骨形成蛋白−2の正のモジュレーター
【解決課題】 骨形成蛋白活性のモジュレーターである化合物を開示する。
【解決手段】 化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである。骨患部、変性間接疾患の治療における、及び、骨形成の増強のために本発明の化合物を使用し得る。
【解決手段】 化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである。骨患部、変性間接疾患の治療における、及び、骨形成の増強のために本発明の化合物を使用し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成成長因子モジュレーター組成物、特に骨形成蛋白(BMP)ファミリーのモジュレーターに関する。本発明の組成物はBMP−2受容体に特異的な結合親和性を有する1本鎖又は2本鎖のペプチド配列、リンカー、場合により疎水性リンカー、及び、非成長因子ヘパリン結合配列を有する本明細書に開示した式のもの、及び合成成長因子モジュレーターの使用方法である。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる2004年2月20日に出願されたPositive Modulator of Bone Morphogenic Protein−2と題された米国特許暫定出願60/547,012の出願の利益を主張する。
【0003】
本出願は各々の明細書が参照により本明細書に組み込まれる2002年8月20日出願されたSynthetic Heparin−Binding Growth Factor Analogsと題された米国特許出願10/224,268の部分継続出願である2003年8月19日に出願されたSynthetic Heparin−Binding Growth Factor Analogsと題された米国特許出願10/644,703に関する。
【背景技術】
【0004】
以下の考察は多くの著作物及び年次出版物を参照しており、そして最近の出版物の日付のために特定の出版物は本発明の従来技術と見なされないものもあることに留意しなければならない。このような出版物は本明細書においては、より完全な背景のために呈示するものであり、そのような出版物は特許性を決定する目的のための従来技術であることを許容するものではない。
【0005】
骨形成蛋白(BMP)は胚から成人段階を通して広範な臓器及び組織の発達に関与している蛋白のグループである(Wozney JM 2002,Spine 27(16 Suppl 1):S2−8)。BMPはまた傷害後の組織の修復及びリモデリングの過程において重要な役割を果たしている。特定のBMPは動物モデルにおいて異所性の骨形成を誘導し、そして、重篤な大きさの分節性骨欠損の治癒を増強する。臨床試験によれば、組み換えヒトBMP(rhBMP)は自家骨グラフト処置の安全で有効な代替物であることがわかっている。rhBMP−2およびrhBMP−7はそれぞれ脊髄融合及び難治性の長骨偽関節においてヒトにおける使用が認可されている(Kleeman et al.2001,Spine 26(24):2751−6,Burkus et al.2002,Spine 27(21):2396−408,Mckay et al.2002,Spine 27(16 suppl 1):S66−85, Poynton et al.2002,Spine 27(16 suppl 1):S40−8)。
【0006】
rhBMP−2の有効性は用量に大きく依存していると考えられる。生理学的用量を大きく超えた用量がインビボの治療効果のために必要である。例えば1mg/ml程度のrhBMP−2の濃度が脊髄固定ケージにおいて使用され(8mg/ケージ以下))、この量は内因的に典型的に存在するものよりも3桁高いの量である(McKay et al.2002,Spine 27 (16 suppl 1):S66−85)。このような高用量の組み換え蛋白を投与することは高価であるばかりでなく、骨成長亢進及び免疫応答のような副作用を伴う場合がある。従って、BMP活性を増強するためのBMP−2の正のモジュレーターの開発が臨床的に重要である。
【0007】
BMP−2シグナリングには2つの型の膜貫通セリン/スレオニンキナーゼ受容体、即ち、I型(BRI)及びII型(BRII)が関与している(Hoodless et al.1996,Cell 85(4):489−500,Kawabata et al.,1995,J.Biol Chem 270(10):5625−30,Nohno et al.1995,J Biol Chem 270(38):22522−6,Rosenzweig et al.1995,Proc Natl Acad Sci USA 92(17):7632−6)。活性リガンド/受容体複合体は2:2:2比のBMP−2、BRI及びBRIIよりなる(Reddi AH 2001 J Bone Joint Surg Am 83−A Suppl 1(Pt1):S1−6)。BMP−2がその生物学的機能を発揮するためにはI型及びII型の両方の受容体が必要である。BMP−2結合により、BRIIによるホスホリル化の結果としてBRIキナーゼが活性化される。BRIIはBRIの存在がなければBMP−2には結合せず、そしてBMP−2とBRIIの複合体はBRI非存在下でシグナリングを開始することができない。BRI受容体におけるセリン/スレオニンキナーゼはSmad4とのヘテロマー複合体に組みたてられ核内に転座して標的遺伝子の転写を調節するSmad1、Smad5およびSmad8のホスホリル化に携わっていると考えられてい(Massague et al.2000,Genes Dev 14(6):627−44,Attisano et al.2000,Curr Opin Cell Biol 12(2):235−43)。更に、活性化された受容体複合体はSmad経路とは独立してp38MAPキナーゼ経路を活性化することができる(Iwasaki et al.1999,J Biol Chem 274(37):26503−10,Miyazono K2000,J Cell Sci 113(Pt7):1101−9)。現在では、BMP−2がシグナリングを開始するには2つの様式が存在すると考えられている。Gilboa等は複数のBMP受容体オリゴマーがリガンド結合前の細胞表面に存在することを示している(Gilboa et al.2000,Mol Biol Cell 11(3):1023−35)。その後Nohe等は予備形成された受容体複合体がBMP−2誘導Smad経路活性化に携わっており、そしてBMP−2誘導受容体複合体がp38キナーゼ経路を開始させることを示している(Nohe et al.2002,J Biol Chem 277(7):5330−8)。
【0008】
ヘパリン結合成長因子類縁体を形成する幾つかの試みがなされている。例えば天然の血小板誘導成長因子(PDGF)はhead−to−head(AA又はBB)ホモ2量体、又は(AB又はBA)ヘテロ2量体に配置したA鎖およびB鎖として存在する。即ちJehanli等への米国特許6,350,731は天然の活性ポリペプチド2量体を模倣したポリグリシン又はN−(4−カルボキシ−シクロヘキシルメチル)−マレイミド(SMCC)鎖を介して2つの合成PDGF受容体結合ドメインが共有結合したPDGF類縁体を開示している。
【0009】
Ben−Sassonへの米国特許6,235,716は血管形成因子の類縁体を開示している。類縁体は多リンカー骨格により連結された血管形成相同領域2つ以上を含む分枝鎖多価リガンドである。
【0010】
Godowskiへの米国特許5,770,704(’704特許)は受容体チロシンキナーゼ、サイトカイン受容体及び神経成長因子受容体スーパーファミリーのメンバーを活性化するためのコンジュゲートを開示している。コンジュゲートは、同族体受容体への結合が可能な少なくとも2つのリガンドを含むことにより、それぞれのリガンドの結合がこれ等の受容体のオリゴマー化を誘導する。’704特許に開示されたリガンドは種々の非蛋白性重合体、特に親水性重合体、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン及びポリビルルアルケンエーテル類、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールへの共有結合により連結される。リガンドは各々が肝細胞成長因子(HGF)受容体と結合するHGFペプチド変異体を含むことにより、受容体の2量体化及びHGF受容体2量体の生物活性の活性化を誘発する。
【0011】
Caldwell等への米国特許6,284,503(’503特許)は細胞接着、細胞生育、細胞分類及び生物学的試験のための、疎水性表面及び疎水性コーティング表面への細胞及び生体分子の接着を調節するための組成物及び方法を開示している。組成物は反応性末端基活性化重合体にコンジュゲートされた生体分子である。末端基活性化重合体はブロック共重合体界面活性剤骨格及び活性化又は反応性の基を包含する。ブロック共重合体は疎水性表面に吸着できる疎水性領域及び疎水性領域が疎水性表面に吸着された場合に表面から隔たる方向に伸長する親水性の領域を有する何れかの界面活性剤であってよい。’503特許は末端基活性化重合体にコンジュゲートしてよい生体分子は天然又は組み換えの成長因子、例えばPDGF、EGF、TGFα、TGFβ、NGF、IGF−I、IGF−II、GH及びGHRF並びに重複CSF(IL−3)、GM−CSF、G−CSF及びM−CSFを包含すると開示している。
【0012】
他の研究者等は線維芽細胞成長因子(FGF)の相同体及び類縁体を包含する組成物を記載している。例えばLappi及びBairdへの米国特許5,679,673;Deisher等への米国特許5,989,866及びFiddes等への米国特許6,294,359を参照できる。これ等の開示は毒性部分にコンジュゲートされており、FGF受容体担持細胞にターゲティングされているか;又は、FGF相同体又は類縁体による結合時にFGF受容体により伝達されるシグナルを介して生物学的経路をモジュレートする相同体又は類縁体のいずれかであるFGF相同体又は類縁体に関する。
【0013】
Kochendoerfer等の一連の特許出願は合成ケモカイン及び赤血球形成刺激蛋白を含む重合体修飾蛋白を開示している。例えば国際特許公開WO02/04105、WO02/19963及びWO02/20033を参照できる。これ等は蛋白のグリコシル化部位1つ以上に結合した水溶性重合体を有するポリペプチド鎖が生じるように合成の赤血球形成蛋白のポリペプチド鎖に化学的にライゲーションされたペプチドセグメントを含む。これらの出願はやはり重合体修飾され、拮抗剤とされている合成のケモカインも開示している。しかしながら、ヘパリン結合ドメインは開示されていない。他の赤血球形成ミメティック、例えばWrighton等への米国特許5,773,569及び5,830,851に開示されているようなものも知られている。
【0014】
Ballinger及びKavanaughへの国際特許公開WO00/18921は直接又は連結基を介して「オリゴマー化ドメイン」にアフィニティー連結されたFGF受容体を有する融合蛋白よりなる組成物を開示している。オリゴマー化ドメインの長さは約20〜300残基であり、転写因子、IgGのFc部分、ロイシンジッパー等のコンストラクトを含んでいる。開示されたオリゴマー化ドメインはホモ2量体ドメインであり、ここでは単一のFGF受容体親和性融合蛋白が単一のドメイン、例えばロイシンジッパーに連結しており、これが次に同様の分子に対してロイシンジッパーのアミノ及びカルボキシ末端の両方においてシステイン残基により連結され、ここでは各々が単一のFGF受容体親和性融合蛋白を有する2つの平行したロイシンジッパーがジスルフィド結合により交差結合している。融合蛋白はヘパリン結合ドメインを含んでよいこと、例えばヘパリン結合ドメインとされている多量体化ドメインとしてjunを使用することが開示されている。即ちBallinger及びKavanaughにより開示されている組成物は全て、オリゴマー化ドメインに共有結合した単一の受容体結合配列よりなるものであり、これにより各々が単一の受容体結合配列を有する2つ以上の同じオリゴマー化ドメインが、オリゴマー化ドメインにより与えられる会合により接合させられているか、或いは、化学的に共有結合することにより個々の成分の共有結合を与えている。
【0015】
上記した相同体、類縁体、コンジュゲート又はリガンドは、各々、受容体結合ドメインを含んでいる。しかしながら、開示された化合物又は組成物の何れも更に、ジペプチド配列への2受容体結合ドメインの連結をもたらし、更にヘパリン結合ドメインを含有する単一の非シグナリングペプチドを共に与えるリンカーを含んでいない。更にまた、これ等、又は、他の知られたヘパリン結合成長因子類縁体の何れも、本明細書に後述する利点を与えていない。更にまた、従来技術はBMP−2のような天然に存在する成長因子の効力を相乗作用により増大又は増強させるモジュレーターを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の化合物は骨形成蛋白2(BMP−2)、特にヒトBMP−2の部分的アゴニストである。本明細書においては、「BMP−2」とは特にヒトBMP−2を包含するが、ヒトBMP−2に限定されない。本発明の化合物はBMP−2の生物活性を大きく増強する。用途としては、本発明の化合物は脱鉱物化骨マトリックス(DBM)に対する添加剤及びBMP−2の生物活性を最大限とする骨グラフト材料として使用できる。本発明の化合物はDBM(外因性)及び修復中の骨(内因性)において存在するBMP−2の生物活性を増強する。本発明の化合物は好ましくは固相ペプチド化学により作成される。本発明の化合物の臨床使用は用途のうちでも骨修復を加速することに適用される新しい治療手段を提供する。
【0017】
本発明の化合物はBMP−2の生物有効性を実質的に増大させ、そして、BMP−2用量閾値を実質的に低下させる。本発明の化合物+BMP−2はBMP−2の閾値下濃度においてアルカリホスファターゼ(ALP)活性を実質的に上昇させる。本発明の化合物はBMP受容体アイソフォームと直接相互作用し、本発明の化合物とBMP−2との組み合わせは有糸分裂促進物質活性化蛋白キナーゼ(MAPキナーゼ)の相乗作用的抑制及びSmad活性化の相乗作用的増大を誘発する。Smad活性化の相乗作用的増大は系に対するこれ等の化合物の観察された作用又は活性の大きな原因となっていると推定される。本発明の化合物はDBMとともに、例えばa)DBMで観察されるBMP−2の増強、及びb)骨修復において調節されないことがわかっている宿主BMP−2の増強から相応に生じる増強された骨修復を伴って供給されてよい。同様に、本発明の化合物をリン酸3カルシウム又は硫酸カルシウムのような伝統的な骨伝導性物質と組み合わせて供給すれば、宿主のBMP−2を増強でき、そして骨誘導及び骨充填物質内への増大した細胞遊走をもたらすことができる。両方の方策はBMP−2及びその受容体が骨修復過程の間にアップレギュレートされるという事実を利用している。
【0018】
本発明の1つの実施形態は、下記式I:
【0019】
【化1】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリング鎖である]の化合物である。
【0020】
本発明の更に別の実施形態は式Iのコーティングを含有する生物活性インプラントである。本発明の更に別の実施形態は式Iから製造される骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬である。本発明の更に別の実施形態は医薬組成物において使用される式Iの化合物及び/又は製薬上許容しうるその塩又は製薬用担体である。
【0021】
本発明の別の実施形態は下記式II:
【0022】
【化2】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、独立してR3に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR5およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングぺプチド鎖である]の化合物である。
【0023】
本発明の別の実施形態は式IIの化合物を含有する少なくとも1つのコーティングを有する生物活性インプラントである。
【0024】
本発明の別の実施形態は式IIの化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含有する医薬組成物である。
【0025】
本発明の更に別の実施形態は、脊椎動物における骨形成の増強、骨患部の治療又は変性間接状態の治療のための方法であって、この方法は、骨形成蛋白−2活性を増強する式I又は式IIの化合物有効量をそのような治療の必要な脊椎動物対象に投与することを含み、ここで化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである。
【0026】
本発明の1つの特徴は合成成長因子モジュレーターを提供する。
【0027】
本発明の別の特徴はインビボでBMP−2活性の正のモジュレーターである合成成長因子類縁体である化合物を提供する。
【0028】
本発明の別の特徴はインビトロでBMP−2活性の正のモジュレーターである化合物を提供する。
【0029】
本発明の更に別の特徴は治療目的のための外因性に適用されるBMP−2の有効量を低減する化合物を提供する。
【0030】
本発明の別の特徴は投与の必要な対象に対して送達される組み換えBMPの治療有効量を低減することである。
【0031】
本発明の別の特徴は骨折部位にBMPファミリーの組み換えメンバーと組み合わせて本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する対象を治療するための方法を提供する。
【0032】
本発明の別の特徴は骨折部位に本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する対象を治療するための方法を提供する。
【0033】
本発明の別の特徴は治療の必要な対象の部位にBMPファミリーの組み換えメンバーと組み合わせて本発明の化合物を提供することによる、骨生育の必要な対象を治療するための方法を提供する。
【0034】
本発明の別の特徴は治療の必要な対象の部位に本発明の化合物を提供することによる、骨生育の必要な対象を治療するための方法を提供する。
【0035】
本発明の別の特徴は本発明の化合物を含有するキットを提供することである。
【0036】
本発明の別の特徴は本発明の組成物を含有するキットを提供することである。
【0037】
本発明の別の特徴は本発明の化合物を含有する生物活性の移植可能な装置である。
【0038】
本発明の別の特徴、利点、新規な特徴及び別の適用範囲は部分的には後述する詳細な説明において添付図面を参照しながら説明する通りであり、そして部分的には後述部分を検討すれば当業者には自明のものであり、また本発明の実施により学習されるものである。本発明の目的及び利点は添付する請求項に特に記載した装置及び組み合わせを用いることにより実現達成される。
【課題を解決するための手段】
【0039】
臨床状況において、本発明の化合物はDBMとともに、例えばa)DBMで観察されるBMP−2の増強、及びb)骨修復においてアップレギュレートされることがわかっている宿主BMP−2の増強から相応に生じる増強された骨修復を伴って供給されてよい。同様に、本発明の化合物をリン酸3カルシウムのような伝統的な骨伝導性物質と組み合わせて供給すれば、宿主のBMP−2を増強でき、そして骨誘導及び骨充填物質内への増大した細胞遊走をもたらすことができる。両方の方策はBMP−2及びその受容体が骨修復過程の間にアップレギュレートされるという事実を利用している。
【0040】
BMP−2の既知の活性化経路に従えば、本発明の化合物はBMP受容体アイソフォーム(BRI及びBRII)と直接相互作用し、そして本発明の化合物とBMP−2との組み合わせはBMP−2単独を使用する場合と比較して、有糸分裂促進物質活性化蛋白キナーゼ(MAPキナーゼ)の相乗作用的抑制及びSmad活性化の相乗作用的増大を誘発すると推定される。BMP−2阻害剤は知られているが、これ等は生理学的範囲において機能する最初の知られたBMP−2エンハンサーである。
【0041】
本発明の化合物はBMP受容体と直接相互作用して骨原性分化をもたらすBMP−2誘導事象を正方向にモジュレートする。本発明の化合物とBMP−2との間の相乗作用的な効果は、少なくとも2種の骨原性分化マーカー、ALP活性及びSmadホスホリル化により測定した場合、2種の多能細胞系統、C3H10T1/2及びC2C12において観察された。BMP−2の何れかの所定濃度におけるALP活性の増強は一般的に5〜20倍上昇であった。負の調節物質であるか、正常な生理学的条件下では機能できない物質のいずれかを有する他のBMP−2モジュレータも研究者等により発見されているが、本発明の化合物はBMP−2を正方向にモジュレートする最初のペプチド特異的調節物質である。
【0042】
最近数種のBMP特異的拮抗剤が発見された。ノジン、コルジン及びグレムリンはBMP受容体と同じ親和性でBMPに結合し、従ってBMPを競合的に阻害することがわかっている(Zimmerman et al.1996,Cell 86(4):599−606,Hsu et al.1998,Mol Cell 1(5):673−83)。ラット骨髄細胞培養物において、bFGFはBMPと相乗作用的に作用することがわかっている(Hanada et al.1997,J Bone Miner Res 12(10):1606−14,Wang et al. 1993,Acta Orthop Scand 64(5):557−61)が、より高用量のbFGFはインビボで強い阻害作用を誘発している。Spinella−Jaegle等によれば、ソニックヘッジホッグ(Shh)はC3H10T1/2及びST2細胞においてBMP−2の作用を増強したが、類似の骨先駆細胞C2C12及び前骨芽細胞MC3T3−E1においてはBMP−2活性を増強できなかった。更にまた、増強作用はShhがBMP−2に応答する細胞のパーセンテージを上昇させたプライミング効果であると考えられることがわかった(Spinella−Jaegle S, et al.2001,J Cell Sci 114(Pt11):2085−94)が、Shh自身はC3H10T1/2においてALP活性を誘導することができる(Nakamura et al.1997,Biochem Biophys Res Commun 237(2):465−9,Kinto et al.1997 FEBS Lett 404(2−3):319−23, Katsuura et al.1999,FEBS Lett 447(2−3):325−8,Yuasa et al,2002,J Cell Physiol 193(2):225−32)。
【0043】
別の系統の研究においては、BMP活性を有するペプチドを形成する試行が満足できる結果を与えていない。骨誘導作用がBMP−7配列のストレッチに関してはDee等により(White et al.2001,vol.BED−Vol.50,American Society of Mechanical Engineers, Snowbird, Utah,pp201−202)、そして、BMP−2配列の2つの重複ストレッチについてはSuzuki&Tanihara (Saito et al.2003,Biochim Biophys Acta 1651(1−2):60−7,Suzuki et al.2000,J Biomed Mater Res 50(3):405−9)により報告されている。しかしながらこれ等の結果は、ペプチドを極めて高濃度において、および/またはそれらを数週間細胞と接触させる基盤に共有結合するという、超常的な実験系において得られたものである。例えば、最高のBMP−2様活性を有すると報告された線状ペプチド(Saito et al.2003,Biochim Biophys Acta 1651(1−2):60−7)は−BMP−2より2000倍高値の濃度−でのみ作用し、この濃度では細胞表面受容体からBMP−2を完全に置き換えるため、BMP−2の競合物質となる。
【0044】
従来技術のペプチドとは対照的に、本発明の化合物はBMP−2の活性を増強し、そしてそれを生理学的状況において推定されるBMP−2の濃度範囲において行うのである。
【0045】
BMPの異なる原料はヒト用途について考慮される異なる属性を呈する。BMPは骨から精製するが、収率はきわめて低く、同種異系のドナー骨からの単離にかかわる潜在的な健康上の危険性もこの原料から得たBMPの臨床用途に限界を与えている。臨床使用におけるBMPの大部分は真核細胞培養物から得た組み換え蛋白である。翻訳後の修飾の複雑性と低収率のためにこれ等の組み換え蛋白は極めて高コストとなる。更にまた、ヒトへの適用において薬効を得るために必要な量は意外にも高値であることがわかった(McKay et al.2002, Spine 27(16 Suppl 1):S66−85,Poynton et al.2002, Spine 27(16 suppl 1):S40−8)。
【0046】
BMP特異的エンハンサー、例えば本明細書に開示するものは独特の臨床的意味を有している。BMP−2エンハンサーを使用することにより必要なBMP−2の量を低減してよい。これは、合成ペプチドとして本発明の化合物が(a)製造経費がより低値であり、(b)概ね化学的安定性がより高値であり、そして、(c)増強された薬剤送達のために容易に化学修飾できるという理由から、医学上及び実際上の意義を有する。生物学的には、他の利点も存在する。例えば、脊椎固定の過程には骨原性関連の遺伝子発現の時間的および空間的なパターンを伴った事象の序列が含まれる。Morone等(Morone et al.1998,Clin Orthop(351):252−65)は脊椎固定における数種のBMPのmRNAの発現を検討しており、そしてBMP−2及び他のものが種々の水準で種々の時点において増大したことを観察している。生物学的に旨適なスケジュールに外因性適用の組み換えBMP−2をマッチさせることは躊躇されることである。同様にBMPはホモ及びヘテロ2量体として存在しえる。即ちBMPエンハンサーはそれらがインサイチュで存在する場合にBMPの天然の内因性の発現を増強することにより有効となる。
【0047】
即ち本発明の化合物は医療機器上又はその関連の組み換えBMP−2の有効量を低減するため、脱鉱物質骨マトリックス(DMB)のような生物学的調製物の生物活性を最大化するため、及び、骨治癒過程における宿主組織により形成されるBMP−2の内因性濃度を増強するために使用することができる。
【0048】
DBMは骨誘導性であり、臨床慣行において広範に使用されている1つの代替物質である。DBMは溶媒及び酸処理によりヒト骨から加工され、そしてその最終形態においてはコラーゲン及び低濃度の成長因子を含有する。DBMは多くの製造元、例えばWright Medical Technologies、Osteotech、the American Red CrossおよびInnovaより入手可能である。DBMはコラーゲン成分を介して新骨形成の土台となるスカホールドを与え、そしてその低濃度の成長因子を介してある程度の骨誘導能も有している。また骨芽に分化する周囲領域からの間葉幹細胞の活性化もある程度誘発する。
【0049】
しかしながらDBMの骨誘導能は低く、ロット毎及び製造元毎に変動する。DBM中の成長因子は骨先駆細胞に対して最も顕著な作用を有していると期待されるため、骨先駆細胞の利用性は脱鉱物質骨マトリックスを使用する場合には重要となる。頑健な骨誘導を誘発するDBMの制限された能力はこの物質の使用において限定的な要因として広範に観察されている。
【0050】
カルシウムリッチの骨グラフト物質のうち、ヒト原料から誘導されたものではない多数の市販品の骨充填剤が存在し、例えばPro Osteon(コラリンヒドロキシアパタイト、Interpore Cross International)、Bioglass(生物活性ガラスインプラント、US Biomaterials Corp.)、Collagraft(ヒドロキシアパタイト/リン酸3カルシウム及び純粋なウシ線維性コラーゲン、Zimmer)、CellplexTM(リン酸3カルシウム、合成海綿質骨、Wright Medical Technologies,Inc.)及び多くのリン酸カルシウム及びリン酸カルシウム充填剤が挙げられる。これらの物質は全て、骨伝道性であり、インプラント又はグラフト内への宿主からの毛細管、血管周囲組織及び骨先駆細胞の内生を支援する。しかしながらこれ等は骨誘導性ではない。
【0051】
生物学において、多くの企業が自家骨髄細胞又は血小板濃縮物として使用することを意図した骨充填製品を開発している。これ等の製品はそれぞれ、グラフト中の幹細胞の数を増大させること、又は、成長因子の量を増大させることを意図している。
【0052】
関連する手法において、InFuse脊髄ケージ製品(Sofamor−Danek、Medtronicの1部門)は骨伝導物質(コラーゲン)を骨誘導剤と組み合わせる装置の例である。InFuseは脊髄固定処置と関連して使用することを意図しており、同様の製品が新規骨折修復のために開発中である。
【0053】
脛骨非偽関節において使用する場合のInFuse、及び、程度は低値であるがStryker CorporationのOP−1が良好に使用されることは、組み換え成長因子の手法において高水準の利益をもたらしている。多くの別の成長因子が整形外科及び整形生物学の分野において評価されている。種々のBMPのうち、BMP−2は最も高い程度の骨誘導を示す因子であると考えられる。
【0054】
即ち骨グラフト物質の増大する臨床要求性及び成長因子の代替品又は既存の骨グラフト物質の改良への高い関心が存在している。
定義
本明細書においては、以下の用語は記載の通りの意味を有する。
【0055】
「アルケン」という用語は炭素−炭素二重結合1つ以上を含有する不飽和の炭化水素である。このようなアルケンの例はエチレン、プロペン等を包含する。
【0056】
「アルケニル」という用語は二重結合少なくとも1個を含有する炭素原子2〜6個の直鎖1価炭化水素基又は炭素原子3〜6個の分枝鎖1価炭化水素基を包含し;その例はエテニル、2−プロペニル等を包含する。
【0057】
本明細書で特定する「アルキル」基は、直鎖又は分枝鎖の配置のいずれかにある指定の長さのアルキル基を包含する。このようなアルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等を包含する。
【0058】
「アリール」という用語は6〜12環原子の1価又は2価の芳香族炭化水素基であり、場合によりアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシカルボニルよりなる群から選択される置換基1つ以上で独立して置換されているものを包含する。アリール基の例はフェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル及び2−ナフチル、これ等の誘導体等を包含する。
【0059】
「アラルキル」という用語は基RaRbを包含し、式中、Raはアルキレン(2価のアルキル)基でありRbは上記定義したアリール基である。アラルキル基の例はベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチル等を包含する。「脂肪族」という用語は炭化水素鎖、例えばアルカン、アルケン、アルキン及びこれ等の誘導体を包含する。
【0060】
「アシル」という用語は基RCO−を包含し、ここでRは有機基である。例はアセチル基CH3CO−である。
【0061】
ペプチド又は脂肪族の部分は、上記定義したアルキル又は置換アルキル基がカルボニル{=(C=O)−}基1つ以上を介して結合している場合に、「アシル化」されている。ペプチドは最も通常にはN末端においてアシル化される。
【0062】
「アミド」とはカルボニル基(−CONH2)に結合した3価の窒素を有する化合物である。
【0063】
「アミン」とはアミノ基(−NH2)を含有する化合物を包含する。
【0064】
「ジアミンアミノ酸」とは反応性のアミン基2個及び反応性のカルボキシル基を含有するアミノ酸又は残基である。代表例に2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチリックアミノ酸、リジン又はオルニチンを含む。
【0065】
「3官能性アミノ酸」とは1つ目はN末端アミン、2つ目はC末端カルボキシ、そして3つ目は側鎖の全て又は部分を含む反応性基3個を有するアミノ酸または残基である。即ち3官能性アミノ酸は例えばジアミンアミノ酸;側鎖に反応性スルフィドリル基を有するアミノ酸、例えばメルカプトアミノ酸、例えばシステイン、ペニシラミン又は3−メルカプトフェニルアラニン;側鎖に反応性カルボキシル基を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸;及び側鎖に反応性グアナジウム基を有するアミノ酸、例えばアルギニンを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
(本発明の化合物)
本発明の1つの実施形態によれば、化合物は、下記式I:
【0067】
【化3】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖であるのものである。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、化合物は下記式II:
【0069】
【化4】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は独立してR5に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアミノ酸残基であり、ここで第1のXはR5の側鎖を介して共有結合しており、そして第2のXはN末端アミンを介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである。
【0070】
式I及び式IIの各々において、共有結合は例えばペプチド結合又は他のアミド結合、チオエーテル結合又はエステル結合であることができる。基はそれが直接又は共有結合を含む他の基又は原子1つ以上を介して共有結合している場合に、他の基に共有結合している。
【0071】
式IのY領域の原子の鎖はR2に対し、そして配列Zに対して共有結合し、そして式IIにおいては、Y領域はR5に対し、そして配列Zに対して共有結合している。共有結合は例えばペプチド、アミド、チオエーテル又はエステル結合であることができる。特に好ましいものはペプチド結合である。好ましくは、Y領域は最低約7骨格原子の鎖を包含する。より好ましくは、Y領域は最低約12骨格原子の鎖を包含する。最も好ましくは、Y領域は最低約15骨格原子を包含する。例えば、Y領域は少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも6アミノ酸の鎖から形成してよい。或いは、Y領域は少なくとも1、少なくとも2又は少なくとも3アミノカルボン酸、例えばアミノヘキサン酸残基の鎖から形成してよい。特に好ましいものはYが直鎖アミノカルボン酸1つ以上である実施形態、例えば、Yが[NH2−(CH2)pCO]qであり、pが1〜約10であり、そしてqが1〜約20であるものである。使用してよい直鎖アミノカルボン酸の例は6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸等を包含する。
【0072】
好ましくは、Y領域は最大約50原子の鎖を包含する。より好ましくは、Y領域は最大約45原子の鎖を包含する。最も好ましくは、Y領域は最大約35原子の鎖を包含する。例えば、Y領域は約20まで、約15まで、又は約17までのアミノ酸の鎖から形成してよい。
【0073】
Y領域のアミノ酸配列は好ましくは人工の配列であり、即ち、BMP受容体の天然のリガンド中に存在するアミノ酸残基4個以上の如何なるアミノ酸配例も包含しない。
【0074】
特定の実施形態において、Y領域は疎水性アミノ酸残基、又は疎水性アミノ酸残基の鎖を包含する。Y領域は、例えばアミノカルボン酸残基1つ以上、例えばアミノヘキサン酸残基1、2、3つ以上を包含する。別の実施形態において、Y領域はアミノ酸疎水性残基の組み合わせを包含できる。
【0075】
別の特定の実施形態においては、分子のY領域は1〜約20炭素原子の分枝鎖又は未分枝鎖、飽和又は不飽和のアルキル鎖を包含する。別の実施形態においては、Y領域は親水性残基、例えばエチレングリコール残基の鎖を包含することができる。例えば、Y領域は少なくとも約3、又は少なくとも約4、又は少なくとも約5個のエチレングリコール残基を包含することができる。
【0076】
式I及び式IIの分子のZ領域はヘパリン結合領域であり、Verrecchio et al.J.Biol.Chem.275:7701(2000)に記載の通りヘパリン結合モチーフ、BBxB又はBBBxxBの1つ以上を包含できる。或いは、Z領域はBBxB及びBBBxxBモチーフの両方を包含することができる(ここでBはリジン、アルギニン又はヒスチジン、であり、そしてxは天然に存在する、又は天然に存在しないアミノ酸である)。例えばヘパリン結合モチーフは、各々独立してリジン又はアルギニンから選択される最初の3アミノ酸と後続するリジン又はアルギニンである何れかの2アミノ酸及び第6のアミノ酸を示す配列[KR] [KR] [KR]x(2)[KR](配列番号1)で表してよい。
【0077】
ヘパリン結合モチーフの数は可変である。例えば、Z領域は少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3又は少なくとも5個までのヘパリン結合モチーフを包含してよい。1個より多いヘパリン結合モチーフが存在する場合、モチーフは同じかまたは異なっていてよい。或いは、Z領域は最大約10個までのヘパリン結合モチーフを包含する。別の実施形態においては、Z領域は少なくとも4、少なくとも6又は少なくとも8個のアミノ酸残基を包含する。更にまた、特定の実施形態においては、Z領域は約20個まで、約25個まで、又は約30個までのアミノ酸残基を包含する。部分的にはヘパリンに対するZ領域の結合親和性は選択された特定のヘパリン結合モチーフ及びZにおけるそのようなモチーフの数により決定される。即ち、特定の用途においては、このようなモチーフの選択と数はZ領域の旨適ヘパリン結合を与えるように変化してよい。
【0078】
好ましい実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLERIAR(配列番号2)である。別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLGRIAR(配列番号3)である。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLWRARA(配列番号4)である。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRLDRIAR(配列番号5)であり、Jun/AP−1DNA結合ドメインの残基270〜279の配列の修飾から誘導されるヘパリン結合モチーフを与える(Busch et al,Trans−Repressor Activity of Nuclear Glycosaminoglycans on Fos and Jun/AP−1 Oncoprotein−mediated Transcription.J.Cell Biol.116:31−42,1992)。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLERIARC(配列番号6)である。末端システイン残基の存在は場合により他の分子、例えば検出用試薬、例えば蛍光団、放射性同位体及び他の検出可能なマーカーのZ領域への連結の機会、並びに、毒素、免疫原等の連結の機会を与える。
【0079】
本発明の合成骨形成蛋白蛋白類縁体、例えば式I及びIIのものは、X領域が以下のアミノ酸配列:
の何れかの全体又は部分又は全体又は部分の相同体である実施形態を包含する。
【0080】
好ましい実施形態においては、X領域はアミノ酸配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号8)である。より好ましくは、X領域はアミノ酸配列LYFDESSNVILKK(配列番号9)である。さらにより好ましくはX領域はアミノ酸配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)である。
【0081】
本発明者等は意外にも、そして好都合にも、式I及びIIのものを含む本発明の化合物においてX領域は逆方向に合成してよいことを発見しており、その場合、従来のN→Cの方向に示してある配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を想定した場合、そして式Iを用いた場合、R2側鎖に結合した第1のアミノ酸はN末端アミノ酸残基であり、N末端アミノ酸残基に結合した第2のアミノ酸は2位の残基・・・等々となり、しかしなお、化合物は生物活性を温存しており、BMP受容体に特異的に結合するのである。このようなコンストラクトは、従来のN→Cの方向に基づけば、逆の配列を有すると見なしてよく、即ち、R2がジアミンアミノ酸であるイプシロンアミンとのペプチド結合を形成するものは、従来のN末端アミノ酸残基のカルボキシル基である。即ち、ここでもまた、従来のN→Cの方向を用いれば、上記配列を逆方向に使用してよく、得られる本発明の化合物は生物活性であり、本明細書に記載する通り使用してよい。好ましい実施形態によればX領域は本明細書の実施例2に開示する通り配列LVVKENEDLYLMSIA(配列番号15)(やはり従来のN→Cの方向の配列を想定する)である。実施例2に記載する通り、C末端アラニン(A)は式IのR2位においてリジン(K)のイプシロンアミンに結合し、イソロイシン(I)はアラニンにペプチド結合する・・・等々となる。即ち以下の配列:
【0082】
【化5】
が提供され、本明細書に記載する通り生物活性である。
【0083】
LVVKENEDLYLMSIA(配列番号15)に加えて全体又は部分的に使用してよい他の逆配列及びその相同体は、例えば、YNKLVVKENEDLYLMSI(配列番号16)、KKLIVNSSEDFYL(配列番号17)、WDNWGVDSFDVYL(配列番号18)、GEVVMDQYNKLVVKE(配列番号19)、LHDALPFPCEGHCYFA(配列番号20)、VSNVLTQVIAHNTSNLHDALPFP(配列番号21)およびLVVKENEDLYLMSIAC(配列番号22)を包含するが、これに限定されるものではない。
【0084】
或いは、別の特定の特徴において、本発明は、表1に示す配列を有する合成BMP、TGF又はGDF(成長分化因子)ペプチド類縁体を提供し、ここで形質転換成長因子ファミリーメンバーペプチドは内因性又は人工のBMPペプチド又はTGFペプチドの活性を増強する場合に特に有用であり、ここでは式I又はIIの何れかのコンストラクトのX領域の全体又は部分を形成する配列を示す(見出し「好ましいX受容体結合ドメイン」の下)。見出し「好ましいX受容体結合ドメイン」の下に列挙された何れの配列のあるもの、又は僅か一部を用いてよく、そして、使用するX領域は以下に列挙する何れかの配列の部分集合であってよい。更に、X配列は以下に列挙する配列の全体又は部分に同一である必要はなく、そして全体又は部分に相同であってよく、例えば80%〜95%相同の配列であってよい。
【0085】
【表1】
(配列番号23)
【0086】
「相同である」という用語は本明細書においては、配列を並置した場合にアミノ酸位置の1つ以上においてアミノ酸配列が異なるペプチドを指す。例えば、2つの相同のペプチドのアミノ酸配列は5〜10アミノ酸の並置されたアミノ酸配列内において僅か1アミノ酸残基のみ異なることができる。或いは、10〜15アミノ酸の相同ペプチド2つは並置した場合に2個以下のアミノ酸残基が異なっていることができる。別の例においては、15〜20以上のアミノ酸の相同ペプチド2つは並置した場合に3個以下のアミノ酸残基が異なっていることができる。より長いペプチドについては、相同ペプチドは、ペプチド相同体2つのアミノ酸配列を並置した場合にアミノ酸残基の約5%、10%又は20%以下が異なることができる。
【0087】
式I又はIIのX領域として特に有用なアミノ酸配列は、僅か1又は2又は極めて少数の位置において天然の成長因子のアミノ酸配列と異なる天然に存在する配列のフラグメントの相同体を包含する。このような配列は好ましくは保存的な変化を包含し、その場合、元のアミノ酸はよく知られた原則に従って同様の特徴のアミノ酸で置き換えられており;例えばアラニンのような非極性アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシン又はプロリンとの置き換え;又は1つの酸性又は塩基性のアミノ酸の同じ酸性又は塩基性の特徴の別のアミノ酸による置換となっている。
【0088】
式IのR3領域又は式IIのR6領域は原子の鎖又は鎖を形成する原子の組み合わせを含むことができる。典型的には、鎖は主に炭素原子の鎖であり、これは場合により、例えばアミノ酸(例えば上記列挙した蛋白中に存在するアミノ酸;蛋白中には存在しない天然に存在するアミノ酸、例えばオルニチン及びシトルリン;又は非天然のアミノ酸、例えばアミノヘキサン酸;又は上記アミノ酸の何れかの組み合わせ)から形成された原子の鎖の場合のように、酸素又は窒素原子を含んでいてよい。ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アミノポリエチレングリコール、ビスアミン−PEG、及び当該分野でよく知られているポリエチレングリコールの他の変異体のような薬剤も同様に使用できることも意図している。R3又R6領域のために特に好ましいものは、鎖を標準的なペプチド合成法において利用してよいような、アミノ末端及びカルボキシル末端を含む鎖である。例示されるものは、何れかのアミノ酸、アミノカルボン酸、好ましくは直鎖アミノカルボン酸、及び二官能性のアミノ−PEG−酸スペーサーを包含する。アミノ酸のうちではグリシンが好ましい。
【0089】
本発明の一部の実施形態においては、式IのR3領域の各々又は式IIのR6領域の各々は異なることができるが、大部分の実施形態においては、領域は同一であることが好ましい。しかしながら、そのような領域は異なっていてよく;例えば式IIにおいてR6はジアミンアミノ酸、例えばリジンであってよい。合成の間にオルト保護基を利用することによりアルファアミン又はイプシロンアミンの何れかを保護し、その後アミノ酸残基又は他の基を付加させてR6基を形成し、そして次にオルト保護基を除去し、R5上の脱保護アミン及びR6上の末端アミンからのX基のパラレル合成と共に進行させることが可能である。同様の方法は式Iに関しても使用してよい。
【0090】
(本発明の化合物の合成方法)
本発明の化合物の合成は当該分野でよく知られている種々の化学的方法の何れかにより達成できる。このような方法はベンチスケールの固相合成及び多くの市販のペプチド合成装置の何れかにおける自動ペプチド合成を包含する。好ましくは、合成装置は99パーセント超のサイクルあたりのカップリング効率を有する。
【0091】
本発明の化合物は段階的合成によるか、又は、同様のよく知られた技術によりカップリングできる一連のフラグメントの合成により製造できる。例えばNyfeler, Peptide synthesis via fragment condensation. Methods Mol.Biol.35:303−16(1994);およびMerrifield, Concept and early development of solid−phase peptide synthesis. Methods in Enzymol. 289:3−13(1997)を参照できる。これ等の方法は個々のペプチドの製造のために日常的に使用されている。コンポーネント部分で本発明の類縁体、例えばそのX、YおよびZのコンポーネントを構成するペプチドを組み立て、その後そのようなコンポーネント部分をカップリングして類縁体を組み立てることも可能である。例えばDawson and Kent, Synthesis of native proteins by chemical ligation. Annu. Rev. Biochem.69:923−960(2000);およびEom et al.,Tandem ligation of multipartite peptides with cell−permeable activity.J.Am.Chem.Soc.125:73−82(2003)を参照できる。しかしながら好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、樹脂に結合した式I又はIIのZ領域のC末端残基を用いた固相合成および段階的に進行する合成により合成する。従来の保護基を必要に応じて使用し、脱保護は樹脂からのペプチドの脱離の前、最中又は後の何れかに行う。例示すれば、本発明式IのR2位又は式IIのR5位の何れかに加えてリジン残基1つ以上を含有する本発明の化合物については、そのような付加的なリジン残基は従来は保護基により保護され、そして合成後に脱保護される。
【0092】
(本発明の化合物の使用方法)
本発明の化合物は可溶性の予防用又は治療用の医薬品を含む種々の方法で有用である生物活性分子の安価な原料を提供する。
【0093】
本発明の化合物はまた、生物学的応答を誘発するため、例えば細胞の成育および増殖、又は創傷の治癒を促進するための、例えば縫合糸、インプラント及び医療機器のような医療装置の要素として、及び医療装置のコーティングのための生物活性物質としても有用である。
【0094】
1つの特徴において、本発明はBMP−2の類縁体のような本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する哺乳類を治療するための方法及び組成物を提供する。例えば、本発明のこのような化合物は医薬品として投与してよく、或いは、骨マトリックス又は骨グラフト物質への添加物として使用してよい。
【0095】
「医療装置」という用語は本明細書においては、生物、好ましくは哺乳類、特にヒトの臓器、組織、血液又は他の体液に接触する表面1つ以上を有する装置を意味する。医療装置は例えば患者に返送される血液に接触する血液オキシゲネーター、血液ポンプ、血液センサー、輸血用配管等のような外科的処置において使用するための体外装置を包含する。用語はまた、血管又は心臓内に移植される血管グラフト、ステント、ペースメーカー配線、心臓弁、静脈瘤コイル等のようなヒト又は動物の身体内部で血液と接触して移植される内在補綴物も包含する。用語は更に、モニタリング又は修復を目的とした血管又は心臓内に静置されるカテーテル、ガイドワイア等のような一時的血管内使用のための装置も包含する。用語は更に神経電極、筋肉電極、移植用パルスジェネレーター、移植用薬剤ポンプ及び除細動器も包含する。更にまた、医療装置という用語は、縫合糸、グラフト材料、創傷被服物、神経ガイド、骨ワックス、塞栓粒子、マイクロビーズ、歯科用インプラント、骨補綴物、骨グラフト物質、脊髄固定ケージ、骨充填物、整形外科用装置、組織スカホールド、人工関節又は制御放出薬剤送達装置を包含する。
【0096】
医療装置の表面は医療装置において使用するのに適する一般的に使用されている材料の何れか、例えばステンレス、チタン、白金、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリシロキサン(例えば2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)、天然ゴム又は合成ゴム、またはこれ等のブロック重合体又は共重合体から形成することができる。
【0097】
医療装置の表面に生物学的分子をコーティングするための方法は既知である。例えばHendriks等への米国特許5,866,113を参照でき、その明細書は参照により本明細書に組み込まれる。Tsang等は米国特許5,955,588において、非血栓形成性コーティング組成物及び医療装置上のその使用方法を記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。Zamora等は米国特許6,342,591において細胞接着組成物をモジュレートするための医療装置のための両親媒性のコーティングを記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
本発明の化合物は医療用途及び動物飼育又は家畜用途の両方のための医薬組成物中の活性成分として使用することができる。典型的には、本発明の化合物又は医薬組成物はヒトにおいて使用するが、他の哺乳類においても使用してよい。「患者」という用語は哺乳類個体を指すことを意図しており、明細書及び請求項全体を通じてそのように使用する。本発明の基本的な適用はヒト患者が関わるものであるが、本発明は実験用、農業用、動物園、野生、ペット、競技用、又は、他の動物にも適用してよい。
【0099】
本発明の化合物は何れかの製薬上許容しうる塩の形態であってよい。「製薬上許容しうる塩」という用語は製薬上許容しうる非毒性の塩基又は酸、例えば無機又は有機の塩基及び無機又は有機の酸から製造した塩を指す。無機塩基から誘導した塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガンの塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のものを包含する。特に好ましいものはアンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。製薬上許容しうる有機非毒性塩基から誘導した塩は、第1、第2及び第3アミンの塩、置換アミン、例えば天然に存在する置換アミン、環状アミン、及び塩基性のイオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩を包含する。
【0100】
本発明の化合物が塩基性である場合は、製薬上許容しうる非毒性の酸、例えば無機又は有機の酸から酸付加塩を製造してよい。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が包含される。本発明の化合物の酸付加塩は化合物に適する溶媒、及び、過剰量の酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸において製造する。酢酸塩の形態が特に有用である。本発明の化合物が酸性の部分を含む場合は、適当な製薬上許容しうる塩はアルカリ金属の塩、例えばナトリウム又はカリウムの塩、又はアルカリ土類金属の塩、例えばカルシウム又はマグネシウムの塩を包含してよい。
【0101】
本発明は本発明の化合物及び製薬上許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。担体は液体製剤であってよく、1つの実施形態においては、緩衝液とした等張性の水溶液である。製薬上許容しうる担体はまた、後述する通り、賦形剤、例えば希釈剤、担体等、及び添加剤、例えば安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝物質等含有する。
【0102】
即ち本発明の化合物は少なくとも1種の本発明の化合物を1つ以上の製薬上許容しうる担体、例えば賦形剤、例えば希釈剤、担体等及び添加剤、例えば安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝物質等と共に所望に応じて含有する医薬組成物に製剤又は複合化してよい。製剤賦形剤はポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、PEG、PEO、マンニトール、塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリウム、並びに多くの単糖類、例えばスクロース、デキストロース、ラクトース等及び上記したものの組み合わせを包含する。注射又は他の液体投与製剤については、緩衝成分少なくとも1つ以上を含有する水が好ましく、安定化剤、保存料及び可溶化剤をも使用してよい。固体剤型については、種々の増粘剤、充填剤、増量剤及び担体の添加剤の何れか、例えば澱粉、糖類、脂肪酸等を使用してよい。局所投与製剤については、種々のクリーム、軟膏、ゲル、ローション等の何れかを使用してよい。大部分の医薬品製剤については、非活性の成分が製剤の重量又は容量においてより大きい部分を構成する。医薬品製剤については、種々の計量放出、遅延放出又は時間指定放出の製剤及び添加剤の何れかを使用することにより、長時間に渡り本発明の化合物の送達が行われるように投薬量を調整してよい。
【0103】
実際の使用においては、本発明の化合物は従来の医薬組成物製造技術に従って製薬用担体との混合物中に活性成分として組み合わせることができる。担体は投与のために望まれる製剤の形態に応じて広範な種類の剤型を取ってよく、例えば経口、非経腸(静脈内を含む)、尿道内、膣内、鼻腔内、口腔内、舌下等であってよい。経口用剤型のための組成物の製造においては、通常の医薬品用媒体の何れか、例えば懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口用液体製剤の場合は例えば水、グリコール、油脂、アルコール、フレーバー剤、保存料、着色剤等;又は例えば粉末、ハード及びソフトカプセル又は錠剤のような経口用固体製剤の場合はでんぷん、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、錠剤崩壊剤等を使用してよい。
【0104】
注射による使用に適する剤型は滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の要時調製のための滅菌粉末を包含する。全ての場合において、剤型は滅菌されており、市臨時で投与してよい程度の流動性を有さなければならない。剤型はまた、製造及び保存の条件下で安定であり、細菌及びカビのような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール、これ等の適当な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。
【0105】
本発明を以下の非限定的な実施例により更に説明する。
【実施例1】
【0106】
材料:C1C12細胞及びC3H10T1/2細胞はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。E.coli又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞誘導組み換えヒトBMP−2はR&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。組み換えkBR1−Fcキメラ蛋白としての可溶性BMP−2受容体もR&D Systemsから購入した。エンドスタチン−Fc、FGF−2及びVRGFはBiological Resources Branch of Developmental Therapeutics Program,National Cancer Institureを通じて入手した。TGF−ベータ1はSigma Aldrich Chemical Companyより購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)、抗ホスホリル化MAPキナーゼ抗体及び抗ヒトFc抗体セイヨウワサビパーオキシダーゼコンジュゲートはSigma(St.Louis、MO)より入手した。ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(CBS)、DMEM/F12培地及びペニシリン/ストレプトマイシンはInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。シリルヘパリンはベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイルヘパリンであり、文献記載の通り合成した(Zamora et al.,2002,Bioconjug Chem 13(5):920−6)。慨すればシリルヘパリンは疎水性の基ベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)−オキシカルバモイルスクシンイミドをヘパリンと反応させることにより疎水性表面に吸着できる両親媒性のヘパリン誘導体を形成することにより製造する。コーティング目的のためには、シリルヘパリンを70%酸性化水性エタノール中の1%溶液として使用した。
【0107】
アルカリホスファターゼ(ALP)活性試験:C2C12細胞及びC3H10T1/2細胞は10%血清、ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM/F12培地で5%CO2及び95%空気の湿潤雰囲気下37℃において培養した。BMP−2誘導ALP活性については、細胞を通常の生育培地中、96穴(1x104/ウェル)ディッシュ中にプレーティングした。24時間後、細胞が融合性の単層を形成した時点で、培地を2%血清を添加し、指定濃度のBMP−2及び/又はB2A2を含有したDMEM/F12と交換した。誘導の4〜5日後、ALP活性をAkiyama等の記載(Akiyama et al.1997,Exp Cell Res 235(2):362−9)に変更を加えた方法により測定した。慨すれば、細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄し、10mMTrisHCl、pH9.0中の0.1%TritonX100で溶解した。蛋白濃度はBCA蛋白試験キット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を用いて測定した。次にALP緩衝液(1Mジエタノールアミン、0.5mMMgCl2、1mg/mLp−ニトロフェニルホスフェート、pH9.0)を添加し、37℃でインキュベートし、吸光度(405nm)をマイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて15、30及び60分に読み取ることにより、ALP活性を測定した。活性は時間当たりミリグラム蛋白当たりのODとして表示した。
【0108】
ペプチド合成及び製造:ペプチドB2A2及びB2A2−K−NSは実施例2および9に記載する通り従来の固相合成により合成し、C−18上の逆相HPLCで精製した。
【0109】
HPLC精製ペプチドの留分をあわせ、凍結乾燥し、凍結保存した。凍結乾燥した塊状の物質の小分量を用いて市販のキット(BCA、Pierce Endogen,Inc。)によりペプチド含有量を測定した。大部分の別の目的のためには、ペプチドを終濃度0.5mg/ml又は1mg/mlとなるように0.05%Pluronic127を含有する5.5%グルコース中に溶解し、0.22ミクロンのフィルターで滅菌濾過し、そして50又は100μgを含有する小分量ごとに凍結乾燥した。
【0110】
受容体結合試験:固相結合試験におけるBMP受容体への結合。B2A2をELISAプレートに飽和するまで吸着させ、可溶性BMP受容体免疫グロブリンFc融合蛋白を添加し、そして結合した受容体をHRPコンジュゲート抗Fc抗体を用いて比色試験により検出し、数値はバックグラウンドを差し引いて表示した。BMPR及びActivin受容体ファミリーの種々の受容体アイソフォームへのB2A2の特異的結合は、記載した受容体Fcキメラを用いて試験した。特異性を明確化する陰性対照はプレートに吸着された無関連のポリペプチド(例えばインスリン)及び無関連のキメラ蛋白(エンドスタチン−Fc)のインキュベートを包含し、その何れもB2A2の結合をもたらさなかった。見かけ上2段階のBMPR−Ibへの結合が受容体置換実験により明らかになった。結合した受容体はrhBMP−2を記載した濃度で添加することにより置換された。
【0111】
細胞生育:L6ラットの骨格筋芽細胞及びヒト胎児骨芽細胞系統(hFOB)(5)由来の細胞を標的として使用した。細胞の小分量(1〜5x103個)を96穴プレートのウェルに播種し、6〜24時間結合させた。培地をペプチドを含有する低血清(2%)培地に交換した。パクリタキセル(100ng/ml)及びアジ化ナトリウム(0.01%)を使用する場合は、これ等を細胞毒性を誘導することがわかっている比較参照物質として使用した。培養物は典型的には3日間インキュベートした後、相対的な細胞数をテトラゾリウム塩MTSを用いて調べた。
【0112】
細胞遊走:創傷辺縁部を通過する遊走に関する試験については、細胞はインビトロで成育させ、約90%が融合した時点で使用した。刺激創傷は培養容器表面から細胞を掻き取ることにより形成した。培養物を濯いで未結合の細胞を除去し、次にペプチドの存在下又は非存在下に2%新生子ウシ血清を含有するDMEM:F12倍地中でインキュベートした。FGF−2(50ng/ml)を陽性対照比較参照物質として使用した。細胞は6時間遊走させた後、細胞を緩衝ホルマリン中に固定した。遊走は位相差顕微鏡でモニタリングした。遊走細胞は刺激創傷辺縁部を通過して遊走したものとした。
【0113】
インビボマトリゲルプラグ試験:インビボのモデルにはBMP−2及びB2A2の存在下又は非存在下の成長因子低減マトリゲルの若年成熟Fisher344中の皮下インプラントを用いた。動物は全処置の前にケタミン(50mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)を腹腔内注射することにより麻酔した。成長因子低減マトリゲルを4℃(液体状態)で食塩水(対照)、BMP−2(R&D Systems,Minneapolis,MN)、B2A2−K−NS又はB2A2−K−NS+BMP−2と混合した。上記した添加物を伴ったマトリゲルの0.5mlの小分量をラットの上部胴体に皮下注射した。注射部位はステンレスの剃刀で剃毛し、漏出を防止した。マトリゲルは注射時まで氷上に保持し、針とシリンジも同様に取り扱った(針のゲル化を防止するため)。その後動物を14日後に安楽死させ、ゲルを外科的に摘出し、カリパスで測定し、緩衝ホルマリン中に固定した。体外移植組織の大部分が全体的に長円形であり、長円の表面席は以下の式:
面積=πab
[式中aおよびbは長円の幅及び高さの1/2である]を用いて求めた。
【0114】
固定した標本を組織学的検査用に加工処理し、ヘマトキシリン及びエオシン、又は、トルイジンブルーOの何れかで染色した(Histoserv,Inc.,Germantown,MD)。
【実施例2】
【0115】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7は各R2がリジンであり、R3が骨格原子である式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0116】
【化6】
のものであり、場合によりB2A2と称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号7の2鎖はリジン側鎖のイプシロンアミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例3】
【0117】
実施例2の化合物(B2A2)を細胞骨原性分化試験において試験することにより骨原性の活性を刺激する類縁体の能力について調べた。B2A2はBMP受容体に結合し、そしてその受容体の活性化は骨原性転写因子Smadの発現およびMAPKの抑制を伴い、その後、ALPが低減される表現型の形質転換が起こる。図1Aを参照すれば、B2A2の存在下及び非存在下におけるBMP−2によるC3H10T1/2細胞における骨原性分化の誘導が示される。B2A2単独(10μg/ml以下)をC3H10T1/2細胞に投与した場合、アルカリホスファターゼ(ALP)活性の増大は僅かのみであった。しかしながらB2A2+BMP−2の最善に近い濃度(100ng/ml)はALP活性の有意な増大をもたらしている。BMP−2のEC50は典型的には300ng/mlである。
【0118】
C3H10T1/2細胞を96穴プレートに播種し、BMP−2単独又はB2A2と組み合わせて種々の濃度(●は100ng/mlのBMP−2、■は50ng/mlのBMP−2、□はBMP−2非存在下の試料を示す)。細胞を5日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により測定した。
【0119】
B2A2単独では、図1Aに示す通り約0.075〜10.0μg/mlの用量範囲ではALP活性に対する作用は僅かであった。ALP活性の誘導は細胞にB2A2と共に100ng/mlのBMP−2を投与した場合に増強された。同時投与は相加的ではなく相乗的であった。即ちB2A2はBMP−2の部分的アゴニストである。
【0120】
ここで図1Bを参照すれば、B2A2とBMP−2の相乗作用はB2A2濃度は約1000ng/mlで一定であるがBMP−2濃度が変動するという条件下で示されている。B2A2の固定された濃度(1μg/ml)を用いれば、ALP活性の増強は25ngBMP−2/mlの低値から1000ngBMP−2/mlの高値まで観察された。ALPのBMP−2誘導の閾値は〜30ng/mlから開始しているが、1000ng/mlのB2A2の存在下では、閾値は約3ng/mlのBMP−2まで低下した。
【実施例4】
【0121】
B2A2がCHO生産rhBMP−2の生物学的作用を増強するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図2を参照しながら、組み換えBMP−2蛋白(rh−BMP−2)及びB2A2によるC2C12細胞におけるALP活性の誘導を説明する。rhBMP−2は力価が僅かに異なるE.coli又は哺乳類CHO細胞生産方法のいずれかより商業的に得られるが、B2A2は両方の型のrhBMP−2を増強する。マウスC2C12細胞を96穴プレートに播種し、異なる原料(●/○がCHOで■/□がE.coliである)から誘導したヒトBMP−2と組み合わせたB2A2を投与し、4日間インキュベートし、次に記載した通りALP活性を試験した。B2A2は1000ng/ml、そしてBMP−2はグラフ中に記載した濃度で適用した。B2A2はE.coli誘導BMP−2の薬効をCHO細胞誘導BMP−2と同様の水準まで増大させ、そしてCHO誘導BMP−2の薬効はB2A2により更に増大した。点は5連の測定の平均±SDである。
【実施例5】
【0122】
B2A2をFGF−2、VEGF及びTGF−β1を包含する他の成長因子と組み合わせてC2C12細胞におけるALPの誘導について試験した。ここで図3を参照すれば、B2A2の存在下、BMP−2によるALP活性の誘導は観察されたが種々の他の成長因子では観察されなかった。FGF−2、TGF−BおよびVEGF単独の投与ではB2A2存在下にC2C12細胞においてALPを誘導できず、B2A2とBMP−2の組み合わせにおいてBMP−2がエフェクターであることを示している。
【0123】
マウスC2C12細胞を図1Aに記載する通り培養し、B2A2の存在下又は非存在下において種々の成長因子の組み合わせを投与し、3日間インキュベートし、次に図1Aに示す通りALP活性を試験した。FGF−2は50ng/ml、VEGFは25ng/ml、TGF−β1は50pg/ml、BMP−2は50ng/ml、そしてB2A2は1000ng/mlで使用した。棒グラフは5連の測定の平均±SDを示す。
【実施例6】
【0124】
細胞による骨原活性のBMP−2誘導に対して細胞に投与されたB2A2+BMP−2の時間的分離が影響するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図4を参照すれば、ALP活性の誘導はC2C12細胞系統へのB2A2及びBMP−2の添加の時間的分離にもかかわらず観察されている。薬剤の同時投与は、一連のB2A2の添加とその後の浄化及びBMP−2の投与を1時間以下の間隔で行った場合にもALP活性の誘導において有効であったことから、必要ではない。マウスC2C12細胞は前回通り培養し、B2A2(1000ng/ml)を一部のウェルに添加した。45分間のインキュベーションの後、全ウェルを新しい培地で洗浄し、培地を交換した。1セットのウェルにはBMP−2(200ng/ml)を添加し、別のセットは更に30分間インキュベートし、次にBMP−2を添加し、最後に更に別のセットを更に60分間インキュベートし、次にBMP−2を添加した。5日後、ALP活性を測定した。B2A2とBMP−2の投与の時間的分離及びその間の浄化にもかかわらず相乗作用はなお観察された。データは3連の平均±SDである。
【実施例7】
【0125】
細胞による骨原活性のBMP−2誘導に対して細胞に投与されたB2A2+BMP−2の空間的分離が影響するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図5を参照すれば、ALP活性の誘導はB2A2及びBMP−2の添加の空間的分離にもかかわらず観察されている。図5Aにおいて、96穴プレートのポリスチレン表面をまずシリルヘパリン(白棒)、その後B2A2の1μg/ml溶液(黒棒)でPBS中でコーティングし(1時間37℃)、PBS中で洗浄し、室温で乾燥した。その後C1C12細胞を融合単層が得られる密度で播種し、結合させた後(1〜2時間)、BMP−2を50ng/mlで培養物に添加した。ALP活性は5日後に測定した。データは3連の平均±SDで示す。シリルヘパリン単独ではBMP−2活性が強化されたが、B2A2及びBMP−2が共同して誘導したALP活性はより強力である。
【0126】
図5Bにおいて、ステンレス製のウエハーをまずシリルヘパリン(白棒)、その後第2のコーティングとしてPBS中100μg/mlのB2A2(黒棒)でPBS中でコーティング、PBSで洗浄し、室温で乾燥した。24穴プレートのウェル内でウエハーを別々にコーティングし、新しい未処理プレートに移した後に細胞を播種した。
【0127】
その後C2C12細胞を融合単層が得られる密度で播種し、結合させた後(1〜2時間)、BMP−2をグラフに示した濃度で培養物に添加した。ALP活性は5日後に測定した。データは3連の平均±SDで示す。データはステンレス上のB2A2によるBMP−2の増強が強力であったことを示している。BMP−2の存在下チタンウエハー上のシリルヘパリン+B2A2のコーティングについても同様の結果が観察された。
【実施例8】
【0128】
B2A2が骨形成の異所性モデルにおいて脱鉱物化骨マトリックス物質(DBM)を増強することができるかを調べるためにB2A2を試験した。図6を参照しながら、骨形成に対するDBMとのB2A2の相乗的活性を説明する。B2A2はDBMにコーティングした。少量の水中(pH4)中のB2A2(100ng/ml又は300mg/ml)をDBM(100μg/ml)に添加し、混合し、37℃で風乾した。次に得られたDBMを更に真空オーブン中で一夜乾燥した。
【0129】
B2A2コーティングDBMを無胸腺ラットの筋肉内に移植し、インプラント領域のレントゲン写真密度を3週後に測定した。B2A2非存在下のDBMと比較して3週後には相対骨密度に250%の上昇が観察され、そしてB2A2非存在下のDBMと比較して6週後には骨密度に650%の上昇が観察された(データ示さず)。図6に示される通り、両方の時点においてB2A2コーティングDBMにおいてはレントゲン写真密度の統計学的に有意な増大が観察された。
【0130】
B2A2を脱鉱物化骨マトリックス物質(DBM)及び骨グラフト物質に対する添加物として使用することによりBMP−2の生物活性を最大限にすることができる。B2A2はDBM(外因性)及び修復中の骨(内因性)中に存在するBMP−2の生物活性を増強する。B2A2の臨床使用は骨修復を加速するために望ましい新しい治療方策を与えるものである。
【0131】
以下の表2はB2A2の生化学的相互作用、及びアルカリホスファターゼのモジュレーションを総括したものであり、モジュレーションはC2C12細胞を用いてモニタリングした。
【0132】
【表2】
【実施例9】
【0133】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式IIの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7はR6が0骨格原子であり、そして各R5がリジンである式IIのR53官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0134】
【化7】
のものであり、場合によりB2A2−K−NSと称される。上記の構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号7の鎖はR5位のリジンのアルファ及びイプシロンアミン基から成長させている。B2A2−K−NSの理論的分子量は5486.9である。
【実施例10】
【0135】
L6細胞に対する悪影響について実施例9の合成成長因子類縁体(B2A2−K−NS)を試験した。ここで図7を参照しながら、細胞毒製剤又はB2A2−K−NSの投与後の培養物中のL6細胞の相対数を説明する。L6細胞には100ng/mlパクリタキセル又は0.01%アジ化ナトリウムを投与し、これ等の細胞毒製剤の作用を、投与3日後にB2A2−K−NSを種々の濃度で投与したL6細胞と比較した。B2A2−K−NSは2〜10μg/mlの濃度において対照値を超えた細胞増殖を誘導した。ヒト胎児骨芽細胞、C3H10T1/2細胞およびMC−3T3−E1細胞についても同様の結果が得られた。
【実施例11】
【0136】
骨原活性を促進する合成成長類縁体の能力を調べるために細胞骨原分化試験においてB2A2−K−NSを試験した。ここで図8を参照しながら、BMP−2の存在下及び非存在下における種々の濃度のB2A2−K−NSを用いた場合のC2C12細胞における骨原分化の誘導を説明する。B2A2−K−NS単独(10μg/ml以下)のC1CC12への投与は僅かに上昇したアルカリホスファターゼ(ALP)活性をもたらしたが、B2A2−K−NS+BMP−2は通常は閾値未満の濃度のBMP−2においてさえも、ALP活性の有意な上昇をもたらした。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)及び非存在下(白棒)でB2A2−K−NSを種々の濃度で投与した。細胞は4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により試験した。B2A2−K−NSは約10μg/ml以下の濃度においてALP活性の誘導に対し作用を示さなかった。B2A2−K−NSはBMP−2(100ng/ml)の最善に近い量により誘導されたALP活性を実質的に増強していた。同様の結果がC3H10T1/2細胞においても得られた。
【実施例12】
【0137】
刺激された創傷辺縁部に前骨芽起源の細胞を遊走させる能力についてB2A2−K−NSを試験した。ネズミC3H10T1/2細胞、MC3T3細胞又はhFOBをインビトロでほぼ融合されるとなるまで生育させた。刺激創傷は基板より細胞を掻き取ることにより作成した。細胞を6時間遊走させた後、遊走を顕微鏡でモニタリングした。ANOVAを用いて統計学的有意差を調べ、その後、対照群との多重比較を用いて事後検定を行った(Dunnett法)。FGF−2を陽性対照比較参照物質として使用し、対照と比較した場合の遊走細胞の優位な増大を誘導させた(データ示さず)。表3は約0.2〜2.0μg/mlのB2A2−K−NSにより誘導された刺激創傷辺縁部における遊走細胞の増大を総括したものである。
【0138】
【表3】
【実施例13】
【0139】
B2A2−K−NS類縁体をそのインビボの作用について試験した。ここで図9を参照しながら、BMP−2の存在下又は非存在でB2A2−K−NSを含有するマトリゲルを移植した領域から摘出した体外移植組織の領域の比較を説明する。成熟ラットにBMP−2及びB2A2−K−NSの存在下及び非存在下にマトリゲルを移植し、14日後、残存ゲルを外科的に摘出して測定した。B2A2−K−NS、BMP−2及びBMP−2およびB2A2−K−NSを与えたほぼ全ての移植部位が検査時に触知可能な部位を有していたが担体のみを有していた対照インプラントは大部分が吸収されていた。更にまた、B2A2−K−NS、BMP−2又はBMP−2+B2A2−K−NSの組み合わせを与えられていた部位からの体外移植組織は有意に大きい体外移植組織を有していた。体外移植組織の形態は異なる体外移植組織組成では異なっていた。担体のみを与えられた動物は小型の残存プラグを有しており、乏しい細胞組織化を伴う形態を有する傾向があった。B2A2−K−NSを与えられた動物は腺維軟骨に合致する形態のプラグを有していた。BMP−2投与を受けた動物は膜骨化の発生に合致した中等度の量の組織化を伴った細胞の数が増大したプラグを形成していた。B2A2−K−NS+BMP−2を与えた動物では、膜骨化の発生に合致した組織化と共に細胞密度の上昇が観察された。細胞密度は実験対照又はB2A2−K−NSで観察されたものよりも高値であったが、BMP−2単独を与えられた動物から得た体外移植組織で観察された細胞密度より低値であった。(データ示さず)
【実施例14】
【0140】
B2A2−K−NS類縁体を細胞骨原性分化試験において試験することにより骨原性の活性を刺激する合成成長類縁体の能力について調べた。図10を参照すれば、B2A2−K−NSの最善に近い濃度(100ng/ml)の存在下及び非存在下におけるB2A2−K−NSによるC2C12細胞における骨原性分化の誘導が示される。B2A2−K−NS単独(10μg/ml以下)をC2C12細胞に投与した場合、アルカリホスファターゼ(ALP)活性の増大は僅かのみであった。しかしながらB2A2−K−NS+BMP−2は通常では閾値未満のBMP−2濃度であってもALP活性の有意な増大をもたらしている。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)又は非存在下(白棒)において種々の濃度のB2A2−K−NSを投与した。細胞を4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により測定した。
【実施例15】
【0141】
B2A2−K−NS類縁体がBMP−2とは独立して細胞において表現型の発現の変化を誘導する能力について試験した。MC3T3細胞をB2A2−K−NSで刺激し、オステオカルシン、オステオポンチン及びII型コラーゲンの発現における変化を、各々に対する特異的抗体を用いた測定により観察し、これを後にHPROにコンジュゲートした二次抗体を用いて検出した。形成された膜はスキャナでデジタル化し、ソフトウエアを用いて色反転させながらグレースケールに変換した。
【0142】
ここで図10を参照しながら、軟骨形成経路誘導蛋白に関するC3H10T1/2細胞のアルシアン染色を説明する。B2A2−K−NSは刺激後10日においてC3H10T1/2細胞において生産されたアルシアンブルー染色性の物質の量を増大させている。最善に近い量(50ng/ml)のBMP−2はアルシアンブルー染色性物質の増大を増強しなかった。
【実施例16】
【0143】
本発明の化合物は、Xが配列LYFDESSNVILKK(配列番号9)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式IIの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号9はR6が0原子であり、そしてR25がリジンである式IIのR53官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。合成においてR5リジン以外のリジン残基の側鎖は、他の反応性側鎖と同様に保護し、合成後に選択的脱保護した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0144】
【化8】
のものであり、場合によりB7A1−K−NSと称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号9の鎖はR5位のリジンのアルファ及びイプシロンアミン基から成長させている。
【実施例17】
【0145】
骨原活性を促進する合成成長類縁体の能力を調べるために細胞骨原分化試験においてB7A1−K−NSを試験した。ここで図11を参照しながら、BMP−2の存在下及び非存在下における種々の濃度のB7A1−K−NSを用いた場合のC2C12細胞における骨原分化の誘導を説明する。B2A2単独(10μg/ml以下)のC2C12細胞への投与はALP活性の生成に影響しなかった。しかしながら、B7A1−K−NS+BMP−2は通常は閾値未満の濃度(100ng/ml)のBMP−2においてさえも、ALP活性の有意な上昇をもたらした。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)及び非存在下(白棒)でB2A2を種々の濃度で投与した。細胞は4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により試験した。B7A1−K−NSは約10μg/ml以下の濃度においてALP活性の誘導に対して作用を示さなかった。B7A1−K−NSはBMP−2(100ng/ml)の最善に近い量により誘導されたALP活性を実質的に増強していた。同様の結果がC3H10T1/2細胞においても得られた。
【実施例18】
【0146】
本発明の化合物は、Xが配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号8)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号8は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0147】
【化9】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号8の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例19】
【0148】
本発明の化合物は、Xが配列YVDFSDVGWNDW(配列番号10)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号10は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0149】
【化10】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号10の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例20】
【0150】
BMPファミリーの合成成長モジュレーター類縁体は、Xが配列CAISMLYLDENEKVVL(配列番号12)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号10は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0151】
【化11】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号12の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例21】
【0152】
本発明の化合物はXが配列AFYCHGECPEPLADHL(配列番号13)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号13は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0153】
【化12】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号13の2鎖はリジン側鎖のイプシロンアミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例22】
【0154】
本発明の化合物はXが配列PFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号14)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号14は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0155】
【化13】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号14の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例23】
【0156】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7はR3が0骨格原子であり、そして各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0157】
【化14】
のものであり、場合によりB2A2−K2−NSと称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。
【実施例24】
【0158】
実施例2の化合物の骨形成蛋白2受容体への特異的結合について試験した。図12を参照しながら、精製された受容体/Fcキメラ分子を利用した固相受容体結合試験の結果を説明する。キメラはポリペプチドライナーを介してヒトIgG1Fc領域のカルボキシ末端に融合した種々の受容体分子(BMPRおよびアクチビンRアイソフォーム)の可溶性エクトドメインの組み換えコンストラクトである。ELISAプレートはB2A2又は対照化合物、可溶性キメラ受容体/Fc抗体でコーティングし、比色ELISAにより定量した。B2A2は以下の順序、即ち、BMPR−Ib=ActR−II>>BMPR−1a=ActRIIb>BMPR−IIにおいて他のアイソフォームと同様、BMPR−Ib及びアクチビンR−IIに優先的に結合することが示された。対照として使用したインスリンはB2A2又はBMP−2の何れにも結合しなかった(データ示さず)。ここで図13を参照しながら、BMP−2の種々の濃度における精製BMP−2受容体/Fcキメラ分子へのB2A2結合を説明する。受容体と共に大モル過剰量で添加したBMP−2はB2A2への結合をブロックした。BMP−2を種々の濃度で添加した場合、得られた置換曲線はBMPR−IbへのB2A2の二段階結合動態を示唆している。
【0159】
前述の実施例は、の実施例において使用したものに関して本発明の一般的又は特別に記載した反応体及び/又は操作条件を前述の実施例において使用したものとおき駆ることにより同様に良好に反復することができる。
【0160】
これ等の好ましい実施形態を特に参照しながら本発明を詳述したが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変更又は改変は当業者には自明なものであり、このような改変及び同等物は全て添付請求項に包含されることを意図している。上記において引用した参考文献、出願、特許および公開物の全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
本明細書に組み込まれ部分を構成する添付図面は本発明の実施形態1つ以上を示すものであり、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するものである。図面は本発明の好ましい実施形態1つ以上を示すことを目的とするのみであり、本発明を限定しない。図面は以下を包含する。
【図1A−1B】図1AおよびBはB2A2がC3H10T1/2細胞においてアルカリホスファターゼ(ALP)のBMP−2誘導を増強することを示すグラフである。
【図2】図2はB2A2がCHO細胞及びE.coliの商業的製造方法で得られた組み換えヒトBMP−2の活性を増強することを示すグラフである。
【図3】図3はB2A2の相乗作用がBMP−2に特異的であったことを示すグラフである。
【図4】図4はC2C12細胞系統へのB2A2及びBMP−2の添加の時間的分離にもかかわらずALP活性が誘導されたことを示すグラフである。
【図5】図5はB2A2コーティング表面がBMP−2活性を増強したことを示すグラフである。種々の組成物の表面をまず組織培養皿中滅菌条件下シリルヘパリンでコーティングした(37℃で30分間インキュベートした酸エタノール中1%溶液、水で洗浄、56℃で乾燥)。
【図6】3週間目に移植された無胸腺ラットからの放射線撮影分析による相対強度を示すグラフである。
【図7】細胞毒製剤又はB2A2−K−NSを投与した後の培養物中のL6細胞の相対数を示すグラフ。
【図8】BMP−2の存在下又は非存在下のB2A2−K−NSの種々の濃度によるC2C12細胞における骨原性分化の誘導を示すグラフである。
【図9】BMP−2を有する場合と有さない場合のB2A2−K−NK類似体を含有するマトリゲルを移植した領域からの摘出した体外移植組織の領域を比較したグラフである。
【図10】B2A2−K−NS投与により発現が刺激されたC3H10T1/2細胞における軟骨形性経路のAlcian染色を示すグラフである。
【図11】図11はBMP−2の最善に近い濃度の存在下又は非存在下のB2A7−K−NSによるC1C12細胞の骨原性分化の誘導を示すグラフである。
【図12】図12は本発明の化合物とBMP−2受容体との間の特異的結合を示すグラフである。
【図13】図13はBMP−2受容体に結合するBMP−2とB2A2の相乗作用的活性を示すグラフである。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成成長因子モジュレーター組成物、特に骨形成蛋白(BMP)ファミリーのモジュレーターに関する。本発明の組成物はBMP−2受容体に特異的な結合親和性を有する1本鎖又は2本鎖のペプチド配列、リンカー、場合により疎水性リンカー、及び、非成長因子ヘパリン結合配列を有する本明細書に開示した式のもの、及び合成成長因子モジュレーターの使用方法である。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる2004年2月20日に出願されたPositive Modulator of Bone Morphogenic Protein−2と題された米国特許暫定出願60/547,012の出願の利益を主張する。
【0003】
本出願は各々の明細書が参照により本明細書に組み込まれる2002年8月20日出願されたSynthetic Heparin−Binding Growth Factor Analogsと題された米国特許出願10/224,268の部分継続出願である2003年8月19日に出願されたSynthetic Heparin−Binding Growth Factor Analogsと題された米国特許出願10/644,703に関する。
【背景技術】
【0004】
以下の考察は多くの著作物及び年次出版物を参照しており、そして最近の出版物の日付のために特定の出版物は本発明の従来技術と見なされないものもあることに留意しなければならない。このような出版物は本明細書においては、より完全な背景のために呈示するものであり、そのような出版物は特許性を決定する目的のための従来技術であることを許容するものではない。
【0005】
骨形成蛋白(BMP)は胚から成人段階を通して広範な臓器及び組織の発達に関与している蛋白のグループである(Wozney JM 2002,Spine 27(16 Suppl 1):S2−8)。BMPはまた傷害後の組織の修復及びリモデリングの過程において重要な役割を果たしている。特定のBMPは動物モデルにおいて異所性の骨形成を誘導し、そして、重篤な大きさの分節性骨欠損の治癒を増強する。臨床試験によれば、組み換えヒトBMP(rhBMP)は自家骨グラフト処置の安全で有効な代替物であることがわかっている。rhBMP−2およびrhBMP−7はそれぞれ脊髄融合及び難治性の長骨偽関節においてヒトにおける使用が認可されている(Kleeman et al.2001,Spine 26(24):2751−6,Burkus et al.2002,Spine 27(21):2396−408,Mckay et al.2002,Spine 27(16 suppl 1):S66−85, Poynton et al.2002,Spine 27(16 suppl 1):S40−8)。
【0006】
rhBMP−2の有効性は用量に大きく依存していると考えられる。生理学的用量を大きく超えた用量がインビボの治療効果のために必要である。例えば1mg/ml程度のrhBMP−2の濃度が脊髄固定ケージにおいて使用され(8mg/ケージ以下))、この量は内因的に典型的に存在するものよりも3桁高いの量である(McKay et al.2002,Spine 27 (16 suppl 1):S66−85)。このような高用量の組み換え蛋白を投与することは高価であるばかりでなく、骨成長亢進及び免疫応答のような副作用を伴う場合がある。従って、BMP活性を増強するためのBMP−2の正のモジュレーターの開発が臨床的に重要である。
【0007】
BMP−2シグナリングには2つの型の膜貫通セリン/スレオニンキナーゼ受容体、即ち、I型(BRI)及びII型(BRII)が関与している(Hoodless et al.1996,Cell 85(4):489−500,Kawabata et al.,1995,J.Biol Chem 270(10):5625−30,Nohno et al.1995,J Biol Chem 270(38):22522−6,Rosenzweig et al.1995,Proc Natl Acad Sci USA 92(17):7632−6)。活性リガンド/受容体複合体は2:2:2比のBMP−2、BRI及びBRIIよりなる(Reddi AH 2001 J Bone Joint Surg Am 83−A Suppl 1(Pt1):S1−6)。BMP−2がその生物学的機能を発揮するためにはI型及びII型の両方の受容体が必要である。BMP−2結合により、BRIIによるホスホリル化の結果としてBRIキナーゼが活性化される。BRIIはBRIの存在がなければBMP−2には結合せず、そしてBMP−2とBRIIの複合体はBRI非存在下でシグナリングを開始することができない。BRI受容体におけるセリン/スレオニンキナーゼはSmad4とのヘテロマー複合体に組みたてられ核内に転座して標的遺伝子の転写を調節するSmad1、Smad5およびSmad8のホスホリル化に携わっていると考えられてい(Massague et al.2000,Genes Dev 14(6):627−44,Attisano et al.2000,Curr Opin Cell Biol 12(2):235−43)。更に、活性化された受容体複合体はSmad経路とは独立してp38MAPキナーゼ経路を活性化することができる(Iwasaki et al.1999,J Biol Chem 274(37):26503−10,Miyazono K2000,J Cell Sci 113(Pt7):1101−9)。現在では、BMP−2がシグナリングを開始するには2つの様式が存在すると考えられている。Gilboa等は複数のBMP受容体オリゴマーがリガンド結合前の細胞表面に存在することを示している(Gilboa et al.2000,Mol Biol Cell 11(3):1023−35)。その後Nohe等は予備形成された受容体複合体がBMP−2誘導Smad経路活性化に携わっており、そしてBMP−2誘導受容体複合体がp38キナーゼ経路を開始させることを示している(Nohe et al.2002,J Biol Chem 277(7):5330−8)。
【0008】
ヘパリン結合成長因子類縁体を形成する幾つかの試みがなされている。例えば天然の血小板誘導成長因子(PDGF)はhead−to−head(AA又はBB)ホモ2量体、又は(AB又はBA)ヘテロ2量体に配置したA鎖およびB鎖として存在する。即ちJehanli等への米国特許6,350,731は天然の活性ポリペプチド2量体を模倣したポリグリシン又はN−(4−カルボキシ−シクロヘキシルメチル)−マレイミド(SMCC)鎖を介して2つの合成PDGF受容体結合ドメインが共有結合したPDGF類縁体を開示している。
【0009】
Ben−Sassonへの米国特許6,235,716は血管形成因子の類縁体を開示している。類縁体は多リンカー骨格により連結された血管形成相同領域2つ以上を含む分枝鎖多価リガンドである。
【0010】
Godowskiへの米国特許5,770,704(’704特許)は受容体チロシンキナーゼ、サイトカイン受容体及び神経成長因子受容体スーパーファミリーのメンバーを活性化するためのコンジュゲートを開示している。コンジュゲートは、同族体受容体への結合が可能な少なくとも2つのリガンドを含むことにより、それぞれのリガンドの結合がこれ等の受容体のオリゴマー化を誘導する。’704特許に開示されたリガンドは種々の非蛋白性重合体、特に親水性重合体、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン及びポリビルルアルケンエーテル類、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールへの共有結合により連結される。リガンドは各々が肝細胞成長因子(HGF)受容体と結合するHGFペプチド変異体を含むことにより、受容体の2量体化及びHGF受容体2量体の生物活性の活性化を誘発する。
【0011】
Caldwell等への米国特許6,284,503(’503特許)は細胞接着、細胞生育、細胞分類及び生物学的試験のための、疎水性表面及び疎水性コーティング表面への細胞及び生体分子の接着を調節するための組成物及び方法を開示している。組成物は反応性末端基活性化重合体にコンジュゲートされた生体分子である。末端基活性化重合体はブロック共重合体界面活性剤骨格及び活性化又は反応性の基を包含する。ブロック共重合体は疎水性表面に吸着できる疎水性領域及び疎水性領域が疎水性表面に吸着された場合に表面から隔たる方向に伸長する親水性の領域を有する何れかの界面活性剤であってよい。’503特許は末端基活性化重合体にコンジュゲートしてよい生体分子は天然又は組み換えの成長因子、例えばPDGF、EGF、TGFα、TGFβ、NGF、IGF−I、IGF−II、GH及びGHRF並びに重複CSF(IL−3)、GM−CSF、G−CSF及びM−CSFを包含すると開示している。
【0012】
他の研究者等は線維芽細胞成長因子(FGF)の相同体及び類縁体を包含する組成物を記載している。例えばLappi及びBairdへの米国特許5,679,673;Deisher等への米国特許5,989,866及びFiddes等への米国特許6,294,359を参照できる。これ等の開示は毒性部分にコンジュゲートされており、FGF受容体担持細胞にターゲティングされているか;又は、FGF相同体又は類縁体による結合時にFGF受容体により伝達されるシグナルを介して生物学的経路をモジュレートする相同体又は類縁体のいずれかであるFGF相同体又は類縁体に関する。
【0013】
Kochendoerfer等の一連の特許出願は合成ケモカイン及び赤血球形成刺激蛋白を含む重合体修飾蛋白を開示している。例えば国際特許公開WO02/04105、WO02/19963及びWO02/20033を参照できる。これ等は蛋白のグリコシル化部位1つ以上に結合した水溶性重合体を有するポリペプチド鎖が生じるように合成の赤血球形成蛋白のポリペプチド鎖に化学的にライゲーションされたペプチドセグメントを含む。これらの出願はやはり重合体修飾され、拮抗剤とされている合成のケモカインも開示している。しかしながら、ヘパリン結合ドメインは開示されていない。他の赤血球形成ミメティック、例えばWrighton等への米国特許5,773,569及び5,830,851に開示されているようなものも知られている。
【0014】
Ballinger及びKavanaughへの国際特許公開WO00/18921は直接又は連結基を介して「オリゴマー化ドメイン」にアフィニティー連結されたFGF受容体を有する融合蛋白よりなる組成物を開示している。オリゴマー化ドメインの長さは約20〜300残基であり、転写因子、IgGのFc部分、ロイシンジッパー等のコンストラクトを含んでいる。開示されたオリゴマー化ドメインはホモ2量体ドメインであり、ここでは単一のFGF受容体親和性融合蛋白が単一のドメイン、例えばロイシンジッパーに連結しており、これが次に同様の分子に対してロイシンジッパーのアミノ及びカルボキシ末端の両方においてシステイン残基により連結され、ここでは各々が単一のFGF受容体親和性融合蛋白を有する2つの平行したロイシンジッパーがジスルフィド結合により交差結合している。融合蛋白はヘパリン結合ドメインを含んでよいこと、例えばヘパリン結合ドメインとされている多量体化ドメインとしてjunを使用することが開示されている。即ちBallinger及びKavanaughにより開示されている組成物は全て、オリゴマー化ドメインに共有結合した単一の受容体結合配列よりなるものであり、これにより各々が単一の受容体結合配列を有する2つ以上の同じオリゴマー化ドメインが、オリゴマー化ドメインにより与えられる会合により接合させられているか、或いは、化学的に共有結合することにより個々の成分の共有結合を与えている。
【0015】
上記した相同体、類縁体、コンジュゲート又はリガンドは、各々、受容体結合ドメインを含んでいる。しかしながら、開示された化合物又は組成物の何れも更に、ジペプチド配列への2受容体結合ドメインの連結をもたらし、更にヘパリン結合ドメインを含有する単一の非シグナリングペプチドを共に与えるリンカーを含んでいない。更にまた、これ等、又は、他の知られたヘパリン結合成長因子類縁体の何れも、本明細書に後述する利点を与えていない。更にまた、従来技術はBMP−2のような天然に存在する成長因子の効力を相乗作用により増大又は増強させるモジュレーターを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の化合物は骨形成蛋白2(BMP−2)、特にヒトBMP−2の部分的アゴニストである。本明細書においては、「BMP−2」とは特にヒトBMP−2を包含するが、ヒトBMP−2に限定されない。本発明の化合物はBMP−2の生物活性を大きく増強する。用途としては、本発明の化合物は脱鉱物化骨マトリックス(DBM)に対する添加剤及びBMP−2の生物活性を最大限とする骨グラフト材料として使用できる。本発明の化合物はDBM(外因性)及び修復中の骨(内因性)において存在するBMP−2の生物活性を増強する。本発明の化合物は好ましくは固相ペプチド化学により作成される。本発明の化合物の臨床使用は用途のうちでも骨修復を加速することに適用される新しい治療手段を提供する。
【0017】
本発明の化合物はBMP−2の生物有効性を実質的に増大させ、そして、BMP−2用量閾値を実質的に低下させる。本発明の化合物+BMP−2はBMP−2の閾値下濃度においてアルカリホスファターゼ(ALP)活性を実質的に上昇させる。本発明の化合物はBMP受容体アイソフォームと直接相互作用し、本発明の化合物とBMP−2との組み合わせは有糸分裂促進物質活性化蛋白キナーゼ(MAPキナーゼ)の相乗作用的抑制及びSmad活性化の相乗作用的増大を誘発する。Smad活性化の相乗作用的増大は系に対するこれ等の化合物の観察された作用又は活性の大きな原因となっていると推定される。本発明の化合物はDBMとともに、例えばa)DBMで観察されるBMP−2の増強、及びb)骨修復において調節されないことがわかっている宿主BMP−2の増強から相応に生じる増強された骨修復を伴って供給されてよい。同様に、本発明の化合物をリン酸3カルシウム又は硫酸カルシウムのような伝統的な骨伝導性物質と組み合わせて供給すれば、宿主のBMP−2を増強でき、そして骨誘導及び骨充填物質内への増大した細胞遊走をもたらすことができる。両方の方策はBMP−2及びその受容体が骨修復過程の間にアップレギュレートされるという事実を利用している。
【0018】
本発明の1つの実施形態は、下記式I:
【0019】
【化1】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリング鎖である]の化合物である。
【0020】
本発明の更に別の実施形態は式Iのコーティングを含有する生物活性インプラントである。本発明の更に別の実施形態は式Iから製造される骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬である。本発明の更に別の実施形態は医薬組成物において使用される式Iの化合物及び/又は製薬上許容しうるその塩又は製薬用担体である。
【0021】
本発明の別の実施形態は下記式II:
【0022】
【化2】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、独立してR3に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR5およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングぺプチド鎖である]の化合物である。
【0023】
本発明の別の実施形態は式IIの化合物を含有する少なくとも1つのコーティングを有する生物活性インプラントである。
【0024】
本発明の別の実施形態は式IIの化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含有する医薬組成物である。
【0025】
本発明の更に別の実施形態は、脊椎動物における骨形成の増強、骨患部の治療又は変性間接状態の治療のための方法であって、この方法は、骨形成蛋白−2活性を増強する式I又は式IIの化合物有効量をそのような治療の必要な脊椎動物対象に投与することを含み、ここで化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである。
【0026】
本発明の1つの特徴は合成成長因子モジュレーターを提供する。
【0027】
本発明の別の特徴はインビボでBMP−2活性の正のモジュレーターである合成成長因子類縁体である化合物を提供する。
【0028】
本発明の別の特徴はインビトロでBMP−2活性の正のモジュレーターである化合物を提供する。
【0029】
本発明の更に別の特徴は治療目的のための外因性に適用されるBMP−2の有効量を低減する化合物を提供する。
【0030】
本発明の別の特徴は投与の必要な対象に対して送達される組み換えBMPの治療有効量を低減することである。
【0031】
本発明の別の特徴は骨折部位にBMPファミリーの組み換えメンバーと組み合わせて本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する対象を治療するための方法を提供する。
【0032】
本発明の別の特徴は骨折部位に本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する対象を治療するための方法を提供する。
【0033】
本発明の別の特徴は治療の必要な対象の部位にBMPファミリーの組み換えメンバーと組み合わせて本発明の化合物を提供することによる、骨生育の必要な対象を治療するための方法を提供する。
【0034】
本発明の別の特徴は治療の必要な対象の部位に本発明の化合物を提供することによる、骨生育の必要な対象を治療するための方法を提供する。
【0035】
本発明の別の特徴は本発明の化合物を含有するキットを提供することである。
【0036】
本発明の別の特徴は本発明の組成物を含有するキットを提供することである。
【0037】
本発明の別の特徴は本発明の化合物を含有する生物活性の移植可能な装置である。
【0038】
本発明の別の特徴、利点、新規な特徴及び別の適用範囲は部分的には後述する詳細な説明において添付図面を参照しながら説明する通りであり、そして部分的には後述部分を検討すれば当業者には自明のものであり、また本発明の実施により学習されるものである。本発明の目的及び利点は添付する請求項に特に記載した装置及び組み合わせを用いることにより実現達成される。
【課題を解決するための手段】
【0039】
臨床状況において、本発明の化合物はDBMとともに、例えばa)DBMで観察されるBMP−2の増強、及びb)骨修復においてアップレギュレートされることがわかっている宿主BMP−2の増強から相応に生じる増強された骨修復を伴って供給されてよい。同様に、本発明の化合物をリン酸3カルシウムのような伝統的な骨伝導性物質と組み合わせて供給すれば、宿主のBMP−2を増強でき、そして骨誘導及び骨充填物質内への増大した細胞遊走をもたらすことができる。両方の方策はBMP−2及びその受容体が骨修復過程の間にアップレギュレートされるという事実を利用している。
【0040】
BMP−2の既知の活性化経路に従えば、本発明の化合物はBMP受容体アイソフォーム(BRI及びBRII)と直接相互作用し、そして本発明の化合物とBMP−2との組み合わせはBMP−2単独を使用する場合と比較して、有糸分裂促進物質活性化蛋白キナーゼ(MAPキナーゼ)の相乗作用的抑制及びSmad活性化の相乗作用的増大を誘発すると推定される。BMP−2阻害剤は知られているが、これ等は生理学的範囲において機能する最初の知られたBMP−2エンハンサーである。
【0041】
本発明の化合物はBMP受容体と直接相互作用して骨原性分化をもたらすBMP−2誘導事象を正方向にモジュレートする。本発明の化合物とBMP−2との間の相乗作用的な効果は、少なくとも2種の骨原性分化マーカー、ALP活性及びSmadホスホリル化により測定した場合、2種の多能細胞系統、C3H10T1/2及びC2C12において観察された。BMP−2の何れかの所定濃度におけるALP活性の増強は一般的に5〜20倍上昇であった。負の調節物質であるか、正常な生理学的条件下では機能できない物質のいずれかを有する他のBMP−2モジュレータも研究者等により発見されているが、本発明の化合物はBMP−2を正方向にモジュレートする最初のペプチド特異的調節物質である。
【0042】
最近数種のBMP特異的拮抗剤が発見された。ノジン、コルジン及びグレムリンはBMP受容体と同じ親和性でBMPに結合し、従ってBMPを競合的に阻害することがわかっている(Zimmerman et al.1996,Cell 86(4):599−606,Hsu et al.1998,Mol Cell 1(5):673−83)。ラット骨髄細胞培養物において、bFGFはBMPと相乗作用的に作用することがわかっている(Hanada et al.1997,J Bone Miner Res 12(10):1606−14,Wang et al. 1993,Acta Orthop Scand 64(5):557−61)が、より高用量のbFGFはインビボで強い阻害作用を誘発している。Spinella−Jaegle等によれば、ソニックヘッジホッグ(Shh)はC3H10T1/2及びST2細胞においてBMP−2の作用を増強したが、類似の骨先駆細胞C2C12及び前骨芽細胞MC3T3−E1においてはBMP−2活性を増強できなかった。更にまた、増強作用はShhがBMP−2に応答する細胞のパーセンテージを上昇させたプライミング効果であると考えられることがわかった(Spinella−Jaegle S, et al.2001,J Cell Sci 114(Pt11):2085−94)が、Shh自身はC3H10T1/2においてALP活性を誘導することができる(Nakamura et al.1997,Biochem Biophys Res Commun 237(2):465−9,Kinto et al.1997 FEBS Lett 404(2−3):319−23, Katsuura et al.1999,FEBS Lett 447(2−3):325−8,Yuasa et al,2002,J Cell Physiol 193(2):225−32)。
【0043】
別の系統の研究においては、BMP活性を有するペプチドを形成する試行が満足できる結果を与えていない。骨誘導作用がBMP−7配列のストレッチに関してはDee等により(White et al.2001,vol.BED−Vol.50,American Society of Mechanical Engineers, Snowbird, Utah,pp201−202)、そして、BMP−2配列の2つの重複ストレッチについてはSuzuki&Tanihara (Saito et al.2003,Biochim Biophys Acta 1651(1−2):60−7,Suzuki et al.2000,J Biomed Mater Res 50(3):405−9)により報告されている。しかしながらこれ等の結果は、ペプチドを極めて高濃度において、および/またはそれらを数週間細胞と接触させる基盤に共有結合するという、超常的な実験系において得られたものである。例えば、最高のBMP−2様活性を有すると報告された線状ペプチド(Saito et al.2003,Biochim Biophys Acta 1651(1−2):60−7)は−BMP−2より2000倍高値の濃度−でのみ作用し、この濃度では細胞表面受容体からBMP−2を完全に置き換えるため、BMP−2の競合物質となる。
【0044】
従来技術のペプチドとは対照的に、本発明の化合物はBMP−2の活性を増強し、そしてそれを生理学的状況において推定されるBMP−2の濃度範囲において行うのである。
【0045】
BMPの異なる原料はヒト用途について考慮される異なる属性を呈する。BMPは骨から精製するが、収率はきわめて低く、同種異系のドナー骨からの単離にかかわる潜在的な健康上の危険性もこの原料から得たBMPの臨床用途に限界を与えている。臨床使用におけるBMPの大部分は真核細胞培養物から得た組み換え蛋白である。翻訳後の修飾の複雑性と低収率のためにこれ等の組み換え蛋白は極めて高コストとなる。更にまた、ヒトへの適用において薬効を得るために必要な量は意外にも高値であることがわかった(McKay et al.2002, Spine 27(16 Suppl 1):S66−85,Poynton et al.2002, Spine 27(16 suppl 1):S40−8)。
【0046】
BMP特異的エンハンサー、例えば本明細書に開示するものは独特の臨床的意味を有している。BMP−2エンハンサーを使用することにより必要なBMP−2の量を低減してよい。これは、合成ペプチドとして本発明の化合物が(a)製造経費がより低値であり、(b)概ね化学的安定性がより高値であり、そして、(c)増強された薬剤送達のために容易に化学修飾できるという理由から、医学上及び実際上の意義を有する。生物学的には、他の利点も存在する。例えば、脊椎固定の過程には骨原性関連の遺伝子発現の時間的および空間的なパターンを伴った事象の序列が含まれる。Morone等(Morone et al.1998,Clin Orthop(351):252−65)は脊椎固定における数種のBMPのmRNAの発現を検討しており、そしてBMP−2及び他のものが種々の水準で種々の時点において増大したことを観察している。生物学的に旨適なスケジュールに外因性適用の組み換えBMP−2をマッチさせることは躊躇されることである。同様にBMPはホモ及びヘテロ2量体として存在しえる。即ちBMPエンハンサーはそれらがインサイチュで存在する場合にBMPの天然の内因性の発現を増強することにより有効となる。
【0047】
即ち本発明の化合物は医療機器上又はその関連の組み換えBMP−2の有効量を低減するため、脱鉱物質骨マトリックス(DMB)のような生物学的調製物の生物活性を最大化するため、及び、骨治癒過程における宿主組織により形成されるBMP−2の内因性濃度を増強するために使用することができる。
【0048】
DBMは骨誘導性であり、臨床慣行において広範に使用されている1つの代替物質である。DBMは溶媒及び酸処理によりヒト骨から加工され、そしてその最終形態においてはコラーゲン及び低濃度の成長因子を含有する。DBMは多くの製造元、例えばWright Medical Technologies、Osteotech、the American Red CrossおよびInnovaより入手可能である。DBMはコラーゲン成分を介して新骨形成の土台となるスカホールドを与え、そしてその低濃度の成長因子を介してある程度の骨誘導能も有している。また骨芽に分化する周囲領域からの間葉幹細胞の活性化もある程度誘発する。
【0049】
しかしながらDBMの骨誘導能は低く、ロット毎及び製造元毎に変動する。DBM中の成長因子は骨先駆細胞に対して最も顕著な作用を有していると期待されるため、骨先駆細胞の利用性は脱鉱物質骨マトリックスを使用する場合には重要となる。頑健な骨誘導を誘発するDBMの制限された能力はこの物質の使用において限定的な要因として広範に観察されている。
【0050】
カルシウムリッチの骨グラフト物質のうち、ヒト原料から誘導されたものではない多数の市販品の骨充填剤が存在し、例えばPro Osteon(コラリンヒドロキシアパタイト、Interpore Cross International)、Bioglass(生物活性ガラスインプラント、US Biomaterials Corp.)、Collagraft(ヒドロキシアパタイト/リン酸3カルシウム及び純粋なウシ線維性コラーゲン、Zimmer)、CellplexTM(リン酸3カルシウム、合成海綿質骨、Wright Medical Technologies,Inc.)及び多くのリン酸カルシウム及びリン酸カルシウム充填剤が挙げられる。これらの物質は全て、骨伝道性であり、インプラント又はグラフト内への宿主からの毛細管、血管周囲組織及び骨先駆細胞の内生を支援する。しかしながらこれ等は骨誘導性ではない。
【0051】
生物学において、多くの企業が自家骨髄細胞又は血小板濃縮物として使用することを意図した骨充填製品を開発している。これ等の製品はそれぞれ、グラフト中の幹細胞の数を増大させること、又は、成長因子の量を増大させることを意図している。
【0052】
関連する手法において、InFuse脊髄ケージ製品(Sofamor−Danek、Medtronicの1部門)は骨伝導物質(コラーゲン)を骨誘導剤と組み合わせる装置の例である。InFuseは脊髄固定処置と関連して使用することを意図しており、同様の製品が新規骨折修復のために開発中である。
【0053】
脛骨非偽関節において使用する場合のInFuse、及び、程度は低値であるがStryker CorporationのOP−1が良好に使用されることは、組み換え成長因子の手法において高水準の利益をもたらしている。多くの別の成長因子が整形外科及び整形生物学の分野において評価されている。種々のBMPのうち、BMP−2は最も高い程度の骨誘導を示す因子であると考えられる。
【0054】
即ち骨グラフト物質の増大する臨床要求性及び成長因子の代替品又は既存の骨グラフト物質の改良への高い関心が存在している。
定義
本明細書においては、以下の用語は記載の通りの意味を有する。
【0055】
「アルケン」という用語は炭素−炭素二重結合1つ以上を含有する不飽和の炭化水素である。このようなアルケンの例はエチレン、プロペン等を包含する。
【0056】
「アルケニル」という用語は二重結合少なくとも1個を含有する炭素原子2〜6個の直鎖1価炭化水素基又は炭素原子3〜6個の分枝鎖1価炭化水素基を包含し;その例はエテニル、2−プロペニル等を包含する。
【0057】
本明細書で特定する「アルキル」基は、直鎖又は分枝鎖の配置のいずれかにある指定の長さのアルキル基を包含する。このようなアルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等を包含する。
【0058】
「アリール」という用語は6〜12環原子の1価又は2価の芳香族炭化水素基であり、場合によりアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシカルボニルよりなる群から選択される置換基1つ以上で独立して置換されているものを包含する。アリール基の例はフェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル及び2−ナフチル、これ等の誘導体等を包含する。
【0059】
「アラルキル」という用語は基RaRbを包含し、式中、Raはアルキレン(2価のアルキル)基でありRbは上記定義したアリール基である。アラルキル基の例はベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチル等を包含する。「脂肪族」という用語は炭化水素鎖、例えばアルカン、アルケン、アルキン及びこれ等の誘導体を包含する。
【0060】
「アシル」という用語は基RCO−を包含し、ここでRは有機基である。例はアセチル基CH3CO−である。
【0061】
ペプチド又は脂肪族の部分は、上記定義したアルキル又は置換アルキル基がカルボニル{=(C=O)−}基1つ以上を介して結合している場合に、「アシル化」されている。ペプチドは最も通常にはN末端においてアシル化される。
【0062】
「アミド」とはカルボニル基(−CONH2)に結合した3価の窒素を有する化合物である。
【0063】
「アミン」とはアミノ基(−NH2)を含有する化合物を包含する。
【0064】
「ジアミンアミノ酸」とは反応性のアミン基2個及び反応性のカルボキシル基を含有するアミノ酸又は残基である。代表例に2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチリックアミノ酸、リジン又はオルニチンを含む。
【0065】
「3官能性アミノ酸」とは1つ目はN末端アミン、2つ目はC末端カルボキシ、そして3つ目は側鎖の全て又は部分を含む反応性基3個を有するアミノ酸または残基である。即ち3官能性アミノ酸は例えばジアミンアミノ酸;側鎖に反応性スルフィドリル基を有するアミノ酸、例えばメルカプトアミノ酸、例えばシステイン、ペニシラミン又は3−メルカプトフェニルアラニン;側鎖に反応性カルボキシル基を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸;及び側鎖に反応性グアナジウム基を有するアミノ酸、例えばアルギニンを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
(本発明の化合物)
本発明の1つの実施形態によれば、化合物は、下記式I:
【0067】
【化3】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖であるのものである。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、化合物は下記式II:
【0069】
【化4】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は独立してR5に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアミノ酸残基であり、ここで第1のXはR5の側鎖を介して共有結合しており、そして第2のXはN末端アミンを介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである。
【0070】
式I及び式IIの各々において、共有結合は例えばペプチド結合又は他のアミド結合、チオエーテル結合又はエステル結合であることができる。基はそれが直接又は共有結合を含む他の基又は原子1つ以上を介して共有結合している場合に、他の基に共有結合している。
【0071】
式IのY領域の原子の鎖はR2に対し、そして配列Zに対して共有結合し、そして式IIにおいては、Y領域はR5に対し、そして配列Zに対して共有結合している。共有結合は例えばペプチド、アミド、チオエーテル又はエステル結合であることができる。特に好ましいものはペプチド結合である。好ましくは、Y領域は最低約7骨格原子の鎖を包含する。より好ましくは、Y領域は最低約12骨格原子の鎖を包含する。最も好ましくは、Y領域は最低約15骨格原子を包含する。例えば、Y領域は少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも6アミノ酸の鎖から形成してよい。或いは、Y領域は少なくとも1、少なくとも2又は少なくとも3アミノカルボン酸、例えばアミノヘキサン酸残基の鎖から形成してよい。特に好ましいものはYが直鎖アミノカルボン酸1つ以上である実施形態、例えば、Yが[NH2−(CH2)pCO]qであり、pが1〜約10であり、そしてqが1〜約20であるものである。使用してよい直鎖アミノカルボン酸の例は6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸等を包含する。
【0072】
好ましくは、Y領域は最大約50原子の鎖を包含する。より好ましくは、Y領域は最大約45原子の鎖を包含する。最も好ましくは、Y領域は最大約35原子の鎖を包含する。例えば、Y領域は約20まで、約15まで、又は約17までのアミノ酸の鎖から形成してよい。
【0073】
Y領域のアミノ酸配列は好ましくは人工の配列であり、即ち、BMP受容体の天然のリガンド中に存在するアミノ酸残基4個以上の如何なるアミノ酸配例も包含しない。
【0074】
特定の実施形態において、Y領域は疎水性アミノ酸残基、又は疎水性アミノ酸残基の鎖を包含する。Y領域は、例えばアミノカルボン酸残基1つ以上、例えばアミノヘキサン酸残基1、2、3つ以上を包含する。別の実施形態において、Y領域はアミノ酸疎水性残基の組み合わせを包含できる。
【0075】
別の特定の実施形態においては、分子のY領域は1〜約20炭素原子の分枝鎖又は未分枝鎖、飽和又は不飽和のアルキル鎖を包含する。別の実施形態においては、Y領域は親水性残基、例えばエチレングリコール残基の鎖を包含することができる。例えば、Y領域は少なくとも約3、又は少なくとも約4、又は少なくとも約5個のエチレングリコール残基を包含することができる。
【0076】
式I及び式IIの分子のZ領域はヘパリン結合領域であり、Verrecchio et al.J.Biol.Chem.275:7701(2000)に記載の通りヘパリン結合モチーフ、BBxB又はBBBxxBの1つ以上を包含できる。或いは、Z領域はBBxB及びBBBxxBモチーフの両方を包含することができる(ここでBはリジン、アルギニン又はヒスチジン、であり、そしてxは天然に存在する、又は天然に存在しないアミノ酸である)。例えばヘパリン結合モチーフは、各々独立してリジン又はアルギニンから選択される最初の3アミノ酸と後続するリジン又はアルギニンである何れかの2アミノ酸及び第6のアミノ酸を示す配列[KR] [KR] [KR]x(2)[KR](配列番号1)で表してよい。
【0077】
ヘパリン結合モチーフの数は可変である。例えば、Z領域は少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3又は少なくとも5個までのヘパリン結合モチーフを包含してよい。1個より多いヘパリン結合モチーフが存在する場合、モチーフは同じかまたは異なっていてよい。或いは、Z領域は最大約10個までのヘパリン結合モチーフを包含する。別の実施形態においては、Z領域は少なくとも4、少なくとも6又は少なくとも8個のアミノ酸残基を包含する。更にまた、特定の実施形態においては、Z領域は約20個まで、約25個まで、又は約30個までのアミノ酸残基を包含する。部分的にはヘパリンに対するZ領域の結合親和性は選択された特定のヘパリン結合モチーフ及びZにおけるそのようなモチーフの数により決定される。即ち、特定の用途においては、このようなモチーフの選択と数はZ領域の旨適ヘパリン結合を与えるように変化してよい。
【0078】
好ましい実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLERIAR(配列番号2)である。別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLGRIAR(配列番号3)である。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLWRARA(配列番号4)である。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRLDRIAR(配列番号5)であり、Jun/AP−1DNA結合ドメインの残基270〜279の配列の修飾から誘導されるヘパリン結合モチーフを与える(Busch et al,Trans−Repressor Activity of Nuclear Glycosaminoglycans on Fos and Jun/AP−1 Oncoprotein−mediated Transcription.J.Cell Biol.116:31−42,1992)。更に別の実施形態においては、Z領域のアミノ酸配列はRKRKLERIARC(配列番号6)である。末端システイン残基の存在は場合により他の分子、例えば検出用試薬、例えば蛍光団、放射性同位体及び他の検出可能なマーカーのZ領域への連結の機会、並びに、毒素、免疫原等の連結の機会を与える。
【0079】
本発明の合成骨形成蛋白蛋白類縁体、例えば式I及びIIのものは、X領域が以下のアミノ酸配列:
の何れかの全体又は部分又は全体又は部分の相同体である実施形態を包含する。
【0080】
好ましい実施形態においては、X領域はアミノ酸配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号8)である。より好ましくは、X領域はアミノ酸配列LYFDESSNVILKK(配列番号9)である。さらにより好ましくはX領域はアミノ酸配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)である。
【0081】
本発明者等は意外にも、そして好都合にも、式I及びIIのものを含む本発明の化合物においてX領域は逆方向に合成してよいことを発見しており、その場合、従来のN→Cの方向に示してある配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を想定した場合、そして式Iを用いた場合、R2側鎖に結合した第1のアミノ酸はN末端アミノ酸残基であり、N末端アミノ酸残基に結合した第2のアミノ酸は2位の残基・・・等々となり、しかしなお、化合物は生物活性を温存しており、BMP受容体に特異的に結合するのである。このようなコンストラクトは、従来のN→Cの方向に基づけば、逆の配列を有すると見なしてよく、即ち、R2がジアミンアミノ酸であるイプシロンアミンとのペプチド結合を形成するものは、従来のN末端アミノ酸残基のカルボキシル基である。即ち、ここでもまた、従来のN→Cの方向を用いれば、上記配列を逆方向に使用してよく、得られる本発明の化合物は生物活性であり、本明細書に記載する通り使用してよい。好ましい実施形態によればX領域は本明細書の実施例2に開示する通り配列LVVKENEDLYLMSIA(配列番号15)(やはり従来のN→Cの方向の配列を想定する)である。実施例2に記載する通り、C末端アラニン(A)は式IのR2位においてリジン(K)のイプシロンアミンに結合し、イソロイシン(I)はアラニンにペプチド結合する・・・等々となる。即ち以下の配列:
【0082】
【化5】
が提供され、本明細書に記載する通り生物活性である。
【0083】
LVVKENEDLYLMSIA(配列番号15)に加えて全体又は部分的に使用してよい他の逆配列及びその相同体は、例えば、YNKLVVKENEDLYLMSI(配列番号16)、KKLIVNSSEDFYL(配列番号17)、WDNWGVDSFDVYL(配列番号18)、GEVVMDQYNKLVVKE(配列番号19)、LHDALPFPCEGHCYFA(配列番号20)、VSNVLTQVIAHNTSNLHDALPFP(配列番号21)およびLVVKENEDLYLMSIAC(配列番号22)を包含するが、これに限定されるものではない。
【0084】
或いは、別の特定の特徴において、本発明は、表1に示す配列を有する合成BMP、TGF又はGDF(成長分化因子)ペプチド類縁体を提供し、ここで形質転換成長因子ファミリーメンバーペプチドは内因性又は人工のBMPペプチド又はTGFペプチドの活性を増強する場合に特に有用であり、ここでは式I又はIIの何れかのコンストラクトのX領域の全体又は部分を形成する配列を示す(見出し「好ましいX受容体結合ドメイン」の下)。見出し「好ましいX受容体結合ドメイン」の下に列挙された何れの配列のあるもの、又は僅か一部を用いてよく、そして、使用するX領域は以下に列挙する何れかの配列の部分集合であってよい。更に、X配列は以下に列挙する配列の全体又は部分に同一である必要はなく、そして全体又は部分に相同であってよく、例えば80%〜95%相同の配列であってよい。
【0085】
【表1】
(配列番号23)
【0086】
「相同である」という用語は本明細書においては、配列を並置した場合にアミノ酸位置の1つ以上においてアミノ酸配列が異なるペプチドを指す。例えば、2つの相同のペプチドのアミノ酸配列は5〜10アミノ酸の並置されたアミノ酸配列内において僅か1アミノ酸残基のみ異なることができる。或いは、10〜15アミノ酸の相同ペプチド2つは並置した場合に2個以下のアミノ酸残基が異なっていることができる。別の例においては、15〜20以上のアミノ酸の相同ペプチド2つは並置した場合に3個以下のアミノ酸残基が異なっていることができる。より長いペプチドについては、相同ペプチドは、ペプチド相同体2つのアミノ酸配列を並置した場合にアミノ酸残基の約5%、10%又は20%以下が異なることができる。
【0087】
式I又はIIのX領域として特に有用なアミノ酸配列は、僅か1又は2又は極めて少数の位置において天然の成長因子のアミノ酸配列と異なる天然に存在する配列のフラグメントの相同体を包含する。このような配列は好ましくは保存的な変化を包含し、その場合、元のアミノ酸はよく知られた原則に従って同様の特徴のアミノ酸で置き換えられており;例えばアラニンのような非極性アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシン又はプロリンとの置き換え;又は1つの酸性又は塩基性のアミノ酸の同じ酸性又は塩基性の特徴の別のアミノ酸による置換となっている。
【0088】
式IのR3領域又は式IIのR6領域は原子の鎖又は鎖を形成する原子の組み合わせを含むことができる。典型的には、鎖は主に炭素原子の鎖であり、これは場合により、例えばアミノ酸(例えば上記列挙した蛋白中に存在するアミノ酸;蛋白中には存在しない天然に存在するアミノ酸、例えばオルニチン及びシトルリン;又は非天然のアミノ酸、例えばアミノヘキサン酸;又は上記アミノ酸の何れかの組み合わせ)から形成された原子の鎖の場合のように、酸素又は窒素原子を含んでいてよい。ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アミノポリエチレングリコール、ビスアミン−PEG、及び当該分野でよく知られているポリエチレングリコールの他の変異体のような薬剤も同様に使用できることも意図している。R3又R6領域のために特に好ましいものは、鎖を標準的なペプチド合成法において利用してよいような、アミノ末端及びカルボキシル末端を含む鎖である。例示されるものは、何れかのアミノ酸、アミノカルボン酸、好ましくは直鎖アミノカルボン酸、及び二官能性のアミノ−PEG−酸スペーサーを包含する。アミノ酸のうちではグリシンが好ましい。
【0089】
本発明の一部の実施形態においては、式IのR3領域の各々又は式IIのR6領域の各々は異なることができるが、大部分の実施形態においては、領域は同一であることが好ましい。しかしながら、そのような領域は異なっていてよく;例えば式IIにおいてR6はジアミンアミノ酸、例えばリジンであってよい。合成の間にオルト保護基を利用することによりアルファアミン又はイプシロンアミンの何れかを保護し、その後アミノ酸残基又は他の基を付加させてR6基を形成し、そして次にオルト保護基を除去し、R5上の脱保護アミン及びR6上の末端アミンからのX基のパラレル合成と共に進行させることが可能である。同様の方法は式Iに関しても使用してよい。
【0090】
(本発明の化合物の合成方法)
本発明の化合物の合成は当該分野でよく知られている種々の化学的方法の何れかにより達成できる。このような方法はベンチスケールの固相合成及び多くの市販のペプチド合成装置の何れかにおける自動ペプチド合成を包含する。好ましくは、合成装置は99パーセント超のサイクルあたりのカップリング効率を有する。
【0091】
本発明の化合物は段階的合成によるか、又は、同様のよく知られた技術によりカップリングできる一連のフラグメントの合成により製造できる。例えばNyfeler, Peptide synthesis via fragment condensation. Methods Mol.Biol.35:303−16(1994);およびMerrifield, Concept and early development of solid−phase peptide synthesis. Methods in Enzymol. 289:3−13(1997)を参照できる。これ等の方法は個々のペプチドの製造のために日常的に使用されている。コンポーネント部分で本発明の類縁体、例えばそのX、YおよびZのコンポーネントを構成するペプチドを組み立て、その後そのようなコンポーネント部分をカップリングして類縁体を組み立てることも可能である。例えばDawson and Kent, Synthesis of native proteins by chemical ligation. Annu. Rev. Biochem.69:923−960(2000);およびEom et al.,Tandem ligation of multipartite peptides with cell−permeable activity.J.Am.Chem.Soc.125:73−82(2003)を参照できる。しかしながら好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、樹脂に結合した式I又はIIのZ領域のC末端残基を用いた固相合成および段階的に進行する合成により合成する。従来の保護基を必要に応じて使用し、脱保護は樹脂からのペプチドの脱離の前、最中又は後の何れかに行う。例示すれば、本発明式IのR2位又は式IIのR5位の何れかに加えてリジン残基1つ以上を含有する本発明の化合物については、そのような付加的なリジン残基は従来は保護基により保護され、そして合成後に脱保護される。
【0092】
(本発明の化合物の使用方法)
本発明の化合物は可溶性の予防用又は治療用の医薬品を含む種々の方法で有用である生物活性分子の安価な原料を提供する。
【0093】
本発明の化合物はまた、生物学的応答を誘発するため、例えば細胞の成育および増殖、又は創傷の治癒を促進するための、例えば縫合糸、インプラント及び医療機器のような医療装置の要素として、及び医療装置のコーティングのための生物活性物質としても有用である。
【0094】
1つの特徴において、本発明はBMP−2の類縁体のような本発明の化合物を提供することによる、骨傷害を有する哺乳類を治療するための方法及び組成物を提供する。例えば、本発明のこのような化合物は医薬品として投与してよく、或いは、骨マトリックス又は骨グラフト物質への添加物として使用してよい。
【0095】
「医療装置」という用語は本明細書においては、生物、好ましくは哺乳類、特にヒトの臓器、組織、血液又は他の体液に接触する表面1つ以上を有する装置を意味する。医療装置は例えば患者に返送される血液に接触する血液オキシゲネーター、血液ポンプ、血液センサー、輸血用配管等のような外科的処置において使用するための体外装置を包含する。用語はまた、血管又は心臓内に移植される血管グラフト、ステント、ペースメーカー配線、心臓弁、静脈瘤コイル等のようなヒト又は動物の身体内部で血液と接触して移植される内在補綴物も包含する。用語は更に、モニタリング又は修復を目的とした血管又は心臓内に静置されるカテーテル、ガイドワイア等のような一時的血管内使用のための装置も包含する。用語は更に神経電極、筋肉電極、移植用パルスジェネレーター、移植用薬剤ポンプ及び除細動器も包含する。更にまた、医療装置という用語は、縫合糸、グラフト材料、創傷被服物、神経ガイド、骨ワックス、塞栓粒子、マイクロビーズ、歯科用インプラント、骨補綴物、骨グラフト物質、脊髄固定ケージ、骨充填物、整形外科用装置、組織スカホールド、人工関節又は制御放出薬剤送達装置を包含する。
【0096】
医療装置の表面は医療装置において使用するのに適する一般的に使用されている材料の何れか、例えばステンレス、チタン、白金、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリシロキサン(例えば2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)、天然ゴム又は合成ゴム、またはこれ等のブロック重合体又は共重合体から形成することができる。
【0097】
医療装置の表面に生物学的分子をコーティングするための方法は既知である。例えばHendriks等への米国特許5,866,113を参照でき、その明細書は参照により本明細書に組み込まれる。Tsang等は米国特許5,955,588において、非血栓形成性コーティング組成物及び医療装置上のその使用方法を記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。Zamora等は米国特許6,342,591において細胞接着組成物をモジュレートするための医療装置のための両親媒性のコーティングを記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
本発明の化合物は医療用途及び動物飼育又は家畜用途の両方のための医薬組成物中の活性成分として使用することができる。典型的には、本発明の化合物又は医薬組成物はヒトにおいて使用するが、他の哺乳類においても使用してよい。「患者」という用語は哺乳類個体を指すことを意図しており、明細書及び請求項全体を通じてそのように使用する。本発明の基本的な適用はヒト患者が関わるものであるが、本発明は実験用、農業用、動物園、野生、ペット、競技用、又は、他の動物にも適用してよい。
【0099】
本発明の化合物は何れかの製薬上許容しうる塩の形態であってよい。「製薬上許容しうる塩」という用語は製薬上許容しうる非毒性の塩基又は酸、例えば無機又は有機の塩基及び無機又は有機の酸から製造した塩を指す。無機塩基から誘導した塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガンの塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のものを包含する。特に好ましいものはアンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。製薬上許容しうる有機非毒性塩基から誘導した塩は、第1、第2及び第3アミンの塩、置換アミン、例えば天然に存在する置換アミン、環状アミン、及び塩基性のイオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩を包含する。
【0100】
本発明の化合物が塩基性である場合は、製薬上許容しうる非毒性の酸、例えば無機又は有機の酸から酸付加塩を製造してよい。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が包含される。本発明の化合物の酸付加塩は化合物に適する溶媒、及び、過剰量の酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸において製造する。酢酸塩の形態が特に有用である。本発明の化合物が酸性の部分を含む場合は、適当な製薬上許容しうる塩はアルカリ金属の塩、例えばナトリウム又はカリウムの塩、又はアルカリ土類金属の塩、例えばカルシウム又はマグネシウムの塩を包含してよい。
【0101】
本発明は本発明の化合物及び製薬上許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。担体は液体製剤であってよく、1つの実施形態においては、緩衝液とした等張性の水溶液である。製薬上許容しうる担体はまた、後述する通り、賦形剤、例えば希釈剤、担体等、及び添加剤、例えば安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝物質等含有する。
【0102】
即ち本発明の化合物は少なくとも1種の本発明の化合物を1つ以上の製薬上許容しうる担体、例えば賦形剤、例えば希釈剤、担体等及び添加剤、例えば安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝物質等と共に所望に応じて含有する医薬組成物に製剤又は複合化してよい。製剤賦形剤はポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、PEG、PEO、マンニトール、塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリウム、並びに多くの単糖類、例えばスクロース、デキストロース、ラクトース等及び上記したものの組み合わせを包含する。注射又は他の液体投与製剤については、緩衝成分少なくとも1つ以上を含有する水が好ましく、安定化剤、保存料及び可溶化剤をも使用してよい。固体剤型については、種々の増粘剤、充填剤、増量剤及び担体の添加剤の何れか、例えば澱粉、糖類、脂肪酸等を使用してよい。局所投与製剤については、種々のクリーム、軟膏、ゲル、ローション等の何れかを使用してよい。大部分の医薬品製剤については、非活性の成分が製剤の重量又は容量においてより大きい部分を構成する。医薬品製剤については、種々の計量放出、遅延放出又は時間指定放出の製剤及び添加剤の何れかを使用することにより、長時間に渡り本発明の化合物の送達が行われるように投薬量を調整してよい。
【0103】
実際の使用においては、本発明の化合物は従来の医薬組成物製造技術に従って製薬用担体との混合物中に活性成分として組み合わせることができる。担体は投与のために望まれる製剤の形態に応じて広範な種類の剤型を取ってよく、例えば経口、非経腸(静脈内を含む)、尿道内、膣内、鼻腔内、口腔内、舌下等であってよい。経口用剤型のための組成物の製造においては、通常の医薬品用媒体の何れか、例えば懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口用液体製剤の場合は例えば水、グリコール、油脂、アルコール、フレーバー剤、保存料、着色剤等;又は例えば粉末、ハード及びソフトカプセル又は錠剤のような経口用固体製剤の場合はでんぷん、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、錠剤崩壊剤等を使用してよい。
【0104】
注射による使用に適する剤型は滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の要時調製のための滅菌粉末を包含する。全ての場合において、剤型は滅菌されており、市臨時で投与してよい程度の流動性を有さなければならない。剤型はまた、製造及び保存の条件下で安定であり、細菌及びカビのような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール、これ等の適当な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。
【0105】
本発明を以下の非限定的な実施例により更に説明する。
【実施例1】
【0106】
材料:C1C12細胞及びC3H10T1/2細胞はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。E.coli又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞誘導組み換えヒトBMP−2はR&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。組み換えkBR1−Fcキメラ蛋白としての可溶性BMP−2受容体もR&D Systemsから購入した。エンドスタチン−Fc、FGF−2及びVRGFはBiological Resources Branch of Developmental Therapeutics Program,National Cancer Institureを通じて入手した。TGF−ベータ1はSigma Aldrich Chemical Companyより購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)、抗ホスホリル化MAPキナーゼ抗体及び抗ヒトFc抗体セイヨウワサビパーオキシダーゼコンジュゲートはSigma(St.Louis、MO)より入手した。ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(CBS)、DMEM/F12培地及びペニシリン/ストレプトマイシンはInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。シリルヘパリンはベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイルヘパリンであり、文献記載の通り合成した(Zamora et al.,2002,Bioconjug Chem 13(5):920−6)。慨すればシリルヘパリンは疎水性の基ベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)−オキシカルバモイルスクシンイミドをヘパリンと反応させることにより疎水性表面に吸着できる両親媒性のヘパリン誘導体を形成することにより製造する。コーティング目的のためには、シリルヘパリンを70%酸性化水性エタノール中の1%溶液として使用した。
【0107】
アルカリホスファターゼ(ALP)活性試験:C2C12細胞及びC3H10T1/2細胞は10%血清、ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM/F12培地で5%CO2及び95%空気の湿潤雰囲気下37℃において培養した。BMP−2誘導ALP活性については、細胞を通常の生育培地中、96穴(1x104/ウェル)ディッシュ中にプレーティングした。24時間後、細胞が融合性の単層を形成した時点で、培地を2%血清を添加し、指定濃度のBMP−2及び/又はB2A2を含有したDMEM/F12と交換した。誘導の4〜5日後、ALP活性をAkiyama等の記載(Akiyama et al.1997,Exp Cell Res 235(2):362−9)に変更を加えた方法により測定した。慨すれば、細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄し、10mMTrisHCl、pH9.0中の0.1%TritonX100で溶解した。蛋白濃度はBCA蛋白試験キット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を用いて測定した。次にALP緩衝液(1Mジエタノールアミン、0.5mMMgCl2、1mg/mLp−ニトロフェニルホスフェート、pH9.0)を添加し、37℃でインキュベートし、吸光度(405nm)をマイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて15、30及び60分に読み取ることにより、ALP活性を測定した。活性は時間当たりミリグラム蛋白当たりのODとして表示した。
【0108】
ペプチド合成及び製造:ペプチドB2A2及びB2A2−K−NSは実施例2および9に記載する通り従来の固相合成により合成し、C−18上の逆相HPLCで精製した。
【0109】
HPLC精製ペプチドの留分をあわせ、凍結乾燥し、凍結保存した。凍結乾燥した塊状の物質の小分量を用いて市販のキット(BCA、Pierce Endogen,Inc。)によりペプチド含有量を測定した。大部分の別の目的のためには、ペプチドを終濃度0.5mg/ml又は1mg/mlとなるように0.05%Pluronic127を含有する5.5%グルコース中に溶解し、0.22ミクロンのフィルターで滅菌濾過し、そして50又は100μgを含有する小分量ごとに凍結乾燥した。
【0110】
受容体結合試験:固相結合試験におけるBMP受容体への結合。B2A2をELISAプレートに飽和するまで吸着させ、可溶性BMP受容体免疫グロブリンFc融合蛋白を添加し、そして結合した受容体をHRPコンジュゲート抗Fc抗体を用いて比色試験により検出し、数値はバックグラウンドを差し引いて表示した。BMPR及びActivin受容体ファミリーの種々の受容体アイソフォームへのB2A2の特異的結合は、記載した受容体Fcキメラを用いて試験した。特異性を明確化する陰性対照はプレートに吸着された無関連のポリペプチド(例えばインスリン)及び無関連のキメラ蛋白(エンドスタチン−Fc)のインキュベートを包含し、その何れもB2A2の結合をもたらさなかった。見かけ上2段階のBMPR−Ibへの結合が受容体置換実験により明らかになった。結合した受容体はrhBMP−2を記載した濃度で添加することにより置換された。
【0111】
細胞生育:L6ラットの骨格筋芽細胞及びヒト胎児骨芽細胞系統(hFOB)(5)由来の細胞を標的として使用した。細胞の小分量(1〜5x103個)を96穴プレートのウェルに播種し、6〜24時間結合させた。培地をペプチドを含有する低血清(2%)培地に交換した。パクリタキセル(100ng/ml)及びアジ化ナトリウム(0.01%)を使用する場合は、これ等を細胞毒性を誘導することがわかっている比較参照物質として使用した。培養物は典型的には3日間インキュベートした後、相対的な細胞数をテトラゾリウム塩MTSを用いて調べた。
【0112】
細胞遊走:創傷辺縁部を通過する遊走に関する試験については、細胞はインビトロで成育させ、約90%が融合した時点で使用した。刺激創傷は培養容器表面から細胞を掻き取ることにより形成した。培養物を濯いで未結合の細胞を除去し、次にペプチドの存在下又は非存在下に2%新生子ウシ血清を含有するDMEM:F12倍地中でインキュベートした。FGF−2(50ng/ml)を陽性対照比較参照物質として使用した。細胞は6時間遊走させた後、細胞を緩衝ホルマリン中に固定した。遊走は位相差顕微鏡でモニタリングした。遊走細胞は刺激創傷辺縁部を通過して遊走したものとした。
【0113】
インビボマトリゲルプラグ試験:インビボのモデルにはBMP−2及びB2A2の存在下又は非存在下の成長因子低減マトリゲルの若年成熟Fisher344中の皮下インプラントを用いた。動物は全処置の前にケタミン(50mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)を腹腔内注射することにより麻酔した。成長因子低減マトリゲルを4℃(液体状態)で食塩水(対照)、BMP−2(R&D Systems,Minneapolis,MN)、B2A2−K−NS又はB2A2−K−NS+BMP−2と混合した。上記した添加物を伴ったマトリゲルの0.5mlの小分量をラットの上部胴体に皮下注射した。注射部位はステンレスの剃刀で剃毛し、漏出を防止した。マトリゲルは注射時まで氷上に保持し、針とシリンジも同様に取り扱った(針のゲル化を防止するため)。その後動物を14日後に安楽死させ、ゲルを外科的に摘出し、カリパスで測定し、緩衝ホルマリン中に固定した。体外移植組織の大部分が全体的に長円形であり、長円の表面席は以下の式:
面積=πab
[式中aおよびbは長円の幅及び高さの1/2である]を用いて求めた。
【0114】
固定した標本を組織学的検査用に加工処理し、ヘマトキシリン及びエオシン、又は、トルイジンブルーOの何れかで染色した(Histoserv,Inc.,Germantown,MD)。
【実施例2】
【0115】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7は各R2がリジンであり、R3が骨格原子である式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0116】
【化6】
のものであり、場合によりB2A2と称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号7の2鎖はリジン側鎖のイプシロンアミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例3】
【0117】
実施例2の化合物(B2A2)を細胞骨原性分化試験において試験することにより骨原性の活性を刺激する類縁体の能力について調べた。B2A2はBMP受容体に結合し、そしてその受容体の活性化は骨原性転写因子Smadの発現およびMAPKの抑制を伴い、その後、ALPが低減される表現型の形質転換が起こる。図1Aを参照すれば、B2A2の存在下及び非存在下におけるBMP−2によるC3H10T1/2細胞における骨原性分化の誘導が示される。B2A2単独(10μg/ml以下)をC3H10T1/2細胞に投与した場合、アルカリホスファターゼ(ALP)活性の増大は僅かのみであった。しかしながらB2A2+BMP−2の最善に近い濃度(100ng/ml)はALP活性の有意な増大をもたらしている。BMP−2のEC50は典型的には300ng/mlである。
【0118】
C3H10T1/2細胞を96穴プレートに播種し、BMP−2単独又はB2A2と組み合わせて種々の濃度(●は100ng/mlのBMP−2、■は50ng/mlのBMP−2、□はBMP−2非存在下の試料を示す)。細胞を5日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により測定した。
【0119】
B2A2単独では、図1Aに示す通り約0.075〜10.0μg/mlの用量範囲ではALP活性に対する作用は僅かであった。ALP活性の誘導は細胞にB2A2と共に100ng/mlのBMP−2を投与した場合に増強された。同時投与は相加的ではなく相乗的であった。即ちB2A2はBMP−2の部分的アゴニストである。
【0120】
ここで図1Bを参照すれば、B2A2とBMP−2の相乗作用はB2A2濃度は約1000ng/mlで一定であるがBMP−2濃度が変動するという条件下で示されている。B2A2の固定された濃度(1μg/ml)を用いれば、ALP活性の増強は25ngBMP−2/mlの低値から1000ngBMP−2/mlの高値まで観察された。ALPのBMP−2誘導の閾値は〜30ng/mlから開始しているが、1000ng/mlのB2A2の存在下では、閾値は約3ng/mlのBMP−2まで低下した。
【実施例4】
【0121】
B2A2がCHO生産rhBMP−2の生物学的作用を増強するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図2を参照しながら、組み換えBMP−2蛋白(rh−BMP−2)及びB2A2によるC2C12細胞におけるALP活性の誘導を説明する。rhBMP−2は力価が僅かに異なるE.coli又は哺乳類CHO細胞生産方法のいずれかより商業的に得られるが、B2A2は両方の型のrhBMP−2を増強する。マウスC2C12細胞を96穴プレートに播種し、異なる原料(●/○がCHOで■/□がE.coliである)から誘導したヒトBMP−2と組み合わせたB2A2を投与し、4日間インキュベートし、次に記載した通りALP活性を試験した。B2A2は1000ng/ml、そしてBMP−2はグラフ中に記載した濃度で適用した。B2A2はE.coli誘導BMP−2の薬効をCHO細胞誘導BMP−2と同様の水準まで増大させ、そしてCHO誘導BMP−2の薬効はB2A2により更に増大した。点は5連の測定の平均±SDである。
【実施例5】
【0122】
B2A2をFGF−2、VEGF及びTGF−β1を包含する他の成長因子と組み合わせてC2C12細胞におけるALPの誘導について試験した。ここで図3を参照すれば、B2A2の存在下、BMP−2によるALP活性の誘導は観察されたが種々の他の成長因子では観察されなかった。FGF−2、TGF−BおよびVEGF単独の投与ではB2A2存在下にC2C12細胞においてALPを誘導できず、B2A2とBMP−2の組み合わせにおいてBMP−2がエフェクターであることを示している。
【0123】
マウスC2C12細胞を図1Aに記載する通り培養し、B2A2の存在下又は非存在下において種々の成長因子の組み合わせを投与し、3日間インキュベートし、次に図1Aに示す通りALP活性を試験した。FGF−2は50ng/ml、VEGFは25ng/ml、TGF−β1は50pg/ml、BMP−2は50ng/ml、そしてB2A2は1000ng/mlで使用した。棒グラフは5連の測定の平均±SDを示す。
【実施例6】
【0124】
細胞による骨原活性のBMP−2誘導に対して細胞に投与されたB2A2+BMP−2の時間的分離が影響するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図4を参照すれば、ALP活性の誘導はC2C12細胞系統へのB2A2及びBMP−2の添加の時間的分離にもかかわらず観察されている。薬剤の同時投与は、一連のB2A2の添加とその後の浄化及びBMP−2の投与を1時間以下の間隔で行った場合にもALP活性の誘導において有効であったことから、必要ではない。マウスC2C12細胞は前回通り培養し、B2A2(1000ng/ml)を一部のウェルに添加した。45分間のインキュベーションの後、全ウェルを新しい培地で洗浄し、培地を交換した。1セットのウェルにはBMP−2(200ng/ml)を添加し、別のセットは更に30分間インキュベートし、次にBMP−2を添加し、最後に更に別のセットを更に60分間インキュベートし、次にBMP−2を添加した。5日後、ALP活性を測定した。B2A2とBMP−2の投与の時間的分離及びその間の浄化にもかかわらず相乗作用はなお観察された。データは3連の平均±SDである。
【実施例7】
【0125】
細胞による骨原活性のBMP−2誘導に対して細胞に投与されたB2A2+BMP−2の空間的分離が影響するかどうかを調べるためにB2A2を試験した。ここで図5を参照すれば、ALP活性の誘導はB2A2及びBMP−2の添加の空間的分離にもかかわらず観察されている。図5Aにおいて、96穴プレートのポリスチレン表面をまずシリルヘパリン(白棒)、その後B2A2の1μg/ml溶液(黒棒)でPBS中でコーティングし(1時間37℃)、PBS中で洗浄し、室温で乾燥した。その後C1C12細胞を融合単層が得られる密度で播種し、結合させた後(1〜2時間)、BMP−2を50ng/mlで培養物に添加した。ALP活性は5日後に測定した。データは3連の平均±SDで示す。シリルヘパリン単独ではBMP−2活性が強化されたが、B2A2及びBMP−2が共同して誘導したALP活性はより強力である。
【0126】
図5Bにおいて、ステンレス製のウエハーをまずシリルヘパリン(白棒)、その後第2のコーティングとしてPBS中100μg/mlのB2A2(黒棒)でPBS中でコーティング、PBSで洗浄し、室温で乾燥した。24穴プレートのウェル内でウエハーを別々にコーティングし、新しい未処理プレートに移した後に細胞を播種した。
【0127】
その後C2C12細胞を融合単層が得られる密度で播種し、結合させた後(1〜2時間)、BMP−2をグラフに示した濃度で培養物に添加した。ALP活性は5日後に測定した。データは3連の平均±SDで示す。データはステンレス上のB2A2によるBMP−2の増強が強力であったことを示している。BMP−2の存在下チタンウエハー上のシリルヘパリン+B2A2のコーティングについても同様の結果が観察された。
【実施例8】
【0128】
B2A2が骨形成の異所性モデルにおいて脱鉱物化骨マトリックス物質(DBM)を増強することができるかを調べるためにB2A2を試験した。図6を参照しながら、骨形成に対するDBMとのB2A2の相乗的活性を説明する。B2A2はDBMにコーティングした。少量の水中(pH4)中のB2A2(100ng/ml又は300mg/ml)をDBM(100μg/ml)に添加し、混合し、37℃で風乾した。次に得られたDBMを更に真空オーブン中で一夜乾燥した。
【0129】
B2A2コーティングDBMを無胸腺ラットの筋肉内に移植し、インプラント領域のレントゲン写真密度を3週後に測定した。B2A2非存在下のDBMと比較して3週後には相対骨密度に250%の上昇が観察され、そしてB2A2非存在下のDBMと比較して6週後には骨密度に650%の上昇が観察された(データ示さず)。図6に示される通り、両方の時点においてB2A2コーティングDBMにおいてはレントゲン写真密度の統計学的に有意な増大が観察された。
【0130】
B2A2を脱鉱物化骨マトリックス物質(DBM)及び骨グラフト物質に対する添加物として使用することによりBMP−2の生物活性を最大限にすることができる。B2A2はDBM(外因性)及び修復中の骨(内因性)中に存在するBMP−2の生物活性を増強する。B2A2の臨床使用は骨修復を加速するために望ましい新しい治療方策を与えるものである。
【0131】
以下の表2はB2A2の生化学的相互作用、及びアルカリホスファターゼのモジュレーションを総括したものであり、モジュレーションはC2C12細胞を用いてモニタリングした。
【0132】
【表2】
【実施例9】
【0133】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式IIの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7はR6が0骨格原子であり、そして各R5がリジンである式IIのR53官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0134】
【化7】
のものであり、場合によりB2A2−K−NSと称される。上記の構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号7の鎖はR5位のリジンのアルファ及びイプシロンアミン基から成長させている。B2A2−K−NSの理論的分子量は5486.9である。
【実施例10】
【0135】
L6細胞に対する悪影響について実施例9の合成成長因子類縁体(B2A2−K−NS)を試験した。ここで図7を参照しながら、細胞毒製剤又はB2A2−K−NSの投与後の培養物中のL6細胞の相対数を説明する。L6細胞には100ng/mlパクリタキセル又は0.01%アジ化ナトリウムを投与し、これ等の細胞毒製剤の作用を、投与3日後にB2A2−K−NSを種々の濃度で投与したL6細胞と比較した。B2A2−K−NSは2〜10μg/mlの濃度において対照値を超えた細胞増殖を誘導した。ヒト胎児骨芽細胞、C3H10T1/2細胞およびMC−3T3−E1細胞についても同様の結果が得られた。
【実施例11】
【0136】
骨原活性を促進する合成成長類縁体の能力を調べるために細胞骨原分化試験においてB2A2−K−NSを試験した。ここで図8を参照しながら、BMP−2の存在下及び非存在下における種々の濃度のB2A2−K−NSを用いた場合のC2C12細胞における骨原分化の誘導を説明する。B2A2−K−NS単独(10μg/ml以下)のC1CC12への投与は僅かに上昇したアルカリホスファターゼ(ALP)活性をもたらしたが、B2A2−K−NS+BMP−2は通常は閾値未満の濃度のBMP−2においてさえも、ALP活性の有意な上昇をもたらした。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)及び非存在下(白棒)でB2A2−K−NSを種々の濃度で投与した。細胞は4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により試験した。B2A2−K−NSは約10μg/ml以下の濃度においてALP活性の誘導に対し作用を示さなかった。B2A2−K−NSはBMP−2(100ng/ml)の最善に近い量により誘導されたALP活性を実質的に増強していた。同様の結果がC3H10T1/2細胞においても得られた。
【実施例12】
【0137】
刺激された創傷辺縁部に前骨芽起源の細胞を遊走させる能力についてB2A2−K−NSを試験した。ネズミC3H10T1/2細胞、MC3T3細胞又はhFOBをインビトロでほぼ融合されるとなるまで生育させた。刺激創傷は基板より細胞を掻き取ることにより作成した。細胞を6時間遊走させた後、遊走を顕微鏡でモニタリングした。ANOVAを用いて統計学的有意差を調べ、その後、対照群との多重比較を用いて事後検定を行った(Dunnett法)。FGF−2を陽性対照比較参照物質として使用し、対照と比較した場合の遊走細胞の優位な増大を誘導させた(データ示さず)。表3は約0.2〜2.0μg/mlのB2A2−K−NSにより誘導された刺激創傷辺縁部における遊走細胞の増大を総括したものである。
【0138】
【表3】
【実施例13】
【0139】
B2A2−K−NS類縁体をそのインビボの作用について試験した。ここで図9を参照しながら、BMP−2の存在下又は非存在でB2A2−K−NSを含有するマトリゲルを移植した領域から摘出した体外移植組織の領域の比較を説明する。成熟ラットにBMP−2及びB2A2−K−NSの存在下及び非存在下にマトリゲルを移植し、14日後、残存ゲルを外科的に摘出して測定した。B2A2−K−NS、BMP−2及びBMP−2およびB2A2−K−NSを与えたほぼ全ての移植部位が検査時に触知可能な部位を有していたが担体のみを有していた対照インプラントは大部分が吸収されていた。更にまた、B2A2−K−NS、BMP−2又はBMP−2+B2A2−K−NSの組み合わせを与えられていた部位からの体外移植組織は有意に大きい体外移植組織を有していた。体外移植組織の形態は異なる体外移植組織組成では異なっていた。担体のみを与えられた動物は小型の残存プラグを有しており、乏しい細胞組織化を伴う形態を有する傾向があった。B2A2−K−NSを与えられた動物は腺維軟骨に合致する形態のプラグを有していた。BMP−2投与を受けた動物は膜骨化の発生に合致した中等度の量の組織化を伴った細胞の数が増大したプラグを形成していた。B2A2−K−NS+BMP−2を与えた動物では、膜骨化の発生に合致した組織化と共に細胞密度の上昇が観察された。細胞密度は実験対照又はB2A2−K−NSで観察されたものよりも高値であったが、BMP−2単独を与えられた動物から得た体外移植組織で観察された細胞密度より低値であった。(データ示さず)
【実施例14】
【0140】
B2A2−K−NS類縁体を細胞骨原性分化試験において試験することにより骨原性の活性を刺激する合成成長類縁体の能力について調べた。図10を参照すれば、B2A2−K−NSの最善に近い濃度(100ng/ml)の存在下及び非存在下におけるB2A2−K−NSによるC2C12細胞における骨原性分化の誘導が示される。B2A2−K−NS単独(10μg/ml以下)をC2C12細胞に投与した場合、アルカリホスファターゼ(ALP)活性の増大は僅かのみであった。しかしながらB2A2−K−NS+BMP−2は通常では閾値未満のBMP−2濃度であってもALP活性の有意な増大をもたらしている。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)又は非存在下(白棒)において種々の濃度のB2A2−K−NSを投与した。細胞を4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により測定した。
【実施例15】
【0141】
B2A2−K−NS類縁体がBMP−2とは独立して細胞において表現型の発現の変化を誘導する能力について試験した。MC3T3細胞をB2A2−K−NSで刺激し、オステオカルシン、オステオポンチン及びII型コラーゲンの発現における変化を、各々に対する特異的抗体を用いた測定により観察し、これを後にHPROにコンジュゲートした二次抗体を用いて検出した。形成された膜はスキャナでデジタル化し、ソフトウエアを用いて色反転させながらグレースケールに変換した。
【0142】
ここで図10を参照しながら、軟骨形成経路誘導蛋白に関するC3H10T1/2細胞のアルシアン染色を説明する。B2A2−K−NSは刺激後10日においてC3H10T1/2細胞において生産されたアルシアンブルー染色性の物質の量を増大させている。最善に近い量(50ng/ml)のBMP−2はアルシアンブルー染色性物質の増大を増強しなかった。
【実施例16】
【0143】
本発明の化合物は、Xが配列LYFDESSNVILKK(配列番号9)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式IIの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号9はR6が0原子であり、そしてR25がリジンである式IIのR53官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。合成においてR5リジン以外のリジン残基の側鎖は、他の反応性側鎖と同様に保護し、合成後に選択的脱保護した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0144】
【化8】
のものであり、場合によりB7A1−K−NSと称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号9の鎖はR5位のリジンのアルファ及びイプシロンアミン基から成長させている。
【実施例17】
【0145】
骨原活性を促進する合成成長類縁体の能力を調べるために細胞骨原分化試験においてB7A1−K−NSを試験した。ここで図11を参照しながら、BMP−2の存在下及び非存在下における種々の濃度のB7A1−K−NSを用いた場合のC2C12細胞における骨原分化の誘導を説明する。B2A2単独(10μg/ml以下)のC2C12細胞への投与はALP活性の生成に影響しなかった。しかしながら、B7A1−K−NS+BMP−2は通常は閾値未満の濃度(100ng/ml)のBMP−2においてさえも、ALP活性の有意な上昇をもたらした。C2C12細胞を96穴プレートに播種し、100ng/mlのBMP−2の存在下(黒棒)及び非存在下(白棒)でB2A2を種々の濃度で投与した。細胞は4日間インキュベートし、次にALP活性について試験した。ALP活性はp−ニトロフェノールホスフェート(PNPP)の変換により試験した。B7A1−K−NSは約10μg/ml以下の濃度においてALP活性の誘導に対して作用を示さなかった。B7A1−K−NSはBMP−2(100ng/ml)の最善に近い量により誘導されたALP活性を実質的に増強していた。同様の結果がC3H10T1/2細胞においても得られた。
【実施例18】
【0146】
本発明の化合物は、Xが配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号8)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号8は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0147】
【化9】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号8の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例19】
【0148】
本発明の化合物は、Xが配列YVDFSDVGWNDW(配列番号10)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号10は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0149】
【化10】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号10の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例20】
【0150】
BMPファミリーの合成成長モジュレーター類縁体は、Xが配列CAISMLYLDENEKVVL(配列番号12)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号10は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0151】
【化11】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号12の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例21】
【0152】
本発明の化合物はXが配列AFYCHGECPEPLADHL(配列番号13)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号13は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0153】
【化12】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号13の2鎖はリジン側鎖のイプシロンアミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例22】
【0154】
本発明の化合物はXが配列PFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号14)を有するBMP受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号14は各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0155】
【化13】
を有していた。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。配列番号14の2鎖はリジン側鎖の第2アミンでペプチド結合を介してR2位のリジンに連結する。
【実施例23】
【0156】
本発明の化合物は、Xが配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号7)を有するBMP−2受容体結合アミノ酸配列である式Iの一般構造を用いて固相ペプチド合成により合成し、その場合、配列番号7はR3が0骨格原子であり、そして各R2がリジンである式IのR23官能性アミノ酸からパラレルに段階的に合成した。得られた合成成長モジュレーター類縁体は以下の特定の構造:
【0157】
【化14】
のものであり、場合によりB2A2−K2−NSと称される。上記した構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、場合により「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。1文字は通常のコード付けされたアミノ酸に関する標準的なアミノ酸一文字略記法である。
【実施例24】
【0158】
実施例2の化合物の骨形成蛋白2受容体への特異的結合について試験した。図12を参照しながら、精製された受容体/Fcキメラ分子を利用した固相受容体結合試験の結果を説明する。キメラはポリペプチドライナーを介してヒトIgG1Fc領域のカルボキシ末端に融合した種々の受容体分子(BMPRおよびアクチビンRアイソフォーム)の可溶性エクトドメインの組み換えコンストラクトである。ELISAプレートはB2A2又は対照化合物、可溶性キメラ受容体/Fc抗体でコーティングし、比色ELISAにより定量した。B2A2は以下の順序、即ち、BMPR−Ib=ActR−II>>BMPR−1a=ActRIIb>BMPR−IIにおいて他のアイソフォームと同様、BMPR−Ib及びアクチビンR−IIに優先的に結合することが示された。対照として使用したインスリンはB2A2又はBMP−2の何れにも結合しなかった(データ示さず)。ここで図13を参照しながら、BMP−2の種々の濃度における精製BMP−2受容体/Fcキメラ分子へのB2A2結合を説明する。受容体と共に大モル過剰量で添加したBMP−2はB2A2への結合をブロックした。BMP−2を種々の濃度で添加した場合、得られた置換曲線はBMPR−IbへのB2A2の二段階結合動態を示唆している。
【0159】
前述の実施例は、の実施例において使用したものに関して本発明の一般的又は特別に記載した反応体及び/又は操作条件を前述の実施例において使用したものとおき駆ることにより同様に良好に反復することができる。
【0160】
これ等の好ましい実施形態を特に参照しながら本発明を詳述したが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変更又は改変は当業者には自明なものであり、このような改変及び同等物は全て添付請求項に包含されることを意図している。上記において引用した参考文献、出願、特許および公開物の全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
本明細書に組み込まれ部分を構成する添付図面は本発明の実施形態1つ以上を示すものであり、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するものである。図面は本発明の好ましい実施形態1つ以上を示すことを目的とするのみであり、本発明を限定しない。図面は以下を包含する。
【図1A−1B】図1AおよびBはB2A2がC3H10T1/2細胞においてアルカリホスファターゼ(ALP)のBMP−2誘導を増強することを示すグラフである。
【図2】図2はB2A2がCHO細胞及びE.coliの商業的製造方法で得られた組み換えヒトBMP−2の活性を増強することを示すグラフである。
【図3】図3はB2A2の相乗作用がBMP−2に特異的であったことを示すグラフである。
【図4】図4はC2C12細胞系統へのB2A2及びBMP−2の添加の時間的分離にもかかわらずALP活性が誘導されたことを示すグラフである。
【図5】図5はB2A2コーティング表面がBMP−2活性を増強したことを示すグラフである。種々の組成物の表面をまず組織培養皿中滅菌条件下シリルヘパリンでコーティングした(37℃で30分間インキュベートした酸エタノール中1%溶液、水で洗浄、56℃で乾燥)。
【図6】3週間目に移植された無胸腺ラットからの放射線撮影分析による相対強度を示すグラフである。
【図7】細胞毒製剤又はB2A2−K−NSを投与した後の培養物中のL6細胞の相対数を示すグラフ。
【図8】BMP−2の存在下又は非存在下のB2A2−K−NSの種々の濃度によるC2C12細胞における骨原性分化の誘導を示すグラフである。
【図9】BMP−2を有する場合と有さない場合のB2A2−K−NK類似体を含有するマトリゲルを移植した領域からの摘出した体外移植組織の領域を比較したグラフである。
【図10】B2A2−K−NS投与により発現が刺激されたC3H10T1/2細胞における軟骨形性経路のAlcian染色を示すグラフである。
【図11】図11はBMP−2の最善に近い濃度の存在下又は非存在下のB2A7−K−NSによるC1C12細胞の骨原性分化の誘導を示すグラフである。
【図12】図12は本発明の化合物とBMP−2受容体との間の特異的結合を示すグラフである。
【図13】図13はBMP−2受容体に結合するBMP−2とB2A2の相乗作用的活性を示すグラフである。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化I】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリング鎖である]の化合物。
【請求項2】
Yが更に(i)疎水性であり、(ii)最低約9及び最高約50の骨格原子の鎖を含み、そして(iii)骨形成蛋白−2中に存在しないリンカーを含む請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2がL又はDジアミンアミノ酸残基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
L又はDジアミンアミノ酸残基が2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチルアミノ酸、リジン又はオルニチンである請求項3記載の化合物。
【請求項5】
XがR2に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R3>0原子の場合にXはR3に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Yが直鎖アミノカルボン酸を含む請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Xが配列番号7〜配列番号44よりなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Zが配列番号1〜配列番号6よりなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項10】
下記構造:
【化2】
を有する請求項1記載の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物を含むコーティング少なくとも1つを有する生物活性インプラント。
【請求項12】
骨患部又は変性間接状態の治療及び/又は予防的処置のための医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1記載の化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
骨形成蛋白−2を更に含む請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項16】
下記式:
【化3】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、独立してR3に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]の化合物。
【請求項17】
Yが更に(i)疎水性であり、(ii)最低約9及び最高約50の骨格原子の鎖を含み、そして(iii)骨形成蛋白−2中に存在しないリンカーを含む請求項16記載の化合物。
【請求項18】
R2がL又はDジアミンアミノ酸残基である請求項16記載の化合物。
【請求項19】
L又はDジアミンアミノ酸残基が2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチルアミノ酸、リジン又はオルニチンである請求項18記載の化合物。
【請求項20】
XがR5に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項16記載の化合物。
【請求項21】
R6>0原子の場合にXはR6に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項16記載の化合物。
【請求項22】
Yが直鎖アミノカルボン酸を含む請求項16記載の化合物。
【請求項23】
Xが配列番号7〜配列番号44よりなる群から選択される請求項16記載の化合物。
【請求項24】
Zが配列番号1〜配列番号6よりなる群から選択される請求項16記載の化合物。
【請求項25】
下記構造:
【化4】
を有する請求項16記載の化合物。
【請求項26】
請求項16記載の化合物を含むコーティング少なくとも1つを有する生物活性インプラント。
【請求項27】
請求項16記載の化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含む医薬組成物。
【請求項28】
骨形成蛋白−2を更に含む請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬の製造における請求項16記載の化合物の使用。
【請求項30】
脊椎動物における骨形成の増強、骨患部の治療又は変性間接状態の治療のための方法であって、方法が、骨形成蛋白−2活性を増強する化合物有効量をそのような治療の必要な脊椎動物対象に投与することを含み、ここで化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである上記方法。
【請求項31】
化合物が、下記式:
【化5】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである請求項30記載の方法。
【請求項32】
化合物が、下記式:
【化6】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、R5に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである請求項30記載の方法。
【請求項33】
骨生育を促進する薬剤1つ以上を対象の投与することを更に含む請求項30記載の方法。
【請求項34】
骨生育を促進する薬剤が骨形成蛋白因子、抗再吸収剤、骨原性因子、軟骨誘導形成蛋白、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート、スタチン及び分化因子よりなる群から選択される請求項32記載の方法。
【請求項1】
下記式:
【化I】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリング鎖である]の化合物。
【請求項2】
Yが更に(i)疎水性であり、(ii)最低約9及び最高約50の骨格原子の鎖を含み、そして(iii)骨形成蛋白−2中に存在しないリンカーを含む請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2がL又はDジアミンアミノ酸残基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
L又はDジアミンアミノ酸残基が2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチルアミノ酸、リジン又はオルニチンである請求項3記載の化合物。
【請求項5】
XがR2に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R3>0原子の場合にXはR3に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Yが直鎖アミノカルボン酸を含む請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Xが配列番号7〜配列番号44よりなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Zが配列番号1〜配列番号6よりなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項10】
下記構造:
【化2】
を有する請求項1記載の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物を含むコーティング少なくとも1つを有する生物活性インプラント。
【請求項12】
骨患部又は変性間接状態の治療及び/又は予防的処置のための医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1記載の化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
骨形成蛋白−2を更に含む請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項16】
下記式:
【化3】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、独立してR3に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]の化合物。
【請求項17】
Yが更に(i)疎水性であり、(ii)最低約9及び最高約50の骨格原子の鎖を含み、そして(iii)骨形成蛋白−2中に存在しないリンカーを含む請求項16記載の化合物。
【請求項18】
R2がL又はDジアミンアミノ酸残基である請求項16記載の化合物。
【請求項19】
L又はDジアミンアミノ酸残基が2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4ジアミノブチルアミノ酸、リジン又はオルニチンである請求項18記載の化合物。
【請求項20】
XがR5に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項16記載の化合物。
【請求項21】
R6>0原子の場合にXはR6に共有結合し、そして共有結合がアミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第2アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む請求項16記載の化合物。
【請求項22】
Yが直鎖アミノカルボン酸を含む請求項16記載の化合物。
【請求項23】
Xが配列番号7〜配列番号44よりなる群から選択される請求項16記載の化合物。
【請求項24】
Zが配列番号1〜配列番号6よりなる群から選択される請求項16記載の化合物。
【請求項25】
下記構造:
【化4】
を有する請求項16記載の化合物。
【請求項26】
請求項16記載の化合物を含むコーティング少なくとも1つを有する生物活性インプラント。
【請求項27】
請求項16記載の化合物又は製薬上許容しうるその塩及び製薬用担体を含む医薬組成物。
【請求項28】
骨形成蛋白−2を更に含む請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
骨患部又は変性間接状態の治療又は予防的処置のための医薬の製造における請求項16記載の化合物の使用。
【請求項30】
脊椎動物における骨形成の増強、骨患部の治療又は変性間接状態の治療のための方法であって、方法が、骨形成蛋白−2活性を増強する化合物有効量をそのような治療の必要な脊椎動物対象に投与することを含み、ここで化合物は非成長因子ヘパリン結合領域、リンカー及び骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合する配列を有する合成のペプチドである上記方法。
【請求項31】
化合物が、下記式:
【化5】
(式I)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R2は独立して3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR2の側鎖を介して共有結合しており;
R3は独立してR2に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである請求項30記載の方法。
【請求項32】
化合物が、下記式:
【化6】
(式II)
[式中、
Xは(i)最低3アミノ酸残基を有し、(ii)最高約50アミノ酸残基を有し、そして(iii)骨形成蛋白−2受容体に特異的に結合するペプチド鎖であり;
R1は独立して水素であり、これにより、末端基はNH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体であるか、又は、N末端NH2、NH3+又はNH基を有するアミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドであり;
R6は、リンカーが0原子より大である場合、R5に共有結合した0〜約15骨格原子の鎖を含むリンカーであり;
R5は3官能性のアルファアミノ酸残基であり、ここでXはR3の側鎖を介して共有結合しており;
R4はOHであり、これにより、末端基はカルボキシル、NH2、N末端NH2、NH3+又はNH基を含む直鎖又は分枝鎖のC1〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基又は相当するアシル化誘導体、又はNH−R1であり;
YはR2およびZに共有結合した0〜約50骨格原子の鎖を含むリンカーであり;そして、
Zは(i)最低1ヘパリン結合モチーフ、(ii)最高約10ヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最高約30アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを包含する非シグナリングペプチド鎖である]のものである請求項30記載の方法。
【請求項33】
骨生育を促進する薬剤1つ以上を対象の投与することを更に含む請求項30記載の方法。
【請求項34】
骨生育を促進する薬剤が骨形成蛋白因子、抗再吸収剤、骨原性因子、軟骨誘導形成蛋白、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート、スタチン及び分化因子よりなる群から選択される請求項32記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−525499(P2007−525499A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554324(P2006−554324)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/005880
【国際公開番号】WO2005/082005
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503044709)バイオサーフェス エンジニアリング テクノロジーズ,インク. (5)
【出願人】(505061540)ブロークヘブン サイエンス アソシエイト,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/005880
【国際公開番号】WO2005/082005
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503044709)バイオサーフェス エンジニアリング テクノロジーズ,インク. (5)
【出願人】(505061540)ブロークヘブン サイエンス アソシエイト,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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