説明

駆動力配分装置の制御装置

【課題】 一方のクラッチの係合に伴って他方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないようにしながら左右輪に駆動力を適切に配分する。
【解決手段】 車両の走行状態に基づいて算出された2つの油圧クラッチの係合力に従って、前記2つの油圧クラッチにおいてそれぞれのクラッチピストンを動作させるための油圧指令値を取得する。取得した油圧指令値の油圧差に基づいて、2つの油圧クラッチのうちいずれか一方について予め算出した係合力を補正し、該補正した係合力に応じて前記いずれか一方の油圧クラッチのクラッチピストンを動作させる。2つの油圧クラッチが同時に作動されると、一方から他方へと伝達される余剰推力を含む係合力に応じた油圧が計測され得、その油圧差に応じて係合力を適宜に補正することで余剰推力の影響を排除して、過剰なクラッチトルクがかからないようにしながら左右輪に駆動力を適切に配分することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における左右一対の車輪速の差に基づいて駆動源から伝達される駆動力を左右輪それぞれに配分する制御を行う駆動力配分装置の制御装置に関する。特に、左右輪それぞれに駆動力を配分する左輪用と右輪用の2つのクラッチを一体化して集約した構成の駆動力配分装置において、一方のクラッチの係合に伴って他方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないようにしながら左右輪に駆動力を適切に配分する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロペラシャフトを介してエンジンなどの駆動源から伝達される駆動力を例えば後輪の一対の左右輪それぞれに配分(所謂トルク配分)するために、プロペラシャフトの後端部に連結されたハイポイドギヤまたはベベルギヤの左右それぞれに左輪用クラッチと右輪用クラッチを配置した構成の駆動力配分装置が知られている。こうした駆動力配分装置は車両のリヤディファレンシャル内に設けられるが、前記駆動力配分装置をより小型化/軽量化するためにまたリヤディファレンシャル内への前記駆動力配分装置の組み付け性を向上させるなどのために、例えば下記に示す特許文献1に開示されているような、前記左輪用と右輪用の各クラッチ(便宜的に左クラッチ,右クラッチとも呼ぶ)を一体的に集約したクラッチ機構を前記ハイポイドギヤまたはベベルギヤの左右どちらか一方片側のみに配置するように構成した駆動力配分装置が知られている。
【0003】
ここで、上記したような左輪用と右輪用の各クラッチを一体的に集約した構成の駆動力配分装置について、図6及び図7さらには図8を用いて説明する。図6は、左輪用と右輪用の2つのクラッチを一体的に集約したクラッチ機構を有する従来知られた駆動力配分装置の一例を示す部分断面図である。図7は、図6に示した構成の駆動力配分装置の動作を説明するための模式図である。図8は、図6に示した構成の駆動力配分装置のクラッチ機構の一部拡大図である。
【0004】
従来知られた駆動力配分装置DRは、図示しないエンジンにより回転駆動されるプロペラシャフトに連結されたハイポイドピニオンシャフト61と、該ハイポイドピニオンシャフト61の先端に形成されたハイポイドピニオンギヤ62と、該ハイポイドピニオンギヤ62と噛み合っているハイポイドリングギヤ63とを備えてなり、そして前記ハイポイドリングギヤ63はリヤドライブシャフト5R、5Lと同軸に配置されている中空の回転入力軸Aの外周に取り付けられている。したがって、エンジン及びプロペラシャフトを介してハイポイドピニオンシャフト61が回転駆動されると、前記1組のハイポイドピニオンギヤ62とハイポイドリングギヤ63を介して前記回転入力軸Aへと駆動力が伝達されて、前記回転入力軸Aが回転するようになっている。
【0005】
前記回転入力軸Aにおいて前記ハイポイドリングギヤ63が取り付けられている側の一端と反対側の端にはクラッチ機構Cが配設されており、該回転入力軸Aの回転が前記クラッチ機構Cに伝達されるようになっている。このクラッチ機構Cは、ピストンハウジングPHとサイドケースSCとで形成されるクラッチケース内に左クラッチCLと右クラッチCRとを隣り合わせに並列配置して一体的に集約した構成となっている。各クラッチCL,CRにおいてはそれぞれのクラッチピストンKPを矢印X方向(図7参照)に動作させることによってクラッチCL,CRを係合することのできるように、クラッチピストンKPが互いにクラッチ板(Ca,Cb)を挟む対向位置に配置されている。図7に示すように、各クラッチCL,CRのクラッチピストンKPの動作は、オイルポンプ駆動モータMにより作動される2つのオイルポンプLP,RPによってバルブVを含んでなる油圧回路Dを介した油圧制御が行われることによる。つまり、左クラッチCLと右クラッチCRは、油圧クラッチである。
【0006】
図8に示すように、クラッチピストンKPが動作されると、回転入力軸Aの軸方向に交互に重なって配設されている複数のクラッチアウターCaとクラッチインナーCb(クラッチ板あるいは摩擦板とも呼ぶ)とがプレッシャーガイドPG及びエンドプレートEを介してクラッチピストンKPからの押圧力を受けることにより係脱されるようになっており、これにより各クラッチCL,CRそれぞれでクラッチの係合/解放が行われる。
【0007】
左クラッチCLにおいてクラッチの係合が行われると、回転入力軸Aに連結されたクラッチガイドプレートKGと共にクラッチアウターCaとクラッチインナーCbとが回転され、これに伴いクラッチインナーCbが係止されているインナークラッチガイドIGを介してリヤドライブシャフト5Lが回転駆動される。この際にはインナークラッチガイドIGだけでなくクラッチアウターCaが係止されているアウタークラッチガイドOGも当然に回転駆動され、また各クラッチCL,CRにおけるアウタークラッチガイドOGは図示のように共にアウタークラッチガイド保持部Bにより連結されていることから、左クラッチCLにおいてクラッチの係合が行われることに応じて、左クラッチCLのアウタークラッチガイドOGを介して右クラッチCRのアウタークラッチガイドOGが回転駆動される。そして、右クラッチCRのアウタークラッチガイドOGが回転駆動された状態で右クラッチCRにおいてもクラッチの係合が行われることにより、クラッチインナーCbを係止したインナークラッチガイドIGを介してリヤドライブシャフト5Rが回転駆動される。
【0008】
以上のことから、上記構成の駆動力配分装置では、オイルポンプ駆動モータMに流すべき電流値を制御することにより、各オイルポンプLP,RPの作動に伴う左右の各クラッチCL,CRにおけるクラッチピストンKPの動作に従ってプロペラシャフト4の駆動力をリヤドライブシャフト5L、5Rに任意に配分して、車両における最適な旋回制御を実現することのできるようにしている。なお、油圧回路Dには、各クラッチCL,CRのクラッチピストンKPにかかる油圧(便宜的に左側油圧,右側油圧と呼ぶ)を測定する油圧センサ12L,12Rが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2826580号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したような構成の駆動力配分装置においては、車両の左右輪の車輪速の差に基づいて左右輪間の駆動力配分(所謂トルク配分)を積極的に調整する制御が制御装置によって行われる。具体的には、配分された駆動力に応じたトルク(係合力)を発生する程度の押圧力を生ずるようにオイルポンプ駆動モータMに流すべき電流値を制御して左クラッチCLのクラッチピストンKPと右クラッチCRのクラッチピストンKPとを同時に動作させることによって、左右輪間の駆動力配分を行うことのできるようにしている。
【0011】
しかしながら、従来の制御装置では一方のクラッチに対して他方のクラッチに比べて大きなトルク(係合力)がかかるように駆動力配分を行った際に、前記大きなトルク(係合力)がかけられた側のクラッチから他方のクラッチに対して予期せぬ推力(余剰推力と呼ぶ)が伝達されてしまい、それに応じて他方のクラッチには配分された本来の駆動力よりも大きな駆動力(所謂過剰なクラッチトルク)が発生されることから、これにより駆動力の配分が適切になされない、という問題があった。
【0012】
上記問題は、クラッチ機構Cが左右輪に駆動力を配分する2つのクラッチCL,CRのクラッチ板(クラッチアウターCa及びクラッチインナーCb)を押圧するクラッチピストンKPが互いに対向するようにそれぞれ配置されており、また各クラッチCL,CRにおけるアウタークラッチガイドOGが共にアウタークラッチガイド保持部Bに支持されており、一方のクラッチが係合される(クラッチピストンKPが他方のクラッチ側に向かって動作される)ことによって前記アウタークラッチガイド保持部Bを介して他方のクラッチに対して駆動力が伝達されることなどの、クラッチ機構Cの構造上の問題に起因する。
【0013】
すなわち、図8に示すように、左輪用クラッチCLのアウタークラッチガイドOGの回転が直接的に右輪用クラッチCRのインナークラッチガイドIGに伝達されることのないように、前記アウタークラッチガイド保持部Bと右輪用クラッチCRのインナークラッチガイドIGとの間には複数のスラストベアリングSBが適宜の位置に配置されており、片側からより大きな推力(図8においてFL>FR)が入力された場合にその推力(FL)はスラストベアリングSBに全て吸収され他方のクラッチ側には何らの推力も伝達されないことが望ましいが、上記したようなクラッチ機構Cの構造上、入力された推力(FL)の一部がアウタークラッチガイドOGを介して他方のクラッチに伝達されてしまうことがどうしても生じ得る(図8においてΔFで示す)。そこで、上記したようなクラッチ機構Cの構造そのものを変更することなく、制御によって上記問題を解決する駆動力配分装置の制御装置が望まれていたが未だそのようなものは提案されていない。
【0014】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、上記したような左右輪それぞれに駆動力を配分する左輪用と右輪用の2つのクラッチを一体化して集約した構成の駆動力配分装置において、一方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないように余剰推力(ひいては余剰トルク)の発生を考慮したうえで左右輪に駆動力を適切に配分することのできるようにした駆動力配分装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る駆動力配分装置の制御装置は、駆動源(ENG)からの駆動力を左右一対の駆動輪(WRR,WRL)それぞれに配分する2つの油圧クラッチ(CR,CL)が互いに隣り合わせに並列配置され、車両(1)の走行状態に応じて前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)それぞれの係合力を可変に制御する前記各油圧クラッチ(CR,CL)のクラッチピストン(KP)が互いにクラッチ板(Ca,Cb)を挟むように対向配置されると共に、一方のクラッチピストン(KP)がクラッチ板(Ca,Cb)を押圧することに伴って他方のクラッチ板(Ca,Cb)が回転駆動するように互いのクラッチ板(Ca,Cb)が連結されてなる駆動力配分装置(DR)の制御装置(100)であって、車両(1)の走行状態に基づいて前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)の係合力を算出するクラッチ係合力算出手段と、前記算出した係合力に基づき前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)におけるそれぞれのクラッチピストン(KP)を動作させるために算出される油圧指令値を取得する油圧指令値取得手段と、前記取得した油圧指令値の油圧差に基づいて、前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)のうちいずれか一方について前記算出した係合力を補正する係合力補正手段と、前記補正した係合力に応じて前記いずれか一方の油圧クラッチ(CR,CL)のクラッチピストン(KP)を動作させる制御を行う制御手段とを備える。
【0016】
この発明によると、車両(1)の走行状態に基づいて算出された2つの油圧クラッチ(CR,CL)の係合力に従って前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)におけるそれぞれのクラッチピストン(KP)を動作させるために算出される油圧指令値を取得する。そして、前記取得した油圧指令値の油圧差に基づいて、前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)のうちいずれか一方について前記算出した係合力を補正し、該補正した係合力に応じて前記いずれか一方の油圧クラッチ(CR,CL)のクラッチピストン(KP)を動作させる。すなわち、それぞれのクラッチピストン(KP)を予め算出した係合力に従って動作させるために算出されるそれぞれの油圧指令値は、前記2つの油圧クラッチ(CR,CL)が同時に作動された時に一方のクラッチから他方のクラッチに対して伝達され得る余剰推力(余剰トルク)を含むものとして計測され得ることから、それらの油圧差に応じて係合力を適宜に補正することで前記余剰推力の影響を排除した上で他方のクラッチを動作させることができるようになる。このようにして、上記した左右輪それぞれに駆動力を配分する左輪用と右輪用の2つの油圧クラッチ(CR,CL)を一体化して集約した構成の駆動力配分装置(DR)において、一方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないように余剰推力(余剰トルク)の発生を考慮して左右輪に駆動力を適切に配分することを、駆動力配分装置の構造そのものを変更することなく容易に実現することができるようにしている。
【0017】
なお、上記で括弧内に記した図面参照符号は、後述する実施形態において対応する構成要素等を参考のために例示したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、左右輪それぞれに駆動力を配分する左輪用と右輪用の2つのクラッチのいずれか一方に大きな係合力がかけられる場合に、前記係合力に応じて算出される油圧差に基づいて補正された係合力に従って、大きな係合力がかけられるクラッチから他方のクラッチへと伝達される余剰推力(余剰トルク)を考慮した上で前記他方のクラッチを動作するようにしたことから、一方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないようにしながら左右輪に駆動力を適切に配分することが容易にできるようになる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】四輪駆動車両のシステム概要を示す模式図である。
【図2】図1に示す4WD−ECUの制御ブロック図である。
【図3】4WD−ECUにより実行される駆動力配分処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図4】油圧補正処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図5】油圧補正処理の別の実施例を示すフローチャートである。
【図6】左輪用と右輪用の各クラッチを一体的に集約したクラッチ機構を有する従来知られた駆動力配分装置の一例を示す部分断面図である。
【図7】図6に示した構成の駆動力配分装置の動作を説明するための模式図である。
【図8】図6に示した構成の駆動力配分装置のクラッチ機構の一部拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。ただし、この明細書では説明を理解しやすくするために、本発明にかかる駆動力配分装置の制御装置を例えば四輪駆動車両の後輪の左右輪の駆動力を配分する駆動力配分装置(つまりリヤディファレンシャル)に適用した場合を例にして説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる駆動力配分装置の制御装置が適用される四輪駆動車両1のシステム概要を示す模式図である。図1に示す四輪駆動車両1は、車体前部に横置きに搭載された駆動源たるエンジンENGと、前記エンジンENGと一体に設けられたトランスミッションMTと、トランスミッションMTを左右の前輪WFR(右前輪)、WFL(左前輪)のフロントドライブシャフト2R、2Lに接続するフロントディファレンシャルDFと、前輪WFR、WFLの向きを変えるためのステアリング装置3と、前記フロントディファレンシャルDFを左右の後輪WRR(右後輪)、WRL(左後輪)に接続するためのプロペラシャフト4と、前記プロペラシャフト4を左右の後輪WRR、WRLのリヤドライブシャフト5R、5Lに接続する駆動力配分装置DR(リヤディファレンシャル)とを備える。
【0022】
駆動力配分装置DRはリヤドライブシャフト5R、5Lに対する駆動力の配分を任意に制御することが可能となっており、こうした駆動力配分装置DRの構成は図6等に示した従来技術と同様である。詳しい説明は省略するが、駆動力配分装置DRは、エンジンENGからの駆動力を左右一対の駆動輪WRR,WRLそれぞれに配分する2つの油圧クラッチCR,CLが互いに隣り合わせに並列配置され、車両の走行状態に応じて前記2つの油圧クラッチCR,CLそれぞれの係合力を可変に制御する前記各油圧クラッチCR,CLのクラッチピストンKPが互いにクラッチ板Ca,Cbを挟むように対向配置されると共に、一方のクラッチピストンKPがクラッチ板Ca,Cbを押圧することに伴って他方のクラッチ板Ca,Cbが回転駆動するように互いのクラッチ板Ca,Cbが連結されてなるクラッチ機構Cを有する駆動力配分装置である。なお、こうした駆動力配分装置におけるクラッチ機構Cの動作についても既に説明済みであることから、ここでの説明を省略する。
【0023】
各々のクラッチピストンKPにかかる油圧を測定するための油圧センサ12L,12R(図7参照)の検出値は、4WD−ECU100に出力される。また、駆動力配分装置DRには左右のクラッチCL,CRに用いられる作動油の油温を検出する油温センサ18(図2参照)が所定箇所に取り付けられており、こうした油温センサ18の検出値についても4WD−ECU100に出力される。
【0024】
四輪駆動車両1は、さらに各種電子制御ユニット(ECU)10,11,100を備える。これらの電子制御ユニット(ECU)10,11,100は、CPU,ROM,RAM及び入出力インタフェース等を含んで構成されてなり、RAMの一時記憶機能を用いながらROMに格納されている各種制御プログラムに従って所定の機能を実現するマイクロコンピュータである。この実施例においては電子制御ユニットとして、エンジンENGおよびトランスミッションMTの作動を制御するFI/AT−ECU10と、車両挙動安定化制御(VSA:Vehicle Stability Assist)システムの作動を制御するVSA−ECU11と、前後輪間および後輪の左右輪間の駆動力配分を行う4WD−ECU100とを示している。FI/AT−ECU10及びVSA−ECU11は、四輪駆動車両1の通信プロトコルであるCAN(Controller Area Network)を介して、それぞれ4WD−ECU100と電気的に接続されている。
【0025】
前輪WFR、WFLおよび後輪WRR、WRLには、各車輪の回転速度(車輪速度)を検出する車輪速センサ13がそれぞれ配設されており、各車輪速センサ13はVSA−ECU11と電気的に接続されている。ただし、図1では右前輪WFRに配設された車輪速センサ13のみを図示している。ステアリング装置3には、前輪WFR、WFLの操舵角を検出する舵角センサ14が配設されており、舵角センサ14はVSA−ECU11と電気的に接続されている。さらに、四輪駆動車両1には、図1に示すように、この四輪駆動車両1のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ15と、四輪駆動車両1に作用する横G(実横加速度)を検出する横Gセンサ16と、四輪駆動車両1に作用する前後G(前後加速度)を検出する前後Gセンサ17とが配設されており、各センサ15,16,17はそれぞれVSA−ECU11と電気的に接続されている。
【0026】
4WD−ECU100は、各検出信号等に基づいて駆動力配分装置DRに設けられたクラッチ機構Cにおける一対の左右輪用の油圧クラッチ(左クラッチCL,右クラッチCR)の作動を制御する。詳しくは後述するが、4WD−ECU100(制御装置)は、各センサ13〜17から出力されVSA−ECU11を介して入力される車速、前後G、横G、車輪速、ヨーレイト、エンジントルク等のデータに基づいて左右のクラッチCL,CRに対する油圧指令値(補正前油圧指令値と呼ぶ)を算出する。このときの左側油圧指令値及び右側油圧指令値を取得し、取得した左側油圧指令値及び右側油圧指令値に応じて前記補正前の油圧指令値を補正しつつ、該補正後の油圧指令値(補正後油圧指令値と呼ぶ)に応じてオイルポンプ駆動モータM(オイルポンプLP,RP)を制御する。すなわち、本実施形態においては、前記4WD−ECU100は本発明の制御手段として機能するものであり、前記駆動力配分装置DRに備えられた左右の各クラッチCL,CRへ供給する油圧をオイルポンプ駆動モータMにより調整することで駆動力配分制御を実行するようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の4WD−ECU100による駆動力配分制御について説明する。図2は、図1に示した4WD−ECU100の制御ブロック図である。図2に示すように、4WD−ECU100のセンサ入力部101には、FI/AT−ECU10およびVSA−ECU11から各種情報がいわゆるCAN(Controller Area Network)を利用して入力される。FI/AT−ECU10から入力される情報は、エンジン回転数Ne(エンジンENGの出力軸の回転数)、シリンダ吸入空気量Gaircyl、図示しないトルクコンバータのスリップ比、トランスミッションのメインシャフト回転数Nm、カウンターシャフト回転数Nc、図示しないシフトレバーのシフトポジション(シフト)、さらにはエンジンENGの冷却水温度等である。これらの情報は、図示しない対応する検出手段(センサ)により検出されて、FI/AT−ECU10に入力されたものである。また、VSA−ECU11から入力される情報は、車輪速センサ13により検出された車輪速度(各車輪の回転速度)、ヨーレイトセンサ15により検出されたヨーレイト、横Gセンサ16により検出された横G、前後Gセンサ17により検出された前後G等である。
【0028】
なお、エンジンENGに吸気される空気の空気量であるシリンダ吸入空気量Gaircylは、FI/AT−ECU10において算出される。従来知られているように、シリンダ吸入空気量GaircylはエンジンENGへの空気配管に設けられたエアフローメータで測定される空気量、この空気配管中に設けられた圧力センサで測定される圧力の単位時間当たりの変化量等に基づいて算出される。
【0029】
また、センサ入力部101には、舵角センサ14により検出された操舵角と、油温センサ18により検出された駆動力配分装置DR(詳しくは左クラッチCL,右クラッチCR)の作動油の油温と、油圧センサ12L,12Rにより検出された左クラッチCLのクラッチピストンKPにかかる左側油圧と右クラッチCRのクラッチピストンKPにかかる右側油圧等が入力される。
【0030】
エンジン回転数Ne、シリンダ吸入空気量Gaircyl、メインシャフトの回転数Nm、およびシフトポジション(シフト)は、センサ入力部101から駆動トルク算出部102に入力される。駆動トルク算出部102は、入力された各データに基づいて、エンジンENGによる推定駆動トルクを算出し、算出した推定駆動トルクを操安制御部103に出力する。
【0031】
駆動トルク算出部102から出力されたエンジンENGの推定駆動トルクと、センサ入力部101から出力された横G、操舵角および車輪速度(各車輪の回転速度)は、操安制御部103に入力される。操安制御部103は、入力された各データに基づいて操安制御トルクを算出し、算出した操安制御トルクをトルク加算部105に出力する。また、車輪速度(各車輪の回転速度)は、センサ入力部101からLSD制御部104に入力される。LSD制御部104は、入力された前後および左右の四輪の車輪速度に基づいて、必要に応じて駆動力配分装置DRにリミテッドストップ効果を働かせるためのLSDトルクを算出し、算出したLSDトルクをトルク加算部105に出力する。
【0032】
トルク加算部105は、操安制御部103からの操安制御トルクとLSD制御部104からのLSDトルクとを加算し、加算されたトルク(加算トルク)はクラッチトルク補正部106に出力される。クラッチトルク補正部106には、トルク加算部105から加算トルク(補正前トルク指令値に該当する)が入力されるとともに、センサ入力部101から車輪速度および作動油の油温さらには左側油圧,右側油圧が入力される。クラッチトルク補正部106は、加算トルク、車輪速度および作動油の油温さらには左側油圧,右側油圧に基づいて、駆動力配分装置DRの油圧クラッチCL,CRで生じさせるべきクラッチトルクの補正を行い、補正したクラッチトルク(補正後トルク指令値)を電流出力部107に出力する。
【0033】
電流出力部107は、クラッチトルク補正部106から出力されたクラッチトルク(補正後トルク指令値)を得るために左右のオイルポンプLP,RPを動作するのに必要なオイルポンプ駆動モータMの駆動電流値を算出し、算出した駆動電流値を駆動回路部108に出力する。駆動回路部108は、電流出力部107により算出された駆動電流値の駆動電流をオイルポンプ駆動モータMに出力する。このようにして、4WD−ECU100の制御に基づいて駆動力配分装置DRのオイルポンプ駆動モータMに駆動電流が流され、左右のオイルポンプLP,RPが作動することに応じてクラッチピストンKPが動作してクラッチ制御が行われることによって、既に説明したようにプロペラシャフト4からの駆動力が後輪WRR、WRLに配分される。
【0034】
フェイルセーフ部110には、センサ入力部101から各センサの検出値や検出電流等が入力される。これらのデータに基づいて故障等といった所定の条件に該当する場合には、フェイルセーフ部110は、駆動回路部108にフェイルセーフアクション信号を出力する。駆動回路部108にフェイルセーフアクション信号が入力されると、駆動回路部108は、F/Sリレー部112にリレー駆動電流を出力する。リレー駆動電流がF/Sリレー部112に流れると、オイルポンプ駆動モータMに駆動電流が流れないようにF/Sリレー部112が作動する。このとき、4WD−ECU100は、FI/AT−ECU10にトルクダウン要求信号を出力するとともに、メータ部113に警告灯表示信号を出力する。そして、FI/AT−ECU10は駆動トルクを徐々に下げるようにエンジンENGやトランスミッションMTを制御し、四輪駆動車両1の運転席に設けられたメータ部113には、警告灯(警告ランプ)が点灯される。なお、4WD−ECU100からFI/AT−ECU10にトルクダウン要求信号が出力されるのは、例えば、ABS(アンチロックブレーキシステム)を含むVSA(車両挙動安定化システム)がオフになった場合や四輪駆動車両の4WDシステムが故障した場合、あるいは油温センサ18で検出された作動油の油音が所定温度以上の高温となり、油圧クラッチCL,CRを保護しなければならない場合等である。
【0035】
また、ヨーレイト、横G、および前後Gがセンサ入力部101からセンサ中点学習部111に入力される。センサ中点学習部111は、ヨーレイトセンサ15、横Gセンサ16、および前後Gセンサ17の中点学習を行う。なお、センサ中点学習部111の中点学習において得られた各センサの中点は図示しない記憶手段に記憶され、この記憶手段に記憶された各センサの中点に基づいて、各センサの検出値が補正される。
【0036】
次に、駆動力配分装置の制御装置(4WD−ECU100)の処理について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、4WD−ECU100により実行される駆動力配分処理のフローチャートである。ここに示す駆動力配分処理は四輪駆動車両1の走行時において、4WD−ECU100により繰り返し実行される処理である。
【0037】
ステップS1は、エンジンENGの回転数Ne等を取得し、該取得したエンジンENGの回転数Ne等に基づいてフリクショントルク等のトルクのロス分を除いた総駆動トルクを算出する。ステップS2は、横G、操舵角および車輪速度を取得し、これらに基づいて前後輪間の駆動トルクの配分比(前後配分比)および後輪の左右輪間の駆動トルクの配分比(左右配分比)を算出する。ステップS3は、前記算出した総駆動トルクおよび前後配分比に基づいてリヤトルク指令値(左右輪の合計トルク指令値)を算出する。なお、前後輪間および左右間の駆動力の配分は、具体的には取得した横Gと操舵角から算出した横Gとを所定の割合で加算した制御用横Gに応じて設定される。また、左右輪間の駆動力の配分は、横Gがないときには固定比とされる。
【0038】
ステップS4は、ステップS2において算出された左右配分比と、ステップS3において算出されたリヤトルク指令値に基づいて、左右輪WRR、WRLの各リヤトルク指令値をそれぞれ算出する。ステップS5は、前後および左右の四輪の車輪速度を取得し、これらに基づいてLSDトルクを算出し、該算出したLSDトルクを前記算出した左右輪WRR、WRLのリヤトルク指令値と加算して、左右の合算リヤトルク指令値(トルク指令値)を算出する。
【0039】
ステップS6は、前記算出した左右輪WRR、WRLの左右のリヤトルク指令値(トルク指令値)から左右それぞれの油圧指令値(補正前)を決定する。ステップS7は、前記決定した左右輪WRR、WRLの左右の油圧指令値(補正前)の大小を比較する。右輪WRRの油圧指令値(補正前)が左輪WRLの油圧指令値(補正前)よりも所定値以上大きいと判断した場合には(ステップS7において右>左)、「左輪用の油圧補正処理」を実行する(ステップS8)。他方、左輪WRLの油圧指令値(補正前)が右輪WRRの油圧指令値(補正前)よりも所定値以上大きいと判断した場合には(ステップS7において左>右)、「右輪用の油圧補正処理」を実行する(ステップS9)。これらの処理の詳細な説明については後述する。ステップS10は、左右輪WRR、WRLの各補正前及び補正後油圧指令値を左右輪WRR、WRLのクラッチトルクとしてオイルポンプ駆動モータMの駆動電流値を算出し、該算出した駆動電流値に基づきオイルポンプ駆動モータMを動作させることによって左右それぞれのクラッチCL,CRを制御する。なお、上記ステップS7において右輪WRRの油圧指令値(補正前)と左輪WRLの油圧指令値(補正前)とが等しい場合には、上記したステップS8又はステップS9の補正処理を実行せずにステップS10の処理を実行すればよい。
【0040】
ここで、上記した左輪用油圧補正処理及び右輪用油圧補正処理(ステップS8,S9参照)について図4を用いて説明する。図4は、油圧補正処理の一実施例を示すフローチャートである。ただし、ここでは左輪WRLの油圧指令値(補正前)が右輪WRRの油圧指令値(補正前)よりも大きい場合に実行される「右輪用の油圧補正処理」(ステップS9)を例に説明する。なお、左輪用の油圧補正処理(ステップS8)は処理として右輪用の油圧補正処理と実質的に同じであることから、ここでは説明を省略する(図4に示す処理において右左を読み替えればよい)。
【0041】
ステップS11は、右側油圧指令値(補正前)と左側油圧指令値(補正前)とを取得する。ステップS12は、前記取得した右側油圧指令値(補正前)と左側油圧指令値(補正前)とに基づき右輪WRRの油圧指令値(補正前)を補正するための補正値S(後述する)を算出する。ステップS13は、右輪WRRの油圧指令値(補正前)から前記算出した補正値を減算することにより(後述する数3参照)、右輪WRRの油圧指令値(補正後)を算出する。ステップS14は、前記算出した右輪WRRの油圧指令値(補正後)を出力する。
【0042】
ここで、右輪WRRの油圧指令値(補正後)を算出するために用いる上記補正値(ステップS12参照)について説明する。上記補正値は、左輪WRLの油圧指令値(補正前)が右輪WRRの油圧指令値(補正前)よりも大きい場合に、右クラッチCRが左クラッチCLからうける余剰推力ΔF(図8参照)による影響を除くための補正値である。こうした補正値Sを算出するための式を数1に示す。
(数1)
S=k/Apiston×(PL−PR)×μ×n×Rclt
kは実測に基づき設定される係数、Apistonは、クラッチピストンの受圧面積、PLは左側油圧指令値(補正前)、PRは右側油圧指令値(補正前)、μはクラッチ板(クラッチアウター及びクラッチインナー)の摩擦係数、nはクラッチ板の枚数、Rcltはクラッチ板における有効半径である。
【0043】
右クラッチCRにかかる実トルクは右側油圧指令値(補正前)に応じたトルクと前記余剰推力ΔFによる余剰トルクとの和として求まるものであることから、右側油圧指令値(補正後)としては前記余剰トルク分を考慮してその分を補正する必要がある。トルク(TR)と推力(FR)は数2に示すような関係にあり、これらから数3が導かれる。
(数2)
TR=FR×μ×n×Rclt
(数3)
TR´(補正後)=TR(右側油圧指令値(補正前)に応じたトルク)
−ΔF×μ×n×Rclt
=(FR−ΔF)×μ×n×Rclt
【0044】
ここで、左クラッチCLから右クラッチCRに対して与えられる左側干渉推力をFL1,右クラッチCRから左クラッチCLに対して与えられる右側干渉推力をFR1とすると、前記余剰推力ΔFは数4として求められる。また、左側干渉推力FL1及び右側干渉推力FR1はそれぞれ左側指示推力FLと右側指示推力FRの一定割合として示すことが可能であるので、上記係数kを用いるとそれぞれ数5,数6のように表すことができる。したがって、これらの数4〜数6から数7が導かれる。
(数4)
ΔF=FL1−FR1
(数5)
FL1=k×FL
(数6)
FR1=k×FR
(数7)
ΔF=k×(FL−FR)
【0045】
さらに、推力とクラッチピストンKPにかかる油圧との関係は数8、数9に示されるような関係にあることから、数7は数10に示すように変形可能である。
(数8)
FL=PL/Apiston
(数9)
FR=PR/Apiston
(数10)
ΔF=k×(PL/Apiston−PR/Apiston
=k/Apiston×(PL−PR)
以上から、数1に示した補正値Sを求める式が決まる。数1から理解できるように、この補正値Sは左右油圧指令値の油圧差(PL−PR)の関数である。
【0046】
以上説明したように、本発明の駆動力配分装置の制御装置(4WD−ECU)は、車両の走行状態に基づいて左右の油圧クラッチCL,CRのうち一方に他方よりも大きな係合力をかける必要がある場合に、左右のトルク指令値から決定した左右の油圧指令値(補正前)をそれぞれ取得し、該取得した油圧指令値(補正前)の油圧差に応じて車両の走行状態に基づいて算出された係合力(油圧指令値(補正前)に対応)を補正し、該補正した係合力(油圧指令値(補正後)に対応)に従って大きな係合力がかけられた油圧クラッチから発生される余剰推力(余剰トルク)の影響を受ける側の油圧クラッチを制御するようにしている。このようにすることにより、一方のクラッチに過剰なクラッチトルクがかからないように余剰推力(余剰トルク)の発生を考慮して左右輪に駆動力を適切に配分することを、駆動力配分装置の構造そのものを変更することなく容易に実現することができる。
【0047】
以上、図面に基づいて実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施例では、油圧指令値(補正後)を算出するために油圧指令値(補正前)から数1に示したような補正値Sを減算したがこれに限らず、以下に示すようにして求められる補正値S´により油圧指令値(補正前)を乗算することによってもよい。図5は、油圧補正処理の別の実施例を示すフローチャートである。ただし、ステップS21,S22,S24の各処理については上記した図4のステップS11,S12,S14の各処理と同様であることから、ここでの説明を省略する。
【0048】
図5に示すように、ステップS22は、取得した右側油圧指令値(補正前)と左側油圧指令値(補正前)とに基づき右輪WRRの油圧指令値(補正前)を補正するための補正値S´(後述する)を算出する。ステップS23は、右輪WRRの油圧指令値(補正前)に前記算出した補正値を乗算することにより(後述する数11参照)、右輪WRRの油圧指令値(補正後)を算出する。
ここで、上記実施例において補正値S´を算出するための式を数11に示す。
(数11)
S´=1/{1+k´×(PL−PR)}
k´は定数、PLは左側油圧指令値(補正前)、PRは右側油圧指令値(補正前)である。
【0049】
右クラッチにかかる実トルクは右側油圧指令値(補正前)に応じたトルクと前記余剰推力ΔFによる余剰トルクを含んでおり、右側油圧指令値(補正後)としては前記余剰トルク分を考慮してその分を補正する必要がある。そこで、この実施例においては、補正係数(補正量S´,ただし0<S´<1)により補正する。すなわち、数12に示すように補正することで前記余剰トルクによるトルク干渉の影響を除くようにしている。
(数12)
FR=FR´×S´
(数13)
FR=PR/Apiston
また、
(数14)
FR´=FR+ΔF
上述した数12〜数14から上記数11は求められる。すなわち、
(数15)
S´=FR/FR´=FR/{FR+ΔF}
=PR/{PR+k(PL−PR)}
=1/{1+k/PR×(PL−PR)}
ここで、PRは内輪側の油圧に相当し車両の旋回中は待機油圧で近似できるため定数と看做すことができる。そこでk´=k/PRとすることで数11が導かれる。数11から理解できるように、この補正値S´も左右油圧指令値の油圧差(PL−PR)の関数である。
【0050】
なお、上述した実施例においては、車輪速センサ13により後輪の左右輪WRR、WRLの車輪速を検出し、車輪速の差に基づいて四輪駆動車両1の走行状態を判定していたが、本発明の駆動力配分装置の制御装置では、左右輪WRR、WRLの車輪速の差ではなく、左右輪WRR、WRLの加速度の差等に基づいて四輪駆動車両1の走行状態を判定するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、駆動力配分装置により後輪の左右輪WRR、WRLに駆動力を配分する場合を説明したが、本発明は左右後輪WRR、WRLに駆動力を配分する駆動力配分装置に限定されるものではない。駆動力配分装置は、左右前輪WFR、WFLに対しても駆動力を配分するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…四輪駆動車両
2L(2R)…左(右)フロントドライブシャフト
3…ステアリング装置
4…プロペラシャフト
5L(5R)…左(右)リヤドライブシャフト
61…ハイポイドピニオンシャフト
62…ハイポイドピニオンギヤ
63…ハイポイドリングギヤ
10…FI/AT−ECU
11…VSA−ECU
12(12L,12R)…油圧センサ(左,右)
13…車輪速センサ
14…舵角センサ
15…ヨーレイトセンサ
16…横Gセンサ
17…前後Gセンサ
100…4WD−ECU
101…センサ入力部
102…駆動トルク算出部
103…操安制御部
104…LSD制御部
105…トルク加算部
106…クラッチトルク補正部
107…電流出力部
108…駆動回路部
110…フェイルセーフ部
111…センサ中点学習部
112…F/Sリレー部
113…メータ部
DF…フロントディファレンシャル
DR…駆動配分装置(リヤディファレンシャル)
ENG…エンジン(駆動源)
MT…トランスミッション
WFL(WFR)…左(右)前輪
WRL(WRR)…左(右)後輪
A…回転入力軸
B…アウタークラッチガイド保持部
C…クラッチ機構
CL(CR)…左(右)油圧クラッチ
D…油圧回路
E…エンドプレート
M…オイルポンプ駆動モータ
V…バルブ
LP(RP)…左(右)オイルポンプ
PH…ピストンハウジング
PG…プレッシャーガイド
SC…サイドケース
Ca…クラッチアウター
Cb…クラッチインナー
OG…アウタークラッチガイド
IG…インナークラッチガイド
KP…クラッチピストン
KG…クラッチガイドプレート
SB…スラストベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力を左右一対の駆動輪それぞれに配分する2つの油圧クラッチが互いに隣り合わせに並列配置され、車両の走行状態に応じて前記2つの油圧クラッチそれぞれの係合力を可変に制御する前記各油圧クラッチのクラッチピストンが互いにクラッチ板を挟むように対向配置されると共に、一方のクラッチピストンがクラッチ板を押圧することに伴って他方のクラッチ板が回転駆動するように互いのクラッチ板が連結されてなる駆動力配分装置の制御装置であって、
車両の走行状態に基づいて前記2つの油圧クラッチの係合力を算出するクラッチ係合力算出手段と、
前記算出した係合力に基づき前記2つの油圧クラッチにおけるそれぞれのクラッチピストンを動作させるために算出される油圧指令値を取得する油圧指令値取得手段と、
前記取得した油圧指令値の油圧差に基づいて、前記2つの油圧クラッチのうちいずれか一方について前記算出した係合力を補正する係合力補正手段と、
前記補正した係合力に応じて前記いずれか一方の油圧クラッチのクラッチピストンを動作させる制御を行う制御手段と
を備えた駆動力配分装置の制御装置。
【請求項2】
前記係合力補正手段は、一方のクラッチピストンがクラッチ板を押圧することに伴って他方のクラッチ板に発生される余剰トルクを補正するための補正量を前記油圧差に基づき算出し、前記2つの油圧クラッチのうちいずれか一方の係合力を前記算出した係合力に対し前記算出した補正量を減算する又は乗算することによって補正することを特徴とする請求項1に記載の駆動力配分装置の制御装置。
【請求項3】
車両の旋回方向に基づいて左右一対の駆動輪のうち旋回外輪となる側の車輪と旋回内輪となる側の車輪を判定する判定手段と、
車両の走行状態に基づいて前記旋回外輪に前記駆動源からの駆動力を配分する油圧クラッチの係合力を、前記旋回内輪に前記駆動源からの駆動力を配分する油圧クラッチの係合力よりも大きく設定する設定手段とを備えてなり、
前記係合力補正手段は、前記旋回内輪に設定する油圧クラッチの係合力を前記油圧差に基づき補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動力配分装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−157999(P2011−157999A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18333(P2010−18333)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】