説明

風力発電の励磁同期発電システム及びその制御方法

【課題】最大のパワーを出力することができる風力発電の励磁同期発電システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】風力発電の励磁同期発電システムの制御方法は、双入力軸及び単出力軸を有する歯車伝達機構を利用して、風力エネルギー及びサーボモーターの制御パワーを整合することにより、出力軸が励磁同期発電機を駆動して電力を生成することができる。このシステムにおいて、サーボモーターの回転速度及び位相を制御することにより、励磁同期発電機の出力電圧の位相及び周波数が電力系統と同じである。なお、最大パワー決定ユニット及びパワーコントローラにより、励磁同期発電機の励磁電流を制御し、安定した電圧、最大の風力エネルギー及びモーターの最小のエネルギー消費を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電の励磁同期発電システム及びその制御方法に関し、特にモーターのサーボ制御及び励磁同期発電機の励磁電流の制御により、発電機を等速で駆動し、その電圧及び周波数を安定し、なおかつ電力系統と同位相になり、さらに励磁同期発電機を制御して最大のパワーを出力することができる制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的な風力発電システムは、永久磁石式或いは誘導式発電機が主流となっている。そのシステムは、伝達機構により動力源のエネルギーを発電機へ伝達し、伝達機構の回転速度及び回転力は瞬間の動力源の強度により決定される。そのため、発電機の回転速度を確保するため、伝達機構の回転速度は(極端な)制限を受けることになる。永久磁石式風力発電システムにおいて、動力源の強度が標準範囲をオーバー又はそれに達しない時に、発電機は、動力源の強度が標準範囲内に回復するまで停止する。この受動的な発電方式は、交流/直流変換器及び直流/交流変換器を通して電力を出力する必要がある。
【0003】
また、誘導式風力発電機において、入力動力源が変動或いは電力系統の負担が増加する場合、誘導式発電機の特性により、発電機の出力端子が瞬間的な電圧を安定させることができず、出力電源の品質を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、モーターのサーボ制御及び励磁同期発電機の励磁電流の制御により、伝達機構の回転速度を調整する方法を提供する。伝達機構の回転速度が標準に達しない又はオーバーする時に、モーターのサーボ制御を利用して伝達機構の回転速度を安定させ、その位相を制御する目的を達成する。これにより、励磁同期発電機の回転は安定し、なお、その出力電圧の位相及び周波数も安定することができる。さらに、最大パワー決定ユニットによって、風力エネルギーの入力パワー及びモーターの微調整パワーを整合することで、パワー命令を決定し、同期発電機の出力パワーをフィードバックして励磁電流命令を生成し、励磁同期発電機の出力電圧及び電流を制御する。従って、励磁同期発電機の最大のパワーを出力することができる。
【0005】
また、本発明は、モーターのサーボ制御及び励磁同期発電機の励磁電流の制御により、風力発電システムの入力動力源が変動する時に、伝達機構の回転速度を安定させ、電圧、周波数及び位相をを制御する目的を達成する。また、パワーのフィードバック及び励磁電流の制御により、風力発電システムが最大のパワーを電力系統へ出力することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、風力発電の励磁同期発電システムの制御方法が提供される。該制御方法は、励磁同期発電機の出力電圧、電流及びパワーを検知することにより、検知された前記出力電圧、前記電流及び前記パワーに応じて、前記励磁同期発電機の励磁電流を制御し、それによって、前記励磁同期発電機が最大パワーを出力する工程と、エンコーダの情報に応じて、モーターのサーボ制御を行うことにより、伝達機構が所定の回転速度で前記励磁同期発電機を駆動し、位相が電力系統と同じである三相交流電源を生成し、前記三相交流電源を前記電力系統と並列接続する工程と、を含む。
【0007】
また、本発明によれば、風力発電の励磁同期発電システムが提供され、該発電システムは、風力源と、励磁同期発電機と、前記風力源から風力エネルギーにより、前記励磁同期発電機を駆動する伝達機構と、励磁電流信号を前記励磁同期発電機へ提供することにより、前記励磁同期発電機が電力を前記電力系統へ出力する励磁制御ユニットと、前記伝達機構の回転を制御するモーターと、前記電力系統の位相情報及び前記励磁同期発電機のアーマチャの位置情報を基にしてPWMコントローラユニットのデューティ周期幅を決定するDSPコントローラと、前記PWMコントローラユニットから伝送されたパワースイッチタイミングを受信して前記モーターを駆動すると、を含む。
【0008】
一つの好適な態様では、動力源のエネルギーが低下する時に、前記エンコーダの情報を基にして、デューティ周期を増すことにより、前記モーターは、位相検知ユニットからフィードバックされた位置命令に応じて回転し、前記励磁同期発電機の回転速度を所定の回転速度に維持し、同時に、励磁制御ユニットの励磁電流を調整することにより、前記励磁同期発電機の励磁電流を低減させ、それによって、前記モーターは、前記励磁同期発電機を駆動するために微調整パワーを低減させる。
【0009】
一つの好適な態様では、動力源のエネルギーが増加する時に、前記エンコーダの情報を基にして、デューティ周期を低減させることにより、前記モーターは、位相検知ユニットからフィードバックされた位置命令に応じて回転し、前記励磁同期発電機の回転速度を所定の回転速度に維持し、同時に、励磁制御ユニットの励磁電流を調整することにより、前記励磁同期発電機の励磁電流を上昇させ、それによって、前記励磁同期発電機は、前記最大パワーを前記電力系統へ出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の励磁同期発電機の励磁電流を制御し、安定の電圧、最大の動力エネルギー及びモーターの最小のエネルギー消費を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】風力発電の励磁同期発電システムの制御方法を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による最大パワー決定ユニットを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による励磁同期発電機の電流及びパワーの制御を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、風力発電の励磁同期発電システムの制御方法示す図である。本発明の方法は、風力発電システムに応用できる。また、それに限らず他の発電システムにも応用できる、例えば水力発電、火力発電、潮汐発電等、各種の動力発電システムに関係するエネルギー再生制御技術でも応用範囲内である。
【0013】
図1に示すように、本発明の発電システムは、風力源(動力源)10、伝達機構20、励磁同期発電機30、電力系統のロード40、パワー駆動インバータ(power driving inverter)50、パルス幅変調(pulse width modulation:PWM)コントローラユニット51、モーター60、エンコーダ61、電流検知ユニット62、励磁制御ユニット70、電圧‐電流‐パワー検知ユニット71、位相検知ユニット72及びデジタル・シグナル・プロセッサ(digital signal process:DSP)コントローラ80を含む。
【0014】
図1に示すように、動力源10を入力する場合、伝達機構20は、風力源10の風力エネルギーを入力することにより、励磁同期発電機30を駆動し、励磁制御ユニット70が励磁電流信号を提供することにより、励磁同期発電機30が電力を電力系統のロード40へ出力する。
【0015】
再び図1を参照する。励磁同期発電機30は、エンコーダ61とにより、現在の同期発電機30のアーマチャの位置情報をDSPコントローラ80へ伝送する。DSPコントローラ80は、位相検知ユニット72により、電力系統の位相情報を得て、そして、その位相情報を現在の位置命令として取得された発電機30のアーマチャの位置情報と比較し、PWMコントローラユニット51のデューティ周期幅(duty cycle width)を決定し、パワースイッチタイミング(power switch timing)をパワー駆動インバータ50へ伝送してモーター60を駆動する。モーターの位置のサーボ制御により、伝達機構20が等速で励磁同期発電機30を駆動する。このようにして、発電機の出力電圧を安定させることができ、その出力電圧が電力系統と同位相になる。励磁同期発電機30が回転する時に、電圧‐電流‐パワー検知ユニット71からフィードバックされた信号を利用して、同期発電機30から出力された電圧、電流、パワーを検知することができる。DSPコントローラ80は、電圧‐電流‐パワー検知ユニット71の情報を基にして励磁制御ユニット70の励磁電流制御を行い、発電機の励磁電流を調整することにより、発電機の出力電圧及び電流を安定することができる。
【0016】
再び図1を参照する。風力源10の風力エネルギーが低下して伝達機構20の回転速度が低下する時に、伝達機構20の回転速度を維持するために、DSPコントローラ80は、エンコーダ61及び電流検知ユニット62の情報を基にして、PWMコントローラユニット51を調整してデューティ周期を増す。これにより、モーター60は、位相検知ユニット72からフィードバックされた位置命令に応じて回転する、位置誤差は下がり、発電機30の回転速度を所定の回転速度に維持することができる。同時に、励磁同期発電機30の回転を安定するために、DSPコントローラ80は、励磁制御ユニット70の励磁電流を調整し、発電機30の励磁電流を低減させる。これにより、モーター60は、発電機を駆動するために必要な微調整パワーを低減させることができる。
【0017】
再び図1を参照する。風力源10の風力エネルギーが増加して伝達機構20の回転速度が上がる時に、伝達機構20の回転速度を維持するために、DSPコントローラ80は、エンコーダ61及び電流検知ユニット62の情報を基にして、PWMコントローラユニット51を調整してデューティ周期を低減させる。これにより、モーター60は、位相検知ユニット72からフィードバックされた位置命令に応じて回転する、位置誤差を下げ、発電機30の回転速度を所定の回転速度に維持することができる。同時に、風力源10の風力エネルギー強度が増加することで伝達機構20の回転速度が向上し、励磁同期発電機30の回転を安定させるために、DSPコントローラ80は、励磁制御ユニット70の励磁電流を調整し、発電機30の励磁電流を上昇させ、風力源10の風力エネルギーを完全に利用して発電機を駆動する。これにより、発電機は、最大パワーを電力系統のロード40へ出力する。
【0018】
図2を参照する。本発明の発電システムは、さらに最大パワー決定ユニット81を含む。最大パワー決定ユニット81は、風力エネルギーの入力パワーP (V)及び発電機の微調整パワー△P(I)(即ちP (V)+△P(I))に応じて発電システムの最大パワーを決定する。風速により、風力エネルギーの入力パワーP (V)を知ることができ、発電機の出力パワーをその入力パワーに追随させる。発電システムの効率を向上させるために、出力パワーを風力の入力パワーに追随させるだけでなく、モーターのエネルギー消費も低減させ、定速制御を得ることができる。そのため、モーターの入力電流(I)を検知することにより、できるだけモーターの入力電流を0にする。これにより、モーターの入力電流を利用してモーターの微調整パワー△P(I)を生成することができる。風力の入力パワー及びモーターの微調整パワー△P(I)の総和[P (V)+△P(I)]を利用して、発電機に最大パワーを追随するパワー命令Pを提供し、次に励磁電流の制御を行い、この発電システムを最大パワーに追随させることができる。
【0019】
図3を参照する。最大パワー決定ユニット81によりパワー命令Pを生成することができる。パワー検知ユニット71により、発電機の出力端子からの即時出力パワー情報Pを得ることができる。パワーコントローラ82により、フィードバックされた情報Pとパワー命令Pとを比較し、励磁電流命令Iを励磁制御ユニット70へ提供する。従って、励磁制御ユニット70は、励磁電流命令Iを生成することによって、励磁同期発電機30の励磁場を制御することができる。これにより、発電機は、最大のパワーを電力系統のロード40へ出力する。
【0020】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0021】
10 動力源、20 伝達機構、30 励磁同期発電機、40 電力系統、50 パワー駆動インバータ、51 PWMコントローラユニット、60 モーター、61 エンコーダ、62電流検知ユニット、70 励磁制御ユニット、71 電圧‐電流‐パワー検知ユニット、72 位相検知ユニット、80 DSPコントローラ、81 最大パワー決定ユニット、82 パワーコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁同期発電機の出力電圧、電流及びパワーを検知することにより、検知された前記出力電圧、前記電流及び前記パワーに応じて、前記励磁同期発電機の励磁電流を制御し、それによって、前記励磁同期発電機が最大パワーを出力する工程と、
エンコーダの情報に応じて、モーターのサーボ制御を行うことにより、伝達機構が所定の回転速度で前記励磁同期発電機を駆動し、位相が電力系統と同じである三相交流電源を生成し、前記三相交流電源を前記電力系統と並列接続する工程と、
を含むことを特徴とする風力発電の励磁同期発電システムの制御方法。
【請求項2】
動力源のエネルギーが低下する時に、前記エンコーダの情報を基にして、デューティ周期を増すことにより、前記モーターは、位相検知ユニットからフィードバックされた位置命令に応じて回転し、前記励磁同期発電機の回転速度を所定の回転速度に維持し、同時に、励磁制御ユニットの励磁電流を調整することにより、前記励磁同期発電機の励磁電流を低減させ、それによって、前記モーターは、前記励磁同期発電機を駆動するために微調整パワーを低減させることを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
動力源のエネルギーが増加する時に、前記エンコーダの情報を基にして、デューティ周期を低減させることにより、前記モーターは、位相検知ユニットからフィードバックされた位置命令に応じて回転し、前記励磁同期発電機の回転速度を所定の回転速度に維持し、同時に、励磁制御ユニットの励磁電流を調整することにより、前記励磁同期発電機の励磁電流を上昇させ、それによって、前記励磁同期発電機は、前記最大パワーを前記電力系統へ出力することを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
風力源と、
励磁同期発電機と、
前記風力源から風力エネルギーにより、前記励磁同期発電機を駆動する伝達機構と、
励磁電流信号を前記励磁同期発電機へ提供することにより、前記励磁同期発電機が電力を前記電力系統へ出力する励磁制御ユニットと、
前記伝達機構の回転を制御するモーターと、
前記電力系統の位相情報及び前記励磁同期発電機のアーマチャの位置情報を基にしてPWMコントローラユニットのデューティ周期幅を決定するDSPコントローラと、
前記PWMコントローラユニットから伝送されたパワースイッチタイミングを受信して前記モーターを駆動すると、
を含むことを特徴とする風力発電の励磁同期発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−34361(P2013−34361A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286955(P2011−286955)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(507324496)国立中山大学 (4)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SUN YAT−SEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 70, Lian−Hai Road, Gu−Shan District, Kaohsiung City, Taiwan
【Fターム(参考)】