説明

風量管理を具備したミニエン

【課題】半導体製造装置へウェーハを供給、排出する搬送装置(以下ミニエンと略記する。)では、ウェーハ搬送において、ウェーハ異物付着が発生し易く、微小の異物であっても半導体製造装置に影響を与えてしまう場合があり、歩留まりが悪くなる。そのため、搬送室内全体のクリーン度を保つために、ファンフィルタユニット(FFU)からのダウンフローの均一性および吹き溜まりや巻き上がりを管理する必要がある。
【解決手段】風量管理するために、ウェーハ搬送ロボットの一部(アーム)に風量測定器を取り付けることにより、搬送室内の任意のポイントに測定ポイントを設けることを実現させる。風量測定器からの測定データは、ミニエン内制御コントローラで取り込みデータ管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風量管理を具備したミニエンに関し、特に、ウェーハの搬送を行う搬送室内の環境管理を具備したミニエンに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置へウェーハを供給、排出する搬送装置(以下、ミニエンと略記する。)では、主な搬送はFOUPからウェーハを取出し、半導体製造装置に供給し、半導体製造装置から排出されたウェーハを取出し、FOUPに収納する。
このようなウェーハ搬送において、ウェーハ異物付着が発生し易く、微小の異物であっても半導体製造装置に影響を与えてしまう場合があり、歩留まりが悪くなる。
【0003】
以上より、高クリーン化の向上を目的としたウェーハ搬送が求められており、搬送室内全体のクリーン度を保つための、ファンフィルタユニット(FFU)からのダウンフローの均一性および吹き溜まりや巻き上がりを管理する必要がある。
【0004】
一般的に搬送室内の気流の管理は、搬送室内に風量測定器を設置しておけばデータ取得は可能となるが、測定データで最も必要なウェーハ搬送領域では搬送ロボットと測定器が干渉してしまうため設置は不可能であった。そのため、現状では人が測定器を持って運用している。なお、特許文献1では、ファンフィルタに風量計を設けていることが開示されているが、ロボット自身が風量計を持っていることは開示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−165331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、風量測定に際しては、装置の運用を止めて、人が風量測定器を用いて、搬送室内の決められたいくつかのポイントにおいて、測定を実施しデータを管理している。この方法では、以下の1)〜4)の問題があった。
1)装置の運用を止めなければならない。
2)人が搬送室内で作業するため、実際の搬送状態の気流と変わってしまうこと、さらに、コンタミの流入が発生する。
3)人が測るので測定ポイントにばらつきが発生する。
4)測定データの管理が必要である。
【0007】
また、ミニエン内の気流測定に関しては、気流解析はシュミレーション実施するか、または実機での計測は設備の整った場所に移動して実施しているのが現状である。
【0008】
しかしながら、搬送室内の気流は、FFUからのダウンフローを排出する排出口の状態によって左右され、その排出口は、装置毎に調整されるため現状装置の気流解析は不可能という問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ウェーハ異物付着を防ぐため搬送室内のクリーン度を保つ必要があるが、クリーン度を保つための気流管理を通常の装置運用状態でデータ管理することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、ウェーハの加工処理を行う半導体製造装置に該ウェーハを供給し、半導体製造装置から排出された該ウェーハを取出し収納するFOUP部と、このFOUP部に取り込まれたウェーハを把持し該ウェーハを移動するアーム部を有するウェーハ搬送ロボットと、このFOUP部がその一主面に取り付けられ、前記半導体製造装置がその他主面に取り付けられたウェーハ搬送ロボットを収納するミニエン筐体とを有し、このミニエン筐体の上部から底部に掛けて流れる気流の風量を測定するための風量測定器が、筐体内の所望の位置に移動可能な前記ウェーハ搬送ロボットに設けることにより達成できる。
【0011】
すなわち、ウェーハ搬送ロボットの一部(アーム)に風量測定器を取り付けることにより、搬送室内の任意のポイントに測定ポイントを設けることを実現させる。風量測定器からの測定データは、ミニエン内制御コントローラで取り込みデータ管理を行う。
また、気流解析は、搬送室内全体の風量測定データを解析・編集することにより気流解析を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、搬送室内全体のクリーン度を保つことができ、ファンフィルタユニット(FFU)からのダウンフローの均一性および、吹き溜まりや巻き上がりを管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態の一例を示す。
【0014】
半導体製造装置1へウェーハ6を供給し、排出する搬送装置では、主な搬送はFOUP5からウェーハ6を取出し、半導体製造装置1に供給し、一定の処理が完了すると、半導体製造装置1からウェーハ6を排出させ取出し、FOUP5に収納する。このようなウェーハ搬送装置をミニエンと称す。
【0015】
次に、ミニエンの装置構成を示す。
ミニエンは、ミニエン筐体3、FFU部7、ロードポート部4、半導体製造装置1、搬送ロボット部11、制御コントローラ2を有する。
【0016】
ミニエン筐体3は、システム外部を固定板(外装カバー)で覆い、外部と隔離した空間(搬送室内)を提供する。また、ロードポート部4、半導体装置接続部等の接合部の役割も有する。
【0017】
FFU部7は送風ファンとフィルターから構成される。ミニエンの筐体3内上部に設置され、クリーンエアをダウンフローすることでミニエン筐体3内にクリーン環境を実現する。
ロードポート4は、主に密閉容器固定台と容器開閉機能を有する。ミニエン筐体内に複数箇所に接合され、半導体製造装置1とミニエン筐体3の試料搬送口の役割とする。
ウェーハ搬送ロボット11は主に水平動作、上下動作、旋回動作を行う機構とウェーハ6を乗せるためウェーハハンドリング機構を有し、ミニエン筐体3内部に実装され、ロードポート部4と半導体製造装置1にウェーハ搬送を実現する。
制御コントローラ2は上位装置との通信、各機構の制御を行い、ミニエン搬送システムのコントロールを行う。
【0018】
次に、ミニエン搬送システムを用いた、大まかなウェーハ搬送シーケンス例を示す。
ロードポート部4に設置されたFOUP5よりウェーハ6を搬送ロボット11を介して取り出し、半導体装置接続部を通じて搬送する。また、半導体装置接続部の開口部によりウェーハ6を搬送ロボットを介して回収し、ロードポート部4に設置されたFOUP5に開口部を通じで搬送し、収納する。
【0019】
図2に、風速測定器取付け位置と送風ファンからのダウンフロー排出口を示す。
送風ファンからのダウンフローは、床面および側面に設けられたいくつかの床面排出口25、側面排出口24より排出される。
ウェーハ搬送ロボット11は横方向に移動するロボット走行軸(Y軸駆動部)上に取り付けられており、ロボット走行軸上で横方向に動作が可能となる。
【0020】
また、図3に示すように、ウェーハ搬送ロボット11は、アーム20を昇降方向に移動させるZ軸駆動部、アーム20を回転方向に移動させるΘ軸駆動部、アーム20を伸縮方向に移動させるR軸駆動部より構成されている。以上の構成により、アーム20を搬送室内全域に位置付けさせることが可能となり、アーム20に取り付いている風量測定器21も搬送室内全域に位置付けさせることが可能となる。図2では、アーム20に風量測定器21を取り付けているが、風量測定に影響を与えない位置ならばロボットのどの位置につけても構わないし、風量測定器21を複数つけることも可能である。
従って、アーム20をコントロールするのと同様に、アーム20に取り付けた風量測定器も任意の位置にコントロールができ、位置決め再現性もウェーハ搬送精度と同一の精度が出せることとなる。
【0021】
図4に、測定機能ブロック図を示す。
CPUは、ロボット位置制御に対しロボットアームを動かし、風量測定器21を指定ポイントへ移動させる。風量測定器21からの測定データを取込み、管理・編集する。CPUは、管理データを要求フォーマットで出力する。
【実施例1】
【0022】
システムは24時間稼動があたりまえであるため、図5にオンライン中に定期的な気流管理の実施例を示す。
システム運用中に登録された気流管理時間が来た場合に、オンライン作業に支障がないように指定ポイントにロボットアームを移動させ風量測定データを取得する。全登録ポイント測定終了後、測定データに問題があれば、問題の内容にあわせた処置を実施する。問題がなければ通常のオンライン処理に戻る。
【0023】
よって、本発明によれば、システムオンライン中でも気流管理ができるため、気流管理の時間を設けなくて良いという効果がある。すなわち、
・装置の運用を止める必要がない。
・人が搬送室内で作業する必要がない。
さらに、搬送ロボットにより測定ポイントに移動するため、
・測定ポイントにばらつきが発生しない。
・ウェーハ異物付着発生の予防
などの効果を期待できる。
【実施例2】
【0024】
図6に、搬送室内を最適気流に設定する実施例を示す。
オフラインに切り替え、床面排出口(側面排出口24)の開口面積を調整し、FFU風量調整を行う。ロボットアームを測定ポイントに移動させ風量測定器21より測定データ取込み、設定仕様範囲内か確認し、仕様範囲外であったら、再度開口面積、風量の調整を実施する。仕様範囲内ならば他の測定ポイントも同様の操作を実施する。
よって、発明によれば、装置運用中に定期的に風量測定を実施することにより、予防保全が可能となる。すなわち、
・フィルターの汚れ(めずまり)、送風ファンの異常の検出ができる。
・ミニエン搬送室内の密閉性異常の検出ができる。
・ミニエン設置環境(クリ−ンルーム)の異常の検出ができる。
さらに、また人を介さずに任意のポイントで風量測定が可能なため、ファンフィルタユニット(FFU)送風量の調整作業が容易である。
【実施例3】
【0025】
図7に、搬送室内の気流解析マップ作成の実施例を示す。
オフラインに切り替え、搬送室内の測定範囲の設定およびX,Y,Z座標の測定ポイント間隔を設定する。ロボットアームを事前登録された測定ポイントに移動させ風量測定器より測定データ取込み、全登録ポイントのデータを取得する。データを編集してマップとしてデータを管理・出力する。
なお、本方式で測定器の種類を変更することで、
・微差圧計に変更することにより、搬送室内とクリーンルーム内との差圧の管理が可能、
・温度計に変更することにより、搬送室内の室温管理が可能、
となる。
よって、本発明によれば、気流解析マップを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例のミニエン装置構成を示す図である。
【図2】風量測定器取付け位置とダウンフロー排出口を示す図である。
【図3】風量測定器移動のためのロボット軸構成を示す図である。
【図4】測定機能ブロック図を示す図である。
【図5】気流管理フローを示す図である。
【図6】最適気流設定フローを示す図である。
【図7】気流解析マップフローを示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1…半導体製造装置、2…制御コントローラ、3…ミニエン筐体、4…ロードボート、5…FOUP、6…ウェーハ、7…FFU(ファンフィルタユニット)部、8…送風ファン、9…ウェーハ排出位置、10…ウェーハハンドリング機構、11…ウェーハ搬送ロボット、12…ウェーハ供給位置、20…アーム、21…風量測定器、22…ロボット走行軸、23…ACサーボモータ、24…側面排出口、25…床面排出口、30…ハンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの加工処理を行う半導体製造装置に該ウェーハを供給し、前記半導体製造装置から排出された該ウェーハを取出し収納するFOUP部と、
前記FOUP部に取り込まれたウェーハを把持し該ウェーハを移動するアーム部を有するウェーハ搬送ロボットと、
前記FOUP部がその一主面に取り付けられ、前記半導体製造装置がその他主面に取り付けられた前記ウェーハ搬送ロボットを収納するミニエン筐体と、を有し、
前記ミニエン筐体の上部から底部に掛けて流れる気流の風量を測定するための風量測定器が、前記筐体内の所望の位置に移動可能な前記ウェーハ搬送ロボットに設けられていることを特徴とするミニエン。
【請求項2】
前記風量測定器が前記ウェーハ搬送ロボットの前記アーム部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のミニエン。
【請求項3】
前記風量測定器で測定したデータを取込み編集・管理・出力するミニエンコントローラを有することを特徴とする請求項1に記載のミニエン。
【請求項4】
前記ミニエンコントローラにより、前記ミニエンを停止することなく事前に登録された時期に定期的に前記ミニエン筐体内の風量管理を自動的に行うことを特徴とする請求項3に記載のミニエン。
【請求項5】
前記風量測定器による測定を、前記ミニエン筐体内の前記ウェーハ搬送ロボットの移動可能な範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載のミニエン。
【請求項6】
前記風量測定器を用いて、前記ミニエン筐体内での気流を3次元的に測定することにより、前記ミニエン筐体の上部に取付けられたファンフィルタユニットから前記ミニエン筐体の底部に掛けて流れるダウンフローの均一性、吹き溜まり、および巻き上がりを管理し前記ウェーハへの異物の付着を抑制することを特徴とする請求項1に記載のミニエン。
【請求項7】
ウェーハの加工処理を行う半導体製造装置に該ウェーハを供給し、前記半導体製造装置から排出された該ウェーハを取出し収納するFOUP部と、
前記FOUP部に取り込まれたウェーハを把持し該ウェーハを移動するアーム部を有するウェーハ搬送ロボットと、
前記FOUP部がその一主面に取り付けられ前記半導体製造装置がその他主面に取り付けられた前記ウェーハ搬送ロボットを収納するミニエン筐体と、
前記ミニエン筐体の上部に取付けられたファンフィルタユニットから底部に掛けて流れる気流の風量を測定するための前記ウェーハ搬送ロボットに設けられた風量測定器と、
前記風量測定器で測定したデータを取込み編集・管理・出力するコントローラとを有し、
前記コントローラにより、前記ウェーハ搬送ロボットが移動する搬送室内を3次元的に所定の間隔で測定ポイントとして事前登録し、
前記ウェーハ搬送ロボットを前記測定ポイントに移動させ風量測定器を用いて測定データ取込み、全登録ポイントのデータを取得・編集することにより気流解析マップ作成することを特徴とするミニエン。
【請求項8】
前記ファンフィルタユニットに取付けられ前記ミニエン筐体に送風する送風ファンの異常を検出し、前記ファンフィルタユニットに取付けられ前記ミニエン筐体に送風する気流の汚れを除去するフィルターの汚れを検出することにより、前記ミニエンの予防保全を行うことを特徴とする請求項7に記載のミニエン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−171937(P2008−171937A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2401(P2007−2401)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】