説明

顔認証装置、セキュリティ強度変更方法およびプログラム

【課題】利用者に煩雑な操作を強いることなく、利用目的に応じて異なる強度のセキュリティレベルを設定できる顔認証技術を提供する。
【解決手段】顔認証装置に、登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、入力された画像から顔の特徴量を取得して、記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるセキュリティ設定手段と、セキュリティ強度に基づいて、記憶手段及び認証手段が行う認証処理の内容を変更する制御手段とを設けた。ここで、制御手段は、設定されたセキュリティ強度に基づいて、登録画像を制限する機能、なりすまし検出機能、閾値補正機能、顔向き判定機能などの機能のオン・オフを切り替えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔認証処理におけるセキュリティ強度を変更するための装置や方法に適用されて有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の高機能化に伴い、所有者を正確に識別できるセキュリティ機能が重要視されつつある。このようなセキュリティ機能としては、パスワードを用いる方法、指紋照合を行う方法、顔認証処理を用いる方法などがある。なかでも、顔認証処理は、カメラ付きの携帯電話機で実現できるセキュリティ機能として注目されている。パスワードを用いる方法の場合は、正しいパスワードを知っていれば必ず認証に成功する。一方指紋や顔などを用いた生体認証の場合には、照合精度によって、本人が拒否されたり(本人拒否)、他人が受け入れられてしまう(他人受入)という問題が生じる。本人拒否率を低くすれば快適性は高まるが、他人受入率も高くなりセキュリティが弱くなる。また、他人受入率を低くすればセキュリティが強くなるが本人拒否率も高くなり使い勝手が悪くなる。
【0003】
携帯電話機に搭載されている機能の中には、快適性を犠牲にしても高セキュリティが望まれる機能や、逆にセキュリティを犠牲にしても快適性を重視することが望まれる機能がある。このように、各機能に応じてセキュリティの強度を変更できることが望まれる。
【0004】
特許文献1、2には、暗証番号・文字コード・音声・顔・指紋などの複数の認証方法のうち、1又は複数の認証方法を利用者が設定できる技術が開示されている。また、特許文献3には、使用目的に応じて複数の認証方法を自由に組み合わせることで、セキュリティレベルを設定することが可能な技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、本人認証において、周囲の状況に応じて、快適性とセキュリティとのいずれを重視するかによって、アルゴリズムを切り替える技術が開示されている。周囲の状況とは、時間帯や顔照合に用いる画像の照明条件などである。昼ならば快適性を優先し、夜ならばセキュリティを優先するように判定閾値を変化させたり、照明条件に応じて照明変動に対してロバストなアルゴリズムを使用するか通常のアルゴリズムを使用するか決定したりする。
【特許文献1】特開2004−260240号公報
【特許文献2】特開2004−80080号公報
【特許文献3】特開2002−112340号公報
【特許文献4】特開2000−215308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。すなわち、特許文献1〜3に記載の技術では、暗証番号・文字コード・音声・顔・指紋などの認証方法を切り替えたり、これらの中から複数の方法を選択して認証を行う必要があるため、認証を行うための手段が統一されておらず利用者にとって利便性が悪い。
【0007】
また、特許文献4に記載の技術では、顔認証に特有な問題点である、写真を用いたなりすましなどの不正使用を防止することが困難である。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、利用者に煩雑な操作を強いることなく、利用目的に応じて異なる強度のセキュリティレベルを設定
できる顔認証技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成をとる。本発明は顔認証装置であって、記憶手段と認証手段とセキュリティ設定手段と制御手段とを有する。記憶手段は、登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する。記憶手段は1人分の特徴量を記憶するように構成されても良く、複数人の登録者の特徴量を記憶するように構成されても良い。
【0010】
認証手段は、入力された画像から顔の特徴量を取得して、記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う。より具体的には、認証手段は、入力された画像から顔を検出して、検出された顔から特徴点を検出して、特徴量として特徴点間の位置関係や特徴点付近での濃淡値の周期性・方向性を検出する。そして、認証手段は、検出した特徴量と記憶手段に記憶された登録者の特徴量を比較して、その類似度を示すスコアを算出し、算出したスコアが所定の閾値以上である場合には登録者であると判断する。なお、画像の入力は、顔認証装置が撮像手段を有しその撮像手段によって撮像された画像が入力されても良く、ハードディスクやCD−ROMなどの記録媒体に記録された画像が入力されても良く、ネットワークを通じて画像が入力されても良い。
【0011】
セキュリティ設定手段は、使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させる。ここで、セキュリティ強度とは、安全性の度合いであって、他人受入率の低さを示す値である。一般に認証処理において、安全性と快適性はトレードオフの関係にあり、安全性が高い場合には快適性が犠牲となる。すなわち、安全性を高くすると、本人拒否率が高くなったり、認証処理速度が遅くなったりすることによって快適性が悪くなる。逆に、快適性を高くすると、他人受入率も上がり安全性が悪くなる。本明細書中において、セキュリティ強度が「強い(高い)」ということは安全性を優先することを意味し、セキュリティ強度が「弱い(低い)」というのは快適性を優先することを意味する。
【0012】
制御手段は、セキュリティ強度に基づいて、記憶手段及び認証手段が行う認証処理の内容を変更する。具体的には、セキュリティ強度が高く設定されている場合には、登録者の顔画像が、所定の撮影条件を満たさない場合には記憶手段への記憶を制限することが好ましい。撮影条件とは、顔画像中の顔の向きや表情、照明の当たり具合(白飛びや黒つぶれ)あるいは、マスクやサングラスなどの装着物の有無など顔照合の精度に影響を与える条件のことをいう。撮影条件の悪い画像を元に特徴量を記憶すると、登録者の特徴量が精確に取得できていないため、他人を本人として認証してしまう可能性が高くなってしまう。したがって、制御手段は、セキュリティ強度が高い場合には安全性を優先するために、このような画像を元に記憶手段に特徴量が登録されることを制限する。
【0013】
また、制御手段は、セキュリティ強度が高く設定されている場合には、なりすまし検出機能を有効にすることが好ましい。なりすまし検出機能とは、入力された画像が免許証などの写真を撮像した画像であるか否か判定したり、登録者を盗撮して得た画像であるか判定する機能である。例えば、顔周辺の背景が一様(青や白)である場合や、顔の周囲に枠が検出された場合などは、証明写真を用いたなりすましであると検出できる。また、笑った顔や、顔の一部がピースサインなどによって隠されている場合にはスナップ写真を用いたなりすましであると検出できる。また、目を閉じた顔や小さく写された顔は、寝ているところを盗撮した又は遠くから盗撮したとなりすましであると検出できる。この他にも、なりすましを検出するための技術であれば、既存のどのような技術を用いても構わない。
【0014】
また、認証手段は入力された画像の顔の特徴量と、登録者記憶手段に記憶された顔との類似度を示すスコアを算出し、このスコアと閾値との比較によって認証を行うことが好ましい。そして、制御手段は、セキュリティ強度に基づいて、スコア及び/又は閾値を入力
された画像の撮影条件に応じて変化させる機能の有効/無効を切り替えることが好ましい。具体的には、制御手段は、セキュリティ強度が高く設定されている場合にはこの機能を無効にし、セキュリティ強度が低く設定されている場合にはこの機能を有効にすることが好ましい。顔認証処理では、撮影条件が悪い画像が入力された場合には、撮影条件の良い画像が入力された場合に比べて類似度が低く算出される傾向にある。これを補正するために、撮影条件が悪い画像が入力された場合には、類似度や閾値を補正することで、本人拒否率を低くすることができ快適性を向上させることができる。一方で、このような補正を行うと、他人受入率が高くなることもあり、安全性が低下してしまう可能性がある。したがって、セキュリティ強度が低く設定されている場合にはこの機能を有効にし、セキュリティ強度が高く設定されている場合にはこの機能を無効にすることで、設定されたセキュリティ強度に応じた顔認証処理を行うことができる。
【0015】
また、制御手段は、セキュリティ強度が高く設定されている場合には、入力された画像から検出された顔が所定の角度以上の向きである場合には認証を行わない機能を有効にすることが好ましい。顔の向きが所定の角度以上である場合には、照合精度が低下してしまうため、このような画像が入力された場合には認証を失敗させることで安全性を確保できる。
【0016】
このように構成された顔認証装置では、使用目的に応じて設定されたセキュリティ強度に応じた認証処理を行うことが可能となる。また、利用者は常に顔認証のために自身の顔を撮影するという行為のみで認証を行うことができる。すなわち、利用者は異なる複数の認証処理を使い分ける必要がないため、利用者にとって使いやすさが高まる。
【0017】
なお、本発明は、上記処理を行うセキュリティ強度変更方法、又は、係る方法を実現するためのプログラムとしても捉えることができる。
【0018】
例えば、本発明の一態様としてのセキュリティ強度変更方法は、登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、入力された画像から顔の特徴量を取得して、記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、を有する情報処理装置が行うセキュリティ強度変更方法であって、使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるステップと、入力されたセキュリティ強度に基づいて、記憶手段及び認証手段が行う認証処理の内容を変更するステップと、を含む。
【0019】
また、本発明の一態様としてのプログラムは、登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、入力された画像から顔の特徴量を取得して、記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、を有する情報処理装置に対して、使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるステップと、入力されたセキュリティ強度に基づいて、記憶手段及び認証手段が行う認証処理の内容を変更するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、利用者に煩雑な操作を強いることなく、利用目的に応じて異なる強度のセキュリティレベルを設定して顔認証を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<システム構成>
図1は、顔認証装置1が搭載される携帯電話機10の斜視図である。携帯電話機10は、表示部11、入力部12及びカメラ13を含む。
【0022】
図2は、顔認証装置1の機能ブロックを示す図である。顔認証装置1は、照合対象とな
る人物が撮像された画像(照合画像)から顔の特徴量(例えば輝度分布や色ヒストグラム等)を取得し、あらかじめ登録されている人物(登録者)の特徴量と比較することによって、照合画像の人物が登録者と一致するか否か判断する。顔認証装置1は、本実施形態においては、携帯電話機10に搭載されており、携帯電話機10の補助記憶装置に記憶された各種のプログラム(OS、アプリケーション等)が主記憶装置にロードされCPUにより実行されることによって、画像記憶部3、顔検出部4、特徴量取得部5、登録者情報記憶部6、顔照合部7、セキュリティ強度設定部8及び制御部9等を含む装置として機能する。顔検出部4、特徴量取得部5、顔照合部7、セキュリティ強度設定部8及び制御部9は、プログラムがCPUによって実行されることによりその機能が実現される。また、顔検出部4、特徴量取得部5、顔照合部7、セキュリティ強度設定部8及び制御部9は、専用のチップとして構成されても良い。
【0023】
次に、顔認証装置1が有する各機能部について説明する。
【0024】
[撮像部]
撮像部2は、デジタルカメラ等の撮像装置であって、撮像レンズ、撮像素子、フレームメモリ等から構成される。撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)やCM
OS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの光電変換素子が用いられる。
撮像部2では、撮像レンズを通して結像された画像が、撮像素子により電気信号に変換され、デジタル画像としてフレームメモリに格納される。
【0025】
[画像記憶部]
画像記憶部3は、記憶装置を用いて構成される。画像記憶部3に用いられる記憶装置には、揮発性記憶装置や不揮発性記憶装置など、どのような具体的技術が適用されても良い。
【0026】
画像記憶部3は、撮像部2が撮像した照合画像のデータを記憶する。画像記憶部3に記憶された照合画像のデータは、顔検出部4及び特徴量取得部5によって読み出される。
【0027】
[顔検出部]
顔検出部4は、画像記憶部3から照合画像のデータを読み出し、照合画像から人の顔を検出し、検出された顔の位置や大きさ等を特定する。顔検出部4は、例えば、顔全体の輪郭に対応した基準テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって顔を検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、顔の器官(目、鼻、耳など)に基づくテンプレートマッチングによって顔を検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、肌の色に近い領域を検出し、その領域を顔として検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、ニューラルネットワークを使って教師信号による学習を行い、顔らしい領域を顔として検出するように構成されても良い。又、顔検出部4による顔検出処理は、その他、既存のどのような技術が適用されることによって実現されても良い。
【0028】
[特徴量取得部]
特徴量取得部5は、顔検出部4によって検出された顔について複数の特徴点を検出し、特徴点付近における特徴量を検出する。特徴量取得部5には、既存のどのような特徴点検出技術が適用されても良い。例えば、特徴量取得部5は、顔特徴点の位置を示すパターンをあらかじめ学習し、その学習データを使用したマッチングを行うことによって特徴点を検出するように構成されても良い。また、特徴量取得部5は、検出された顔の内側において、エッジの検出やパターンマッチングを行うことにより、顔の器官の端点を検出し、それを基準として特徴点を検出するように構成されても良い。特徴量取得部5は、例えば、顔の特徴量として特徴点の位置関係や特徴点付近での濃淡値の周期性・方向性などを用いる。
【0029】
[登録者情報記憶部]
登録者情報記憶部6は、記憶装置を用いて構成される。登録者情報記憶部6は、認証の対象となる者(登録者)の顔の特徴量が格納された登録情報テーブルを記憶する。登録者情報記憶部6は、撮像部2によって撮像された画像から、顔検出部4及び特徴量取得部5によって取得された顔の特徴量が格納される。
【0030】
登録者情報記憶部6に登録者の顔の特徴量が記憶される際に、登録画像内の顔の条件によっては顔認証の精度が低下するおそれがある。例えば、照明条件が悪い場合(白飛びや黒つぶれの発生)や、顔の向きが大きい場合、サングラスやマスク等を装着している場合などに顔認証の精度が低下するおそれがある。したがって、このような画像が登録者の顔として入力された場合には、登録者情報記憶部6は、顔認証の精度を確保するために登録を拒否する登録制限機能を有する。
【0031】
登録制限機能は、設定されたセキュリティ強度に応じて登録者情報記録部6への登録を制限する。セキュリティ強度は、後述するように、使用目的毎に設定される。登録制限機能は、このように複数設定されるセキュリティ強度のうち、最も高いセキュリティ強度にしたがって登録の制限を行う。すなわち、セキュリティ強度が高く設定されている場合には精度を確保する必要があるため、良い撮影条件で撮影された画像のみを登録画像として許可し、撮影条件が悪い画像は拒否する。一方、セキュリティ強度が低く設定されている場合には精度を確保する必要性が少なく、登録が拒否される可能性を低くすることが利便性の面から好ましい。したがって、この場合には撮影条件が悪い登録画像であっても受け入れる。
【0032】
[顔照合部]
顔照合部7は、照合画像から取得した特徴量と、登録者情報記憶部6に記憶されている特徴量に基づいて照合処理を行う。顔照合部7は、両特徴量を比較して類似度(スコア)を算出し、算出した類似度が所定の閾値以上である場合には、照合画像の人物が登録者と一致すると判断する。
【0033】
顔照合部7は、なりすまし等の不正使用を防止するため、不正使用検知機能を備える。不正使用検知機能は、写真等を用いたなりすましを検知するなりすまし検知機能、盗撮等を検知する盗撮検知機能がある。また、顔照合処理は照合を行う環境や顔の表情などによって信頼度が一定に定まらないため、顔照合部7は顔照合精度を向上させる機能を有する。精度向上の機能は、照合画像の撮影条件(照明条件や顔の向き・表情など)に応じて算出した類似度や閾値に対して補正を加える補正機能、顔の向きが大きすぎる場合には顔照合を行わない機能などがある。以下、上記各機能の詳細について説明する。
【0034】
[[なりすまし検知機能]]
なりすましとは、認証を受けることができる者(登録者)の写真等をあらかじめ用意して、照合画像が撮像される際にその写真等を用いて認証を受けようとする行為である。なりすまし検知機能は、このようななりすましを検知して不正使用を防止する。
【0035】
なりすまし検知機能は、免許証などの証明写真などのように、顔周辺の背景が一様(青や白)である場合や、顔の周囲に枠があるような場合(図4b)には、なりすましであると判断できる。また、検出された顔が笑った顔である場合や、顔の一部がピースサインなどで隠されている場合には、スナップ写真を用いたなりすましであると判断できる。さらに、照合画像を撮像する際にフラッシュを発光させるなどして、照合画像における反射光の写り方を判断して、写真を用いたなりすましであることを検知することもできる。なりすまし検知処理は、その他既存のどのような技術が用いられて実現されても良い。
【0036】
[[盗撮検知機能]]
登録者でない者が、登録者が寝ているときにその寝顔を撮影したり、登録者を遠くから撮影したりした照合画像を用いることによって不正に認証を受けることが可能である。このような不正使用を防止するために、盗撮検知機能は、検出された顔が目を閉じた顔である場合(図4c)や、小さい画像である場合には、このような不正使用が行われていると判断して認証を失敗させる。
【0037】
[[閾値補正機能]]
照合画像の撮影条件が悪い場合(図4d)には、検出された顔の特徴量と登録者の顔の特徴量を比較して算出した類似度(スコア)は低く算出される傾向にある。このような撮影条件による精度の低下を軽減するために、閾値補正機能は、類似度の比較に用いる閾値や算出した類似度に対して補正を加える。これにより、照合精度を向上させることができる。
【0038】
[[顔向き判断機能]]
照合画像から検出された顔の向きの角度が大きい場合には、照合精度が低下するおそれがあり、本人拒否率が上がるだけでなく、他人受入率も上がってしまうおそれがある。したがって、精度の良い顔認証が行えるように、顔向き判断機能は、検出された顔の向きが所定の角度以上である場合には、認証を失敗させる。
【0039】
[セキュリティ強度設定部]
セキュリティ強度設定部8は、利用者から、使用目的毎にセキュリティ強度の設定を受け入れる。例えば、機能(実行するアプリケーション)毎にそれぞれセキュリティ強度の設定が入力される。携帯電話機10の表示部11に図3のような設定メニューが表示され、利用者は入力部12を用いて各機能毎にセキュリティ強度を設定する。本実施形態では、図3に示すように各アプリケーション毎に「強」「中」「弱」の3段階のセキュリティ強度が設定可能となっている。後述するように、各セキュリティレベル毎に、顔認証処理における制御内容があらかじめ決められている。
【0040】
[制御部]
制御部9は、セキュリティ強度設定部8に設定されたセキュリティ強度に基づいて、顔認証装置1が行う認証処理の処理内容を変更する。具体的には、顔照合部7が有する機能であるなりすまし検知部、盗撮検知部、閾値補正部及び顔向き判断部の各部の機能の有効無効を切り替える。また、登録者情報記憶部6が有する機能である撮影条件が悪い画像の登録は拒否する機能の有効無効も切り替える。
【0041】
図5に示すように、セキュリティ強度が「強」である場合には、なりすまし検知部、盗撮検知部、顔向き判断部及び登録画像制限の機能のように安全性を向上させる機能を全て有効にし、閾値補正部の機能である利便性を向上させる機能は無効にする。セキュリティ強度が「中」である場合には、なりすまし検知部の機能だけを有効にし、その他の安全性を向上させる機能は無効にする。また、利便性を向上させる閾値補正部の機能を有効にする。また、セキュリティ強度が「弱」の場合には、安全性を向上させる機能(=利便性を損なう可能性のある機能)を全て無効にし、利便性を向上させる閾値補正部の機能を有効にする。
【0042】
このようにセキュリティ強度と認証処理を対応づけることにより、セキュリティ強度が「強」である場合には他人受入が発生する可能性を最小限にでき、「弱」である場合には本人拒否が発生する可能性を最小限にすることができる。
【0043】
<動作例>
図3に示すように、「プリペイドカード」のセキュリティ強度を「弱」、「キーロック機能」「シークレット機能」のセキュリティ強度を「強」に設定した場合の、登録者情報を登録する際の処理及び認証処理の動作例を以下に説明する。
【0044】
[登録時]
図6のフローチャートを用いて、登録者情報を登録する際の処理について説明する。まず、図3のようにセキュリティ強度を設定する(S10)。次に、カメラ13によって登録者の顔の撮像を行う(S11)。撮像された画像から顔を検出し(S12)、特徴点を検出する(S13)。顔が検出されない場合(S12−NO)や、特徴点が検出されない場合(S13−NO)は、顔の撮像をやり直す。
【0045】
次に、撮像された顔がセキュリティ設定に応じた状態であるか判断する(S14)。ここで、セキュリティ強度が「強」に設定されているアプリケーションがあるため、検出された顔の撮影条件よっては登録を制限する機能が有効になる。したがって、検出された顔の向きや表情、照明条件などの撮影条件が、所定の条件を満たすか否か判断する。条件を満たす場合(S14−YES)には、その顔を登録する(S15)。条件を満たさない場合(S14−NO)には、顔の撮像をやり直す。
【0046】
[認証時]
図7のフローチャートを用いて、認証処理について説明する。まず、利用するアプリケーションの選択を行う(S20)。ここでは、「シークレット機能」が選択されたとする。そして、カメラ13によって利用者の顔を撮像し(S21)、撮像された画像から顔を検出し(S22)、特徴点を検出する(S23)。顔が検出されない場合(S22−NO)や特徴点が検出されない場合(S23−NO)は、顔の撮像をやり直す。
【0047】
次に、撮像された顔がセキュリティ強度に応じた状態であるか判断する(S24)。利用しているアプリケーションは「シークレット機能」であり、そのセキュリティ強度は「強」である。したがって、なりすまし検知部、盗撮検知部、顔向き判断部の各機能が有効になっている。証明写真(図4b)や寝顔(図4c)などの不正に撮像した画像と判断される場合(S24−NO)には、認証は失敗する(S27)。また、顔の向きが所定の角度以上である場合(S24−NO)にも、認証精度が低下するおそれがあるため、認証は失敗する。撮像された顔が、セキュリティ強度に応じた条件を満たす場合には、S25に進んで顔認識処理を行う。
【0048】
顔認識処理は、検出した特徴点から顔の特徴量を取得し、登録者情報記憶部6に記憶されている登録者の顔の特徴量と比較して、類似度を算出する。そして、算出した類似度が所定の閾値以上である場合は(S25−YES)認証は成功する。算出した類似度が所定の閾値未満である場合は(S25−NO)、認証は失敗する。
【0049】
ここで、利用しているアプリケーション「シークレット機能」のセキュリティ強度は「強」であるため、算出した類似度や、類似度との比較の対象になる閾値の補正は行っていないが、セキュリティ強度が「中」や「弱」である場合には、撮像された画像の撮影条件に応じて類似度や閾値の補正を行って、認証を行う。
【0050】
<実施形態の作用/効果>
このように構成された顔認証装置においては、使用目的毎に必要とされるセキュリティ強度に応じて、利用者が顔認証の処理を簡単にカスタマイズすることが可能である。そして、利用者が望む場合には、写真を用いたなりすましや、盗撮などによる不正使用を防止することができる。また、いずれのセキュリティ強度であっても、顔認証という1つの認
証方法のみを用いており、利用者は自らの顔を撮影するだけで認証が行える。このため、複数の認証方法(パスワード、指紋、静脈等)を切り替えて使う必要が無く、利用者に対して煩雑な操作を強いることがない。
【0051】
<変形例>
顔認証の安全性と快適性を調整するためには、顔認証のアルゴリズムを変えればよい。上記で説明したなりすまし検知や盗撮検知などの機能のオン/オフは、アルゴリズム変更の例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、セキュリティ強度に応じて、顔の特徴点を抽出するアルゴリズム(どこを特徴点とするか、またその特徴点をどのように抽出するか)や、特徴量の取得アルゴリズムなどを変化させても良い。
【0052】
また、セキュリティ強度設定部8は「強」「中」「弱」の3段階のレベルの設定を受け付けたが、3段階に限られるものではない。より多段階に設定できても良く、より細かく各機能(なりすまし検知や盗撮検知など)毎にそのオン/オフを設定できるようになっていても良い。
【0053】
上記の顔認証装置は、携帯電話機に搭載されたものであるが、その他どのような装置に搭載されても構わない。例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)などに搭載されても良い。このような場合、内蔵もしくは外付けされたデジタルカメラから画像が入力されても良く、CD−ROMなどの記憶媒体やネットワークを通じて画像が入力されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】顔認証装置が搭載される携帯電話機の斜視図である。
【図2】顔認証装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】セキュリティ強度を設定する画面の例を示す図である。
【図4】登録や照合の際に考慮する、顔の撮影条件を説明する図である。
【図5】セキュリティ強度と各機能の有効無効を対応づけるテーブルの例である。
【図6】登録者情報の登録時の処理を示すフローチャートである。
【図7】認証処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 顔認証装置
2 撮像部
3 画像記憶部
4 顔検出部
5 特徴量取得部
6 登録者情報記憶部
7 顔照合部
8 セキュリティ強度設定部
9 制御部
10 携帯電話機
11 表示部
12 入力部
13 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、
入力された画像から顔の特徴量を取得して、前記記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、
使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるセキュリティ設定手段と、
前記セキュリティ強度に基づいて、前記記憶手段及び前記認証手段が行う認証処理の内容を変更する制御手段と、
を有する顔認証装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記セキュリティ強度に基づいて、
登録者の顔画像が所定の撮影条件を満たさない場合には、前記記憶手段への記憶を制限する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記セキュリティ強度に基づいて、
なりすまし検出機能の有効/無効を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項4】
前記認証手段は、
入力された画像の顔の特徴量と、前記登録者記憶手段に記憶された顔の特徴量との類似度を示すスコアを算出し、該スコアと閾値との比較によって認証を行い、
前記制御手段は、前記セキュリティ強度に基づいて、
前記スコア及び/又は前記閾値を入力された画像の撮影条件に応じて変化させる機能の有効/無効を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記セキュリティ強度に基づいて、
入力された画像の顔が所定の角度以上の向きである場合には認証を行わない機能の有効/無効を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項6】
登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、
入力された画像から顔の特徴量を取得して、前記記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、
を有する情報処理装置が行うセキュリティ強度変更方法であって、
使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるステップと、
入力されたセキュリティ強度に基づいて、前記記憶手段及び前記認証手段が行う認証処理の内容を変更するステップと、
を含むセキュリティ強度変更方法。
【請求項7】
登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、
入力された画像から顔の特徴量を取得して、前記記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、
を有する情報処理装置に対して、
使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるステップと、
入力されたセキュリティ強度に基づいて、前記記憶手段及び前記認証手段が行う認証処理の内容を変更するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−148968(P2007−148968A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345190(P2005−345190)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】