顕微鏡用ズームレンズおよび顕微鏡
【課題】像ブレが生じた際の補正機能を有し、顕微鏡に用いられるズームレンズ、および当該ズームレンズを備える顕微鏡を提供すること。
【解決手段】物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする顕微鏡用ズームレンズ。
【解決手段】物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする顕微鏡用ズームレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズ、および当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにおいては、像ブレが生じた際の補正機能を持つズームレンズが多く提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
このようなズームレンズは、レンズ構成が複雑でレンズの枚数が多い。さらに、最も物体側のレンズ群が他のレンズ群に比して非常に大きな外径となっていることから、ズームレンズ系全体が大型で重量のあるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−29738号公報
【特許文献2】特開2009−169264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、工場等の品質管理部門や検査部門では、持ち運びができ、測定機能を備えた顕微鏡、実体顕微鏡、デジタル顕微鏡等(以下、これらをまとめて顕微鏡という。)が用いられることが多くなってきている。このような顕微鏡は、ズーム機能を有し、かつズーム比の高いものが望まれている。しかし、このような顕微鏡は、高倍で観察しているときに顕微鏡が僅かに動いただけでも視野が大きく動いてしまい、像ブレが生じ易い。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡用ズームレンズは、 物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る顕微鏡は、上記顕微鏡用ズームレンズを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】各実施例に共通する顕微鏡用ズームレンズの構成と、ズーム移動軌跡を示す図である。
【図2】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【図3】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。
【図4】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【図5】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【図6】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。
【図7】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【図8】第1または第2実施例のズームレンズと組み合わせて使用される対物レンズの一例のレンズ構成を示す図である。
【図9】実施形態に係る顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡の光学系を示す図である。
【図10】変移手段の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡の実施形態について説明する。なお、本明細書において顕微鏡とは、持ち運びができ、測定機能を備えた顕微鏡、実体顕微鏡、デジタル顕微鏡を含む。また、光学倍率とは、モニタ等の倍率を含まない、光学系だけで達成される最も基本となる倍率のことをいう。
【0012】
本実施形態に係る顕微鏡用ズームレンズ(以下、ズームレンズと略記する。)は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを備えている。第4レンズ群は、光軸とほぼ直交する方向に移動して像位置の変動を補正している。
【0013】
本実施形態において、このように第4レンズ群を防振レンズ群としたのは、以下の理由による。まず、第1レンズ群は最も大口径のレンズ群であるため、これを防振レンズ群とすると駆動機構が複雑になり好ましくない。次に、第2レンズ群および第3レンズ群は、後述する実施例で説明するように、変倍のために光軸に沿って移動する可動変倍レンズ群であり、これらを防振レンズ群とすると駆動機構が複雑かつ大型化するので好ましくない。さらに、第2レンズ群および第3レンズ群を防振レンズ群としてレンズを偏心させたときには、像位置の移動量が各倍率によって異なるため、駆動機構が複雑となるので好ましくない。これに対し、第4レンズ群は、合焦時において光軸方向に固定であるため、各倍率においてレンズを偏心させたときの像位置の移動量が不変である。このため、第4レンズ群を防振レンズ群とするのが好ましい。このように第4レンズ群を防振レンズ群とすることで、ズームレンズは全体がコンパクトに構成される。
【0014】
本実施形態に係るズームレンズは、照明系光源にはLEDを用い、LEDの全光束をL[lm]、光学倍率をβ、受光手段の標準出力感度をSとしたとき、以下の条件式(1)を満たす光学倍率以上の倍率において、前記第4レンズ群を光軸に対して垂直な方向に偏心移動させることにより、像ブレを補正するものである。
(1) β3 ≧ LS/800
条件式(1)は、次のようにして導き出される。すなわち、照明系と受光系(結像系)、および被観察試料、受光素子等のモデルを設定し、シミュレーションを行った。設定したモデルは以下の通りである。
1)照明系
・光源:LEDとし、LEDによる全光束は800lmとする。
・被観察試料:18%標準ニュートラルグレー(反射率18%)
2)受光系(結像系)
・対物レンズ:焦点距離34.5mm、作動距離30mm、NA 0.15
・結像レンズ:焦点距離34.5mm、103.5mm、172.5mm、
241.5mm、(光学倍率では、β=1x、3x、5x、
7xに相当)
・受光素子:CCD(1/1.8型を想定)
なお、上記モデルによる像側(CCD側)NAは以下の対応表に示す通りである。
(対応表)
光学倍率β CCD側NA
1x 0.15
3x 0.05
5x 0.03
7x 0.021
【0015】
このようにモデルを設定し、物体面と射出面(CCD面)それぞれにおいて、照度分布を求めた。その結果、CCD面照度は光学倍率βの二乗に反比例(CCD側のNAの二乗に比例)すると仮定すると、光学倍率βとCCD面照度には、以下の式(1−1)の関係が成立することがわかった。
(1−1) CCD面照度[lux] =(1.25×光源全光束[lm] )/光学倍率β2
さらに市販のデジタルマイクロスコープの対物レンズの先にキャップをはめ、光学倍率β、露光時間をいろいろと変えて画像を撮像し、像ブレの有無を評価したところ、像ブレを生じない露光時間(シャッタースピード)は光学倍率βに反比例し、以下の式(1−2)のような関係があることがわかった。
(1−2) 像ブレを生じない露光時間[sec] = 1/(100×光学倍率β)
例えば、光学倍率βが5倍のとき、像ブレを生じない露光時間は1/500[sec]であることが計算できる。そしてさらに、光学倍率βとLEDの出力の関係について述べるが、その前に、CCD感度とLED出力の関係について述べる。
【0016】
CIPA(カメラ映像機器工業会)統一基準によると、標準出力感度(ISO感度)とは、18%標準ニュートラルグレー被写体の撮影時、8bit出力で明るさが118になるときの感度と規定されている。また、このときの像面露光量がHm(lux・sec)のとき次の式(1−3)によって求められる無次元数値Sを標準出力感度としている。
(1−3) 標準出力感度S = 10/像面露光量Hm
ここで、像面露光量Hmは、
(1−4) 像面露光量Hm=CCD面照度[lux]×露光時間[sec]
である。式(1−4)に式(1−1)および(1−3)を代入すると、照明に必要なLEDの光束(光源全光束)L[lm]は、以下の式(1−5)のように求められる。
(1−5)LEDの光束L[lm]=8×光学倍率β2/(標準出力感度S×露光時間 [sec] )
ここで、手持ちで撮影する場合は、像ブレを考慮して、式(1−2)に従って露光時間を設定したとする。式(1−2)を式(1−5)に代入すると、
(1−6) LEDの光束L[lm] = 800×光学倍率β3/標準出力感度S
が得られる。さらに式(1−6)を変形することにより、条件式(1)で求められる光学倍率以上で用いる場合には、像ブレ補正が必要なことがわかる。
【0017】
式(1−6)によれば、光学倍率βに応じてLEDの光束Lを際限なく大きく、すなわち明るくできるのであれば、像ブレ補正は不要である。しかし、実際のポータブル顕微鏡においては、設置できる光源の大きさ(光束)や消費電力、標準出力感度(ISO)にも制約がある。光学装置等でよく用いられている、あるタイプのLEDは、発光効率80[lm/W]程度である。ポータブル顕微鏡で用いるとき、実用的な消費電力は3W程度と考えられる。すると、光束は80×3で240[lm]が求められる。また、標準出力感度もISO400程度が一般的であることを考慮すると、式(1−6)あるいは条件式(1)から光学倍率β=4.93が求められる。すなわちこの光学倍率以上で使用する場合は像ブレ補正が必要となる。
【0018】
また、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群は、正レンズ群、負レンズ群、正レンズ群のトリプレットタイプで構成されることを特徴とする。さらに、前記第4レンズ群の負レンズ群は、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする。
(2) 0.04 < f12/f4 < 0.18
ただし、
f4:第4レンズ群の焦点距離
f12:第4レンズ群中の負のレンズ群の焦点距離
条件式(2)は、第4レンズ群中の負レンズ群のパワーの適切な範囲を設定した条件式である。
【0019】
第4レンズ群の屈折力は負である。そのため第4レンズ群中に負レンズが必要なのはもちろんであるが、負レンズよりも物体側に正レンズを置いて、光束を屈折させてから負レンズに光が入射すると負レンズを小型にできる。さらに負レンズを出た後、正レンズを配置することで、この正レンズのレンズ最終面から像面までの距離も短くすることが可能である。負レンズを2群用いても、その2群を一つの負レンズ(群)と見なせるので、これもトリプレットタイプと言える。本実施形態に係るズームレンズは、第4レンズ群の一部を動かすのではなく、第4レンズ群を一体として、光軸とほぼ直交する方向に移動させて像位置補正を行う。このとき、上記の条件式(2)を満たせば、結像性能の劣化を招かない。
【0020】
上記条件式(2)は、上述したように、第4レンズ群中の負レンズ群のパワーの適切な範囲を設定した条件式である。本発明においては、第4レンズ群の最も像面側に正レンズを配置し、さらに負レンズ群のパワーを強くすることによって、CCD等の撮像素子を像面に設置した場合でもシェーディング等の支障がないように、射出瞳位置を像面(結像位置)から十分遠くにし、素子にほぼ垂直に光線が入射するようになっている。それはすなわち第4レンズ群全体を偏心させることが必要であり、そして第4レンズ群全体を偏心させても、結像性能の劣化を招かないことを意味している。さらには、第4レンズ群の焦点距離は以下の範囲内にすることが望ましい。すなわち、本実施形態に係るズームレンズは、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
(3) 0.20 ≦ |f4/fA| ≦ 0.60
ただし、
f4:第4レンズ群の焦点距離
fA:光学倍率が5倍以上の状態でのズームレンズ系全体の焦点距離
条件式(3)は、像位置補正を行う第4レンズ群の適切な焦点距離の範囲を規定するための条件式である。条件式(3)を満足することにより、防振レンズ群を偏心させて像位置の補正をした際のコマ収差の発生を抑え、かつ駆動機構の小型化を可能にする。光学倍率が上がるにしたがい、ズームレンズ系全体の焦点距離は長くなるが、条件式(3)の下限値を下回ると、第4レンズ群の焦点距離が短くなり、防振レンズ群の偏心により像位置の補正をした際にコマ収差が発生しやすくなり好ましくない。
【0021】
一方、条件式(3)の上限値を上回ると、像位置補正のために防振レンズ群を偏心させる量が多く必要となり、駆動機構が大型化してしまい好ましくない。
【0022】
また、本実施形態に係るズームレンズは、以下の条件式(4)、(5)および(6)を満たすことが好ましい。
(4) 0.4 < d1W/|f2| < 0.7
(5) |f1/f2| > 4.5
(6) Z0.5 < V2 < Z0.6
ただし、d1Wは、低倍端状態における第1レンズ群の最も像側のレンズ面と第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔、f2は第2レンズ群の焦点距離、f1は第1レンズ群の焦点距離、Zはズームレンズのズーム比、V2は第2レンズ群の変倍率をそれぞれ示す。
【0023】
条件式(4)は、低倍端状態における第1レンズ群の最も像側のレンズ面と第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔、すなわち第1レンズ群と第2レンズ群との光軸方向の間隔と、第2レンズ群の焦点距離との比の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(4)を満足することにより、低倍端状態における入射瞳位置を物体面から遠ざけ、低倍端状態での物体側テレセントリック性を確保することができる。
【0024】
条件式(4)の下限値を下回ると、低倍端状態における入射瞳位置が物体面に近くなり、デフォーカス時における像の大きさの変化率が大きくなるため、物体側テレセントリック性が確保できず、好ましくない。
【0025】
一方、条件式(4)の上限値を上回ると、対物レンズの外径が大きくなり、変倍時におけるコマ収差の変動が大きくなり好ましくない。
【0026】
条件式(5)は、第1レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離との比の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(5)を満足することにより、15倍以上の高いズーム比を確保し、かつ低倍端状態における入射瞳位置を物体面から遠ざけ、小型で高い結像性能を有するズームレンズを達成することができる。
【0027】
条件式(5)の下限値を下回ると、第1レンズ群と第2レンズ群との光軸方向の間隔が狭まり、第1レンズ群と第2レンズ群とが干渉するため、低倍端状態における倍率を小さくすることができず、結果として高いズーム比が得られない。また、条件式(5)の下限値を下回る状態で高いズーム比を得ようとすると、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が広くなり、ズームレンズの全長が大きくなり好ましくない。また、条件式(5)の下限値を下回る状態で、第3レンズ群および第4レンズ群の屈折力を大きくしてズーム比を高くしようとしても、15倍以上の高いズーム比は得られない。
【0028】
条件式(6)は、第2レンズ群の変倍率の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(6)を満足することにより、ズームレンズの全長をコンパクトに維持しつつ、高い結像性能を有するズームレンズを達成することができる。なお、本明細書において「変倍率」とは、ズームレンズの「ズーム比」に対する「負担量」を示す。
【0029】
条件式(6)の下限値を下回る場合、高いズーム比を得ようとすると第3レンズ群の変倍率が増大し、変倍時の第3レンズ群の移動量が増加する。その結果、第2レンズ群と第3レンズ群との干渉を防止するために第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を長くする必要が生じ、ズームレンズの全長が大きくなり好ましくない。
【0030】
一方、条件式(6)の上限値を上回ると、第2レンズ群の屈折力が大きくなり、第2レンズ群の「負担量」を上げることとなるため、ズームレンズの小型化には有利となる。しかし、この場合、低倍端状態においては、歪曲収差の増大、ペッツバール和の悪化による非点収差の増大、変倍時におけるコマ収差、特に下方コマ収差の変動の増大等が生じ、高倍端状態においては球面収差の増大等が生じてしまい好ましくない。
【0031】
また、本実施形態に係るズームレンズは、第4レンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群と負の屈折力を有するレンズ群と正の屈折力を有するレンズ群とからなるトリプレットタイプで構成されることが好ましい。第4レンズ群をトリプレットタイプとすることにより、諸収差を良好に補正し、小型化と良好な結像性能の双方を達成することができる。また、第4レンズ群中の一部のレンズを動かすのではなく、第4レンズ群を一体として動かして像位置の補正を行っている。これにより、トリプレットタイプの対称的なレンズ配置と相俟って、結像性能の劣化を招かずに防振レンズ群の駆動制御を容易にすることが可能となっている。
【0032】
なお、光学倍率が上がるに従い、特に手持ちで用いる顕微鏡の場合にあっては、最初のおおよその焦点合わせが非常に困難になってくる。また、高倍になるにしたがって開口数が上がり、焦点深度も浅くなってくるため、ピント合わせも困難になってくる。そこで、本実施形態に係るズームレンズと組み合わせて使用される対物レンズ(図8参照)の先にキャップ(図示省略)を取付け、キャップの長さは対物レンズの作動距離相当としておき、対物レンズにキャップを取付けたまま被検物にキャップの先を押し当てた状態で用いることが望ましい。こうすることで、最も困難な作業である最初のおおよその焦点位置合わせが簡単にできる。
【0033】
また、本実施形態に係る顕微鏡は、上記のズームレンズを備えたことを特徴としている。これにより、像ブレ補正機能を有するズームレンズを備える顕微鏡を実現することができる。
【0034】
(数値実施例)
以下、本実施形態に係るズームレンズの数値実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は、各実施例に共通する顕微鏡用ズームレンズの構成と、ズーム移動軌跡を示す図である。
【0036】
各実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0037】
ズームレンズは、低倍端側(図1(a))から高倍端側(図1(b))への変倍に際し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が減少するように、第2レンズ群G2が光軸方向に沿って物体側から像側へのみ移動し、第3レンズ群G3が光軸方向に沿って像側から物体側へのみ移動する。このように、本実施形態に係るズームレンズは、低倍端状態から高倍端状態への変倍に際し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とがそれぞれ一方向にのみ移動し、途中で戻る軌跡を取ることが無い。このため、レンズ群の移動機構を簡素化することができる。
【0038】
各実施例においては、第4レンズ群G4を変移手段によって光軸を横切る方向に沿って移動させ、ズームレンズの振動に起因する像位置の変動を補正している。図10は、変移手段5の構成を概略的に示す図である。図10に示す変移手段5は、ズームレンズ系自体の振動を検出する振動検出デバイス6と、第4レンズ群G4を実質的に光軸と直交する方向に沿って移動させる駆動デバイス7と、振動検出デバイス6からの出力に基づいて、振動による像の変化を補正するように駆動デバイス7を制御する制御部8とを有している。
【0039】
振動検出デバイス6としては、例えば角速度センサを適用することができる。また、駆動デバイス7としては、モータやコアレスモータ、ピエゾ素子などを適用することができる。防振レンズ群の補正量は、ズームレンズ全系の焦点距離に応じて変化はしないが、光学倍率が5倍以上の時に像位置補正を行うため、使用時の焦点距離を把握しておく必要がある。例えば、第2レンズ群G2の、光軸上の位置を検出するための位置検出デバイス9を設置する。位置検出デバイス9は、例えばエンコーダあるいはセンサなどである。なお、位置検出デバイス9は、第3レンズ群G3の位置を検出するようにしても良い。あるいは像位置に撮像素子(図示省略)を配置し、そこで得られた画像データから使用時の倍率を把握しても良い。このとき手ブレが生じるとズームレンズ系全体が振動し、振動検出デバイス6が検出した信号が制御部8に伝達される。制御部8では、使用時の倍率が像ブレを補正する必要がある倍率であるかを判定し、像ブレの補正を必要とする倍率となっている場合、その信号から第4レンズ群G4を移動させる補正量と方向を判断し、駆動デバイス7を駆動する。これにより、像位置の変動の補正が可能となる。なお、この変移手段5は一例であり、他にも様々なセンサ等を使用して実際の像位置を補正することが可能である。
【0040】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【0041】
第1実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0042】
第1レンズ群G1は、物体側より順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合よりなる接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とから構成されている。
【0043】
第2レンズ群G2は、物体側より順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合よりなる接合負レンズとから構成されている。
【0044】
第3レンズ群G3は、物体側から順に両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合よりなる接合正レンズとから構成されている。
【0045】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、正の屈折力を有する第11レンズ群G4aと、負の屈折力を有する第12レンズ群G4bと、正の屈折力を有する第13レンズ群G4cとから構成されている。第11レンズ群G4aは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との接合よりなる接合正レンズから構成され、第12レンズ群G4bは、物体側から順に、像面I側に凸面を向けた平凸レンズL43と両凹形状の負レンズL44との接合よりなる接合負レンズから構成され、第13レンズ群G4cは、両凸レンズL45から構成されている。
【0046】
以下の表1に第1実施形態に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0047】
表1中の[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の順番、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面の間隔、ndはd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.56nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、(絞り)は開口絞りS、(可変)は可変の面間隔、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示し、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
【0048】
[各種データ]において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、Yは像高、Bfはバックフォーカス、di(iは整数)は面番号iでの可変面間隔値をそれぞれ示す。[各条件式対応値]は、各条件式の対応値をそれぞれ示す。なお、βは、以下の各実施例に係るズームレンズに、後述する表3に示す対物レンズを装着したときの全系の総合倍率を示す。
【0049】
ここで、表1に記載されている焦点距離fや曲率半径r、およびその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
【0050】
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0051】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 90.853 2.0 1.80440 39.58
2 40.963 3.7 1.49782 82.52
3 −93.816 0.2
4 35.738 2.5 1.49782 82.52
5 57.591 (可変)
6 −46.767 1.5 1.77250 49.61
7 26.174 2.5
8 −41.406 1.0 1.60300 65.47
9 15.6205 2.2 1.75520 27.51
10 148.037 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 58.572 2.0 1.60300 65.47
13 −58.572 0.2
14 42.396 1.2 1.74950 35.33
15 19.005 2.6 1.49782 82.52
16 −363.441 (可変)
17 13.3198 3.0 1.48749 70.41
18 −331.203 1.5 1.65844 50.89
19 22.4254 14.8
20 ∞ 2.0 1.62004 36.26
21 −10.484 1.5 1.77250 49.61
22 10.484 15.7
23 25.847 2.7 1.72916 54.66
24 −471.548
像面 ∞
[各種データ]
ズーム比(Z)20.0
低倍端状態 光学倍率5倍時焦点距離 高倍端状態
β 0.44 5.00 8.80
f 22.00 250.00 440.00
FNO 10.91 11.39 21.87
Y 4.4 4.4 4.4
Bf 17.22 17.22 17.22
d5 7.50758 47.31448 50.84352
d10 46.26483 6.45793 2.92889
d11 45.20440 15.41740 3.15072
d16 2.43669 32.22369 44.49037
[ズームレンズ群データ]
群 始面 焦点距離
1 1 82.1
2 6 −17.3
3 12 37.75
4 17 −135.2
11 17 101.15
12 20 −11.2
13 23 33.7
[各条件式対応値]
(2)f12=−11.22、f4=−135.2、f12/f4=0.083
(3)f4=−135.2
fA=250〜440であることから、
fA=250のとき、|f4/fA|=0.54
fA=440のとき、|f4/fA|=0.31
(4)d1W/|f2|=0.454
(5)|f1/f2|=4.75
(6)Z0.5=4.472<V2=5.884<Z0.6=6.034
【0052】
図3は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。顕微鏡として実際に使用する際は、後述する表3に示す対物レンズと組み合わせて使用するが、本実施例では、ズームレンズの性能をよく表すため、ズームレンズのみの横収差図、すなわち無限遠からの光線追跡を示す。
【0053】
なお、LEDの全光束(L[lm])が240lmで、標準出力感度Sが400のとき、条件式(1)よりβ≧4.93となる。したがって、本実施例では、光学倍率がおよそ5倍以上のときに像ブレ補正を行っている。
【0054】
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高をそれぞれ示す。また、dはd線(波長λ=587.56nm)の横収差曲線を示している。さらに、図4は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【0055】
なお、以下に示す各実施例の横収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。各横収差図より第1実施例に係るズームレンズは、光学倍率5倍時、高倍端状態の各状態において、防振も含めて収差が良好に補正されていることがわかる。
【0056】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0057】
図5は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【0058】
第2実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0059】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合よりなる接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とから構成されている。
【0060】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合よりなる接合負レンズとから構成されている。
【0061】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合よりなる接合正レンズとから構成されている。
【0062】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、正の屈折力を有する第11レンズ群G4aと、負の屈折力を有する第12レンズ群G4bと、正の屈折力を有する第13レンズ群G4cとから構成されている。
【0063】
第11レンズ群G4aは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との接合よりなる接合正レンズから構成され、第12レンズ群G4bは、物体側から順に、像面I側に凸面を向けた平凸レンズL43と両凹形状の負レンズL44との接合よりなる接合負レンズから構成され、第13レンズ群G4cは、両凸レンズL45から構成されている。
【0064】
以下の表2に第2実施例に係るズームレンズの諸元値を示す。
【0065】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 91.226 2.0 1.80454 39.58
2 40.601 3.7 1.49782 82.52
3 −87.866 0.2
4 35.309 2.5 1.49782 82.52
5 57.591 (可変)
6 −80.849 1.5 1.83481 42.72
7 22.652 2.5
8 −109.856 1.0 1.67025 57.53
9 13.908 2.2 1.80518 25.41
10 69.587 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 65.818 2.0 1.59319 67.87
13 −189.737 0.2
14 35.488 1.5 1.80384 33.89
15 19.685 2.6 1.49782 82.52
16 −68.032 (可変)
17 12.935 3.0 1.48749 70.41
18 337.055 1.5 1.74810 52.30
19 22.591 18.866
20 −70.712 2.0 1.62004 36.27
21 −5.747 1.5 1.80411 46.55
22 10.889 16.529
23 −161.088 2.7 1.61720 54.01
24 −17.582
像面 ∞
[各種データ]
ズーム比(Z)15.0
低倍端状態 光学倍率5倍時焦点距離 高倍端状態
β 0.70 5.00 10.50
f 35.00 250.00 525.00
FNO 11.65 16.55 25.09
Y 4.4 4.4 4.4
Bf 16.00 16.00 16.00
d5 10.69191 42.07971 47.15302
d10 39.83384 8.44604 3.37273
d11 42.85259 18.75371 3.34255
d16 2.47741 26.57629 41.98745
[ズームレンズ群データ]
群 始面 焦点距離
1 1 79.0
2 6 −17.5
3 12 38.00
4 17 −135.2
11 17 112.41
12 20 −8.43
13 23 31.75
[各条件式対応値]
(2)f12=−8.43、f4=−120.41、f12/f4=0.070
(3)f4=−120.41
fA=250〜525であることから、
fA=250のとき、|f4/fA|=0.48
fA=440のとき、|f4/fA|=0.23
(4)d1W/|f2|=0.611
(5)|f1/f2|=4.51
(6)Z0.5=3.873<V2=4.969<Z0.6=5.078
【0066】
図6は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。顕微鏡として実際に使用する際は、後述する表3に示す対物レンズと組み合わせて使用するが、本実施例ではズームレンズの性能をよく表すため、ズームレンズのみの横収差図、すなわち無限遠からの光線追跡を示す。
【0067】
なお、LEDの全光束(L[lm])が240lmで、標準出力感度Sが400のとき、条件式(1)よりβ≧4.93となる。したがって、本実施例では、光学倍率がおよそ5倍以上のときに像ブレ補正を行っている。
【0068】
さらに、図7は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。各収差図より、第2実施例に係るズームレンズは、光学倍率5倍時、高倍端の各状態において、防振も含めて収差が良好に補正されていることがわかる。
【0069】
第1および第2実施例に係るズームレンズは、例えば、図8および以下の表3に諸元値を示す対物レンズと組み合わせて使用される。
【0070】
図8は、この対物レンズのレンズ構成を示す図である。
【0071】
(表3)
[面データ]
面番号 r d nd νd
1 −14.400 1.60 1.65412 39.68
2 −19.900 0.10
3 24.500 4.30 1.72342 37.95
4 423.036 1.20 1.61340 44.27
5 39.904 2.10
6 296.026 1.20 1.83481 42.72
7 20.657 8.10 1.43425 95.00
8 −32.011 0.35
9 101.559 3.80 1.49782 82.52
10 −40.270
[各種データ]
焦点距離=50
最大NA=0.2
作動距離=30.28
【0072】
図9は、本実施形態に係るズームレンズを備えた顕微鏡の光学系を示す図である。
【0073】
物体1からの光は、対物レンズ2で平行光に変換された後、ズームレンズ3で変倍すると同時に像面Iに物体1の像を形成する。そして、例えば、この像を不図示の接眼レンズを介して観察者が観察したり、像面にCCD等の撮像手段を配置してモニタを介して観察したりする。像面にCCD等の撮像手段を配置した場合、金属の標本や、例えば歯車のような機械部品等の比較的大きな物体を広い視野で良好に観察することができる。そしてこのとき、上述したように、対物レンズ2の先にキャップ(図示省略)を付けることで、特に高倍時での焦点位置合わせが容易にできる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、ズーム比15倍以上という高いズーム比を持ちながらも、像ブレ補正機能を有する小型でコンパクトな顕微鏡用ズームレンズおよび当該ズームレンズを備えた顕微鏡の提供が可能である。
【符号の説明】
【0075】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G4a 第11レンズ群
G4b 第12レンズ群
G4c 第13レンズ群
I 像面
1 物体
2 対物レンズ
3 ズームレンズ
5 変移手段
6 振動検出デバイス
7 駆動デバイス
8 制御部
9 位置検出デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズ、および当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにおいては、像ブレが生じた際の補正機能を持つズームレンズが多く提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
このようなズームレンズは、レンズ構成が複雑でレンズの枚数が多い。さらに、最も物体側のレンズ群が他のレンズ群に比して非常に大きな外径となっていることから、ズームレンズ系全体が大型で重量のあるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−29738号公報
【特許文献2】特開2009−169264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、工場等の品質管理部門や検査部門では、持ち運びができ、測定機能を備えた顕微鏡、実体顕微鏡、デジタル顕微鏡等(以下、これらをまとめて顕微鏡という。)が用いられることが多くなってきている。このような顕微鏡は、ズーム機能を有し、かつズーム比の高いものが望まれている。しかし、このような顕微鏡は、高倍で観察しているときに顕微鏡が僅かに動いただけでも視野が大きく動いてしまい、像ブレが生じ易い。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡用ズームレンズは、 物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る顕微鏡は、上記顕微鏡用ズームレンズを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、像ブレ補正機能を有する顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】各実施例に共通する顕微鏡用ズームレンズの構成と、ズーム移動軌跡を示す図である。
【図2】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【図3】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。
【図4】第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【図5】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【図6】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。
【図7】第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【図8】第1または第2実施例のズームレンズと組み合わせて使用される対物レンズの一例のレンズ構成を示す図である。
【図9】実施形態に係る顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡の光学系を示す図である。
【図10】変移手段の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る顕微鏡用ズームレンズおよび当該顕微鏡用ズームレンズを備えた顕微鏡の実施形態について説明する。なお、本明細書において顕微鏡とは、持ち運びができ、測定機能を備えた顕微鏡、実体顕微鏡、デジタル顕微鏡を含む。また、光学倍率とは、モニタ等の倍率を含まない、光学系だけで達成される最も基本となる倍率のことをいう。
【0012】
本実施形態に係る顕微鏡用ズームレンズ(以下、ズームレンズと略記する。)は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを備えている。第4レンズ群は、光軸とほぼ直交する方向に移動して像位置の変動を補正している。
【0013】
本実施形態において、このように第4レンズ群を防振レンズ群としたのは、以下の理由による。まず、第1レンズ群は最も大口径のレンズ群であるため、これを防振レンズ群とすると駆動機構が複雑になり好ましくない。次に、第2レンズ群および第3レンズ群は、後述する実施例で説明するように、変倍のために光軸に沿って移動する可動変倍レンズ群であり、これらを防振レンズ群とすると駆動機構が複雑かつ大型化するので好ましくない。さらに、第2レンズ群および第3レンズ群を防振レンズ群としてレンズを偏心させたときには、像位置の移動量が各倍率によって異なるため、駆動機構が複雑となるので好ましくない。これに対し、第4レンズ群は、合焦時において光軸方向に固定であるため、各倍率においてレンズを偏心させたときの像位置の移動量が不変である。このため、第4レンズ群を防振レンズ群とするのが好ましい。このように第4レンズ群を防振レンズ群とすることで、ズームレンズは全体がコンパクトに構成される。
【0014】
本実施形態に係るズームレンズは、照明系光源にはLEDを用い、LEDの全光束をL[lm]、光学倍率をβ、受光手段の標準出力感度をSとしたとき、以下の条件式(1)を満たす光学倍率以上の倍率において、前記第4レンズ群を光軸に対して垂直な方向に偏心移動させることにより、像ブレを補正するものである。
(1) β3 ≧ LS/800
条件式(1)は、次のようにして導き出される。すなわち、照明系と受光系(結像系)、および被観察試料、受光素子等のモデルを設定し、シミュレーションを行った。設定したモデルは以下の通りである。
1)照明系
・光源:LEDとし、LEDによる全光束は800lmとする。
・被観察試料:18%標準ニュートラルグレー(反射率18%)
2)受光系(結像系)
・対物レンズ:焦点距離34.5mm、作動距離30mm、NA 0.15
・結像レンズ:焦点距離34.5mm、103.5mm、172.5mm、
241.5mm、(光学倍率では、β=1x、3x、5x、
7xに相当)
・受光素子:CCD(1/1.8型を想定)
なお、上記モデルによる像側(CCD側)NAは以下の対応表に示す通りである。
(対応表)
光学倍率β CCD側NA
1x 0.15
3x 0.05
5x 0.03
7x 0.021
【0015】
このようにモデルを設定し、物体面と射出面(CCD面)それぞれにおいて、照度分布を求めた。その結果、CCD面照度は光学倍率βの二乗に反比例(CCD側のNAの二乗に比例)すると仮定すると、光学倍率βとCCD面照度には、以下の式(1−1)の関係が成立することがわかった。
(1−1) CCD面照度[lux] =(1.25×光源全光束[lm] )/光学倍率β2
さらに市販のデジタルマイクロスコープの対物レンズの先にキャップをはめ、光学倍率β、露光時間をいろいろと変えて画像を撮像し、像ブレの有無を評価したところ、像ブレを生じない露光時間(シャッタースピード)は光学倍率βに反比例し、以下の式(1−2)のような関係があることがわかった。
(1−2) 像ブレを生じない露光時間[sec] = 1/(100×光学倍率β)
例えば、光学倍率βが5倍のとき、像ブレを生じない露光時間は1/500[sec]であることが計算できる。そしてさらに、光学倍率βとLEDの出力の関係について述べるが、その前に、CCD感度とLED出力の関係について述べる。
【0016】
CIPA(カメラ映像機器工業会)統一基準によると、標準出力感度(ISO感度)とは、18%標準ニュートラルグレー被写体の撮影時、8bit出力で明るさが118になるときの感度と規定されている。また、このときの像面露光量がHm(lux・sec)のとき次の式(1−3)によって求められる無次元数値Sを標準出力感度としている。
(1−3) 標準出力感度S = 10/像面露光量Hm
ここで、像面露光量Hmは、
(1−4) 像面露光量Hm=CCD面照度[lux]×露光時間[sec]
である。式(1−4)に式(1−1)および(1−3)を代入すると、照明に必要なLEDの光束(光源全光束)L[lm]は、以下の式(1−5)のように求められる。
(1−5)LEDの光束L[lm]=8×光学倍率β2/(標準出力感度S×露光時間 [sec] )
ここで、手持ちで撮影する場合は、像ブレを考慮して、式(1−2)に従って露光時間を設定したとする。式(1−2)を式(1−5)に代入すると、
(1−6) LEDの光束L[lm] = 800×光学倍率β3/標準出力感度S
が得られる。さらに式(1−6)を変形することにより、条件式(1)で求められる光学倍率以上で用いる場合には、像ブレ補正が必要なことがわかる。
【0017】
式(1−6)によれば、光学倍率βに応じてLEDの光束Lを際限なく大きく、すなわち明るくできるのであれば、像ブレ補正は不要である。しかし、実際のポータブル顕微鏡においては、設置できる光源の大きさ(光束)や消費電力、標準出力感度(ISO)にも制約がある。光学装置等でよく用いられている、あるタイプのLEDは、発光効率80[lm/W]程度である。ポータブル顕微鏡で用いるとき、実用的な消費電力は3W程度と考えられる。すると、光束は80×3で240[lm]が求められる。また、標準出力感度もISO400程度が一般的であることを考慮すると、式(1−6)あるいは条件式(1)から光学倍率β=4.93が求められる。すなわちこの光学倍率以上で使用する場合は像ブレ補正が必要となる。
【0018】
また、本実施形態のズームレンズは、第4レンズ群は、正レンズ群、負レンズ群、正レンズ群のトリプレットタイプで構成されることを特徴とする。さらに、前記第4レンズ群の負レンズ群は、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする。
(2) 0.04 < f12/f4 < 0.18
ただし、
f4:第4レンズ群の焦点距離
f12:第4レンズ群中の負のレンズ群の焦点距離
条件式(2)は、第4レンズ群中の負レンズ群のパワーの適切な範囲を設定した条件式である。
【0019】
第4レンズ群の屈折力は負である。そのため第4レンズ群中に負レンズが必要なのはもちろんであるが、負レンズよりも物体側に正レンズを置いて、光束を屈折させてから負レンズに光が入射すると負レンズを小型にできる。さらに負レンズを出た後、正レンズを配置することで、この正レンズのレンズ最終面から像面までの距離も短くすることが可能である。負レンズを2群用いても、その2群を一つの負レンズ(群)と見なせるので、これもトリプレットタイプと言える。本実施形態に係るズームレンズは、第4レンズ群の一部を動かすのではなく、第4レンズ群を一体として、光軸とほぼ直交する方向に移動させて像位置補正を行う。このとき、上記の条件式(2)を満たせば、結像性能の劣化を招かない。
【0020】
上記条件式(2)は、上述したように、第4レンズ群中の負レンズ群のパワーの適切な範囲を設定した条件式である。本発明においては、第4レンズ群の最も像面側に正レンズを配置し、さらに負レンズ群のパワーを強くすることによって、CCD等の撮像素子を像面に設置した場合でもシェーディング等の支障がないように、射出瞳位置を像面(結像位置)から十分遠くにし、素子にほぼ垂直に光線が入射するようになっている。それはすなわち第4レンズ群全体を偏心させることが必要であり、そして第4レンズ群全体を偏心させても、結像性能の劣化を招かないことを意味している。さらには、第4レンズ群の焦点距離は以下の範囲内にすることが望ましい。すなわち、本実施形態に係るズームレンズは、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
(3) 0.20 ≦ |f4/fA| ≦ 0.60
ただし、
f4:第4レンズ群の焦点距離
fA:光学倍率が5倍以上の状態でのズームレンズ系全体の焦点距離
条件式(3)は、像位置補正を行う第4レンズ群の適切な焦点距離の範囲を規定するための条件式である。条件式(3)を満足することにより、防振レンズ群を偏心させて像位置の補正をした際のコマ収差の発生を抑え、かつ駆動機構の小型化を可能にする。光学倍率が上がるにしたがい、ズームレンズ系全体の焦点距離は長くなるが、条件式(3)の下限値を下回ると、第4レンズ群の焦点距離が短くなり、防振レンズ群の偏心により像位置の補正をした際にコマ収差が発生しやすくなり好ましくない。
【0021】
一方、条件式(3)の上限値を上回ると、像位置補正のために防振レンズ群を偏心させる量が多く必要となり、駆動機構が大型化してしまい好ましくない。
【0022】
また、本実施形態に係るズームレンズは、以下の条件式(4)、(5)および(6)を満たすことが好ましい。
(4) 0.4 < d1W/|f2| < 0.7
(5) |f1/f2| > 4.5
(6) Z0.5 < V2 < Z0.6
ただし、d1Wは、低倍端状態における第1レンズ群の最も像側のレンズ面と第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔、f2は第2レンズ群の焦点距離、f1は第1レンズ群の焦点距離、Zはズームレンズのズーム比、V2は第2レンズ群の変倍率をそれぞれ示す。
【0023】
条件式(4)は、低倍端状態における第1レンズ群の最も像側のレンズ面と第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔、すなわち第1レンズ群と第2レンズ群との光軸方向の間隔と、第2レンズ群の焦点距離との比の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(4)を満足することにより、低倍端状態における入射瞳位置を物体面から遠ざけ、低倍端状態での物体側テレセントリック性を確保することができる。
【0024】
条件式(4)の下限値を下回ると、低倍端状態における入射瞳位置が物体面に近くなり、デフォーカス時における像の大きさの変化率が大きくなるため、物体側テレセントリック性が確保できず、好ましくない。
【0025】
一方、条件式(4)の上限値を上回ると、対物レンズの外径が大きくなり、変倍時におけるコマ収差の変動が大きくなり好ましくない。
【0026】
条件式(5)は、第1レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離との比の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(5)を満足することにより、15倍以上の高いズーム比を確保し、かつ低倍端状態における入射瞳位置を物体面から遠ざけ、小型で高い結像性能を有するズームレンズを達成することができる。
【0027】
条件式(5)の下限値を下回ると、第1レンズ群と第2レンズ群との光軸方向の間隔が狭まり、第1レンズ群と第2レンズ群とが干渉するため、低倍端状態における倍率を小さくすることができず、結果として高いズーム比が得られない。また、条件式(5)の下限値を下回る状態で高いズーム比を得ようとすると、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が広くなり、ズームレンズの全長が大きくなり好ましくない。また、条件式(5)の下限値を下回る状態で、第3レンズ群および第4レンズ群の屈折力を大きくしてズーム比を高くしようとしても、15倍以上の高いズーム比は得られない。
【0028】
条件式(6)は、第2レンズ群の変倍率の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(6)を満足することにより、ズームレンズの全長をコンパクトに維持しつつ、高い結像性能を有するズームレンズを達成することができる。なお、本明細書において「変倍率」とは、ズームレンズの「ズーム比」に対する「負担量」を示す。
【0029】
条件式(6)の下限値を下回る場合、高いズーム比を得ようとすると第3レンズ群の変倍率が増大し、変倍時の第3レンズ群の移動量が増加する。その結果、第2レンズ群と第3レンズ群との干渉を防止するために第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を長くする必要が生じ、ズームレンズの全長が大きくなり好ましくない。
【0030】
一方、条件式(6)の上限値を上回ると、第2レンズ群の屈折力が大きくなり、第2レンズ群の「負担量」を上げることとなるため、ズームレンズの小型化には有利となる。しかし、この場合、低倍端状態においては、歪曲収差の増大、ペッツバール和の悪化による非点収差の増大、変倍時におけるコマ収差、特に下方コマ収差の変動の増大等が生じ、高倍端状態においては球面収差の増大等が生じてしまい好ましくない。
【0031】
また、本実施形態に係るズームレンズは、第4レンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群と負の屈折力を有するレンズ群と正の屈折力を有するレンズ群とからなるトリプレットタイプで構成されることが好ましい。第4レンズ群をトリプレットタイプとすることにより、諸収差を良好に補正し、小型化と良好な結像性能の双方を達成することができる。また、第4レンズ群中の一部のレンズを動かすのではなく、第4レンズ群を一体として動かして像位置の補正を行っている。これにより、トリプレットタイプの対称的なレンズ配置と相俟って、結像性能の劣化を招かずに防振レンズ群の駆動制御を容易にすることが可能となっている。
【0032】
なお、光学倍率が上がるに従い、特に手持ちで用いる顕微鏡の場合にあっては、最初のおおよその焦点合わせが非常に困難になってくる。また、高倍になるにしたがって開口数が上がり、焦点深度も浅くなってくるため、ピント合わせも困難になってくる。そこで、本実施形態に係るズームレンズと組み合わせて使用される対物レンズ(図8参照)の先にキャップ(図示省略)を取付け、キャップの長さは対物レンズの作動距離相当としておき、対物レンズにキャップを取付けたまま被検物にキャップの先を押し当てた状態で用いることが望ましい。こうすることで、最も困難な作業である最初のおおよその焦点位置合わせが簡単にできる。
【0033】
また、本実施形態に係る顕微鏡は、上記のズームレンズを備えたことを特徴としている。これにより、像ブレ補正機能を有するズームレンズを備える顕微鏡を実現することができる。
【0034】
(数値実施例)
以下、本実施形態に係るズームレンズの数値実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は、各実施例に共通する顕微鏡用ズームレンズの構成と、ズーム移動軌跡を示す図である。
【0036】
各実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0037】
ズームレンズは、低倍端側(図1(a))から高倍端側(図1(b))への変倍に際し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が減少するように、第2レンズ群G2が光軸方向に沿って物体側から像側へのみ移動し、第3レンズ群G3が光軸方向に沿って像側から物体側へのみ移動する。このように、本実施形態に係るズームレンズは、低倍端状態から高倍端状態への変倍に際し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とがそれぞれ一方向にのみ移動し、途中で戻る軌跡を取ることが無い。このため、レンズ群の移動機構を簡素化することができる。
【0038】
各実施例においては、第4レンズ群G4を変移手段によって光軸を横切る方向に沿って移動させ、ズームレンズの振動に起因する像位置の変動を補正している。図10は、変移手段5の構成を概略的に示す図である。図10に示す変移手段5は、ズームレンズ系自体の振動を検出する振動検出デバイス6と、第4レンズ群G4を実質的に光軸と直交する方向に沿って移動させる駆動デバイス7と、振動検出デバイス6からの出力に基づいて、振動による像の変化を補正するように駆動デバイス7を制御する制御部8とを有している。
【0039】
振動検出デバイス6としては、例えば角速度センサを適用することができる。また、駆動デバイス7としては、モータやコアレスモータ、ピエゾ素子などを適用することができる。防振レンズ群の補正量は、ズームレンズ全系の焦点距離に応じて変化はしないが、光学倍率が5倍以上の時に像位置補正を行うため、使用時の焦点距離を把握しておく必要がある。例えば、第2レンズ群G2の、光軸上の位置を検出するための位置検出デバイス9を設置する。位置検出デバイス9は、例えばエンコーダあるいはセンサなどである。なお、位置検出デバイス9は、第3レンズ群G3の位置を検出するようにしても良い。あるいは像位置に撮像素子(図示省略)を配置し、そこで得られた画像データから使用時の倍率を把握しても良い。このとき手ブレが生じるとズームレンズ系全体が振動し、振動検出デバイス6が検出した信号が制御部8に伝達される。制御部8では、使用時の倍率が像ブレを補正する必要がある倍率であるかを判定し、像ブレの補正を必要とする倍率となっている場合、その信号から第4レンズ群G4を移動させる補正量と方向を判断し、駆動デバイス7を駆動する。これにより、像位置の変動の補正が可能となる。なお、この変移手段5は一例であり、他にも様々なセンサ等を使用して実際の像位置を補正することが可能である。
【0040】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【0041】
第1実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0042】
第1レンズ群G1は、物体側より順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合よりなる接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とから構成されている。
【0043】
第2レンズ群G2は、物体側より順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合よりなる接合負レンズとから構成されている。
【0044】
第3レンズ群G3は、物体側から順に両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合よりなる接合正レンズとから構成されている。
【0045】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、正の屈折力を有する第11レンズ群G4aと、負の屈折力を有する第12レンズ群G4bと、正の屈折力を有する第13レンズ群G4cとから構成されている。第11レンズ群G4aは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との接合よりなる接合正レンズから構成され、第12レンズ群G4bは、物体側から順に、像面I側に凸面を向けた平凸レンズL43と両凹形状の負レンズL44との接合よりなる接合負レンズから構成され、第13レンズ群G4cは、両凸レンズL45から構成されている。
【0046】
以下の表1に第1実施形態に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0047】
表1中の[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の順番、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面の間隔、ndはd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.56nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、(絞り)は開口絞りS、(可変)は可変の面間隔、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示し、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
【0048】
[各種データ]において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、Yは像高、Bfはバックフォーカス、di(iは整数)は面番号iでの可変面間隔値をそれぞれ示す。[各条件式対応値]は、各条件式の対応値をそれぞれ示す。なお、βは、以下の各実施例に係るズームレンズに、後述する表3に示す対物レンズを装着したときの全系の総合倍率を示す。
【0049】
ここで、表1に記載されている焦点距離fや曲率半径r、およびその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
【0050】
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0051】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 90.853 2.0 1.80440 39.58
2 40.963 3.7 1.49782 82.52
3 −93.816 0.2
4 35.738 2.5 1.49782 82.52
5 57.591 (可変)
6 −46.767 1.5 1.77250 49.61
7 26.174 2.5
8 −41.406 1.0 1.60300 65.47
9 15.6205 2.2 1.75520 27.51
10 148.037 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 58.572 2.0 1.60300 65.47
13 −58.572 0.2
14 42.396 1.2 1.74950 35.33
15 19.005 2.6 1.49782 82.52
16 −363.441 (可変)
17 13.3198 3.0 1.48749 70.41
18 −331.203 1.5 1.65844 50.89
19 22.4254 14.8
20 ∞ 2.0 1.62004 36.26
21 −10.484 1.5 1.77250 49.61
22 10.484 15.7
23 25.847 2.7 1.72916 54.66
24 −471.548
像面 ∞
[各種データ]
ズーム比(Z)20.0
低倍端状態 光学倍率5倍時焦点距離 高倍端状態
β 0.44 5.00 8.80
f 22.00 250.00 440.00
FNO 10.91 11.39 21.87
Y 4.4 4.4 4.4
Bf 17.22 17.22 17.22
d5 7.50758 47.31448 50.84352
d10 46.26483 6.45793 2.92889
d11 45.20440 15.41740 3.15072
d16 2.43669 32.22369 44.49037
[ズームレンズ群データ]
群 始面 焦点距離
1 1 82.1
2 6 −17.3
3 12 37.75
4 17 −135.2
11 17 101.15
12 20 −11.2
13 23 33.7
[各条件式対応値]
(2)f12=−11.22、f4=−135.2、f12/f4=0.083
(3)f4=−135.2
fA=250〜440であることから、
fA=250のとき、|f4/fA|=0.54
fA=440のとき、|f4/fA|=0.31
(4)d1W/|f2|=0.454
(5)|f1/f2|=4.75
(6)Z0.5=4.472<V2=5.884<Z0.6=6.034
【0052】
図3は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。顕微鏡として実際に使用する際は、後述する表3に示す対物レンズと組み合わせて使用するが、本実施例では、ズームレンズの性能をよく表すため、ズームレンズのみの横収差図、すなわち無限遠からの光線追跡を示す。
【0053】
なお、LEDの全光束(L[lm])が240lmで、標準出力感度Sが400のとき、条件式(1)よりβ≧4.93となる。したがって、本実施例では、光学倍率がおよそ5倍以上のときに像ブレ補正を行っている。
【0054】
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高をそれぞれ示す。また、dはd線(波長λ=587.56nm)の横収差曲線を示している。さらに、図4は、第1実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。
【0055】
なお、以下に示す各実施例の横収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。各横収差図より第1実施例に係るズームレンズは、光学倍率5倍時、高倍端状態の各状態において、防振も含めて収差が良好に補正されていることがわかる。
【0056】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0057】
図5は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズのレンズ構成を示す図である。
【0058】
第2実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0059】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合よりなる接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とから構成されている。
【0060】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合よりなる接合負レンズとから構成されている。
【0061】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合よりなる接合正レンズとから構成されている。
【0062】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、正の屈折力を有する第11レンズ群G4aと、負の屈折力を有する第12レンズ群G4bと、正の屈折力を有する第13レンズ群G4cとから構成されている。
【0063】
第11レンズ群G4aは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との接合よりなる接合正レンズから構成され、第12レンズ群G4bは、物体側から順に、像面I側に凸面を向けた平凸レンズL43と両凹形状の負レンズL44との接合よりなる接合負レンズから構成され、第13レンズ群G4cは、両凸レンズL45から構成されている。
【0064】
以下の表2に第2実施例に係るズームレンズの諸元値を示す。
【0065】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 91.226 2.0 1.80454 39.58
2 40.601 3.7 1.49782 82.52
3 −87.866 0.2
4 35.309 2.5 1.49782 82.52
5 57.591 (可変)
6 −80.849 1.5 1.83481 42.72
7 22.652 2.5
8 −109.856 1.0 1.67025 57.53
9 13.908 2.2 1.80518 25.41
10 69.587 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 65.818 2.0 1.59319 67.87
13 −189.737 0.2
14 35.488 1.5 1.80384 33.89
15 19.685 2.6 1.49782 82.52
16 −68.032 (可変)
17 12.935 3.0 1.48749 70.41
18 337.055 1.5 1.74810 52.30
19 22.591 18.866
20 −70.712 2.0 1.62004 36.27
21 −5.747 1.5 1.80411 46.55
22 10.889 16.529
23 −161.088 2.7 1.61720 54.01
24 −17.582
像面 ∞
[各種データ]
ズーム比(Z)15.0
低倍端状態 光学倍率5倍時焦点距離 高倍端状態
β 0.70 5.00 10.50
f 35.00 250.00 525.00
FNO 11.65 16.55 25.09
Y 4.4 4.4 4.4
Bf 16.00 16.00 16.00
d5 10.69191 42.07971 47.15302
d10 39.83384 8.44604 3.37273
d11 42.85259 18.75371 3.34255
d16 2.47741 26.57629 41.98745
[ズームレンズ群データ]
群 始面 焦点距離
1 1 79.0
2 6 −17.5
3 12 38.00
4 17 −135.2
11 17 112.41
12 20 −8.43
13 23 31.75
[各条件式対応値]
(2)f12=−8.43、f4=−120.41、f12/f4=0.070
(3)f4=−120.41
fA=250〜525であることから、
fA=250のとき、|f4/fA|=0.48
fA=440のとき、|f4/fA|=0.23
(4)d1W/|f2|=0.611
(5)|f1/f2|=4.51
(6)Z0.5=3.873<V2=4.969<Z0.6=5.078
【0066】
図6は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズの防振を行っていない状態での横収差図であり、(a)は低倍端状態、(b)は光学倍率5倍時、(c)は高倍端状態での横収差を示している。顕微鏡として実際に使用する際は、後述する表3に示す対物レンズと組み合わせて使用するが、本実施例ではズームレンズの性能をよく表すため、ズームレンズのみの横収差図、すなわち無限遠からの光線追跡を示す。
【0067】
なお、LEDの全光束(L[lm])が240lmで、標準出力感度Sが400のとき、条件式(1)よりβ≧4.93となる。したがって、本実施例では、光学倍率がおよそ5倍以上のときに像ブレ補正を行っている。
【0068】
さらに、図7は、第2実施例に係る顕微鏡用ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸に対して垂直に1mm偏心させた場合の横収差図であり、(a)は光学倍率5倍時、(b)は高倍端状態での横収差を示している。各収差図より、第2実施例に係るズームレンズは、光学倍率5倍時、高倍端の各状態において、防振も含めて収差が良好に補正されていることがわかる。
【0069】
第1および第2実施例に係るズームレンズは、例えば、図8および以下の表3に諸元値を示す対物レンズと組み合わせて使用される。
【0070】
図8は、この対物レンズのレンズ構成を示す図である。
【0071】
(表3)
[面データ]
面番号 r d nd νd
1 −14.400 1.60 1.65412 39.68
2 −19.900 0.10
3 24.500 4.30 1.72342 37.95
4 423.036 1.20 1.61340 44.27
5 39.904 2.10
6 296.026 1.20 1.83481 42.72
7 20.657 8.10 1.43425 95.00
8 −32.011 0.35
9 101.559 3.80 1.49782 82.52
10 −40.270
[各種データ]
焦点距離=50
最大NA=0.2
作動距離=30.28
【0072】
図9は、本実施形態に係るズームレンズを備えた顕微鏡の光学系を示す図である。
【0073】
物体1からの光は、対物レンズ2で平行光に変換された後、ズームレンズ3で変倍すると同時に像面Iに物体1の像を形成する。そして、例えば、この像を不図示の接眼レンズを介して観察者が観察したり、像面にCCD等の撮像手段を配置してモニタを介して観察したりする。像面にCCD等の撮像手段を配置した場合、金属の標本や、例えば歯車のような機械部品等の比較的大きな物体を広い視野で良好に観察することができる。そしてこのとき、上述したように、対物レンズ2の先にキャップ(図示省略)を付けることで、特に高倍時での焦点位置合わせが容易にできる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、ズーム比15倍以上という高いズーム比を持ちながらも、像ブレ補正機能を有する小型でコンパクトな顕微鏡用ズームレンズおよび当該ズームレンズを備えた顕微鏡の提供が可能である。
【符号の説明】
【0075】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G4a 第11レンズ群
G4b 第12レンズ群
G4c 第13レンズ群
I 像面
1 物体
2 対物レンズ
3 ズームレンズ
5 変移手段
6 振動検出デバイス
7 駆動デバイス
8 制御部
9 位置検出デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする顕微鏡用ズームレンズ。
【請求項2】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.20≦|f4/fA|≦0.60
ただし、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
fA:光学倍率が5倍以上の状態での前記顕微鏡用ズームレンズ系全体の焦点距離
【請求項3】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.4<d1W/|f2|<0.7
|f1/f2|>4.5
Z0.5<V2<Z0.6
ただし、
d1W:低倍端状態における前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面と前記第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
Z:前記顕微鏡用ズームレンズのズーム比
V2:前記第2レンズ群の変倍率
【請求項4】
前記顕微鏡用ズームレンズのズーム比が15倍以上であり、光学倍率が5倍以上での使用時に、前記第4レンズ群を光軸と直角に交差する方向に移動させることにより像ブレを補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズ
【請求項5】
前記第4レンズ群は、物体側より順に、正の屈折力を有するレンズ群と負の屈折力を有するレンズ群と正の屈折力を有するレンズ群とからなるトリプレットタイプで構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
【請求項6】
前記第4レンズ群の負レンズ群は、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.04 < f12/f4 < 0.18
ただし、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
f12:前記第4レンズ群中の負レンズ群の焦点距離
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズを備えたことを特徴とする顕微鏡。
【請求項8】
請求項7に記載の顕微鏡において、
更に、前記物体を照明する照明光源と、
前記顕微鏡用ズームレンズおよび結像光学系で結像した前記物体の像を受光する受光手段と、
前記顕微鏡用ズームレンズの前記第4レンズ群を駆動する駆動手段とを有する顕微鏡であって、
前記駆動手段は、以下の条件を満足する光学倍率以上のときに前記光軸と直角に交差する方向に前記第4レンズ群を移動して、像ブレを補正することを特徴とする顕微鏡。
β3 ≧ LS/800
ただし、
β:前記顕微鏡用ズームレンズの光学倍率
L:前記物体を照明する光源の全光束
S:前記受光手段の標準出力感度
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第4レンズ群は、光軸と直角に交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする顕微鏡用ズームレンズ。
【請求項2】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.20≦|f4/fA|≦0.60
ただし、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
fA:光学倍率が5倍以上の状態での前記顕微鏡用ズームレンズ系全体の焦点距離
【請求項3】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.4<d1W/|f2|<0.7
|f1/f2|>4.5
Z0.5<V2<Z0.6
ただし、
d1W:低倍端状態における前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面と前記第2レンズ群の最も物体側のレンズ面との間隔
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
Z:前記顕微鏡用ズームレンズのズーム比
V2:前記第2レンズ群の変倍率
【請求項4】
前記顕微鏡用ズームレンズのズーム比が15倍以上であり、光学倍率が5倍以上での使用時に、前記第4レンズ群を光軸と直角に交差する方向に移動させることにより像ブレを補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズ
【請求項5】
前記第4レンズ群は、物体側より順に、正の屈折力を有するレンズ群と負の屈折力を有するレンズ群と正の屈折力を有するレンズ群とからなるトリプレットタイプで構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
【請求項6】
前記第4レンズ群の負レンズ群は、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡用ズームレンズ。
0.04 < f12/f4 < 0.18
ただし、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
f12:前記第4レンズ群中の負レンズ群の焦点距離
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の顕微鏡用ズームレンズを備えたことを特徴とする顕微鏡。
【請求項8】
請求項7に記載の顕微鏡において、
更に、前記物体を照明する照明光源と、
前記顕微鏡用ズームレンズおよび結像光学系で結像した前記物体の像を受光する受光手段と、
前記顕微鏡用ズームレンズの前記第4レンズ群を駆動する駆動手段とを有する顕微鏡であって、
前記駆動手段は、以下の条件を満足する光学倍率以上のときに前記光軸と直角に交差する方向に前記第4レンズ群を移動して、像ブレを補正することを特徴とする顕微鏡。
β3 ≧ LS/800
ただし、
β:前記顕微鏡用ズームレンズの光学倍率
L:前記物体を照明する光源の全光束
S:前記受光手段の標準出力感度
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−163616(P2012−163616A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21822(P2011−21822)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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