駆動制御装置及び駆動制御方法
【課題】動力源から駆動輪への動力伝達経路にワンウェイクラッチが含まれる車両において、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止すること。
【解決手段】駆動システムは、車両の動力源と、動力源からの動力を車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、第1変速機と駆動輪の間に配置され、動力源からの動力のみを駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、動力源から駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、駆動輪から動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路とを備える。その駆動制御装置は、断接部により第2の動力伝達経路が切断された状態で第2変速機をシフトダウンすることに伴い動力源の回転数を上げる際に、第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、第1変速機の変速比及び動力源の回転数を制御する。
【解決手段】駆動システムは、車両の動力源と、動力源からの動力を車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、第1変速機と駆動輪の間に配置され、動力源からの動力のみを駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、動力源から駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、駆動輪から動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路とを備える。その駆動制御装置は、断接部により第2の動力伝達経路が切断された状態で第2変速機をシフトダウンすることに伴い動力源の回転数を上げる際に、第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、第1変速機の変速比及び動力源の回転数を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置及び駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動変速機のダウンシフト時の変速ショックを低減するために、車載内燃機関の出力を増大して機関回転速度を上昇させるブリッピング制御を実行する制御装置が開示されている。当該制御装置は、ブリッピング制御を実行すると、自動変速機のダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合をアウトプット回転数より推定し、ブリッピング制御の実行中におけるアウトプット回転数の変化量が所定量以上であれば、機関出力を小さくすべく点火時期遅角処理を実行する。
【0003】
特許文献1に記載の車両において、自動変速機のダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合が小さいときには、ダウンシフト中の出力側回転数であるアウトプット回転数はほとんど変化しない。これに対して、係合度合が大きいときには、ブリッピング制御によって上昇した機関出力が自動変速機に入力されるようになるため、アウトプット回転数が上昇する。上述の制御装置は、アウトプット回転数の変化量が所定量以上であるか否かを判断することによって、ダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合が所定値以上であると推定されるか否かを判断している。すなわち、制御装置は、摩擦係合要素が完全に解放されず半係合となり、自動変速機に機関出力が伝達されることによって車速が上昇してしまう可能性がある状況にあるか否かをアウトプット回転数の変化量に基づいて判断している。したがって、ダウンシフト時の変速ショックを低減できると共に、ブリッピング制御の実行中における車速の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7070号公報
【特許文献2】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、動力源と駆動輪の間に動力伝達経路が2つ設けられた車両の内部構成を示すブロック図である。図10は、図9に示した車両の動力源と駆動輪の間の構成を概念的に示すブロック図である。図9及び図10に示すように、動力源としての内燃機関(ENG)101と駆動輪103の間には、IVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる無段変速機(以下「BD」とも表記する)100を備えた第1の動力伝達経路と、有段変速機(T/M)105、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109を備えた第2の動力伝達経路とが設けられている。
【0006】
図11は、無段変速機(BD)100の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。BD100は、内燃機関101の出力軸の回転運動を揺動運動に変換し、更に揺動運動を回転運動に変換する。このため、BD100では、偏心量r1を調整することでクラッチを使用せずに変速比を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大に設定することができる。なお、BD100において、変速比が無限大に設定されたときの出力回転数はゼロである。図11に示すように、BD100は、入力軸が内燃機関101のクランク軸に直結された偏心体駆動装置と、出力側に設けられたワンウェイクラッチ120と、偏心体駆動装置とワンウェイクラッチ120を結ぶ連結部材130とを備える。
【0007】
偏心体駆動装置は、内燃機関101からの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する入力軸102と、入力軸102と一体回転する偏心ディスク104とを有する。ワンウェイクラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力の伝達は、入力部材122の正方向(図11中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイクラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、入力部材122の揺動動力が出力部材121の回転運動に変換される。
【0008】
図9に示した車両では、内燃機関101の出力によるワンウェイクラッチ120における入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、内燃機関101からの動力が第1の動力伝達経路を介して駆動輪103に伝達される。また、第2の動力伝達経路に含まれるワンウェイクラッチ109は、摩擦クラッチ107が係合しているとき、有段変速機105の内燃機関101側の正方向の回転速度が内燃機関101の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、駆動輪103からの動力を内燃機関101へ伝達する。
【0009】
このように、図9に示した車両では、駆動輪103から内燃機関101への方向の第2の動力伝達経路に摩擦係合要素である摩擦クラッチ107が含まれる。一方、内燃機関101から駆動輪103への方向の第1の動力伝達経路では、摩擦係合要素ではなくワンウェイクラッチ120による動力の伝達と切断が行われている。このため、当該車両におけるブリッピング制御により生じる車速の上昇は、ワンウェイクラッチ120の接続状態に依存する。したがって、当該車両において、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止するためには、摩擦係合要素の係合度合でなく、ワンウェイクラッチ120の接続状態を考慮したブリッピング制御を行う必要がある。
【0010】
本発明の目的は、動力源から駆動輪への動力伝達経路にワンウェイクラッチが含まれる車両において、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止可能な駆動制御装置及び駆動制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明の駆動制御装置は、車両の動力源(例えば、実施の形態での内燃機関101)と、前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪(例えば、実施の形態での駆動輪103)に伝達する第1変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)100)と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能な第1のワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機(例えば、実施の形態での有段変速機(T/M)105)と、動力伝達経路を断接する断接部(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109)と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御装置(例えば、実施の形態でのマネジメントECU(MG ECU)155)であって、前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項2に記載の発明の駆動制御装置では、前記第1変速機及び前記第1のワンウェイクラッチを含む機構は、四節リンク機構式の無段変速機であることを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明の駆動制御装置では、前記断接部は、前記第2変速機と前記動力源の間に配置されたことを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明の駆動制御装置では、前記断接部は、前記駆動輪からの動力のみを前記動力源側に伝達可能な第2のワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ(OWC)109)と、前記第2の動力伝達経路を断接する摩擦クラッチ(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107)と、を含むことを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明の駆動制御装置では、前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値の第1基本変更プロフィール及び前記動力源の回転数の第2基本変更プロフィールを考慮し、前記第2基本変更プロフィールが示す値が前記第1基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第1基本変更プロフィールが示す値を優先し、前記第1基本変更プロフィールが示す値が前記第2基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第2基本変更プロフィールが示す値を優先した上で、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明の駆動制御装置では、制御された前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値が、制御された前記動力源の回転数よりも所定値高くなるよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項7に記載の発明の駆動制御装置では、前記動力源の回転数が前記第1変速機の変速比に応じた前記第1のワンウェイクラッチのエンゲージ回転数を超えると、前記動力源の回転数から前記エンゲージ回転数を引いた値に所定値を足した値を前記第1変速機の変速比に換算した値を用いて、前記第1基本変更プロフィールを補正することを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項8に記載の発明の駆動制御方法では、車両の動力源(例えば、実施の形態での内燃機関101)と、前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪(例えば、実施の形態での駆動輪103)に伝達する第1変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)100)と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機(例えば、実施の形態での有段変速機(T/M)105)と、動力伝達経路を断接する断接部(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109)と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御方法であって、前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記ワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜7に記載の発明の駆動制御装置及び請求項8に記載の発明の駆動制御方法によれば、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止できる。
請求項2に記載の発明の駆動制御装置によれば、ワンウェイクラッチ120が接続状態とならないギリギリの状態で変速比i1を設定可能であるため、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する状況に切り替わった際にタイムラグなく動力を伝達可能である。また、BD100においては変速比の最大値を無限大に設定することができるため、駆動輪103の回転数が0となるギリギリの状態であっても、意図しない加速を防止できる。
請求項3に記載の発明の駆動制御装置によれば、第2の動力伝達経路が断状態であっても、駆動輪に引きずられて第2変速機が慣性体として連れまわされる。このため、減速感の抜けを抑制できる。
請求項4に記載の発明の駆動制御装置によれば、動力源側の回転数を第2変速機側の回転数よりも高くすれば、第2の動力伝達経路を切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態の車両の内部構成を示すブロック図
【図2】図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャート
【図3】図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャート
【図4】(a)は、BD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールの一例を示す図であり、(b)は、内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールの一例を示す図
【図5】BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する基本変更プロフィール(一点鎖線)と、内燃機関101の回転数Neに関する基本変更プロフィール(二点鎖線)とを重ねたプロフィールの一例を示す図
【図6】図5に示した基本変更プロフィールより導出される、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを示す図
【図7】補正されたBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを示す図
【図8】有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際の、摩擦クラッチ107の状態、有段変速機105の変速比i2、制御されたBD100の変速比i1、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Te、及び制御された内燃機関101の回転数Neの各時間変化を示すグラフ
【図9】動力源と駆動輪の間に動力伝達経路が2つ設けられた車両の内部構成を示すブロック図
【図10】図9に示した車両の動力源と駆動輪の間の構成を概念的に示すブロック図
【図11】無段変速機(BD)100の一部の構成を軸線方向から見た側断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る駆動制御装置及び駆動制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の駆動制御装置は、図9に示した車両と同様の駆動系を備えた車両に搭載される。図1は、一実施形態の車両の内部構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の駆動系には、当該車両の動力源である内燃機関(ENG)101と駆動輪103の間に、内燃機関101から駆動輪103への方向の動力が伝達される第1の動力伝達経路と、駆動輪103から内燃機関101への方向の動力が伝達される第2の動力伝達経路とが設けられている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の車両は、内燃機関101と、駆動輪103と、第1の動力伝達経路上に設けられる無段変速機(以下「BD」とも表記する)100と、第2の動力伝達経路上に設けられる有段変速機(T/M)105、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109と、車速センサ151と、回転数センサ153と、マネジメントECU(MG ECU)155と、メモリ157とを備える。なお、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109は、有段変速機105と内燃機関101の間に設けられる。
【0023】
内燃機関101は、車両が走行するための動力を発生する。内燃機関101の出力はBD100に入力される。駆動輪103は、内燃機関101からの動力によって車両が走行するための一対の車輪である。BD100は、内燃機関101の出力軸の回転運動を揺動運動に変換し、更に揺動運動を回転運動に変換するIVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる変速機であって、図11に示したように、その出力側にワンウェイクラッチ120を有する。ワンウェイクラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力の伝達は、入力部材122の正方向(図11中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイクラッチ120は、内燃機関101の出力による入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する。
【0024】
有段変速機105は、変速比が不連続に段階的に設定された、複数の変速段を有する変速機である。摩擦クラッチ107は、駆動輪103から内燃機関101までの第2の動力伝達経路を開閉する。摩擦クラッチ107による第2の動力伝達経路の開閉は、マネジメントECU155によって制御される。ワンウェイクラッチ(OWC)109は、摩擦クラッチ107が係合しているとき、有段変速機105の内燃機関101側の正方向の回転速度が内燃機関101の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、駆動輪103からの動力を内燃機関101へ伝達する。
【0025】
車速センサ151は、車両の走行速度(車速)Vpを検出する。車速センサ151によって検出された車速Vpを示す信号は、マネジメントECU155に送られる。回転数センサ153は、内燃機関101の回転数(BD100の入力回転数)Neを検出する。回転数センサ153によって検出された回転数Neを示す信号は、マネジメントECU155に送られる。
【0026】
マネジメントECU155は、内燃機関101、BD100及び摩擦クラッチ107等の統括制御を行う。特に、マネジメントECU155は、内燃機関101の回転数の制御、BD100の変速比の制御、及び摩擦クラッチ107の断接をを行う。また、マネジメントECU155には、車速センサ151からの信号(車速Vpを示す信号)、及び回転数センサ153からの信号(内燃機関101の回転数Neを示す信号)が入力される。メモリ157は、駆動輪103の周長c等の情報を記憶する。マネジメントECU155は、メモリ157に格納されている情報を読み出すことができる。
【0027】
図2及び図3は、図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、マネジメントECU155は、車両の走行状態等に基づいて、第2の動力伝達経路上の有段変速機105をシフトダウンするかを判断する(ステップS101)。マネジメントECU155がステップS101でシフトダウンすると判断した場合はステップS103に進み、シフトダウンしないと判断した場合はステップS133に進む。なお、シフトダウンすると判断したマネジメントECU155は、シフトダウン後の有段変速機105の変速比i2を決定する。
【0028】
ステップS103では、マネジメントECU155は、シフトダウン後の内燃機関101の目標回転数Ntarを以下の式(1)を用いて算出する。
シフトダウン後の内燃機関101の目標回転数Ntar=シフトダウン後の有段変速機105の変速比i2×車速Vp/駆動輪103の周長c …(1)
【0029】
次に、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールをメモリ157から読み出す(ステップS105)。図4(a)は、BD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールの一例を示す図である。また、図4(b)は、内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールの一例を示す図である。メモリ157には、変更前のBD100の変速比i1毎に、図4(a)に示したものと同様の基本変更プロフィールが格納されている。同様に、メモリ157には、変更前の内燃機関101の回転数Ne毎に、図4(b)に示したものと同様の基本変更プロフィールが格納されている。
【0030】
次に、マネジメントECU155は、ステップS105で導出した2つの基本変更プロフィールに基づいて、BD100の変速比i1に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを導出する(ステップS107)。このとき、マネジメントECU155は、ステップS105で読み出したBD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールを回転数に換算した上で、目標変更プロフィールを導出する。なお、BD100の変速比i1から回転数への換算式は以下の式(2)を用いる。
回転数=変速比i1×車速Vp/駆動輪103の周長c …(2)
【0031】
図5は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する基本変更プロフィール(一点鎖線)と、内燃機関101の回転数Neに関する基本変更プロフィール(二点鎖線)とを重ねたプロフィールの一例を示す図である。また、図6は、図5に示した基本変更プロフィールより導出される、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを示す図である。なお、内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールは、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールから所定値を引いて求められる。
【0032】
図5に示した各基本変更プロフィールに沿ってBD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neを制御すると、二点鎖線で示す回転数が一点鎖線で示す回転数を超えた状態のときは、ワンウェイクラッチ120が接続して意図しない加速が発生する。一方、一点鎖線で示す回転数が二点鎖線で示す回転数を超えた状態のときは、BD100の変速比i1を変更するために必要なエネルギーが増加する。
【0033】
本実施形態では、図6に示すように、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールを導出する際、低い方の値を優先して設定する。すなわち、二点鎖線で示す回転数が一点鎖線で示す回転数を超えた状態のとき、マネジメントECU155は、一点鎖線で示す回転数を優先し、その値を設定する。逆に、一点鎖線で示す回転数が二点鎖線で示す回転数を超えた状態のとき、マネジメントECU155は、二点鎖線で示す回転数を優先する。なお、マネジメントECU155は、二点鎖線で示す回転数を優先したとき、当該回転数に所定値を足した値を設定する。また、内燃機関101の回転数Neを早く上昇させようとするとオーバーシュートが生じてしまう。このオーバーシュートが不要な変速を引き起こすため、本実施形態では、変速比i1を変更することで、意図しない加速を回避している。
【0034】
マネジメントECU155は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールを変速比に換算する。当該換算によって、BD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールが得られる。なお、回転数から変速比への換算式は以下の式(3)を用いる。
変速比=回転数/車速Vp×駆動輪103の周長c …(3)
【0035】
次に、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールに基づいて、BD100の変速比iを現在の変速比から当該目標変更プロフィールが示す変更後の変速比への変更を開始してからの経過時間(以下「変速時間」という)Ts(i)を算出する(ステップS109)。なお、Ts(i)=Ts(i−1)+ΔTである。
【0036】
次に、マネジメントECU155は、ステップS109で算出した変速時間Ts(i)が目標変速時間Tar未満か(Ts(i)<Tar)否かを判断する(ステップS111)。Ts(i)<TarであればステップS113に進み、Ts(i)≧TarであればステップS131に進む。
【0037】
ステップS113では、マネジメントECU155は、ステップS109で算出した変速時間Ts(i)がΔTに等しい(Ts(i)=ΔT)か否かを判断する。変速時間Ts(i)がΔTに等しい、すなわち、Ts(i−1)=0のときは、第2の動力伝達経路上の有段変速機105のシフトダウンを開始するタイミングである。したがって、このときはステップS115に進み、Ts(i)≠ΔTのときはシフトダウン中であるためステップS117に進む。
【0038】
ステップS115では、マネジメントECU155は、第2の動力伝達経路上の摩擦クラッチ107を切断する。一方、ステップS117では、マネジメントECU155は、変速時間Ts(i)が目標変速時間Tarの半分か(Ts(i)=Tar/2)否かを判断する。Ts(i)=Tar/2のときはステップS119に進み、Ts(i)≠Tar/2のときはステップS121に進む。ステップS119では、マネジメントECU155は、有段変速機105のシフトダウンを実施する。ステップS115又はステップS119の後はステップS121に進む。
【0039】
ステップS121では、マネジメントECU155は、第1の動力伝達経路上のワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teが内燃機関101の回転数Ne未満(Te<Ne)か否かを判断する。なお、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teは、以下の式(4)によって求められる。
エンゲージ回転数Te=現在のBD100の変速比i1×車速Vp/駆動輪103の周長c …(4)
【0040】
ステップS121でTe<Neと判断された場合はステップS123に進み、Te≧Neと判断された場合はステップS125に進む。ステップS123では、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを補正する。当該補正値は、「内燃機関101の回転数Ne−エンゲージ回転数Te+所定値」をBD100の変速比に換算した値である。図7は、補正されたBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを示す図である。
【0041】
一方、ステップS125では、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィール又はステップS123で補正された目標変更プロフィールに応じて、BD100の変速比i1を変更し、かつ、ステップS107で導出した内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールに応じて、内燃機関101の回転数Neを変更する。ステップS125の後はステップS109に戻る。
【0042】
ステップS111で、変速時間Ts(i)が目標変速時間Tar以上(Ts(i)≧Tar)と判断されたときは、上述したようにステップS131に進む。ステップS131では、マネジメントECU155は、第2の動力伝達経路上の摩擦クラッチ107を接続する。次に、マネジメントECU155は、変速時間Ts(i)を0にリセットする(ステップS133)。
【0043】
図8は、有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際の、摩擦クラッチ107の状態、有段変速機105の変速比i2、制御されたBD100の変速比i1、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Te、及び制御された内燃機関101の回転数Neの各時間変化を示すグラフである。図8に示すように、本実施形態では、BD100の変速比i1に応じたワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teを内燃機関101の回転数Neが超えないよう、すなわち、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しないように、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neが制御される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の動力伝達経路上の有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールを考慮した上で、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しないよう、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neを制御する。
【0045】
つまり、マネジメントECU155は、このとき、BD100の変速比i1を変更中に内燃機関101の回転数Neを変更しつつ、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しない回転数に内燃機関101を制御する。したがって、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止しつつ、迅速なシフトダウンが可能である。
【0046】
また、マネジメントECU155は、ブリッピング制御時の内燃機関101の回転数Neの応答性に応じて、BD100の変速比i1を制御する。したがって、BD100の変速比i1を変更するための必要以上のエネルギーの増加を抑制できる。また、内燃機関101の応答性が向上する回転数変更プロフィールにできるため、迅速なシフトダウンが可能である。すなわち、内燃機関101の回転数Neを変更する際にオーバーシュートが生じないように変更すると、勢いよく回転数Neを上げられない。このため、回転数Neの変更に時間がかってしまうが、本実施形態では、オーバーシュートによる「意図しない加速」をレシオの変更で回避することにより、オーバーシュートを許容し、迅速な変速と意図しない加速の回避の両立を図ることができる。
【0047】
なお、ブリッピング制御時にBD100のワンウェイクラッチ120が接続してしまった場合であっても、マネジメントECU155がBD100の変速比i1をロー側に変更すれば、ワンウェイクラッチ120が切断される。このため、内燃機関101の回転数Neを維持したまま、意図しない加速を抑制できる。
【0048】
また、第1の動力伝達経路上の変速機としてBD100を用いることによって、ワンウェイクラッチ120が接続状態とならないギリギリの状態で変速比i1を設定可能であるため、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する状況に切り替わった際にタイムラグなく動力を伝達可能である。また、BD100においては変速比の最大値を無限大に設定することができるため、駆動輪103の回転数が0となるギリギリの状態であっても、意図しない加速を防止できる。
【0049】
また、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109が有段変速機105と内燃機関101の間に設けられているため、第2の動力伝達経路が断状態であっても、駆動輪に引きずられて第2変速機が慣性体として連れまわされる。このため、減速感の抜けを抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
102 入力軸
104 偏心ディスク
120 ワンウェイクラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
130 連結部材
100 無段変速機(BD)
101 内燃機関(ENG)
103 駆動輪
105 有段変速機(T/M)
107 摩擦クラッチ
109 ワンウェイクラッチ(OWC)
151 車速センサ
153 回転数センサ
155 マネジメントECU(MG ECU)
157 メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置及び駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動変速機のダウンシフト時の変速ショックを低減するために、車載内燃機関の出力を増大して機関回転速度を上昇させるブリッピング制御を実行する制御装置が開示されている。当該制御装置は、ブリッピング制御を実行すると、自動変速機のダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合をアウトプット回転数より推定し、ブリッピング制御の実行中におけるアウトプット回転数の変化量が所定量以上であれば、機関出力を小さくすべく点火時期遅角処理を実行する。
【0003】
特許文献1に記載の車両において、自動変速機のダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合が小さいときには、ダウンシフト中の出力側回転数であるアウトプット回転数はほとんど変化しない。これに対して、係合度合が大きいときには、ブリッピング制御によって上昇した機関出力が自動変速機に入力されるようになるため、アウトプット回転数が上昇する。上述の制御装置は、アウトプット回転数の変化量が所定量以上であるか否かを判断することによって、ダウンシフト時に係合状態から解放状態に移行する摩擦係合要素の係合度合が所定値以上であると推定されるか否かを判断している。すなわち、制御装置は、摩擦係合要素が完全に解放されず半係合となり、自動変速機に機関出力が伝達されることによって車速が上昇してしまう可能性がある状況にあるか否かをアウトプット回転数の変化量に基づいて判断している。したがって、ダウンシフト時の変速ショックを低減できると共に、ブリッピング制御の実行中における車速の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7070号公報
【特許文献2】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、動力源と駆動輪の間に動力伝達経路が2つ設けられた車両の内部構成を示すブロック図である。図10は、図9に示した車両の動力源と駆動輪の間の構成を概念的に示すブロック図である。図9及び図10に示すように、動力源としての内燃機関(ENG)101と駆動輪103の間には、IVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる無段変速機(以下「BD」とも表記する)100を備えた第1の動力伝達経路と、有段変速機(T/M)105、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109を備えた第2の動力伝達経路とが設けられている。
【0006】
図11は、無段変速機(BD)100の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。BD100は、内燃機関101の出力軸の回転運動を揺動運動に変換し、更に揺動運動を回転運動に変換する。このため、BD100では、偏心量r1を調整することでクラッチを使用せずに変速比を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大に設定することができる。なお、BD100において、変速比が無限大に設定されたときの出力回転数はゼロである。図11に示すように、BD100は、入力軸が内燃機関101のクランク軸に直結された偏心体駆動装置と、出力側に設けられたワンウェイクラッチ120と、偏心体駆動装置とワンウェイクラッチ120を結ぶ連結部材130とを備える。
【0007】
偏心体駆動装置は、内燃機関101からの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する入力軸102と、入力軸102と一体回転する偏心ディスク104とを有する。ワンウェイクラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力の伝達は、入力部材122の正方向(図11中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイクラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、入力部材122の揺動動力が出力部材121の回転運動に変換される。
【0008】
図9に示した車両では、内燃機関101の出力によるワンウェイクラッチ120における入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、内燃機関101からの動力が第1の動力伝達経路を介して駆動輪103に伝達される。また、第2の動力伝達経路に含まれるワンウェイクラッチ109は、摩擦クラッチ107が係合しているとき、有段変速機105の内燃機関101側の正方向の回転速度が内燃機関101の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、駆動輪103からの動力を内燃機関101へ伝達する。
【0009】
このように、図9に示した車両では、駆動輪103から内燃機関101への方向の第2の動力伝達経路に摩擦係合要素である摩擦クラッチ107が含まれる。一方、内燃機関101から駆動輪103への方向の第1の動力伝達経路では、摩擦係合要素ではなくワンウェイクラッチ120による動力の伝達と切断が行われている。このため、当該車両におけるブリッピング制御により生じる車速の上昇は、ワンウェイクラッチ120の接続状態に依存する。したがって、当該車両において、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止するためには、摩擦係合要素の係合度合でなく、ワンウェイクラッチ120の接続状態を考慮したブリッピング制御を行う必要がある。
【0010】
本発明の目的は、動力源から駆動輪への動力伝達経路にワンウェイクラッチが含まれる車両において、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止可能な駆動制御装置及び駆動制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明の駆動制御装置は、車両の動力源(例えば、実施の形態での内燃機関101)と、前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪(例えば、実施の形態での駆動輪103)に伝達する第1変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)100)と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能な第1のワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機(例えば、実施の形態での有段変速機(T/M)105)と、動力伝達経路を断接する断接部(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109)と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御装置(例えば、実施の形態でのマネジメントECU(MG ECU)155)であって、前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項2に記載の発明の駆動制御装置では、前記第1変速機及び前記第1のワンウェイクラッチを含む機構は、四節リンク機構式の無段変速機であることを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明の駆動制御装置では、前記断接部は、前記第2変速機と前記動力源の間に配置されたことを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明の駆動制御装置では、前記断接部は、前記駆動輪からの動力のみを前記動力源側に伝達可能な第2のワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ(OWC)109)と、前記第2の動力伝達経路を断接する摩擦クラッチ(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107)と、を含むことを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明の駆動制御装置では、前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値の第1基本変更プロフィール及び前記動力源の回転数の第2基本変更プロフィールを考慮し、前記第2基本変更プロフィールが示す値が前記第1基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第1基本変更プロフィールが示す値を優先し、前記第1基本変更プロフィールが示す値が前記第2基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第2基本変更プロフィールが示す値を優先した上で、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明の駆動制御装置では、制御された前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値が、制御された前記動力源の回転数よりも所定値高くなるよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項7に記載の発明の駆動制御装置では、前記動力源の回転数が前記第1変速機の変速比に応じた前記第1のワンウェイクラッチのエンゲージ回転数を超えると、前記動力源の回転数から前記エンゲージ回転数を引いた値に所定値を足した値を前記第1変速機の変速比に換算した値を用いて、前記第1基本変更プロフィールを補正することを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項8に記載の発明の駆動制御方法では、車両の動力源(例えば、実施の形態での内燃機関101)と、前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪(例えば、実施の形態での駆動輪103)に伝達する第1変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)100)と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、複数の変速段を有する第2変速機(例えば、実施の形態での有段変速機(T/M)105)と、動力伝達経路を断接する断接部(例えば、実施の形態での摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109)と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御方法であって、前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記ワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜7に記載の発明の駆動制御装置及び請求項8に記載の発明の駆動制御方法によれば、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止できる。
請求項2に記載の発明の駆動制御装置によれば、ワンウェイクラッチ120が接続状態とならないギリギリの状態で変速比i1を設定可能であるため、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する状況に切り替わった際にタイムラグなく動力を伝達可能である。また、BD100においては変速比の最大値を無限大に設定することができるため、駆動輪103の回転数が0となるギリギリの状態であっても、意図しない加速を防止できる。
請求項3に記載の発明の駆動制御装置によれば、第2の動力伝達経路が断状態であっても、駆動輪に引きずられて第2変速機が慣性体として連れまわされる。このため、減速感の抜けを抑制できる。
請求項4に記載の発明の駆動制御装置によれば、動力源側の回転数を第2変速機側の回転数よりも高くすれば、第2の動力伝達経路を切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態の車両の内部構成を示すブロック図
【図2】図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャート
【図3】図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャート
【図4】(a)は、BD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールの一例を示す図であり、(b)は、内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールの一例を示す図
【図5】BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する基本変更プロフィール(一点鎖線)と、内燃機関101の回転数Neに関する基本変更プロフィール(二点鎖線)とを重ねたプロフィールの一例を示す図
【図6】図5に示した基本変更プロフィールより導出される、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを示す図
【図7】補正されたBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを示す図
【図8】有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際の、摩擦クラッチ107の状態、有段変速機105の変速比i2、制御されたBD100の変速比i1、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Te、及び制御された内燃機関101の回転数Neの各時間変化を示すグラフ
【図9】動力源と駆動輪の間に動力伝達経路が2つ設けられた車両の内部構成を示すブロック図
【図10】図9に示した車両の動力源と駆動輪の間の構成を概念的に示すブロック図
【図11】無段変速機(BD)100の一部の構成を軸線方向から見た側断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る駆動制御装置及び駆動制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の駆動制御装置は、図9に示した車両と同様の駆動系を備えた車両に搭載される。図1は、一実施形態の車両の内部構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の駆動系には、当該車両の動力源である内燃機関(ENG)101と駆動輪103の間に、内燃機関101から駆動輪103への方向の動力が伝達される第1の動力伝達経路と、駆動輪103から内燃機関101への方向の動力が伝達される第2の動力伝達経路とが設けられている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の車両は、内燃機関101と、駆動輪103と、第1の動力伝達経路上に設けられる無段変速機(以下「BD」とも表記する)100と、第2の動力伝達経路上に設けられる有段変速機(T/M)105、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109と、車速センサ151と、回転数センサ153と、マネジメントECU(MG ECU)155と、メモリ157とを備える。なお、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109は、有段変速機105と内燃機関101の間に設けられる。
【0023】
内燃機関101は、車両が走行するための動力を発生する。内燃機関101の出力はBD100に入力される。駆動輪103は、内燃機関101からの動力によって車両が走行するための一対の車輪である。BD100は、内燃機関101の出力軸の回転運動を揺動運動に変換し、更に揺動運動を回転運動に変換するIVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる変速機であって、図11に示したように、その出力側にワンウェイクラッチ120を有する。ワンウェイクラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力の伝達は、入力部材122の正方向(図11中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイクラッチ120は、内燃機関101の出力による入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する。
【0024】
有段変速機105は、変速比が不連続に段階的に設定された、複数の変速段を有する変速機である。摩擦クラッチ107は、駆動輪103から内燃機関101までの第2の動力伝達経路を開閉する。摩擦クラッチ107による第2の動力伝達経路の開閉は、マネジメントECU155によって制御される。ワンウェイクラッチ(OWC)109は、摩擦クラッチ107が係合しているとき、有段変速機105の内燃機関101側の正方向の回転速度が内燃機関101の正方向の回転速度を超えた条件でのみ、駆動輪103からの動力を内燃機関101へ伝達する。
【0025】
車速センサ151は、車両の走行速度(車速)Vpを検出する。車速センサ151によって検出された車速Vpを示す信号は、マネジメントECU155に送られる。回転数センサ153は、内燃機関101の回転数(BD100の入力回転数)Neを検出する。回転数センサ153によって検出された回転数Neを示す信号は、マネジメントECU155に送られる。
【0026】
マネジメントECU155は、内燃機関101、BD100及び摩擦クラッチ107等の統括制御を行う。特に、マネジメントECU155は、内燃機関101の回転数の制御、BD100の変速比の制御、及び摩擦クラッチ107の断接をを行う。また、マネジメントECU155には、車速センサ151からの信号(車速Vpを示す信号)、及び回転数センサ153からの信号(内燃機関101の回転数Neを示す信号)が入力される。メモリ157は、駆動輪103の周長c等の情報を記憶する。マネジメントECU155は、メモリ157に格納されている情報を読み出すことができる。
【0027】
図2及び図3は、図1に示した車両が備えるマネジメントECU155の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、マネジメントECU155は、車両の走行状態等に基づいて、第2の動力伝達経路上の有段変速機105をシフトダウンするかを判断する(ステップS101)。マネジメントECU155がステップS101でシフトダウンすると判断した場合はステップS103に進み、シフトダウンしないと判断した場合はステップS133に進む。なお、シフトダウンすると判断したマネジメントECU155は、シフトダウン後の有段変速機105の変速比i2を決定する。
【0028】
ステップS103では、マネジメントECU155は、シフトダウン後の内燃機関101の目標回転数Ntarを以下の式(1)を用いて算出する。
シフトダウン後の内燃機関101の目標回転数Ntar=シフトダウン後の有段変速機105の変速比i2×車速Vp/駆動輪103の周長c …(1)
【0029】
次に、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールをメモリ157から読み出す(ステップS105)。図4(a)は、BD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールの一例を示す図である。また、図4(b)は、内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールの一例を示す図である。メモリ157には、変更前のBD100の変速比i1毎に、図4(a)に示したものと同様の基本変更プロフィールが格納されている。同様に、メモリ157には、変更前の内燃機関101の回転数Ne毎に、図4(b)に示したものと同様の基本変更プロフィールが格納されている。
【0030】
次に、マネジメントECU155は、ステップS105で導出した2つの基本変更プロフィールに基づいて、BD100の変速比i1に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを導出する(ステップS107)。このとき、マネジメントECU155は、ステップS105で読み出したBD100の変速比i1に関する基本変更プロフィールを回転数に換算した上で、目標変更プロフィールを導出する。なお、BD100の変速比i1から回転数への換算式は以下の式(2)を用いる。
回転数=変速比i1×車速Vp/駆動輪103の周長c …(2)
【0031】
図5は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する基本変更プロフィール(一点鎖線)と、内燃機関101の回転数Neに関する基本変更プロフィール(二点鎖線)とを重ねたプロフィールの一例を示す図である。また、図6は、図5に示した基本変更プロフィールより導出される、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィール及び内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールを示す図である。なお、内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールは、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールから所定値を引いて求められる。
【0032】
図5に示した各基本変更プロフィールに沿ってBD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neを制御すると、二点鎖線で示す回転数が一点鎖線で示す回転数を超えた状態のときは、ワンウェイクラッチ120が接続して意図しない加速が発生する。一方、一点鎖線で示す回転数が二点鎖線で示す回転数を超えた状態のときは、BD100の変速比i1を変更するために必要なエネルギーが増加する。
【0033】
本実施形態では、図6に示すように、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールを導出する際、低い方の値を優先して設定する。すなわち、二点鎖線で示す回転数が一点鎖線で示す回転数を超えた状態のとき、マネジメントECU155は、一点鎖線で示す回転数を優先し、その値を設定する。逆に、一点鎖線で示す回転数が二点鎖線で示す回転数を超えた状態のとき、マネジメントECU155は、二点鎖線で示す回転数を優先する。なお、マネジメントECU155は、二点鎖線で示す回転数を優先したとき、当該回転数に所定値を足した値を設定する。また、内燃機関101の回転数Neを早く上昇させようとするとオーバーシュートが生じてしまう。このオーバーシュートが不要な変速を引き起こすため、本実施形態では、変速比i1を変更することで、意図しない加速を回避している。
【0034】
マネジメントECU155は、BD100の変速比i1を回転数に換算した値に関する目標変更プロフィールを変速比に換算する。当該換算によって、BD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールが得られる。なお、回転数から変速比への換算式は以下の式(3)を用いる。
変速比=回転数/車速Vp×駆動輪103の周長c …(3)
【0035】
次に、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールに基づいて、BD100の変速比iを現在の変速比から当該目標変更プロフィールが示す変更後の変速比への変更を開始してからの経過時間(以下「変速時間」という)Ts(i)を算出する(ステップS109)。なお、Ts(i)=Ts(i−1)+ΔTである。
【0036】
次に、マネジメントECU155は、ステップS109で算出した変速時間Ts(i)が目標変速時間Tar未満か(Ts(i)<Tar)否かを判断する(ステップS111)。Ts(i)<TarであればステップS113に進み、Ts(i)≧TarであればステップS131に進む。
【0037】
ステップS113では、マネジメントECU155は、ステップS109で算出した変速時間Ts(i)がΔTに等しい(Ts(i)=ΔT)か否かを判断する。変速時間Ts(i)がΔTに等しい、すなわち、Ts(i−1)=0のときは、第2の動力伝達経路上の有段変速機105のシフトダウンを開始するタイミングである。したがって、このときはステップS115に進み、Ts(i)≠ΔTのときはシフトダウン中であるためステップS117に進む。
【0038】
ステップS115では、マネジメントECU155は、第2の動力伝達経路上の摩擦クラッチ107を切断する。一方、ステップS117では、マネジメントECU155は、変速時間Ts(i)が目標変速時間Tarの半分か(Ts(i)=Tar/2)否かを判断する。Ts(i)=Tar/2のときはステップS119に進み、Ts(i)≠Tar/2のときはステップS121に進む。ステップS119では、マネジメントECU155は、有段変速機105のシフトダウンを実施する。ステップS115又はステップS119の後はステップS121に進む。
【0039】
ステップS121では、マネジメントECU155は、第1の動力伝達経路上のワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teが内燃機関101の回転数Ne未満(Te<Ne)か否かを判断する。なお、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teは、以下の式(4)によって求められる。
エンゲージ回転数Te=現在のBD100の変速比i1×車速Vp/駆動輪103の周長c …(4)
【0040】
ステップS121でTe<Neと判断された場合はステップS123に進み、Te≧Neと判断された場合はステップS125に進む。ステップS123では、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを補正する。当該補正値は、「内燃機関101の回転数Ne−エンゲージ回転数Te+所定値」をBD100の変速比に換算した値である。図7は、補正されたBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィールを示す図である。
【0041】
一方、ステップS125では、マネジメントECU155は、ステップS107で導出したBD100の変速比i1に関する目標変更プロフィール又はステップS123で補正された目標変更プロフィールに応じて、BD100の変速比i1を変更し、かつ、ステップS107で導出した内燃機関101の回転数Neに関する目標変更プロフィールに応じて、内燃機関101の回転数Neを変更する。ステップS125の後はステップS109に戻る。
【0042】
ステップS111で、変速時間Ts(i)が目標変速時間Tar以上(Ts(i)≧Tar)と判断されたときは、上述したようにステップS131に進む。ステップS131では、マネジメントECU155は、第2の動力伝達経路上の摩擦クラッチ107を接続する。次に、マネジメントECU155は、変速時間Ts(i)を0にリセットする(ステップS133)。
【0043】
図8は、有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際の、摩擦クラッチ107の状態、有段変速機105の変速比i2、制御されたBD100の変速比i1、ワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Te、及び制御された内燃機関101の回転数Neの各時間変化を示すグラフである。図8に示すように、本実施形態では、BD100の変速比i1に応じたワンウェイクラッチ120のエンゲージ回転数Teを内燃機関101の回転数Neが超えないよう、すなわち、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しないように、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neが制御される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の動力伝達経路上の有段変速機105のシフトダウン時にブリッピング制御を行う際、マネジメントECU155は、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neに関する各基本変更プロフィールを考慮した上で、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しないよう、BD100の変速比i1及び内燃機関101の回転数Neを制御する。
【0045】
つまり、マネジメントECU155は、このとき、BD100の変速比i1を変更中に内燃機関101の回転数Neを変更しつつ、BD100のワンウェイクラッチ120が接続しない回転数に内燃機関101を制御する。したがって、シフトダウン時のブリッピング制御実行中における意図しない加速を防止しつつ、迅速なシフトダウンが可能である。
【0046】
また、マネジメントECU155は、ブリッピング制御時の内燃機関101の回転数Neの応答性に応じて、BD100の変速比i1を制御する。したがって、BD100の変速比i1を変更するための必要以上のエネルギーの増加を抑制できる。また、内燃機関101の応答性が向上する回転数変更プロフィールにできるため、迅速なシフトダウンが可能である。すなわち、内燃機関101の回転数Neを変更する際にオーバーシュートが生じないように変更すると、勢いよく回転数Neを上げられない。このため、回転数Neの変更に時間がかってしまうが、本実施形態では、オーバーシュートによる「意図しない加速」をレシオの変更で回避することにより、オーバーシュートを許容し、迅速な変速と意図しない加速の回避の両立を図ることができる。
【0047】
なお、ブリッピング制御時にBD100のワンウェイクラッチ120が接続してしまった場合であっても、マネジメントECU155がBD100の変速比i1をロー側に変更すれば、ワンウェイクラッチ120が切断される。このため、内燃機関101の回転数Neを維持したまま、意図しない加速を抑制できる。
【0048】
また、第1の動力伝達経路上の変速機としてBD100を用いることによって、ワンウェイクラッチ120が接続状態とならないギリギリの状態で変速比i1を設定可能であるため、内燃機関101からの動力を駆動輪103に伝達する状況に切り替わった際にタイムラグなく動力を伝達可能である。また、BD100においては変速比の最大値を無限大に設定することができるため、駆動輪103の回転数が0となるギリギリの状態であっても、意図しない加速を防止できる。
【0049】
また、摩擦クラッチ107及びワンウェイクラッチ(OWC)109が有段変速機105と内燃機関101の間に設けられているため、第2の動力伝達経路が断状態であっても、駆動輪に引きずられて第2変速機が慣性体として連れまわされる。このため、減速感の抜けを抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
102 入力軸
104 偏心ディスク
120 ワンウェイクラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
130 連結部材
100 無段変速機(BD)
101 内燃機関(ENG)
103 駆動輪
105 有段変速機(T/M)
107 摩擦クラッチ
109 ワンウェイクラッチ(OWC)
151 車速センサ
153 回転数センサ
155 マネジメントECU(MG ECU)
157 メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源と、
前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、
複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御装置であって、
前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動制御装置であって、
前記第1変速機及び前記第1のワンウェイクラッチを含む機構は、四節リンク機構式の無段変速機であることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動制御装置であって、
前記断接部は、前記第2変速機と前記動力源の間に配置されたことを特徴とする駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動制御装置であって、
前記断接部は、前記駆動輪からの動力のみを前記動力源側に伝達可能な第2のワンウェイクラッチと、前記第2の動力伝達経路を断接する摩擦クラッチと、を含むことを特徴とする駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動制御装置であって、
前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値の第1基本変更プロフィール及び前記動力源の回転数の第2基本変更プロフィールを考慮し、前記第2基本変更プロフィールが示す値が前記第1基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第1基本変更プロフィールが示す値を優先し、前記第1基本変更プロフィールが示す値が前記第2基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第2基本変更プロフィールが示す値を優先した上で、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動制御装置であって、
制御された前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値が、制御された前記動力源の回転数よりも所定値高くなるよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の駆動制御装置であって、
前記動力源の回転数が前記第1変速機の変速比に応じた前記第1のワンウェイクラッチのエンゲージ回転数を超えると、前記動力源の回転数から前記エンゲージ回転数を引いた値に所定値を足した値を前記第1変速機の変速比に換算した値を用いて、前記第1基本変更プロフィールを補正することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項8】
車両の動力源と、
前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、
複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御方法であって、
前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記ワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御方法。
【請求項1】
車両の動力源と、
前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、
複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御装置であって、
前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記第1のワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動制御装置であって、
前記第1変速機及び前記第1のワンウェイクラッチを含む機構は、四節リンク機構式の無段変速機であることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動制御装置であって、
前記断接部は、前記第2変速機と前記動力源の間に配置されたことを特徴とする駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動制御装置であって、
前記断接部は、前記駆動輪からの動力のみを前記動力源側に伝達可能な第2のワンウェイクラッチと、前記第2の動力伝達経路を断接する摩擦クラッチと、を含むことを特徴とする駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動制御装置であって、
前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値の第1基本変更プロフィール及び前記動力源の回転数の第2基本変更プロフィールを考慮し、前記第2基本変更プロフィールが示す値が前記第1基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第1基本変更プロフィールが示す値を優先し、前記第1基本変更プロフィールが示す値が前記第2基本変更プロフィールが示す値を超えた状態のときは、前記第2基本変更プロフィールが示す値を優先した上で、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動制御装置であって、
制御された前記第1変速機の変速比を回転数に換算した値が、制御された前記動力源の回転数よりも所定値高くなるよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の駆動制御装置であって、
前記動力源の回転数が前記第1変速機の変速比に応じた前記第1のワンウェイクラッチのエンゲージ回転数を超えると、前記動力源の回転数から前記エンゲージ回転数を引いた値に所定値を足した値を前記第1変速機の変速比に換算した値を用いて、前記第1基本変更プロフィールを補正することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項8】
車両の動力源と、
前記動力源からの動力を前記車両の駆動輪に伝達する第1変速機と、前記第1変速機と前記駆動輪の間に配置され、前記動力源からの動力のみを前記駆動輪側に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有した、前記動力源から前記駆動輪への方向の動力を伝達する第1の動力伝達経路と、
複数の変速段を有する第2変速機と、動力伝達経路を断接する断接部と、を有した、前記駆動輪から前記動力源への方向の動力を伝達する第2の動力伝達経路と、を備えた駆動システムにおける駆動制御方法であって、
前記断接部により前記第2の動力伝達経路が切断された状態で前記第2変速機をシフトダウンすることに伴い前記動力源の回転数を上げる際に、前記ワンウェイクラッチが接続しないよう、前記第1変速機の変速比及び前記動力源の回転数を制御することを特徴とする駆動制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−1190(P2013−1190A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132469(P2011−132469)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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