情報の内容等に応じて、音楽アプリケーションプログラムの動作に伴って実現される機能において利用可能とする機能単位(例えば、音源機能における同時発音数や同時使用可能なエフェクト種類やエフェクト数など:この明細書ではこれらを総称してリソースと呼ぶ)の制限範囲を変えている。そのため、ユーザは新たに異なる内容のライセンス情報を取得することによって、音楽アプリケーションプログラムに対する前記リソースの範囲制限を解除することや、リソースの制限範囲を狭めて利用可能なリソース範囲を大きくとることなどを、必要に応じて行うことができるようになっている。しかし、従来知られた装置におけるライセンス情報によるリソースの制限は、音楽アプリケーションプログラムの動作に伴い実現される機能に限っての制限であり、当然に電子楽器が有する同等の機能に対してはなんらの影響も及ぼさない(つまり、電子楽器側ではリソースが制限されない)。そうすると、音楽アプリケーション装置と電子楽器とで使用できるリソースの整合性がとれなくなることから、ユーザが音楽アプリケーション装置と電子楽器とを組み合わせて使いづらい。そこで、それぞれが同等の機能を有する音楽アプリケーション装置(具体的には音楽アプリケーションプログラム動作時のみ)と電子楽器とが組み合わされて利用されるような場合に、所定のライセンス情報に従って音楽アプリケーション装置だけでなく電子楽器のリソースをもあわせて制限することができる装置が望まれていたが、従来そうしたものは考えられていなかった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、所定のライセンス情報に従って、音楽アプリケーション装置と該音楽アプリケーション装置に接続された電子楽器双方のリソースを制限することが簡単にできるようにした、音楽アプリケーション装置、電子楽器、及びそれらの装置に用いるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る音楽アプリケーション装置は、電子楽器と組み合わせられて用いられ、前記電子楽器を制御する音楽アプリケーション装置であって、 1乃至複数の電子楽器を接続する接続手段と、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに記憶されている、所定の機能のライセンス情報を取得する取得手段と、前記取得したライセンス情報に基づき、前記接続された1乃至複数の電子楽器全体で利用できるリソースの範囲を決定する決定手段と、前記決定したリソースの範囲のうちから、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して使用許可するリソースを割り当てる割当手段と、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して、前記各電子楽器に割り当てた使用許可するリソースを通知する通知手段とを具える。
また、本発明の好ましい実施例として、前記電子楽器が実行する機能と少なくとも同様の一部機能を実現する所定の音楽アプリケーションプログラムを動作する動作手段をさらに具えてなり、前記動作手段は前記割当手段により前記決定したリソースの範囲のうち前記各電子楽器に割り当てられたリソースの残りに基づき、リソースを制限しながら前記音楽アプリケーションプログラムを動作することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項4に係る電子楽器は、音楽アプリケーション装置を接続する接続手段と、所定の機能のライセンス情報を記憶する記憶手段と、前記接続された音楽アプリケーション装置からの指示に応じて、前記記憶手段に記憶済みのライセンス情報を前記音楽アプリケーション装置に対して返送する返送手段と、前記接続された音楽アプリケーション装置からの使用許可するリソースの通知に応じて、前記記憶済みのライセンス情報に関わらずにリソースを制限して前記所定の機能を実行する制御手段とを具える。
【0007】
本発明によると、音楽アプリケーション装置は、所定の機能のライセンス情報を接続手段に接続済みの1乃至複数の電子楽器から取得し、該取得したライセンス情報に基づき、前記接続された1乃至複数の電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)全体で利用できるリソースの範囲を決定した上で、該決定したリソースの範囲のうち、前記1乃至複数の電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)それぞれに対して使用許可するリソースを割り当てて、各電子楽器に対しては割り当てたリソースを通知する。電子楽器は、接続手段に接続された音楽アプリケーション装置からの通知される使用許可するリソースに応じて、前記記憶済みのライセンス情報に関わらずにリソースを制限して前記所定の機能を実行する。また、音楽アプリケーション装置は、前記電子楽器が実行する機能と少なくとも同様の一部機能を実現する所定の音楽アプリケーションプログラムを、前記決定したリソースの範囲のうち前記各電子楽器に割り当てられたリソースの残りに基づき、リソースを制限しながら動作する。このようにすると、ユーザは所定の機能をそれぞれ有する音楽アプリケーション装置と1乃至複数の電子楽器とが組み合わされて利用されるような場合に、1乃至複数の電子楽器それぞれに個別に使用許可されているリソースを集計して、システム全体として使用できるリソース範囲を決定し、その中で各電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)に対してリソースの再割り当てを行うことから、個別に割り当て済みのライセンス情報に基づくリソースに関わらずに、使用できるリソースを拡張/制限して、電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)の各機能を実行することが容易にできるようになる。
【0008】
本発明は、装置の発明として構成し実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記憶媒体の形態で実施することもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、音楽アプリケーション装置に接続された1乃至複数の電子楽器においてライセンス情報を共有し、音楽アプリケーション装置に接続された1乃至複数の電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)において個別に割り当て済みのライセンス情報に基づくシステム全体で使用可能なリソースを集計し、該集計したリソース内において、各電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)に対してそれぞれで使用可能とするリソースの再割り当てを行うようにしたことから、ユーザは予め割り当てられた個別のリソース制限に関わらずに、各電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)で使用するリソースの拡張/制限を行って、電子楽器(及び音楽アプリケーション装置)の各機能を実行することが容易にできるようになる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明に係る音楽アプリケーション装置又は電子楽器のハード構成の一実施例について、図1を用いて説明する。図1は、上記各装置いずれか1つの全体構成の一実施例を示すハード構成ブロック図である。ただし、上記各装置は同じようなハード構成を用いるものとして説明することができることから、ここでは代表として音楽アプリケーション装置の図を1つだけ用いて説明する。
【0012】
ここに示された音楽アプリケーション装置のハードウェア構成例はパーソナルコンピュータを用いて構成されており、そこにおいてさまざまな音楽アプリケーションを実行するための処理は、コンピュータがそれぞれの音楽アプリケーションに対応する所定の制御プログラム(図示しないソフトウェアプログラム)を実行することにより実施される。勿論、これらの処理はコンピュータソフトウェアの形態に限らず、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、また、この種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用のハードウェア装置の形態で実施してもよい。なお、本発明に係る音楽アプリケーション装置は、例えばシーケンサー機能やシンセサイザー機能等を実現する音楽アプリケーションプログラムを動作させることで、後述するUSBコントローラ11に接続される電子楽器(例えばハードウェアシンセサイザー)が有するのと同等の機能を実現することができ、前記電子楽器と組み合わせて利用することのできる装置であればよく、パーソナルコンピュータに限らず、ゲーム専用機、携帯電話やPDAなどの携帯端末、あるいはカラオケ装置、その他のマルチメディア機器等、任意の製品応用形態をとっているものであってよい。
【0013】
図1に示す音楽アプリケーション装置(パソコン)は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この音楽アプリケーション装置全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4、表示回路5、音源回路6、外部記憶装置8、MIDIインタフェース(I/F)9、通信インタフェース(I/F)10、USBコントローラ11がそれぞれ接続されている。更に、CPU1には、タイマ割込み処理(インタラプト処理)における割込み時間や各種時間を計時するタイマ1Aが接続されている。例えば、タイマ1Aはクロックパルスを発生し、発生したクロックパルスをCPU1に対して処理タイミング命令として与えたり、あるいはCPU1に対してインタラプト命令として与える。CPU1は、これらの命令に従って各種処理を実行する。
【0014】
ROM2は、CPU1により実行される各種プログラムや各種データを格納するものである。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。操作子4Aは、例えば数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、ディスプレイ5Aに表示される所定のポインティングデバイスを操作するためのマウス、あるいは特殊スイッチなどであり、操作子として利用できるものであればどのようなものでもよい。検出回路4は、操作子4Aの各操作子の操作状態を検出し、その操作状態に応じたスイッチ情報をバス1Dを介してCPU1に出力する。表示回路5は音楽アプリケーションプログラムの動作に応じた所定の画面(図示せず)等を、例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイ5Aに表示するのは勿論のこと、音楽アプリケーションプログラムに関する各種情報やCPU1の制御状態などを表示する。
【0015】
音源回路6は複数のチャンネルで楽音信号(例えばオーディオデータ)の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられたMIDI規格の楽曲データ(例えば、ソフトウェアシーケンサーなどの音楽アプリケーションプログラムの動作に応じて、ユーザ入力に従って生成されたMIDIデータ)などの各種演奏情報を入力し、これらの演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。音源回路6から発生された楽音信号は、図示しない効果回路などを介して効果付与されてアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム7から発音される。この音源回路6とサウンドシステム7の構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源回路6はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよいし、また専用のハードウェアで構成してもよい。
【0016】
外部記憶装置8は、各種データやCPU1が実行する各種制御プログラム等を記憶する。例えば、音楽アプリケーション装置の場合には、音楽アプリケーションプログラムや、音楽アプリケーションプログラムの動作に伴って生成された楽曲データなどを記憶し、電子楽器の場合には波形データや個々の音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報(音楽アプリケーションプログラムを利用するユーザが使用許諾を得たユーザであることを証明する情報であって、さらに使用を許可するリソースの種類や数等に応じて異なる内容が記述されたライセンス情報が用意されている)などを記憶する。また、この外部記憶装置8(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておいた場合には、それをRAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、外部記憶装置8はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD‐ROM・CD‐RAM)、光磁気ディスク(MO)あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶媒体を利用する記憶装置であればどのようなものであってもよい。不揮発性の半導体メモリなどであってもよい。
【0017】
MIDIインタフェース(I/F)9は、外部接続された他のMIDI機器9A等からMIDI形式のデータ(MIDIデータ)を当該音楽アプリケーション装置へ入力したり、あるいは当該音楽アプリケーション装置から音楽アプリケーションプログラムの動作に伴って生成されたMIDI形式のデータを、他のMIDI機器9A等へ出力するためのインタフェースである。このMIDIインタフェース(I/F)9に電子楽器を接続すると、該接続された電子楽器と当該音楽アプリケーション装置との間でMIDIデータを送受信することができるようになり、該送受信されるMIDIデータに従って互いの装置において楽音を発生させることができるようになる。なお、MIDIデータの入出力は後述するUSBコントローラ11を介して行うようにしてもよい。通信インタフェース(I/F)10は、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークXに接続されており、該通信ネットワークXを介してサーバコンピュータ10Aと接続され、当該サーバコンピュータ10Aから制御プログラムあるいは各種データなどを音楽アプリケーション装置側に取り込むためのインタフェースである。すなわち、ROM2や外部記憶装置8(例えば、ハードディスク)等に制御プログラムや各種データが記憶されていない場合に、サーバコンピュータ10Aから制御プログラムや各種データをダウンロードするために用いられる。こうした通信インタフェース10は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
【0018】
USB(Universal Serial Bus)コントローラ11は1乃至複数のUSB端子を含み、当該音楽アプリケーション装置と、前記USB端子と直接的に接続された他のUSB機器13(ここでは、特にUSBコントローラ11を具備した電子楽器やUSBドングルなど)、あるいはUSBハブ(HUB)機器12を介して前記USB端子と間接的に接続された多数の他のUSB機器13との間で、各種情報を送受信する制御を行うUSBインタフェース制御機器である。USBハブ機器12は多数のUSB端子を具えており、該USB端子のうちの1つの端子に音楽アプリケーション装置を、該USB端子の残りの端子それぞれに他のUSB機器13を接続することによって、該接続された多数のUSB機器13(電子楽器など)と音楽アプリケーション装置との間における各種情報を送受信する際の通信経路を確保するためのものである。音楽アプリケーション装置と電子楽器とを両装置がそれぞれ有するUSBコントローラ11を介して接続することにより、この実施例では音楽アプリケーション装置で実行する音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報を記憶した電子楽器に対して、ライセンス(使用許諾)されているリソースを問い合わせる、電子楽器に対して割り当てたリソースを送信する、あるいはMIDIデータ等を送受信する、などのことができるようになる(詳しくは後述する)。なお、音楽アプリケーション装置が具備するUSBコントローラ11は所謂USBホストコントローラと呼ばれる機器であり、従って音楽アプリケーション装置はUSBホスト機器となる。一方、電子楽器が具備するUSBコントローラ11は所謂USBターゲットコントローラと呼ばれる機器であり、従って電子楽器はUSBターゲット機器となる。
【0019】
音楽アプリケーション装置とMIDIインタフェース9及び/又はUSBコントローラ11を介して接続される電子楽器は、音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報を外部記憶装置8などに記憶することができ、また音楽アプリケーションプログラムが実現する機能と同等の機能を少なくとも有する機器であればどのようなものであってもよい(つまり、この明細書で示す電子楽器は音楽アプリケーションプログラムが実現する機能に関連付けられている)。こうした電子楽器は、図1に示した音楽アプリケーション装置と同様の構成要素の他に、図示しない設定操作子や、鍵盤型、弦楽器型、管楽器型、打楽器型、身体装着型等の演奏操作子などを具えた(若しくは、操作形態からなる)機器であればよい。設定操作子は、例えば伴奏のために利用する楽曲データ(音楽アプリケーション装置から送信されるもの、または電子楽器に予め記憶済みのもの)を選択する曲選択スイッチ、音高、音色、効果等を選択・設定・制御するための各種操作子などを含んでいてよい。演奏操作子は楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えた例えば鍵盤等のようなものであり、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この演奏操作子(鍵盤等)は楽音演奏のために使用できるのは勿論のこと、演奏したい曲を選択するための入力手段などとして使用することができるようになっていてもよい。
【0020】
なお、上述した音楽アプリケーション装置(あるいは電子楽器)において、操作子4Aやディスプレイ5Aあるいは音源回路6などを1つの装置本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、MIDIインタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成したものであってもよいことは言うまでもない。
なお、上述した音楽アプリケーション装置は音源回路6及びサウンドシステム7を具備したものを例に示したがこれに限らず、音源回路6及びサウンドシステム7を具備していなくてもよい。
【0021】
本実施例に示す音楽アプリケーション装置では音楽アプリケーションプログラムを動作させる際に、音楽アプリケーション装置にUSB接続されているハードウェアキー(USBドングルなど)や電子楽器に記憶されている、当該音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報に基づいて、音楽アプリケーションプログラムが実現する機能及び電子楽器の機能において使用を許可するリソースの範囲をそれぞれ制限するようにしている。その際に、正式なライセンス(使用許諾)を得ていないユーザである場合には、音楽アプリケーションプログラム及び電子楽器をまったく動作させないことにより、ユーザに音楽アプリケーションプログラム及び電子楽器を利用させないようにする。他方、正式なライセンス(使用許諾)を得ているユーザであっても、そのユーザが取得しているライセンス情報に応じて、使用が許可されているリソースの範囲についてのみ、音楽アプリケーションプログラム及び電子楽器を利用することができるようにしている。すなわち、使用が許可されるリソースの範囲はライセンス情報毎に応じて予め決められており、またユーザは取得したライセンス情報に対応して使用許可されるリソースの範囲内で、音楽アプリケーション装置と電子楽器のそれぞれに対して、任意に使用するリソースの範囲を割り振ることができるようにしている(詳しくは後述する)。このように、本実施例に示す音楽アプリケーション装置及び電子楽器からなるシステムは、音楽アプリケーション装置と該音楽アプリケーション装置にUSB接続されている1乃至複数の電子楽器それぞれのリソースを、共通の1乃至複数のライセンス情報に従って管理するライセンス管理機能を有する。勿論、これに限らず、音楽アプリケーション装置及び電子楽器のそれぞれが、例えばユーザ入力に応じて演奏情報(MIDIデータなど)を生成し(シーケンサー機能)、生成した演奏情報に従って電子的に楽音を発生する(シンセサイザー機能)などの、演奏情報やオーディオデータ等を入力して処理したり、あるいは処理した演奏情報やオーディオデータ等を出力するといった他の機能を有していてよいことは言うまでもない。こうしたライセンス管理機能以外の他の機能は公知のどのようなものであってもよいことから、ここでの説明を省略する。
【0022】
次に、上記したような、所定のライセンス情報に従って、音楽アプリケーション装置で動作させる音楽アプリケーションプログラムと、該音楽アプリケーション装置にUSB接続された電子楽器双方の機能におけるリソースを管理するライセンス管理機能を実現する処理の概要について、図2を用いて説明する。図2は、ライセンス管理機能を実現する処理の概要を説明するための制御ブロック図である。
【0023】
音楽アプリケーション装置PCの音楽アプリケーション処理部MAは、例えばシンセサイザー機能やシーケンサー機能などを実現する音楽アプリケーションプログラムを、ユーザによるスイッチ操作などに応じて動作開始する。音楽アプリケーションプログラムのシーケンサー機能が動作開始されると、例えばユーザ入力に応じて所定の演奏情報(MIDIデータなど)を生成し、これを演奏進行順に順次に又は一括して出力する。MIDI/オーディオドライバ部ADは、音楽アプリケーション処理部MAから出力された演奏情報に従って楽音信号(オーディオデータ)を発生するよう、USB接続された電子楽器DMを制御する。すなわち、USBインタフェースを介して当該音楽アプリケーション装置PCに接続された電子楽器DMに対し、前記音楽アプリケーション処理部MAから出力された演奏情報を送信することで、前記電子楽器DMに楽音を発生させるようにしている。電子楽器DMでは、音楽アプリケーション装置PCからUSBインタフェースを介して送信されてきた演奏情報をオーディオファンクション部AFに送り、オーディオファンクション部AFは、音楽アプリケーション装置PCから送られてきた演奏情報に基づき、楽音を発生するよう音源回路6等(図1参照)を制御する。こうすることにより、音楽アプリケーション装置PCからUSB接続された電子楽器DMに対して随時にMIDIデータ等を出力して、電子楽器DMに楽音を発生させるよう制御することができる。
【0024】
ライセンス管理部LSは、上記した音楽アプリケーション装置PCの音楽アプリケーション処理部MAによる音楽アプリケーションプログラムの動作開始の際に、動作開始しようとする音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報に従って、使用許可されているリソースの種類や数などを取得する。このとき、ライセンス管理部LSは、音楽アプリケーションPCにUSB接続されている1乃至複数のハードウェアキーKに記憶済みのライセンス情報を参照するだけでなく、当該音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されている1乃至複数の電子楽器DMに記憶済みのライセンス情報をも参照して、使用許可されているリソースの種類や数などを取得する。すなわち、ライセンス管理ドライバ部LDはライセンス管理部LSからの指示に従って、当該音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されているハードウェアキーK及び電子楽器DMに対して、動作開始しようとする音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報を記憶しているか否かを問い合わせる。ハードウェアキーK及び電子楽器DMのライセンス管理ファンクション部KF,LFは、USB接続されている音楽アプリケーション装置PCから、ライセンス情報の問い合わせを受信すると、記憶済みのライセンス情報の中から該当するライセンス情報を検索し、該当するライセンス情報がある場合にはライセンス情報に応じて使用許可されるリソースの種類や数などを、音楽アプリケーション装置PCに対して返信する。
【0025】
ライセンス管理部LSは、当該音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されているハードウェアキーK及び電子楽器DMから返送されたリソースの種類や数などを集計することで、使用許可するリソースの種類や数の総数を決定する。この際に、同じ内容のライセンス情報に基づくリソースの種類については、重複して集計しない。また、使用許可するリソースの種類や数の総数の決定後には、ユーザ入力に従って、音楽アプリケーションプログラムで実現する機能に割り当てるリソースの種類や数の上限、及び電子楽器における同様の機能に割り当てるリソースの種類や数の上限をそれぞれ割り当てる。
【0026】
音楽アプリケーション装置PCや電子楽器DMでは、上記割り当てられたリソースの種類や数の上限内で各機能を動作させる。音楽アプリケーション装置PCで音楽アプリケーションプログラムを動作する場合、音楽アプリケーション処理部MAは、前記ライセンス管理部LSからの割り当てに基づき、音楽アプリケーションプログラムを動作させる。電子楽器DMで該当する機能を動作する場合、オーディオファンクション部AFは、前記ライセンス管理部LSからの割り当てに基づき、該当する機能を動作させる。勿論、音楽アプリケーションプログラムを利用しようとするユーザ(つまり、音楽アプリケーション装置PCを利用しているユーザ)が本音楽アプリケーションプログラムに関してライセンス(使用許諾)を得ているユーザでない場合には、ハードウェアキーK及び電子楽器DMのいずれにも利用したい音楽アプリケーションプログラムのライセンス情報が記憶されていないことから、そうした場合にはライセンスを得ていないユーザであるとして、音楽アプリケーションプログラムを動作させないことは言うまでもない。このようにして、音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されているハードウェアキーKや電子楽器DMに記憶済みのライセンス情報に基づいて、音楽アプリケーション装置PCで動作させる音楽アプリケーションプログラム及び電子楽器DMで実現される機能に関してのライセンス管理を行うようにしている。
【0027】
なお、電子楽器DMのオーディオファンクション部AFは当該電子楽器の演奏操作子などの操作状況を監視しており、演奏操作子が操作されたことを検知すると、演奏操作子に応じて発生される所定の演奏情報(MIDIデータなど)を、USB接続された音楽アプリケーション装置PCに対して送信することができるようになっていてよい。そうした場合、音楽アプリケーション装置PCではUSBインタフェースを介して電子楽器DMから演奏情報を受信すると、該受信した演奏情報をMIDI/オーディオドライバ部AD経由で音楽アプリケーションプログラムのソフトウェアシンセサイザー機能に送り楽音を発生させたり、あるいは音楽アプリケーション処理部MAで動作中の音楽アプリケーションプログラムに従って該受信した演奏情報に基づく動作を行う(例えば、画面表示など)。このようにして、電子楽器DMからのMIDIデータ等の出力に応じて、対応する所定の動作を該音楽アプリケーション装置PC側で実行できるようにしてあってもよい。
【0028】
次に、本実施例に示す音楽アプリケーション装置PC及び電子楽器DMにおける、上記したような音楽アプリケーションプログラムのライセンス管理の機能を実現する具体的な処理について、図3又は図4を用いて説明する。図3は、「ライセンス管理処理」の一実施例を示すフローチャートである。この「ライセンス管理処理」は、音楽アプリケーション装置PCと電子楽器DMとが互いにUSB接続されることによって、音楽アプリケーション装置PC側でのみ開始される処理である。
【0029】
ステップS1は、USBホストコントローラドライバ部HDから、本音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されている機器(ハードウェアキーKや電子楽器DM)の一覧を取得する。すなわち、音楽アプリケーション装置PCに対してハードウェアキーKや電子楽器DMがUSB接続されると、USBホストコントローラドライバ部HDはUSB接続されたハードウェアキーKや電子楽器DM(USBターゲット機器)を検出し、該検出したハードウェアキーKや電子楽器DMから送られてくるベンダー情報やファンクション情報などに基づいて、USB接続された全ての機器の一覧を作成するので、それを取得する。ステップS2は、ライセンス管理ファンクション部KF(LF)を持つ機器(USB接続された機器)のひとつひとつに対して、各機器毎に記憶されているライセンス情報に基づきライセンスされているリソースの種類及び種類毎のリソース数の上限(リソース情報)などを問合せて、各機器からライセンスされているリソースの種類やリソース数などを取得する。この際に、各機器毎のリソースの種類やリソース数などをライセンス情報毎に集計することで、使用許可するリソースの種類及びリソース数の総数(リソースの範囲)を決定する。すなわち、USB接続された各機器に記憶されている全てのライセンス情報に従って、システムとして使用許可される全体のリソースが決まる。ステップS3は、リソースの割り当て一覧を初期化する。このリソースの割り当て一覧は、使用許可されるリソースの種類毎に使用可能とするリソースの数の上限を定義した定義情報であって、音楽アプリケーション装置PCと、音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されている各電子楽器DM毎に用意されている。
【0030】
ステップS4は、USBホストコントローラドライバ部HDが機器構成(USBネットワーク構成)の変化を検出したか否かを判定する。USBホストコントローラドライバ部HDが機器構成の変化を検出していない場合、つまり新たな機器が当該音楽アプリケーション装置PCに追加的にUSB接続されておらず、また既にUSB接続されている機器のいずれかが当該音楽アプリケーション装置PCから取り外されてもいない場合には(ステップS4のno)、ホスト機器である音楽アプリケーション装置PC上あるいはターゲット機器であるUSB接続されている各電子楽器DM上で、ユーザがリソース数の割り当て処理をしたか否かを判定する(ステップS8)。ユーザがリソース数の割り当て処理を行っていないと判定した場合には(ステップS8のno)、ステップS4の処理に戻る。一方、ユーザにより上記いずれかの機器においてリソース数の割り当て処理が行われたと判定した場合には(ステップS8のyes)、ユーザによる各機器へのリソース数の割り当てに応じてリソース数の割り当て総数を集計し、この集計したリソース数の割り当て総数がライセンスされているリソース数の総数を超えているか否かを判定する(ステップS9)。リソース数の割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超えていると判定した場合には(ステップS9のyes)、ユーザによる各機器へのリソース数の割り当てをリソースの割り当て一覧に反映(更新)することなく、ステップS4の処理に戻る。リソース数の割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超えていないと判定した場合には(ステップS9のno)、ユーザによる各機器へのリソース数の割り当てに応じて、該当する機器のリソースの割り当て一覧を更新する(ステップS10)。
【0031】
上記ステップS4において、USBホストコントローラドライバ部HDが機器構成の変化を検出した場合、つまり新たな機器が当該音楽アプリケーション装置PCにUSB接続された場合、又は既にUSB接続されている機器のいずれかが当該音楽アプリケーション装置PCから取り外された場合には(ステップS4のyes)、機器構成の変化をリソースの割り当て一覧に反映させる(ステップS5)。具体的に、新たな機器が当該音楽アプリケーション装置PCにUSB接続された場合には、追加接続された機器に対応するリソースの割り当て一覧を作成する。既にUSB接続されている機器のいずれかが当該音楽アプリケーション装置PCから取り外された場合には、取り外された機器に対応するリソースの割り当て一覧を削除する。
【0032】
ステップS6は、各機器毎に既に割り当てられているリソース数を集計したリソースの割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超えているか否かを判定する。例えば、ライセンス情報を記憶した電子楽器が音楽アプリケーション装置から取り外されると、前記ライセンス情報に応じて使用許可されているリソースの種類やリソース数などに関してはライセンスされないことになるので、リソースの割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超える場合があり都合が悪い。こうした不都合を避けるために、ここでも上記ステップS9と同様の処理である、リソースの割り当て総数がライセンスされているリソースの総数を超えているか否かを判定する処理を行うようにしている。リソースの割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超えていないと判定した場合には(ステップS6のno)、ステップS4の処理に戻る。一方、リソースの割り当て総数が、ライセンスされているリソースの総数を超えていると判定した場合には(ステップS6のyes)、リソース数の割り当て一覧上で、音楽アプリケーション処理部MA、あるいは各ターゲット機器(電子楽器)に割り当てられたリソースの上限を変更する(ステップS7)。
【0033】
ステップS11は、上記のようにして更新された各機器毎のリソースの割り当て一覧のうち、音楽アプリケーション装置PCに関するリソースの割り当て一覧に従って、音楽アプリケーション処理部MAに対してリソースの上限を指示する。すなわち、音楽アプリケーション装置PCでは、音楽アプリケーション処理部MAが音楽アプリケーションプログラムを実行する際に、前記リソースの上限の指示に従って各機能を動作する。ステップS12は、上記のようにして更新された各機器毎のリソースの割り当て一覧のうち、各ターゲット機器(電子楽器DM)に関するリソースの割り当て一覧に従って、USBホストコントローラドライバ部HD経由で、ターゲット機器(電子楽器DM)のオーディオファンクション部AFに対して、リソースの上限を指示する(ステップS12)。すなわち、ターゲット機器(電子楽器DM)では、音楽アプリケーション装置PCから送られてくるリソースの上限の指示に従って、使用可能なリソースの上限を設定して、各機能を動作する。
【0034】
次に、本実施例に示す音楽アプリケーション装置PC及び電子楽器DMにおける、「ライセンス管理処理」の別の実施例について、図4を用いて説明する。図4は、「ライセンス管理処理」の別の実施例を示すフローチャートである。当該処理は、電子楽器DMで使用中のリソースの数(例えば同時発音数)に応じて、リアルタイムに音楽アプリケーション装置PCと電子楽器DMで使用可能とするリソースを変動させるようにしたものである。ここに示す「ライセンス管理処理」は、音楽アプリケーション装置PC側と電子楽器DM側でそれぞれ開始される処理が組み合わさられることにより実現される。
【0035】
音楽アプリケーション装置PC(具体的にはライセンス管理部LS)の処理として、まずUSBホストコントローラドライバ部HDから、本音楽アプリケーション装置PCにUSB接続されている機器(ハードウェアキーKや電子楽器DM)の一覧を取得する(ステップS21)。ステップS22は、ライセンス管理ファンクション部KF,LFを持つ機器、つまりUSB接続された機器のひとつひとつに対して、各機器毎に記憶されているライセンス情報に基づきライセンスされているリソースの種類及び種類毎のリソース数の上限などを問合せて、各機器からライセンスされているリソースの種類やリソース数などを取得する。ステップS23は、各機器毎のリソースの種類やリソース数などをライセンス情報毎に集計することで、使用許可するリソースの種類及び種類毎のリソース数の総和(リソースの範囲)を求め、求めたリソースの種類及び種類毎のリソース数の総和(リソースの範囲)をRAMに保持(記憶)させる。ステップS24は、現在使用中であるリソース種類毎のリソース使用数をクリアする。
【0036】
ステップS25は、音楽アプリケーション処理部MAから、あるいはUSBホストコントローラドライバ部HD経由でUSB接続された電子楽器DMから、ノートオン(楽音制御情報)の許可要求があったか否かを判定する。ノートオンの許可要求があったと判定した場合には(ステップS25のyes)、許可要求されたノートオン数に基づき、使用許可するリソース種類及びリソース数を求める(ステップS26)。そして、音楽アプリケーション処理部MAに対し、あるいはUSBホストコントローラドライバ部HD経由で電子楽器DMに対し、許可するノートオン数を返信する(ステップS27)。また、現在使用中のリソースの使用数を更新する(ステップS28)。ステップS29は、音楽アプリケーション処理部MAから、あるいはUSBホストコントローラドライバHD経由で電子楽器DMから、ノートオフ(楽音制御情報)の通知があったか否かを判定する。ノートオフ通知があったと判定した場合には(ステップS29のyes)、現在使用中のリソースの使用数を更新する(ステップS30)。ステップS31は、USBホストコントローラドライバ部HDが機器構成の変化を検出したか否かを判定する。機器構成の変化を検出した場合には(ステップS31のyes)、リソース数の総和を更新する(ステップS32)。
【0037】
他方、電子楽器DMの処理(又は音楽アプリケーション装置PCにおける音楽アプリケーション処理部MAの処理)としては、ノートオンイベントを発生したか否かを判定する(ステップP1)。ステップP2は、USBターゲットコントローラドライバ部TD経由でホスト機器である音楽アプリケーション装置PCのライセンス管理部LSに対して、ノートオンの許可要求を発行する。ステップP3は、USBターゲットコントローラドライバ部TD経由でホスト機器である音楽アプリケーション装置PCのライセンス管理部LSから返信された、許可されたノートオン数を受け取る。ステップP4は、許可されたノートオン数が要求したノートオンの数より少ないか否かを判定する。許可されたノートオン数が要求したノートオンの数より少ないと判定した場合には(ステップP4のyes)、トランケート処理を実行し、要求したノートオンに基づく楽音の発音の一部を省略する(ステップP5)。ステップP6は、ノートオンに基づく楽音を発音する発音処理を実行する。ステップP7は、ノートオフイベントを発生したか否かを判定する。ノートオフイベントを発生したと判定した場合には(ステップP7のyes)、USBターゲットコントローラドライバ部TD経由でホスト機器である音楽アプリケーション装置PCのライセンス管理部LSに対して、トランケート処理も加味したノートオフの数を通知する(ステップP8)。
【0038】
以上のようにして、音楽アプリケーション装置で動作する音楽アプリケーションプログラム及び該音楽アプリケーション装置にUSB接続された電子楽器のライセンス管理を、共通のライセンス情報に従って行うことができるようにしたので、ユーザはそれぞれが同等の機能を有する音楽アプリケーション装置と電子楽器とが組み合わされて利用されるような場合に、整合性を確保した上で音楽アプリケーション装置と電子楽器のリソースをあわせて制限することが容易にできるようになる。
【0039】
また、ユーザが任意に使用可能とするリソースの割り当てを行うことができるようにしたので、ユーザは自身の使い方に従って、使用許可されたリソースの範囲内で、自由に音楽アプリケーション装置及び電子楽器それぞれで使用するリソースを設定して使用することができるようになる。例えば電子楽器に最大256音を同時に発音することができる「ライセンス情報A」が記憶され、一方音楽アプリケーション装置にUSB接続されたハードウェアキーに最大256音を同時に発音することができる「ライセンス情報B」が記憶されている場合などにおいては、ユーザは以下に示すような使い方が適宜にできるようになる。
(1)電子楽器と音楽アプリケーションプログラムとで親和性の高い操作を求めるユーザは、電子楽器に対して使用許可される256音分のリソースの「ライセンス情報A」を音楽アプリケーションプログラムに対して適用することで、音楽アプリケーションプログラムで最大512音を同時に発音させることができるように、擬似的な発音チャンネルを割り当てる(ただし、この場合には電子楽器側で発音できなくなる)。
(2)発音する音の品質や安定性を重視するユーザやライブ演奏で使用するユーザは、音楽アプリケーションプログラムに対して使用許可される256音分のリソースの「ライセンス情報B」を電子楽器に対して適用することで、電子楽器で最大512音を同時に発音させることができるように、発音チャンネルを割り当てる(ただし、この場合には音楽アプリケーションプログラム側で発音できなくなる)。
(3)各機器に記憶された「ライセンス情報A」、「ライセンス情報B」それぞれに基づき、頻繁に音をエディットしたい256音は音楽アプリケーションプログラムに割り当て、ベーシックな256音は電子楽器に割り当てる。
なお、ユーザは同時発音数などのリソースが足りないような場合に、追加的に新たなライセンス情報を購入することによって、使用許可されるリソースの範囲を拡げることができることは言うまでもない。
【0040】
なお、ライセンス情報に従って音楽アプリケーション装置及び/又は電子楽器において機能制限する機能単位(リソース)の種類としては、例えば音源機能における同時に発音することができる同時発音数やそれぞれ別々の楽器音を割り当てて複数の楽器音を鳴らす際のパートの数などがある。勿論、これに限らず、他の例としては、例えば音源、ミキサーなどのオーディオ信号処理機能における生成する楽音のクオリティに関わる、サンプリング周波数(例えば96khzなど)の選択肢の数や1サンプルデータのワード長(例えば32ビットデータなど)などがある。音源やミキサーなどにおいて複数のエフェクトを組み合わせる場合の、使用可能なエフェクトの種類や同時使用可能なエフェクト数などがある。使用できるMIDIのコントロールチェンジデータの数、種類などがある。読み込み可能なファイルフォーマットの種類(例えばMP3形式やWAV形式など)がある。波形編集機能におけるエディットの種類(例えばカット&ペーストやタイムストレッチなど)がある。内部ミキサーの規模(例えば入力チャンネル数、出力チャンネル数、AUXなどのバスの数など)がある。USBやLANなどのインタフェースを装着したときの、オーディオデータ/MIDIデータの入力ポート数や出力ポート数などがある。
【0041】
なお、上述した実施例では、音楽アプリケーションプログラムと電子楽器それぞれに対してどれだけのリソースを割り当てるかをユーザによる割り当て処理(図3のステップS8参照)によるものとしたがこれに限らず、予め決めてあってもよいし、それぞれの機器が必要に応じて自動的に決めることができるようになっていてもよい。
なお、本発明にかかる音楽アプリケーション装置を電子楽器に適用した場合には、当該電子楽器にUSB接続された電子楽器との間で、それぞれに記憶されているライセンス情報に従い、上記したようなライセンス管理を行うことができてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る音楽アプリケーション装置又は電子楽器のいずれか1つの全体構成の一実施例を示すハード構成ブロック図である。
【図2】ライセンス管理機能を実現する処理の概要を説明するための制御ブロック図である。
【図3】ライセンス管理処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図4】ライセンス管理処理の別の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…検出回路、4A…操作子、5…表示回路、5A…ディスプレイ、6…音源回路、7…サウンドシステム、8…外部記憶装置、9…MIDIインタフェース、9A…MIDI機器、10…通信インタフェース、10A…サーバコンピュータ、11…USBコントローラ、12…USBハブ機器、13…USB機器、1D…通信バス、X…通信ネットワーク、PC…音楽アプリケーション装置(パソコン)、DM…電子楽器、LS…ライセンス取得部、MA…音楽アプリケーション処理部、ID…通信インタフェースドライバ部、LD…ライセンス管理ドライバ部、AD…MIDI/オーディオドライバ部、HD…USBホストコントローラドライバ部、AF…オーディオファンクション部、LF…ライセンス管理ファンクション部、TD…USBターゲットコントローラドライバ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子楽器と組み合わせられて用いられ、前記電子楽器を制御する音楽アプリケーション装置であって、
1乃至複数の電子楽器を接続する接続手段と、
前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに記憶されている、所定の機能のライセンス情報を取得する取得手段と、
前記取得したライセンス情報に基づき、前記接続された1乃至複数の電子楽器全体で利用できるリソースの範囲を決定する決定手段と、
前記決定したリソースの範囲のうちから、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して使用許可するリソースを割り当てる割当手段と、
前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して、前記各電子楽器に割り当てた使用許可するリソースを通知する通知手段と
を具える音楽アプリケーション装置。
【請求項2】
前記電子楽器が実行する機能と少なくとも同様の一部機能を実現する所定の音楽アプリケーションプログラムを動作する動作手段をさらに具えてなり、前記動作手段は前記割当手段により前記決定したリソースの範囲のうち前記各電子楽器に割り当てられたリソースの残りに基づき、リソースを制限しながら前記音楽アプリケーションプログラムを動作することを特徴とする請求項1に記載の音楽アプリケーション装置。
【請求項3】
前記割当手段は、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれが発生する所定の制御情報に応じて、前記制御情報を発生した電子楽器に対して使用許可するリソースを優先的に確保して割り当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の音楽アプリケーション装置。
【請求項4】
音楽アプリケーション装置を接続する接続手段と、
所定の機能のライセンス情報を記憶する記憶手段と、
前記接続された音楽アプリケーション装置からの指示に応じて、前記記憶手段に記憶済みのライセンス情報を前記音楽アプリケーション装置に対して返送する返送手段と、
前記接続された音楽アプリケーション装置からの使用許可するリソースの通知に応じて、前記記憶済みのライセンス情報に関わらずにリソースを制限して前記所定の機能を実行する制御手段と
を具える電子楽器。
【請求項5】
コンピュータに、
接続手段に接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに記憶されている、所定の機能のライセンス情報を取得する手順と、
前記取得したライセンス情報に基づき、前記接続された1乃至複数の電子楽器全体で利用できるリソースの範囲を決定する手順と、
前記決定したリソースの範囲のうちから、前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して使用許可するリソースを割り当てる手順と、
前記接続された1乃至複数の電子楽器それぞれに対して、前記各電子楽器に割り当てた使用許可するリソースを通知する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
接続手段に接続されている音楽アプリケーション装置からの指示に応じて、記憶手段に記憶済みの所定の機能のライセンス情報を前記音楽アプリケーション装置に対して返送する手順と、
前記接続された音楽アプリケーション装置からの使用許可するリソースの通知に応じて、前記記憶済みのライセンス情報に関わらずにリソースを制限して前記所定の機能を実行する手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−233335(P2008−233335A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70342(P2007−70342)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】