説明

食品用電子レンジ容器

【課題】 食品を収納して販売する容器であって、電子レンジで加熱調理する食品用電子レンジ容器において、透明性及び光沢があって美粧性に優れ、かつ、油分が多い食品を電子レンジ加熱にしても十分な耐油性及び耐熱性を有するようにする。
【解決手段】 食品用電子レンジ容器は、MD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍弱二軸延伸した後熱固定する一次延伸工程を経た弱二軸延伸ナイロンフィルムを、主層であるプラスチックシートに貼合し、熱成形機の金型で加熱成形し、成形による二次延伸されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストア等において食品を収納して販売するための食品容器に関し、さらに詳しくは、光沢のある美粧性に優れるとともに、油分を含む食品が電子レンジ加熱で上昇する150℃にも耐えられる耐熱性と耐油性に優れた食品用電子レンジ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア、デパート、スーパー等の食品売場においては、トレー、カップ、丼容器、弁当容器等の食品容器に、惣菜、麺類、サラダ、揚物等の食品が詰められて売られている。このような食品容器は、食品を収納する容器本体と蓋体とで構成されており、一般に、容器本体は、ポリプロピレン、フィラー入りポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、無水マレイン酸で変性した耐熱ポリスチレン(特許文献1、2、3参照)、ブタンガスや炭酸ガスで7〜8倍にガス発泡した耐熱発泡ポリスチレン等のシートから熱成形されたものが用いられている。また、蓋体は、AーPET、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリプロピレン等のシートから熱形成されたものが用いられている(特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら、フィラー入りポリプロピレンの場合は、フィラーとポリプロピレンとの相溶化のために添加しているステアリン酸カルシウム等の添加剤の食品への移行を防止しなければならず、未延伸のポリプロピレンフィルムを貼合していた。また、耐熱ポリスチレンや耐熱発泡ポリスチレンの場合も、油分を含む食品を電子レンジで加熱した際、油分によって容器に孔が開くのを防止するために、未延伸のポリプロピレンフィルムを貼合していた。
【0004】
しかしながら、未延伸ポリプロピレンフィルムを貼合すると、透明性がなく、かつ光沢が無く美粧性に劣る容器となるものであった。
【0005】
そこで、未延伸ポリプロピレンフィルムの欠点を改善するために、MD方向とTD方向に延伸し、面積延伸倍率が25〜45倍である二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提案されている(特許文献5、6参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−220140号公報
【特許文献2】特開平11−12418号公報
【特許文献3】特開2001−294721号公報
【特許文献4】特開2005−329972号公報
【特許文献5】特許第3295338号
【特許文献6】特開2003−41017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、油分を含む食品を電子レンジで加熱した際、不都合が生じるものであった。すなわち、油分を含む食品を電子レンジで加熱すると、食品から分離した油分は150℃にも到達するため、油分に接触した二軸延伸ポリプロピレンフィルムに膨れが発生し、この膨れた部分を箸などが突き破り、食品がフィラ−入りポリプロピレンシート等に接触することがあった。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、光沢が余り良くなく美粧性の改善が望まれていた。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたもので、透明性及び光沢があって美粧性に優れ、かつ、油分の多い食品を電子レンジ加熱しても膨れが発生しない耐油性及び耐熱性を有する食品用電子レンジ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上述した課題を解決すべく鋭意検討し、二軸延伸したナイロンフィルムを用いれば、耐油性と耐熱性を合わせ持つとともに、透明性と光沢が向上することに着目し本発明を完成するに至った。
【0010】
請求項1に係る食品用電子レンジ容器は、主層であるプラスチックシートと、該プラスチックシートに貼合されたMD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍二軸延伸した後熱固定された弱二軸延伸ナイロンフィルムとからなることを特徴として構成されている。
【0011】
請求項2に係る食品用電子レンジ容器は、MD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍弱二軸延伸した後熱固定する一次延伸工程を経た弱二軸延伸ナイロンフィルムを、主層であるプラスチックシートに貼合し、熱成形機の金型で加熱成形し、成形による二次延伸することを特徴として構成されている。
【0012】
請求項3に係る食品用電子レンジ容器は、請求項1又は2に係る食品用電子レンジ容器において、主層であるプラスチックシートが、ポリプロピレンシート、フィラー入りポリプロピレンシート、発泡ポリプロピレンシート、耐熱ポリスチレンシート又は耐熱発泡ポリスチレンシートであることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る食品用電子レンジ容器においては、主層であるプラスチックシートに、MD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍二軸延伸した後熱固定された弱二軸延伸ナイロンフィルムが貼合されているので、透明性及び光沢が向上し、かつ、耐熱性及び耐油性も優れている。
【0014】
請求項2に係る食品用電子レンジ容器においては、主層であるプラスチックシートに、MD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍二軸延伸した後熱固定された弱二軸延伸ナイロンフィルムが貼合され、さらにこの弱二軸延伸ナイロンフィルムは、加熱成形の際、プラスチックシートの伸びに追従して二次延伸されるので、透明性及び光沢がより向上している。
【0015】
請求項3に係る食品用電子レンジ容器においては、主層であるプラスチックシートが、各種ポリプロピレンシートや、各種耐熱性ポリスチレンシートであるので、耐熱性が向上している。すなわち、油分の多い食品を電子レンジで加熱した際に分離した油分の多い部分は150℃にも上昇するが、この高温にも十分耐え得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の食品用電子レンジ容器は、主層であるプラスチックシートに弱二軸延伸ナイロンフィルムが貼合されている。この弱二軸延伸ナイロンフィルムは、MD方向に2.0〜4.0倍、好ましくは2.5〜3.5倍延伸され、TD方向に2.0〜4.0倍、好ましくは2.5〜3.5倍延伸されたものである。延伸倍率が2.0倍未満であると、フィルムの光沢が劣り、成形機の金型による成形による二次延伸をしても光沢の発現が劣る。延伸倍率が4.0倍を超えると、光沢に優れるようになるが、配向による収縮率が大きくなり、熱成形した時にシートからのフィルムの剥がれや、成形の安定性、金型再現性に劣るものとなる。延伸倍率はMD方向、TD方向ともほぼ同じ倍率であることが好ましく、成形による二次延伸の際にも均等に伸び成形の安定性につながる。
【0017】
弱二軸延伸ナイロンフィルムを作製するには、押出機にナイロン樹脂を投入し、まずTダイ法によって未延伸ナイロンフィルムを作製し、その後、所定の温度でロール間のスピードの差によってMD方向に延伸させ、次いでテンター内のチャック間の拡がりによりTD方向に延伸する逐次二軸延伸法でも、チューブラー法による同時二軸延伸法でもよいが、チューブラー法がバランス良く延伸でき、また延伸設備に要する費用も少ないので好ましい。そして、このような方法で延伸された後、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理される。この熱処理は特に限定されないがテンター(恒温室)や熱ロールが用いられる。
【0018】
チューブラー法で同時二軸延伸するためには、まず、押出機にナイロン樹脂を投入し、丸ダイスより下方にチューブ状に押出し、チューブの内側は冷却水で冷却されたマンドレルに滑らせながら外側はチューブに沿って水を流して冷却しながら引取り、チューブ状の未延伸ナイロンフィルムを作製する。そして、このチューブ状の未延伸ナイロンフィルムをチューブラー二軸延伸装置で同時二軸延伸する。
【0019】
チューブラー二軸延伸装置の例を図1に示す。図1のチューブラー二軸延伸装置において、チューブ状の未延伸フィルム1は低速のニップロール2でニップされながら赤外線ヒーターからなる予備加熱機3で予備加熱された後、赤外線ヒーターからなる本加熱機4で本加熱される。本加熱機4での加熱温度は、配向可能な温度範囲で行われる。そして、チューブ状の未延伸フィルム1は、TD方向はチューブ内の空気圧で、MD方向はニップロール2とニップロール7の速度差によって夫々同時二軸延伸されるとともに、リング状のエアーノズル5によって冷風が吹き付けられ冷却される。次いで、折りたたみロール6によって折りたたまれ、ニップロール7を通って弱二軸延伸ナイロンフィルム8が得られる。そして、この弱二軸延伸ナイロンフィルム8は、テンター内でMD方向、TD方向とも弛緩熱処理される。
【0020】
弱二軸延伸ナイロンフィルムに用いるナイロン樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマー等を用いることができるが、ナイロン6樹脂がコストの点において好ましい。
【0021】
ナイロン樹脂は、水分含有率が0.1重量%以下であることが必要である。水分含有率が0.1重量%を越えると、押出機から押出した時に圧力が大気圧に開放されるため発泡が起こりフィルムの破れ等の問題が発生する。したがって、ナイロン樹脂の水分含有量が0.1重量%を越える場合は、真空乾燥によって水分含有量を0.1重量%以下にする。真空乾燥は、温度80〜110℃、真空度400〜667Pa(3〜5mmHg)で4時間以上乾燥することにより、水分含有率を0.1重量%以下にすることができる。
【0022】
弱二軸延伸ナイロンフィルムの厚みは、10〜50μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。厚みが10μmより薄いと、熱成形の際、伸ばされた部分に極端に薄い部分ができたり切れたりする恐れがあり、また50μmより厚いと、コスト的に割高になり、また全体的な熱収縮力が大きくなるため成形の安定性や金型再現性が劣るようになる。
【0023】
以上のような弱二軸延伸ナイロンフィルムは、主層であるプラスチックシートに貼合されている。このプラスチックシートは、耐油性と、油分を含む食品を電子レンジで加熱した時に分離した油分の到達温度約150℃にも耐えられる耐熱性との観点からは、ポリプロピレンシート、フィラー入りポリプロピレンシート、発泡ポリプロピレンシート、耐熱ポリスチレンシート、耐熱発泡ポリスチレンシートが好ましい。さらに、食品を電子レンジで加熱した時の断熱性の観点からは、発泡ポリプロピレンシート、耐熱発泡ポリスチレンシートが好ましい。なお、ポリエチレン系シート、ポリスチレン系シート、A−PETシートは耐油性と耐熱性の観点から好ましく無い。
【0024】
ポリプロピレンシート、フィラー入りポリプロピレンシート、ポリスチレンシート等の発泡していないシートの場合は、厚みは0.3〜1.2mmが好ましく、0.4〜1.0mmがより好ましい。厚みが0.3mmより薄いと、腰が弱いため電子レンジで加熱した場合に形状を保ちにくいものであり、また、厚みが1.2mmより厚いとコストが高くなる。
【0025】
発泡ポリプロピレンシート、耐熱発泡ポリスチレンシート等の発泡シートの場合は、厚みは0.4〜2.5mmが好ましく、0.5mm〜2.0mmがより好ましい。厚みが0.4mmより薄いと、加熱成形した時に容器の底部コーナー等の伸ばされた部分に薄肉部が発生し易いものであり、また、厚みが2.5mmより厚いとコストが高くなる。
【0026】
発泡ポリプロピレンシートの発泡倍率は2.0〜8.0倍が好ましく、2.5〜6.0倍がより好ましい。発泡倍率が2.0倍未満では、食品を電子レンジで加熱した時の断熱性が劣るものであり、また、発泡倍率が8.0倍を越えると、発泡が難しくなる。耐熱発泡ポリスチレンシートの発泡倍率は2.0〜12.0倍が好ましく、2.5〜10.0倍がより好ましい。発泡倍率が2.0倍未満では、食品を電子レンジで加熱した時の断熱性に劣るものであり、発泡倍率が12.0倍を越えると、シートが軟らかくなるものである。発泡は、重曹系等の化学発泡剤による化学発泡でも、ブタンガス等のガス発泡のいずれでも良い。
【0027】
プラスチックシートに弱二軸延伸ナイロンフィルムを貼合するには、通常のドライラミネート法でも良いが、プラスチックシートの厚みが0.4mm以上になるとプラスチックシートの剛性が増し、ロールの多いドライラミネーターでは難しくなる。このような場合はプラスチックシートと同樹脂からなるフィルムにドライラミネート法で積層し、この積層フィルムをプラスチックシートに熱貼合する。プラスチックシートがポリプロピレン、発泡ポリプロピレンシートの場合には、未延伸のポリプロピレンフィルムと積層し、主層プラスチックシートが耐熱ポリスチレン、耐熱発泡ポリスチレンシートの場合には、未延伸のポリスチレンフィルムと積層する。
【0028】
プラスチックシートに、弱二軸延伸ナイロンフィルムを積層した弱二軸延伸ナイロン積層フィルムを熱貼合して熱成形シート積層材を作製する熱貼合装置を図2に示す。図2において、21はプラスチックシートロール、22は弱二軸延伸ナイロン積層フィルムロール、23はヒーター、24は加熱ロール、25はニップロール、26は熱成形シート積層材ロールである。このような貼合装置においてプラスチックシートロール21より、プラスチックシート27を繰出すとともに、弱二軸延伸ナイロン積層フィルムロール22より弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28を繰出し、プラスチックシート27はヒーター23で加熱後、加熱ロール24に送られ、弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28と重ねられて熱貼合され、熱成形シート積層材29が形成される。形成された熱成形シート積層材29は熱成形シート積層材ロール26に巻き取られる。
【0029】
以上のような弱二軸延伸ナイロンフィルム(弱二軸延伸ナイロン積層フィルム)とプラスチックシートとを貼合した熱成形シート積層材を用い、加熱成形により食品用電子レンジ容器を製造する。
【0030】
加熱成形は、真空成形、真空・圧空成形等一般的な加熱成形方法が用いられる。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
水分含有率が1000ppm以下に乾燥されたナイロン6樹脂を押出機に投入し、連結された下向きの丸ダイス(径400mmΦ)から270℃で下向きに押出した。押出されたチューブをダイス直下に設けられた内部に冷却水が循環しているマンドレル(径425mmΦ)に滑らせるようにしてチューブの内側を冷却し、チューブの外側はチューブに沿って水を流して冷却しながら引取り、直径420mmΦ、厚さ137μmのチューブ状の未延伸ナイロンフィルムを得た。
【0032】
このチューブ状の未延伸ナイロンフィルムを、図1に示すようなチューブラー二軸延伸装置によって膨張延伸を行った。チューブ状の未延伸ナイロンフィルム1を予備加熱機3の赤外線ヒーターの電流を調節しながら予備加熱を行った後、5ゾーンに分けられた本加熱機4の赤外線ヒーターの電流を調節しながら加熱し、本加熱機4下方よりチューブに沿って流れる空気圧と、ニップロール2とニップロール7との速度差によってMD方向に3.0倍、TD方向に3.1倍、面積延伸倍率として9.3倍の膨張延伸した。この時、放射温度計で測定したチューブ状の未延伸ナイロンフィルムの表面温度は120℃であった。
【0033】
次いで、このように弱二軸延伸したナイロンフィルムをテンター(恒温室)内に導き、MD方向に0.6%、TD方向に0.7%弛緩させ、170℃で第一次の弛緩熱処理を行った。
【0034】
さらに、第二のテンター内に導きMD方向に1.3%、TD方向に1.4%弛緩させ、210℃で第二次の弛緩熱処理を行った。そしてこのチューブ状の弱二軸延伸ナイロンフィルムを2枚に開いて紙管に巻き取った。厚さは15μmであった。そして、この弱二軸延伸ナイロンフィルムと厚さ25μmの未延伸ポリスチレンフィルムとを、ポリウレタン接着剤を用いたドライラミネートを行って積層した。
【0035】
この弱二軸延伸ナイロン積層フィルムを、ブタンガスで7倍に発泡させた耐熱発泡ポリスチレンシート(厚み1.5mm)に熱貼合によって積層させた。熱貼合には図2に示す熱貼合装置を用い、耐熱発泡ポリスチレンシートロール21より耐熱発泡ポリスチレンシート27を繰り出すとともに、弱二軸延伸ナイロン積層フィルムロール22より弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28を繰り出し、耐熱発泡ポリスチレンシート27はヒーター23で加熱後、加熱ロール24に送られ弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28のポリスチレンフィルム面と重ねられて熱貼合され、熱成形シート積層材29が成形される。成形された熱成形シート積層材29は、熱成形シート積層材ロール26に巻き取られる。なお、熱貼合条件は以下の通りである。
【0036】
加工速度:40m/min
耐熱発泡ポリスチレンシートの予備加熱:90℃(表面温度)
加熱ロールの温度:130℃
熱成形シート積層材の加熱ロール接触距離:50cm(0.75秒接触)
ニップ圧:6Kg−cm
【0037】
<ラミネート強度>
熱成形シート積層材を15mm巾に切断し、接着部分を手で剥離し、剥離した部分の双方を定速引張試験機の上下のチャックに固定、初期チャック間を50mmとして、300mm/minの引張速度で未剥離部分を水平に保ちながらT型剥離を行った。ラミネート強度は、180g/15mm巾であった。
【0038】
次に、得られた熱成形シート積層材を用い、口径12cm、底部径10cm、深さ5.5cmの丼型容器を成形した。成形にはスピーマー(株)製真空成形機「1600D型」を用いて下記の条件で行った。
【0039】
ヒーター温度(片面):270℃
シート表面温度:120℃
加熱時間:8秒
金型温度:80℃
【0040】
<成形品の外観>
成形前の熱成形シート積層材は、透明性及び光沢が優れていたが、耐熱発泡ポリスチレンシートの発泡による凹凸が見られた。しかし、成形した食品用電子レンジ容器は、表面が完全に平滑になり光沢度も格段に向上し、美粧性の優れた容器となった。これは加熱成形による延伸により、弱二軸延伸ナイロンフィルムの張力によって、軟らかくなった耐熱発泡ポリスチレンシートの凹凸が潰されて平滑になり光沢度も向上したものと思われる。
【0041】
<耐熱性、耐油性>
この成形した容器に「とんかつ」を載せて電子レンジ(National NE−EZ2)を用いて700Wで3分間加熱した。「とんかつ」の表面温度は赤外線放射温度計(SATO:SK−8700II)で157℃を示した。容器の底部には油がたまっており、油を除いてその部分の外観を観察したが膨れもなく、光沢も維持されていた。
【0042】
[実施例2]
実施例1に用いた弱二軸延伸ナイロンフィルムと厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムとをポリウレタン接着剤を用いて、ドライラミネートを行って、積層した。
【0043】
この弱二軸延伸ナイロン積層フィルムを化学発泡剤で3.0倍に発泡させた発泡ポリプロピレンシート(厚み0.8mm)に熱貼合によって積層させた。
【0044】
熱貼合には図2に示す熱貼合装置を用い、発泡ポリプロピレンシートロール21より発泡ポリプロピレンシート27を繰り出すとともに弱二軸延伸ナイロン積層フィルムロール22より弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28を繰り出し、発泡ポリプロピレンシート27はヒーター23で加熱後、加熱ロール24に送られ弱二軸延伸ナイロン積層フィルム28のポリプロピレンフィルム面と重ねられて熱貼合され、熱成形シート積層材29が形成される。形成された熱成形シート積層材29は熱成形シート積層材ロール26に巻き取られる。なお、熱貼合条件は、以下の通りである。
【0045】
加工速度:30m/min
発泡ポリプロピレンシートの予備加熱:140℃(表面温度)
加熱ロールの温度:170℃
熱成形シート積層材の加熱ロール接触距離:50cm(1.0秒接触)
ニップ圧:6Kg−cm
【0046】
<ラミネート強度>
熱成形シート積層材を15mm巾に切断し、接着部を手で剥離しようとしたが剥離不可であった。
【0047】
次に、得られた熱成形シート積層材を用い、口径12cm、底部径10cm、深さ5.5cmの丼型容器を成形した。成形にはスピーマー(株)真空成形機「1600D型」を用いて下記の条件で行った。
【0048】
ヒーター温度(片面):380℃
シート表面温度:145℃
加熱時間:8秒
金型温度:80℃
【0049】
<成形品の外観>
成形前の熱成形シート積層材は、透明性及び光沢が優れていたが、発泡ポリプロピレンシートの発泡による凹凸が見られた。しかし、成形した食品用電子レンジ容器は、表面が完全に平滑になり光沢度も格段に向上し、美粧性の優れた容器となった。これは加熱成形による延伸により、弱二軸延伸ナイロンフィルムの張力によって、軟らかくなった発泡ポリプロピレンシートの凹凸が潰されて平滑になり光沢度も向上したものと思われる。
【0050】
<耐熱性、耐油性>
この成形した容器に「とんかつ」を載せて電子レンジ(National NE−EZ2)を用いて700Wで3分間加熱した。「とんかつ」の表面温度は赤外線放射温度計(SATO:SK−8700II)で157℃を示した。容器の底部には油がたまっており、油を除いてその部分の外観を観察したが膨れもなく光沢も光沢も維持されていた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の食品用電子レンジ容器の製造に用いるチューブラー二軸延伸装置の概略図
【図2】本発明の食品用電子レンジ容器の製造に用いる熱貼合装置の概略図
【符号の説明】
【0052】
1 未延伸フィルム
2 ニップロール
3 予備加熱機
4 本加熱機
5 エアーノズル
6 折りたたみロール
7 ニップロール
8 弱二軸延伸ナイロンフィルム
21 プラスチックシートロール(耐熱発泡ポリスチレンシートロール、発泡ポリプロピレンシートロール)
22 弱二軸延伸ナイロン積層フィルムロール
23 ヒーター
24 加熱ロール
25 ニップロール
26 熱成形シート積層材ロール
27 プラスチックシート(耐熱発泡ポリスチレンシート、発泡ポリプロピレンシート)
28 弱二軸延伸ナイロン積層フィルム
29 熱成形シート積層材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主層であるプラスチックシートと、該プラスチックシートに貼合されたMD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍二軸延伸した後熱固定された弱二軸延伸ナイロンフィルムとを有することを特徴とする食品用電子レンジ容器。
【請求項2】
MD方向に2.0〜4.0倍、TD方向に2.0〜4.0倍弱二軸延伸した後熱固定する一次延伸工程を経た弱二軸延伸ナイロンフィルムを、主層であるプラスチックシートに貼合し、熱成形機の金型で加熱成形し、成形による二次延伸することを特徴とする食品用電子レンジ容器。
【請求項3】
前記主層であるプラスチックシートが、ポリプロピレンシート、フィラー入りポリプロピレンシート、発泡ポリプロピレンシート、耐熱ポリスチレンシート又は耐熱発泡ポリスチレンシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品用電子レンジ容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−81202(P2008−81202A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266735(P2006−266735)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(594146180)中本パックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】