説明

駆動軸減速装置

【課題】耐久性の高い駆動軸減速装置を提供する。
【解決手段】駆動軸減速装置において、遊星歯車機構を介して駆動軸2の回転をホイールハブ11に伝達する。遊星歯車機構における第1リングギヤ5に設けたリングギヤハブ15を、アクスルハウジング20に取り付けたベアリングホルダ23に分割リング18を介して引っ掛ける。これにより、第1リングギヤ5の軸方向への移動を規制する。また、リングギヤハブ15に設けた軸部25をアクスルハウジング20の軸端部21の内周面によって、回転不能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構を介して駆動軸の回転を被駆動体に伝達する駆動軸減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている遊星歯車機構を設けた駆動軸減速装置としては、特許文献1に記載された独立懸架アクスルの構造などが提案されている。特許文献1に記載された独立懸架アクスルの構造は、図6に示すような断面構成を有している。図6に示すように、図示せぬ車体フレームによって独立懸架されているアクスルハウジング41には、一端がユニバーサルジョイント42に連結した駆動軸43が、コロ軸受44及び円筒ブシュ45によって2点で支持されている。
【0003】
駆動軸43の端部にはサンギヤ46を有するサンギヤ軸47が固定されている。サンギヤ46には遊星ギヤ50が噛合しており、同遊星ギヤ50はキャリア51に支承された遊星ギヤ軸52に軸支されている。遊星ギヤ50は、アクスルハウジング41に固着されたリングギヤ53に噛合している。
【0004】
リングギヤ53にはラジアル方向に延設したリングギヤハブ53aが取り付けられ、同リンクギヤハブ53aには軸方向に延設した軸部53bが形成されている。前記軸部53bは、アクスルハウジング41の外周部にスプライン結合により固着されている。キャリア51は、アクスルハウジング41に回転可能に装着されたホイールハブ54と結合している。
【0005】
リングギヤ53の軸部53bは、アクスルハウジング41の軸部の外周部にスプライン結合して、アクスルハウジング41に回転不能に装着されている。リングギヤ53の軸方向への移動規制は、アクスルハウジング41の端部に取り付けた係止片56によって行われている。ホイールハブ54を支承している一方の軸受55bは、リングギヤ53の軸部53bの外周部に配設されている。
【0006】
ホイールハブ54は、前記アクスルハウジング41の外周部と前記軸部53bの外周部とにそれぞれ配設した一対の軸受55a、55bによって支承されている。ホイールハブ54には図示せぬ車輪を装着することができる。駆動軸43の回転は、遊星歯車機構により減速されてホイールハブ54の回転として伝達され、ホイールハブ54に装着した車輪を減速回転することができる。
【0007】
駆動軸43は、コロ軸受44と円筒ブシュ45とによって2点で支持されているため、ユニバーサルジョイント42にラジアル方向の力が加わっても、サンギヤ軸47にはその影響を受けることはなく構成されている。また、サンギヤ軸47は駆動軸43に対して円筒形継手48を介してスプライン係合している。このため、サンギヤ46は浮動した状態に配設され、遊星ギヤ50との歯当たりは良好に保たれている。
【特許文献1】特開平8−40095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたような独立懸架アクスルの構造では、軸部53bの外周部に軸受55bが配設されているため、アクスルハウジング41とホイールハブ54との間には、ホイールハブ54を支承する軸受55bと、リングギヤ53の軸部53bとが配設された構成となっている。このため、軸受55bがホイールハブ54からの荷重を受けて変形すると、軸部53bとアクスルハウジング41との間のスプライン結合部においても変形荷重を受けてしまうことになる。
【0009】
軸部53bとアクスルハウジング41との間のスプライン結合部において変形荷重を受けると、スプライン結合部において接触している2面間には相対的な繰り返しによる微小な滑りが発生する。この微小な滑りによって前記2面間において磨耗が生じてしまうことになる。即ち、微小な滑りにより磨耗する現象、フレッチングが発生し易くなる。フレッチングの発生により、スプライン部での耐久性が低下してしまう問題があった。
【0010】
また、ホイールハブ54は、リングギヤ53の軸部53bの外周部に軸受55bを介して支承されているので、ホイールハブ54の外周径が大きくなってしまう問題もあった。更に、リングギヤ53の軸方向への移動を規制する係止片56を、アクスルハウジング41の端部とサンギヤ46との間の空間部に配設しているため、係止片56の肉厚を十分に取ることができず、係止片56としての強度を十分に確保することが難しかった。
【0011】
本発明は上記の問題点を解決することを課題として、耐久性の高い駆動軸減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1発明では、駆動軸ハウジングにベアリングを介して回転自在に支持された被駆動体と、前記駆動軸ハウジング内を貫通し、前記被駆動体に回転を伝達する駆動軸と、前記駆動軸と前記被駆動体との間に配設され、前記駆動軸の回転を減速して前記被駆動体に伝達する遊星歯車機構と、を備え、前記遊星歯車機構におけるサンギヤが、一体回転可能に前記駆動軸に支持され、前記遊星歯車機構における遊星ギヤを支持するキャリアが、一体回転可能に前記被駆動体に支持され、前記遊星歯車機構におけるリングギヤが、回転不能に前記駆動軸ハウジングに支持され、前記リンクギヤが、前記リンクギヤからラジアル方向に延設したリングギヤハブと前記リングギヤハブから軸方向に延設した軸部とを有してなる駆動軸減速装置において、前記リングギヤの軸部が、前記駆動軸ハウジングの軸部の内周面によって回転不能に支持され、前記駆動軸ハウジングに取着され、前記ベアリングの軸方向への保持を行うベアリングホルダと、前記リングギヤの前記軸方向への移動を、前記ベアリングホルダとの間で規制する係止手段と、を備えてなることを最も主要な特徴となしている。
【0013】
第2発明では、係止手段として分割リングを用いた構成を特定したことを主要な特徴となしている。また、第3発明では、第2発明における分割リングの構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【0014】
第4発明では、他の係止手段の構成を特定したことを主要な特徴となしている。また、第5発明では、第4発明に分割型のストッパ部材を更に用いたことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、被駆動体を支持するベアリングを駆動軸ハウジングに配設することができ、しかも、リングギヤの軸部は前記ベアリングを支持することなく、駆動軸ハウジングの内周面側に回転不能に支持されている。このため、被駆動体からの荷重をベアリングが受けても、その荷重は駆動軸ハウジングによって支えることができる。
【0016】
従って被駆動体からの荷重によって、リングギヤの軸部と駆動軸ハウジングの内周面側との間に変形荷重が作用することが防止できる。即ち、リングギヤの軸部と駆動軸ハウジングの内周面側との間でのフレッチングの発生を防止することができる。これにより、リングギヤの軸部と駆動軸ハウジングの内周面側との結合部における耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、ベアリングの軸方向への保持を行うベアリングホルダにはリングギヤの回転力が伝わらない。このため、リングギヤの回転力によってベアリングホルダが緩むことがない。更に、リングギヤハブを駆動軸ハウジングの内周面で支持しているので、駆動軸減速装置のラジアル方向における外形寸法や軸方向における長さを小さくすることができる。これらにより、駆動軸減速装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る駆動軸減速装置の実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本発明に係る駆動軸減速装置の構成を示す。図2に、図1のP部の要部拡大図を示している。図3には、本発明に係る駆動軸減速装置の分割リングの構成を示している。
【0019】
以下の説明では、駆動軸減速装置として独立懸架アクスル装置を例にとって説明する。独立懸架アクスル装置では、駆動軸ハウジングとしてアクスルハウジングが用いられ、被駆動体としてホイールハブが用いられている。本願発明の駆動軸減速装置を良好に適用することができるものとしては、独立懸架アクスル装置以外にも、トランスミッション装置などがある。このため、本願発明の駆動軸減速装置の構成としては以下で説明する構成に限定されるものではなく、多様な変形が可能である。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように、駆動軸減速装置1は2段減速の遊星歯車装置を備えている。駆動軸減速装置1としては、1段減速の遊星歯車装置を備えた構成又は多段減速の遊星歯車装置を備えた構成とすることは可能である。
【0021】
駆動軸ハウジングとしてアクスルハウジング20内には、ディファレンシャルギヤ等により分岐された駆動軸2が配設されている。駆動軸2とホイールハブ11との間には2段変速の遊星歯車装置38が配設されている。
【0022】
遊星歯車装置38は、駆動軸2の先端に設けた第1サンギヤ3と、アクスルハウジング20との間でスプライン結合部16により回転不能に支持された第1リングギヤ5と、第1サンギヤ3と第1リングギヤ5との間に配設した第1遊星ギヤ4とによって1段目の変速を行っている。第1遊星ギヤ4を支承した第1キャリア6の回転は、駆動軸2の前方側に配設した第2サンギヤ7に伝達している。
【0023】
また、遊星歯車装置38は、第2サンギヤ7と、第1リングギヤ5とスプライン結合部17により回転不能に支持された第2リングギヤ9と、第2サンギヤ7と第2リングギヤ9との間に配設した第2遊星ギヤ8と、第2遊星ギヤ8を支承しホイールハブ11に結合した第2キャリア10とによって、2段目の変速を行っている。第2キャリア10は、リング12を介してホイールハブ11と一体に結合している。
【0024】
遊星歯車機構38として、2段変速の遊星歯車機構を例示してあるが、遊星歯車機構としては、多段変速の遊星歯車機構を用いることも1段変速の遊星歯車機構を用いることもできる。
【0025】
ホイールハブ11はその外周部に車輪を装着し、アクスルハウジング20との間に配設した一対のベアリング22により回転自在に支持されている。尚、図1においては一方のベアリング22のみを示し、他方のベアリングについては図示していない。
【0026】
駆動軸2の回転は、第1サンギヤ3から遊星歯車装置38に伝達される。第1リングギヤ5はアクスルハウジング20によって回転不能に固定されているので、第1サンギヤ3の回転によって第1遊星ギヤ4は自転と公転とを行う。第1遊星ギヤ4の公転によって第1キャリア6は、駆動軸2の回転を減速した状態で回転する。
【0027】
第1キャリア6の回転により、第2サンギヤ7が回転する。第2リングギヤ9はアクスルハウジング20によって回転不能に固定された第1リングギヤ5に固定されているので、第2サンギヤ7の回転によって第2遊星ギヤ8は自転と公転とを行う。第2遊星ギヤ8の公転によって第2キャリア10は、第2サンギヤ7の回転を更に減速した状態で回転する。
【0028】
第2キャリア10の回転は、リング12を介してホイールハブ11に伝達され、駆動軸2の回転を2段減速した状態で回転することになる。ホイールハブ11の回転によって、車輪を回転させることができる。これにより、車両の走行が行われる。
【0029】
図2に示すように、第1リングギヤ5とリングギヤハブ15とはスプライン結合部13においてスプライン結合している。第1リングギヤ5の端部の内周面とリングギヤハブ15の外周面との間はスプライン結合部16によってスプライン結合している。スプライン結合により、リングギヤハブ15は回転不能にアクスルハウジング20に支持されている。
【0030】
第1リングギヤ5の軸部は、アクスルハウジング20の軸端部21の内周面によって支持された構成となるので、ホイールハブ11を支持するベアリング22をアクスルハウジング20に組み付けた後に、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20に組み付けることができる。このため、組立作業が容易となり、前記ベアリング22を外さなくても、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20から容易に取り外すことができる。これによって、修理点検等において容易に分解することができる。
【0031】
上記説明において、リングギヤハブ15と第1リングギヤ5とを別体にて構成した例を説明しているが、リングギヤハブ15と第1リングギヤ5とを一体のものとして構成することもできる。
【0032】
第1リングギヤ5の軸方向への動きは、第1遊星ギヤ4と噛合する第1リングギヤ5のギヤ端面5cとリングギヤハブ15のスプライン部との当接及び、第1リングギヤ5に取り付けたホルダリング5aとリングギヤハブ15のスプライン部との当接とによって規制されている。
【0033】
アクスルハウジング20の軸端部21の外周面には、ホイールハブ11を支承するベアリング22が取り付けられている。ベアリング22はテーパローラベアリングとして構成され、ベアリング22のインナレースはベアリングホルダ23によって軸方向に抜け出さないように固定されている。
【0034】
ベアリングホルダ23はシム35を間に挟んでアクスルハウジング20の軸端部21にボルト36により取り付けられている。ベアリング22への与圧は、ベアリングホルダ23とアクスルハウジング20の軸端部21との間に配設したシム35により調整することができる。
【0035】
ベアリングホルダ23の外周には段付部24が設けられている。この段付部24には、分割リング18の凹部19を引掛けることができる。分割リング18はボルト34により、リングギヤハブ15に取り付けられている。図3に示すように、分割リング18は、その外周に内向きの凹部19が形成されている。同凹部19の先端は、ベアリングホルダ23の段付部24に引掛ける引掛け部として形成されている。
【0036】
図2に示すように、ベアリングホルダ23の段付部24に分割リング18の凹部19を引掛けることにより、リングギヤハブ15の軸方向への移動を規制する係止手段を構成している。この係止手段により、第1リングギヤ5のアクスルハウジング20に対する軸方向への移動を規制している。
【0037】
即ち、ベアリングホルダ23との間における係止手段によって、第1リングギヤ5の軸方向への移動を規制することができるため、リングギヤの軸方向への移動が規制されていない構成のものに比べて、第1リングギヤ5が遊星ギヤの端面やサンギヤの端面等に当接するのを確実に防止することができる。
【0038】
特に、サンギヤの端面がリングギヤの端面と当接し、リングギヤの軸方向への移動を規制する構成であると、サンギヤの端面で軸方向の負荷を全て受けることになり早期摩耗の恐れがある。これに対して、本願発明では、第1サンギヤ3の端面に第1リングギヤ5が当接することがなく、第1サンギヤ端面の早期摩耗の恐れを防止し、第1サンギヤ3の耐久性を向上させることができる。
【0039】
図3に示すように分割リング18のフランジ部31には複数のねじ孔33が設けられている。図2に示すように、リングギヤハブ15のフランジ部28に形成されたボルト孔29に挿入したボルト34によって、分割リング18はリングギヤハブ15のフランジ部28に取り付けられている。
【0040】
このように、ベアリングホルダ23をアクスルハウジング20に取り付けた後に、分割リング18の分割片を順次ベアリングホルダ23に係合させていくことができるので、分割リング18の組み付けを容易に行うことができる。
【0041】
図3においては、分割リング18を円周上において2分割したリングとして示しているが、分割リング18としては、3分割、又は4分割、又はそれ以上に複数に分割されたリングとして構成することもできる。
【0042】
これにより、第1リングギヤ5の軸部25、即ち、第1リングギヤ5に取り付けたリングギヤハブ15の軸部25をアクスルハウジング20の軸端部21の内周面において回転不能に支持することができる。しかも、分割リング18とベアリングホルダ23とによって、第1リングギヤ5の軸方向への移動を規制することができる。
【0043】
更に、ホイールハブ11を支承するベアリング22をアクスルハウジング20の軸端部21によって支持することができる。また、ベアリング22の軸方向への移動規制は、ベアリングホルダ23によって規制することができる。これらの構成によって、駆動軸減速装置をコンパクト化することができる。
【実施例2】
【0044】
図4には、本発明に係る駆動軸減速装置の他の実施例の構成を示している。実施例2では、係止手段の構成を実施例1における係止手段の構成とは異ならせている。他の構成は、実施例1と同様の構成を有している。実施例1と同様の構成については、実施例1で用いたと同じ部材符号を用いることで、その部材の説明は省略する。
【0045】
リングギヤハブ15Aの軸部25の外周部における、アクスルハウジング20とのスプライン結合部16及びリングギヤハブ15Aのフランジ部28との間には段差部27が形成されている。ベアリングホルダ23Aの内端面は、前記段差部27に当接することができる。ベアリングホルダ23Aの内端面と、リングギヤハブ15Aの外周面に形成した段差部27とによって、リングギヤハブ15Aの軸方向への移動を規制する係止手段が構成されている。
【0046】
また、アクスルハウジング20の軸端部21にベアリングホルダ23Aを取り付けるボルト36は、リングギヤハブ15Aのフランジ部8に形成した締め付け孔26を介して締め付けることができる。
【0047】
ベアリングホルダ23Aは、組み付け作業を容易にするため、周方向に分割した分割型のベアリングホルダとして構成されている。
【実施例3】
【0048】
図5には、本発明に係る駆動軸減速装置の別の実施例の構成を示している。実施例3では係止手段の構成として、リングギヤハブ15Bの軸方向への移動を規制するのに分割型のストッパ部材32を設けている。この点で、実施例2における係止手段とは、異なる構成となっている。
【0049】
他の構成は、実施例2と同様の構成を有している。実施例1及び実施例2と同様の構成については、実施例1及び実施例2で用いたと同じ部材符号を用いることで、その部材の説明は省略する。
【0050】
リングギヤハブ15Bの軸部25の外周面における、アクスルハウジング20Aとリングギヤハブ15Bのフランジ部28との間には段差部27が形成されている。段差部27は、ベアリングホルダ23Bとアクスルハウジング20の端部との間で挟持された分割型のストッパ部材32が当接する。
【0051】
分割型のストッパ部材32をアクスルハウジング20とベアリングホルダ23Bとの間で固定するため、アクスルハウジング20の軸端部21とベアリングホルダ23Bの端面には、それぞれ段付溝37が形成されている。
【0052】
また、アクスルハウジング20の軸端部21にベアリングホルダ23Aを取り付けるボルト36は、リングギヤハブ15Bのフランジ部28に形成した締め付け孔26を介して締め付けることができる。
【0053】
分割型のストッパ部材32は、分割リング18と同様に円周上で2分割した構成となっているが、3分割、又は4分割、又はそれ以上に複数に分割されたリングとして構成することもできる。
【0054】
アクスルハウジング20とベアリングホルダ23Bとの間に挟みこまれた分割型のストッパ部材32によって、リングギヤハブ15Aのアクスルハウジング20に対する軸方向への移動を規制している。ベアリングホルダ23Aは、組み付け作業を容易にするため、周方向に分割した分割型のベアリングホルダとして構成されている。
【0055】
従って、本発明の駆動軸減速装置によれば、ベアリング22が直接アクスルハウジング20の軸部によって支持されているので、ベアリング22がホイールハブ11からの荷重を受けても、同荷重はアクスルハウジング20によって支持することができる。このため、リングギヤハブ15とアクスルハウジング20とのスプライン結合部16には、ホイールハブ11からの荷重を受けることがない。従って、リングギヤハブ15とアクスルハウジング20とのスプライン結合部16においてフレッチングが発生しにくくなり、スプライン結合部16での耐久性を向上させることができる。
【0056】
また、ベアリング22を軸方向に移動しないように保持しているベアリングホルダ23には、第1リングギヤ5からの回転力が伝わらないので、第1リングギヤ5の回転力によってベアリングホルダが緩むことがない。
【0057】
更に、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20の軸部の内周面によって支持しているので、駆動軸減速装置における軸方向の長さやラジアル方向の径を短くすることができ、駆動軸減速装置のコンパクト化を図ることができる。
【0058】
更にまた、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20の軸部の内周面で支持しているので、ベアリング22をアクスルハウジング20に組み付けた後に、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20に組み付けることができる。これによって、組立が容易となり、組立てに要する作業時間を短縮することができる。しかも、ベアリング22を外さなくても、リングギヤハブ15をアクスルハウジング20から取外すことができ、修理点検時等の分解が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】駆動軸減速装置の構成を示す図である。(実施例1)
【図2】図1におけるP部の要部拡大図である。(実施例1)
【図3】分割リングの構成を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】駆動軸減速装置の他の実施例の構成を示す図である。(実施例2)
【図5】駆動軸減速装置の別の実施例の構成を示す図である。(実施例3)
【図6】駆動軸減速装置の構成を示す図である。(従来例)
【符号の説明】
【0060】
1 駆動軸減速装置
2 駆動軸
3 第1サンギヤ
4 第1遊星ギヤ
5 第1リングギヤ
6 第1キャリア
7 第2サンギヤ
8 第2遊星ギヤ
9 第2リングギヤ
10 第2キャリア
11 ホイールイハブ
15 リングギヤハブ
18 分割リング
20 アクスルハウジング
23 ベアリングホルダ
24 段差部
25 軸部
27 段差部
28 フランジ部
32 ストッパ部材
38 遊星歯車機構
41 アクスルハウジング
43 駆動軸
46 サンギヤ
50 遊星ギヤ
51 キャリア
53 リングギヤ
53a リングギヤハブ
53b 軸部
54 ホイールハブ
56 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸ハウジングにベアリングを介して回転自在に支持された被駆動体と、前記駆動軸ハウジング内を貫通し、前記被駆動体に回転を伝達する駆動軸と、前記駆動軸と前記被駆動体との間に配設され、前記駆動軸の回転を減速して前記被駆動体に伝達する遊星歯車機構と、を備え、
前記遊星歯車機構におけるサンギヤが、一体回転可能に前記駆動軸に支持され、前記遊星歯車機構における遊星ギヤを支持するキャリアが、一体回転可能に前記被駆動体に支持され、前記遊星歯車機構におけるリングギヤが、回転不能に前記駆動軸ハウジングに支持され、前記リンクギヤが、前記リンクギヤからラジアル方向に延設したリングギヤハブと前記リングギヤハブから軸方向に延設した軸部とを有してなる駆動軸減速装置において、
前記リングギヤの軸部が、前記駆動軸ハウジングの軸部の内周面によって回転不能に支持され、
前記駆動軸ハウジングに取着され、前記ベアリングの軸方向への保持を行うベアリングホルダと、
前記リングギヤの前記軸方向への移動を、前記ベアリングホルダとの間で規制する係止手段と、
を備えてなることを特徴とする駆動軸減速装置。
【請求項2】
前記係止手段が、前記ベアリングホルダに引掛け可能で円周方向に複数に分割された分割リングと、前記リングギヤハブを前記分割リングに固着する固着手段と、を備えてなることを特徴とする請求項1記載の駆動軸減速装置。
【請求項3】
前記分割リングが、前記ベアリングホルダの端部に係合する凹部を有してなることを特徴とする請求項2記載の駆動軸減速装置。
【請求項4】
前記係止手段が、前記リンクギヤの軸部外周に形成した段差部と前記ベアリングホルダの内周面側端部との係合により構成されてなることを特徴とする請求項1記載の駆動軸減速装置。
【請求項5】
前記段差部と前記ベアリングホルダの内周面側端部との間に、分割型のストッパ部材を介在させてなることを特徴とする請求項4記載の駆動軸減速装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−2936(P2006−2936A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77678(P2005−77678)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】