説明

風力発電装置群の制御装置及び制御方法

【課題】
本発明の課題は、ウィンドファームから電力系統へ出力される電力の変動を抑制し、一定の出力を維持することにある。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明では、電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群(ウィンドファーム)において、ウィンドファームは、各風力発電装置に設けられるとともに通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信する個別制御装置と、通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信して演算処理する集中制御装置を備え、集中制御装置からの出力指令値に応じて前記ウィンドファームの運転を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電装置群の制御装置及び制御方法に係り、風のエネルギーを利用して発電した電力を電力系統に供給する複数の風力発電装置から構成される風力発電装置群(ウィンドファーム)の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の一つとして、風力発電の導入が世界的に盛んになってきている。風力発電の大量導入にあたっては、費用対効果の観点から一定の地域に複数台の風力発電装置を設け、それらの風力発電装置群を統括して制御し運用するウィンドファームとして設置されることが多くなっている。
【0003】
これまで、ウィンドファームおよび個々の風力発電装置に関して特許文献1のような提案がなされている。特許文献1では、ウィンドファーム内の風速の計測値に基づいて風力発電装置の出力を予測し、風力発電装置の回転慣性エネルギーと出力制限によって、出力変動を抑制する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−084545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、気象状況により発電出力が変動する風力発電装置の電力系統への導入が多くなるにつれて、その導入が将来さらに増えた場合の電力系統の電圧や周波数の維持に関する影響が懸念されている。
【0006】
周波数の維持について言えば、これまでも各地域の電力会社が、主として需要の変動に対して種々の電源を組み合わせて需要と供給をバランスさせてきた。しかし、風力発電が電力系統に大量に連系された場合、従来の需要にいわばマイナスの負荷が重畳されることになる。需要の変動と風力発電出力の組み合わせによっては、これまで以上に高い需給調整能力が必要になることも予想される。
【0007】
需要変動は、変化幅の小さい種々の振幅と周期を持った脈動成分や不規則な変動が重畳したものと考えられ、その成分は周期が数分までの微小変動、数分から10数分程度までの短周期変動、10数分以上の長周期変動の主要な3成分に分けられる。風力発電の発電出力においても同様に上述の3成分が含まれる。
【0008】
上記の需要変動に対して、周期数分程度までの微小変動は発電所の調速機を利用したガバナーフリー運転により調整が可能である。周期が数分から10数分程度までの短周期変動に対しては、周波数偏差等を検出して周波数調整発電所の発電機出力を変化させており、これを負荷周波数制御(LFC)と呼んでいる。周期がそれ以上長い長周期変動に対しては、経済性を考慮して各発電所に発電指令を送ることにより調整を行っており、これを経済負荷配分制御(ELD)と呼んでいる。
【0009】
風力発電を大量に導入した場合、特に問題になるのは上記第2の負荷周波数制御(LFC)である。風力発電出力の変動が需要(負荷)変動に重畳された場合、周波数調整発電所の設備容量が不足することが考えられる。しかし、単純に周波数調整発電所の設備容量を大きくすることは経済的負担が大きく、何らかの代替手段が必要である。
【0010】
これまで、特許文献1に記載されているように、ウィンドファーム内の近未来の風速を予測し、予測値に基づく制御を行うことで、風力発電出力変動を低減あるいは抑制することが可能である。しかしながら、近未来の風速を精度良く予測することは難しく、予測誤差が生じると想定した出力変動の低減効果が得られない可能性がある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ウィンドファームから電力系統へ出力される電力の変動を抑制し、一定の出力を維持することのできる風力発電装置群の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の風力発電装置群の制御装置は、上記の目的を達成するために、電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群が、前記各風力発電装置に設けられると共に通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信する個別制御装置と、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信して出力変動を演算処理する集中制御装置とを備え、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御するものであって、 前記集中制御装置は、各風力発電装置から送信される運転情報を受信し送信する送受信手段と、該送受信手段から送信された前記運転情報に含まれる出力値から前記風力発電装置群の合計出力値を求めて蓄積する合計出力蓄積手段と、該合計出力蓄積手段で蓄積された合計出力値から出力変動を演算する出力変動演算手段と、該出力変動演算手段で演算された出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかを判定する出力変動判定手段と、該出力変動判定手段の判定結果に基づいて各風力発電装置に指令する出力上限値を補正する出力上限値補正手段と、該出力上限値補正手段で補正された出力上限値を前記個別制御装置に対して指令する出力上限値指令手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の風力発電装置群の制御方法は、上記目的を達成するために、電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群は、前記各風力発電装置に設けられた個別制御装置で通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信し、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信した集中制御装置で出力変動を演算処理し、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御する際に、前記集中制御装置は、各風力発電装置から送信される運転情報に含まれる出力値から前記風力発電装置群の合計出力値を求めて蓄積し、この蓄積された合計出力値から出力変動を演算すると共に、演算された出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかを判定し、この判定結果に基づいて各風力発電装置に指令する出力上限値を補正し、その後、補正された出力上限値を前記個別制御装置に対して指令することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウィンドファーム内の各風力発電装置で計測した出力に基づいて、ウィンドファームの出力変動を所定の範囲に抑制することができるので、一定の出力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のウィンドファームの一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施例における集中制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例における出力変動演算手段の出力変動幅を求める方式を表す特性図である。
【図4】本発明の一実施例における集中制御装置の出力変動帰還制御の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例における出力上限値指令手段の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例における出力上限値指令手段の動作の変形例を示すフローチャートである。
【図7】従来技術によるウィンドファームの出力と出力変動を表し、図7(a)はウィンドファームの出力、図7(b)は出力変動幅の時間変化を表す特性図である。
【図8】本発明の一実施例におけるウィンドファームの出力と出力変動を表し、図8(a)はウィンドファームの出力、図8(b)は出力変動幅の時間変化を表す特性図である。
【図9】本発明に適用される集中制御装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施例におけるウィンドファームの構成を示すブロック図である。
【0017】
該図に示す如く、ウィンドファーム100は、電力系統7に一箇所で接続されており、電力系統7とウィンドファーム100から需要家8に対して電力を供給している。そのウィンドファーム100は、風力発電装置11、12、13と、個別制御装置31、32、33と、各個別制御装置31、32、33と集中制御装置41とを相互に接続する通信ネットワーク5とから概略構成されている。
【0018】
風力発電装置11、12、13は、回転数及びピッチが可変、かつ、制御可能な風力発電装置であり、送電線9により電力系統7に接続されており、需要家8に対して電力を供給する。
【0019】
個別制御装置31、32、33は、所定のタイミング毎に対応する風力発電装置の出力を含むデータを、ネットワーク5を介して集中制御装置41に送信すると共に、集中制御装置41からの出力上限値指令に従って、対応する風力発電装置の出力上限値を制御する。
【0020】
図2は、集中制御装置41の構成を示すブロック図である。該図に示す如く、集中制御装置41は、出力変動帰還制御部60と送受信手段70とから概略構成されている。
【0021】
出力変動帰還制御部60は、個別制御装置31、32、33から取得した出力データからウィンドファームの合計出力値を算出および蓄積する合計出力蓄積手段61と、蓄積された出力値から出力変動を演算する出力変動演算手段62と、出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかどうかを判定する出力変動判定手段63と、出力変動判定結果に基づいて出力上限値を補正する出力上限値補正手段64と、補正された出力上限値を個別制御装置31、32、33に対して指令する出力上限値指令手段65とから概略構成されている。
【0022】
図3は、出力変動演算手段62における出力変動の演算方法を示す特性図であり、横軸は時刻、縦軸はウィンドファームの合計出力を定格出力を100%とした場合の比率で示し、合計出力蓄積手段61に蓄積された過去の合計出力をプロットしたものである。ここで、現在時刻から20分前までの合計出力のうち、最大値と最小値の差を出力変動幅ΔPmaxとして定義する。尚、現在時刻から20分前までというのは一例であって、出力変動を評価する時間幅に応じて任意に設定することが可能である。
【0023】
図4は、出力変動帰還制御部60の詳細な動作例を示すフローチャートである。
【0024】
該図において、出力変動演算手段62によりウィンドファームの合計出力の変動幅ΔPmaxが算出され、このΔPmaxが出力変動判定手段63に入力される。出力変動判定手段63では、入力されたΔPmaxを判定部S1に入力し、ΔPmaxがウィンドファームの定格出力の10%を超過している場合には、出力上限値補正手段64に上限値を下げるように指令する。
【0025】
一方、ΔPmaxがウィンドファームの定格出力の10%を超過していない場合は、ΔPmaxを判定部S2に入力し、ΔPmaxがウィンドファームの定格出力の5%を下まわっており、かつ、その状態が20分間継続していると判断された場合には、出力上限値補正手段64に上限値を上げるように指令する。ΔPmaxが定格出力の5%を下回っていないか、下まわっていてもその状態が20分間継続していなければ、出力上限値補正手段64には、出力上限値の補正を指令は行わない。尚、判定部S1および判定部S2における判定基準は設定により任意に変更可能である。
【0026】
出力上限値補正手段64では、出力変動判定手段63からの指令を受けて、出力上限値を下げる指令を受信した場合には、出力上限値の補正量ΔPcを、ΔPmaxからウィンドファーム定格出力の10%を減じたものとする(S3)。これにより、出力変動幅がウィンドファーム定格出力の10%を超過している分だけ出力上限値を下げることになり、出力変動幅がウィンドファーム定格出力の10%以内に抑制されることが期待される。
【0027】
出力上限値を上げる指令を受信した場合には、補正量ΔPcを、ウィンドファーム定格出力の10%からΔPmaxを減じたものとする(S4)。これにより、出力変動幅がウィンドファーム定格出力の5%を下回るような状態、つまり、出力上限値が低すぎて、過剰に出力を絞って発電量が低下した状態が続くことを回避できる。
【0028】
出力上限値の補正を受信しなかった場合には、出力上限値は現在の値を維持するために、補正量ΔPcは0とする(S5)。S3、S4、S5で決定された補正量ΔPcを、出力上限値指令手段65に指令する(S6)。尚、補正量ΔPcの値は一例であり、出力変動幅と発電電力量の関係を考慮して任意に変更可能である。
【0029】
図5は、出力上限値指令手段65の詳細な動作を示すフローチャートである。
【0030】
該図に示す如く、出力上限値補正手段64からの出力補正量ΔPcを受信すると、ウィンドファームの出力上限値PlimitWF*=PlimitWF*+ΔPcとして、現在の出力上限値を補正量で補正する(S7)。
【0031】
次に、ウィンドファームの出力上限値から各風力発電装置に指令する出力上限値PlimitN*を決定する。ここで、Nは風力発電装置の番号である。PlimitWF*は、ウィンドファーム定格出力に対する%値で表されているので、各風力発電装置の出力上限値も、各風力発電機の定格出力に対する%で表せば、PlimitN*=PlimitWF*とすれば良い(S8)。
【0032】
尚、PlimitWF*及びPlimitN*にキロワット等の出力値そのものを用いる場合には、前記%値にそれぞれの定格出力値を乗ずるなどの処理を行えば同様の結果となる。これを風力発電装置の台数分繰り返して、ウィンドファーム内すべての風力発電システムの出力上限値を決定し、送受信手段70を介して各風力発電装置に出力上限値を指令する(S9)。
【0033】
また、出力上限値指令手段65には、種々の変形例が考えられる。例えば図6は、ウィンドファーム内の各風力発電装置に吹いている風が、それぞれ異なることを利用して、出力上限値を風が強く、かつ、高い出力が可能な風力発電装置に優先的に配分することによって、風が弱く出力が低い風力発電装置のために、ウィンドファームの合計出力が必要以上に低下することを防ぐ制御手段の例である。
【0034】
S8でウィンドファームの出力上限値PlimitWF*を決定し、次に各風力発電システムで現在の風速で発電可能な出力、出力可能量PaNを、個別制御装置31、32、33から通信ネットワーク5を介して取得する(S10)。各風力発電装置では、時々刻々変化する風速に対して、発電可能な出力を常時演算しているので、その結果を利用する。あるいは風速の計測値のみを取得し、風力発電装置の特性から出力可能量を集中制御装置41で演算しても良い。
【0035】
次に、判定部S11でPaWFとPlimitWF*を比較する。PaWF<PlimitWF*となった場合、つまり、現在の風速で可能な最大出力で運転しても、ウィンドファームの出力上限値に対して出力が不足する場合には、PaNがPlimitWF*よりも高い風力発電装置にはPaNをそのまま出力上限値として指令し(S12)、他の風力発電装置にはPlimitWF*を指令する(S13)。これにより、不要に出力を制限することによる発電電力量の低下を防止することができる。
【0036】
判定部S11でPaWF≧PlimitWF*となった場合、つまり、ウィンドファームの出力上限値に対して、各風力発電装置の合計出力可能量が上回っている場合には、各風力発電装置の出力可能量に応じて出力上限値を適切に配分する。先ずは、すべての風力発電装置に対して同じ出力上限値を仮に設定する。仮の上限値は、PlimitWF*とする(S14)。
【0037】
次に、各風力発電装置を仮の上限値で運転した場合のウィンドファームの合計出力PaWF’を演算する(S15)。判定部S16で、PaWF’とPlimitWF*を比較し、PaWF’=PlimitiWF*となった場合、つまり、仮の上限値で運転してもウィンドファーム出力上限値と同じ出力が発電可能な場合には、仮の上限値をそのまま各風力発電装置の出力上限値として指令する(S17)。これは、各風力発電装置毎の風速の差が小さい場合と考えられる。
【0038】
判定部S16で、PaWF’<PlimitWF*となった場合、つまり、仮の上限値で運転するとウィンドファームの出力上限値よりも出力が低下する場合であり、これは各風力発電装置毎の風速の差が大きい状態である。このときは、PaNが大きい風力発電装置から順に、PlimitWF*に対して不足する分を、仮の上限値に加算していき、不足分がなくなるまで繰り返す。
【0039】
これによって、各風力発電装置毎の風速差が大きい場合でも、それぞれの出力上限値を配分することによって、ウィンドファームの出力を上限値に近づけることが可能となり、発電電力量の低下を防止することができる。
【0040】
更に、出力上限値指令手段65の別な変形例として、図6のS18では、出力の大きい風力発電装置から順に出力上限値を加算したが、これを出力変動量の大きい風力発電装置の出力上限値から優先して出力上限値を減らすことも考えられる。
【0041】
これは、ウィンドファーム内の一部の風力発電装置が定格出力で運転しているような場合、定格出力状態では出力は一定に保たれており、変動抑制する必要はない。従って、ウィンドファームの出力変動抑制のためには、風速が定格風速よりも弱く、出力変動の大きい風力発電装置に対する出力上限値を絞ることが有効である。
【0042】
このように、出力上限値の指令手段はある特定の方法に限定されるものではなく、種々の方法あるいはそれらの組合せが考えられ、ウィンドファーム内の各風力発電装置に対して出力を制限する手法については、本技術が適用可能である。
【0043】
また、本明細書中で「出力上限値」としているのは、例えば有効電力上限値、有効電流上限値等が考えられ、それ以外にも風力発電装置の発電電力に対して制限をかける効果を達成できるものであれば、「出力上限値」に含まれるものである。
【0044】
図7は、本技術を適用しない場合(従来例)のウィンドファームの出力と出力変動幅を表した図である。
【0045】
図7(a)は、ウィンドファーム出力を表しており、出力上限値なしの場合の出力をPaWFで示している。これに対して、出力上限値PlimitWF*で制御した場合には、出力変動幅ΔPmaxは、PlimitWF*からPaWFの最小値の差となる。このときのΔPmaxの時間変化を図7(b)に示す。図7(b)において、ΔPmaxが5%から10%の範囲に入っていれば出力変動は問題にならない。しかし、点線で囲んだ部分では、ΔPmaxが10%を超過しており問題である。
【0046】
図8は、本技術を適用した場合の効果を表した図である。図8(a)のウィンドファーム出力において、出力上限値が出力変動帰還制御によって時間毎に変化する。その結果、図8(b)の出力変動幅は、変動幅超過となった時点で出力上限値を下げるため、ΔPmaxはすぐに10%以下になる。また、ΔPmaxが5%を下回って20分間継続した場合には、出力上限値を上げ、不必要な出力低下を防止している。
【0047】
図9は、集中制御装置41の変形例を示した図である。この例では、集中制御装置41内に風速予測制御部50を備え、この風速予測制御部50は、個別制御装置31、32、33で計測した風速に基づいて近未来の風速を予測する風速予測手段51と、予測された近未来の風速に基づいてウィンドファームの出力上限値を決定する出力上限値決定手段52と、ウィンドファームの出力上限値から各風力発電装置の出力上限値を演算して指令する出力上限値指令手段53とを備えている。そして、この構成では、出力変動帰還制御部60は、出力上限値補正手段64で演算した出力上限値の補正値を、出力上限値決定手段52から出力される出力上限値に加算し、出力上限値指令手段53に入力するものである。
【0048】
これにより、風速予測制御部50で予測した近未来の風速に予測誤差が含まれている場合でも、出力変動帰還制御部60の動作によって、出力変動を所定の範囲に保ったまま制御することが可能となる。
【0049】
特に、ウィンドファームの気象情報の計測値から近未来のウィンドファームの出力変動を予測し、各風力発電装置に出力上限値を指令することによって出力変動を抑制する機能と組み合わせることにより、予測誤差による出力変動の増大、あるいは出力を絞りすぎることによる発電電力量の低下を防止することが可能となる。
【0050】
尚、風速予測手段51における近未来の風速予測方法は例えば特許文献1の方法が考えられるが、他の手段により風速を予測した場合でも、本技術は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ウィンドファーム内の各風力発電装置で計測した出力に基づいて、ウィンドファームの出力変動を所定の範囲に抑制することができるので、一定の出力を維持することができる。特に、電力系統制御の観点から有効な数分から10数分程度の短周期変動を抑制できるので、有効である。
【符号の説明】
【0052】
5…通信ネットワーク、7…電力系統、8…需要家、9…送電線、11、12、13…風力発電装置、31、32、33…個別制御装置、41…集中制御装置、50…風速予測制御部、51…風速予測手段、52…出力上限値決定手段、53…出力上限値指令手段、60…出力変動帰還制御部、61…合計出力蓄積手段、62…出力変動演算手段、63…出力変動判定手段、64…出力上限値補正手段、65…出力上限値指令手段、70…送受信手段、100…ウィンドファーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群が、前記各風力発電装置に設けられると共に通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信する個別制御装置と、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信して出力変動を演算処理する集中制御装置とを備え、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御する風力発電装置群の制御装置において、
前記集中制御装置は、各風力発電装置から送信される運転情報を受信し送信する送受信手段と、該送受信手段から送信された前記運転情報に含まれる出力値から前記風力発電装置群の合計出力値を求めて蓄積する合計出力蓄積手段と、該合計出力蓄積手段で蓄積された合計出力値から出力変動を演算する出力変動演算手段と、該出力変動演算手段で演算された出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかを判定する出力変動判定手段と、該出力変動判定手段の判定結果に基づいて各風力発電装置に指令する出力上限値を補正する出力上限値補正手段と、該出力上限値補正手段で補正された出力上限値を前記個別制御装置に対して指令する出力上限値指令手段とを備えていることを特徴とする風力発電装置群の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の風力発電装置群の制御装置において、
前記出力変動演算手段は、前記合計出力蓄積手段で蓄積した過去の合計出力値から最大値と最小値の差を出力変動として求めることを特徴とする風力発電装置群の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の風力発電装置群の制御装置において、
前記出力変動判定手段は、前記出力変動が所定の値を超過した場合に、前記出力上限値補正手段に出力上限値を下げるように指令し、前記出力変動が所定の値を下回り、かつ、その状態で所定の時間を超過した場合には、前記出力上限値補正手段に出力上限値を上げるように指令することを特徴とする風力発電装置群の制御装置。
【請求項4】
電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群が、前記各風力発電装置に設けられると共に、通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信する個別制御装置と、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信して出力変動を演算処理する集中制御装置とを備え、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御する風力発電装置群の制御装置において、
前記集中制御装置は、ウィンドファーム内の風速を予測し、その予測値に基づいて出力の上限値を決定する手段と、前記出力の上限値を指令する手段とを備え、前記出力の上限値を、前記出力上限値補正手段で補正することによって、前記風力発電装置群の出力変動を抑制することを特徴とする風力発電装置群の制御装置。
【請求項5】
電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群は、前記各風力発電装置に設けられた個別制御装置で通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信し、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信した集中制御装置で出力変動を演算処理し、、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御する風力発電装置群の制御方法において、
前記集中制御装置は、各風力発電装置から送信される運転情報に含まれる出力値から前記風力発電装置群の合計出力値を求めて蓄積し、この蓄積された合計出力値から出力変動を演算すると共に、演算された出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかを判定し、この判定結果に基づいて各風力発電装置に指令する出力上限値を補正し、その後、補正された出力上限値を前記個別制御装置に対して指令することを特徴とする風力発電装置群の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の風力発電装置群の制御方法において、
前記蓄積された合計出力値から出力変動を演算する際は、蓄積された過去の合計出力値から最大値と最小値の差を出力変動として求めることを特徴とする風力発電装置群の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の風力発電装置群の制御方法において、
前記蓄積された合計出力値から出力変動を演算された出力変動の大きさが所定の範囲に収まっているかを判定し、前記出力変動が所定の値を超過した場合には、出力上限値を下げ、前記出力変動が所定の値を下回り、かつ、その状態で所定の時間を超過した場合には、前記出力上限値を上げることを特徴とする風力発電装置群の制御方法。
【請求項8】
電力系統に対して送電線を介して接続された複数台の風力発電装置から構成される風力発電装置群は、前記各風力発電装置に設けられた個別制御装置で通信ネットワークを介して各風力発電装置の出力を含む運転情報を送受信し、前記通信ネットワークを介して前記個別制御装置からの情報を受信した集中制御装置で出力変動を演算処理し、、前記集中制御装置から各風力発電装置に送信される出力指令値に応じて前記風力発電装置群の運転を制御する風力発電装置群の制御方法において、
前記集中制御装置は、ウィンドファーム内の風速を予測し、その予測値に基づいて出力の上限値を決定し、該出力の上限値を補正することによって、前記風力発電装置群の出力変動を抑制することを特徴とする風力発電装置群の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−102698(P2012−102698A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253707(P2010−253707)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】