説明

駆動制御システムおよび電動車両

【課題】コンバータにおける損失を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書では、バッテリとモータの間に配置されており、直流電圧を昇降圧可能なコンバータと、コンバータのモータ側電圧の目標値を設定する制御装置を備える駆動制御システムを開示する。前記コンバータは、バッテリ側正極線と、モータ側正極線と、共通負極線と、モータ側正極線と共通負極線の間に直列に接続された第1逆導通型半導体スイッチおよび第2逆導通型半導体スイッチと、一端がバッテリ側正極線に接続され、他端が第1逆導通型半導体スイッチと第2逆導通型半導体スイッチの接続部に接続されているリアクトルを備えている。前記制御装置は、前記モータの回生動作時のモータ側電圧の目標値を、基準電圧を下回らないように設定する。前記基準電圧は、第1逆導通型半導体スイッチのオン抵抗損失とスイッチング損失の和が極小値となる電圧である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、駆動制御システムおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電池式電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両においては、低電圧のバッテリでも高電圧でモータを駆動できるように、バッテリとモータの間に直流電圧を昇降圧するコンバータが設けられることがある。この種のコンバータは、バッテリ側正極線と、モータ側正極線と、共通負極線と、モータ側正極線と共通負極線の間に直列に接続された第1逆導通型半導体スイッチおよび第2逆導通型半導体スイッチと、一端がバッテリ側正極線に接続され、他端が第1逆導通型半導体スイッチと第2逆導通型半導体スイッチの接続部に接続されているリアクトルを備えている。モータが三相交流モータである場合には、コンバータとモータの間に三相インバータ回路が設けられる。
【0003】
モータが力行動作する場合には、バッテリからモータへ電力が供給される。この場合、リアクトル、第2逆導通型半導体スイッチのスイッチング素子、第1逆導通型半導体スイッチの還流ダイオードによって、コンバータは昇圧チョッパ回路として機能する。この際のモータ側電圧とバッテリ側電圧の比は、第2逆導通型スイッチのオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。第2逆導通型スイッチのデューティ比を適切に設定することで、目標とするモータ側電圧を実現することができる。
【0004】
モータが回生動作する際には、モータからバッテリへ電力が供給される。この場合、リアクトル、第1逆導通型半導体スイッチのスイッチング素子、第2逆導通型半導体スイッチの還流ダイオードによって、コンバータは降圧チョッパ回路として機能する。この際のモータ側電圧とバッテリ側電圧の比は、第1逆導通型半導体スイッチのオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。第1逆導通型半導体スイッチのデューティ比を適切に設定することで、目標とするモータ側電圧を実現することができる。
【0005】
上記のコンバータにおけるモータ側電圧は、モータの動作特性や電動車両の挙動などを考慮して、適切に設定する必要がある。コンバータにおけるモータ側電圧を適切に設定する技術が、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−114987号公報
【特許文献2】特開2011−147207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モータが回生動作する際のコンバータにおける損失は、第1逆導通型スイッチにおける損失が支配的となる。第1逆導通型スイッチにおける損失は、オン抵抗損失(DC損失ともいう)とスイッチング損失(SW損失ともいう)の和で表現される。第1逆導通型スイッチのスイッチング損失は、モータ側電圧が大きくなるほど、大きくなる。しかしながら、第1逆導通型スイッチのオン抵抗損失は、モータ側電圧が小さくなるほど、大きくなる。従って、モータが回生動作する際にモータ側電圧を過剰に低く設定してしまうと、コンバータにおける損失の増大を招いてしまう。
【0008】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、コンバータにおける損失を低減することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、バッテリとモータの間に配置されており、直流電圧を昇降圧可能なコンバータと、コンバータのモータ側電圧の目標値を設定する制御装置を備える駆動制御システムを開示する。前記コンバータは、バッテリ側正極線と、モータ側正極線と、共通負極線と、モータ側正極線と共通負極線の間に直列に接続された第1逆導通型半導体スイッチおよび第2逆導通型半導体スイッチと、一端がバッテリ側正極線に接続され、他端が第1逆導通型半導体スイッチと第2逆導通型半導体スイッチの接続部に接続されているリアクトルを備えている。前記制御装置は、前記モータの回生動作時のモータ側電圧の目標値を、基準電圧を下回らないように設定する。前記基準電圧は、第1逆導通型半導体スイッチのオン抵抗損失とスイッチング損失の和が極小値となる電圧である。
【0010】
上記の駆動制御システムでは、モータが回生動作する際に、基準電圧を下回らないようにモータ側電圧を設定する。モータ側電圧が基準電圧に設定された場合、第1逆導通型半導体スイッチのオン抵抗損失とスイッチング損失の和は極小値となる。このような構成とすることで、モータが回生動作する際にモータ側電圧を過剰に低く設定してしまい、コンバータにおける損失の増大を招いてしまう事態を防ぐことができる。コンバータにおける損失を抑制することができる。
【0011】
本明細書は、上記の駆動制御システムを備える電動車両も開示する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書が開示する技術によれば、コンバータにおける損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電動車両10の電気系統を示す図である。
【図2】モータ16が回生動作をする際の、高圧側電圧VHと上アームスイッチ27における損失の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、電動車両10の電気系統を示す。電動車両10は、バッテリ12と、電力変換装置14(駆動制御システムに相当する)と、モータ16を備えている。電動車両10は、バッテリ12に蓄えられた電力を、電力変換装置14を介してモータ16に供給し、車輪の駆動軸を回転させる。また、電動車両10の回生制動時に、モータ16が発電した電力を、電力変換装置14を介してバッテリ12に供給し、バッテリ12に充電する。電動車両10は、電池式電気自動車であってもよいし、ハイブリッド自動車であってもよい。バッテリ12は、リチウムイオン電池等の二次電池である。モータ16は車輪の駆動軸を回転させる三相交流モータである。
【0015】
電力変換装置14は、コンバータ回路20と、第1平滑コンデンサ22と、三相インバータ回路24と、第2平滑コンデンサ26と、放電抵抗28と、制御装置30を備えている。
【0016】
コンバータ回路20は、バッテリ12の電圧をモータ16の駆動に適した電圧まで昇圧するDC/DCコンバータである。また、コンバータ回路20は、電動車両10の回生制動時にモータ16が発電した電圧を、バッテリ12の電圧まで降圧することもできる。本実施例では、バッテリ12の電圧は300V程度であり、モータ16の駆動に適した電圧は600V程度である。以下では、コンバータ回路20のバッテリ12側の電圧を低圧側電圧VLともいい、コンバータ回路20のモータ16側(三相インバータ回路24側)の電圧を高圧側電圧VHともいう。コンバータ回路20は、バッテリ側正極線21aと、モータ側正極線21bと、共通負極線21cと、リアクトル25と、上アームスイッチ27と、下アームスイッチ29を備えている。上アームスイッチ27(第1逆導通型スイッチに相当する)は逆導通型の半導体スイッチであって、スイッチング素子27aと、還流ダイオード27bを備えている。下アームスイッチ29(第2逆導通型スイッチに相当する)は逆導通型の半導体スイッチであって、スイッチング素子29aと、還流ダイオード29bを備えている。本実施例では、スイッチング素子27a,29aはIGBTである。上アームスイッチ27と下アームスイッチ29は、モータ側正極線21bと共通負極線21cの間に直列に接続されている。上アームスイッチ27と下アームスイッチ29は、互いに相補的にオン/オフ動作をする。リアクトル25は、一端がバッテリ側正極線21aに接続されており、他端が上アームスイッチ27と下アームスイッチ29の接続部に接続されている。
【0017】
第1平滑コンデンサ22は、バッテリ12とコンバータ回路20の間に設けられており、バッテリ12とコンバータ回路20の間の入出力電圧を平滑化する。
【0018】
三相インバータ回路24は、コンバータ回路20から供給される直流電力を、モータ16の駆動のための三相交流電力に変換する。また、三相インバータ回路24は、電動車両10の回生制動時にモータ16が発電した三相交流電力を、コンバータ回路20へ供給するための直流電力に変換することもできる。三相インバータ回路24は、U相に対応するU相上アームスイッチ32およびU相下アームスイッチ34と、V相に対応するV相上アームスイッチ36およびV相下アームスイッチ38と、W相に対応するW相上アームスイッチ40およびW相下アームスイッチ42を備えている。U相上アームスイッチ32、U相下アームスイッチ34、V相上アームスイッチ36、V相下アームスイッチ38、W相上アームスイッチ40およびW相下アームスイッチ42は、何れも逆導通型の半導体スイッチであって、それぞれスイッチング素子32a,34a,36a,38a,40a,42aと、還流ダイオード32b,34b,36b,38b,40b,42bを備えている。U相上アームスイッチ32とU相下アームスイッチ34は、互いに相補的にオン/オフ動作をする。V相上アームスイッチ36とV相下アームスイッチ38は、互いに相補的にオン/オフ動作をする。W相上アームスイッチ40とW相下アームスイッチ42は、互いに相補的にオン/オフ動作をする。
【0019】
第2平滑コンデンサ26は、コンバータ回路20と三相インバータ回路24の間に設けられており、コンバータ回路20と三相インバータ回路24の間の入出力電圧を平滑化する。
【0020】
放電抵抗28は、第2平滑コンデンサ26と並列に接続されている。放電抵抗28は、電動車両10の電気系統が停止し、コンバータ回路20や三相インバータ回路24が動作しなくなったときに、第2平滑コンデンサ26に蓄積された電荷を放電するために設けられている。
【0021】
制御装置30は、コンバータ回路20の上アームスイッチ27および下アームスイッチ29と、三相インバータ回路24のU相上アームスイッチ32、U相下アームスイッチ34、V相上アームスイッチ36、V相下アームスイッチ38、W相上アームスイッチ40およびW相下アームスイッチ42のオン/オフ動作を制御する。
【0022】
モータ16が力行動作する際には、バッテリ12からモータ16へ電力が供給される。この場合、コンバータ回路20は、バッテリ12から入力される低電圧の直流電力を、三相インバータ回路24へ出力する高電圧の直流電力に変換する。この際には、リアクトル25、下アームスイッチ29のスイッチング素子29aおよび上アームスイッチ27の還流ダイオード27bによって、コンバータ回路20は昇圧チョッパ回路として機能する。この際の高圧側電圧VHと低圧側電圧VLの比は、下アームスイッチ29のオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。下アームスイッチ29のデューティ比を適切に設定することで、目標とする高圧側電圧VHを実現することができる。
【0023】
モータ16が回生動作する際には、モータ16からバッテリ12へ電力が供給される。この場合、コンバータ回路20は、三相インバータ回路24から入力される高電圧の直流電力を、バッテリ12へ出力する低電圧の直流電力に変換する。この際には、リアクトル25、上アームスイッチ27のスイッチング素子27aおよび下アームスイッチ29の還流ダイオード29bによって、コンバータ回路20は降圧チョッパ回路として機能する。この際の高圧側電圧VHと低圧側電圧VLの比は、上アームスイッチ27のオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。上アームスイッチ27のデューティ比を適切に設定することで、目標とする高圧側電圧VHを実現することができる。
【0024】
制御装置30は、高圧側電圧VHの目標値を設定し、その目標値を実現するように上アームスイッチ27および下アームスイッチ29のオン/オフ動作を制御する。高圧側電圧VHの目標値は、モータ16および三相インバータ回路24の動作特性や、電動車両10の挙動などに基づいて設定される。
【0025】
モータ16が回生動作を行う場合のコンバータ回路20における損失は、上アームスイッチ27における損失が支配的となる。図2は、モータ16が回生動作を行う場合の、高圧側電圧VHと上アームスイッチ27における損失の関係を示している。上アームスイッチ27における損失は、オン抵抗損失(DC損失ともいう)とスイッチング損失(SW損失ともいう)の和で表現される。図2に示すように、スイッチング損失は、高圧側電圧VHが大きくなるほど、大きくなる。しかしながら、オン抵抗損失は、高圧側電圧VHが小さくなるほど、大きくなる。従って、モータ16が回生動作を行う場合のコンバータ回路20での損失は、ある基準電圧V1で極小値となる。
【0026】
本実施例の制御装置30は、モータ16が回生動作を行う場合に、高圧側電圧VHの目標値が基準電圧V1を下回る場合に、高圧側電圧VHの目標値を基準電圧V1に変更する。言い換えると、制御装置30は、モータ16が回生動作を行う場合に、基準電圧V1を下回らないように、高圧側電圧VHの目標値を設定する。これにより、モータ16が回生動作を行う場合の、コンバータ回路20における損失を抑制し、コンバータ回路20の発熱を抑制することができる。また、上アームスイッチ27を長寿命化することができる。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
10 電動車両
12 バッテリ
14 電力変換装置
16 モータ
20 コンバータ回路
21a バッテリ側正極線
21b モータ側正極線
21c 共通負極線
22 第1平滑コンデンサ
24 三相インバータ回路
25 リアクトル
26 第2平滑コンデンサ
27 上アームスイッチ
27a スイッチング素子
27b 還流ダイオード
28 放電抵抗
29 下アームスイッチ
29a スイッチング素子
29b 還流ダイオード
30 制御装置
32 U相上アームスイッチ
32a,34a,36a,38a,40a,42a スイッチング素子
32b,34b,36b,38b,40b,42b 還流ダイオード
34 U相下アームスイッチ
36 V相上アームスイッチ
38 V相下アームスイッチ
40 W相上アームスイッチ
42 W相下アームスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリとモータの間に配置されており、直流電圧を昇降圧可能なコンバータと、コンバータのモータ側電圧の目標値を設定する制御装置を備える駆動制御システムであって、
前記コンバータが、バッテリ側正極線と、モータ側正極線と、共通負極線と、モータ側正極線と共通負極線の間に直列に接続された第1逆導通型半導体スイッチおよび第2逆導通型半導体スイッチと、一端がバッテリ側正極線に接続され、他端が第1逆導通型半導体スイッチと第2逆導通型半導体スイッチの接続部に接続されているリアクトルを備えており、
前記制御装置が、前記モータの回生動作時のモータ側電圧の目標値を、基準電圧を下回らないように設定し、
前記基準電圧が、第1逆導通型半導体スイッチのオン抵抗損失とスイッチング損失の和が極小値となる電圧である駆動制御システム。
【請求項2】
請求項1の駆動制御システムを備える電動車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−66331(P2013−66331A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204154(P2011−204154)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】