説明

食品の処理方法と装置

【課題】 過熱水蒸気による熱効率、処理効率のよい食品の加熱処理が、連続して容易かつ確実に行えるようにする。
【解決手段】 食品1をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路3が貫通した処理室4内において、食品搬送路3にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管6内に水蒸気7を通して加熱し過熱水蒸気8として放出して少なくとも食品搬送路3を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気8の処理室4外への排気を伴い更新を図り、食品搬送路3に食品を供給して搬送しながら、前記更新される過熱水蒸気8と電熱管6からの輻射熱11とに、搬送する食品11を曝して加熱し処理することにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品につき煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった各種の加熱調理を始めとする少なくとも1つの加熱処理を過熱水蒸気により行う食品の処理方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気により食品の調理や殺菌などの加熱処理を行うことが従来から知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。過熱水蒸気によると微酸素状態での酸化、発火を抑制した加熱処理ができ、過熱度によって降温しても気体状態を維持させ、焼き、焙煎、乾燥ができる。しかも、単位体積当りの熱容量が例えば同じ温度の熱風の場合に比し約4倍と大きく、赤外線輻射による熱放射性のガス特性も加わって、少量にて処理時間が短縮する。
【特許文献1】特開平06−042750号公報
【特許文献2】特開平06−090677号公報
【特許文献3】特開平08−128639号公報
【特許文献4】特開2001−061655号公報
【特許文献5】特開2004−041098号公報
【特許文献6】特開2002−022107号公報
【特許文献7】特開2002−206868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のものは、オーブンレンジなどの加熱調理装置に、庫内の負圧と過大圧力の双方を防止する手段を設けて、調理物から発生する水蒸気を庫内加熱手段により加熱し過熱水蒸気として調理物に及ばせ調理時間の短縮と省エネルギーを実現するもので、庫内温度500℃程度で180℃以上の過熱水蒸気となるとしているが、広い庫内で食品から自然発生する蒸気を加熱するものであるので、過熱水蒸気量、水蒸気の過熱度共に低く調理への貢献度は十分でない。また、バッチ処理しかできない。
【0004】
特許文献2に記載のものは、水蒸気発生器で発生させた水蒸気を、加熱器での拘束を伴い100℃〜350℃に加熱した過熱水蒸気を調理容器内に供給し、食物を調理するもので、調理容器には内部を大気圧とするためのパイプを接続してあり、常圧での十分な量および過熱度が得られる過熱水蒸気により設定した過熱度に応じた各種調理はできるが、バッチ処理しかできない。また、調理容器外の加熱器で水蒸気を加熱するのでは熱効率はまだ低く、熱エネルギーが十分に生かし切れないし、調理容器への外部からの過熱水蒸気の噴き込みによっては過熱水蒸気の噴き込み時の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げ難く熱効率、調理効率が低い。
【0005】
特許文献3に記載のものは、1つの調理装置内に誘導加熱方式の飽和水蒸気生成室、その上に飽和水蒸気生成室からの飽和水蒸気を受け入れて赤外線ヒータにより過熱水蒸気として排出する過熱水蒸気生成室、その上に赤外線ヒータを持ち、また、過熱水蒸気生成室からの過熱水蒸気を受け入れて加熱調理を行う加熱調理室を備え、飽和水蒸気生成室での解凍、蒸し調理と加熱調理室での加熱調理とが互いの影響なしに行えるようにするものであるが、バッチ処理しかできない。また、飽和水蒸気生成室で生成した飽和水蒸気を過熱水蒸気生成室に流入させてそこに滞留している間に赤外線ヒータで加熱して過熱水蒸気として加熱調理室へ抜けていくようにするだけで過熱対象蒸気の拘束は弱く、加熱効率も低いため、過熱水蒸気量、過熱度共に低い上、過熱水蒸気生成室から加熱調理室へ過熱水蒸気が流入するときの放熱が大きいために調理容器内の温度を上げにくく、熱効率、調理効率が低い。
【0006】
特許文献4、5に記載のものは、コンベアによって食品を搬送しながら過熱水蒸気が噴射される調理室内を通過させることにより、連続調理できるようにしたものであるが、調理室の外で生成した過熱水蒸気を、配管を通じて調理室内各部に分散して噴き込み排気するもので、飽和水蒸気を過熱水蒸気に加熱する熱効率がまだ低い分だけ、熱エネルギーが十分生かしきれないし、外部から過熱水蒸気を噴き込む方式でその噴き込み時の過熱水蒸気の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げ難く熱効率、調理効率が低い。また、配管および噴射構造が複雑になる。
【0007】
特許文献6に記載のものは、底部から電磁誘導加熱される蒸気発生容器で発生させた飽和水蒸気を、蒸気発生容器の外側に設けた蒸気過熱容器と蒸気発生容器との間の螺旋通路に通して、蒸気過熱容器のその胴部外まわりの断熱材を介した電磁誘導加熱により過熱し、小型で容易に過熱水蒸気を発生させられるようにしたものであるが、生成した過熱水蒸気は調理室にその外部から供給するしかなく、過熱水蒸気生成時の熱効率が幾分高まるにしても飽和水蒸気を過熱水蒸気に加熱する熱効率がまだ低い分だけ、熱エネルギーが十分生かしきれないし、外部から過熱水蒸気を噴き込んだ時の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げにくく熱効率、調理効率が低い。
【0008】
特許文献7に記載のものは、蓋をボルト止めした処理容器内に被処理体収納部を囲うように螺旋状に配した過熱ヒータ内に水蒸気を通して拘束力、熱効率よく過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気と加熱ヒータからの輻射熱との双方を被処理体の過熱源として働かせてコーヒー豆の焙煎など熱効率、処理効率高く加熱処理するもので、数十ボルトの直流または交流電源を採用し、200V〜400Vの大電流を通電させることで800℃程度に収納部を昇温させられるとしているが、バッチ処理しかできないし、その1回1回の作業が蓋の開閉など容易でなく手間が掛かる。従って、大量処理には向かない。
【0009】
本発明の目的は、過熱水蒸気による熱効率、処理効率のよい食品の加熱処理が、連続して容易かつ確実に行える食品の処理方法と装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の食品の処理方法は、食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の処理室外への排気を伴い更新を図り、食品搬送路に食品を供給して搬送しながら、前記更新される過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する食品を曝して加熱し処理することを1つの特徴としている。
【0011】
このような構成では、処理室内で電熱管からの輻射熱と、電熱管に通して加熱し放出する常圧の過熱水蒸気とに、食品を曝して熱効率、処理効率よく食品を処理することが、電熱管の食品搬送路にほぼ沿った面域への配管によって食品の搬送を邪魔せずに、その搬送長と電熱管の配管長とに見合った、電熱管による搬送する食品に対する輻射加熱と、電熱管の直接加熱による水蒸気の過熱水蒸気化と、処理室内に放出する過熱水蒸気を食品搬送路を含む所要域に行き渡らせて処理室外への排気を伴い更新しながら搬送している食品との接触を図ってする加熱処理と、の実現により、容易かつ確実に連続に達成することができる。
【0012】
このような方法を達成する食品の処理装置としては、食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送手段が貫通した処理室と、この処理室内の食品搬送手段にほぼ沿った面域に配管されて通電により発熱し供給される水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出し処理室内の食品搬送手段がなす食品搬送路を含む所要域に行き渡らせる電熱管と、所要域に行き渡る過熱水蒸気の処理室外への排気を伴う更新を図る通気手段と、を備えたことを1つの特徴とするもので足りる。
【0013】
本発明の食品の処理方法は、また、食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の食品搬送路まわりでの搬送方向への移動の制限と、この移動を制限する過熱水蒸気の処理室外への排気を伴う更新とを図り、食品搬送路に食品を供給して搬送しながら、前記移動の制限と更新が図られる過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する食品を曝して加熱し処理することを別の特徴としている。
【0014】
このような構成では、処理室内で電熱管からの輻射熱と、電熱管に通して加熱し放出する常圧の過熱水蒸気とに、食品を曝して熱効率、処理効率よく食品を処理することが、電熱管の食品搬送路にほぼ沿った面域への配管によって食品の搬送を邪魔せずに、その搬送長と電熱管の配管長とに見合った、電熱管による搬送する食品に対する輻射加熱と、電熱管の直接加熱による水蒸気の過熱水蒸気化と、処理室内に放出する過熱水蒸気を食品搬送路を含む所要域に行き渡らせて処理室外への排気を伴い更新しながら搬送している食品との接触を図ってする加熱処理と、の実現により、容易かつ確実に連続に達成することができ、特に、過熱水蒸気は食品搬送路まわりでの搬送方向への移動の制限を図って搬送される食品とに速度差を与えて接触させるので過熱水蒸気の潜熱が食品に移動しやすく食品加熱処理の熱効率および処理効率が高まる。
【0015】
このような方法を達成する装置としては、食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送手段が貫通した処理室と、この処理室内の食品搬送手段にほぼ沿った面域に配管されて通電により発熱し供給される水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出し処理室内の食品搬送手段がなす食品搬送路を含む所要域に行き渡らせる電熱管と、所要域に行き渡る過熱水蒸気の食品搬送手段が形成する搬送路まわりでの搬送方向への移動を制限し、かつ、この移動を制限する過熱水蒸気の室外への排気を伴う更新を図る通気手段と、を備えたことを別の特徴とするもので足りる。
【0016】
本発明の食品の処理方法は、また、上記いずれかの常圧の過熱水蒸気を利用した食品の加熱方法において、開封状態の包装食品を供給して搬送しながら、前記移動の制限と更新が図られる過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する包装食品を曝して加熱し処理した後、包装食品をその加熱処理環境内で封止することを他の特徴としている。
【0017】
このような構成では、包装食品を開封状態のまま常圧の過熱水蒸気に曝して包装容器内の食品に直接及ぼしながら、加圧や熱膨張の問題なしに内外から加熱して処理し、処理後の処理環境内での封止により処理状態のままの食品を封止し外部から遮断することができる。
【0018】
この方法を実現するには、搬送手段が、開封した包装食品を搬送して加熱処理に供するものであり、この加熱処理後の包装食品を封止する封止手段を処理室内に備えたものであればよい。
【0019】
面域は食品搬送路の下側に沿った平面域である、さらなる構成では、
食品搬送路の下側に沿った平面域に電熱管を配管することにより、その上を搬送する食品に対して下方から輻射熱を効率よく及ばせられる。
【0020】
通気手段が、搬送路まわりを搬送方向に仕切って処理室内に供給される過熱水蒸気の搬送方向への移動を制限する仕切り部と、仕切り部間に行き渡る過熱水蒸気の処理室外への排気および更新を図る排気口とを備えた、さらなる構成では、
仕切り部は必要な範囲に必要な状態で簡単に設けられ、電熱管から処理室に放出する過熱水蒸気の食品搬送方向の移動を、食品搬送路のまわりで、従って、食品の搬送の邪魔をせずに制限して、搬送される食品との速度差を高めつつ、食品と接触する過熱水蒸気の更新が確実に図れて、過熱水蒸気から食品への潜熱移動の効率を高められる。
【0021】
排気口が、処理室の食品を搬入する搬入口および食品を搬出する搬出口に対し過熱水蒸気を優先的に溢れ出させる通気条件を備えている、さらなる構成では、
排気口の食品搬送路の搬入口および搬出口との間の通気条件の設定によって、処理室への食品の搬入、搬出を図りながらも、処理室内に放出した過熱水蒸気を排気口から優先的に溢れ出す流れを排気口の位置に応じた経路にて実現し、処理室内を搬送する食品に十分な相対移動と更新性とをほぼ均等に確保して過熱水蒸気を接触させられ、熱効率、調理効率を高められる。
【0022】
電熱管が、供給される水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気生成手段に接続されている、さらなる構成では、
飽和水蒸気生成手段での加熱を停止して供給される水をそのまま電熱管に流入させると、飽和水蒸気として処理室に放出することができるし、水を加熱して飽和水蒸気として電熱管に流入させると電熱管での加熱度合に応じた過熱水蒸気として処理室内に放出することができ、食品を飽和水蒸気によっても過熱水蒸気によっても処理することができる。もっとも、電熱管での通電、加熱を停止するとそれに流入する飽和水蒸気生成手段からの飽和水蒸気をそのまま処理室内に放出することができる。
【0023】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の食品の処理方法と装置の1つの特徴によれば、電熱管からの輻射熱と、電熱管に通して加熱し放出する常圧の過熱水蒸気とに食品を曝して熱効率、処理効率よく食品を処理することが、容易かつ確実に連続に達成することができる。
【0025】
本発明の食品の処理方法と装置の別の特徴によれば、電熱管からの輻射熱と、電熱管に通して加熱し放出する常圧の過熱水蒸気とに、食品を曝して熱効率、処理効率よく食品を処理することが、容易かつ確実に連続に達成することができ、しかも、搬送方向への移動を制限しながらも更新を図る過熱水蒸気との接触による潜熱移動を促進し、食品加熱処理の熱効率および処理効率をさらに高められる。
【0026】
本発明の食品の処理方法と装置の他の特徴によれば、包装食品を開封状態で常圧の過熱水蒸気に内外から曝して加圧や熱膨張対策なしに簡易に高温処理し、そのままの封止により十分な殺菌状態、処理状態を維持させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の食品の処理方法と装置の実施の形態につき、図1〜図5を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0028】
本実施の形態の、食品の処理方法と装置は、食品につき煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった各種の加熱調理を始めとする少なくとも1つの加熱処理を主として過熱水蒸気により行うものである。処理が蒸しである場合など、必要に応じて飽和水蒸気による処理もできる。
【0029】
本実施の形態の食品の処理方法は、図1〜図5に示す食品の処理装置を参照して、食品1をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路3が貫通した処理室4内に、その食品搬送路3にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱した電熱管6内に飽和水蒸気7を通して加熱し過熱水蒸気8として放出して少なくとも食品搬送路3を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気8の処理室4外への排気9を伴い処理室4内での更新を図り、食品搬送路3に食品1を供給して搬送しながら、前記更新される過熱水蒸気8と電熱管6からの輻射熱11とに搬送する食品1を曝して加熱し処理するものである。これにより、処理室4内にある電熱管6からの輻射熱11と、この電熱管6に通して加熱し処理室4内に放出し所要域に行き渡りながら更新される常圧の過熱水蒸気8とに、食品1を曝して熱効率、処理効率よく食品を処理することができる。特に、電熱管6の食品搬送路3にほぼ沿った面域への配管によって食品搬送路3での食品1の搬送を邪魔せずに、その処理室4内での搬送長および電熱管6の配管長に見合った、電熱管6から搬送する食品への輻射熱11による輻射加熱と、電熱管6の飽和蒸気を狭い通路に拘束しての直接加熱による十分な量および過熱度の過熱水蒸気8の放出、およびその所要域への行き渡りと、その過熱水蒸気8による搬送する食品1の加熱とを、過熱水蒸気8の処理室4外への排気を伴う更新のもとに高い加熱効率および均等性を確保して、容易かつ確実に連続に達成することができる。
【0030】
このような方法を達成するのに、図1〜図5に示す食品の処理装置は、食品1をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路3をなす食品搬送手段12が処理室4を貫通し、この処理室4内の食品搬送手段12がなす食品搬送路3にほぼ沿った面域に配管されて通電により発熱し供給される飽和水蒸気7を通して加熱し過熱水蒸気8として放出する電熱管6を持ち、処理室4内に放出して食品搬送路3を含む所要域に行き渡らせる過熱水蒸気生成手段61と、処理室4内に放出される過熱水蒸気8の処理室4外への排気9を伴い更新を図る通気手段13と、を備えている。過熱水蒸気生成手段61は同じ配管長さlにて過熱した過熱水蒸気8を放出すると、放出する過熱水蒸気8の過熱度を均一にしやすい。それには1本の電熱管6からは1箇所からしか過熱水蒸気8を放出することはできないが、排気9を図る量に対する過熱水蒸気8の放出量の比率を増大させるほど処理室4内への充満度を高められるので、少なくとも食品搬送路3を含む所要域への過熱水蒸気8の行き渡らせることは容易である。所要域は食品搬送路3を搬送する食品1に対して新しい過熱水蒸気8がむら無く連続して及ぶ範囲でよく、処理室4内の全域である必要はないが、処理室4の大きさによってはその全域とすることができるし、一部を除くこともできる。一部を除くのに、この除く部分に過熱水蒸気8や電熱管6からの輻射熱11が及ぶのを遮断するようにもできる。輻射熱11に対する遮断は反射機能を付加するのがその有効利用上から望ましい。また、過熱水蒸気8を所要域へ均等に噴出すために、図3に仮想線で示すように所要域へ分岐などして均等に行き渡らせたノズル管71を設けて、電熱管6の端部の噴出し口6aと複数箇所などを接続し、過熱水蒸気生成手段61自体として電熱管6から放出する過熱水蒸気8を多数に平面配列、平面分散される結果となったノズル穴71aからまわりへ均等に分散させる分散手段を備えたものとしている。しかし、これに代えて、またはこれとともに、電熱管6を分割配管して噴出し口6aを分散配置させたりしてもよい。
【0031】
ここで、処理室4、特に前記所要域では、過熱水蒸気8の食品搬送路3まわりでの搬送方向への移動の制限と、この移動を制限する過熱水蒸気8の処理室4外への排気を伴う更新とを図ると、搬送される食品1の過熱水蒸気8との速度差と過熱水蒸気8の更新とから接触効率を高められ、その分過熱水蒸気の潜熱が食品に移動しやすく食品加熱処理の熱効率および処理効率が高まる。それには、通気手段13が、食品搬送路3のまわりを搬送方向に仕切って処理室4内に供給される過熱水蒸気8の搬送方向への移動を制限する仕切り部14と、仕切り部14間に供給される過熱水蒸気8の処理室4外への排気および更新を図る排気口15とを備えたものとすればよく、仕切り部14は必要な範囲に食品搬送路3を避ける切り込み縁14bを有するなど必要な状態で簡単に設けられ、電熱管6から処理室4に放出する過熱水蒸気8の食品搬送方向の移動を、食品搬送路3のまわりで、従って、食品1の搬送の邪魔をせずに制限して、搬送される食品1との速度差を高めつつ、食品1と接触する過熱水蒸気8の更新が確実に図れて、過熱水蒸気8から食品1への潜熱移動の効率を高められる。また、電熱管6を配管する面域は食品搬送路3の下側に沿った図1〜図5に示すような平面域としてあり、簡単な配管構造にてその上を搬送する食品1に対し下方から輻射熱11を効率よく及ばせられる。
【0032】
排気口15が、処理室4の食品1を搬入する搬入口21および食品1を搬出する搬出口22に対し過熱水蒸気8を優先的に溢れ出させる通気条件を備えたものとしている。例えば、図1、図5に示すように、排気口15を処理室4の搬入口21および搬出口22の直ぐ内側の上部2箇所に設け、仕切り部14をこれら2つの排気口15の間を処理室4の天井に達して複数に仕切るとともに、各排気口15上流位置とそれの直前に設けた仕切り部14との間を他の仕切り部14間よりも狭い仕切り部14間とするとともに、この狭い仕切り部14間をさらに狭くする処理室4の天井に達しない、仕切り部14よりは低い中仕切り部14aを設けている。
【0033】
これにより、処理室4内に放出されて所要域へ行き渡りながら、あるいは充満しながら、搬入口21および搬出口22よりも搬送方向前後の排気口15へ優先的に溢れ出ようとする過熱水蒸気8の搬送方向前後への流れに対し、仕切り部14は食品搬送路3のまわりの流れを堰きとめて制限し、仕切り部14間では過熱水蒸気8を篭らせながら順次流入してくる過熱水蒸気8によって隣の仕切り部14間へと溢れ出る形で排気口15側の仕切り部14間へ順次移っていき、排気口15の直前の他の部分よりも狭い仕切り部14間では、他の仕切り部14より低い中仕切り部14aの案内によって、排気口15へ向かおうとする過熱水蒸気8を搬入口21から食品搬送路3へ供給されて搬送される食品1が随伴させて押し戻そうとするのを受け止めて、また、食品搬送路3を搬送される食品1に過熱水蒸気8が随伴して搬出口22側に溢れ出ようとするのを受け止めて、反排気口15側の仕切り部14と中仕切り部14aの間に上向きに導入しながら中仕切り部14aと排気口15側の仕切り部14の間に下向きに反転させた後、排気口15へと上向きに反転させて、過不足のない排気を図り、過熱水蒸気8と食品1との接触が首尾よく図られる。つまり、通気手段13は、排気口15の食品搬送路3の搬入口21および搬出口22との間の通気条件の設定によって、処理室4への食品1の搬入、搬出を図りながらも、処理室4内に放出した過熱水蒸気8を排気口15から優先的に溢れ出す流れを排気口15の位置に応じた経路にて実現し、処理室4内を搬送する食品1に十分な速度差と更新性とをほぼ均等に確保して過熱水蒸気8を接触させられ、熱効率、調理効率を高められる。これには、搬入口21および搬出口22での過熱水蒸気8の溢れ出しや、搬送される食品1に随伴しての流れを制限するが、食品1はそれにより押し退けられるなどして通過させるエアタイト手段を設ければ好適である。
【0034】
また、電熱管6には、供給される水31をヒータ33により加熱して飽和水蒸気7を発生させる飽和水蒸気生成手段32に接続している。これにより、飽和水蒸気生成手段32での加熱を停止して供給される水31をそのまま電熱管6に流入させると、飽和水蒸気7として処理室4に放出することができるし、水31を加熱して飽和水蒸気7として電熱管6に流入させると電熱管6での加熱度合に応じた過熱水蒸気8として処理室4内に放出することができ、食品1を飽和水蒸気7によっても過熱水蒸気8によっても処理することができる。もっとも、電熱管6での通電、加熱を停止するとそれに流入する飽和水蒸気生成手段32からの飽和水蒸気をそのまま処理室内に放出することができる。なお、飽和水蒸気生成手段32は水31をヒータ33により加熱して飽和水蒸気7を生成するものとしてあるが、これに限られることはない。また、水に代えて空気を用いても同じ温度範囲の処理が常圧にて行えるし、空気中に放出してもよい窒素などの不活性ガスなどを用いてもよい。ともあれ、本実施の形態の装置は図3に示すように、電熱管6およびヒータ33への通電を個別にオン、オフし、また、消費電力の設定を種々に変えられる制御装置34、および制御装置34に種々の操作信号を入力する操作部35とを備えている。
【0035】
なお、処理室4は過熱水蒸気8および電熱管6を内部で取り扱うためのもので、内部が800℃程度、場合によってはそれ以上の高温に達する使用がなされることから、周囲を断熱壁51で囲ってある。また、食品搬送手段12はスプロケット53によって張設した左右一対のチエン12a間に金属製のバー12bやメッシュ材12cを渡した耐熱性、通気性のあるコンベアとしてあり、過熱水蒸気8や輻射熱11を遮らないものとしてある。食品搬送手段12は処理室4内を食品1を搬送するもので、搬入口21側および搬出口22側には食品搬送手段12に対して食品1を搬入し、また搬出するローラコンベア52を設けてある。食品搬送手段12は処理室4外のモータ54からの伝動によって駆動するようにしてあり、ローラコンベア52を駆動するにも同様にする。
【0036】
ところで、上記のような常圧の過熱水蒸気8を利用して食品1を加熱し処理するのに、図6に示すように開封状態の包装食品41を供給して搬送し過熱水蒸気8と電熱管6からの輻射熱11とに曝して加熱し処理した後、包装食品41を封止するようにもできる。これにより、包装食品41を開封状態のまま常圧の過熱水蒸気8に曝して包装容器41a内の食品41bに直接及ぼしながら、加圧や熱膨張の問題なしに内外から加熱して処理し、処理後の処理環境内での封止により処理状態のままの食品41bを封止し外部から遮断することができる。この方法を実現するには、図6に示すように食品搬送手段12が、開封した例えば袋に食品を入れた包装食品41を左右のガイド44にて倒れないように搬送して加熱処理に供するものであり、この加熱処理後の包装食品41を加熱によるシール部43を施して封止する封止手段としてのシーラー42などを処理室4内に備えたものであればよい。もっとも、包装容器の材質や形態を特に問うものではなく、缶などの金属容器を採用することができるし、処理温度によってはガラス容器も使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は食品の加熱処理に実用でき、過熱水蒸気を利用した処理に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の、1つの実施の形態に係る食品の処理装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の装置における食品搬送路部の横断面図である。
【図3】図1の装置における電熱管の配管部の横断面図である。
【図4】図1の装置の食品搬送手段を横断して見た断面図である。
【図5】図1の装置の斜視図である。
【図6】本発明の、別の実施の形態に係る食品の処理装置の一部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 食品
3 食品搬送路
4 処理室
6 電熱管
7 飽和水蒸気
8 過熱水蒸気
11 輻射熱
12 食品搬送手段
13 通気手段
14 仕切り部
15 排気口
21 搬入口
22 搬出口
41 包装食品
42 シーラー
43 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の処理室外への排気を伴い更新を図り、食品搬送路に食品を供給して搬送しながら、前記更新される過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する食品を曝して加熱し処理することを特徴とする食品の処理方法。
【請求項2】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の食品搬送路まわりでの搬送方向への移動の制限と、この移動を制限する過熱水蒸気の処理室外への排気を伴う更新とを図り、食品搬送路に食品を供給して搬送しながら、前記移動の制限と更新が図られる過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する食品を曝して加熱し処理することを特徴とする食品の処理方法。
【請求項3】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の室外への排気を伴い更新を図り、食品搬送路に開封状態の包装食品を供給して搬送しながら、前記更新される過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する包装食品を曝して加熱し処理した後、その処理環境内で包装食品を封止することを特徴とする食品の処理方法。
【請求項4】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送路が貫通した処理室内において、食品搬送路にほぼ沿った面域に配管し通電により発熱させた電熱管内に水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出して少なくとも食品搬送路を含む所要域に行き渡らせながら、この過熱水蒸気の食品搬送路まわりでの搬送方向への移動の制限と、この移動を制限する過熱水蒸気の室外への排気を伴う更新とを図り、食品搬送路に開封状態の包装食品を供給して搬送しながら、前記移動の制限と更新が図られる過熱水蒸気と電熱管からの輻射熱とに、搬送する包装食品を曝して加熱し処理した後、その処理環境内で包装食品を封止することを特徴とする食品の処理方法。
【請求項5】
面域は食品搬送路の下側に沿った平面域である請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の処理方法。
【請求項6】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送手段が貫通した処理室と、この処理室内の食品搬送手段にほぼ沿った面域に配管されて通電により発熱し供給される水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出し処理室内の食品搬送手段がなす食品搬送路を含む所要域に行き渡らせる電熱管と、所要域に行き渡る過熱水蒸気の処理室外への排気を伴う更新を図る通気手段と、を備えたことを特徴とする食品の処理装置。
【請求項7】
食品をまわりの雰囲気に曝しながら搬送する食品搬送手段が貫通した処理室と、この処理室内の食品搬送手段にほぼ沿った面域に配管されて通電により発熱し供給される水蒸気を通して加熱し過熱水蒸気として放出し処理室内の食品搬送手段がなす食品搬送路を含む所要域に行き渡らせる電熱管と、処理室内に放出される過熱水蒸気の処理室外への排気を伴う更新を図る通気手段と、所要域に行き渡る過熱水蒸気の食品搬送手段が形成する搬送路まわりでの搬送方向への移動を制限し、かつ、この移動を制限する過熱水蒸気の室外への排気を伴い更新を図る通気手段と、を備えたことを特徴とする食品の処理装置。
【請求項8】
通気手段は、搬送路まわりを搬送方向に仕切って処理室内に供給される過熱水蒸気の搬送方向への移動を制限する仕切り部と、仕切り部間に行き渡る過熱水蒸気の処理室外への排気および更新を図る排気口とを備えた請求項7に記載の食品の処理装置。
【請求項9】
排気口は、処理室の食品を搬入する搬入口および食品を搬出する搬出口に対し過熱水蒸気を優先的に溢れ出させる通気条件を備えている請求項6〜8のいずれか1項に記載の食品の処理装置。
【請求項10】
面域は食品搬送手段の下側に沿った平面域である請求項6〜9のいずれか1項に記載の食品の処理装置。
【請求項11】
搬送手段は、開封した包装食品を搬送して加熱処理に供するものであり、この加熱処理後の包装食品をその加熱処理環境内で封止する封止手段を処理室内に備えた請求項6〜10のいずれか1項に記載の食品の処理装置。
【請求項12】
電熱管は、供給される水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気生成手段に接続されている請求項6〜11のいずれか1項に記載の食品の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−166797(P2006−166797A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363997(P2004−363997)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(591130537)株式会社両双 (9)
【出願人】(501005830)
【Fターム(参考)】