説明

頭部保護エアバッグ

【課題】歩留まりを良好として、安価に製造可能な頭部保護エアバッグを提供すること。
【解決手段】 本発明の頭部保護エアバッグ23は、袋織りして製造されるとともに、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形板状として、膨張完了時に窓の車内側を覆う構成とされる遮蔽本体部24と、遮蔽本体部24の上縁側から上方に突出するとともに遮蔽本体部24の上縁を窓の上縁側に取り付ける複数の取付部41と、遮蔽本体部24の上縁側から上方に突出するとともに遮蔽本体部24内に膨脹用ガスを流入させる略筒状の接続口部50と、を備える。取付部41及び接続口部50が、袋織りされた遮蔽本体部24と別体とされて、遮蔽本体部24に連結されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納部位から下方に突出しつつ、窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、頭部保護エアバッグでは、膨張完了時に窓の車内側を覆う遮蔽本体部の上縁側に、エアバッグを窓の上縁側に取り付ける取付部や、インフレーターに接続されて遮蔽本体部内に膨張用ガスを流入させる略筒状の接続口部が、遮蔽本体部から突出するように、形成されている。そして、従来の頭部保護エアバッグでは、この取付部や接続口部が、遮蔽本体部と一体的に袋織りにより、形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−87519公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、袋織りのエアバッグは、車内側壁部と車外側壁部との間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部と、車内側壁部と車外側壁部とを結合させるように構成されて内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部と、を、所定形状に織成したシート状のエアバッグ用素材を、裁断して、形成されるものであることから、取付部や接続口部が遮蔽本体部と一体的に袋織りによって形成されている場合、エアバッグの製造に必要なエアバッグ用素材の上下の幅寸法が、この取付部や接続口部の突出量分、大きく必要となっていた。さらに、この取付部や接続口部は、前後方向に沿って部分的に配置されていることから、取付部や接続口部の周囲の部位が端材を形成することとなって、歩留まりを向上させる点に、改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、歩留まりを良好として、安価に製造可能な頭部保護エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る頭部保護エアバッグは、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納部位から下方に突出しつつ、窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグであって、
車内側壁部と車外側壁部との間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部と、内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部と、を有して、袋織りして製造されるとともに、車内側壁部と車外側壁部とを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形板状として、膨張完了時に窓の車内側を覆う構成とされる遮蔽本体部と、
遮蔽本体部の上縁側から上方に突出するとともに、遮蔽本体部の上縁を窓の上縁側に取り付ける複数の取付部と、
遮蔽本体部の上縁側から上方に突出するとともに、上端側に、インフレーターに接続させるための挿入用開口を有して、遮蔽本体部の膨張部内に膨張用ガスを流入させる略筒状の接続口部と、
を備え、
取付部及び接続口部が、袋織りされた遮蔽本体部と別体とされて、遮蔽本体部に連結されて構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の頭部保護エアバッグでは、車内側壁部と車外側壁部とを重ねるように平らに展開した形状を略長方形板状とした遮蔽本体部のみが、袋織りから形成されており、遮蔽本体部の上縁から上方に突出するように形成される取付部及び接続口部は、遮蔽本体部と別体とされている。そのため、部分的に突出する部位のない略長方形状の遮蔽本体部のみが、長尺状のシート体からなるエアバッグ用素材を裁断して形成されることから、エアバッグの製造時に、エアバッグ用素材から発生する端材の量を低減させることができて、エアバッグ用素材の歩留まりを良好とすることができる。
【0007】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグでは、歩留まりを良好として、安価に製造することができる。
【0008】
また、本発明の頭部保護エアバッグにおいて、遮蔽本体部の上縁側に、接続口部連結用の開口を、形成し、
接続口部を、遮蔽本体部と連通される下縁側を上側に向けるように反転させて、開口の周縁に縫着させて、遮蔽本体部に連結させた構成とすることが好ましい。
【0009】
上記構成の頭部保護エアバッグでは、表裏を反転させた状態の接続口部を、上側に向けられた下端側の縁部を、開口の縁部と一致させるように配置させて、この縁部を開口の周縁に縫着させ、接続口部を再度反転させれば、接続口部の下端側の縁部を、遮蔽本体部に連結させることができる。そのため、接続口部の下端側の縁部と開口の周縁との縫着作業が容易であり、エアバッグの製造工数を低減させることができる。
【0010】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグにおいて、接続口部を構成する接続口部用素材を、遮蔽本体部における非膨張部の部位から切り抜いて形成すれば、遮蔽本体部の製造時に、同時に、別体の接続口部用素材を製造することができることから、接続口部用素材を、別の基材から形成する場合と比較して、製造コストを低減させることができて、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグにおいて、非膨張部において、接続口部用素材を切り抜いて形成される開口を、別体の閉塞部材により、閉塞させる構成とすれば、エアバッグの膨張完了時に、乗員の頭部を保護する保護エリアから外れた非膨張部の部位においても、窓の車内側を全域にわたって覆うことができることから、仮に、乗員の頭部が非膨張部の部位に当たることとなっても、この乗員の頭部が窓と接触することを防止できて、好ましい。また、この場合、遮蔽本体部を袋織り後に外周面側にコーティング層を設けた構成のエアバッグにおいて、開口を塞ぐ閉塞部材を、ノンコート布から構成することもできることから、エアバッグの製造コストを一層低減させることができ、エアバッグ自体を軽量化することも可能となる。
【0012】
そして、本発明の頭部保護エアバッグは、以下のような製造方法で、製造することが好ましい。
【0013】
遮蔽本体部が、遮蔽本体部素材を、直列的に連続させ、かつ、複数個並設させるように織成させたエアバッグ用素材を裁断して、製造されるとともに、上縁側の一部を開口させるようにして、製造され、
遮蔽本体部の上縁側に、取付部を結合させ、
接続口部を構成する接続口部用素材を、
挿入用開口を構成する上縁を下方に位置させるように、反転させた状態で、開口から、遮蔽本体部内部に挿入させて、遮蔽本体部と接続される下縁を、遮蔽本体部における開口周縁に、縫合糸を用いて縫着させ、
その後、反転状態を解除するように、遮蔽本体部から突出させ、前後方向側の縁部相互を結合させ、かつ、遮蔽本体部の開口の残部を相互に結合させて、接続口部を、形成するとともに、遮蔽本体部に対して連結させている。
【0014】
上記構成の頭部保護エアバッグの製造方法では、エアバッグ用素材を直線的に裁断すれば、遮蔽本体部用素材を製造できることから、エアバッグ用素材を歩留まりを良好として裁断できる。また、上記構成の頭部保護エアバッグの製造方法では、従来の接続口部を一体的に配設させた頭部保護エアバッグのごとく、エアバッグ用素材から、部分的に突出した形状のエアバッグを裁断しなくともよく、直線的な裁断作業で、遮蔽本体部用素材を製造できることから、レーザーカッタが不要となって、コールドカッタによる裁断が可能となる。そのため、製造時のイニシャルコストを低減させることができると同時に、製造工数も低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1に示すように、実施形態の頭部保護エアバッグ(以下、特に断らない限り、単に「エアバッグ」と省略する)23は、車両Vに搭載される頭部保護用のエアバッグ装置Mに使用されるものである。このエアバッグ装置Mは、図1〜3に示すように、エアバッグ23と、インフレーター14と、取付ブラケット10,17と、エアバッグカバー8と、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ23は、車両Vの窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方側までの範囲に、折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、窓W1,W2の車内側を覆うように、窓W1,W2の上縁側から下方側へ展開膨張する。
【0016】
エアバッグカバー8は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4とルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5とのそれぞれの下縁側から構成されている。なお、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。ルーフヘッドライニング5は、フロントピラー部FPの上方付近から、センターピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方付近まで、配設されている。
【0017】
インフレーター14は、図1,3に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ23における膨張用ガスを流入させるための接続口部50に挿入され、インフレーター14をボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付ブラケット17の保持環部18を利用して、エアバッグ23と連結されている。具体的には、インフレーター14は、略円柱状の本体15と、本体15の先端側(実施形態の場合、前端側)に配置されて本体15より小径とされる小径部16と、を備える構成とされている。小径部16には、軸回り方向に沿って複数のガス吐出口16aが、形成されている。そして、インフレーター14は、小径部16側からエアバッグ23の接続口部50に挿入される構成である。インフレーター14をインナパネル2に取り付ける取付ブラケット17は、インフレーター14における本体15の周囲に配置可能に、帯状の部材を略円環状に湾曲させた形状の保持環部18と、保持環部18の両端側に形成される略四角板状の2つの取付板部19A,19Bと、から構成されるもので、インフレーター14の軸方向に沿った2箇所となるインフレーター14の本体15の前後両端近傍となる位置に、配設されている(図3参照)。前方に配置される取付ブラケット17Fは、エアバッグ23の後述する接続口部50を共締めするもので、インフレーター14における小径部16近傍となる接続口部50における挿入用開口51近傍であって、後述するストッパ55bよりも前方となる位置に、配置されている。各取付板部19A,19Bには、取付ブラケット17をボディ1側のインナパネル2に固定させる取付ボルト20を挿通可能な貫通孔19aが、形成されている。各取付ブラケット17は、取付板部19A,19Bを車内外方向で相互に重ねるようにして保持環部18を、インフレーター14の本体15の外周側に配置させる構成とされている。前側に配置される取付ブラケット17Fにおいては、保持環部18Fは、エアバッグ22の接続口部を介して、インフレーター14の本体15の外周側に配置されることとなる。そして、保持環部18を接続口部50に外装させた状態で、車外側に配置される取付板部19Bをインナパネル2に当接させて、貫通孔19aに挿通させた取付ボルト20をインナパネル2に設けられた図示しないナットに締結させれば、インフレーター14をインナパネル2に取り付けることができると同時に、保持環部18が周囲から締め付けられて、インフレーター14の本体15とエアバッグ23の接続口部50とを連結させることができる。
【0018】
エアバッグ23の取付部41をボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付ブラケット10は、略四角板状の板金製として、それぞれ、取付部41を車内側と車外側とから挟むような2枚構成とされている(図2参照)。実施形態の場合、取付ブラケット10は、取付部41における取付部本体42と連結片44とを車内側と車外側とから挟むように、構成されている。また、取付ブラケット10には、取付ボルト11挿通用の挿通孔10aが、形成されている。そして、取付ブラケット10は、取付ボルト11を、挿通孔10a及び取付部41(取付部本体42及び連結片44)の挿通孔42a,44aを経て、インナパネル2に設けられたナット2aに締結させることにより、取付部41(取付部本体42及び連結片44)を挟持させた状態で、インナパネル2に取付固定されている(図2参照)。
【0019】
エアバッグ23は、図1の二点鎖線に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、センターピラー部CPの車内側に配置されるセンターピラーガーニッシュ7、リヤピラー部RPの車内側に配置されるリヤピラーガーニッシュ6の車内側を覆うように、膨張を完了させる構成とされている。実施形態の場合、エアバッグ23は、図4に示すように、膨張完了時に窓W1,W2の車内側を覆う遮蔽本体部24と、遮蔽本体部24の上縁側から上方に突出して遮蔽本体部24の上縁24aを窓W1,W2の上縁側に取り付ける複数の取付部41と、遮蔽本体部24の上縁24a側から上方に突出する略筒状の接続口部50と、を備える構成とされている。また、エアバッグ23は、遮蔽本体部24の前縁における下端付近から前方に延びる取付ベルト46も、備えている。
【0020】
遮蔽本体部24は、車内側壁部26aと車外側壁部26bとの間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部26と、内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部31と、を有して、袋織りして製造されるとともに、膨張部26における車内側壁部26aと車外側壁部26bとを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形状とされている(図8参照)。また、遮蔽本体部24は、膨張完了形状も、窓W1,W2及びセンターピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ6の車内側を覆い可能な略長方形板状として、構成されている。実施形態の場合、遮蔽本体部24は、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されており、後述する板状部38の領域を除いた外表面(外周面)側を、ガス漏れ防止用のシリコン等からなるコーティング剤を塗布して形成されるコーティング層25によって、略全域にわたって覆われている(図4,7参照)。
【0021】
膨張部26は、実施形態の場合、ガス供給路部27と、前席用膨張部29及び後席用膨張部30と、を備えている。
【0022】
ガス供給路部27は、図4に示すように、遮蔽本体部24の上縁24a側で、車両の前後方向に沿うように、遮蔽本体部24の前後の略全域にわたって配設されており、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、接続口部50を経て内部に流入させ、ガス供給路部27の下方に配置される前席用膨張部29と後席用膨張部30とに案内する構成である。ガス供給路部27における前後の中央よりやや前方となる位置、詳細には、前席用膨張部29における縦セル29cの上方となる位置の上縁側には、遮蔽本体部24と別体とされる接続口部50が、縫着(連結)されている。実施形態の場合、ガス供給路部27における上縁側には、接続口部50を連結するための開口(連結用開口)28が、形成されている(図4,11参照)。
【0023】
この開口28は、実際には、図11に示すように、後述するエアバッグ用素材65を裁断して形成される遮蔽本体部素材66において、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを分離させるように開口しており、製造後のエアバッグ23においては、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを縫着させる縫合部位63F,63Bによって閉塞されている(図4参照)。開口28は、前後方向に沿った開口幅寸法を、接続口部50における下端50b側の部位の前後方向側の幅寸法より大きくして、形成されている。詳細には、開口28は、接続口部50の縫着作業や、後述するインナチューブ53の挿入作業が容易なように、ガス供給路部27の上縁側において、前席用膨張部29における前後の略中央から後席用膨張部30の前端近傍にかけての領域に、形成されている。そして、接続口部50は、開口28の前後の略中央となる領域に、連結されることとなり、開口28における接続口部50を縫着させた部位の前後の残部28c,28dは、相互に重ねられた状態の車内側壁部26aと車外側壁部26bとを、縫合糸を用いて相互に縫着させることにより、閉塞されている。
【0024】
開口28の残部28c,28dを閉塞させる縫合部位63F,63Bは、実施形態の場合、開口28周縁となる遮蔽本体部24の上縁24a側において、ガス供給路部27と周縁部32との境界部位から連なるように、前後方向に略沿って、形成されており、接続口部50を開口28周縁に縫着させる縫合部位62と交差するように、縫合部位62側の端末を、端縁を上方に向けて湾曲させた形状とされている。具体的には、縫合部位63Fは、縫合部位62側の端末63bを、縫合部位62と交差させるように、端縁を上方に向けて湾曲させている。縫合部位63Bは、後述するごとく、接続口部50の後縁側にかけて連続的に形成されていることから、接続口部50との交差部位付近となる湾曲した部位において、縫合部位62と交差している。また、実施形態の場合、縫合部位63F,63Bは、図5に示すように、ガス供給路部27と周縁部32との境界部位より若干下方に位置するように、形成されており、前側あるいは後側に隣接される周縁部32との間に隙間を生じさせないように、周縁部32側の端末63a,63bを、端縁を上方に向けて湾曲させて、周縁部32の端末32a,32bと交差させた構成とされている(図5参照)。そして、実施形態の場合、接続口部50の後方に配置される縫合部位63Bは、接続口部50の後縁を縫着させるように、接続口部50の後縁側にかけて連続的に、形成されている。
【0025】
前席用膨張部29は、エアバッグ23の膨張完了時に、窓W1からセンターピラー部CPにかけての車内側を覆うように配置されるもので、図4に示すように、その領域内に、後述する厚さ規制部33と区画部34,35とを配置させて、略矩形状に膨らむ膨張本体部29aと、縦セル29b,29cと、を前後方向に沿って並設させて、構成されている。膨張本体部29aは、領域内における上端近傍に、ガス供給路部27と区画される略楕円形の厚さ規制部33を配置させて構成され、厚さ規制部33を除いたエリアで、ガス供給路部27に連通されるもので、上端側から内部に膨張用ガスGを流入させるように構成されている。膨張本体部29aの後側に配置される2つの縦セル29b,29cは、前後方向に沿って配置される区画部34の横棒部34aによって、ガス供給路部27と区画されるとともに上端側を閉塞されている。縦セル29bは、膨張本体部29aと下端側で連通されて、膨張本体部29aを経由して、下端側から内部に膨張用ガスGを流入可能に構成され、縦セル29cは、縦セル29bと上端側で連通されるもので、縦セル29bを経由して、上端側から内部に膨張用ガスGを流入可能に構成されている。
【0026】
後席用膨張部30は、エアバッグ23の膨張完了時に、窓W2の後半分からリヤピラー部RPにかけての車内側を覆うように配置されるもので、図4に示すように、その領域内に、後述する区画部36を配置させて、上端を前方に位置させ下端を後方に位置させるように上下方向に対して傾斜して配置される縦セル30aと、略矩形状に膨らむ膨張本体部30bと、を前後方向に沿って並設させて、構成されている。縦セル30aは、上端側をガス供給路部27に連通されるもので、上端側から内部に膨張用ガスGを流入させるように構成されている。膨張本体部30bは、前後方向に沿って配置される区画部36の横棒部36aによって、ガス供給路部27と区画されるとともに上端側を閉塞されており、下端側を縦セル30aと連通されて、縦セル30aを経由して、下端側から内部に膨張用ガスGを流入させるように構成されている。
【0027】
非膨張部31は、実施形態の場合、周縁部32、厚さ規制部33、区画部34,35,36、及び、板状部38から、構成されている。実施形態の場合、非膨張部31は、板状部38を除いて、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを結合させるように構成されている。
【0028】
周縁部32は、遮蔽本体部24における膨張部26の周囲を、開口28の領域を除いて、全周にわたって囲むように、形成されている。厚さ規制部33は、外形形状を、長軸を前後方向に略沿わせた略楕円形状として、上述したごとく、前席用膨張部29における膨張本体部29aの領域内に配置されている。区画部34は、前席用膨張部29の領域内に配置されるもので、後述する板状部38の前上縁から前方に延びてガス供給路部27と縦セル29b,29cとを区画する横棒部34aと、横棒部34aの前端から先端を前方に向けるように斜め下方に延びて膨張本体部29aと縦セル29bとを区画する縦棒部34bと、を備えている。区画部35は、前席用膨張部29の領域内に配置されるもので、周縁部32における遮蔽本体部24の下縁24b側の部位から上方に延びて、縦セル29b,29c間を区画するように、配置されている。区画部36は、後席用膨張部30の領域内に配置されるもので、周縁部32における遮蔽本体部24の後縁側の部位から前方に延びてガス供給路部27と膨張本体部30bとを区画する横棒部36aと、横棒部36aの前端から先端を後方に向けるように斜め下方に延びて縦セル30aと膨張本体部30bとを区画する縦棒部36bと、を備えている。
【0029】
板状部38は、ガス供給路部27の下方であって、前席用膨張部29と後席用膨張部30との間に、配設されるもので、外形形状を略台形状とされている。実施形態の場合、板状部38は、遮蔽本体部24の織成時に、膨張部26との境界部位に配置される周縁部32の部位を除いて、膨張部26と同様に、車内側壁部26aと車外側壁部26bとに分離させるように形成し、一方の壁部を略全域にわたって切り抜いて、構成されている(図4の括弧内参照)。実施形態の場合、板状部38は、車内側の壁部を切り抜かれることとなって、肉厚を、周囲の周縁部32(非膨張部31)の肉厚の略半分として、構成されている。そして、板状部38は、遮蔽本体部24の織成時、コーティング層25の形成後に、車内側の壁部を切り欠いて、形成されていることから、コーティング層25を車外側の面のみに施された状態となる。なお、実施形態のエアバッグ23では、この板状部38の領域における車内側の壁部を切り抜いた切抜部位67は、接続口部50に転用されることとなる(図10参照)。
【0030】
取付部41は、遮蔽本体部24の上縁24a側から上方へ突出するように、複数(実施形態の場合、5個)配設されている。実施形態の場合、各取付部41は、図8に示すように、遮蔽本体部24と別体のポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、取付部本体42と、取付部本体42の下端から下方に延びるように構成されるラッピング部43と、を有した帯状として、構成されている。ラッピング部43は、エアバッグ23の折畳収納時に、折り崩れを防止可能に、折り畳まれた遮蔽本体部24の外周側に巻きかけられるもので、先端側に、取付部本体42とともに共締めされる連結片44を有している。また、このラッピング部43の長手方向側の中央付近には、エアバッグ23の展開膨張時に破断可能に、ミシン目状の切り込みからなる破断予定部43aが、前後方向に沿って形成されている(図5参照)。実施形態の場合、この破断予定部43aは、折り畳まれた遮蔽本体部24の下側に位置することとなる。また、実施形態の場合、取付部本体42は、二枚重ね状とされている(図2参照)。取付部本体42及び連結片44には、取付ボルト11を挿通可能な挿通孔42a,44aが、形成されている。そして、実施形態の場合、取付部41は、遮蔽本体部24の車内側壁部26a上に重ねられた状態で、取付部本体42の下端側を、遮蔽本体部24の上縁24aにおける周縁部32の部位に、縫合糸を用いて縫着されて、遮蔽本体部24に連結されている。接続口部50の前側に配置される取付部41は、開口28の領域内に配置されることから、縫合部位63Fの形成時に、共縫いされて、遮蔽本体部24に連結されている(図5参照)。
【0031】
取付ベルト46は、図4に示すように、遮蔽本体部24の前縁における下端付近から前方へ突出するような帯状とされるもので、遮蔽本体部24と別体のポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。取付ベルト46は、元部側を、遮蔽本体部24の前縁における周縁部32の部位に縫着されるもので、先端側に、取付ブラケット10と取付ボルト11とによりボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付片部47を備えている。実施形態の場合、取付片部47は、インナパネル2におけるフロントピラー部FPの下端近傍の部位に、取付固定されており、取付ベルト46は、エアバッグ23の膨張完了時に略前後方向に沿って配置されることとなる。
【0032】
接続口部50は、図8に示すように、遮蔽本体部24と別体とされるもので、図4,5に示すように、遮蔽本体部24の上縁24a側から上方に突出するとともに、遮蔽本体部24の膨張部26内に膨張用ガスGを流入可能に上下両端側を開口させた略筒状とされている。具体的には、接続口部50は、下端50b側を前方に向け、上端50a側を後方に向けるように、軸方向を上下方向に対して傾斜させた形状とされ、上端50a側の開口を、インフレーター14に接続させるための挿入用開口51として、下端50b側の開口を、遮蔽本体部24におけるガス供給路部27に連通させるように、構成されている。接続口部50は、実施形態の場合、遮蔽本体部24における前席用膨張部29の後端近傍となる縦セル29bの上方に、配置されている。さらに、接続口部50は、図7に示すように、遮蔽本体部24と連通される下端50b側の縁部50cを、上側に向けつつ、開口28の縁部28bと一致させるように反転させて、下端50b近傍部位を開口28の周縁28aに縫着されて、遮蔽本体部24に連結されている。接続口部50の下端50b側を開口28の周縁28aに縫着させる縫合部位62は、既述した遮蔽本体部24の開口28における残部28c,28dを閉塞させる縫合部位63F,63Bより若干上方となる位置において、前後方向に沿うように配置されている(図5参照)。
【0033】
実施形態の場合、接続口部50は、遮蔽本体部24の板状部38の領域における車内側の壁部を切り抜いた切抜部位67をさらに切り抜いて構成される接続口部用素材68から、形成されている(図10参照)。接続口部用素材68は、接続口部50を前縁側で連結させたような形状とされており、実施形態の場合、コーティング層69を内側に配置させるように、この前縁側の部位で折り返して二つ折りされた状態で、後縁側を相互に縫着させて、筒状として構成されている(図5,7参照)。
【0034】
また、実施形態のエアバッグ23では、図4〜6に示すように、遮蔽本体部24内に流入した膨張用ガスGの流入方向を制御するとともに、接続口部50及びガス供給路部27における接続口部近傍部位を保護するインナチューブ53が、接続口部50内に配設されている。インナチューブ53は、接続口部50の内周側を全域にわたって覆うように構成されるもので、内部に、ディフューザー布57を配置させて、構成されている。
【0035】
インナチューブ53は、略筒状として、接続口部50から、ガス供給路部27における接続口部50の下方となる領域にかけてを覆うように配設されるもので、実施形態の場合、図4,5に示すように、接続口部50の内部に挿入される流入側部55と、ガス供給路部27内における接続口部50の下方の領域に配置される流出側部56と、から構成されている。流入側部55は、接続口部50と略同一形状の筒状とされて、接続口部50と同様に、上下両端側を開口させて構成されている。流出側部56は、流入側部55の下端から前後両側に延びるように形成されて、前後両端側を開口させた略円筒状とされている。インフレーター14から吐出された膨張用ガスGは、流出側部56の前後両側の開口56a,56bから、前後方向側に沿うようにして、遮蔽本体部24のガス供給路部27内に流入することとなる。実施形態の場合、インナチューブ53は、前縁側で相互に連結させるとともに、さらに上縁側で相互に連結させた形状のインナチューブ用素材59を上縁側で折り返して二枚重ね形状としたものを、前縁側の部位で折り返して二つ折りし、開口部分を除いた後縁側と下縁側とで、それぞれ、縫着させるようにして、形成されている。すなわち、インナチューブ53は、全域にわたって二枚重ね状とされている。また、実施形態の場合、インナチューブ53は、流入側部55の長さ寸法を、接続口部50の長さ寸法より若干大きくして、流入側部55の上端55aを、接続口部50の挿入用開口51から突出させるように構成されている。この流入側部55における挿入用開口51から突出している部位は、接続口部50の外周側に配置されるように折り返されて、挿入用開口51の周縁に、上下両縁側となる部位で縫着され、車両搭載時における取付ブラケット17Fの保持環部18Fの抜け止め用のストッパ55bを構成している(図3,5参照)。
【0036】
ディフューザー布57は、インフレーター14におけるガス吐出口16aが配置される小径部16の外周側を覆うように、インナチューブ53における流入側部55内に配置されるもので、図8,12に示すように、幅寸法を、インフレーター14における小径部16を全域にわたって覆い可能とした略帯状とされている。そして、ディフューザー布57は、一端側をインナチューブ53の流入側部55に結合され、他端側を自由端として、自由端側からインフレーター14の外周側に巻きかけられるようにして、ガス吐出口16aの外周側を全周にわたって覆うように構成されている。詳細には、ディフューザー布57は、小径部16の外周側を、略2周半にわたって覆い可能な構成とされるもので、インナチューブ53の流入側部55に対してずれ不能に、最も外周側(流入側部55側)に配置される1巻き分(1周分)の領域を、外周側部57aとして、流入側部55に部分的に縫着されている。この外周側部57aは軸回り方向側の両端を、流入側部55に対して、上端側を除いて、軸方向に沿って縫着されている(図13のB参照)。また、ディフューザー布57において、外周側部57aの内周側に配置される1巻き半分(1周半分)の領域である内周側部57b(自由端側の部位)は、隣接する外周側部57aやインフレーター14の小径部16に対してずれ移動可能とするように、周囲の部材に固定されない状態で、単に、インフレーター14の小径部16の周囲に巻きかけられるようにして、配置されている。
【0037】
また、ディフューザー布57における上端側部位57cは、インナチューブ53とともに折り返されず、接続口部50における上端50a側の挿入用開口51から上方に突出するように、構成されている(図5参照)。そして、ディフューザー布57におけるこの上端側部位57cの領域には、ディフューザー布57の上縁(上端側部位57c)をインフレーター14の軸回り方向に沿って複数に分割する複数のスリット57dが、軸方向側の全域にわたって、形成されている(図8参照)。このスリット57dは、実施形態の場合、半ピッチごとに、形成されている。実施形態の場合、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材59とディフューザー布57とは、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布の表面にシリコン等からなるコーティング剤を塗布したコート布から、形成されている。実施形態の場合、インナチューブ53は、インナチューブ用素材59を二つ折りして製造されており、外周面側にコート面(コーティング層)を配置させるように構成されている。ディフューザー布57は、インフレーター14側となる内周面側に、コート面(コーティング層)を配置させるように、構成されている。
【0038】
次に、実施形態のエアバッグ23の製造について説明をする。まず、図9に示すように、遮蔽本体部素材66を、直列的に連続させ、かつ、複数個(実施形態の場合、3個)並設させるように織成されたエアバッグ用素材65の外表面側にコーティング剤を塗布してコーティング層25を形成する。次いで、このエアバッグ用素材65を裁断して、遮蔽本体部素材66を、形成する。その後、図10に示すように、この遮蔽本体部素材66の板状部38の部位の車内側の壁部を切り抜いて、切抜部位67を形成する。次いで、切抜部位67を切り抜いて、接続口部用素材68を形成する。また、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材59は、予め、二つ折りした状態で、ディフューザー布57を縫着させておく(図12のA,B参照)。
【0039】
その後、接続口部用素材68を、挿入用開口51を下方に位置させるように、反転させる。具体的には、接続口部用素材68を、コーティング層69を外周面側に位置させるように、前縁側の折目C1の部位で折り返して、挿入用開口51(上端50a)を下方に位置させ、下端50bを上方に位置させるように、反転させ(図11のA参照)、この反転させた状態の接続口部用素材68を、開口28から、遮蔽本体部素材66(遮蔽本体部24)内部に挿入させて、縁部50cを開口28の縁部28bと一致させるように、接続口部用素材68を配置させ、下端50b近傍部位を開口28の周縁28aに、縫合糸を用いて縫着させ、縫合部位62を形成する(図11のB参照)。その後、接続口部用素材68を、縫合部位62近傍の部位で折り返しつつ、反転状態を解除させる(図11のC,D参照)。このとき、接続口部用素材68は、コーティング層69を内周面側に位置させるようにして、折目C1の部位で再度折り返されることとなる。ディフューザー布57を、図12のB,Cに示すように、内周側部58bにおける長手方向側の縁部側からロール折りし、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材59を、ディフューザー布57を間に挟むようにして折り返して(図12のC,D参照)、この折り返した状態を維持しつつ、インナチューブ53を、開口28の残部28dを挿通させるようにして、接続口部用素材68間に挟むように配置させる(図13のA,B参照)。
【0040】
その後、開口28の残部28cを縫着させて、縫合部位63Fを形成し、開口28の残部28dを縫着させると同時に、接続口部用素材68の後縁側と、インナチューブ53の後縁側とを共縫いするようにして、ガス供給路部27の上縁から接続口部50の後縁側にかけて縫合部位63Bを形成し、接続口部50及びインナチューブ53を形成する(図13のC参照)。次いで、図14のA,Bに示すように、インナチューブ53において、接続口部50の挿入用開口51から突出している流入側部55の上端55a側の部位を、接続口部50の外周側に配置させるように折り返し、接続口部50の上縁側と下縁側との部位において、縫着させて、ストッパ55bを形成する。次いで、取付部41と取付ベルト46とを、遮蔽本体部24の所定箇所に縫着させれば、エアバッグ23を製造することができる。
【0041】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、エアバッグ23を折り畳む。具体的には、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを重ねて平らに展開した状態から、遮蔽本体部24におけるガス供給路部27の領域を、前後方向に沿った折目を付けて蛇腹折りし、ガス供給路部27より下方の領域を、下縁24bを車外側に向けて巻くようにロール折りして、遮蔽本体部24を折り畳む。そして、遮蔽本体部24の折り畳みが完了したならば、各取付部41のラッピング部43を折り畳まれた遮蔽本体部24の周囲に巻きかけるようにして、ラッピング部43の先端側に形成される連結片44を、取付部本体42の車外側に重ねるように配置させ、連結片44と取付部本体42とを間に挟むようにして、取付部41(取付部本体42及び連結片44)に、取付ブラケット10を取り付ける。また、取付ベルト46の先端側に形成される取付片部47にも、取付ブラケット10を取り付けておく。インフレーター14を、小径部16をインナチューブ53のディフューザー布57の内周側に挿入させるようにして、接続口部50に挿入させる。前側の取付ブラケット17Fの保持環部18Fを接続口部50に外装させ、後側の取付ブラケット17Bの保持環部18Bをインフレーター14の本体15に外装させて、インフレーター14に取付ブラケット17F,17Bを取り付け、エアバッグ組付体を形成しておく。
【0042】
その後、各取付ブラケット10,17を、インナパネル2の所定位置に配置させて、取付ボルト11,20を利用して取付固定し、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター14に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とをボディ1に取り付け、さらに、リヤピラーガーニッシュ6とセンターピラーガーニッシュ7とをボディ1に取り付ければ、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0043】
エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、インフレーター14が作動されれば、インフレーター14からの膨張用ガスGが、図4の二点鎖線に示すごとく、エアバッグ23の遮蔽本体部24内に流入し、エアバッグ23の遮蔽本体部24が、ラッピング部43の破断予定部43aを破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁で構成されるエアバッグカバー8を押し開いて下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0044】
そして、実施形態のエアバッグ23では、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを重ねるように平らに展開した形状を略長方形板状とした遮蔽本体部24のみが、袋織りから形成されており、遮蔽本体部24の上縁24aから上方に突出するように形成される取付部41及び接続口部50は、遮蔽本体部24と別体とされている。そのため、部分的に突出する部位のない略長方形状の遮蔽本体部24のみが、長尺状のシート体からなるエアバッグ用素材65を裁断して形成されることから、エアバッグ23の製造時に、エアバッグ用素材65から発生する端材の量を低減させることができて、エアバッグ用素材65の歩留まりを良好とすることができる。
【0045】
したがって、実施形態のエアバッグ23では、歩留まりを良好として、安価に製造することができる。
【0046】
また、実施形態のエアバッグ23では、接続口部50を遮蔽本体部24と別体の布材から、構成していることから、実施形態のエアバッグ23のごとく、接続口部用素材68として、片面にコーティング層69を有したコート布を使用する場合、このコーティング層69を、内周面側に配置させるようにして、接続口部50を形成することができる。従来のごとく、接続口部を遮蔽本体部と一体的に袋織りしたエアバッグの場合、コーティング層は、エアバッグの外表面側のみに、形成されることとなる。しかしながら、接続口部の部位は、インフレーターから吐出された高温の膨張用ガスが内部を流れることから、耐熱性や耐久性等を考慮すれば、コーティング層を、膨張用ガスの当たる内周面側に配置させることが好ましく、実施形態のエアバッグ23では、従来のエアバッグと比較して、接続口部50自体の耐熱性や耐久性も向上させることができる。
【0047】
さらに、実施形態のエアバッグ23では、遮蔽本体部24の上縁24a側に、接続口部50連結用の開口28が、形成されており、接続口部50は、遮蔽本体部24と連通される下端50b側の縁部50cを上側に向けるように反転させて、開口28の周縁28aに縫着させて、遮蔽本体部24に連結されている。すなわち、実施形態のエアバッグ23では、表裏を反転させた状態の接続口部50(接続口部用素材68)を、上側に向けられた下端50b側の縁部50cを、開口28の縁部28bと一致させるように配置させて、この縁部40cを開口28の周縁28aに縫着させ、接続口部50を再度反転させれば、接続口部50の下端50b側の縁部50cを、遮蔽本体部24に連結させることができる(図11参照)。そのため、接続口部50の下端50b側の縁部50cと開口28の周縁28aとの縫着作業が容易であり、エアバッグ23の製造工数を低減させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、接続口部の下端側を、縁部を上側に向けるように反転させて開口の周縁に縫着させなくともよく、エアバッグとして、接続口部の下端側を、反転させずに、縁部を下側に向けた状態で、開口の周縁に当接させ、接着剤や縫合糸等を用いて、縁部を開口周縁に結合させる構成としてもよい。
【0048】
さらにまた、実施形態では、エアバッグ用素材65を直線的に裁断すれば、遮蔽本体部用素材66を製造できることから、エアバッグ用素材65を歩留まりを良好として裁断できる。また、実施形態のエアバッグ23では、従来の接続口部を一体的に配設させた頭部保護エアバッグのごとく、エアバッグ用素材から、部分的に突出した形状のエアバッグを裁断しなくともよく、直線的な裁断作業で、遮蔽本体部用素材66を製造できることから、レーザーカッタが不要となって、コールドカッタによる裁断が可能となる。そのため、製造時のイニシャルコストを低減させることができると同時に、製造工数も低減させることができる。
【0049】
さらにまた、実施形態のエアバッグ23では、接続口部50を構成する接続口部用素材68を、遮蔽本体部24における非膨張部31の部位である板状部38の車内側の壁部を切り抜いた切抜部位67から形成していることから、遮蔽本体部24の製造時に、同時に、別体の接続口部用素材68を製造することができる。そのため、接続口部用素材を、別の基材から形成する場合と比較して、製造コストを低減させることができる。
【0050】
なお、実施形態のエアバッグ23では、板状部38の部位を、車内側壁部26aと車外側壁部26bとに分離させるように織成して、車内側の壁部のみを切り抜いて、接続口部50に転用しているが、板状部の形状や、板状部から切り抜いて形成する部材は、これに限られるものではない。例えば、板状部の部位を、他の非膨張部と同様に、車内側壁部と車外側壁部とを結合させた一枚状として、この部位を切り抜いて、接続口部に転用してもよく、また、実施形態と同様に、板状部を車内側壁部と車外側壁部とに分離させるように織成して、両方の壁部から、接続口部やインナチューブ、取付部等を切り抜くように、構成してもよい。一例として、図15に、板状部38Aを、他の非膨張部と同様に、車内側壁部と車外側壁部とを結合させた一枚状として、この部位を切り抜いて、接続口部に転用したエアバッグ23Aを示すが、このような構成のように、板状部38Aにおいて、接続口部用素材を切り抜いた開口38aが形成される場合、この開口38aを、別体の閉塞部材71により、閉塞させる構成とすることもできる。このような構成のエアバッグ23Aでは、エアバッグ23Aの膨張完了時に、乗員の頭部を保護する保護エリアから外れた非膨張部の部位(板状部38Aの領域)においても、窓の車内側を全域にわたって覆うことができることから、仮に、乗員の頭部が板状部38Aの領域に当たることとなっても、この乗員の頭部が窓と接触することを防止できる。また、この場合、閉塞部材71をノンコート布から構成することもできることから、実施形態のごとく、外周面側にコーティング層25Aを全面にわたって形成したエアバッグ23Aの製造コストを一層低減させることができ、エアバッグ自体を軽量化することも可能となる。
【0051】
また、実施形態のエアバッグ23では、接続口部50内にインナチューブ53が配設される構成であるものの、実施形態では、インナチューブ53を構成するインナチューブ用素材59の後縁側が、接続口部50を構成する接続口部用素材68の後縁側と共縫いされており、接続口部50の製造時に、同時に、後縁側を共縫いされて、接続口部50に連結されていることから、予め製造した接続口部の内部にインナチューブを挿入させる場合と比較して、製造作業が容易であり、製造コスト及び工数を低減させることができる。
【0052】
なお、実施形態では、接続口部50内に布製のインナチューブ53とディフューザー布57とを配置させている構成であるが、図16,17に示すごとく、インフレーター14に、小径部16の周囲を覆って延びるようなディフューザー74を連結させて、接続口部50B内にインナチューブを配設させない構成のエアバッグ23Bを使用してもよい。このディフューザー74は、元部側の部位をインフレーター14における本体15の先端側(小径部16側)にかしめることにより、インフレーター14に連結されるもので、軸方向を前後方向に沿わせるとともに、先端側を閉塞されている。また、ディフューザー74の先端近傍には、エアバッグ23B(遮蔽本体部24B)内へ膨張用ガスを噴出させるガス噴出孔74a,74aが、ディフューザー74の軸心を中心として点対称となる2箇所に、形成されている。図例の場合、ガス噴出孔74aは、車内外方向で対称となる2箇所に、形成されている(図17参照)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態を示す概略正面図である。
【図2】図1におけるII−II部位の概略断面図である。
【図3】実施形態の頭部保護エアバッグ装置におけるセンターピラー部の上方付近を示す部分拡大正面図であり、ルーフヘッドライニングを省略した状態を示す。
【図4】実施形態の頭部保護エアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【図5】図4のエアバッグにおける接続口部付近を示す部分拡大正面図である。
【図6】図5におけるVI−VI部位の断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII部位の断面図である。
【図8】実施形態の頭部保護エアバッグを構成する部材を平らに展開した状態を示す正面図である。
【図9】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、エアバッグ用基材を示す正面図である。
【図10】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、板状部を切り抜いて切抜部位を形成するとともに、切抜部位から接続口部用素材を切り抜く工程を説明する概略図である。
【図11】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、遮蔽本体部素材に接続口部用素材を連結させる工程を説明する概略図である。
【図12】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、インナチューブを製造する工程を説明する概略図である。
【図13】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、接続口部内にインナチューブを挿入させ、接続口部とインナチューブとを形成する工程を説明する概略図である。
【図14】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、接続口部の上端側にストッパを形成する工程を説明する概略図である。
【図15】本発明の他の形態である頭部保護エアバッグにおいて、板状部付近を示す部分拡大正面図である。
【図16】本発明のさらに他の形態である頭部保護エアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置において、センターピラー部の上方付近を示す部分拡大正面図であり、ルーフヘッドライニングを省略した状態を示す。
【図17】図16のXVII−XVII部位の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1…ボディ、
8…エアバッグカバー、
14…インフレーター、
23…エアバッグ、
24…遮蔽本体部、
26…膨張部、
26a…車内側壁部、
26b…車外側壁部、
28…開口、
28a…周縁、
31…非膨張部、
38,38A…板状部、
38a…開口、
41…取付部、
50…接続口部、
50b…下端、
51…挿入用開口、
62,63F,63B…縫合部位、
65…エアバッグ用素材、
66…遮蔽本体部用素材、
67…切抜部位、
68…接続口部用素材、
71…閉塞部材、
G…膨張用ガス、
V…車両、
W1,W2…窓、
M…頭部保護エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納部位から下方に突出しつつ、前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグであって、
車内側壁部と車外側壁部との間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部と、内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部と、を有して、袋織りして製造されるとともに、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形板状として、膨張完了時に前記窓の車内側を覆う構成とされる遮蔽本体部と、
該遮蔽本体部の上縁側から上方に突出するとともに、前記遮蔽本体部の上縁を前記窓の上縁側に取り付ける複数の取付部と、
前記遮蔽本体部の上縁側から上方に突出するとともに、上端側に、前記インフレーターに接続させるための挿入用開口を有して、前記遮蔽本体部の前記膨張部内に膨脹用ガスを流入させる略筒状の接続口部と、
を備え、
前記取付部及び前記接続口部が、袋織りされた前記遮蔽本体部と別体とされて、前記遮蔽本体部に連結されて構成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ。
【請求項2】
前記遮蔽本体部の上縁側に、前記接続口部連結用の開口が、形成され、
前記接続口部が、前記遮蔽本体部と連通される下縁側を、上側に向けるように反転させて、前記開口の周縁に縫着されて、前記遮蔽本体部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ。
【請求項3】
前記接続口部を構成する接続口部用素材が、前記遮蔽本体部における非膨張部の部位から切り抜かれて、形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ。
【請求項4】
前記非膨張部において、前記接続口部用素材を切り抜いて形成される開口が、別体の閉塞部材により、閉塞されていることを特徴とする請求項3に記載の頭部保護エアバッグ。
【請求項5】
車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨脹用ガスを流入させて収納部位から下方に突出しつつ、前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグの製造方法であって、
該エアバッグが、
車内側壁部と車外側壁部との間に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部と、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させるように構成されて内部に膨張用ガスを流入させない非膨張部と、を有して、袋織りして製造されるとともに、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形板状として、膨張完了時に前記窓の車内側を覆う構成とされる遮蔽本体部と、
該遮蔽本体部の上縁側から突出するように形成されて前記遮蔽本体部を前記窓の上縁側に取り付けるとともに、前記遮蔽本体部と別体とされて前記遮蔽本体部に結合される複数の取付部と、
前記遮蔽本体部の上縁側から上方に突出するとともに、上端側に前記インフレーターに接続させるための挿入用開口を有して、前記遮蔽本体部の前記膨張部内に膨脹用ガスを流入させる略筒状とされる接続口部と、
を備える構成とされ、
前記遮蔽本体部が、遮蔽本体部素材を、直列的に連続させ、かつ、複数個並設させるように織成させたエアバッグ用素材を裁断して、製造されるとともに、上縁側の一部を開口させるようにして、製造され、
前記遮蔽本体部の上縁側に、前記取付部を結合させ、
前記接続口部を構成する接続口部用素材を、
前記挿入用開口を構成する上縁を下方に位置させるように、反転させた状態で、前記開口から、前記遮蔽本体部内部に挿入させて、前記遮蔽本体部と接続される下縁を、前記遮蔽本体部における開口周縁に、縫合糸を用いて縫着させ、
その後、反転状態を解除するように、前記遮蔽本体部から突出させ、前後方向側の縁部相互を結合させ、かつ、前記遮蔽本体部の開口の残部を相互に結合させて、前記接続口部を、形成するとともに、前記遮蔽本体部に対して連結させていることを特徴とする頭部保護エアバッグの製造方法。
【請求項6】
前記接続口部用素材が、前記遮蔽本体部における非膨張部の部位から切り抜かれて、形成されていることを特徴とする請求項5に記載の頭部保護エアバッグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−89544(P2010−89544A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258800(P2008−258800)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】