説明

頭部装着型遠隔撮像システム、頭部装着撮像装置、撮像方向表示方法

【課題】撮像方向を表示することができる頭部装着型遠隔撮像システム、頭部装着撮像装置を提供する。
【解決手段】頭部装着部1に回動可能に取り付けられた撮像部40と、撮像部40を頭部装着部1に対して回動させる回動機構と、頭部装着部1に対する撮像部40の回転角を検知する回転角センサーと、頭部装着側表示部30を有する頭部装着撮像装置と、撮像部40で撮像された撮像データを表示する遠隔側画像表示部120と、入力部130を有する遠隔側装置とから構成され、入力部130に操作が入力された場合には、前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で撮像部40を回動させ、頭部装着側表示部30は撮像方向表示を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の頭部に装着され、作業者の視界方向を撮像することができる頭部装着撮像装置及びこれを用いた頭部装着型遠隔撮像システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠隔地にある撮像装置の撮像方向を変化させて撮像することができる技術が提案されている。そして、特許文献2には、ユーザの頭部に装着され、ユーザが画像を視認することができるヘッドマウントディスプレイが提案されている。特許文献1に示される撮像装置を、特許文献2に示されるようなヘッドマウントディスプレイに取り付けたならば、ユーザはハンドフリーで撮像することができるともに、画像も同時に視認することがきる。
【0003】
このような構成のヘッドマウントディスプレイは、作業支援に使用されることが期待されている。例えば、作業者は作業を行いながら、作業者の視界方向を撮像して作業支援者に送信し、作業者から遠隔地にいる作業支援者は、撮像画像に基づき、ヘッドマウントディスプレイに指示内容を表示させたり、図面やマニュアルを表示させたりすることにより、作業支援を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−27572号公報
【特許文献2】特開2001−117046公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業支援者は、作業現場の状況を把握するために、作業者の視界方向以外を撮像したい場合がある。前記した特許文献1に示される技術によれば、作業支援者は、作業者の視界方向とは関係無く、撮像装置を回動させることにより撮像したい方向を撮像することができる。しかしながら、作業者は撮像方向を認識することができないため、現在何が撮像されているのかを認識することができず、一方で、作業支援者は作業者の視界方向を認識することができないため、作業者が何を見ているのかを認識することができず、円滑な作業支援に支障をきたすという問題があった。
本発明は、上記問題を解決し、撮像方向を表示することができる頭部装着型遠隔撮像システム、頭部装着撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有する頭部装着撮像装置と、
前記頭部装着側通信部と通信し、前記撮像データを受信する遠隔側通信部と、
前記遠隔側通信部が受信した撮像データを表示する遠隔側画像表示部と、
前記撮像部を回動させるための操作を受け付ける入力部を有する遠隔側装置とから構成され、
前記入力部に操作が入力された場合には、前記遠隔側通信部は、前記入力部に入力された操作に応じた操作情報を前記頭部装着側通信部に送信し、
前記頭部装着側通信部が前記操作情報を受信した場合には、前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させ、
前記頭部装着側表示部は、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記頭部装着側通信部は、前記回転角センサーが検知した回転角情報を、前記遠隔側通信部に送信し、
前記遠隔側装置は、
前記回転角情報から、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を算出する頭部装着部方向算出部と、
前記頭部装着部方向算出部の算出結果に基づき、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を表す画像である頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を遠隔側画像表示部が表示する撮像データと合成させる頭部装着部方向画像生成手段とを更に有し、
前記遠隔指示側画像表示部は、前記頭部装着部方向画像生成手段によって前記頭部装着部方向画像が合成された撮像データを表示することを特徴とする。
これにより、遠隔指示側画像表示部で頭部装着部の前方方向が表示されるので、作業支援者が、頭部装着部の前方方向、つまり、作業者の視界方向を認識することが可能となる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記頭部装着撮像装置は、
前記回転角情報から、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を算出する頭部装着部方向算出部と、
前記頭部装着部方向算出部の算出結果に基づき、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を表す画像である頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる頭部装着部方向画像生成手段とを更に有し、
前記頭部装着側画像表示部は、前記頭部装着部方向画像生成手段によって頭部装着部方向画像が合成された撮像データを表示することを特徴とする請求項2に記載の頭部装着型遠隔撮像システム。
これにより、作業者は、作業支援者が見ている画像を確認することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、
前記撮像方向表示生成手段は、前記回転角センサーが検知した回転角情報に応じた撮像方向表示を生成することを特徴とする。
これにより、作業者は、撮像方向を正確に認識することが可能となる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有し、
前記頭部装着側通信部が、前記回動機構で撮像部を回動させる操作情報を受信した場合には、
前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させ、
前記頭部装着側表示部は、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有する頭部装着撮像装置と、
前記頭部装着側通信部と通信し、前記撮像データを受信する遠隔側通信部と、
前記遠隔側通信部が受信した撮像データを表示する遠隔側画像表示部と、
遠隔操作者による前記撮像部を回動させるための操作を受け付ける入力部を有する遠隔側装置を備える頭部装着撮像装置遠隔操作システムにおいて実行され、
前記入力部に遠隔操作者による操作が入力された場合には、前記遠隔側通信部が、前記入力部に入力された操作に応じた操作情報を前記頭部装着側通信部に送信する操作情報送信処理と、
前記頭部装着側通信部が前記操作情報を受信した場合には、前記回動機構が前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させる撮像部回動処理と、
前記頭部装着側表示部が、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示する撮像方向表示処理を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業者の頭部に装着される頭部装着部と、前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有する頭部装着撮像装置と、前記頭部装着側通信部と通信し、前記撮像データを受信する遠隔側通信部と、前記遠隔側通信部が受信した撮像データを表示する遠隔側画像表示部と、前記撮像部を回動させるための操作を受け付ける入力部を有する遠隔側装置とから構成され、前記入力部に操作が入力された場合には、前記遠隔側通信部は、前記入力部に入力された操作に応じた操作情報を前記頭部装着側通信部に送信し、前記頭部装着側通信部が前記操作情報を受信した場合には、前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させ、前記頭部装着側表示部は、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示することを特徴とする。
これにより、頭部装着側表示部で撮像方向が表示されるので、作業者が撮像方向を認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の概要図である。
【図2】頭部装着撮像装置のブロック図である。
【図3】遠隔側装置のブロック図である。
【図4】頭部装着撮像装置及び遠隔側装置のメインフロー図である。
【図5】撮像方向表示の別例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(頭部装着型遠隔撮像システムの構成)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。図1において、(A)は頭部装着型遠隔撮像システムの構成を表し、(B)は頭部装着側表示部30が表示している画像を表し、(C)は遠隔側画像表示部120が表示している画像を表している。図1の(A)に示されるように、本発明の頭部装着型遠隔撮像システムは、作業者の頭部に装着される頭部装着撮像装置90と、作業支援者から離れた場所にいる作業支援者が使用する遠隔側装置100とから構成されている。
【0015】
頭部装着撮像装置90は、頭部装着部1、制御部20、頭部装着側表示部30、撮像部40を有している。本実施形態では、頭部装着部1は、眼鏡のフレーム形状であるが、ヘルメット形状等であっても差し支え無い。
【0016】
頭部装着側表示部30は、頭部装着部1の側前部に取り付けられている。頭部装着側表示部30は、画像を生成し、当該画像を作業者に視認させるものである。本実施形態では、画頭部装着側表示部30は、レーザ光を直接作業者の眼球に走査することにより、作業者に画像を視認させる網膜走査型ディスプレイである。頭部装着側表示部30として、網膜走査型ディスプレイを使用すると、作業者は画像表示部52が生成する画像を視認することができると同時に、外界もまた視認することができる。なお、画像表示部52は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、デジタルミラーデバイス (Digital Mirror Device)などの空間光変調器を使用したディスプレイなど、その他の装置を用いた構成であっても差し支えない。
【0017】
撮像部40は、頭部装着部1の前部に、上下・左右方向に回動可能に取り付けられている。撮像部40は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子41(図2に示す)と、撮像素子41に光を結像させる結像光学系を有している。頭部装着撮像装置90には、撮像部40を上下・左右方向に回動させるための回動機構が設けられている。回動機構は、ステッピングモータ等のアクチュエータ42(図2に示す)、アクチュエータ42による駆動力を撮像部40に伝達させるギア等の伝達手段を有している。頭部装着撮像装置90には、頭部装着部1に対する撮像部40の上下・左右方向の回転角を検知する回転角センサー43(図2に示す)が設けられている。
【0018】
制御部20は、頭部装着側表示部30及び撮像部40と接続している。制御部20は、頭部装着側表示部30に画像信号を出力する。また、制御部20は、撮像素子41から出力された信号から、撮像データを生成する。制御部20は、遠隔側装置100と通信する頭部装着側通信部14を有している。
【0019】
遠隔側装置100は、いわゆるパーソナルコンピュータ等で構成され、遠隔側装置本体110、遠隔側画像表示部120、入力部130を有している。遠隔側装置本体110は、頭部装着撮像装置90の制御部20と通信する遠隔側通信部114を有している。遠隔側画像表示部120は、液晶ディスプレイ等で構成されている。頭部装着側通信部14と遠隔側通信部114は、有線LAN、無線LAN、インターネット回線等の通信回線999で接続され、前記した通信方式に対応した通信インターフェースで構成されている。入力部130は、作業支援者の入力操作を受け付けるものであり、いわゆるキーボード、マウスやトラックパッド等のポインティングデバイスが含まれる。
【0020】
(頭部装着型遠隔撮像システムの概要)
撮像部40で撮像され、制御部20で生成された撮像データは、遠隔側装置本体110に送信され、遠隔側画像表示部120で表示される。作業支援者は、入力部130を操作することにより、撮像部40を上下・左右方向に回動させることができる。本発明では、図1の(B)に示されるように、撮像部40の撮像方向が、頭部装着側表示部30で表示される。また、図1の(C)に示されるように、作業者の視界方向が、遠隔側画像表示部120で表示される。このため、作業者は撮像部40の撮像方向を認識することができ、また、作業支援者は作業者の視界方向を認識することができるので、円滑に作業支援を行うことが可能となる。
【0021】
(頭部装着撮像装置のブロック図)
以下に、図2を用いて、頭部装着撮像装置90のブロック図について説明する。頭部装着撮像装置90を構成する制御部20は、CPU11、RAM12、記憶部13、頭部装着側通信部14、表示制御部15、信号処理部16、ドライバ17、インターフェース18、操作部19を有している。これらの構成は、相互にバス9で接続されている。表示制御部15は、頭部装着側表示部30と接続している。信号処理部16は、撮像素子41と接続している。ドライバ17は、アクチュエータ42と接続している。インターフェース18は、回転角センサー43と接続している。
【0022】
CPU(Central Processing Unit)11は、RAM(Random Access Memory)12、記憶部13と協動して、各種演算、処理を行う。
RAM12は、CPU11で処理されるプログラムや、CPU11が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。
【0023】
記憶部13には、不揮発性メモリーやハードディスク等の補助記憶装置が含まれる。記憶部13には、制御部20を制御する各種プログラムやパラメータが記憶されている。当該各種プログラムが、CPU11で処理されることにより、各種機能が実現される。
記憶部13には、撮像部回動プログラム13aと、撮像方向表示生成プログラム13b、頭部装着部方向算出プログラム13c、頭部装着部方向画像生成プログラム13dが記憶されている。
撮像部回動プログラム13aは、遠隔側装置100から送信された操作情報に基づき、撮像部40を回動させる命令をドライバ17に出力するプログラムである。
撮像方向表示生成プログラム13bは、回転角センサー43によって検知された撮像部40の頭部装着部1に対する回転角情報に基づき、頭部装着側表示部30で撮像方向表示を表示させる描画命令を表示制御部に出力するプログラムである。
頭部装着部方向算出プログラム13cは、回転角情報に基づき、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向、つまり、作業者の視界方向を算出するプログラムである。
頭部装着部方向画像生成プログラム13dは、前記算出された前方方向の情報に基づき頭部装着部方向画像を生成し、この頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる描画命令を表示制御部15に出力するプログラムである。
【0024】
表示制御部15は、頭部装着側表示部30に出力する画像信号を生成するものであり、画像処理回路及びビデオメモリを有している。
信号処理部16は、撮像素子41から出力された信号に基づいて、撮像データを生成するものである。信号処理部16は、アナログ信号を量子化してデジタル信号に変換するADコンバータ、変換されたデジタル信号に基づいて撮像データを生成する信号処理回路を有している。
ドライバ17は、アクチュエータ42に出力する駆動電流を生成するものである。
インターフェース18は、信号の物理的・論理的な形式を変換するものである。
操作部19は、作業者の操作が入力されるものであり、物理的なボタンやタッチパネル等で構成されている。操作部19が出力した操作信号は、インターフェース18で信号の物理的・論理的な形式が変換されて、操作情報としてバス9に入力される。
【0025】
回転角センサー43は、撮像部40の頭部装着部1に対する上下方向及び左右方向の回転角を検出するものであり、ロータリーエンコーダ等で構成されている。回転角センサー43から出力された回転角信号は、インターフェース18で信号の物理的・論理的な形式が変換されて、回転角情報としてバス9に入力される。
【0026】
(遠隔側装置のブロック図)
次に、図3を用いて、遠隔側装置100のブロック図について説明する。遠隔側装置100の遠隔装置本体110は、CPU111、RAM112、記憶部113、遠隔側通信部114、表示制御部115、インターフェース116を有している。これらの構成は、相互にバス119で接続されている。表示制御部115は、遠隔側表示部120と接続している。インターフェース116は、入力部130と接続している。
【0027】
CPU111は、RAM112、記憶部113と協動して、各種演算、処理を行う。
RAM112は、CPU111で処理されるプログラムや、CPU111が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。
【0028】
記憶部113には、不揮発性メモリーやハードディスク等の補助記憶装置が含まれる。記憶部113には、遠隔側装置本体110を制御する各種プログラムやパラメータが記憶されている。当該各種プログラムが、CPU111で処理されることにより、各種機能が実現される。
記憶部113には、撮像画像表示プログラム113a、頭部装着部方向算出プログラム113b、頭部装着部方向画像生成プログラム113cが記憶されている。
撮像画像表示プログラム113aは、遠隔側通信部114が受信した撮像データに基づき、遠隔側表示部120で撮像画像を表示させる描画命令を表示制御部115に出力するプログラムである。
頭部装着部方向算出プログラム113bは、回転角情報に基づき、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向、つまり、作業者の視界方向を算出するプログラムである。
頭部装着部方向画像生成プログラム113cは、前記算出された前方方向の情報に基づき頭部装着部方向画像を生成し、この頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる描画命令を表示制御部115に出力するプログラムである。
【0029】
表示制御部115は、遠隔側表示部120に出力する画像信号を生成するものであり、画像処理回路及びビデオメモリを有している。
インターフェース116は、入力部130から入力された入力信号の物理的・論理的な形式を変換して、操作情報としてバス119に出力する。
【0030】
(頭部装着撮像装置のメイン処理)
次に、図4を用いて、頭部装着撮像装置90のメイン処理の説明をする。頭部装着撮像装置90に電源が投入されると、頭部装着撮像装置90のメイン処理が開始し、S11の処理に進む。
【0031】
S11「撮像開始」の処理において、CPU12は、撮像部40で撮像させる命令を、信号処理部16に出力する。撮像部40で撮像され、信号処理部16で生成された撮像データは、RAM12又は記憶部13に記憶され、頭部装着側通信部14を介して、遠隔側通信部114に順次送信される。S11の処理が終了すると、S12の処理に進む。
【0032】
S12「撮像部回転角検知開始」の処理において、CPU11は、インターフェース18に、回転角センサー43で撮像部40の頭部装着部1に対する上下・左右方向の回転角を検知させる命令を出力する。回転角センサー43で検知され、インターフェース18で生成された回転角情報は、RAM12又は記憶部13に記憶され、頭部装着側通信部14を介して、遠隔側通信部114に順次送信される。S12の処理が終了すると、S13の処理に進む。
【0033】
S13「操作情報受信」の判断処理において、CPU11は、頭部装着側通信部14が操作情報を受信したか否かを判断する。CPU11が、頭部装着側通信部14が操作情報を受信したと判断した場合には(S13の判断処理がYES)、操作情報をRAM12又は記憶部13に記憶させるとともに、S14の処理に進む。一方で、CPU11が、頭部装着側通信部14が操作情報を受信したと判断しない場合には(S13の判断処理がNO)、S14の処理に進まない。
【0034】
S14「撮像部回動」の処理において、撮像部回動プログラム13aは、RAM12又は記憶部13に記憶されている操作情報に応じた回転角で、アクチュエータ42で撮像部40を回動させる命令をドライバ17に出力する。また、撮像部回動プログラム13aは、回転角センサー43によって検知された撮像部40の回転角情報に基づき、操作情報に応じた回転角で、アクチュエータ42を停止させる命令をドライバ17に出力する。S14の処理が終了すると、S15の処理に進む。
【0035】
S15「撮像方向表示」の処理において、撮像方向表示生成プログラム13bは、RAM12又は記憶部13に記憶されている回転角情報に基づいて、頭部装着側表示部30で撮像方向表示を表示させる描画命令を表示制御部15に出力する。なお、撮像方向表示は、図1の(B)に示されるように、撮像部40が撮像している方向を表している表示である。なお、頭部装着側表示部30が、指示内容やマニュアル、図面等の画像を表示している場合には、撮像方向表示生成プログラム13bは、撮像方向表示と前記画像を合成した画像データを生成する描画命令を表示制御部15に出力する。なお、撮像方向表示生成プログラム13bは、回転角情報に応じた撮像方向表示を表示させる描画命令を表示制御部15に出力する。例えば、頭部装着部1の前方方向に対して、撮像部40が大きく回動している場合には、撮像方向表示が大きく又は長く表示される。これにより、作業者は、撮像方向を正確に認識することが可能となる。
S15の処理が終了すると、S16の判断処理に進む。
このように、作業者は、撮像部40が撮像している方向を、常に認識することができる。
【0036】
S16「撮像画像表示」の処理において、CPU11は、撮像画像を頭部装着側表示部30で表示させる操作情報がバス9に入力されたか否かを判断する。CPU11が、前記操作情報がバス9に入力されたと判断した場合には(S16の判断処理がYES)、S17の判断処理に進む。一方で、CPU11が、前記操作情報がバス9に入力されたと判断しない場合には(S16の判断処理がNO)、S13の判断処理に戻る。
【0037】
S17「頭部装着部前方方向算出」の判断処理において、頭部装着部方向算出プログラム13cは、RAM12又は記憶部13に記憶されている回転角情報に基づき、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向を算出し、頭部装着部方向情報としてRAM12又は記憶部13に記憶させる。具体的には、例えば、頭部装着側表示部30からの画像光が作業者の目に入射する入射方向は、頭部装着側表示部30の光学系の仕様や頭部装着部1への取り付け状態によって予め決まっている。この入射方向を作業者の視界方向、即ち頭部装着部1の前方方向とすることによって、回転角情報に基づき、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向が算出される。S17の処理が終了すると、S18の処理に進む。
【0038】
S18「撮像画像と頭部装着部方向情報を合成表示」の処理において、頭部装着部方向画像生成プログラム13dは、RAM12又は記憶部13に記憶されている頭部装着部方向情報に基づき、頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる描画命令を表示制御部15に出力する。なお、頭部装着部方向画像とは、図1の(d)に示されるように、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向、つまり、作業者の視界方向を表した画像である。このようにして、頭部装着側画像表示部120で、頭部装着部方向画像と合成された撮像データが表示される。このS18の処理において、作業者は、作業支援者が見ている画像を確認することができる。
S18の処理が終了すると、S13の判断処理に戻る。
【0039】
(遠隔側装置のメイン処理)
次に、図4を用いて、遠隔側装置100のメイン処理の説明をする。遠隔側装置100に電源が投入されると、遠隔側装置100のメイン処理が開始し、S31の判断処理に進む。
【0040】
S31「撮像データ受信」の判断処理において、CPU111は、遠隔側通信部114が撮像データを受信したか否かを判断する。CPU111が、遠隔側通信部114が撮像データを受信したと判断した場合には(S31の判断処理がYES)、CPU111は、撮像データのRAM112又は記憶部113への記憶を開始させ、S32の処理に進む。一方で、CPU111が、遠隔側通信部114が撮像データを受信したと判断しない場合には(S31の判断処理がNO)、S32の処理に進まない。
【0041】
S32「撮像画像表示開始」の処理において、撮像画像表示プログラム113aは、RAM112又は記憶部113に記憶されている撮像データに基づき、遠隔側表示部120で撮像画像を表示させる描画命令を表示制御部115に出力する。S32の処理が終了すると、S33の判断処理に進む。
【0042】
S33「回転角情報受信」の判断処理において、CPU111は、遠隔側通信部114が回転角情報を受信したか否かを判断する。CPU111が、遠隔側通信部114が回転角情報を受信したと判断した場合には(S33の判断処理がYES)、回転角情報をRAM112又は記憶部113に記憶させるとともに、S34の処理に進む。一方で、CPU111が、遠隔側通信部114が回転角情報を受信したと判断しない場合には(S33の判断処理がNO)、S34の処理に進まない。
【0043】
S34「頭部装着部前方方向算出」の処理において、頭部装着部方向算出プログラム113bは、RAM112又は記憶部113に記憶されている回転角情報に基づき、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向を算出し、頭部装着部方向情報としてRAM112又は記憶部113に記憶させる。S34の処理が終了すると、S35の処理に進む。
【0044】
S35「頭部装着部方向情報表示」の処理において、頭部装着部方向画像生成プログラム113cは、RAM112又は記憶部113に記憶されている頭部装着部方向情報に基づき、頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる描画命令を表示制御部115に出力する。なお、頭部装着部方向画像とは、図1の(C)に示されるように、撮像部40の撮像方向に対する頭部装着部1の前方方向、つまり、作業者の視界方向を表した画像である。このようにして、遠隔指示側画像表示部120で、頭部装着部方向画像と合成された撮像データが表示される。
S35の処理が終了すると、S36の判断処理に進む。
【0045】
S36「操作信号入力」の判断処理において、CPU111は、バス119に操作信号が入力されたか否かを判断する。CPU111が、バス119に操作情報が入力された判断した場合には(S36の判断処理がYES)、CPU111は操作情報をRAM112又は記憶部113に記憶させ、S37の処理に進む。一方で、CPU111が、バスに操作情報が入力された判断しない場合には(S36の判断処理がNO)、S37の処理に進まない。
【0046】
S37「操作情報送信」の処理において、CPU111はRAM112又は記憶部113に記憶されている操作情報を、遠隔側通信部114を介して、頭部装着撮像装置90に送信する。S37の処理が終了すると、S33の判断処理に戻る。
【0047】
以上説明した実施形態では、撮像部40を頭部装着部1に対して上下・左右方向に回動させているが、撮像部40を頭部装着部1に対して左右方向のみ回動させる実施形態、或いは、撮像部40を頭部装着部1に対して上下方向のみ回動させる実施形態であっても差し支え無い。
なお、S15の処理において頭部装着側表示部30で表示される撮像方向表示は、図5に示されるような3次元的な表示であっても差し支え無い。
また、以上説明した実施形態では、S17の処理において、頭部装着部方向算出プログラム13cが、頭部装着部方向情報を算出しているが、S17の処理で、遠隔側装置100の頭部装着部方向算出プログラム113bが算出した頭部装着部方向情報を頭部装着側通信部14が受信し、前記頭部装着部方向情報がRAM12又は記憶部13に記憶される実施形態であっても差し支え無い。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う頭部装着型遠隔撮像システム、頭部装着撮像装置、撮像方向表示方法もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0048】
1 頭部装着部
9 バス
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
14 頭部装着側通信部
15 表示制御部
16 信号処理部
17 ドライバ
18 インターフェース
19 操作部
20 制御部
30 頭部装着側表示部
40 撮像部
41 撮像素子
42 アクチュエータ
43 回転角センサー
90 頭部装着撮像装置
100 遠隔側装置
110 遠隔側装置本体
120 遠隔側画像表示部
130 入力部
999 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有する頭部装着撮像装置と、
前記頭部装着側通信部と通信し、前記撮像データを受信する遠隔側通信部と、
前記遠隔側通信部が受信した撮像データを表示する遠隔側画像表示部と、
前記撮像部を回動させるための操作を受け付ける入力部を有する遠隔側装置とから構成され、
前記入力部に操作が入力された場合には、前記遠隔側通信部は、前記入力部に入力された操作に応じた操作情報を前記頭部装着側通信部に送信し、
前記頭部装着側通信部が前記操作情報を受信した場合には、前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させ、
前記頭部装着側表示部は、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示することを特徴とする頭部装着型遠隔撮像システム。
【請求項2】
前記頭部装着側通信部は、前記回転角センサーが検知した回転角情報を、前記遠隔側通信部に送信し、
前記遠隔側装置は、
前記回転角情報から、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を算出する頭部装着部方向算出部と、
前記頭部装着部方向算出部の算出結果に基づき、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を表す画像である頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を遠隔側画像表示部が表示する撮像データと合成させる頭部装着部方向画像生成手段とを更に有し、
前記遠隔指示側画像表示部は、前記頭部装着部方向画像生成手段によって前記頭部装着部方向画像が合成された撮像データを表示することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記頭部装着撮像装置は、
前記回転角情報から、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を算出する頭部装着部方向算出部と、
前記頭部装着部方向算出部の算出結果に基づき、前記撮像部に対する前記頭部装着部の前方方向を表す画像である頭部装着部方向画像を生成し、当該頭部装着部方向画像を撮像データと合成させる頭部装着部方向画像生成手段とを更に有し、
前記頭部装着側画像表示部は、前記頭部装着部方向画像生成手段によって頭部装着部方向画像が合成された撮像データを表示することを特徴とする請求項2に記載の頭部装着型遠隔撮像システム。
【請求項4】
前記撮像方向表示生成手段は、前記回転角センサーが検知した回転角情報に応じた撮像方向表示を生成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の頭部装着型遠隔撮像システム。
【請求項5】
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有し、
前記頭部装着側通信部が、前記回動機構で撮像部を回動させる操作情報を受信した場合には、
前記回動機構は前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させ、
前記頭部装着側表示部は、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示することを特徴とする頭部装着撮像装置。
【請求項6】
作業者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に回動可能に取り付けられた撮像部と、
前記撮像部を前記頭部装着部に対して回動させる回動機構と、
前記頭部装着部に対する前記撮像部の回転角を検知する回転角センサーと、
前記頭部装着部に取り付けられ、作業者に画像を視認させる頭部装着側表示部と、
前記回転角センサーが検知した回転角情報に基づき、前記頭部装着部に対する前記撮像部の撮像方向表示を生成する撮像方向表示生成手段と、
外部と通信し、前記撮像部で撮像された撮像データを送信する頭部装着側通信部とを有する頭部装着撮像装置と、
前記頭部装着側通信部と通信し、前記撮像データを受信する遠隔側通信部と、
前記遠隔側通信部が受信した撮像データを表示する遠隔側画像表示部と、
遠隔操作者による前記撮像部を回動させるための操作を受け付ける入力部を有する遠隔側装置を備える頭部装着撮像装置遠隔操作システムにおいて実行され、
前記入力部に遠隔操作者による操作が入力された場合には、前記遠隔側通信部が、前記入力部に入力された操作に応じた操作情報を前記頭部装着側通信部に送信する操作情報送信処理と、
前記頭部装着側通信部が前記操作情報を受信した場合には、前記回動機構が前記操作情報に応じた回転角で前記撮像部を回動させる撮像部回動処理と、
前記頭部装着側表示部が、前記撮像方向表示生成手段が生成した撮像方向表示を表示する撮像方向表示処理を有することを特徴とする頭部装着撮像装置の撮像方向表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156930(P2012−156930A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16206(P2011−16206)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】