説明

頭部保護エアバッグ装置

【課題】安価に製造することができて、かつ、軽量であり、エアバッグとインフレーターとを、シール性を良好として、接続可能な頭部保護エアバッグ装置の提供。
【解決手段】本発明の頭部保護エアバッグ装置では、インフレーター14を、エアバッグ22の接続口部50内に挿入させた状態でクランプ18Fを締め付けることにより、エアバッグ22の接続口部50に接続させている。接続口部50内に配置されるディフューザー布59が、略帯状とされるとともに、一端側を接続口部50に結合され、自由端となる他端61a側からインフレーター14の外周側に巻きかけられるようにして、一重以上で、インフレーター14のガス吐出口の外周側を全周にわたって覆う。ディフューザー布59を接続口部55とインフレーター14との間に介在させて、インフレーター14が、クランプ18Fを使用して接続口部50に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、窓の上縁側に配置されてエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成の頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、インフレーターを挿入させるための挿入用開口を有して、インフレーターと接続される略筒状の接続口部を備える構成とされており、インフレーターは、外形形状を略円柱状とされるとともに、挿入用開口から接続口部内に挿入される先端側に、軸回り方向(インフレーターにおける軸心の周方向)に沿って複数のガス吐出口を備える構成とされていた。そして、従来の頭部保護エアバッグ装置では、接続口部におけるインフレーター挿入用の挿入用開口から、インフレーターのガス吐出口側の部位を、挿入させ、接続口部の外周側に配置されるクランプを締め付けることにより、インフレーターと接続口部とを接続させていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−327070公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、この種の頭部保護エアバッグ装置では、インフレーターの作動時に、高温の膨張用ガスが、ガス吐出口から、インフレーターの軸心を中心として放射状に噴出されることから、ガス吐出口の近傍に位置する接続口部へのダメージが大きく、この接続口部近傍部位へのダメージを抑えるために、従来の頭部保護エアバッグ装置では、ガス吐出口の外周側を覆って延びる筒状のディフューザーを、インフレーターに連結させ、このディフューザーを接続口部に挿入させ、ディフューザーと接続口部とをクランプ止めしていた。このディフューザーは、金属パイプ製であることから、装置の軽量化や、製造コストを低減させる点に改善の余地があった。
【0004】
また、このような点を改善するために、金属パイプ製のディフューザーの代わりに、可撓性を有した布材を複数枚重ねて、所定箇所を相互に縫着させることにより、多重の筒状としたインナチューブを使用し、このインナチューブを接続口部内に挿入させる構成とすることもできる。しかしながら、このような構成の場合、インフレーターの外周側に、インナチューブの縫合部位が当たることから、インフレーターとこの縫合部位との間に隙間が生じることとなって、インフレーターとエアバッグの接続口部とを、シール性を良好に接続させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、安価に製造することができて、かつ、軽量であり、エアバッグとインフレーターとを、シール性を良好として、接続可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、窓の上縁側に配置されてエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成とされて、
エアバッグが、インフレーターに接続させるための挿入用開口を有して、エアバッグの内部に膨張用ガスを流入させる略筒状の接続口部を、備える構成とされ、
インフレーターが、
外形形状を略円柱状とされるとともに、挿入用開口から接続口部内に挿入される先端側に、軸回り方向に沿って複数のガス吐出口を備える構成とされるとともに、
接続口部内にガス吐出口側を挿入させた状態で、接続口部の外周側に配置されるクランプを締め付けることにより、接続口部と接続される構成の頭部保護エアバッグ装置において、
エアバッグが、接続口部を有したエアバッグ本体と、可撓性を有した布材から構成されて接続口部内に配設されるディフューザー布と、を備え、
ディフューザー布が、インフレーターにおけるガス吐出口が配置される部位の外周側を覆い可能な幅寸法を有した略帯状とされるとともに、一端側を接続口部側に結合され、他端側を自由端として、自由端側からインフレーターの外周側に巻きかけられるようにして、接続口部側に結合される結合部位から離れた領域において一重以上で、ガス吐出口の外周側を全周にわたって覆うように構成され、
インフレーターの外周側を覆うように巻きかけられたディフューザー布を接続口部とインフレーターとの間に介在させた状態で、インフレーターが、クランプを使用して、接続口部に接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグの接続口部内に、インフレーターにおけるガス吐出口の外周側を覆うように構成されるディフューザー布を配設させており、このディフューザー布は、ガス吐出口の部位の外周側を覆い可能な幅寸法を有した略帯状とされるとともに、長手方向側の一端側を接続口部側に結合された状態とされて、長手方向側の他端側からインフレーターの外周側に巻きかけられるようにして、ガス吐出口の外周側を覆うように、配設されている。そして、このディフューザー布は、接続口部側に結合される結合部位から離れた領域において一重以上で、ガス吐出口の外周側を全周にわたって覆うように構成されている。すなわち、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、インフレーターの外周側は、ディフューザー布の自由端側の部位によって、軸回り方向(インフレーターにおける軸心の周方向)の全周にわたってくるまれており、このディフューザー布は、エアバッグの接続口部をインフレーターの外周側にクランプ止めする際に、接続口部とインフレーターとの間に介在されることから、クランプ止め部位において、ディフューザー布を接続口部側に結合させている結合部位(縫合部位)が、インフレーターの外周側に接するように配置されず、インフレーターとディフューザー布との間に隙間が生じることを極力抑えることができる。そのため、インフレーターと接続口部とを、シール性を良好として接続させることができる。また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、ディフューザー布が可撓性を有した布材から構成されていることから、金属パイプ製のディフューザーを使用した従来の頭部保護エアバッグ装置と比較して、安価に製造することができ、かつ、軽量化を図ることもできる。
【0008】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、安価に製造することができて、かつ、軽量であり、エアバッグとインフレーターとを、シール性を良好として、接続可能である。
【0009】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、ディフューザー布の外周側に、接続口部との間に介在されて接続口部の内周側を略全域にわたって覆うインナチューブを配設させ、
インナチューブを、少なくとも一部を接続口部に結合させて構成し、
ディフューザー布を、一端側をインナチューブに結合させることにより、接続口部側に結合させる構成とすることが好ましい。
【0010】
上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、ディフューザー布を内部に配置させたインナチューブを、エアバッグの接続口部に結合させれば、ディフューザー布を接続口部側に結合させることができることから、ディフューザー布を直接接続口部に結合させて接続口部内に配設させる場合と比較して、製造工数を低減させることができる。
【0011】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、インフレーターを、本体と、本体の先端側に配置されて前記本体より小径とされる小径部と、を備える構成とし、
ガス吐出口部を、小径部に形成し、
インフレーターを、小径部から離れる本体の元部側の領域で、クランプを締め付けることにより、接続口部と接続させる構成とすることが好ましい。
【0012】
上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、インフレーターの作動時に、インフレーターの軸心を中心として放射状にガス吐出口から吐出された膨張用ガスが、小径部とディフューザー布の間の隙間から、インフレーターの軸方向に沿った先端側に向かって流れやすく、好ましい。
【0013】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、ディフューザー布における挿入用開口側の縁部側に、縁部をインフレーターの軸回り方向に沿って複数に分割する複数のスリットを、配設させる構成とすれば、ディフューザー布における挿入用開口側の縁部が、開きやすく、インフレーターのディフューザー布内への挿入作業が容易となって、好ましい。
【0014】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、ディフューザー布を、インフレーターの外周側を少なくとも二重に巻きかけて覆うように、構成すれば、仮に、ディフューザー布におけるインフレーター側となる内周側に配置される部位が、ガス吐出口から吐出される膨張用ガスにより大きなダメージを受けることとなっても、その部位の外周側に、さらに、全周にわたって囲むように、ディフューザー布が配置されていることから、膨張用ガスが、接続口部にダメージを与えることを極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側に配置されるもので、エアバッグ22と、インフレーター14と、取付ブラケット10,17と、エアバッグカバー8と、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ22は、車両Vの窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方側までの範囲に、折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、窓W1,W2の車内側を覆うように、窓W1,W2の上縁側から下方側へ展開膨張する。
【0016】
エアバッグカバー8は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4とルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5とのそれぞれの下縁側から構成されている。なお、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。ルーフヘッドライニング5は、フロントピラー部FPの上方付近から、センターピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方付近まで、配設されている。
【0017】
インフレーター14は、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、略円柱状の本体15と、本体15の先端側(実施形態の場合、前端側)に配置されて本体15より小径とされる小径部16と、を備える構成とされている。小径部16には、インフレーター14の軸心を中心として放射状に膨張用ガスを吐出させるガス吐出口16aが、軸回り方向(インフレーター14における軸心の周方向)に沿って複数形成されている。そして、インフレーター14は、エアバッグ22における後述する接続口部50内にガス吐出口16a(小径部16)側を挿入させた状態で、接続口部50の外周側に配置されるクランプを締め付けることにより、接続口部50と接続されている。実施形態の場合、インフレーター14を車両のボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付ブラケット17Fの保持環部18Fが、インフレーター14と接続口部50とを接続させるクランプを構成している。
【0018】
取付ブラケット17は、板金製として、インフレーター14における本体15の周囲に配置可能に、帯状の部材を略円環状に湾曲させた形状の保持環部18と、保持環部18の両端側に形成される略四角板状の2つの取付板部19A,19Bと、から構成されている。実施形態の場合、取付ブラケット17は、インフレーター14の軸方向に沿った2箇所となるインフレーター14の本体15の前後両端近傍となる位置に、配設されている(図3参照)。そして、実施形態の場合、前方側に配置される取付ブラケット17Fが、インフレーター14と接続口部50とを接続させるクランプを構成しており、この取付ブラケット17Fは、インフレーター14における小径部16から離れる本体15の元部側の領域、詳細には、小径部16側となる前端近傍部位に、配置されている。また、取付ブラケット17Fの保持環部18Fは、接続口部50における後述する挿入用開口51近傍であって、後述するストッパ54bよりも前方となる位置の外周側に、配置されている。各取付板部19A,19Bには、取付ブラケット17をボディ1側のインナパネル2に固定させる取付ボルト20を挿通可能な貫通孔19aが、形成されている。
【0019】
各取付ブラケット17は、取付板部19A,19Bを車内外方向で相互に重ねるようにして、保持環部18を、インフレーター14の本体15の外周側に配置させる構成とされるもので、前側に配置される取付ブラケット17Fにおいては、保持環部18Fは、エアバッグ22の接続口部を介して、インフレーター14の本体15の外周側に配置されることとなる。そして、車外側に配置される取付板部19Bをインナパネル2に当接させて、貫通孔19aに挿通させた取付ボルト20をインナパネル2に設けられた図示しないナットに締結させれば、インフレーター14をインナパネル2に取り付けることができる。このとき、前側の取付ブラケット17Fでは、取付ボルト20のナットへの締結時に、クランプとしての保持環部18Fが、接続口部50の外周側から締め付けられることとなって、インフレーター14の本体15とエアバッグ22の接続口部50とが接続されることとなる。
【0020】
エアバッグ22の取付部41をボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付ブラケット10は、略四角板状の板金製として、それぞれ、取付部41を車内側と車外側とから挟むような2枚構成とされている(図2参照)。実施形態の場合、取付ブラケット10は、取付部41における取付部本体42と連結片44とを、車内側と車外側とから挟むように、構成されている。また、取付ブラケット10には、取付ボルト11挿通用の挿通孔11aが、形成されている。そして、取付ブラケット10は、取付ボルト11を、挿通孔10a及び取付部41(取付部本体42及び連結片44)の挿通孔42a,44aを経て、インナパネル2に設けられたナット2aに締結させることにより、取付部41(取付部本体42及び連結片44)を挟持させた状態で、インナパネル2に取付固定されている(図2参照)。
【0021】
エアバッグ22は、接続口部50を有したエアバッグ本体23と、可撓性を有した布材から構成されて接続口部50内に配設されるディフューザー布59と、ディフューザー布59と接続口部50との間に介在されるインナチューブ53と、から、構成されている。
【0022】
エアバッグ本体23は、車両Vの窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方側までの範囲に、折り畳まれて収納されるもので、図1の二点鎖線に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、センターピラー部CPの車内側に配置されるセンターピラーガーニッシュ7、リヤピラー部RPの車内側に配置されるリヤピラーガーニッシュ6の車内側を覆うように、膨張を完了させる構成とされている。実施形態の場合、エアバッグ本体23は、膨張完了時に窓W1,W2の車内側を覆う遮蔽本体部24と、遮蔽本体部24の上縁24aを窓W1,W2の上縁側に取り付ける複数の取付部41と、遮蔽本体部24の内部に膨張用ガスを流入させる略筒状の接続口部50と、遮蔽本体部24の前縁における下端付近から前方に延びる取付ベルト46と、から、構成され、取付部41、接続口部50、及び、取付ベルト46は、それぞれ、遮蔽本体部24と別体として、遮蔽本体部24に結合(縫着)されている構成である。
【0023】
遮蔽本体部24は、車内側壁部26aと車外側壁部26bとの間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部26と、内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部31と、を有しており、膨張完了形状を、窓W1,W2及びセンターピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ6の車内側を覆い可能な略長方形板状として、構成されている。また、遮蔽本体部24は、実施形態の場合、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより、製造されており、後述する板状部38の領域を除いた外表面(外周面)側を、ガス漏れ防止用のシリコン等からなるコーティング剤を塗布して形成されたコーティング層25によって、略全域にわたって、覆われている(図4,7参照)。
【0024】
膨張部26は、実施形態の場合、ガス供給路部27と、前席用膨張部29及び後席用膨張部30と、を備えている。
【0025】
ガス供給路部27は、図4に示すように、遮蔽本体部24の上縁24a側で、車両の前後方向に沿うように、遮蔽本体部24の前後の略全域にわたって配設されており、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、接続口部50を経て内部に流入させ、ガス供給路部27の下方に配置される前席用膨張部29と後席用膨張部30とに案内する構成である。ガス供給路部27における前後の中央よりやや前方となる位置、詳細には、前席用膨張部29における縦セル29cの上方となる位置の上縁側には、接続口部50が連結(縫着)されている。そして、実施形態の場合、ガス供給路部27における上縁側には、接続口部50を連結するための開口28が、形成されている(図4,5,13参照)。
【0026】
この開口28は、実際には、図8,13に示すように、遮蔽本体部素材67において、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを分離させるように開口しており、製造後の遮蔽本体部24(エアバッグ本体23)においては、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを縫着させる縫合部位65F,65Bによって閉塞されている(図4,5参照)。開口28は、前後方向に沿った開口幅寸法を、接続口部50における下端50b側の部位の前後方向側の幅寸法より大きくして、形成されている。詳細には、開口28は、接続口部50の縫着作業や、インナチューブ53の挿入作業が容易なように、ガス供給路部27の上縁側において、前席用膨張部29における前後の略中央から後席用膨張部30の前端近傍にかけての領域に、形成されている。そして、接続口部50は、開口28の前後の略中央となる領域に、連結されることとなり、開口28における接続口部50を縫着させた部位の前後の残部28c,28dは、相互に重ねられた状態の車内側壁部26aと車外側壁部26bとを、縫合糸を用いて相互に縫着させることにより、閉塞されている。
【0027】
開口28の残部28c,28dを閉塞させる縫合部位65F,65Bは、それぞれ、開口28周縁となる遮蔽本体部24の上縁24a側において、ガス供給路部27と周縁部32との境界部位から連なるように、前後方向に略沿って、形成されている。各縫合部位65F,65Bは、周縁部32と、接続口部50を開口28の周縁に縫着させている縫合部位64と、を連結させるようにして、周縁部32と縫合部位64との間を閉塞するように、形成されている。実施形態の場合、接続口部50の後方に配置される縫合部位65Bは、接続口部50の後縁を縫着させるように、遮蔽本体部24の上縁24aから接続口部50の後縁側にかけて連続的に、形成されている。
【0028】
前席用膨張部29は、エアバッグ本体23の膨張完了時に、窓W1からセンターピラー部CPにかけての車内側を覆うように配置されるもので、図4に示すように、その領域内に、後述する厚さ規制部33と区画部34,35とを配置させて、略矩形状に膨らむ膨張本体部29aと、縦セル29b,29cと、を、前後方向に沿って並設させて、構成されている。膨張本体部29aは、領域内における上端近傍に、ガス供給路部27と区画される略楕円形の厚さ規制部33を配置させて構成され、厚さ規制部33を除いたエリアで、ガス供給路部27に連通されるもので、上端側から内部に膨張用ガスを流入させるように構成されている。膨張本体部29aの後側に配置される2つの縦セル29b,29cは、前後方向に沿って配置される区画部34の縦棒部34bによって、ガス供給路部27と区画されるとともに上端側を閉塞されている。縦セル29bは、膨張本体部29aと下端側で連通されて、膨張本体部29aを経由して、下端側から内部に膨張用ガスを流入可能に構成され、縦セル29cは、縦セル29bと上端側で連通されるもので、縦セル29bを経由して、上端側から内部に膨張用ガスを流入可能に構成されている。
【0029】
後席用膨張部30は、エアバッグ本体23の膨張完了時に、窓W2の後半分からリヤピラー部RPにかけての車内側を覆うように配置されるもので、図4に示すように、その領域内に、後述する区画部36を配置させて、上端を前方に位置させ下端を後方に位置させるように上下方向に対して傾斜して配置される縦セル30aと、略矩形状に膨らむ膨張本体部30bと、を、前後方向に沿って並設させて、構成されている。縦セル30aは、上端側をガス供給路部27に連通されるもので、上端側から内部に膨張用ガスを流入させるように構成されている。膨張本体部30bは、前後方向に沿って配置される区画部36の横棒部36aによって、ガス供給路部27と区画されるとともに上端側を閉塞されており、下端側を縦セル30aと連通されて、縦セル30aを経由して、下端側から内部に膨張用ガスを流入させるように構成されている。
【0030】
非膨張部31は、実施形態の場合、周縁部32、厚さ規制部33、区画部34,35,36、及び、板状部38から、構成されている。実施形態の場合、非膨張部31は、板状部38を除いて、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを結合させるようにして構成されている。
【0031】
周縁部32は、遮蔽本体部24における膨張部26の周囲を、開口28の領域を除いて、全周にわたって囲むように、形成されている。厚さ規制部33は、外形形状を、長軸を前後方向に略沿わせた略楕円形状として、上述したごとく、前席用膨張部29における膨張本体部29aの領域内に配置されている。区画部34は、前席用膨張部29の領域内に配置されるもので、板状部38の前上縁から前方に延びてガス供給路部27と縦セル29b,29cとを区画する横棒部34aと、横棒部34aの前端から先端を前方に向けるように斜め下方に延びて膨張本体部29aと縦セル29bとを区画する縦棒部34bと、を備えている。区画部35は、前席用膨張部29の領域内に配置されるもので、周縁部32における遮蔽本体部24の下縁24b側の部位から上方に延びて、縦セル29b,29c間を区画するように、配置されている。区画部36は、後席用膨張部30の領域内に配置されるもので、周縁部32における遮蔽本体部24の後縁側の部位から前方に伸びてガス供給路部27と膨張本体部30bとを区画する横棒部36aと、横棒部36aの前端から先端を後方に向けるように斜め下方に延びて縦セル30aと膨張本体部30bとを区画する縦棒部36bと、を備えている。
【0032】
板状部38は、ガス供給路部27の下方であって、前席用膨張部29と後席用膨張部30との間に、配設されるもので、外形形状を略台形状とされている。実施形態の場合、板状部38は、遮蔽本体部24の織成時に、膨張部26との境界部位に配置される周縁部32の部位を除いて、膨張部26と同様に、車内側壁部26aと車外側壁部26bとに分離させるように形成し、車内側の壁部を略全域にわたって切り抜いて、構成されている(図4の括弧内参照)。すなわち、板状部38は、肉厚を、周囲の周縁部32(非膨張部31)の肉厚の略半分として、構成されている。なお、板状部38は、遮蔽本体部24(遮蔽本体部素材)の織成後において、コーティング層25の形成後に、車内側の壁部を切り抜いて、形成されていることから、コーティング層25を車外側の面のみに施された状態となる。なお、実施形態のエアバッグ本体23では、この板状部38の領域における車内側の壁部を切り抜いた図示しない切抜部位は、接続口部50に転用されることとなる。
【0033】
取付部41は、遮蔽本体部24の上縁24a側から上方へ突出するように、複数(実施形態の場合、5個)配設されている。実施形態の場合、各取付部41は、図4,8に示すように、遮蔽本体部24と別体のポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、取付部本体42と、取付部本体42の下端から下方に延びるように構成されるラッピング部43と、を有した帯状として、構成されている。ラッピング部43は、エアバッグ22(エアバッグ本体23)の折り畳み収納時に、折り崩れを防止可能に、折り畳まれた遮蔽本体部24の外周側に巻きかけられるもので、先端側に、取付部本体42とともに共締めされる連結片44を有している。また、折り畳まれた遮蔽本体部24の下側に位置することとなるこのラッピング部43の長手方向の中央付近には、エアバッグ22の展開膨張時に破断可能に、ミシン目状の切り込みからなる破断予定部43aが、前後方向に沿って形成されている(図5参照)。また、実施形態の場合、取付部本体42は、二枚重ね状とされている(図2参照)。取付部本体42及び連結片44には、取付ボルト11を挿通可能な挿通孔42a,44aが、形成されている。そして、実施形態の場合、取付部41は、遮蔽本体部24の車内側壁部26a上に重ねられた状態で、取付部本体42の下端側を、遮蔽本体部24の上縁24aにおける周縁部32の部位に、縫合糸を用いて縫着されて、遮蔽本体部24に連結されている。接続口部50の前側に配置される取付部41は、開口28の領域内に配置されることから、縫合部位65Fの形成時に、共縫いされて、遮蔽本体部24に連結されている(図5参照)。
【0034】
取付ベルト46は、図4に示すように、遮蔽本体部24の前縁における下端付近から前方へ突出するような帯状とされるもので、遮蔽本体部24と別体のポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から、形成されている。取付ベルト46は、元部側を、遮蔽本体部24の前縁における周縁部32の部位に縫着されるもので、先端側に、取付ブラケット10と取付ボルト11とによりボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付片部47を、備えている。実施形態の場合、取付片部47は、インナパネル2におけるフロントピラー部FPの下端近傍の部位に、取付固定されており、取付ベルト46は、エアバッグ22(エアバッグ本体23)の膨張完了時に、略前後方向に沿って配置されることとなる。
【0035】
接続口部50は、図8に示すように、遮蔽本体部24と別体とされるもので、図4,5,7に示すように、遮蔽本体部24の上縁24a側から上方に突出するとともに、遮蔽本体部24の膨張部26内に膨張用ガスGを流入可能に、上下両端側を開口させた略筒状とされている。具体的には、接続口部50は、下端50b側を前方に向け、上端50a側を後方に向けるように、軸方向を上下方向に対して傾斜させた形状とされ、上端50a側の開口を、インフレーター14に接続させるための挿入用開口51としている。接続口部50は、実施形態の場合、遮蔽本体部24における前席用膨張部29の後端近傍となる縦セル29bの上方に、配置されている。さらに、接続口部50は、図7に示すように、遮蔽本体部24と連通される下端50b側の縁部50cを、上側に向けつつ、開口28の縁部28bと一致させるように反転させて、下端50b近傍部位を開口28の周縁28aに縫着されて、遮蔽本体部24に連結されている。実施形態の場合、接続口部50の下端50b側を開口28の周縁28aに縫着させる縫合部位64は、既述した遮蔽本体部24の開口28における残部28c,28dを閉塞させる縫合部位65F,65Bより若干上方となる位置において、前後方向に略沿うように配置されている(図4,5参照)。
【0036】
実施形態の場合、接続口部50は、遮蔽本体部24の板状部38の領域における車内側の壁部を切り抜いた図示しない切抜部位をさらに切り抜いて構成される接続口部用素材68から、形成されている。接続口部用素材68は、図8に示すように、接続口部50を前縁側で連結させたような形状とされており、実施形態の場合、コーティング層69を内側に配置させるように、この前縁側の部位で折り返して二つ折りされた状態で、後縁側を相互に縫着させて、筒状として構成されている(図5,7参照)。
【0037】
インナチューブ53は、接続口部50及びガス供給路部27における接続口部50近傍部位を保護するとともに、遮蔽本体部24内に流入した膨張用ガスGの流入方向を制御するためのもので、接続口部50とディフューザー布59との間に介在されるようにして、接続口部50の内周側を全域にわたって覆うように構成されている。
【0038】
インナチューブ53は、略筒状として、接続口部50から、ガス供給路部27における接続口部50の下方となる領域にかけてを覆うように配設されるもので、実施形態の場合、図5,9に示すように、接続口部50の内部に挿入される流入側部54と、ガス供給路部27内における接続口部50の下方の領域に配置される流出側部55と、から構成されている。流入側部54は、接続口部50と略同一形状の筒状とされて、接続口部50と同様に、上下両端側を開口させて構成されている。流出側部55は、流入側部54の下端から前後両側に延びるように形成される前後方向に沿った略筒状とされるもので、前後両端側を開口させて構成されている。そして、インフレーター14におけるガス吐出口16aから吐出された膨張用ガスGは、流入側部54を経て、流出側部55の前後両端側の開口55a,55bから、前後方向側に沿うようにして、遮蔽本体部24のガス供給路部27内に流入することとなる。なお、実施形態の場合、流出側部55は、平らに展開した状態において、後端側にかけて拡開するようなテーパ状として、後端側の開口55bを、前端側の開口55aより開口幅寸法を大きくするように構成されている(図9参照)。また、実施形態の場合、インナチューブ53は、流入側部54の長さ寸法を、接続口部50の長さ寸法より若干大きくして、流入側部54の上端54aを、接続口部50の挿入用開口51から突出させるように、構成されている(図15参照)。この流入側部54における挿入用開口51から突出している部位は、接続口部50の外周側に配置されるように折り返されて、挿入用開口51の周縁に、上下両縁側となる部位で縫着され、車両搭載時における取付ブラケット17Fの保持環部18Fの抜け止め用のストッパ54bを構成している(図3,11参照)。
【0039】
実施形態の場合、インナチューブ53は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布の表面にシリコン等のコーティング剤を塗布したコート布からなるインナチューブ用素材57から、形成されている。インナチューブ用素材57は、インナチューブ53を全域にわたって二枚重ね状とするように、前縁側で相互に連結させた基材二枚を、上縁側で相互に連結させた形状とされている(図8,図14のA参照)。そして、インナチューブ53は、このインナチューブ用素材57を、コート面(コーティング層)を外周面側に位置させるように、上縁側で折り返して二枚重ね状としたものを、さらに、前縁側の部位で折り返して二つ折りし、流入側部54の上端側と、流出側部55の前後両端側と、の開口部分を除いた後縁側とした縁側とで、それぞれ、縫着させるようにして、形成されている。すなわち、インナチューブ53は、インナチューブ用素材57を四つ折りして構成されるもので、外周側及び内周側で露出している外表面側に、全面にわたってコート面(コーティング層)が形成されている。なお、実施形態のインナチューブ53では、流入側部54は、後縁側を、接続口部50の後縁側とともに、縫合部位65Bの部位で共縫いされて、筒状とされており、流出側部55は、後上縁側を、遮蔽本体部24における開口28の残部28dとともに、縫合部位65Bの部位で共縫いされて、筒状とされている。すなわち、インナチューブ53は、流入側部54の後縁側と、ストッパ54bの周縁と、の部位において、接続口部50に結合(縫着)されている。
【0040】
ディフューザー布59は、図9の括弧内に示すように、インフレーター14におけるガス吐出口16aが配置される小径部16の外周側を覆うように、インナチューブ53における流入側部54内に配置されるもので、インフレーター14における小径部16の外周側を全域にわたって覆い可能な幅寸法を有した略帯状とされている。実施形態の場合、ディフューザー布59は、上端59a(インフレーター14接続時における後端)を、インナチューブ53における流入側部54の上端54aと略一致させ、下端59b(インフレーター14接続時における前端)を、図11に示すように、小径部16より前方に位置させるような幅寸法として、構成されている。また、ディフューザー布59は、長さ寸法を、小径部16の外周側を、二重以上(実施形態の場合、略二周半)にわたって覆い可能な寸法に、設定されている。そして、ディフューザー布59は、一端側をインナチューブ53の流入側部54に結合され、他端側を自由端として、自由端側から、インフレーター14の外周側に巻きかけられるようにして、ガス吐出口16a(小径部16)の外周側を全周にわたって覆う構成とされている。詳細には、実施形態の場合、ディフューザー布59は、インナチューブ53の流入側部54側(外周側)に配置される1巻き分(1周分)が、流入側部54に対してずれ不能に、外周側部位60として、流入側部54に、部分的に、縫着されている。外周側部位60は、軸回り方向側の両端60a,60b(長手方向側の両端)近傍の部位を、流入側部54に対して、軸方向に沿って縫着されている(図10参照)。実施形態の場合、この外周側部位60を流入側部54に縫着させる2つの縫合部位62,62は、上端側を除いた領域に形成されるもので、車両搭載時における流入側部54の後縁近傍の車内側と車外側との領域に、それぞれ、配置されることとなる。外周側部位60を流入側部54に縫着させる縫合部位62は、インナチューブ53を平らに展開した状態で、インナチューブ53の後縁側を縫着させるとともにインナチューブ53を接続口部40に縫着させる縫合部位65Bより上方側となる位置に、形成されている(図9参照)。すなわち、ディフューザー布59は、外周側部位60を、流入側部54のみに縫着させており、接続口部50に縫着されるインナチューブ53の流入側部54に対して縫着(結合)させることにより、接続口部50側に結合させる構成とされている。
【0041】
そして、ディフューザー布59は、流入側部54に縫着される外周側部位60から連なるように、一重以上で、小径部16の外周側を全周にわたって覆う内周側部位61を、備えている。具体的には、内周側部位61は、小径部16の外周側を、1巻き半分(1周半分)にわたって覆うもので、この内周側部位61が、自由端側の部位として、外周側部位60から離れた側の先端61a(自由端)側から、インフレーター14の小径部16の周囲に巻きかけられている。すなわち、この内周側部位61は、隣接する外周側部位60やインフレーター14の小径部16に対してずれ移動可能とするように、周囲の部材に結合されない状態で、渦巻状に形成されている(図9参照)。実施形態の場合、内周側部位61は、1巻き半より長さ寸法を若干長くして、1周半と1/4周分との長さ寸法を有して、構成されている。
【0042】
また、ディフューザー布59は、上端59aを、インナチューブ53における流入側部54の上端54aと略一致させるように構成されているが、このディフューザー布59における上端側部位59cは、インナチューブ53における流入側部54とともに折り返されず、接続口部50における上端50a側の挿入用開口51から上方に突出するように、構成されている(図10,11,16参照)。そして、ディフューザー布59におけるこの上端側部位59cの領域(挿入用開口51側の縁部側の領域)には、ディフューザー布59の縁部(上端側部位59c)を、インフレーター14の軸回り方向に沿って複数に分割する複数のスリット59dが、上端側部位59c(挿入用開口51から突出する領域)の軸方向側の全域にわたって切り込みを入れるように、形成されている。このスリット59dは、実施形態の場合、半ピッチ(半周分)ごとに、形成されている。ディフューザー布59は、インナチューブ53と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布の表面にシリコン等からなるコーティング剤を塗布したコート布から構成されている。詳細には、ディフューザー布59は、コート面(コーティング層)を、インナチューブ53のコート面と接触させないように、インフレーター14側となる内周面側に、コート面(コーティング層)を配置させた構成とされている。
【0043】
そして、図11,12に示すように、実施形態のディフューザー布59は、接続口部50とインフレーター14とを接続させた状態で、クランプを構成する取付ブラケット17Fの保持環部18Fの内周側の領域において、インナチューブ53の流入側部54とインフレーター14の本体15との間に介在されることとなる。このとき、インフレーター14の本体15の外周側には、ディフューザー布59における内周側部位61のみが接触することとなる(図12参照)。換言すれば、ディフューザー布59の外周側部位60を流入側部54に縫着させている縫合部位62は、インフレーター14における本体15の外周面と接触していない状態となる。
【0044】
次に、実施形態のエアバッグ22の製造について説明をする。予め、遮蔽本体部素材67の板状部38の領域を切り抜いて、接続口部用素材68を形成しておく。また、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材57を、二つ折りし、ディフューザー布59における外周側部位60を、縫合部位62を形成するように、縫合糸を用いてインナチューブ53に縫着させておく。
【0045】
まず、接続口部用素材68を、コーティング層69を外周面側に位置させるように、前縁側の折目C1の部位で折り返して、挿入用開口51(上端50a)を下方に位置させ、下端50bを上方に位置させるように反転させ(図13のA参照)、この反転させた状態の接続口部用素材68を、開口28から、遮蔽本体部素材67(遮蔽本体部24)内部に挿入させて、縁部50cを開口28の縁部28bと一致させるように、接続口部用素材68を配置させ、下端50b近傍部位を開口28の周縁28aに、縫合糸を用いて縫着させ、縫合部位64を形成する(図13のA,B参照)。その後、接続口部用素材68を、縫合部位64近傍の部位で折り返しつつ、反転状態を解除させる(図13のC,D参照)。このとき、接続口部用素材68は、コーティング層69を内周面側に位置させるようにして、折目C1の部位で再度折り返されることとなる。
【0046】
次いで、ディフューザー布59における内周側部位61を、図14のB,Cに示すように、先端61a(自由端)側から、幅方向に沿った折目を付けてロール折りし、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材57を、ディフューザー布59を間に挟むようにして折り返す(図14のC,D参照)。このとき、ディフューザー布59における外周側部位60が、ロール折りされた内周側部位61の外周側を覆うように、配置されることとなる。その後、折り返してディフューザー布59を間に挟んだ状態のインナチューブ用素材57を、開口28の残部28cを挿通させるようにして、接続口部用素材68間に挟むように配置させる(図15のA,B参照)。このとき、インナチューブ53における流出側部55の部位は、遮蔽本体部24におけるガス供給路部27内に配置されることとなる。その後、開口28の残部28cを縫着させて、縫合部位65Fを形成し、開口28の残部28dを縫着させると同時に、接続口部用素材68の後縁側と、インナチューブ用素材57の上縁側と、を共縫いするようにして、ガス供給路部27の上縁から接続口部50の後縁側にかけて縫合部位65Bを形成し、接続口部50及びインナチューブ53を形成する(図15のC参照)。次いで、図16に示すように、インナチューブ53において、接続口部50の挿入用開口51から突出している流入側部54の上端54a側の部位を、接続口部50の外周側に配置させるように折り返し、接続口部50に上下両縁側の部位で縫着させて、ストッパ54bを形成する。次いで、取付部41と取付ベルト46とを、遮蔽本体部24の所定箇所に縫着させれば、エアバッグ22を製造することができる。
【0047】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、エアバッグ22(エアバッグ本体23)を折り畳む。具体的には、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを重ねて平らに展開した状態から、遮蔽本体部24におけるガス供給路部27の領域を、前後方向に沿った折目を付けて蛇腹折りし、ガス供給路部27より下方の領域を、下縁24bを車外側に向けて巻くようにロール折りして、遮蔽本体部24を折り畳む。そして、遮蔽本体部24の折り畳みが完了したならば、各取付部41のラッピング部43を折り畳まれた遮蔽本体部24の周囲に巻きかけるようにして、ラッピング部43の先端側に形成される連結片44を、取付部本体42の車外側に重ねるように配置させ、連結片44と取付部本体42とを間に挟むようにして、取付部41(取付部本体42及び連結片44)に、取付ブラケット10を取り付ける。また、取付ベルト46の先端側に形成される取付片部47にも、取付ブラケット10を取り付けておく。インフレーター14を、小径部16をインナチューブ53のディフューザー布59の内周側に挿入させるようにして、エアバッグ22の接続口部50に挿入させる。前側の取付ブラケット17Fの保持環部18Fを、接続口部50におけるストッパ54bの前側となる位置に外装させ、後側の取付ブラケット17Bの保持環部18Bをインフレーター14の本体15に外装させて、インフレーター14に取付ブラケット17F,17Bを取り付け、エアバッグ組付体を形成しておく。
【0048】
その後、各取付ブラケット10,17を、インナパネル2の所定位置に配置させて、取付ボルト11,20を利用して取付固定し、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター14に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とをボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、リヤピラーガーニッシュ6とセンターピラーガーニッシュ7とをボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0049】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、インフレーター14が作動されれば、インフレーター14のガス吐出口16aから吐出される膨張用ガスGが、図4の二点鎖線に示すごとく、エアバッグ22の遮蔽本体部24内に流入し、エアバッグ22の遮蔽本体部24が、ラッピング部43の破断予定部43aを破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁で構成されるエアバッグカバー8を押し開いて下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0050】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ22の接続口部50内に、インフレーター14におけるガス吐出口16a(小径部16)の外周側を覆うように構成されるディフューザー布59を配設させており、このディフューザー布59は、ガス吐出口16aの部位(小径部16)の外周側を覆い可能な幅寸法を有した略帯状とされるとともに、長手方向側の一端側(外周側部位60)を接続口部50側(インナチューブ53の流入側部54)に結合された状態とされて、長手方向側の他端側となる内周側部位61の先端61a側からインフレーター14の外周側に巻きかけられるようにして、ガス吐出口16aの外周側を覆うように、配設されている。そして、このディフューザー布59は、接続口部50側に結合される結合部位(外周側部位60)から離れた領域を構成する内周側部位61において、一重以上で、ガス吐出口16aの外周側を全周にわたって覆うように構成されている。
【0051】
すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、インフレーター14の外周側は、図12に示すように、ディフューザー布59における内周側部位61(自由端側の部位)によって、軸回り方向の全周にわたってくるまれている。このディフューザー布59は、エアバッグ22の接続口部50をインフレーター14における本体15の外周側に取付ブラケット17Fの保持環部18F(クランプ)を使用して接続させる際に、接続口部50とインフレーター14の本体15との間に介在されることから、この保持環部18Fの内周側の領域においても、ディフューザー布59の内周側部位61が、インフレーター14における本体15の外周側を全域にわたってくるむこととなって、ディフューザー布59を接続口部50側(流入側部54)に縫着(結合)させている縫合部位62(結合部位)が、インフレーター14の本体15の外周側に接するように配置されないこととなる。そのため、インフレーター14における本体15とディフューザー布59との間に隙間が生じることを極力抑えることができ、インフレーター14と接続口部50とを、シール性を良好として接続させることができる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ディフューザー布59が可撓性を有した布材から構成されていることから、金属パイプ製のディフューザーを使用した従来の頭部保護エアバッグ装置と比較して、安価に製造することができ、かつ、軽量化を図ることもできる。
【0052】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、安価に製造することができて、かつ、軽量であり、エアバッグ22とインフレーター14とを、シール性を良好として、接続可能である。
【0053】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ディフューザー布59の外周側に、一部を接続口部50に縫着させたインナチューブ53を配設させており、ディフューザー布59を、インナチューブ53を介して接続口部50側に結合させた構成とされていることから、ディフューザー布59を内部に配置させたインナチューブ53を、エアバッグ22の接続口部50に結合させれば、ディフューザー布59を接続口部50側に結合させることができる。そのため、ディフューザー布を直接接続口部に結合させるようにして、接続口部内に配設させる場合と比較して、製造工数を低減させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、インナチューブを介在させず、ディフューザー布を直接接続口部に縫着させる構成のものを使用してもよい。
【0054】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、インフレーター14が、本体15と、本体15の先端側に配置されて本体15より小径とされる小径部16と、を備える構成であり、インフレーター14は、小径部16から離れる本体15の元部側の領域で、接続口部50と接続される構成である。そのため、インフレーター14の作動時に、インフレーター14の軸心を中心として放射状にガス吐出口16aから吐出された膨張用ガスが、小径部16とディフューザー布59の間の隙間(図11参照)から、インフレーター14の軸方向に沿った先端側に向かって流れやすく、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、インフレーターとして、小径部を備えず、外径寸法を一定とした本体の一端側の外周面に、ガス吐出口を配置させた構成のものを使用してもよい。
【0055】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mにおいて、ディフューザー布59における挿入用開口51側の縁部側(上端59a側)に、上端側部位59c(縁部)をインフレーター14の軸回り方向に沿って複数に分割する複数のスリット59dを、配設させていることから、図17に示すごとく、ディフューザー布59における挿入用開口51側の縁部(上端側部位59c)が、拡径するように開きやすく、インフレーター14のディフューザー布59内への挿入作業が容易となる。
【0056】
さらにまた、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ディフューザー布59を、インフレーター14の外周側を少なくとも二重に巻きつけて覆うように、構成していることから、仮に、ディフューザー布59におけるインフレーター14側となる内周側に配置される部位(内周側部位61)が、ガス吐出口16aから吐出される膨張用ガスにより大きなダメージを受けることとなっても、内周側部位61の外周側に、さらに、全周にわたって囲むように、外周側部位60が配置されることとなる。そのため、膨張用ガスが、接続口部50にダメージを与えることを極力防止することができる。
【0057】
なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ディフューザー布59の外周側部位60が、長手方向の両端60a,60b側となる軸回り方向に沿った2箇所において、流入側部54に縫着されていることから、インフレーター14の挿入作業時に、ディフューザー布59が、流入側部54に対して位置ずれし難く、インフレーター14の挿入作業時に、インフレーター14の小径部16を、円滑に、を内周側部位61の内側に挿入させることができる。また、実施形態では、ディフューザー布59において、外周側部位60の内周側を覆うように配置される内周側部位61が、一重以上となる1巻き半の領域に、配設されている。そのため、インフレーター14の挿入作業時等において、仮に、内周側部位61が緩むような態様となっても、内周側部位61によって、外周側部位60を流入側部54に縫着させている縫合部位62の内周側を、確実に覆うことができる。
【0058】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、接続口部50が、エアバッグ本体23を構成する遮蔽本体部24と別体とされており、インナチューブ53は、エアバッグ22の製造時に、接続口部50挿入用の開口28の残部28dと縫合前の接続口部50の後縁側の部位と、から、遮蔽本体部24内と接続口部50内とに挿入され、接続口部50の後縁側を縫着させる縫合部位65Bによって、後縁側を共縫いされて、接続口部50に連結されていることから、インナチューブ53の接続口部50内への挿入作業が容易であり、予め製造した接続口部の内部にインナチューブを挿入させる場合と比較して、製造工数及びコストを低減させることができる。
【0059】
勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグ22Aとして、図18〜20に示すように、接続口部50Aを遮蔽本体部24Aと一体的に、袋織りによって製造したエアバッグ本体23Aと、インナチューブ53及びディフューザー布59と、を備える構成のものを使用することもできる。このエアバッグ22Aでは、インナチューブ53は、帯状の連結布材72を用いて、接続口部50Aに結合されている。連結布材72は、長手方向側で二つ折りして、両端側を、インナチューブ53における流入側部54の下端付近の前側に縫着させるようにして、インナチューブ53に連結されている。詳細には、連結布材72は、長手方向を流入側部54の軸直交方向に沿わせるようにして、折目側となる先端側部位72aを、流入側部54の前縁より前方に突出させるようにして、インナチューブ53に連結されている。接続口部50Aには、遮蔽本体部24との境界部位付近となる前下端近傍に、連結布材72の先端側部位72aを収納可能な収納凹部73が、形成されている。そして、接続口部50Aの内部にインナチューブ53を挿入させた状態において、収納凹部73内に収納させた連結布材72の先端側部位72aを、収納凹部73の外周側から、縫合糸を用いて縫着させて、連結布材72が、接続口部50Aに対して結合されている。先端側部位72aを収納凹部73に縫着させる縫合部位74は、収納凹部73の周縁を構成する周縁部32Aの領域にまたがるように、流入側部54の軸方向に沿った直線状として、形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態を示す概略正面図である。
【図2】図1におけるII−II部位の概略断面図である。
【図3】実施形態の頭部保護エアバッグ装置におけるセンターピラー部の上方付近を示す部分拡大正面図であり、ルーフヘッドライニングを省略した状態を示す。
【図4】実施形態の頭部保護エアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【図5】図4のエアバッグにおける接続口部付近を示す部分拡大正面図である。
【図6】図5におけるVI−VI部位の断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII部位の断面図である。
【図8】図4のエアバッグを構成する部材を平らに展開した状態を示す正面図である。
【図9】図4のエアバッグに使用されるインナチューブを示す正面図である。
【図10】図9のインナチューブを構成するインナチューブ用素材と、ディフューザー布と、を平らに展開した状態を示す平面図である。
【図11】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグの接続口部とインフレーターとの接続部位付近を示す前後方向に沿った概略縦断面図である。
【図12】図11におけるXII−XII部位の概略断面図である。
【図13】実施形態の頭部保護エアバッグ装置に使用されるエアバッグの製造過程において、遮蔽本体部素材に接続口部用素材を連結させる工程を説明する概略図である。
【図14】実施形態のエアバッグの製造過程において、インナチューブを製造する工程を説明する概略図である。
【図15】実施形態のエアバッグの製造過程において、接続口部内にインナチューブを挿入させ、接続口部とインナチューブとを形成する工程を説明する概略図である
【図16】実施形態のエアバッグの製造過程において、接続口部の上端側にストッパを形成する工程を説明する概略図である。
【図17】実施形態のエアバッグにおいて、接続口部の挿入用開口近傍におけるディフューザー布の上端側部位の開きを説明する概略斜視図である。
【図18】本発明の他の形態であるエアバッグの接続口部付近を示す部分拡大正面図である。
【図19】図18のエアバッグに使用されるインナチューブと連結布部とを平らに展開して並べた平面図である。
【図20】図18におけるXX−XX部位の概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…ボディ、
8…エアバッグカバー、
14…インフレーター、
15…本体、
16…小径部、
16a…ガス吐出口、
22…エアバッグ、
23…エアバッグ本体、
24…遮蔽本体部、
50…接続口部、
53…インナチューブ、
59…ディフューザー布、
59d…スリット、
60…外周側部位、
61…内周側部位、
61a…先端(自由端)、
62…縫合部位、
G…膨張用ガス、
V…車両、
W1,W2…窓、
M…頭部保護エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、前記窓の上縁側に配置されて前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成とされて、
前記エアバッグが、前記インフレーターに接続させるための挿入用開口を有して、前記エアバッグの内部に膨張用ガスを流入させる略筒状の接続口部を、備える構成とされ、
前記インフレーターが、
外形形状を略円柱状とされるとともに、前記挿入用開口から前記接続口部内に挿入される先端側に、軸回り方向に沿って複数のガス吐出口を備える構成とされるとともに、
前記接続口部内に前記ガス吐出口側を挿入させた状態で、前記接続口部の外周側に配置されるクランプを締め付けることにより、前記接続口部と接続される構成の頭部保護エアバッグ装置において、
前記エアバッグが、前記接続口部を有したエアバッグ本体と、可撓性を有した布材から構成されて前記接続口部内に配設されるディフューザー布と、を備え、
前記ディフューザー布が、前記インフレーターにおける前記ガス吐出口が配置される部位の外周側を覆い可能な幅寸法を有した略帯状とされるとともに、一端側を前記接続口部側に結合され、他端側を自由端として、該自由端側から前記インフレーターの外周側に巻きかけられるようにして、前記接続口部側に結合される結合部位から離れた領域において一重以上で、前記ガス吐出口の外周側を全周にわたって覆うように構成され、
前記インフレーターの外周側を覆うように巻きかけられた前記ディフューザー布を前記接続口部と前記インフレーターとの間に介在させた状態で、前記インフレーターが、前記クランプを使用して、前記接続口部に接続されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ディフューザー布の外周側に、前記接続口部との間に介在されて前記接続口部の内周側を略全域にわたって覆うインナチューブが、配設され、
該インナチューブが、少なくとも一部を、前記接続口部に結合させて構成され、
前記ディフューザー布が、一端側を前記インナチューブに結合させることにより、前記接続口部側に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記インフレーターが、本体と、該本体の先端側に配置されて前記本体より小径とされる小径部と、を備える構成とされ、
前記ガス吐出口部が、前記小径部に形成され、
前記インフレーターが、前記小径部から離れる前記本体の元部側の領域で、前記クランプを締め付けることにより、前記接続口部と接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記ディフューザー布が、前記挿入用開口側の縁部側に、該縁部を前記インフレーターの軸回り方向に沿って複数に分割する複数のスリットを、配設させて構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ディフューザー布が、前記インフレーターの外周側を少なくとも二重に巻きかけて覆うように、構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−89547(P2010−89547A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258807(P2008−258807)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】