説明

駐車支援装置及び方法

【課題】俯瞰画像を用いて駐車目標を設定した場合でもドライバが想定している状態で駐車させることができる駐車支援装置等を提供する。
【解決手段】車両周辺を撮影するカメラモジュール2a,2b,2c,2dと、車両周辺画像を座標変換して俯瞰画像を生成する画像変換部13aと、車両周辺に存在する障害物までの距離を検出する障害物検出部7と、障害物までの距離に基づいて俯瞰画像内に駐車目標領域を設定する駐車目標領域設定部13bと、駐車目標領域を表す駐車目標マークを俯瞰画像に重畳させた表示画像を作成する表示画像作成部13dと、表示画像を表示するモニタ8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に周囲状況を表す画像を提示することによって、自車両を駐車させる運転操作を支援する駐車支援装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両周辺を複数のカメラにより撮影し、得られた画像を座標変換してあたかも仮想視点である上空から車両を眺めた画像である俯瞰画像を用いた駐車支援装置が知られている(下記の特許文献1参照)。このような駐車支援装置は、俯瞰画像上で駐車目標位置を設定している。
【特許文献1】特開2005−239048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術においては、例えば駐車枠に隣接する駐車枠に他車両が存在する場合には、他車両の映像が駐車枠に倒れ込むような俯瞰画像となってしまう。このため、当該俯瞰画像を用いて駐車目標位置を設定した場合に、駐車目標位置に隣接している他車両との間隔とドライバが想定している他車両との間隔とがずれる可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、俯瞰画像を用いて駐車目標を設定した場合でもドライバが想定している状態で駐車させることができる駐車支援装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両から障害物までの距離に基づいて、車両周辺画像より生成された俯瞰画像内に駐車目標領域を設定し、当該駐車目標領域を表す駐車目標マークを前記俯瞰画像に重畳させた表示画像を表示することによって、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両からの距離によって駐車目標領域を設定するので、ドライバから見える状況と同じ距離感で駐車目標領域を設定して俯瞰画像に表示させることができ、俯瞰画像を用いて駐車目標を設定した場合でもドライバが想定している状態で駐車させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0008】
本発明は、例えば図1に示すように構成された駐車支援装置に適用される。この駐車支援装置は、駐車運転を支援するために車両周辺の状況を俯瞰画像として提示するものである。特に、この駐車支援装置は、俯瞰画像によって表示する他車両の画像に画像変換に起因する倒れ込みが発生しても、ドライバが想定している車両周囲状況とずれが少ない駐車枠を設定するものである。
【0009】
この駐車支援装置は、画像処理装置1に、カメラモジュール(撮影手段)2a,2b,2c,2d(以下、総称するときには単に「カメラモジュール2」と呼ぶ。)と、操作入力部3と、車速センサ4と、操舵角センサ5と、シフト位置センサ6と、障害物検出部7と、モニタ(表示手段)8とが接続されている。
【0010】
カメラモジュール2は、車両周辺を撮影するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラが用いられる。このカメラモジュール2は、カメラモジュール2a,2b,2c,2dの4つからなっている。カメラモジュール2aは、車両の前方を撮像方向とするために車両前部のフロントグリル中央付近に設けられている。カメラモジュール2bは、車両の右側方を撮像方向とするために例えば車両の右側ドアミラーに設けられている。カメラモジュール2cは、車両の左側方を撮像方向とするために例えば車両の左側ドアミラーに設けられている。カメラモジュール2dは、車両の後方を撮像方向とするために車両後部のリアハッチ中央付近に設けられている。このように、複数のカメラモジュール2は、車両の四方に設けられている。
【0011】
障害物検出部7は、車両の各部に設けら得た複数の超音波センサやステレオカメラシステム、単眼モーションステレオカメラ、レーダなどによって実現される。本実施の形態では障害物検出部7は、超音波センサで構成され、超音波を出力し当該超音波の反射波を検出して、車両から障害物までの距離を求める。超音波センサは、車両の両側方に設けられて、後述する図3に示すように自車両201が駐車場に進入した時に周囲の他車両202を検出することができる。障害物検出部7は、車両周辺に存在する障害物の有無、障害物が存在する場合の距離及び方向を障害物情報として画像処理装置1に出力する。
【0012】
操作入力部3は、運転者に操作される操作インターフェースであり、例えばモニタ8と一体化されたタッチセンサによって構成される。この操作入力部3によって検出された運転者の操作を表す操作入力信号は、画像処理装置1に供給される。車速センサ4は、自車両の車速を検出するものである。この車速センサ4によって検出された車速信号は、画像処理装置1に供給される。操舵角センサ5は、自車両の操舵角を検出するものである。この操舵角センサ5によって検出された操舵角信号は、画像処理装置1に供給される。シフト位置センサ6は、自車両のシフト位置(ギヤポジションの位置)を検出するものである。このシフト位置センサ6によって検出されたシフト位置信号は、画像処理装置1に供給される。
【0013】
画像処理装置1は、カメラモジュール2により撮像されたカメラ画像データを処理するものである。画像処理装置1は、コンピュータによるハードウエアで構成されているが、図1においては便宜的に機能ブロック毎に分けて、説明を行っている。
【0014】
この画像処理装置1は、バス状の通信ライン10に、カメラモジュール2a,2b,2c,2dのそれぞれに対応した入力バッファ11a,11b,11c,11d(以下、総称する場合には単に「入力バッファ11」と呼ぶ。)と、CPU12と、画像処理部13と、テーブル記憶部14と、出力バッファ15とが接続されて構成されている。
【0015】
入力バッファ11は、カメラモジュール2からのカメラ画像データを入力して記憶しておくものである。入力バッファ11は、カメラモジュール2の個数に対応して設けられ、入力バッファ11aはカメラモジュール2aと接続され、入力バッファ11bはカメラモジュール2bと接続され、入力バッファ11cはカメラモジュール2cと接続され、入力バッファ11dはカメラモジュール2dと接続される。入力バッファ11は、カメラ画像データを一旦格納し、CPU12の制御に従って、画像処理部13による画像変換タイミングでカメラ画像データが読み出される。
【0016】
出力バッファ15は、後述する画像処理部13によって作成された表示データを記憶するものである。この出力バッファ15は、CPU12の制御に従って、記憶した表示データをモニタ8に出力する。モニタ8は、出力バッファ15から出力された表示データを表示する。
【0017】
CPU12は、画像処理装置1の全体を制御するものである。CPU12は、主として、入力バッファ11a,11b,11c,11dからカメラ画像データを取り出すタイミング、画像処理部13の画像処理タイミング、出力バッファ15から表示データをモニタ8に送信するタイミングを制御する。CPU12は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、LSI(Large Scale Integrated Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)や、DSP(Digital Signal Processor)等のデバイスから構成されている。
【0018】
テーブル記憶部14は、カメラモジュール2により撮影された車両周辺のカメラ画像データを用いて座標変換を行って表示データを作成するアドレス変換テーブル14aを記憶している。テーブル記憶部14は、アドレス変換テーブル14aとして、複数のカメラモジュール2により撮像されたカメラ画像データを用いた座標変換を行って、あたかも仮想視点である上空から車両を眺めた画像である俯瞰画像を作成するテーブルデータを記憶している。
【0019】
画像処理部13は、CPU12の制御に従って入力バッファ11から供給された複数のカメラ画像データを用いた座標変換処理などを行って、モニタ8に表示させる表示データを作成する。画像処理部13は、俯瞰画像を作成する画像変換部(画像変換手段)13aと、俯瞰画像内における駐車目標領域を設定する駐車目標領域設定部(駐車目標領域設定手段)13bと、駐車目標領域に駐車するまでの進路を演算する進路演算部(進路演算手段)13cと、モニタ8に表示させる表示画像を作成する表示画像作成部(表示画像作成手段)13dとを備える。
【0020】
画像変換部13aは、図2に示すように、カメラモジュール2aによって撮影された車両前方の車両周辺画像102aと、カメラモジュール2bによって撮影された車両後方の車両周辺画像102bと、カメラモジュール2cによって撮影された車両左側方の車両周辺画像102cと、カメラモジュール2dによって撮影された車両右側方の車両周辺画像102dとを用いる。図2に示す車両周辺画像102a〜102dには、車両周辺の地面上に引かれた白線103が表示されている。
【0021】
画像変換部13aは、各車両周辺画像102a〜102dを、アドレス変換テーブル14aを参照してそれぞれ座標変換する。すなわち、画像変換部13aは、車両前方の車両周辺画像102aを座標変換して自車両前方を上空から眺めた部分画像104aを生成し、車両後方の車両周辺画像102bを座標変換して自車両後方を上空から眺めた部分画像104bを生成し、車両左側方の車両周辺画像102cを座標変換して車両左側方を上空から眺めた部分画像104cを生成し、車両右側方の車両周辺画像102dを座標変換して車両右側方を上空から眺めた部分画像104dを生成する。そして、画像変換部13aは、座標変換して得た部分画像104a〜104dを合成して、自車両周辺を上空から眺めた表示用の俯瞰画像101を生成する。このように、画像変換部13aは、カメラモジュール2によって撮影された車両周辺画像に座標変換を行い俯瞰画像101を生成することができる。
【0022】
駐車目標領域設定部13bは、障害物検出部7により検出された障害物までの距離情報を含む障害物情報に基づいて、画像変換部13aにより生成された俯瞰画像内に駐車目標領域を設定する。
【0023】
表示画像作成部13dは、駐車目標領域設定部13bにより設定された駐車目標領域を表す駐車目標マークを画像変換部13aによって生成された俯瞰画像に重畳させた表示画像を作成する。この表示画像は、出力バッファ15を介してモニタ8に出力されることによって、ドライバに提示される。
【0024】
このような駐車支援装置は、図3(a)に示すように、自車両201が並列駐車で駐車する駐車場に進入した時、自車両201の側方に設けられている障害物検出部7を構成する超音波センサ7aによって他車両202Aを検出する。そして、障害物検出部7は、自車両201に対する他車両202Aの方向及び距離を含む障害物情報を画像処理装置1に供給する。これによって、駐車支援装置は、自車両201が走行した側方に存在する障害物としての他車両202Aの障害物検出結果として、当該他車両202Aの輪郭位置204Aの一部としての輪郭204A’を検出することができる。この輪郭204A’は、車両から他車両202Aまでの相対的な距離を表す。
【0025】
また、駐車支援装置は、図3(a)に示す状態から更に前進して、図3(b)に示すように、空いている駐車枠に後退させて駐車させるために他車両202Bの前方付近に位置すると、当該他車両202Bを超音波センサ7aによって検出する。そして、障害物検出部7は、自車両201に対する他車両202Bの方向及び距離を含む障害物情報を画像処理装置1に供給する。これによって、駐車支援装置は、自車両201が走行した側方に存在する障害物としての他車両202Bの障害物検出結果として、当該他車両202Bの輪郭位置204Bの一部として輪郭204B’を検出することができる。この輪郭204B’は、車両から他車両202Bまでの相対的な距離を表す。
【0026】
更に、駐車支援装置は、他車両202Aの輪郭204A’及び他車両202Bの輪郭204B’を検出すると共に、地面に描かれた白線203A、203Bを検出する。このとき、駐車支援装置は、カメラモジュール2によって撮像されたカメラ画像データに対してエッジ抽出処理を行うことによって、白線203A、203Bに囲まれた領域を検出する。そして、駐車支援装置は、例えばシフト位置センサ6によってシフト位置を後退位置(リバースポジション)にした時に、白線203A、202Bに囲まれた領域を駐車目標領域205の候補として設定することができる。なお、白線203A、202Bに囲まれた領域を駐車目標領域205の候補とする処理は、当該白線203A、202Bに囲まれた領域にエッジが少ないことや、白線203A、202Bに囲まれた領域が自車両201に近い地面部分と同じ色であることを検出することによって行う。
【0027】
駐車目標領域設定部13bは、輪郭検出情報204A’及び輪郭検出情報204B’に基づいて、俯瞰画像内に駐車目標マークとして描画される駐車目標領域205を設定する。ここで、図3に示すように、駐車目標領域205は、他車両202Aの輪郭検出情報204A’と他車両202Bの輪郭検出情報204B’との間に駐車目標領域205を設定されているが、当該駐車目標領域205の詳細な設定処理については後述する。
【0028】
進路演算部13cは、俯瞰画像内に駐車目標領域205が設定されている状況において、図4に示すように、駐車目標領域205、自車両201が前進する進路206(前進進路206)及び自車両201が駐車目標領域205に進入する進路207(駐車進路207)を演算する。この自車両201の前進進路206は、操舵角センサ5から供給されている操舵角信号に従って俯瞰画像内において自車両201が進む方向を表している。また、自車両201の前進進路206は、自車両201が所定操舵角で後退した時に駐車目標領域205に進入可能な進路を表している。
【0029】
そして、表示画像作成部13dは、駐車目標領域設定部13bによって設定された駐車目標領域205と、進路演算部13cによって演算された前進進路206及び後退進路207と、カメラモジュール2から認識した白線203を俯瞰画像300に重畳させた表示画像を作成する。
【0030】
ここで、表示画像作成部13dは、モニタ8の表示範囲よりもサイズが大きい表示画像300’を作成し、当該表示画像300’から、自車両201、駐車目標領域205を表す駐車目標マークを含む範囲を切り出して、モニタ8に表示する画像としても良い。
【0031】
このような駐車支援装置は、カメラモジュール2によって撮像されて入力バッファ11に記憶されているカメラ画像データを所定期間ごとに画像処理部13によって取り込んで、画像変換部13aによって俯瞰画像300を作成する。これと同時に、駐車目標領域設定部13bは、障害物検出部7からの他車両202Aの輪郭204A’及び他車両202Bの輪郭204B’に基づいて俯瞰画像300内における駐車目標領域205を設定し、進路演算部13cは、前進進路207及び前進進路206を演算する。そして、表示画像作成部13dは、所定期間ごとに、俯瞰画像300に駐車目標領域205、前進進路206及び後退進路207を重畳させた表示画像を作成して、出力バッファ15に表示画像を格納する。これによって、駐車支援装置は、所定期間ごとに更新した表示画像をモニタ8に表示させることができる。
【0032】
「駐車目標領域205の設定処理」
つぎに、上述したように構成された駐車支援装置において、駐車目標領域設定部13bによって俯瞰画像300上に駐車目標領域205を設定する処理について説明する。
【0033】
駐車目標領域設定部13bは、図3に示したように、駐車目標領域205を設定する候補となる駐車枠の両隣に他車両202A、202Bといった障害物が存在する場合、当該他車両202Aと他車両202Bとの中心に駐車目標領域205を設定する。このとき、駐車目標領域設定部13bは、図5に示すように、障害物検出部7によって検出された他車両202Bの輪郭204A’と他車両202Aの輪郭204B’との中心205bを求め、当該中心205bを駐車目標領域205の中心線205aが通過するように位置を修正した駐車目標領域205’を設定する。
【0034】
また、駐車目標領域設定部13bは、図6に示すように、駐車目標領域205の候補となる駐車枠の一方にしか他車両が存在しない場合には、当該他車両との距離を所定距離Daに保つような位置に修正した駐車目標領域205’を設定する。このとき、駐車目標領域設定部13bは、障害物検出部7によって検出された他車両202の輪郭204から所定の距離Daを離間させて駐車目標領域205を設定することとなる。一方、所定距離Daとは反対側の駐車目標領域205と白線との距離Dbは小さくなる。この所定の距離Daは、例えば、自車両201のドアを開いた時に乗員が乗降しやすい距離が設定されている。また、駐車目標領域205は、俯瞰画像300に含まれる白線203を検出して、駐車目標領域205の候補となる駐車枠の他車両202が存在する側の白線203からの距離が所定の距離となるように設定しても良い。
【0035】
更に、図7に示すように、駐車目標領域205を設定する候補となる駐車枠の後方側に障害物が存在することがある。この場合、駐車目標領域設定部13bは、駐車枠の後方の障害物を障害物検出部7によって検出した結果得た輪郭210を用いて、当該当該駐車枠の後方側に存在する障害物と駐車目標領域205との距離が所定距離を保つように位置を修正した駐車目標領域205’とする。
【0036】
「進路の設定処理」
つぎに、上述したように構成された駐車支援装置において、進路演算部13cによって俯瞰画像300上に自車両201の進路206,207を設定して表示させる処理について説明する。
【0037】
駐車支援装置は、駐車目標領域205が設定された駐車枠に自車両201を誘導するために、図8に示すように、駐車目標領域205の斜め方向に後退開始位置212を設定する。この後退開始位置212は、自車両201が駐車目標領域205の前を前進走行して、自車両201が当該駐車目標領域205に駐車するために停止させ、自車両201の操舵角を所定角度にした状態で後退走行を開始させる位置である。
【0038】
このとき、進路演算部13cは、駐車目標領域205と自車両201の移動可能範囲とに基づいて、駐車目標領域205から所定の舵角で所定距離だけ離れた位置を後退開始位置212に設定する。ここで、進路演算部13cは、自車両の位置211から最大の舵角で後退したときに駐車目標領域205に進入できるような後退開始位置212を設定しても良い。
【0039】
そして、進路演算部13cは、図8のように駐車目標領域205の前を前進している時に、現在の自車両の位置211から後退開始位置212に誘導する前進進路206を演算する。このとき、進路演算部13cは、自車両の位置211における進行方向の垂線と、後退開始位置212における進行方向の垂線との交差点を第1回転中心213として演算する。そして、進路演算部13cは、自車両の位置211と後退開始位置212とを接続する第1回転中心213を中心とした半径R1の円弧状の線分を前進進路206とする。これによって、進路演算部13cは、当該前進進路206に沿って一定舵角で走行することによって、自車両の位置211から後退開始位置212まで走行できる進路を前進進路206として演算する。そして、この前進進路206を示す座標情報を用いて、表示画像作成部13dは、前進進路206を俯瞰画像300上に描画する。
【0040】
また、進路演算部13cは、後退開始位置212から駐車目標領域205に誘導する後退進路207を演算する。このとき、進路演算部13cは、駐車目標領域205の長辺との垂線と、後退開始位置212における進行方向の垂線との交差点を第2回転中心214として演算する。そして、進路演算部13cは、駐車目標領域205と後退開始位置212とを接続する第2回転中心214を中心とした半径R2の円弧状の線分を後退進路207とする。これによって、進路演算部13cは、当該後退進路207に沿って一定舵角で走行することによって、後退開始位置212から駐車目標領域205まで走行できる進路を後退進路207として演算する。そして、この後退進路207を示す座標情報を用いて、表示画像作成部13dは、後退進路207を俯瞰画像300上に描画する。
【0041】
このように、駐車支援装置は、駐車目標領域205に自車両201を駐車させる時に、操舵角を最大にした状態で駐車目標領域205まで後退できる後退開始位置212を設定して、後退開始位置212に向けて走行させる前進進路206及び駐車目標領域205に向けて走行させる後退進路207を提示することができる。
【0042】
更に、駐車支援装置は、障害物検出部7により検出されている障害物との距離に基づいて、前進進路206又は後退進路207を走行させた時に、自車両201が障害物と接触する可能性があると判定した場合に、当該前進進路206又は後退進路207から右旋回又は左旋回をして走行させるように修正することが望ましい。
【0043】
例えば図9に示すように、駐車目標領域205と対向する側に他車両204Cといった障害物を障害物検出部7の超音波センサ7bによって検出した場合、進路演算部13cによって、自車両201と他車両204Cとが接触する可能性を判定する。進路演算部13cは、自車両の位置211を前進進路206に沿って移動させる場合に、前進進路206に沿って自車両の位置211が移動すると他車両204Cと接触する可能性がある限界線215を求める。この限界線215は、第2回転中心214を中心とした後退進路207上に設定する後退開始位置212が他車両204Cに接触する線である。そして、進路演算部13cは、自車両の位置211が限界線215を超えないように後退開始位置212を設定して、前進進路206を設定することとなる。
【0044】
このように、駐車支援装置は、駐車目標領域205に隣接する他車両202のみならず、駐車目標領域205に対向する他車両204Cなどの他の障害物と接触する可能性があると判定した場合に、限界線215を設定することができる。これにより、駐車支援装置は、後退開始位置212を修正することによって、前進進路206及び後退進路207を右旋回又は左旋回するように修正することができる。
【0045】
更に、駐車支援装置は、進路演算部13cによって自車両201が障害物と接触しない前進進路206及び後退進路207が演算できない場合に、当該障害物と接触しない位置まで後退させた後に、再度後退走行を開始させて駐車目標領域205に進入させる後退開始位置を演算することとなる。
【0046】
この駐車支援装置は、図10(a)及び図10(b)に示すように、駐車目標領域205に対向する側に障害物としての壁204Dが存在している場合、駐車目標領域205から所定の操舵角で後退できる後退開始位置212を設定しても、壁204Dと自車両201が接触してしまい、壁204Dと自車両201とが接触しない前進進路206及び後退進路207を設定できない。
【0047】
この場合、進路演算部13cは、図10(a)に示すように、自車両201の初期停止位置から、先ず、第1停止位置221まで自車両201を前進させる前進進路と、当該第1停止位置221から第2停止位置222まで自車両201を後退させる後退進路とを演算する。この時、進路演算部13cは、自車両201の初期停止位置における進行方向の垂線と第1停止位置221における進行方向の垂線との交点を第1回転中心213に設定して、当該第1回転中心213を中心とした前進進路を設定する。また、進路演算部13cは、第1停止位置221における進行方向の垂線と第2停止位置における進行方向の垂線との交点を第2回転中心214に設定して、当該第2回転中心214を中心とした後退進路を設定する。
【0048】
次に、進路演算部13cは、図10(b)に示すように、第2停止位置222から第3停止位置223まで前進させる前進進路を設定し、第3停止位置223から駐車目標領域205まで後退させる後退進路を設定する。この時、進路演算部13cは、自車両201の第2停止位置222における進行方向の垂線と第3停止位置223における進行方向の垂線との交点を第3回転中心224に設定して、当該第3回転中心224を中心とした前進進路を設定する。また、進路演算部13cは、第3停止位置223における進行方向の垂線と駐車目標領域205の垂線との交点を第4回転中心225に設定して、当該第4回転中心225を中心とした後退進路を設定する。
【0049】
以上詳細に説明したように、本発明を適用した駐車支援装置によれば、自車両201から障害物までの距離に基づいて、俯瞰画像300内に駐車目標領域205を設定し、当該駐車目標領域205を表す駐車目標マークを俯瞰画像300に重畳させた表示画像を表示するので、俯瞰画像300内において他車両の映像に倒れ込みが発生しても、ドライバから見える状況と同じ距離感で駐車目標領域205を設定して俯瞰画像に表示させることができる。したがって、この駐車支援装置によれば、俯瞰画像を用いて駐車目標を設定した場合でもドライバが想定している状態で駐車させることができる。
【0050】
また、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205まで自車両201が走行する後退進路207を進路演算部13cによって演算して、表示画像作成部13dによって後退進路207を俯瞰画像300に重畳させて表示させるので、障害物との距離によって設定された駐車目標領域205に自車両201が進入するまでの進路をドライバに提示することができる。
【0051】
更に、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205を設定する候補となる駐車枠の両隣に他車両202A、202Bが存在することを障害物検出部7が検出している場合に、当該駐車枠の両隣に存在する他車両202A、202B間の中心と、駐車目標領域205の中心とが一致するように駐車目標領域205を設定するので、両隣の他車両202A、202Bとの間である程度の距離を保つような駐車目標領域205に誘導することができる。
【0052】
更にまた、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205を設定する候補となる駐車枠の片側に障害物が存在することを障害物検出部7が検出している場合に、当該駐車枠の片側に存在する障害物との距離が所定距離を保つように駐車目標領域205を設定するので、駐車枠の片側の他車両202との間の距離を保つような駐車目標領域205に誘導することができる。
【0053】
更にまた、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205を設定する候補となる駐車枠の後方側に障害物が存在することを障害物検出部7が検出している場合に、当該駐車枠の後方側に存在する障害物との距離が所定距離を保つように駐車目標領域205を設定するので、駐車枠後方の他車両202との間の距離を保つような駐車目標領域205に誘導することができる。
【0054】
更にまた、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205と自車両201の移動可能範囲とに基づいて自車両201の操舵角を最大にした状態で後退走行を開始させて駐車目標領域205に進入させる後退開始位置212を演算し、当該後退開始位置212まで前進させる前進進路206と、当該後退開始位置212から操舵角を最大にした状態で後退させる後退進路207とを演算するので、駐車目標領域205の設定時において駐車枠と自車両201の進行方向が直角となる並列駐車を、最大の操舵角で1回だけ後退走行によって行わせることができる。
【0055】
更にまた、この駐車支援装置によれば、障害物検出部7により検出されている障害物との距離に基づいて、前進進路206又は後退進路207を走行させた時に、自車両201が障害物と接触する可能性があると判定した場合に、当該前進進路206又は後退進路207から右旋回又は左旋回をして走行させるように修正するので、並列駐車時において1回の後退走行で駐車目標領域205に誘導できなくても、修正した前進進路206及び駐車進路207によって自車両201を駐車目標領域205に誘導することができる。したがって、この駐車支援装置によれば、狭い駐車場に駐車目標領域205を設定して駐車させる場合であっても、周囲の障害物との距離を保った駐車目標領域205に誘導することができる。
【0056】
更にまた、この駐車支援装置によれば、駐車目標領域205と対向する側に存在する障害物と自車両201とが接触する可能性を判定して、駐車目標領域205まで誘導する前進進路206及び後退進路207を計算し直すことができるので、狭い駐車場に駐車目標領域205を設定して駐車させる場合であっても、周囲の障害物との距離を保った駐車目標領域205に誘導することができる。
【0057】
更にまた、この駐車支援装置によれば、自車両201が障害物と接触しない前進進路206及び後退進路207が演算できない場合に、当該障害物と接触しない位置まで後退させた後に、再度後退走行を開始させて駐車目標領域205に進入させる前進進路206及び後退進路207を演算するので、狭い駐車場に駐車目標領域205を設定して駐車させる場合であっても、周囲の障害物との距離を保った駐車目標領域205に誘導することができる。
【0058】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を適用した駐車支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した駐車支援装置によって俯瞰画像を作成する処理を説明する図である。
【図3】駐車枠と垂直する方向に自車両が走行した時に障害物との距離を検出して、駐車目標領域を設定する処理を説明する図である。
【図4】本発明を適用した駐車支援装置によって、駐車目標領域と前進進路及び駐車進路とを表示させる画面を示す図である。
【図5】本発明を適用した駐車支援装置によって駐車枠の両隣に存在する他車両の中間に駐車目標領域を設定することを説明するための図である。
【図6】本発明を適用した駐車支援装置によって駐車枠の片側に存在する他車両から所定距離だけ離れた駐車目標領域を設定することを説明するための図である。
【図7】本発明を適用した駐車支援装置によって駐車枠の後方に存在する障害物から所定距離だけ離れた駐車目標領域を設定することを説明するための図である。
【図8】本発明を適用した駐車支援装置によって、駐車目標領域に駐車するための駐車進路、後退開始位置及び前進進路を設定する処理を説明するための図である。
【図9】本発明を適用した駐車支援装置によって、駐車目標領域に対向する側に障害物が存在する時に、駐車目標領域に駐車するための駐車進路、後退開始位置及び前進進路を設定する処理を説明するための図である。
【図10】本発明を適用した駐車支援装置によって、駐車場が狭い時に、駐車目標領域に駐車するための駐車進路、後退開始位置及び前進進路を設定する処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像処理装置
2a,2b,2c,2d カメラモジュール
3 操作入力部
4 車速センサ
5 操舵角センサ
6 シフト位置センサ
7 障害物検出部
7a,7b 超音波センサ
8 モニタ
10 通信ライン
11a,11b,11c,11d 入力バッファ
12 CPU
13 画像処理部
13a 画像変換部
13b 駐車目標領域設定部
13c 進路演算部
13d 表示画像作成部
14 テーブル記憶部
14a アドレス変換テーブル
15 出力バッファ
204A 輪郭位置
204B 輪郭位置
205 駐車目標領域
206 前進進路
207 後退進路
212 後退開始位置
300 俯瞰画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影した車両周辺画像より俯瞰画像を生成する画像変換手段と
車両周辺に存在する障害物までの距離を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段により検出された障害物までの距離に基づいて、前記画像変換手段により生成された俯瞰画像内に駐車目標領域を設定する駐車目標領域設定手段と、
前記駐車目標領域設定手段により設定された駐車目標領域を表す駐車目標マークを前記画像変換手段によって生成された俯瞰画像に重畳させた表示画像を作成する表示画像作成手段と、
前記表示画像作成手段により作成された表示画像を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車目標領域設定手段により設定された駐車目標領域まで進行するまでの進路を演算する進路演算手段を更に備え、
前記表示画像作成手段は、前記進路演算手段により演算された進路を前記俯瞰画像に重畳させた表示画像を作成し、前記表示手段は、前記進路を含む表示画像を表示すること
を特徴とする請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記駐車目標領域設定手段は、前記駐車目標領域を設定する候補となる駐車枠の両隣に障害物が存在することを前記障害物検出手段が検出している場合に、当該駐車枠の両隣に存在する障害物間の中心と、前記駐車目標領域の中心とが一致するように前記駐車目標領域を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記駐車目標領域設定手段は、前記駐車目標領域を設定する候補となる駐車枠の片側に障害物が存在することを前記障害物検出手段が検出している場合に、当該駐車枠の片側に存在する障害物との距離を所定距離を保つように駐車目標領域を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記駐車目標領域設定手段は、前記駐車目標領域を設定する候補となる駐車枠の後方側に障害物が存在することを前記障害物検出手段が検出している場合に、当該駐車枠の後方側に存在する障害物との距離を所定距離を保つように駐車目標領域を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記進路演算手段は、前記駐車目標領域設定手段により設定された駐車目標領域と車両の移動可能範囲とに基づいて車両の操舵角を最大にした状態で後退走行を開始させて前記駐車目標領域に進入させる後退開始位置を演算し、当該後退開始位置まで前進させる前進進路と、当該後退開始位置から操舵角を最大にした状態で後退させる後退進路とを演算することを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記進路演算手段は、前記障害物検出手段により検出されている障害物との距離に基づいて、前記前進進路又は前記後退進路を走行させた時に、車両が障害物と接触する可能性があると判定した場合に、当該前進進路又は後退進路から右旋回又は左旋回をして走行させるように修正することを特徴とする請求項6に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記進路演算手段は、前記駐車目標領域設定手段により設定された駐車目標領域と対向する側に存在する障害物と車両とが接触する可能性を判定することを特徴とする請求項7に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記進路演算手段は、車両が障害物と接触しない進路が演算できない場合に、当該障害物と接触しない位置まで後退させた後に、再度後退走行を開始させて前記駐車目標領域に進入させる進路を演算することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の駐車支援装置。
【請求項10】
車両から障害物までの距離に基づいて、車両周辺画像より生成された俯瞰画像内に駐車目標領域を設定し、
当該駐車目標領域を表す駐車目標マークを前記俯瞰画像に重畳させた表示画像を表示すること
を特徴とする駐車支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−143410(P2009−143410A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323265(P2007−323265)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】