説明

駆動装置及び撮像装置

【課題】 部品点数の削減、安定した駆動、小型化、安価を実現可能とした駆動装置を提供する。
【解決手段】 駆動装置は、着磁部1a〜1hを有するマグネット1、コイル2、ボビン3、マグネット1の外周面に対向配置される櫛歯形状の外側磁極部4a〜4dを有するステータ4、コイル2により励磁されるロータ5、出力部材6、コイル2に給電するFPC7を備える。ロータ5の小径部5bを、ラジアル方向の保持手段としてステータ4の回転保持部4eに嵌合させ、スラスト方向の保持手段としてボビン3の受け部3eに当接させる。FPC7の回転保持部7eにより、ロータ5の小径部5cを回転可能に保持すると共にロータ5の軸方向の位置規制を行う。出力部材6の駆動ピン6aは、マグネット1の回転に伴いボビン3の案内溝3d内で回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化等を可能とした円筒形状の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズの一部に組み込んだ絞り機構を開閉させることでシャッタ機能を作動させる構造のレンズシャッタカメラがある。従来のレンズシャッタカメラのシャッタ装置としては図8に示すものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来例に係るレンズシャッタカメラのシャッタ装置の構成を示す分解斜視図である。
【0004】
図8において、シャッタ装置は、マグネット101、駆動レバー102、コイル103、ステータ104、105、シャッタ羽根106、107、地板108、前地板109、後地板110を備えている。
【0005】
駆動レバー102は、駆動ピン102aを備えており、永久磁石であるマグネット101に固着され、マグネット101と一体的に回転する。ステータ104、105は、軟磁性材料から形成され、コイル103により励磁される。ステータ104とステータ105は、各々の接合部104aと接合部105aにおいて接合されており、磁気回路上一体となっている。コイル103への通電を行うことにより、ステータ104、105が励磁され、マグネット101は所定の角度内を回転駆動する。
【0006】
シャッタ羽根106、107は、各々、穴部106a、107aを介して地板108のピン108c、108bへ回転可能に取り付けられる。駆動レバー102の駆動ピン102aがシャッタ羽根106、107の各々の長穴106b、107bに摺動可能に嵌合し、マグネット101と共に駆動レバー102が回転することで、シャッタ羽根106、107は穴部106a、107aを中心として回転駆動される。これにより、地板108の開口部108aを開閉する。前地板109は、シャッタ羽根106、107を地板108との間で移動可能に保持する。後地板110は、ステータ104、105を保持し、マグネット101を回転可能に保持する。
【0007】
上記シャッタ装置は、その厚みを薄くすることはできるが、コイル103やステータ104、105が地板108上において多くの範囲を占めてしまう。この点に鑑み、本出願人により図9に示す駆動装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図9は、従来例に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【0009】
図9において、マグネット201、コイル202、ボビン203、ステータ204、ロータ205、軸受206、カバー207を備えている。
【0010】
マグネット201は、円筒形状に形成され、外周面がN極とS極が交互に4極に着磁されている(201a、201b、201c、201d)。コイル202は、ボビン203に巻き付けられており、マグネット201と同軸で軸方向に重なる位置に配置される。ステータ204は、マグネット201の外周面に対向し、歯形状の外側磁極部204a、204bが形成されている。
【0011】
ロータ205は、軟磁性材料から形成され、小径部205aがコイル202の内径部に挿入され、大径部205dがマグネット201の内径部に固定される。コイル202に通電すると、マグネット201の内径部に固定された大径部205dが内側磁極部として作用する。ロータ205の先端部205bは軸受206に支持される。カバー207は、駆動装置の各部を覆う部材である。
【0012】
上記駆動装置は、コイル202への通電方向を切り換えることで、ステータ204の外側磁極部204a、204b及びロータ205の内側磁極部205bの極性を切り換え、マグネット201を所定の位置まで往復回転するものである。往復回転するマグネット201の回転規制を、カバー207に設けられた案内溝207aにロータ205の駆動ピン205cが当接することで行っている。
【0013】
また、上記駆動装置は、コイル202に通電することで発生した磁束が外側磁極部から対向する内側磁極部へ、或いは内側磁極部から対向する外側磁極部へと流れ、それらの間に位置するマグネット201に効果的に作用する。また、外側磁極部と内側磁極部との間の距離は、マグネット201の厚さと、マグネット201と外側磁極部の隙間分のみでよいので、磁気回路の抵抗をできるだけ小さくしている。磁気回路の抵抗が小さいほど、少ない電流で多くの磁束を発生させることができ、出力が向上する。
【特許文献1】特開平10−010604号公報
【特許文献2】特開2004−320828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記特許文献2に開示された駆動装置においては、ロータ205の回転規制を行う案内溝207aとマグネット201の回転保持部とを設けたカバー207が必要である。このため、例えばシャッタ装置などにこの駆動装置を用いた場合、シャッタ地板の上にカバー部品が重なることになり、軸方向高さが高いものになる。
【0015】
また、軸方向高さを低くするために、直接、シャッタ地板にロータの回転規制用の案内溝やマグネットの回転保持部を設け、該シャッタ地板でロータの回転保持を行うようにすることも可能である。しかし、その場合、シャッタ地板に組み付けた後でしか、駆動装置の組み立て不良を検知することができず、生産性が悪いものになる。
【0016】
また、コイル202への給電を行うために、フレキシブルプリント基板などを用いるのが一般的であるが、フレキシブルプリント基板の構造上、該基板が円筒形状の駆動装置の外側に張り出すため、駆動装置の小型化の妨げとなる。
【0017】
更に、カバー207はステータ204と所定の回転位相で固定される必要があるが、カバー207を樹脂などで形成した場合には、接着などの工程が必要になる。他方、カバー207を金属で形成した場合には、レーザ溶接など工程が容易な固定方法も考えられる。しかし、その場合、金属性のカバー207と、軟磁性材料から形成されているロータ205、軸受(回転保持部)206において金属同士の接触となるので、摩擦が大きくなり、駆動装置の出力を下げてしまう可能性がある。
【0018】
本発明の目的は、部品点数の削減、安定した駆動、小型化、コスト低減を実現可能とした駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的を達成するために、本発明の駆動装置は、外周面が周方向に異なる極に交互に着磁された円筒状のマグネットと、前記マグネットと同軸で且つ前記マグネットの軸方向の側に配置されるコイルと、前記コイルにより励磁され、前記マグネットの外周面に対向して配置される櫛歯形状の外側磁極部と、前記コイルにより励磁され、軸方向一方の部分が前記コイルの内側に挿入されると共に、軸方向他方の部分が前記マグネットの内径部に固定されるロータと、前記コイルに給電を行うと共に、前記ロータを回転可能に保持するプリント基板とを備えることを特徴とする。
【0020】
上述の目的を達成するために、本発明の駆動装置は、外周面が異なる極に着磁されたマグネット部を有する円筒状のマグネットロータと、前記マグネットロータの外周面に対向して配置されるステータと、前記ステータに固定され、前記ステータを励磁するコイルと、前記コイルに給電を行うと共に、前記マグネットロータを回転可能に保持するプリント基板とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プリント基板により、ロータを回転可能に保持しロータの軸方向の位置規制を行うため、部品点数及びコストを増加させずに、安定した駆動を実現することが可能となる。また、プリント基板により、マグネットロータを回転可能に保持しマグネットロータの軸方向の位置規制を行うため、部品点数を増加させず安価に、安定した駆動を実現することが可能となる。これにより、部品点数の削減、安定した駆動、小型化、コスト低減を実現した駆動装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。図2は、駆動装置を組み立てた状態における軸方向の構成を示す断面図である。図3は、駆動装置が後述の第1の状態である場合の図2の矢視A−A線に沿う断面図であり、図4は、駆動装置が後述の第2の状態である場合の図2の矢視A−A線に沿う断面図である。
【0024】
図1乃至図4において、駆動装置は、マグネット1、コイル2、ボビン3、ステータ4、ロータ5、出力部材6、フレキシブルプリント基板(以下FPCと略称)7を備えている。
【0025】
マグネット1は、円筒形状に形成されており、その外周面を周方向にn分割(本実施の形態では8分割)して交互にS極とN極に着磁された着磁部1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1hを備えている。図3に示すように、着磁部1a、1c、1e、1gは、外周面がN極に着磁され、着磁部1b、1d、1f、1hは、外周面がS極に着磁されている。本実施の形態では、マグネット1の着磁極数を8極とした場合を例に挙げているが、2極以上であれば何極でも構わない。マグネット1は、その内径部にロータ5が固着されるものであり、ロータ5の回転に伴い回転する。尚、図1に示すマグネット表面の細い実線は着磁部1a〜1hの境界を示している。
【0026】
コイル2は、円筒形状に形成されており、ボビン3に巻き付けられている。コイル2は、マグネット1と同軸で且つマグネット1の軸方向に間隙をおいて隣り合う位置に配置される。また、コイル2は、その外径がマグネット1の着磁部1a〜1hの外径と略同じ寸法に形成されている。
【0027】
ボビン3は、絶縁体から形成されており、コイル2が巻回された鍔部に、端子台3a、3b、外壁3c、案内溝3d、受け部3e、嵌合溝3fが付設されている。端子台3a、3bには、コイル2の端末がからげられる。外壁3cは、上記鍔部の周方向に間隔をおいて且つ軸方向に延出されると共に、組み立てた際にマグネット1と軸方向の範囲で重なる位置に4箇所設けられている。また、外壁3cの内径は、マグネット1の外径よりも大きく形成されている。これにより、組み立て後にマグネット1が露出することがないように構成される。
【0028】
更に、外壁3cは、組み立てた際に後述のステータ4の外側磁極部の間に位置する形状を有すると共に、案内溝3dが設けられている。案内溝3dは、後述の出力部材6の駆動ピン6aと当接することで、駆動ピン6aが所定角度範囲内でしか往復回転できないように規制する。受け部3eは、組み立てた際にロータ5の小径部5bに当接することでスラスト方向保持部としての機能を果たす。嵌合溝3fは、上記4箇所の外壁3cの間に位置するものであり、後述のステータ4の外側磁極部が嵌合される。
【0029】
ステータ4は、軟磁性材料から形成されており、お碗形状の外筒の軸方向に延出されたn/2個(本実施の形態では4個)の櫛歯形状の外側磁極部4a、4b、4c、4dと、回転保持部4eを備えている。外側磁極部4a〜4dは、720/n度(本実施の形態では90度)ずつずれた位置に配設されており、組み立てた際にマグネット1の外周面に所定の隙間を持って対向するように構成されている。回転保持部4eは、組み立てた際にロータ5の小径部5bに嵌合することでラジアル方向保持部としての機能を果たす。
【0030】
ステータ4は、外側磁極部4a〜4dがボビン3の外壁3cの間に設けられた嵌合溝3fに嵌合するように組み立てられる。このようにすることで、ボビン3に対しステータ4の回転方向の位相が決まり、これに伴い、ボビン3に設けられた案内溝3dとステータ4との位相も決まることになる。この位相関係は駆動装置の性能に大きく関わるので、位置決め精度は重要である。この位置決めはボビン3のみ(1部品)で行っているので、位置決め精度のよいものになる。
【0031】
ロータ5は、軟磁性材料から形成されており、内側磁極部5a、小径部5b、小径部5cを備えている。内側磁極部5aは、マグネット1の内径部に挿入され固定される。小径部5bは、コイル2が巻回されたボビン3の内側の空間部に挿入されると共に、ステータ4の回転保持部4eに回転可能に保持される。小径部5cは、出力部材6の穴部6bに挿入されると共に、FPC7の回転保持部7eに摺動可能に保持される。
【0032】
ロータ5がステータ4の回転保持部4eを介してステータ4と接触することで、コイル2へ通電した際、ロータ5とステータ4が磁気的に接続されることになり、磁気抵抗の小さい構成とすることができる。また、ロータ5が内側磁極部5aにおいてマグネット1の内径部に固定されることで、ステータ4の外側磁極部4a〜4dと対向する内側磁極部5aとしてマグネット1に作用する。コイル2への通電方向を切り換えることにより、内側磁極部5aは、ステータ4の外側磁極部4a〜4dとは反対の極に励磁される。
【0033】
出力部材6は、非磁性体から形成されており、駆動ピン6a、穴部6bを備えている。出力部材6は、マグネット1の端面に固着されると共に、マグネット1の回転に伴い往復回動する。駆動ピン6aと不図示の被駆動部材を係合させることで、駆動装置の出力を取り出すことができる。駆動ピン6aは、ボビン3の案内溝3d内でのみ回動可能に構成されている。駆動ピン6aは、例えば樹脂モールドなどで形成された部材であるが、駆動ピン6aをマグネット1と一体で成形する構成としても構わないし、また、駆動ピン6aをロータ5と一体で成形する構成としても構わない。穴部6bには、ロータ5の小径部5cが挿入される。
【0034】
尚、出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの径方向一方の端部に当接している状態を「第1の状態」と定義し、出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの径方向他方の端部に当接している状態を「第2の状態」と定義する。
【0035】
FPC7は、コイル2に給電を行うものであり、給電用のパターン部(不図示)、係合部7a、7b、7c、7d、回転保持部7eを備えている。パターン部とボビン3の端子部3a、3bとを当接させ半田付けすることで、FPC7とコイル2が電気的に接続される。また、FPC7は、ボビン3の外壁3cを覆う大きさを有すると共に外壁3cの上端部に重ねた状態で配置されるので、組み立て後にマグネット1の上面が外部に露出しないよう構成される。係合部7a、7b、7c、7dには、それぞれ、ステータ4の外側磁極部4a、4b、4c、4dの先端部が係合される。
【0036】
また、係合部7a、7b、7c、7dの周辺には、FPC7とステータ4とを半田付けにより固定するためのパターンが設けられており、FPC7とステータ4は半田付けにより固定される。回転保持部7eは、FPC7の円板部の中央に設けられており、ロータ5の小径部5cを摺動(回転)可能に保持すると共に、ロータ5の軸方向の位置規制部としても作用する。尚、本実施の形態では、駆動装置の軸方向長さを短くするために、比較的厚みの薄いフレキシブルプリント基板を用いているが、ハードプリント基板を用いても構わない。
【0037】
駆動装置においてロータ5を回転可能に保持するために、ロータ5の小径部5bを、ラジアル方向の保持手段としてステータ4の回転保持部4eに嵌合させ、スラスト方向の保持手段としてボビン3の受け部3eに当接させる構成としている。ロータ5とステータ4は、上述したように両者共に軟磁性材料から形成され磁路として利用しているので、ロータ5とステータ4が接触していると磁気吸着を引き起こす。
【0038】
ロータ5とステータ4は、磁気吸着の観点からはできるだけ接触していない方がよいが、磁気回路の磁気抵抗を下げるためには接触している必要があり、磁気吸着分のトルクダウンより、磁気抵抗が下がることによるトルクアップの方が勝るようにすることが望ましい。そこで、ラジアル方向においては、ロータ5とステータ4とが接触することで、ロータ5の内側磁極部5aとステータ4の外側磁極部4a〜4dとの磁気的接続を行う。同時に、スラスト方向においては、ロータ5とステータ4とは接触せず、ロータ5を非磁性体であるボビン3の受け部3eに当接させることでトルクアップに貢献している。
【0039】
また、FPC7の回転保持部7eの周辺部は、パターンなどが露出せず例えばポリイミド材などで覆われている状態にしている。これにより、FPC7の回転保持部7eでロータ5の小径部5cを保持する際においても、磁気吸着などの影響を受けず、摺動摩擦の少ないものとなっている。
【0040】
駆動装置を以上のような構成にしたことにより、ステータ4の外側磁極部4a〜4dとロータ5の内側磁極部5aとによりマグネット1を挟む磁路を形成するので、磁気抵抗が少なく、高出力な駆動装置を実現している。また、上記特許文献2で開示された駆動装置と比較し、軸方向長さが短く且つ部品点数も削減した安価な駆動装置を実現している。
【0041】
次に、本実施の形態の駆動装置の駆動の仕組みについて図3及び図4を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図3に示す状態(出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの一端に当接している第1の状態)からコイル2に通電を行い、ステータ4の外側磁極部4a〜4dをS極に、ロータ5の内側磁極部5aをN極にそれぞれ励磁する。これに伴い、マグネット1は時計周りに回転し、出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの他端に当接することで回転を止められ、図4に示す状態(出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの他端に当接した第2の状態)となる。
【0043】
次に、図4に示す状態からコイル2に逆方向の通電を行い(通電を反転)、ステータ4の外側磁極部4a〜4dをN極に、ロータ5の内側磁極部5aをS極にそれぞれ励磁する。これに伴い、マグネット1は反時計周りに回転し、出力部材6の駆動ピン6aがボビン3の案内溝3dの一端に当接することで回転を止められ、再び図3に示す状態に戻る。
【0044】
本実施の形態の駆動装置は、上記のようにコイル2への通電方向を切り換えることにより、所定角度内で往復回転させる駆動、例えば撮像装置の光量調節部材の駆動などに好適な駆動装置となる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、FPC7の回転保持部7eにより、ロータ5の小径部5cを回転可能に保持すると共にロータ5の軸方向の位置規制を行うため、部品点数及びコストを増加させずに、安定した駆動を実現することが可能となる。また、ステータ4の外側磁極部4a〜4dとロータ5の内側磁極部5aによりマグネット1を挟む磁路を形成するため、軸方向長さを短く形成でき、磁気抵抗が少なく高出力を実現することが可能となる。即ち、部品点数の削減、安定した駆動、小型化、コスト低減を実現した駆動装置を提供することが可能となる。
【0046】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。図6は、駆動装置が第1の状態である場合の断面図であり、図7は、駆動装置が第2の状態である場合の断面図である。
【0047】
図5乃至図7において、駆動装置は、マグネットロータ11、コイル12、ボビン13、ステータ14、FPC15を備えている。尚、図6及び図7に16aで示すものはシャッタ地板の案内溝である。
【0048】
マグネットロータ11は、マグネットとロータを一体化したものであり、外周面を周方向に2分割してS極とN極にそれぞれ着磁されたマグネット部11a、11b(図6、図7参照)、軸部11c、11d、駆動ピン11eを備えている。マグネットロータ11は、軸部11c、11dにより回転可能に支持される。尚、図5では、軸部11cはマグネットロータ11の上部に配設され、軸部11dはマグネットロータ11の下部に配設されている。駆動ピン11eは、マグネット部11a、11bに対し一体的に配設されており、マグネットロータ11の回転に伴い往復動作する。これにより、マグネットロータ11の回転駆動力を不図示の被駆動部材に伝達し、被駆動部材を駆動する。
【0049】
コイル12は、ボビン13に巻き付けられており、後述のステータ14の腕部14bにボビン13を介して差し込まれることで固定される(図6、図7参照)。
【0050】
ボビン13は、絶縁体から形成されており、コイル12が巻回される巻回部の長手方向両側に、端子台13a、13bが付設されている。ボビン13の巻回部は、後述のステータ14の腕部14bが嵌合可能な空間部を有する。端子台13a、13bには、コイル12の端末がからげられる。
【0051】
ステータ14は、軟磁性材料から形成されると共にコの字形状に形成されており、腕部14a、14bを備えている。腕部14bには、コイル12が巻回されたボビン13が嵌合される。ステータ14は、腕部14a、14bの端部がマグネットロータ11の外周面と若干の間隙をおいて配置される。コイル12に通電を行うと、腕部14a、14bが、それぞれ反対の極(図6の状態ではN極とS極、図7の状態ではS極とN極)に励磁される。腕部14a、14bの端部がマグネットロータ11の外周面に対向しているので、マグネットロータ11に磁束が作用し、マグネットロータ11が往復回転動作する。
【0052】
FPC15は、コイル12に給電を行うものであり、給電用のパターン部(不図示)、係合部15a、15b、回転支持部15cを備えている。FPC15は、マグネットロータ11の外周を覆う大きさに形成されている。これにより、組み立て後にマグネットロータ11の上面が外部に露出しないように構成される。パターン部とボビン13の端子台13a、13bとを半田付けすることで、FPC15とコイル12が電気的に接続されると共に、FPC15がボビン13に固定される。
【0053】
回転支持部15cは、マグネットロータ11の軸部11cを摺動(回転)可能に保持すると共に、マグネットロータ11の軸方向の位置規制部としても作用する。尚、本実施の形態では、駆動装置の軸方向長さを短くするために、比較的厚みの薄いフレキシブルプリント基板を用いているが、ハードプリント基板を用いても構わない。
【0054】
FPC15は、マグネットロータ11の軸受の役割を果たすと共に、マグネットロータ11の上面を覆う形状になっているので、マグネットロータ11の上面が露出することがなく、駆動装置を保護し、軸受部を設けたカバー部材が不要となる。更に、FPC15は、薄く成形することが可能であるので、駆動装置の薄型化に貢献する。更に、FPC15は、例えばポリイミド材などで成形すれば摺動摩擦を非常に小さくすることができるので、マグネットロータ11の駆動性能が良いものとなる。
【0055】
駆動装置を以上のような構成にしたことにより、駆動装置の回転軸方向高さは、マグネットロータ11の軸方向長さとFPC15の厚み分で済むので、上記特許文献1で開示されたシャッタ装置と比較し、回転軸方向高さが低い駆動装置を実現している。
【0056】
次に、本実施の形態の駆動装置の往復駆動の仕組みについて図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。
【0057】
図6に示す状態(マグネットロータ11の駆動ピン11eが案内溝16aの一端に当接している第1の状態)からコイル12に通電を行い、ステータ14の腕部14aをS極に、腕部14bをN極にそれぞれ励磁する。これに伴い、マグネットロータ11は時計方向に回転し、その途中で駆動ピン11eがシャッタ地板の案内溝16aの他端に当接することで回転を止められ、図7に示す状態(マグネットロータ11の駆動ピン11eが案内溝16aの他端に当接した第2の状態)となる。
【0058】
次に、図7に示す状態からコイル12に逆方向の通電を行い(通電を反転)、ステータ14の腕部14aをS極に、腕部14bをN極にそれぞれ励磁する。これに伴い、マグネットロータ11は反時計方向に回転し、その途中で駆動ピン11eがシャッタ地板の案内溝16aの一端に当接することで回転を止められ、再び図6に示す状態に戻る。
【0059】
本実施の形態の駆動装置は、上記のようにコイル12への通電方向を切り換えることにより、マグネットロータ11が正逆方向への回転を行い、マグネットロータ11の回転動作に追従する駆動ピン11eも往復動作する。これにより、上記特許文献1で開示されたシャッタ装置のようにシャッタ羽根の駆動などを行うことができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、FPC15の回転支持部15cにより、マグネットロータ11の軸部11cを回転可能に保持すると共にマグネットロータ11の軸方向の位置規制を行うため、部品点数及びコストを増加させずに、安定した駆動を実現することが可能となる。また、駆動装置の回転軸方向高さは、マグネットロータ11の軸方向長さとFPC15の厚み分で済むため、回転軸方向高さが低い駆動装置を実現することが可能となる。即ち、部品点数の削減、安定した駆動、小型化、コスト低減を実現した駆動装置を提供することが可能となる。
【0061】
[他の実施の形態]
上記第1及び第2の実施の形態では、駆動装置単体について説明したが、本発明は、駆動装置を搭載した撮像装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の駆動装置を組み立てた状態における軸方向の構成を示す断面図である。
【図3】図1の駆動装置が第1の状態である場合の図2の矢視A−A線に沿う断面図である。
【図4】図1の駆動装置が第2の状態である場合の図2の矢視A−A線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5の駆動装置が第1の状態である場合の断面図である
【図7】図5の駆動装置が第2の状態である場合の断面図である。
【図8】従来例に係るレンズシャッタカメラのシャッタ装置の構成を示す分解斜視図である。
【図9】従来例に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 マグネット
2 コイル
3 ボビン
3d 案内溝
4 ステータ
4a〜4d 外側磁極部
5 ロータ
5a 内側磁極部
6 出力部材
6a 駆動ピン(駆動部材)
7 FPC(プリント基板)
11 マグネットロータ
11e 駆動ピン(駆動部材)
12 コイル
13 ボビン
14 ステータ
14a、14b 腕部
15 FPC(プリント基板)
16a シャッタ地板の案内溝(非駆動部材の案内溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が周方向に異なる極に交互に着磁された円筒状のマグネットと、
前記マグネットと同軸で且つ前記マグネットの軸方向の側に配置されるコイルと、
前記コイルにより励磁され、前記マグネットの外周面に対向して配置される櫛歯形状の外側磁極部と、
前記コイルにより励磁され、軸方向一方の部分が前記コイルの内側に挿入されると共に、軸方向他方の部分が前記マグネットの内径部に固定されるロータと、
前記コイルに給電を行うと共に、前記ロータを回転可能に保持するプリント基板とを備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記プリント基板は、
前記マグネットに対して前記コイルの配置側とは反対側に配置され、
前記ロータを回転可能に保持すると共に前記ロータの軸方向の位置規制を行う回転保持部と、前記外側磁極部の先端部に係合する係合部とを備えることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記マグネットの回転に伴い、前記コイルが巻回されるボビンの径方向に沿って配設された案内溝内で往復動作する駆動部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項4】
外周面が異なる極に着磁されたマグネット部を有する円筒状のマグネットロータと、
前記マグネットロータの外周面に対向して配置されるステータと、
前記ステータに固定され、前記ステータを励磁するコイルと、
前記コイルに給電を行うと共に、前記マグネットロータを回転可能に保持するプリント基板とを備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
前記プリント基板は、
前記マグネットロータを回転可能に保持すると共に前記マグネットロータの軸方向の位置規制を行う回転保持部と、前記コイルが巻回されるボビンに係合する係合部とを備えることを特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項6】
前記マグネットロータの回転に伴い、非駆動部材に配設された案内溝内で往復動作する駆動部材を更に備えることを特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項7】
前記プリント基板は、フレキシブルプリント基板、ハードプリント基板を含む群から選択されることを特徴とする請求項1又は4記載の駆動装置。
【請求項8】
前記請求項1乃至7の何れかに記載の駆動装置が搭載されることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−333610(P2006−333610A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152585(P2005−152585)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】