説明

駆動回路及びそれを用いた表示装置

【課題】
複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行うことができるとともに、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる駆動回路を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる駆動回路は、駆動信号を出力端子7から出力する駆動回路であって、入力信号に基づいて電源電位VDD2又は接地電位VEEのいずれかを出力端子7から出力する出力回路と、出力回路の出力信号が電源電位前記第1の電圧から前記第2の電圧へ遷移する間に、電源電位VDD2から電源電位VDD2’に低下させた後、接地電位VEEに遷移させる出力調整回路と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路及びそれを用いた表示装置に関し、特に、第1の電圧又は第2の電圧を画素へ出力する駆動回路及びそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置では、大型化が急速に進展している。このような大型表示装置では、TFTを形成した表示パネル内の配線は、数100mmにもなる。このため、これらの配線抵抗は数十KΩのオーダとなり、駆動回路を接続した側の近端と反対側の遠端では、この配線抵抗によって著しく波形に歪みが生じる。
【0003】
TFTのゲートを1ラインごとに共通に接続したゲート線において、ゲート波形が駆動回路の近端と遠端で異なると、各TFTのフィードスルー電圧がこの近端と遠端で異なってしまう。各TFTのフィードスルー電圧が異なると、各TFTに接続してある絵素の電圧の中心電圧が変動する。この中心電圧の変動がフリッカとなって表示品位を著しく落とすことになる。
【0004】
このような問題に鑑みて、特許文献1の表示装置が知られている。特許文献1では、ゲート線の信号の立下りを遅くすることで、ゲートドライバの近端と遠端の波形ひずみを相対的に小さくし、フィードスルー電圧の均一化を図っている。
【0005】
図5に、特許文献1の表示装置におけるゲート線の波形を示す。図5(a)は前段のゲート線の波形を示し、図5(b)は後段のゲート線の波形を示している。このゲート線の波形は、立下りが遅延時間だけ遅延している。ゲートドライバの近端における立下り波形の遅延時間をt1、ゲート線の時定数をt2とすると、ゲートドライバの遠端における立下り波形の遅延時間t3は、次の数1で表される。
【数1】

例えば、t1=1μs、t2=3μsとすると、これを数1に代入して次の数2となる。
【数2】

数2より、ゲートドライバの近端と遠端では、t3−t1=2.33μsの時間差が生じる。また、近端における立下り波形の遅延時間t1を例えば2μsとすると、同様にして次の数3となる。
【数3】

数3より、ゲートドライバの近端と遠端ではt3−t1=1.66μsの時間差となり、数2の場合よりも時間差が低減する。この差分はすなわち、フィードスルー電圧が表示パネル内で異なることを意味する。したがって、この差を小さくしないとフリッカの発生や焼き付きが生じる原因となる。また、遅延時間を大きくした場合、図5に示されるように、前段のゲートと後段のゲートが同時にオンする時間が生じることになり、正しく画像信号を絵素に充電できなくなってしまう。
【0006】
そこで、ゲートドライバがゲートをオンからオフにする過程で、オフになる直前でゲートドライバから出力される電圧を電源電位のVDD2よりも低い電圧であるVDD2’に切り替える方法が知られている。このVDD2’をTFTの閾値電圧にあわせておけば、フィードスルー電圧のばらつきを低減する効果は変わらない。
【0007】
このような方法を適用した従来のゲートドライバICについて図6及び図7を用いて説明する。図6は従来のゲートドライバICの回路図であり、図7は従来のゲートドライバICの出力回路の回路図である。
【0008】
従来のゲートドライバIC115は、図6に示されるように、ゲートドライバIC115の出力数と同一ビット数のシフトレジスタ116を備え、シフトレジスタ116の各出力はそれぞれゲートドライバ出力回路117に接続され、各ゲートドライバ出力回路117がゲート線を駆動する電圧を出力する。
【0009】
ドライバ電源端子108は、ゲートドライバIC115の外部で選択スイッチ112に接続され、選択スイッチ112の一方の選択端子は、本来のゲート駆動電圧である電源電位VDD2の電源回路110に接続される。選択スイッチ112の他方の選択端子は、電源電位VDD2より低くかつTFTの閾値電圧より高い電圧である電源電位VDD2’に設定された電源回路111に抵抗114を介して接続されている。
【0010】
ゲート線をスキャンするクロック信号は、CLKパルス入力端子119から入力される。ゲート線を駆動するタイミングを決めるスタートパルス信号は、スタートパルス入力端子118から入力されて、スタートパルス出力端子120から出力される。
【0011】
ゲートドライバ出力回路117は、図7に示されるように、Pchトランジスタ101とNchトランジスタ103とを備え、インバータ回路を構成している。すなわち、Pchトランジスタ101とNchトランジスタ103は、ゲート電極が互いに接続されるとともに入力端子105にも接続され、ドレイン電極が互いに接続されるとともに出力端子107にも接続されている。Pchトランジスタ101のソース電極は、まとめてドライバ電源端子108に接続され、Nchトランジスタ103のソース電極は接地電位VEEに接続されている。
【0012】
次に、従来のゲートドライバIC115の動作を説明する。スタートパルス入力端子118にスタートパルス信号を与え、CLKパルス入力端子119に1パルスのCLKパルス信号を与えると、スタートパルス信号がシフトレジスタ116の1ビット目に入力され、そのビットに対応するシフトレジスタに接続されているゲートドライバ出力回路117の出力1は、オフレベルの接地電位VEEからオンレベルの電源電位VDD2まで電圧が変化する。
【0013】
次のCLKパルス信号が入力される前に、選択スイッチ112を電源回路110から電源回路111に切り替えると、出力1のレベルは電源電位VDD2から電源電位VDD2’まで電圧が降下する。このとき、出力1から逆に電源端子108へ逆流電流113が流れてしまう。
【0014】
次のゲート線を駆動するには、スタートパルス信号をロウとして、次のCLKパルス信号をCLKパルス入力端子119に入力すると、シフトレジスタ116は最初のハイレベルを次のビットにシフトするので、出力1は電源電位VDD2’からオフレベルの接地電位VEEに切り替わる。このとき、選択スイッチ112はもとの電源回路110に戻しておく。同時に、シフトレジスタ116内の信号は隣のビットにシフトするため、出力2が接地電位VEEから電源電位VDD2に遷移する。以降、最後の出力nまで同じ動作を繰り返すことで、ゲート線の駆動が完了する。
【0015】
このように、ゲート線を駆動する電圧を電源電位VDD2から接地電位VEEに変化させる際に、電源を電源電位VDD2’に切り替えることにより、出力電圧を電源電位VDD2から電源電位VDD2’まで遷移させた後、電源電位VDD2’から接地電位VEEまで遷移させている。これにより、電源電位VDD2から電源電位VDD2’までは立下り速度を遅く、電源電位VDD2’から接地電位VEEまでは立下り速度を速くして短時間で電圧を降下させることができる。
【0016】
しかしながら、従来のゲートドライバIC115では、ドライバ電源端子108に供給される電圧を電源電位VDD2から電源電位VDD2’に切り替えると、接続しているゲート線からゲートドライバIC115側へ電流が逆流し、内部の寄生ダイオードを通じて電源電位VDD2’の電源回路111に流れ込む(113の逆流電流)。このような状態は、MOSデバイスではラッチアップを引き起こしてICを破壊する原因となる危険性がある。さらに、一般的にドライバ回路の電源は出力電圧が変化するたびに、電源には大きな過渡電流が流れて電源電圧が変動し、誤動作を引き起こすことがありえるという問題点を持っている。
【特許文献1】特開2001−272654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、従来のゲートドライバ等の駆動回路では、複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行おうとすると、複数の電源回路が必要となるため回路規模が増大し、さらに、出力電圧を切り替える際に電源回路へ電流が逆流するため動作が不安定になるという問題点があった。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行うことができるとともに、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる駆動回路及びそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明にかかる駆動回路は、表示装置に設けられた複数の画素を駆動する駆動信号を出力端子から出力する駆動回路であって、入力信号に基づいて第1の電源から供給される第1の電圧又は第2の電源から供給され前記第1の電圧よりも低い第2の電圧のいずれかを前記出力端子から出力する出力回路と、前記出力回路の出力信号が前記第1の電圧から前記第2の電圧へ遷移する間に、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整することにより、前記出力回路の出力信号を、前記第1の電圧と前記第2の電圧の間の第3の電圧に低下させた後、前記第2の電圧に遷移させる出力調整回路と、を備えるものである。これにより、複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行うことができるとともに、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる。
【0020】
上述の駆動回路において、前記出力調整回路は、入力される制御信号に基づいて前記出力回路の出力信号を前記第3の電圧から前記第2の電圧に遷移させてもよい。これにより、出力信号を効率よく複数の電圧に遷移させることができる。
【0021】
上述の駆動回路において、前記第1の電圧から前記第3の電圧に遷移する時間よりも、前記第3の電圧から前記第2の電圧に遷移する時間の方が短くてもよい。これにより、表示不良の発生を防止することができる。
【0022】
上述の駆動回路において、前記第3の電圧は、前記複数の画素に設けられた薄膜トランジスタの閾値電圧であってもよい。これにより、さらに表示不良の発生を防止することができる。
【0023】
上述の駆動回路において、前記出力回路は、前記第1の電源と前記出力端子との間に接続された第1のトランジスタと、前記第2の電源と前記出力端子との間に接続された第2のトランジスタとを備え、前記出力調整回路は、前記第2の電源と前記出力端子との間に接続された第3のトランジスタを備え、前記出力調整回路は、前記第3のトランジスタに入力される制御信号により、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整するものであってもよい。これにより、効果的に、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる。
【0024】
上述の駆動回路において、前記第3のトランジスタは、前記第2のトランジスタと並列に接続されていてもよい。これにより、出力信号を効率よく複数の電圧に遷移させることができる。
【0025】
上述の駆動回路において、前記第2のトランジスタよりも前記第3のトランジスタのオン抵抗が小さくてもよい。これにより、出力信号をより効率よく複数の電圧に遷移させることができる。
【0026】
上述の駆動回路において、前記第2のトランジスタと直列に接続された抵抗素子をさらに備えていてもよい。これにより、出力信号をさらに効率よく複数の電圧に遷移させることができる。
【0027】
上述の駆動回路において、前記抵抗素子は、入力される信号に応じて抵抗値が可変する第4のトランジスタであってもよい。これにより、駆動回路の製造後であっても、抵抗値を変更することができる。
【0028】
本発明にかかる表示装置は、複数の画素と前記複数の画素に信号を伝送する複数の配線とを有する表示パネルと、出力端子から前記複数の配線を介して前記複数の画素に駆動信号を出力する駆動回路と、を備える表示装置であって、前記駆動回路は、入力信号に基づいて第1の電源から供給される第1の電圧又は第2の電源から供給され前記第1の電圧よりも低い第2の電圧のいずれかを前記出力端子から出力する出力回路と、前記出力回路の出力信号が前記第1の電圧から前記第2の電圧へ遷移する間に、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整することにより、前記出力回路の出力信号を、前記第1の電圧と前記第2の電圧の間の第3の電圧に低下させた後、前記第2の電圧に遷移させる出力調整回路と、を備えるものである。これにより、複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行うことができるとともに、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数の電圧に遷移させて出力電圧の切り替えを行うことができるとともに、電源回路の増大を抑止し、安定して動作することができる駆動回路及びそれを用いた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0031】
発明の実施の形態1.
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置の構成について説明する。図に示されるように、この液晶表示装置は、複数の画素によって画像を表示する表示パネル30と、ゲート線22を介して画素を駆動するゲートドライバIC15と、ソース線23を介して画素を駆動するソースドライバIC21、表示パネル30を備えている。
【0032】
表示パネル30は、例えば、TFTをスイッチ素子とするアクティブマトリクス型のカラー液晶パネルである。表示パネル30は、行方向および列方向にそれぞれ所定間隔でゲート線(走査線)22およびソース線(データ線)23が設けられており、ゲート線22とソース線23の交点に画素を行列配置している。
【0033】
各画素は、TFT24を介して、等価的に容量性負荷となる画素電極25を備えている。TFT24のゲートは、1行ごとにゲート線22に共通に接続され、TFT24のソースは、1列ごとにソース線23に共通に接続され、TFT24のドレインは、画素電極25に接続されている。
【0034】
ゲートドライバIC15は、ゲート線22にゲート電圧を印加する複数のゲートドライバ出力回路17と、ゲートドライバ出力回路17の数と同一ビット数のシフトレジスタ16を備えている。各ゲートドライバ出力回路17は、ドライバ電源端子8を介して第1の電源10と接続されて電源電位VDD2が供給されるとともに、第2の電源9と接続されて接地電位VEEが供給される。シフトレジスタ16は、複数のゲートドライバ出力回路17のうちの一つを選択し、選択されたゲートドライバ出力回路17の出力をオンレベル(電源電位VDD2)、残りのゲートドライバ出力回路17の出力をオフレベル(接地電位VEE)にする。
【0035】
ゲート線をスキャンするクロック信号は、CLKパルス入力端子19から入力される。ゲート線を駆動するタイミングを決めるスタートパルス信号は、スタートパルス入力端子18から入力されて、スタートパルス出力端子20から出力される。
【0036】
例えば、スタートパルス入力端子18にスタートパルス信号を入力し、CLKパルス入力端子19に1パルスのCLKパルス信号を与えると、スタートパルス信号がシフトレジスタ16の1ビット目に入力され、そのビットに対応するシフトレジスタに接続されているゲートドライバ出力回路17にロウが入力され、ゲート線22に第1の電源10から電源電位VDD2が供給される。これによってゲート線22に接続されたTFT24全てがオンして、画素電極25への書き込みが可能となる。さらに、所定期間経過後、CLKパルス信号をCLKパルス入力端子19に入力すると、それまで電源電位VDD2を出力していたゲートドライバ出力回路17にハイが入力され、そのゲート線22が接地電位VEEに引き下げられて、各TFT24のゲートがオフする。そして、次の行のゲート線22の駆動が行われる。
【0037】
ソースドライバIC21は、複数のソース線23に接続され、表示画像に対応したデータ電圧を各ソース線23に印加する。ゲートドライバIC15によって駆動されたゲート線22に接続されたTFT24は、ゲートが開いているので、ソース線23に印加されるデータ電圧がTFT24を介して画素電極25に書き込まれる。これにより、画素電極25に対応する液晶の配向を変化させて所望の画像を表示する。
【0038】
次に、図2の回路図を用いて、本実施形態にかかるゲートドライバ出力回路の構成について説明する。このゲートドライバ出力回路17は、図1に示したゲートドライバIC15の出力部となる回路である。
【0039】
ゲートドライバ出力回路17は、図に示されるように、Pchトランジスタ1、抵抗2、Nchトランジスタ3、Nchトランジスタ4を備えている。
【0040】
Pchトランジスタ1のソース電極は、ドライバ電源端子8に接続され、Pchトランジスタ1のドレイン電極は、抵抗2の一方の電極とNchトランジスタ4のドレイン電極とに接続されるとともに、出力端子7としてゲートドライバIC15の外部に引き出されている。上述のように、ドライバ電源端子8には電源電位VDD2である第1の電源10が接続され、出力端子7にはゲート線22が接続される。
【0041】
Nchトランジスタ3のドレイン電極は、抵抗2の他方の電極と接続され、Nchトランジスタ3のソース電極は、接地電位VEEである第2の電源9と接続されている。Pchトランジスタ1のゲート電極は、Nchトランジスタ3のゲート電極に接続されるとともに、ゲートドライバ出力回路17の入力端子5となっている。入力端子5には、シフトレジスタ16が接続され、シフトレジスタ16の出力信号が入力される。
【0042】
Nchトランジスタ4のソース電極は、接地電位VEEである第2の電源9に接続され、Nchトランジスタ4のゲート電極は、SRC端子6としてゲートドライバIC15の外部に引き出されている。例えば、SRC端子6には、外部の制御回路が接続され、制御回路からの制御信号が入力される。
【0043】
Pchトランジスタ1、抵抗2、Nchトランジスタ3は、出力回路となるインバータ回路を構成しており、入力端子5から入力される信号に応じて、電源電位VDD2あるいは接地電位VEEのいずれかを、出力端子7へ出力する。
【0044】
Nchトランジスタ4は、SRC端子6から入力される信号に応じて、出力端子7の出力信号が電源電位VDD2から接地電位VEEへ遷移する速度を変更する。すなわち、Nchトランジスタ4は、出力調整回路であり、出力信号が電源電位VDD2から電源電位VDD2’へ遷移した後に、電源電位VDD2’から接地電位VEEへ遷移させる。
【0045】
本実施形態では、Nchトランジスタ4によって、出力端子7と接地電位VEEとの間の抵抗値を変更し、出力電圧の遷移速度を変更する。Nchトランジスタ4がオフのときは、電源電位VDD2から接地電位VEEへゆっくり遷移し、Nchトランジスタ4がオンのときは、電源電位VDD2から接地電位VEEへ早く遷移する。
【0046】
例えば、Nchトランジスタ3のオン抵抗と抵抗2による抵抗値よりも、Nchトランジスタ4のオン抵抗を小さくしてもよい。また、抵抗2を設けずに、Nchトランジスタ3とNchトランジスタ4のサイズを変えてオン抵抗を変えてもよい。尚、抵抗2とNchトランジスタ3の接続位置を入れ替えてもよい。
【0047】
次に、図3のタイミングチャートを用いて、本実施形態にかかるゲートドライバ出力回路の動作について説明する。図3は、図2に示したゲートドライバ出力回路17における、入力端子5、SCR端子6、出力端子7の信号の波形を示している。
【0048】
入力端子5に入力される波形が、ハイレベルからロウレベルになると、Pchトランジスタ1がオンになり、Nchトランジスタ3がオフとなるため、第1の電源10からPchトランジスタ1を介して出力端子7へ電流が流れ出し、出力端子7へ出力される波形は、接地電位VEEレベルから電源電位VDD2レベルに引き上げられる。このとき、SRC端子6の波形はロウレベルとし、Nchトランジスタ4はオフのままである。
【0049】
次いで、入力端子5に入力される波形が、ロウレベルからハイレベルになると、Pchトランジスタ1がオフになり、Nchトランジスタ3がオンとなるため、出力端子7からNchトランジスタ3を介して第2の電源9へ電流が流れ出し、出力端子7へ出力される波形は、電源電位VDD2レベルから接地電位VEEレベルに遷移する。このときの波形の立ち下がりの傾斜はより緩や、すなわち、よりゆっくりの速度で電圧が遷移する。
【0050】
この遷移の過程で、SRC端子6から入力される波形をロウレベルからハイレベルに切り替えると、Nchトランジスタ4もオンとなり、出力端子7からNchトランジスタ3経由に加えて、Nchトランジスタ4経由でも第2の電源9へ電流が流れ出すため、出力端子7へ出力される波形は急速に接地電位VEEレベルに切り替わる。このときの波形の立ち下がりの傾斜はより急であり、すなわち、より早い速度で電圧が遷移する。電源電位VDD2レベルから電源電位VDD2’レベルへ遷移する時間よりも、電源電位VDD2’レベルから接地電位VEEレベルへ遷移する時間の方が短い。これにより、前段と後段のゲート電圧が同時にオンとなることを防ぎ、表示不良の発生を低減することができる。
【0051】
例えば、出力端子7の波形が、電源電位VDD2’レベルまで降下したときに、SRC端子6から入力される波形をロウレベルからハイレベルに切り替える。この電源電位VDD2’は、電源電位VDD2より低くかつTFTの閾値電圧より高い電圧であり、例えば、TFTの閾値電圧である。出力端子7の波形を切り替えるタイミングは、あらかじめ、電源電位VDD2’レベルとなるタイミングを測定しておくことで、制御回路を設計することができる。
【0052】
このように、ゲートドライバ出力回路の接地電位VEE側のNchトランジスタを分割し、抵抗値を小さくすることにより、立ち下がり速度を変え立下り波形をステップ状波形にしても電源電位VDD2側に電流が逆流せず、ラッチアップを起さない。すなわち、ドライバ出力回路のNch側トランジスタを分割し、低駆動能力トランジスタと高駆動能力トランジスタを配置して、ゲート駆動波形の立下りを二段階に切り替えるようにしたことにより、ゲートドライバ回路の駆動電源電圧端子に印加する電圧を切り替えずに、出力波形をステップ状に切り替えることができる。
【0053】
また、ドライバ回路の電源を動作中に切り替えないため、安定した動作ができる。すなわち、駆動電源電圧は常に一定であるため、負荷からの電流が電源に逆流してラッチアップを発生させることもなく、安定した動作を行うことができる。図7の従来例では外部に電源電位VDD2’の電源回路や選択スイッチ等を設けなければならないが、本実施形態ではこれらの外部回路は不要で、電源は電源電位VDD2だけでよいため、回路構成を単純化でき、ICや表示装置の低コスト化を図ることができる。
【0054】
発明の実施の形態2.
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態2にかかるゲートドライバ回路の構成について説明する。このゲートドライバ出力回路17は、図2と同様に、図1に示したゲートドライバIC15の出力部となる回路である。
【0055】
図4において、1及び3から9までの符号が付された要素は、図2の構成と同じである。本実施形態では、図2の抵抗2の代わりにNchトランジスタ41が挿入されている。
【0056】
Nchトランジスタ41のドレイン電極は、Pchトランジスタ1のドレイン電極に接続され、Nchトランジスタ41のソース電極は、Nchトランジスタ41のドレイン電極に接続されている。Nchトランジスタ41のゲート電極は、ゲートドライバIC15の外部の制御回路から直流電圧をうけて電流能力を調整する調整端子42として機能する。
【0057】
Nchトランジスタ21は調整端子42に入力された直流電圧に応じて抵抗値が変化するが、動作は図2の回路と同様である。尚、Nchトランジスタ41とNchトランジスタ3は入れ替えても同様の動作となる。また、SRC端子6の信号を調整端子42から入力し、Nchトランジスタ4を設けなくてもよい。
【0058】
図2の回路では抵抗値が固定であったため、負荷容量や接続されるTFTの閾値電圧が変わった場合には抵抗値をそのたびごとに設計、製造等を行う必要があった。本実施形態では、抵抗の代わりにNchトランジスタを使い、外部からバイアス電圧を調整端子42に入力することで、Nchトランジスタ41のドレイン・ソース間抵抗を変化させることができ、負荷容量やTFTの違いによって、立下り波形を変更する場合でも、外部入力の電圧を与えることで容易に立下り波形を変更することができる。
【0059】
その他の発明の実施の形態.
上述の例では、ゲートドライバICの外部からSRC端子6に入力される制御信号によって、出力波形を電源電位VDD2’から接地電位VEEへ降下させたが、これに限らず、ゲートドライバ出力回路に同様の制御信号を発生させる制御回路を設けてもよい。例えば、この制御回路によって、出力端子7の出力レベルが電源電位VDD2’になったことを検出してもよい。
【0060】
上述の例では、出力電圧の立ち下がり速度を変更する構成について説明したが、これに限らず、出力電圧の立ち上がり速度を変更する構成としてもよい。例えば、電源電位VDD2側にトランジスタを設けてもよい。
【0061】
上述の例では、液晶表示装置のドライバ回路に設けられる出力回路として説明したが、これに限らず、その他の表示装置、例えば、有機EL表示装置のドライバ回路としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にかかる液晶表示装置の構成図である。
【図2】本発明にかかるゲートドライバICの出力回路の回路図である。
【図3】本発明にかかるゲートドライバICの出力回路のタイミングチャートである。
【図4】本発明にかかるゲートドライバICの出力回路の回路図である。
【図5】従来のゲートドライバICの出力波形を示す図である。
【図6】従来のゲートドライバICの回路図である。
【図7】従来のゲートドライバICの出力回路の回路図である。
【符号の説明】
【0063】
1 Pchトランジスタ
2 抵抗
3,4 Nchトランジスタ
5 入力端子
6 SRC端子
7 出力端子
8 ドライバ電源端子
9 第2の電源
10 第1の電源
15 ゲートドライバIC
16 シフトレジスタ
17 ゲートドライバ出力回路
18 スタートパルス入力端子
19 CLKパルス入力端子
20 スタートパルス出力端子
21 ソースドライバIC
22 ゲート線
23 ソース線
24 TFT
25 画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に設けられた複数の画素を駆動する駆動信号を出力端子から出力する駆動回路であって、
入力信号に基づいて第1の電源から供給される第1の電圧又は第2の電源から供給され前記第1の電圧よりも低い第2の電圧のいずれかを前記出力端子から出力する出力回路と、
前記出力回路の出力信号が前記第1の電圧から前記第2の電圧へ遷移する間に、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整することにより、前記出力回路の出力信号を、前記第1の電圧と前記第2の電圧の間の第3の電圧に低下させた後、前記第2の電圧に遷移させる出力調整回路と、
を備える駆動回路。
【請求項2】
前記出力調整回路は、入力される制御信号に基づいて前記出力回路の出力信号を前記第3の電圧から前記第2の電圧に遷移させる、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1の電圧から前記第3の電圧に遷移する時間よりも、前記第3の電圧から前記第2の電圧に遷移する時間の方が短い、
請求項1又は2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第3の電圧は、前記複数の画素に設けられた薄膜トランジスタの閾値電圧である、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の駆動回路。
【請求項5】
前記出力回路は、前記第1の電源と前記出力端子との間に接続された第1のトランジスタと、前記第2の電源と前記出力端子との間に接続された第2のトランジスタとを備え、
前記出力調整回路は、前記第2の電源と前記出力端子との間に接続された第3のトランジスタを備え、
前記出力調整回路は、前記第3のトランジスタに入力される制御信号により、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第3のトランジスタは、前記第2のトランジスタと並列に接続されている、
請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記第2のトランジスタよりも前記第3のトランジスタのオン抵抗が小さい、
請求項5又は6に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記第2のトランジスタと直列に接続された抵抗素子をさらに備える、
請求項5乃至7のいずれか一つに記載の駆動回路。
【請求項9】
前記抵抗素子は、入力される信号に応じて抵抗値が可変する第4のトランジスタである、
請求項8に記載の駆動回路。
【請求項10】
複数の画素と前記複数の画素に信号を伝送する複数の配線とを有する表示パネルと、出力端子から前記複数の配線を介して前記複数の画素に駆動信号を出力する駆動回路と、を備える表示装置であって、
前記駆動回路は、
入力信号に基づいて第1の電源から供給される第1の電圧又は第2の電源から供給され前記第1の電圧よりも低い第2の電圧のいずれかを前記出力端子から出力する出力回路と、
前記出力回路の出力信号が前記第1の電圧から前記第2の電圧へ遷移する間に、前記出力端子と前記第2の電源との間の抵抗値を調整することにより、前記出力回路の出力信号を、前記第1の電圧と前記第2の電圧の間の第3の電圧に低下させた後、前記第2の電圧に遷移させる出力調整回路と、を備える、
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−17815(P2006−17815A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192987(P2004−192987)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】