説明

飲酒状態検出システム

【課題】本発明は、会話により車内に放出された被験者の呼気を収集して、呼気のアルコール濃度を検出することで、飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる飲酒状態検出システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る飲酒状態検出システム1は、車内の被験者の会話を誘導する通信部8と、会話により車内に放出された被験者の呼気を収集するファン10と、呼気収集手段が収集した呼気のアルコール濃度を検出すると共に、アルコール濃度の検出結果に基づいて、被験者の飲酒状態を検出するECU2と、を備える。この飲酒状態検出システム1によれば、会話によって放出された被験者の呼気を呼気収集手段が収集してアルコール濃度の検出を行うので、被験者によるアルコール検査の回避や後回しを抑制することができ、飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒状態検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば特開2005−184184号公報に記載された酒気帯び検知システムが知られている。この酒気帯び検知システムでは、携帯端末を通じて運送会社の管理者が被験者にアルコール検査の指示を出し、被験者が行ったアルコール検査の結果を当該携帯端末に接続されたアルコール検知器を通じて管理者へ送信することで、被験者と管理者とが離れている場合であっても被験者の酒気帯び状態を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−184184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の酒気帯び検知システムにおいては、被験者にアルコール検査を行わせる必要があるため、被験者が指示を無視したり、酔いを醒ますための時間を置いたりするおそれがあり、飲酒状態の検出の信頼性が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、会話により車内に放出された被験者の呼気を収集して、呼気のアルコール濃度を検出することで、飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる飲酒状態検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る飲酒状態検出システムは、車内の被験者の会話を誘導する会話誘導手段と、会話により車内に放出された被験者の呼気を収集する呼気収集手段と、呼気収集手段が収集した呼気のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、アルコール濃度の検出結果に基づいて、被験者の飲酒状態を検出する飲酒状態検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る飲酒状態検出システムによれば、会話によって放出された被験者の呼気を呼気収集手段が収集してアルコール濃度の検出を行うので、被験者によるアルコール検査の回避や後回しを抑制することができ、飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる。
【0008】
また、被験者の運転する車両の挙動が予め定められた飲酒状態挙動であるか否かを判定する挙動判定手段を更に備え、会話誘導手段は、車両の挙動が飲酒状態挙動であると判定された場合に、被験者の会話を誘導することが好ましい。
【0009】
この飲酒状態検出システムによれば、被験者の運転する車両の挙動が飲酒状態挙動であると判定した場合、すなわち被験者が飲酒状態である可能性がある場合に、会話の誘導を行う。従って、この飲酒状態検出システムでは、被験者が飲酒状態である可能性がある場合に、飲酒状態の検査を行うことができるので、飲酒運転の抑制を図ることができる。
【0010】
また、呼気収集手段が被験者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気を収集したか否かを判定する判定手段を更に備え、飲酒状態検出手段は、呼気収集手段が被験者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気を収集したと判定された場合に、被験者の飲酒状態を検出すること
ることが好ましい。
【0011】
この飲酒状態検出システムによれば、飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集された場合に、その呼気のアルコール濃度の検出結果に基づいて飲酒状態の検出を行うので、換気等により呼気が十分に収集されない状態で飲酒状態を検出することを回避することができ、これによって飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飲酒状態の検出における信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る飲酒状態検出システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】飲酒状態検出システムの動作を説明するための説明図である。
【図3】飲酒状態検出システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る飲酒状態検出システムの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る飲酒状態検出システム1は、運転者(被験者)の飲酒状態を検出するものであり、システムを統括的に制御するECU[Electric Control Unit](挙動判定手段、呼気量判定手段、アルコール濃度検出手段、飲酒状態検出手段)2を有している。
【0016】
ECU2は、演算処理を行うCPU[Central Processing Unit]、記憶部となるROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]、入力信号回路、出力信号回路、電源回路等により構成されている。ECU2は、走行状態検出部3、マイク4、運転者撮像カメラ5、及びCO2センサ6と電気的に接続されている。更に、ECU2は、アルコールセンサ7、通信部(会話誘導手段)8、出力部9、ファン(呼気収集手段)10、及びエンジン制御部11と電気的に接続されている。
【0017】
走行状態検出部3は、車両の速度を検出する車速センサや車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ等の各種センサから構成され、車両の走行状態を検出する。走行状態検出部3は、検出した車両の走行状態を走行状態情報としてECU2に出力する。
【0018】
マイク4は、例えば運転席前方に設けられ、運転者の声を拾う。マイク4は、拾った運転者の声を運転者音声情報としてECU2に出力する。運転者撮像カメラ5は、例えば運転席前方に設けられ、運転者の顔や姿勢を撮像する。運転者撮像カメラ5は、撮像した運転者の画像を画像情報としてECU2に出力する。
【0019】
CO2センサ6は、呼気量を検出する呼気量検出手段として機能する。CO2センサ6は、マイク4の付近に形成された通気孔内に配置され、空気中の二酸化炭素(CO2)を検出する。CO2センサ6は、検出したCO2の量をCO2情報としてECU2に出力する。アルコールセンサ7は、CO2センサ6と同じ通気孔内に配置され、空気中のアルコール濃度を検出する。アルコールセンサ7は、検出したアルコール濃度に関するアルコール濃度情報をECU2に出力する。
【0020】
通信部8は、FM多重放送等の通信インフラを通じてメディアセンターと車両との双方向通信を行う。ここで、メディアセンターは、車両に対する各種情報サービスを行うデータセンターである。通信部8は、ECU2を介してマイク4、運転者撮像カメラ5、及び出力部9と接続されている。通信部8は、マイク4から出力された運転者音声情報及び運転者撮像カメラ5から出力された画像情報をメディアセンターに送信する。また、通信部8は、メディアセンターから送信された各種情報を出力部9に出力する。
【0021】
出力部9は、ディスプレイやスピーカ等から構成され、運転者に対して映像や音声による情報提供を行う。出力部9は、通信部8を通じてメディアセンターから送信された各種情報、例えばメディアセンターのオペレータの画像や音声を運転者に出力する。
【0022】
ファン10は、CO2センサ6及びアルコールセンサ7が配置された通気孔入口に設けられ、ECU2からの指令により起動する。ファン10は、回転によって、運転者が会話や呼吸により車内に放出した呼気を通気孔内に収集する。また、ファン10の起動に合わせて、CO2センサ6及びアルコールセンサ7も起動される。エンジン制御部11は、車両のエンジンを制御するものである。エンジン制御部11は、ECU2からのエンジン停止指令に応じて、エンジンを強制的に停止させる。
【0023】
ECU2は、走行状態検出部3からの出力により走行状態情報を取得する。ECU2は、取得した走行状態情報に基づいて、車両の挙動が飲酒状態挙動(蛇行運転等の運転者が飲酒状態の場合に行う可能性の高い挙動)であるか否かを判定する。ECU2は、車両の挙動が飲酒状態挙動であると判定した場合、通信部8を通じてメディアセンターに接続する。
【0024】
ECU2は、メディアセンターと接続した場合、ファン10に起動指令を出力する。ECU2は、マイク4から出力された運転者音声情報に基づいて、メディアセンターのオペレータと運転者との会話動作が行われたことを認識する。ECU2は、会話動作が行われたことを認識した場合、CO2センサ6から出力されたCO2情報に基づいて、CO2量が予め定められた判定閾値以上であるか否かを判定する。
【0025】
ECU2は、CO2量が判定閾値以上ではないと判定した場合、ファン10により運転者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集されていないと判定して、十分な量の呼気が収集されていないことをメディアセンターに伝えるための呼気量不足指令を通信部8に出力する。
【0026】
ECU2は、CO2量が判定閾値以上であると判定した場合、ファン10により運転者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集されたと判定する。ECU2は、飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集されたと判定した場合、アルコールセンサ7から出力されたアルコール濃度情報に基づいて、運転者の呼気のアルコール濃度が予め定められた飲酒状態閾値以上であるか否かを判定する。
【0027】
ECU2は、運転者の呼気のアルコール濃度が飲酒状態閾値以上であると判定した場合、運転者の飲酒状態を検出したと判断して、車両のエンジンを強制停止させるためのエンジン停止指令をエンジン制御部11に出力する。
【0028】
次に、以上のように構成された飲酒状態検出システム1の動作について図面を参照して説明する。
【0029】
図2及び図3に示すように、ステップS1において、走行状態検出部3からの出力により走行状態情報が取得される。次に、取得された走行状態情報に基づいて、車両の挙動が飲酒状態挙動であるか否かが判定される(S2)。
【0030】
ステップS2において、車両の挙動が飲酒状態挙動ではないと判定された場合、ステップS1に戻って処理を繰り返す。一方、車両の挙動が飲酒状態挙動であると判定された場合、通信部8を通じて車両がメディアセンターに接続される(S3)。その後、ファン10に起動指令が出力されて、車内に放出された運転者の呼気の収集が開始される(S4)。
【0031】
続いて、メディアセンターのオペレータと運転者との間で会話動作が行なわれる(S5)。そして、マイク4から出力された運転者音声情報により会話動作が認識されると、CO2センサ6から出力されたCO2情報に基づいて、CO2量が予め定められた判定閾値以上であるか否かが判定される(S6)。
【0032】
ステップS6において、CO2量が判定閾値以上ではないと判定された場合、ファン10により運転者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集されていないと判定されて、十分な量の呼気が収集されていないことをメディアセンターに伝えるための呼気量不足指令が通信部8に出力される。十分な量の呼気が収集されていないことを伝えられたメディアセンターのオペレータは、運転者撮像カメラ5に撮像された運転者の画像を確認しながら、運転者に適切な指示を出す(S7)。ここで、オペレータの出す指示としては、もっと呼気を放出するために会話を続けるという指示、呼気を収集しやすくするため運転者の顔の位置や角度を変えるようにとの指示、呼気を収集するために窓を閉めてエアコンを停止させるようにとの指示等がある。
【0033】
一方、ステップS6において、CO2量が判定閾値以上であると判定された場合、ファン10により運転者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集されたと判定される。その後、アルコールセンサ7から出力されたアルコール濃度情報に基づいて、運転者の呼気のアルコール濃度が予め定められた飲酒状態閾値以上であるか否かが判定される(S8)。
【0034】
ステップS8において、運転者の呼気のアルコール濃度は飲酒状態閾値以上ではないと判定された場合、飲酒状態は検出されなかったと判断して、ステップS1に戻り処理を繰り返す。一方、運転者の呼気のアルコール濃度は飲酒状態閾値以上であると判定された場合、運転者の飲酒状態を検出したと判断して、車両のエンジンを強制停止させるためのエンジン停止指令がエンジン制御部11に出力され、エンジンが強制停止される(S9)。
【0035】
以上説明した飲酒状態検出システム1によれば、会話によって放出された被験者の呼気を呼気収集手段が収集してアルコール濃度の検出を行うので、被験者によるアルコール検査の回避や後回しを抑制することができ、飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる。しかも、飲酒状態の検査において運転者は会話以外の動作をする必要がないので、車両を停止させることなく運転したまま検査を行うことが可能となり、飲酒状態の検出に関するわずらわしさが大幅に低減される。更に、運転中の運転者は、風船を用いて飲酒前の呼気を吹き込む等の不正行為を行うことが困難となるため、飲酒状態の検出に関する不正行為が抑制される。このことは、飲酒状態の検出における信頼性の向上に有利である。
【0036】
また、この飲酒状態検出システム1によれば、被験者の運転する車両の挙動が飲酒状態挙動であると判定した場合、すなわち被験者が飲酒状態の可能性がある場合に、会話を誘導して飲酒状態の検査を行うことができるので、飲酒運転の抑制を図ることができる。
【0037】
更に、この飲酒状態検出システム1によれば、飲酒状態の検出に必要な量の呼気が収集された場合に、その呼気のアルコール濃度の検出結果に基づいて飲酒状態の検出を行うので、換気等により呼気が十分に収集されない状態で飲酒状態を検出することを回避することができ、これによって飲酒状態の検出の信頼性の向上を図ることができる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、被験者である運転者以外の乗員の呼気を運転者の呼気と誤検出することを回避するために、検出されるCO2量及びアルコール濃度が運転者の会話に連動して増加した場合にのみ、運転者の飲酒状態を検出する態様であってもよい。また、呼気量を検出するためのセンサは、CO2センサ6に限られず、例えばO2センサであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…飲酒状態検出システム、2…ECU(挙動判定手段、呼気量判定手段、アルコール濃度検出手段、飲酒状態検出手段)、8…通信部(会話誘導手段)、10…ファン(呼気収集手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の被験者の会話を誘導する会話誘導手段と、
会話により前記車内に放出された前記被験者の呼気を収集する呼気収集手段と、
前記呼気収集手段が収集した前記呼気のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、
前記アルコール濃度の検出結果に基づいて、前記被験者の飲酒状態を検出する飲酒状態検出手段と、
を備えることを特徴とする飲酒状態検出システム。
【請求項2】
前記被験者の運転する車両の挙動が予め定められた飲酒状態挙動であるか否かを判定する挙動判定手段を更に備え、
前記会話誘導手段は、前記車両の挙動が前記飲酒状態挙動であると判定された場合に、前記被験者の会話を誘導することを特徴とする請求項1に記載の飲酒状態検出システム。
【請求項3】
前記呼気収集手段が前記被験者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気を収集したか否かを判定する呼気量判定手段を更に備え、
前記飲酒状態検出手段は、前記呼気収集手段が前記被験者の飲酒状態の検出に必要な量の呼気を収集したと判定された場合に、前記被験者の飲酒状態を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飲酒状態検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241369(P2010−241369A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94923(P2009−94923)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】