説明

顔画像取得システム、顔画像取得方法および顔画像取得プログラム

【課題】、その目的は、車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システム、顔画像取得方法および顔画像取得プログラムを提供することにある。
【解決手段】車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システム1であって、前記後方側から、反射手段に写る画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システム、その方法、および、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
警察車輌が、例えば、交通違反車輌、盗難車輌、犯人車輌等を追跡する際に、追跡したにもかかわらず、容疑者を特定できないまま、取り逃がしたり、無理な追跡によって二次的な事故を誘発する場合がある。また、報道車輌が、追跡する場合もある。
【0003】
ところで、撮影画像を安定させる制振装置を備えた車輌用撮影装置が知られている(特許文献1参照)
【0004】
また、車輌のナンバープレートと運転者を、固定された撮影装置で撮影する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−46460号公報
【特許文献2】特開2003−272091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の場合、撮影装置で得られた映像信号は、車室内のモニターに表示されたり、車体外界の情報を運転者に提供したり、先行車までの距離を測定するなどの目的に用いられているにすぎず、前方の車の運転者の顔画像を取得する目的ではなく、また、撮影した画像から運転者の顔画像を特定できる技術的構成ではない。
【0007】
また、上記特許文献2は、固定された撮影装置から、車のナンバープレートの撮影を主目的とし、そのための技術であって、前方の車を追跡しながら、前方の車の運転者の顔画像を取得することはできない。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システム、顔画像取得方法および顔画像取得プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る顔画像取得システムは、
車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システムであって、
前記後方側から、反射手段に写る画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、車を運転している人の顔を後方側から撮影する場合に、反射手段に写る画像を撮影し、この撮影された画像から顔画像を抽出し、この抽出された顔画像を合成することで、運転者の顔画像を得ることができる。反射手段に写る画像は、顔画像の一部であり、一部の顔画像を抽出して、合成することで、人物を特定できる程度の顔画像(完全な顔画像を含む概念である)を得ることができる。これによって、例えば、警察の追跡から逃れようとする車輌に対して、逃亡車輌の後方から画像さえ撮影しておけば、仮に取り逃がしても、後で画像処理することで、運転者の人物特定を容易に行なえる。また、無理な追跡を行なうことなく、二次的な事故を減少させつつ、検挙率を上げることができる。さらに、検挙率の向上は、逃亡意欲の抑制に効果があると考えられる。
【0011】
車は、例えば、自動車、三輪自動車、自動二輪車、原動機付自転車、軽車輌、キャタピラー車輌等である。反射手段は、自動車、三輪自動車、軽車輌の場合、例えば、車内部のルームミラー、バックミラー等である。自動二輪車、原動機付自転車の場合、バックミラー等である。また、反射手段として道路に設置されている道路ミラー等も挙げられる。後方側は、前方の車を追跡している状態であれば、真後ろに限定されない。前方の車を追跡する後方側の追跡体は、追跡できる移動体であれば特に制限されず、例えば、自動車、三輪自動車、自動二輪車、原動機付自転車、軽車輌、キャタピラー車輌、ヘリコプター等であり、また、遠隔操作された移動体である。
【0012】
また、本発明において、撮影手段は、反射手段を自動追尾する追尾手段を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前方の車が左右、または前方後方に移動しても、追尾手段によって、撮影手段を自動的に追尾できるので、後方側からの画像撮影を的確に行なうことができる。
【0014】
また、本発明において、撮影手段は、反射手段に写る画像に焦点を合わせる焦点設定手段を備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、反射手段に写る画像(例えば、運転者の顔)に焦点を合わせることができるので、運転者の顔画像を的確に撮影することができる。
【0016】
また、本発明において、撮影手段は、ゆれを検出し、当該ゆれを補正するゆれ補正手段を備えることが好ましい。
【0017】
追跡する場合の道路状況に応じて、追跡する側の撮影手段がゆれ状態であると、的確に前方の画像を撮影することが困難である。そこで、ゆれ補正手段を備えて、ゆれ補正を行い、的確な撮影を行なえるようにしている。
【0018】
また、本発明において、抽出手段によって抽出された顔画像を、顔として確認されやすいように画像処理する顔画像補正手段を備えることが好ましい。
【0019】
前方の車を追跡しながらの撮影であるため、画像自体が不鮮明であることが多く、また、夕方や夜の場合、撮影照明強度も不足している場合もある。このような場合に、抽出された顔画像を画像処理して不鮮明さを補正することで、人物を特定できる程度の顔画像を得るようにできる。画像処理は、例えば、明るさ補正、鮮鋭化補正、コントラスト補正、トーン補正、動画像の連続性を生かした超解像処理等が挙げられる。
【0020】
また、他の本発明は、車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得方法であって、
前記後方側から、反射手段に写る画像を撮影する工程と、
前記撮影工程で撮影された画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、他の本発明は、コンピュータに、
車の後方側から撮影された反射手段に写る画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理ステップと、
を実行させる顔画像取得プログラムである。
【0022】
この顔画像取得方法、顔画像取得プログラムの構成の作用効果は、上記記載の作用効果と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
本発明に係る顔画像取得システムの実施形態1を図面を用いて説明する。図1は、顔画像取得システムの全体構成を説明するための機能ブロック図である。図2は、顔画像取得システムの動作フローを示すフローチャートである。
【0024】
図1に示すように、顔画像取得システム1は、前方の車20を後方側から追跡しつつ撮影する撮影装置11と、撮影装置11で撮影された画像データを記憶する第1記憶部12とを備えている。また、第1記憶部12に記憶された画像データは、顔画像取得システム1の第2記憶部13に送信される。画像データの送信は、通信部111による無線通信で行なわれる。なお、別実施形態として、撮影装置11で撮影された画像データを直接第2記憶部13に送信するように構成できる。
【0025】
撮影装置11は、動画撮影装置でもよく、静止画撮影装置でもよい。追跡しながらの撮影であるため、動画撮影装置が好ましい。撮影装置11には、振動を吸収して撮影を好適に行なえるように振動吸収手段を備える。振動吸収手段は、制振材、弾性部材等である。
【0026】
また、撮影装置11は、前方の車20の反射手段(ルームミラー21、バックミラー22、23)を自動追尾する追尾装置112を備える。これによって、前方の車が左右、または前方後方に移動しても、それに追随して撮影装置11を自動的に追尾できるので、後方側からの画像撮影を的確に行なうことができる。追尾装置112としては、公知の装置が適用でき、例えば、上下移動機構、水平移動機構、チルト機構等が例示できる。
【0027】
また、撮影装置11は、反射手段(ルームミラー21、バックミラー22、23)に焦点を合わせる焦点設定装置113を備える。これによって、運転者の顔を写している反射手段に焦点を合わせることができるので、運転者の顔画像を的確に撮影することができる。焦点設定装置113としては、例えば、公知のズーム機構を適用できる。
【0028】
また、撮影装置11は、当該撮影装置11のゆれ(または振動)を検出し、当該ゆれを補正するゆれ補正装置114を備える。これによって、ゆれ補正を行い、的確な撮影が行なえる。
【0029】
また、撮影装置11は、一個に限定されず、複数個でもよく、また、その設置位置は、特に限定されない。例えば、追跡体30が車の場合、車輌内部、車輌外部に設置できる。車輌内部の場合、例えば、助手席位置、フロントガラスの中央部が例示でき、車輌外部の場合、例えば、車輌の屋根、ボンネット位置、前方ライトの位置等が例示できる。
【0030】
図1に戻り、第1記憶部12から送信された画像データは、通信部14によって受信され、第2記憶部13に記憶される。なお、別実施形態として、第1記憶部12がポータブルの記憶媒体(例えば、DVD等)の場合、その記憶媒体から画像データを読み出す読み出し装置を備えていてもよい。
【0031】
第2記憶部13に記憶された画像データは、動画データであり、このデータから人物を特定するための顔画像を取得するために、本発明においては、抽出部15が、第2記憶部13から画像データを読み出し、当該画像データから顔画像を抽出する。例えば、抽出部15は、パターンマッチングの方法を用いて画像データから反射手段(ルームミラー21、バックミラー22、23)を指定し、反射手段で写された顔画像(一部の顔画像)を自動的に切り出し抽出する。なお、別実施形態として、レタッチソフトによって手動で反射手段(ルームミラー21、バックミラー22、23)を指定し、顔画像を切り出し抽出することもできる。
【0032】
抽出部15で抽出された顔画像は、顔画像補正部16によって、例えば、明るさ補正、鮮鋭化補正、コントラスト補正、トーン補正、動画像の連続性を生かした超解像処理等の画像処理が施される。画像処理の必要性は、自動的に顔画像補正部16が判断してもよく、オペレータが補正を指定するように構成してもよい。
【0033】
また、画像がブレ状態で撮影されている場合に、以下のブレ補正を行って、ブレを補正し、抽出部15が顔画像を抽出できるように構成できる。ブレ補正方法は、任意のフレーム画像から抽出される複数の注目画素が連続する複数のフレーム画素に存在するときに同一シーンを撮影したフレーム画像であると判別する判別手段(判別ステップ)と、同一シーンと判別された連続するフレーム画像間で対応する注目画素の移動方向および移動量を表す移動ベクトルを夫々生成し、当該移動ベクトルの変動特性に基づいてブレ画像であるか否かを判別するブレ画像判別手段(ブレ画像判別ステップ)と、ブレ画像と判別された各フレーム画像を所定の注目画素が一致するように合成処理して情景画像を生成する情景画像生成手段(情景画像生成ステップ)と、前記移動ベクトルに基づいて各フレーム画像の画面のブレを補正するとともに、補正によって生じる画像欠損部を前記情景画像から補完して新たなフレーム画像を生成する動画像再生手段(動画像再生ステップ)とを備えている。合成処理としては、時系列的に変動するフレーム画像を重ね合わせて処理する場合、順次貼り付け処理する場合、フレーム画像に対する情景画像を、時間的に前後するフレーム画像から求められる動体をその変位速度に基づいて予測される位置に変位させた画像として生成する場合がある。
【0034】
次いで、顔画像合成処理部17は、抽出部15で抽出された顔画像(一部の顔画像)を繋ぎ合わせ、または一部を重複させたり、削除したりして顔画像を合成する処理を行なう。また、顔画像補正部16による画像処理が実行された場合、顔画像合成処理部17は、顔画像補正部16による画像処理後に、合成処理を行う。顔画像合成処理部17によって、合成処理された顔画像は、人物が特定できる程度の顔画像になっている。
【0035】
なお、撮影された画像が複数の静止画の場合、静止画から顔画像が抽出され、必要に応じて補正処理され、合成され、人物が特定できる程度の顔画像が作成される。
【0036】
抽出部15、顔画像補正部16、顔画像合成処理部17は、専用回路、ファームウエア等で実現できる。
【0037】
次に、本実施形態の動作フローについて、図2を用いて説明する。先ず、ステップS1において、追跡車輌の撮影を開始する(S1)。ルームミラー21、バックミラー22、23等を追尾し、焦点合わせを行ないながら動画を撮影する。撮影された動画は、第1記憶部12に記憶される(S2)。所定時間経過後、撮影は終了する(S3)。記憶された動画データは、通信部111によって、通信部14に送信され第2記憶部13に記憶される(S11)。
【0038】
次いで、抽出部15は、第2記憶部13から動画データを読み出し、顔画像を抽出する(S12)。次いで、抽出された顔画像を鮮明にするために、顔画像補正部16によって画像処理を行なう(S13)。次いで、画像処理された顔画像を、顔画像合成部17によって合成し、人物が特定できる程度の顔画像を作成する(S14)。合成された顔画像は、必ずしも顔全体の画像である必要がなく、目鼻部分、横顔等の顔画像でもよく、人物が特定できることが重要である。
【0039】
以上の動作フローにおいて、ステップS3で撮影を終了してから、S11以降において、顔画像の合成処理を行なったが、これに制限されず、撮影と同時に動画像を送信し、第2記憶部13に記憶させることができる。そして、顔画像の抽出、補正、合成処理を行い、顔画像を作成し、顔画像データベースと照合して、人物の特定を行なうように構成できる。さらに、人物が特定されたら、追跡体30に通知するように構成できる。
【0040】
以上の実施形態によれば、合成処理された顔画像は、人物が特定できる程度の顔画像になっている。よって、例えば、警察の追跡から逃れようとする車輌に対して、逃亡車輌の後方から画像さえ撮影しておけば、仮に取り逃がしても、後で画像処理することで、運転者の人物特定を容易に行なえる。また、無理な追跡を行なうことなく、二次的な事故を減少させつつ、検挙率を上げることができる。
【0041】
(実施形態2)
上記実施形態1の抽出部15、顔画像補正部16、顔画像合成処理部17は、ソフトウェアとハードウエア(CPU、メモリ等)を協働作用によって実現でき、専用回路、ファームウエア等で、またはそれらの組み合わせで実現することもできる。
【0042】
ソフトウェアで実現する場合、そのプログラムは以下のようになる。このプログラムは、記録媒体に記録され、記録媒体として提供可能であり、また、通信回線を介して提供(ダウンロード提供)されてもよい。通信回線を介して提供される場合、その一部の機能のみが提供されてもよく、他の一部がサーバ装置に残っていてもよく、全体の機能として本発明の機能が発揮されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
本発明のソフトウエアプログラムは、コンピュータに、
車の後方側から撮影された反射手段に写る画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理ステップと、
を実行させる顔画像取得プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】顔画像取得システムの機能ブロック図
【図2】顔画像取得システムの動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0045】
1 顔画像取得システム
11 撮影装置
12 第1記憶部
13 第2記憶部
14 通信部
15 抽出部
16 顔画像補正部
17 顔画像合成処理部
111 通信部
112 追尾装置
113 焦点設定装置
114 ゆれ補正装置
20 車
21 ルームミラー
22、23 バックミラー
30 追跡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得システムであって、
前記後方側から、反射手段に写る画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理手段と、
を備える顔画像取得システム。
【請求項2】
前記撮影手段は、前記反射手段を自動追尾する追尾手段を、備える請求項1に記載の顔画像取得システム。
【請求項3】
前記撮影手段は、前記反射手段に写る画像に焦点を合わせる焦点設定手段を、備える請求項1または2に記載の顔画像取得システム。
【請求項4】
前記撮影手段は、ゆれを検出し、当該ゆれを補正するゆれ補正手段を、備える請求項1から3のいずれか1項に記載の顔画像取得システム。
【請求項5】
前記抽出手段によって抽出された顔画像を、顔として確認されやすいように画像処理する顔画像補正手段を、備える請求項1から4のいずれか1項に記載の顔画像取得システム。
【請求項6】
車を運転している人の顔を後方側から撮影し、当該人物の顔画像を得る顔画像取得方法であって、
前記後方側から、反射手段に写る画像を撮影する工程と、
前記撮影工程で撮影された画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理工程と、
を備える顔画像取得方法。
【請求項7】
コンピュータに、
車の後方側から撮影された反射手段に写る画像から、前記車を運転している人の顔画像を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された顔画像を合成する顔画像合成処理ステップと、
を実行させる顔画像取得プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−9324(P2009−9324A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169516(P2007−169516)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】