説明

骨産生におけるカテプシンKアンタゴニストの使用

本発明は、骨形成細胞による骨産生の増大をもたらすタンパク質分解酵素カテプシンKの調節に関係する。骨形成細胞内のこの酵素を標的にし、その活性を阻害する薬物は、新たな部類の同化療法、または骨構築療法を提示する。このような薬物は骨粗鬆症、パジェット病、転移性骨がん、骨折などのような疾患または障害の処置において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2006年5月22日および2006年6月1日付で出願された、それぞれ、米国仮特許出願第60/747,886号および同第60/810,456号に対する優先権を主張し、これらの内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
I. 発明の分野
本発明は分子生物学および医学の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は骨疾患および傷害、骨修復、骨インプラント、骨移植片ならびに歯周疾患の分野に関する。具体的には、本発明は骨形成を促進するためのカテプシンKアンタゴニストの使用に取り組む。
【背景技術】
【0003】
II. 関連技術
世界中で2億人を超える人が骨粗鬆症、骨折および(歯が周囲の骨を緩める)歯周(歯肉)疾患のような、骨障害に苦しんでいる。骨粗鬆症は、骨形成を刺激する治療法の医学的必要性が満たされていない、大きなかつ急速に拡大中の医療問題である。最新の骨粗鬆症薬は骨分解を遅延させるが、既に失われた骨量を元に戻すよう骨形成を刺激することはない。骨形成を刺激する化合物はこのように、骨疾患の分野での満たされていない必要性に相当する。骨粗鬆症は世界中でおよそ1億人の人に影響を与えていることが公知であり、そのうちの3.5千万人が米国、西欧および日本に住んでいる。さらに、2.5千万人を超える個体が毎年、骨折を患っており、6千万人が(歯が顎骨から緩んだ)歯周疾患を有しており、さらに1.8千万人が骨がんのような他の骨障害を有している。
【0004】
骨粗鬆症患者の最新の治療法では、骨形成ではなく、骨量減少の予防に重点が置かれている。これは依然として重要な考慮事項である。というのは、かなりの罹患率および死亡率が高齢者、特に腰部骨折を患う者での長期臥床と関連するからである。臥床の合併症のなかには血液凝固および肺炎がある。これらの合併症は認識されており、通常避けるよう処置がとられるが、治療に対する最良のアプローチとは程遠い。
【0005】
さらにもう一つの骨関連の健康問題は骨再建であり、具体的には、外傷性傷害に起因して、がんもしくはがん手術の結果として、出生時欠損の結果として、または加齢の結果としての骨組織の欠損を再建する能力である。より頻度の高い整形外科用インプラントの顕著な需要が存在し、頭蓋骨および顔面骨は特にこのタイプの再建の需要に対する標的である。新しいインプラント材料、例えばチタンが利用可能であるため、比較的大きい欠陥の修復が可能となっている。チタンインプラントは骨欠損全域で優れた一時的安定性をもたらす。しかしながら、欠損を架橋する生存骨がないと、器具の曝露、感染、構造の不安定性および、究極的には、欠損修復の失敗を招く可能性が経験から明らかである。
【0006】
自家骨移植片は骨傷害に対処する別の可能性であるが、それらは腸骨稜または肋骨のようなドナー部位から摘出されなければならず、それらは欠損を完全に埋めるには不十分な骨にしかならないことが多く、ならびに生ずる骨は感染および再吸収を起こしやすいという点で、自家骨移植片にはいくつかの明らかな欠点がある。部分的に精製された異種間調製物は、キログラム単位のウシの骨からマイクログラム量しか精製できず、商業的大規模生産は費用がかかって非現実的であるため、臨床的使用には現実的でない。それゆえ、同種移植片および脱塩骨調製物が利用されることが多い。遊離の骨移植片を軟組織および血管が付着した状態で顕微手術的に移入することにより、移植片に直接的血液供給源を与えて骨欠損を閉じることができる。しかしながら、これらの技術は時間がかかり、かなりの罹患率を生じることが明らかにされており、特別に訓練された者のみが使用することができる。
【0007】
それゆえ、骨疾患および傷害を処置するためにインビボで骨形成を刺激する改良法の必要性、ならびにインプラントの作製および使用において骨をエクスビボで作製する必要性が存在し続けている。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
したがって、本発明によれば、(i) 第一の細胞内カテプシンK阻害剤を選択する段階; および(ii) 対象に第一のカテプシンK阻害剤を投与する段階を含む、骨形成を促進する方法が提供される。阻害剤は生物製剤または有機医薬小分子であってよい。生物製剤はペプチド、siRNA、アンチセンス分子または一本鎖抗体であってよい。有機医薬小分子は親水性および親油性の特性、空間特性、またはこれらの化合物に関する医薬化学および酵素化学研究から得られる他の情報に基づく公知のカテプシンK阻害剤の構造変異種であってよい。有機医薬はエポキシスクシンアミド、VEL-0230またはその類似体であってよい。第一の阻害剤は骨吸収を阻止してもよい。対象は骨粗鬆症、ビタミンD欠乏症、骨がん、骨折、歯周疾患、パジェット病、他の疾患に続く骨粗鬆症のような、骨関連の病態もしくは傷害を患うこともあり、または骨移植片もしくはインプラントを必要とすることもある。対象はヒトまたは非ヒト動物である。化合物は骨吸収阻害を有してもまたは欠いてもよい。
【0009】
本方法は対象を第二の薬剤と接触させる段階をさらに含んでもよい。第二の薬剤はビスホスホネート、PTH類似体、または第一の阻害剤と異なる第二のカテプシンK阻害剤であってよい。第二のカテプシンK阻害剤はカテプシンKの細胞外阻害剤であってよい。第一および/または第二の阻害剤は膜貫通送達を高めるよう製剤化されてよい。第一および/または第二の阻害剤は細胞透過性因子とともに製剤化されてよい。第一および/または第二の阻害剤は脂質送達ビヒクル中に製剤化されてよい。第一および/または第二の阻害剤はその生体利用能を増強するよう製剤化されてよい。第一および/または第二の阻害剤は二回以上対象に投与されてよい。第一および/または第二の阻害剤は経口または静脈内経路によって対象に投与される。
【0010】
もう一つの態様において、(i) 細胞内カテプシンK阻害剤を選択する段階; (ii) 骨細胞をカテプシンK阻害剤と接触させる段階; および(iii) 骨形成を促進する条件の下で細胞を培養する段階を含む、単離骨細胞から骨を作製する方法が提供される。本方法は骨細胞またはそれから得られた骨を対象に移植する段階をさらに含むことができる。骨細胞は対象から段階(ii)の前に取得されていてもよい。取得される細胞は段階(ii)の前において幹細胞に由来していてもよい。幹細胞は段階(ii)の前に、骨形成細胞の形成を促進する条件の下にあってもよい。化合物は骨吸収阻害を有してもまたは欠いてもよい。
【0011】
もう一つの態様において、(i) 候補化合物を提供する段階; (ii) 候補化合物を単離カテプシンK酵素、またはカテプシンKを発現する細胞、または細胞がカテプシンKを発現する実験動物と混合する段階; (iii) カテプシンKの活性もしくは発現、または骨形成を測定する段階; および(iv) 段階(iii)において測定された特性を候補調節物質の非存在下において観察されたものと比較する段階を含み、測定された特性の間の相違は、候補化合物が、実際に、カテプシンKの調節物質であることを示す、骨形成を促進する薬剤を同定する方法が提供される。化合物は骨吸収阻害を有してもまたは欠いてもよい。
【0012】
本明細書において記述する任意の方法または組成物は、本明細書において記述するその他任意の方法または組成物に関して実践できることが企図される。
【0013】
特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」と関連して用いられる場合、「一つの(a)」または「一つの(an)」という単語の使用は、「一つの(one)」を意味しうるが、それは「一つまたは複数の(one or more)」、「少なくとも一つの(at least one)」および「一つまたは二つ以上の(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0014】
本明細書において考察する任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実践できることが企図され、その逆もまた同様である。さらに、本発明の組成物およびキットは、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0015】
本出願を通じて、「約」という用語は、ある値が、その値を測定するために利用される装置、方法の誤差の固有のバラツキ、または研究対象物の間に存在するバラツキを含むことを指すよう用いられる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明者は、参照により本明細書に含まれる、米国特許第6,811,786号に記述の方法論を用い組織培養において骨形成を実証した。この系を用い、本発明者は、骨分解にのみ関与するものとこれまで考えられてきたタンパク質分解酵素カテプシンKに固有の作用機序を発見した。骨吸収の調節でのその役割は、古典的なタンパク質分解酵素のそれであり、細胞外区画の成分、特にコラーゲンを分解するよう機能する(Bossard et al., 1996)。さらに、一般的な視点は、この酵素が細胞外タンパク質を分解するよう破骨細胞において専らにおよび/または選択的に機能し、したがって、骨吸収破骨細胞を阻害する役割を果たす抗異化療法の標的にされるというものである(Yasuda et al., 2005; Grabowskal et al., 2005; Troen, 2004; Dodds, 2003; Zaidi et al., 2003)。最近になって、カテプシンKは骨芽細胞により発現されることが明らかにされている; しかしながら、この報告は依然として、カテプシンKが細胞外の役割を有するという考え方に賛同しており、さらには、骨芽細胞内でのこの酵素の酵素機能を試験していない(Mandelin et al., 2006)。
【0017】
本発明の重要な特徴は、骨形成細胞内で、カテプシンKが下述のように、酵素阻害剤として骨形成に関与し、意外にも、骨形成の増大をもたらすということである。骨形成細胞内シグナル伝達ネットワークでのカテプシンKの役割は、次の3つの所見によって裏付けられる: (1) 本発明者のカテプシンK阻害剤はインビボでもインビトロでもともに骨形成を刺激する、(2) カテプシンKのRNA干渉試験(RNAi; 低分子干渉RNA (siRNA)処理を介して行った)から、このメッセージの阻害は処理済のヒト骨芽細胞において骨形成表現型をもたらす、ならびに(3) 複数の骨形成増殖因子での骨形成の刺激は骨芽細胞内でカテプシンKのメッセージおよび活性を減らす。
【0018】
多数の特許がカテプシンK阻害剤の構造および酵素の細胞外活性の処理でのその使用に関して存在している。PCT出願WO 2005/049028 A1ではカテプシンK阻害剤を使用して、そのような処置を必要とする患者での骨形成を刺激することについて記述している。しかしながら、その中のデータはヒトにおいてこの効果を実証しておらず、二つの関連する概要でも実証していない。さらに、これらの参考文献では破骨細胞カテプシンKの細胞外阻害という従来の視点に即して阻害剤の使用を開示し、提言している。本発明では、対照的に、インビボとエクスビボの両状況でのカテプシンKの細胞内阻害の使用を提唱する。
【0019】
I. カテプシンK
カテプシンは、結合組織の正常な生理学的および病理学的分解において機能するプロテアーゼである。カテプシンは細胞内のタンパク質分解および代謝回転、骨の再形成、ならびにプロホルモン活性化において主要な役割を果たす(Marx, 1987)。カテプシンB、H、LおよびSは、パパインスーパーファミリーに属する、普遍的に発現されるリソソームシステインプロテイナーゼである。それらは腎臓、肝臓、肺および脾臓を含め、ヒトの多くの組織において構成的なレベルで見出される。カテプシンの病理学的役割のなかには、糸球体腎炎、関節炎およびがん転移における関与もある(Sloan and Honn, 1984)。カテプシンLおよびBのmRNAおよびタンパク質のレベルが非常に上昇しているのが腫瘍細胞において認められる。カテプシンLのmRNAも腫瘍促進剤および増殖因子で処理された線維芽細胞において誘導される(Kane and Gottesman, 1990)。
【0020】
このプロテアーゼファミリーの一員であるカテプシンKは、骨マトリックスの分解に関与する主要なプロテアーゼであると考えられる。カテプシンKは、1994年に発見され、37 kDaのプレプロ酵素として合成されており、低いpHで成熟した27 kDaの酵素に自己活性化されると思われる(McQueney et al., 1997; Littlewood-Evans et al., 1997; 米国特許第5,861,298号)。カテプシンKは破骨細胞において多量に、かつ比較的選択的に発現されており、そこではカテプシンKが波状縁中のリソソームに、および骨表面の吸収窩に局在している。この細胞の、および細胞外の局在から、骨吸収での重要な役割が示唆され、最近になって特徴付けられたその機能活性プロファイルからも示唆される。I型コラーゲンをヘリックス領域の内外でおよび同様にII型コラーゲンを三重ヘリックスのN末端で分解する、酸性および中性のpHで作用する、カテプシンKの独特の能力から、カテプシンKが骨および軟骨の分解に重要な役割を果たすことは明らかである。
【0021】
II. カテプシンKアンタゴニストを用いた骨治療法
A. アンタゴニスト
参照により組み入れられる米国特許第5,843,992号、同第6,387,908号および同第6,689,785号はカテプシンK阻害剤としてのVEL-0230およびその類似体の基礎をなす構造ならびに骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症、パジェット病および関節炎でのその使用に向けられている。カテプシンKアンタゴニストの唯一公知の活性は、カテプシンKの細胞外活性を調節することである。本発明の薬剤は、カテプシンKの細胞外機能を阻害し、かつ同様に破骨細胞内での細胞内カテプシンKの阻害によりインビトロでおよび/またはインビボで骨の形成を促進しうるものである。本薬剤は骨吸収を阻害することもできる。これらの分子的および細胞的作用の効果は、骨疾患および傷害を処置することであり、骨関連の病態に苦しむ対象の臨床的状況のなかで機能を改善すること(疼痛の低減、運動性の増大など)であろう。
【0022】
その他の薬剤を細胞内カテプシンK阻害剤と組み合わせて使用することができる。より一般的には、これらの薬剤を(細胞内阻害剤とともに)合わせた量で供与して、上記の効果のいずれかをもたらすことができよう。この過程は細胞または対象を両薬剤と同時に接触させる段階を含むことができる。これは細胞を単一の組成物もしくは両薬剤を含んだ薬理学的製剤と接触させることにより、または細胞もしくは対象を、一方の組成物が細胞内阻害剤を含み、もう一方が第二の薬剤を含む二つの異なる組成物もしくは製剤と、同時に接触させることにより達成することができる。
【0023】
あるいは、一方の薬剤が数分から数週間の間隔でもう一方の薬剤に先行してもまたは続行してもよい。薬剤が細胞または対象に別々に適用される態様では、薬剤が細胞または対象に好都合な複合効果を及ぼすことが依然として可能であるように、一般に、各送達時の間にかなりの期間が過ぎないように努めるであろう。そのような場合には、細胞を両様式のものと約12〜24時間の間隔で、より好ましくは、約6〜12時間の間隔で接触させることができると考えられる。場合によっては、処置の期間をかなり延ばすことが望ましいこともあるが、しかし、その場合には各投与の間に数日間(2、3、4、5、6または7日間)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過する。
【0024】
様々な組み合わせを利用してもよく、カテプシンKの細胞内阻害剤を「A」とし、他の薬剤を「B」とすると
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B/ A/B/B/A/ B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B/ B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
である。そのような薬剤の投与プロトコルおよび製剤化は、以下でさらに論じるように、標準的な薬学的薬物のものに従うのが一般的であろう。組み合わせ薬剤にはビスホスホネート(ジドロネル(商標)、フォサマックス(商標)およびアクトネル(商標))、SERMs (Evista)または他のホルモン誘導体、ならびに副甲状腺ホルモン(PTH)類似体が含まれる。さらに、米国特許第6,642,239号、同第6,531,612号、同第6,462,076号および同第6,274,336号、ならびに米国特許出願公開第2006/0074092号、同第2006/0020001号、同第2005/0245596号、同第2005/0107616号、同第2005/0054819号および同第2004/0249153号は、細胞外の様式で働く他のカテプシンK阻害剤を開示している。
【0025】
B. 骨修復を要する疾患および状態
以下は、骨形成および/または骨修復の促進において、カテプシンKアンタゴニストまたはそれで処理した細胞を用いることから恩恵を享受するはずの様々な疾患および障害を例示するヒトの状態の簡単な考察である。以下に加えて、例えば、ビタミンD欠乏症のような、いくつかの他の状態も存在する。
【0026】
骨折
一番目の例は、骨折を患うがそのほかは健康な個体である。多くの場合、臨床的骨折は、痛みを緩和し、自然の修復機構に創傷を修復させるようにギブスによって処置される。折れた骨の処置時に起こりうる様々な合併症を考慮さえしなければ、最近の骨折の処置には進歩があるものの、通常の状況で骨の治癒を高めるいずれの新たな手順も大きな進歩となるであろう。
【0027】
歯周疾患
進行性の歯周疾患は、周囲の骨への歯の付着の破壊を通じて歯の喪失をもたらす。米国人口のおよそ5〜20% (1500〜6000万人)が重度の広汎型歯周疾患に苦しんでおり、関連する外科的処置が200万例も行われている。さらに、この疾患が少なくとも一部位の臨床的付着の喪失の特定と定義されるなら、全成人のおよそ80%が影響を受けており、そのうちの90%が年齢55〜64歳である。処置されなければ、およそ88%の罹患者が疾患の穏やかな〜速やかな進行を示し、これは年齢との強い相関関係を示す。歯周疾患の主な現行処置は、失われた歯周組織の置換からなる再生療法である。失われた骨は、通常、その高い骨形成能により、個体自身の骨および骨髄で処置される。保存されたヒト骨を用いて、骨同種移植(個体間)を行うこともできる。現行の歯周コスト分析は得難いが、罹患群の大きさおよび一次治療法としての骨移植片の現使用から、この領域は骨形成療法の魅力的な標的に相当することが強く示唆される。
【0028】
骨減少症/骨粗鬆症
骨減少症および骨粗鬆症という用語は、骨量減少および骨折によって特徴付けられる不均一な障害群をいう。骨減少症とは、集団の平均骨量よりも低い一つまたは複数の標準偏差である骨量のことであり; 骨粗鬆症は2.5 SDまたはそれ以下と定義される。推計2000〜2500万人が部位特異的な骨量減少のために骨折の危険性が高い。骨粗鬆症の危険因子には、加齢、性別(より女性に多い)、低骨量、早期閉経、人種(一般的に白人; アジア人およびヒスパニック系の女性)、低カルシウム摂取、身体活動の低下、遺伝因子、環境因子(喫煙およびアルコールまたはカフェインの過剰摂取を含む)、ならびに転倒傾向を生じる神経筋制御の欠陥が含まれる。
【0029】
毎年、米国では100万件を超える骨折が骨粗鬆症によるものでありうる。経済的観点から、骨粗鬆症治療の費用(逸失賃金を除く)は世界的に見て350億ドルである。人口統計学的傾向(すなわち、徐々に加齢している米国人口)から、これらの費用は2020年までに620億ドルにまで増大しうることが示唆されている。明らかに、骨粗鬆症は重要な医療問題である。
【0030】
かつて女性の加齢には当然と考えられていた骨粗鬆症は、もはや年齢および性依存的とは見なされていない。骨粗鬆症は、骨折の危険性増大の素因となる骨強度の減弱によって特徴付けられる骨格障害と定義される。骨強度は二つの主な特徴、つまり骨密度および骨質の統合を反映している。骨密度は、単位面積または体積あたりのミネラルのグラム数として表され、所与のどの個体でも最大骨量および骨量減少量によって決まる。骨質とは、構造、代謝回転、傷害累積(例えば、微小骨折)およびミネラル化をいう。損傷(failure)を引き起こす力(例えば、外傷)が骨粗鬆症骨に加えられると、骨折が起こる。
【0031】
骨粗鬆症患者の現行の治療法では、骨折の修復ではなく、骨折の予防に重点が置かれている。かなりの罹患率および死亡率が高齢者、特に腰部骨折を患う者での長期臥床と関連することを明記した文献があるため、これは依然として重要な考慮事項である。臥床の合併症のなかには血液凝固および肺炎がある。これらの合併症は認識されており、通常避けるよう処置がとられるが、治療に対する最良のアプローチとは程遠い。このように、骨粗鬆症の患者集団は、骨を強め、骨折修復過程を速めるようデザインされた新しい治療法から恩恵を享受し、これらの人々は合併症が生じる前に自分自身で立てるようになると考えられる。
【0032】
骨再建/移植術
四番目の例は骨再建、具体的には、外傷性傷害に起因して、がんもしくはがん手術の結果として、出生時欠損の結果として、または加齢の結果としての骨組織の欠損を再建する能力に関連する。より頻度の高い整形外科用インプラントの顕著な需要が存在し、頭蓋骨および顔面骨は特にこのタイプの再建の需要に対する標的である。新しいインプラント材料、例えばチタンが利用可能であるため、比較的大きい欠陥の修復が可能となっている。チタンインプラントは骨欠損全域で優れた一時的安定性をもたらす。しかしながら、欠損を架橋する生存骨がないと、器具の曝露、感染、構造の不安定性および、究極的には、欠損修復の失敗を招く可能性が経験から明らかである。したがって、骨形成をインプラントの付近で刺激する治療薬は、より迅速な回復を促進するであろう。
【0033】
自家骨移植片は別の可能性であるが、それらは腸骨稜または肋骨のようなドナー部位から摘出されなければならず、それらは欠損を完全に埋めるには不十分な骨にしかならないことが多く、ならびに生ずる骨は感染および再吸収を起こしやすいという点で、自家骨移植片にはいくつかの明らかな欠点がある。部分的に精製された異種間調製物は、キログラム単位のウシの骨からマイクログラム量しか精製できず、商業的大規模生産は費用がかかって非現実的であるため、臨床的使用には現実的でない。それゆえ、同種移植片および脱塩骨調製物が利用されることが多い。
【0034】
遊離の骨移植片を軟組織および血管が付着した状態で顕微手術的に移入することにより、移植片に直接的血液供給源を与えて骨欠損を閉じることができる。しかしながら、これらの技術は時間がかかり、かなりの罹患率を生じることが明らかにされており、特別に訓練された者のみが使用することができる。さらに、骨インプラントは量が限られていることが多く、簡単に形をつけられない。例えば、下顎骨において、大多数の患者は、現在認められている技術を用いては歯科器具を装着することができず(連続性が確立された後でも)、したがって咀嚼能の改善がほとんど得られない。
【0035】
骨再建に関連して、改善が難しい具体的な領域は、外傷、出生時欠損により、または特に、腫瘍切除後に生じるような、広範な欠損の処置に関係するもの、および同様に人工関節の領域である。整形外科用インプラント、接合部分および人工関節の成功度は、インプラントの表面、またはインプラントの機能部分が骨刺激剤でコーティングされる場合に改善される可能性がある。インプラント周辺の生物学的部位とのより効果的な相互作用を促進するために、理想的には、組織修復を促進するため、インプラントの表面を一つまたは複数の適切な材料でコーティングすることができよう。
【0036】
III. 薬学的製剤および送達
A. 組成物および経路
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散された一つまたは複数のカテプシンKアンタゴニストの有効量を含む。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という語句は、必要に応じて、例えば、ヒトのような、動物に投与される場合、有害反応、アレルギー反応または他の不適当な反応を生じない分子的実体および組成物をいう。少なくとも一つのカテプシンKアンタゴニスト、および任意でさらなる活性成分を含有する薬学的組成物の調製は、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990により例示されているように、本開示に照らせば当業者には公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物はFDA生物学的基準局によって要求されるような、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、当業者には公知であるように(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照のこと)、ありとあらゆる溶媒、分散媒質、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、そのような類似の材料およびその組み合わせを含む。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除き、薬学的組成物でのその使用が企図される。
【0038】
カテプシンKアンタゴニストは、経口的にまたは注射により投与されるかに応じて異なるタイプの担体と混合されてもよい。本発明では、当業者には公知であるように(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照のこと)、口腔に、静脈内に、皮内に、経皮的に、髄腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、筋肉内に、皮下に、粘膜に、経口的に、局所的に、局在的に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)により、注射により、注入により、持続注入により、直接的な標的細胞の局所潅流浴により、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリーム中で、脂質組成物(例えば、ナノ粒子、リポソーム)中で、または他の方法もしくは前記の任意の組み合わせにより投与することができる。
【0039】
カテプシンKアンタゴニストは遊離塩基、中性形態または塩形態で組成物中に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩は酸付加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、あるいは例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸もしくはマンデル酸のような有機酸と形成されるものを含む。遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄のような無機塩基; またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインのような有機塩基から生じるものでもよい。製剤化されたら、投与製剤に適合する形でおよび治療的に有効であるような量で溶液を投与する。
【0040】
さらに本発明によれば、投与に適した本発明の組成物は、不活性な希釈剤を含むまたは含まない薬学的に許容される担体中で提供される。担体は同化可能であるべきであり、液体、半固体、すなわちペースト、または固体担体を含む。任意の従来の媒質、薬剤、希釈剤または担体がレシピエントにとってまたはその中に含有される組成物の治療的有効性にとって有害である場合を除き、本発明の方法の実践で用いる投与可能な組成物でのその使用は適切である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤など、またはその組み合わせが挙げられる。組成物は一つまたは複数の成分の酸化を遅らせるよう様々な抗酸化剤を含んでもよい。さらに、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な抗菌剤および抗真菌剤のような保存剤によって微生物の作用の阻止をもたらすことができる。
【0041】
本発明の特定の態様において、組成物を半固体または固体担体と組み合わせるまたは完全に混合する。混合は粉砕のような任意の簡便な方式で行うことができる。組成物を治療活性の喪失、すなわち、胃での変性から保護するために、混合過程のなかで安定化剤を加えることもできる。組成物で用いる安定剤の例としては、緩衝液、グリシンおよびリシンのようなアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどのような炭水化物が挙げられる。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、カテプシンKアンタゴニスト、一つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む、薬学的脂質ビヒクル組成物の使用に関係しうる。本明細書において用いられる場合、「脂質」という用語は、特徴として水に不溶性で、かつ有機溶媒により抽出可能である、広い範囲の物質のいずれかを含むよう定義される。この広い化合物群は当業者に周知であり、「脂質」という用語が本明細書において用いられる場合、特定の構造のいずれかに限定されない。例としては、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物が挙げられる。脂質は天然に存在してもまたは合成されても(すなわち、人によってデザインまたは産生されても)よい。脂質は当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リソ脂質(lysolipids)、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルかつエステル結合脂肪酸を有する脂質および重合性脂質、ならびにその組み合わせを含む。
【0043】
当業者は、組成物を脂質ビヒクル中に分散するために利用できる技術域に精通しているであろう。例えば、カテプシンKアンタゴニストを当業者に公知の任意の手段により、脂質を含有する溶液中に分散する、脂質で溶解する、脂質で乳化する、脂質と混合する、脂質と合わせる、脂質に共有結合する、脂質中の懸濁液として含める、ミセルもしくはリポソームにより含めるもしくは複合体化する、または他の方法で脂質もしくは脂質構造と結び付けることができる。分散はリポソームを形成させてもまたはさせなくてもよい。
【0044】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、処置される疾患のタイプ、以前のまたは同時の治療的介入、患者の特発性疾患および投与経路のような、身体的および生理的要因により判定することができる。投与量および投与経路に応じ、好ましい投与量および/または有効量の投与回数は、対象の反応によって異なりうる。投与の責任医師が、いずれにしても、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に適した用量を判定するであろう。
【0045】
ある種の態様において、カテプシンKアンタゴニストの薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%のアンタゴニスト、約0.5%のアンタゴニスト、または約1.0%のアンタゴニストを含むことができる。他の態様において、アンタゴニストは、単位重量の約2%から約75%または、例えば、約25%から約60%、およびその中で導き出せる任意の範囲を含むことができる。当然ながら、治療的に有用な各組成物におけるアンタゴニストの量は、適当な投与量が化合物の所与の単位用量で得られるように調製することができる。溶解性、生体利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間のような要因、および他の薬理学的考察が、そのような薬学的製剤を調製する当業者により企図され、したがって、様々な投与量および処置計画が望ましいかもしれない。
【0046】
他の非限定的な例において、カテプシンKアンタゴニストの用量は同様に、投与あたり約0.1マイクログラム/kg/体重、約0.2マイクログラム/kg/体重、約0.5マイクログラム/kg/体重、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から約1000 mg/kg/体重またはそれ以上、およびその中で導き出せる任意の範囲を含むことができる。本明細書において列挙した数値から導き出せる範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づき、約5 mg/kg/体重〜約100 mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲で投与することができる。
【0047】
本発明の特定の態様において、カテプシンKアンタゴニストを消化器経路によって投与されるように製剤化する。消化器経路は、組成物が消化管と直接接触する可能性のある全ての投与経路を含む。具体的には、本明細書において開示する薬学的組成物は経口的に、口腔に、直腸にまたは舌下に投与することができる。したがって、これらの組成物は不活性な希釈剤ともしくは同化可能な食用担体とともに製剤化されてもよく、またはそれらは硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセル中に封入されてもよく、またはそれらは錠剤に圧縮されてもよく、またはそれらは規定食の食物と直接組み合わされてもよい。
【0048】
ある種の態様において、活性な化合物を賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で使用することができる(Mathiowitz et al., 1997; Hwang et al., 1998; 米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号および同第5,792,451号、それぞれその全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは以下: 例えば、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはその組み合わせのような結合剤; 例えば、第二リン酸カルシウム、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはその組み合わせのような賦形剤; 例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸またはその組み合わせのような崩壊剤; 例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤; 例えば、スクロース、ラクトース、サッカリンまたはその組み合わせのような甘味剤; 例えばペパーミント、冬緑油、チェリー香料、オレンジ香料などのような香味剤を含有することもできる。投与量単位剤形がカプセルである場合、これは上記タイプの材料に加えて、液体担体を含有することができる。様々な他の材料がコーティングとして、または他の方法で投与量単位の物理的形態を改変するように存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルをシェラック、糖またはその両方でコーティングすることができる。投与量形態がカプセルである場合、これは上記タイプの材料に加えて、液体担体のような担体を含有することができる。ゼラチンカプセル、錠剤または丸剤を腸溶的にコーティングすることができる。腸溶コーティングは、pHが酸性の胃または腸上部での組成物の変性を阻止する。例えば、米国特許第5,629,001号を参照されたい。小腸に達すると、その中の塩基性pHがコーティングを溶解し、組成物が放出され、特殊化した細胞、例えば、上皮腸細胞およびパイエル板M細胞により吸収されることを可能にする。シロップまたはエリキシルは活性化合物、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、染料およびチェリーまたはオレンジ香料のような香料を含有することができる。もちろん、任意の投与量単位剤形の調製で使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、利用される量において実質的に無毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性の調製物および製剤に組み入れることができる。
【0049】
歯周疾患の処置でのような、経口投与の場合、本発明の組成物をあるいは、口腔洗浄薬、歯磨剤、口腔錠、経口スプレー、ゲルまたは舌下経口投与製剤の形態で一つまたは複数の賦形剤と組み合わせてもよい。例えば、口腔洗浄薬は必要量の活性成分をホウ酸ナトリウム溶液(Dobell溶液)のような、適切な溶媒に組み入れて調製することができる。あるいは、活性成分をホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウム含有のものなどの経口溶液に組み入れてもよく、または歯磨剤に分散してもよく、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤および湿潤剤を含みうる組成物に治療的に有効な量で加えてもよい。あるいは、舌下に置くか、歯肉線に沿って、歯の表面にブラシをかけるか、またはそうでなければ口の中で溶解するかできる錠剤、ゲルまたは溶液の形態に組成物を成形してもよい。ともに参照により組み入れられる米国特許第6,074,674号および同第6,270,750号では、歯周処置のための局所徐放性組成物について記述している。
【0050】
さらなる態様において、カテプシンKアンタゴニストを非経口経路を介して投与することができる。本明細書において用いられる場合、「非経口の」という用語は、消化管を回避する経路を含む。具体的には、本明細書において開示する薬学的組成物は、例えば、限定されるものではないが、静脈内に、皮内に、筋肉内に、動脈内に、髄腔内に、皮下にまたは腹腔内に投与することができる。米国特許第6,537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号および同第5,399,363号(それぞれその全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような、界面活性剤と適当に混合された水の中で調製することができる。分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物中で、ならびに油中で調製することもできる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を阻止するよう保存剤を含有する。注射用途に適した薬学的形態は、無菌水溶液または分散液および無菌注射溶液または分散液の即時調製用の無菌粉末を含む(米国特許第5,466,468号、これはその全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。いかなる場合でも、その形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような、微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適当な混合物、ならびに/または植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によっておよび界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
【0051】
水溶液中での非経口投与の場合、例えば、溶液は必要なら適当に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤が十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にされるべきである。これらの特定の水溶液はとりわけ、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に適している。これに関連して、利用できる無菌の水性媒体は、本開示に照らせば当業者には公知であろう。例えば、一投与量をNaCl等張溶液1 mlに溶解し、皮下注入流体1000 mlに加えるか、注入予定部位に注射するかできる(例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」15th Edition, 1035-1038頁および1570-1580頁を参照のこと)。処置される対象の状態に応じて、いくらかの投与量のバラツキがどうしても起こるであろう。投与の責任者が、いずれにしても、個々の対象に適した用量を判定するであろう。さらに、ヒト投与の場合、調製物はFDA生物製剤基準局によって要求されるような、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度基準を満たすべきである。
【0052】
骨状態の処置用の徐放性製剤では米国特許第4,722,948号、同第4,843,112号、同第4,975,526号、同第5,085,861号、同第5,162,114号、同第5,741,796号および同第6,936,270号が挙げられ、これらの全てが参照により組み入れられる。骨修復のための方法および注射用組成物は米国特許第4,863,732号、同第5,531,791号、同第5,840,290号、同第6,281,195号、同第6,288,043号、同第6,485,754号、同第6,662,805号および同第7,008,433号に記述されており、これらの全てが参照により組み入れられる。
【0053】
無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒に、必要に応じて、上に列挙した種々の他の成分とともに組み入れた後にろ過滅菌を行うことによって調製される。一般に、分散液は様々な無菌活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙したもので必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に組み入れることによって調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加えて任意のさらなる所望の成分の粉末が、予め滅菌ろ過されたその溶液から得られる、真空乾燥法および凍結乾燥法である。粉末の組成物を安定化剤有りまたは無しで、例えば、水または生理食塩溶液のような、液体担体と混ぜ合わせる。
【0054】
B. 装置
上記の経路による投与のためのカテプシンK阻害剤および医薬を提供することに加えて、このような阻害剤をインプラントのような、装置との関連で使用することができる。歯科インプラント、腰、膝および肘のような関節インプラント、椎骨/脊椎インプラントなどを含めて、様々な骨関連のインプラントが企図される。カテプシンK阻害剤を生物活性マトリックスまたはコーティング中を含め、インプラントの表面中に含浸させることができる。阻害剤をさらに、徐放、遅延放出、長期放出または持続放出されるよう製剤化することができる。コーティングは、例えば、第V項において後述のものなどの、重合体を含むことができる。以下は、本発明のこの態様によって利用できる骨インプラントおよび装置に関する米国特許の一覧表である。
【0055】
(表1) 骨インプラントの特許




先行の特許はその全体が参照により全て本明細書に組み入れられる。
【0056】
IV. インビトロおよびエクスビボでの適用のための細胞
A. 幹細胞
本発明によれば、骨形成細胞を作製するために処理されうる幹細胞が提供される。幹細胞は一般に、特定の細胞タイプ、本件では骨形成細胞に分化するよう誘導されうる多能性細胞と定義される。様々な幹細胞は本発明によって利用可能であり、間葉系幹細胞、造血幹細胞、胚性幹細胞、組織幹細胞、および胚性がん腫細胞を含む。これらの細胞は、免疫学的単離、物理化学的単離、蛍光活性化細胞ソーティング、限界希釈培養などを含む当技術分野において周知の様々な方法によって単離することができる。
【0057】
B. 骨形成前駆細胞
本書の他の部分に記述されているインビボの態様に加えて、本発明は同様に、エクスビボでの骨の作製を提供する。一つの態様において、骨前駆細胞(骨形成細胞)は幹細胞から作製される。本明細書において用いられる場合、骨前駆細胞は、骨芽細胞に分化できるまたは成長できる任意の細胞である。以下の項ではこれらの細胞の特徴について記述する。骨形成細胞または前駆細胞は、骨髄または骨のような一次供給源に由来する。さらに、細胞はヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコおよびネズミ由来の細胞を含め、いくつかの異なる種に由来してもよい。
【0058】
i. 骨前駆細胞(骨芽前駆細胞)
ヒト骨前駆細胞は、低量の骨タンパク質(オステオカルシン、オステオネクチンおよびアルカリホスファターゼ)を発現し、内部複雑性の程度が低い、小さなサイズの細胞と特徴付けられる(Long et al., 1995)。分化するよう刺激されると、これらの前骨芽細胞はその外観、サイズ、抗原発現および内部構造において骨芽細胞になる。通常、これらの細胞は骨髄中に非常に低い頻度でしか存在しないが、これらの細胞を単離する工程は報告されている(Long et al., 1995)。米国特許第5,972,703号にはさらに、骨前駆細胞を単離および使用する方法が記述されており、これは参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0059】
いくつかの試験から骨髄由来細胞は骨形成能を有することが示唆されている。これらの研究の大部分では間葉系幹細胞(MSC)が骨活性サイトカインの存在下で培養された場合、骨芽細胞への分化を起こすと指摘している(Jaiswal et al., 2000; Phinney et al., 1999; Aubin, 1998; Zohar et al., 1997)。間葉系幹細胞は、複数の間質細胞系統を作製できる多能性集団である。MSCは、現在用いられている限りでは、プラスチック付着によって単離され、低密度継代によって増殖される不均一な細胞集団である。それにもかかわらず、近刊では、単一のMSC細胞が二つまたは三つの間葉系統を生み出すことがあり、通常、そのうちの一つは骨細胞であることを示唆するMSC細胞の運命転帰のクローン性が示唆されている(Pitenger et al., 1999)。これらの試験は、骨髄間質細胞の骨形成能、具体的にはマウスおよびヒト双方でのいわゆるCFU-fを実証した先の報告と一致している(Friedenstein et al., 1968; Reddi and Huggins, 1972; Friedenstein et al., 1982; Ashton et al., 1985; Bleiberg, 1985; Gronthos et al., 1994; Gronthos et al., 1999)。
【0060】
ヒトMSCの単細胞単離によって、非分画MSCと同じ表面表現型を発現するクローンが作製されている(Pittenger et al., 1999)。興味深いことに、評価された6つのMSCクローンのうち、2つが骨形成能、軟骨形成能および脂質生成能を保持していた; その他は両性能(骨形成能に加えて軟骨形成能、もしくは骨形成-脂質生成能)であった、または単一系統(軟骨細胞)であった。このことから、MSCそれ自体が実際は不均一であることが示唆される(培養条件も分化能の喪失をもたらしたかもしれないが)。現在まで、MSCの自己再生能はいまだ論争の中にある。それにもかかわらず、これらのインビトロ試験および他のインビボ試験(Kadiyala et al., 1997; Petite et al., 2000; Krebsbach et al., 1999)から、MSCは骨細胞系統に傾倒し、インビトロにおいてマトリックスミネラル化、またはインビボにおいて骨形成の状態に発達しうることが明らかである。
【0061】
ii. 前骨芽細胞
前骨芽細胞は骨芽前駆細胞と骨芽細胞との間の中間細胞である。この細胞はアルカリホスファターゼのような骨表現型マーカーの発現が増加している(Kale et al., 2000)。それらは増殖能に限界があるが、それにもかかわらず分裂し続け、さらなる前骨芽細胞または骨芽細胞を作製する。
【0062】
iii. 骨芽細胞
骨芽細胞は骨形成細胞系統の分化細胞である。それらは大きな細胞であり、偏在性の核を保有し、骨形成に必要な細胞外タンパク質を産生する。参照により本明細書に具体的に組み入れられる米国特許出願第09/753,043号に記述されているように、骨芽細胞は前骨芽細胞および骨芽細胞の両集団として骨から得ることができる。
【0063】
iv. 無血清培地
骨産生細胞の増殖、および引き続いて骨を形成する骨形成細胞または骨芽前駆細胞への幹細胞の変換のため無血清培地を用いた細胞培養を利用することができる。以下の項では、無血清培地を用いるための属性および条件について記述する。同様に、米国特許第6,811,776号を参照されたい。
【0064】
哺乳類細胞からの組換え生物医薬の製造に向けた無血清培養の使用は十分に精査されている(Barnes, 1987; Barnes & Sam, 1980; Broad et al., 1991; Jayme, 1991)。無血清培地に補助剤として使用される主な添加物のリストは、Barnes (1987)およびBarnes & Sam (1980)によってまとめられている。最も市販されている無血清培地はアルブミンのような担体タンパク質を含有する。担体タンパク質の存在が細胞生存能の保護に必要である可能性がある。
【0065】
無血清培地の例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,063,157号のなかで見出すことができる。この培地は基本培地に加えて、トランスフェリン、インスリン、ペプトン、β-D-キシロピラノース誘導体、セレナイトおよび生物学的ポリアミンを含む。哺乳類細胞用の別の無血清細胞増殖培地が米国特許第4,443,546号に開示されている。この増殖培地は基本培地に加えて7つの成分を含有する。EPA 481 791には、水、オスモル濃度調整剤、緩衝液、エネルギー源、アミノ酸、鉄源、増殖因子および他の選択的成分を含むCHO細胞用の培地が開示されている。例示したこの2つの培地はそれぞれ19および17種の成分を含有する。無血清培地に対して可能な添加物の例を以下に続ける。
【0066】
アルブミン
アルブミンは細胞の増殖に有効な量で、ウシ(BSA)またはヒト血清アルブミン(HSA)の形態で供給されることが好ましい。アルブミンは培地にタンパク源を供与する。アルブミンは微量元素および必須脂肪酸の担体として働くと考えられている。本製剤に用いられるアルブミンは発熱物質およびウイルスを含んでおらず、必要な場合、ヒト患者への注入について規制機関に承認されていることが好ましい。HSAは使用の前に樹脂ビーズを用いて脱イオン化されてもよい。ヒト血清アルブミンの濃度は1〜8 mg/ml、好ましくは3〜5 mg/ml、最も好ましくは4 mg/mlである。
【0067】
可溶性担体/脂肪酸複合体
上記のアルブミンの代わりに可溶性担体/必須脂肪酸複合体および可溶性担体コレステロール複合体を用い、脂肪酸およびコレステロールを細胞に効果的に送達することができる。このような複合体の例はシクロデキストリン/リノール酸、コレステロールおよびオレイン酸複合体である。これは、あまり特徴付けされていないアルブミンの代わりに、十分に規定された分子を使用できるので有利である。シクロデキストリンの使用によってヒト/動物血清アルブミンの添加の必要性がなくなり、それによってアルブミンが培地に導入しうる任意の望ましくない微量物質が排除される。シクロデキストリンの使用により、無血清培養液への特定の親油性栄養素の添加が簡単になる。
【0068】
シクロデキストリンと複合体化できる親油性物質には、リノール酸、コレステロールおよびオレイン酸のような不飽和脂肪酸が含まれる。リノール酸、コレステロールおよびオレイン酸を有効な量で存在させ、均等な割合で存在させて総量を0.001〜100 μg/ml、好ましくは0.1〜10 μg/mlとすることができる。このような複合体の調製は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,533,637号に記述されており、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0069】
鉄源
細胞が利用できる形態のおよび有効量の鉄源を培地に加えることができる。鉄はその担体分子であるトランスフェリンを飽和させることにより、有効な量で供給することができる。トランスフェリンは動物血清に由来してもよく、または組換えにより合成されてもよい。トランスフェリンが動物源に由来する場合には、精製して他の動物タンパク質を除去し、したがって、通常は少なくとも99%の純度であることが理解されよう。トランスフェリン濃度は、通常は80〜500 μg/ml、好ましくは120〜500 μg/ml、より好ましくは130〜500 μg/ml、さらにより好ましくは275〜400 μg/ml、最も好ましくは300 μg/mlである。鉄塩、好ましくは有機酸溶液(例えばクエン酸)のような水溶液に溶解した塩化鉄(例えばFeCl3.6H2O)のような水溶性鉄塩を用いて、鉄をトランスフェリンに供給する。クエン酸1モルあたり、通常1モルの塩化鉄を用いる。塩化鉄の濃度は0.0008〜8 μg/ml、好ましくは0.08〜0.8 μg/ml、最も好ましくは0.08 μg/mlである。
【0070】
インスリン増殖因子
有効量でインスリンを本発明の培地に加えることもできる。インスリン濃度は0.25〜2.5 U/ml、より好ましくは0.4〜2.1 U/ml、最も好ましくは0.48 U/mlである。単位数から質量への変換の際には、27 U = 1 mgである。それゆえ、変換を組み入れると、インスリン濃度はおよそ9.26 μg/ml〜92.6 μg/ml、より好ましくは14.8 μg/ml〜77.8 μg/ml、最も好ましくは17.7 μg/mlである。ヒトインスリンが動物インスリンより好ましいことも理解されよう。高度に精製された組換えインスリンが最も好ましい。インスリン様増殖因子1およびインスリン様増殖因子2のようなインスリン様増殖因子をインスリンに代えてまたは加えて、対応する量のインスリンと実質的に同じ結果をもたらす量で使用することができる。このように、「インスリン増殖因子」という用語は、インスリンもインスリン様増殖因子もともに含む。
【0071】
さらなる成分
上記の必須試薬に他の脂質を加えることで、前駆細胞の増殖能を増強することができよう。しかしながら、これらの成分は、特定の実験にまたは特定のタイプの細胞を増殖させるのに必要でない限り加えない方が好ましい。任意で、トリグリセリドおよび/またはリン脂質をさらなる脂質源として含めてもよい。好ましい脂質源はリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸およびステアリン酸のような主に不飽和脂肪酸の中性トリグリセリドの混合物を含有する。このような調製物は同様に、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンを含有してもよい。別の脂質源はエタノールにより沈殿されたヒト血漿画分であり、低温殺菌によりウイルス不含にされることが好ましい。
【0072】
任意で培地に加えられてもよい他の成分は以下の参考文献に引用されている: WO 95/06112、米国特許第4,533,637号、米国特許第5,405,772号。これらの参考文献の全ての内容全体が参照により組み入れられる。
【0073】
望ましくない成分
培地がヒト患者への導入用の細胞を増殖させるために用いられる場合、培地は(上記に例示したように)ウシ血清アルブミン、哺乳類血清、および/またはヒトもしくは哺乳類由来の任意の天然タンパク質のような成分を含有しないことが好ましい。高品質な組換えまたは合成タンパク質が利用可能であるなら、それらを用いることが好ましい。最も好ましくは、組換えまたは合成タンパク質のアミノ酸配列は、ヒトのものと同一または高度に相同性である。このように、本明細書における最も好ましい無血清培地組成には動物由来のタンパク質が含まれず、検出不能な存在の動物タンパク質さえも含まれない。
【0074】
最も理想的な系においては、必要でない選択的成分は培地に加えないことが好ましい。このような選択的成分は前掲の先行技術に記述されており、肉抽出物、ペプトン、ホスファチジルコリン、エタノールアミン、抗酸化剤、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、タイズレシチン、コルチコステロイド、ミオイノシトール、モノチオグリセロールおよびウシまたは他の動物の血清アルブミンからなる群より選択することができる。
【0075】
V. 骨細胞の移植用の重合体
上記のように、本発明のカテプシンKアンタゴニストで刺激した骨細胞は、その必要がある対象への自家または異種移植に使用することができる。多くの態様において、骨細胞および成長し沈着した骨で満ちた足場またはマトリックスを供与するために、支持体が使用されよう。過去10年間で、インビボでの医学的応用を含め、重合体材料の応用に劇的な向上があった。Kulkarni et al. (1971)およびHollinger and Battistone (1986)により記述されているように、これらの材料は宿主組織によって置き換えられる一時的な足場として働き、加水分解によって非毒性産物に分解し、排出されうるので、移植によく適している。
【0076】
天然または合成重合体はいずれもマトリックスを形成するために用いることができるが、再現性および制御放出動態のためには合成重合体が好ましい。使用できる合成重合体には生体内崩壊性重合体、例えばポリ(ラクチド) (PLA)、ポリ(グリコール酸) (PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、および他のポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、および分解性ポリウレタン、ならびに非崩壊性重合体、例えばポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、他のアシル置換セルロースアセテートおよびその誘導体、非崩壊性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonated polyolifin)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびナイロンが含まれる。非分解性材料を用いてマトリックスまたはマトリックスの一部を形成することもできるが、好ましくない。天然重合体の例としてはタンパク質、例えばアルブミン、フィブリンまたはフィブリノーゲン、コラーゲン、合成ポリアミノ酸、およびプロラミン、ならびに多糖類、例えばアルギン酸、ヘパリン、および他の天然に存在する生分解性糖単位重合体が挙げられる。
【0077】
医学的応用で広く使われている4つの重合体は、ポリ(パラジオキサノン) (PDS)、ポリ(乳酸) (PLA)、ポリ(グリコール酸) (PGA)、およびPLAGA共重合体である。共重合体化により、その材料の分解時間の調節が可能になる。重合体化の際に結晶重合体と非結晶重合体の割合を変えて、得られる材料の特性を、応用の必要性に適するように変更することができる。ポリ(ラクチド-コ-グリコール)酸(PLGA)を含め、これらの重合体はElgendy et al. (1993)により報告されているように、骨置換用の重合体複合材料として使用されている。Laurencin et al. (1993)により報告されているように、置換ポリホスファゼンは骨形成細胞増殖を支持することが示されている。ポリ(オルガノホスファゼン)は、リンおよび窒素原子が交互に並ぶ骨格を含む高分子量重合体である。多種多様のポリホスファゼンが存在し、それぞれ同じ前駆重合体、ポリ(ジクロロホスファゼン)に由来する。塩素置換種は、塩素原子を、o-メチルフェノキシドなどの様々な有機吸核剤とアミノ酸とともに置換することによって修飾することができる。Wade et al. (1978)およびAllcock and Fuller (1981)により記述されているように、重合体の物理的および化学的特性は、グリシン酸エチルのような加水分解感受性側鎖を様々な割合で加えることによって変えることができる。これはLaruencin et al. (1993)により示されているように、移植可能な生分解性材料として重合体の分解に影響を与え、骨および組織インプラントのための骨形成細胞の支持を変えるであろう。
【0078】
PLA、PGAおよびPLA/PGA共重合体は生分解性マトリックスを形成するために特に有用である。PLA重合体は通常、乳酸の環状エステルから調製される。L(+)およびD(-)形の乳酸はともに、PLA重合体、ならびにD(-)およびL(+)乳酸の光学的に不活性なDL-乳酸混合物を調製するために用いることができる。ポリラクチドを調製する方法は特許文献に十分に記載されている。開示内容が参照により本明細書に組み入れられる以下の米国特許が、適したポリラクチド、その特性、およびその調製について詳述している: 米国特許第1,995,970号; 同第2,703,316号; 同第2,758,987号; 同第2,951,828号; 同第2,676,945号; 同第2,683,136号; および同第3,531,561号。PGAはグリコール酸(ヒドロキシ酢酸)のホモ重合体である。グリコール酸のポリ(グリコール酸)への変換の際には、グリコール酸を最初にそれ自身と反応させて環状エステルグリコリドを形成し、これを熱および触媒の存在下で高分子量の直鎖重合体に変換させる。PGA重合体およびその特性は、「Cyanamid Research Develops World's First Synthetic Absorbable Suture,」 Chemistry and Industry, 905 (1970)にさらに詳細に記述されている。
【0079】
マトリックスの崩壊はPLA、PGA、またはPLA/PGAの分子量に関係する。高い分子量、重量平均分子量で90,000またはそれ以上では、構造的完全性を長期間維持する重合体マトリックスとなり、低分子量、重量平均分子量で30,000またはそれ以下では、放出が遅く、マトリックスの寿命が短くなる。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (50:50)は移植後約6週間で分解する。
【0080】
マトリックスに用いる重合体は全て、細胞に対しその後の成長および増殖の十分な支持となるのに必要な機械的および生化学的パラメータを満たさなければならない。重合体はInstronテスタを用いた引張り強度のような機械的特性に関して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重合体分子量、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度および赤外(IR)分光法による結合構造に関して、Amesアッセイ法およびインビトロ催奇形性アッセイ法を含む初期スクリーニング試験による毒性に関して、ならびに免疫原性、炎症、放出および分解研究に向けた動物での移植研究に関して特徴付けることができる。
【0081】
これらの重合体は、移植用の繊維性またはスポンジタイプのマトリックスの形成に特に有用である。重合体を用いてヒドロゲルを形成し、このヒドロゲル中に細胞を懸濁して移植することもできる。
【0082】
A. 他のマトリックス材料
マトリックスを作製するための別の材料群はハイドロキシアパタイト、またはトリカルシウムリン酸(TCP)もしくはリン酸カルシウム(CaPO4)から形成された類似のセラミックである。カルシウムハイドロキシアパタイトは地質学的堆積物として、および正常な生体組織、主に脊椎動物の骨、軟骨、エナメル、象牙質およびセメント質においてならびに血管および皮膚のような多くの病的カルシウム沈着部位において天然に生じる。合成カルシウムハイドロキシアパタイトは実験室において、純粋なCa10(PO4)6(OH)2または例えばカーボネート、フルオリド、クロリドのような他のイオンを含有する純粋でないハイドロキシアパタイトとして、あるいはカルシウムを欠く結晶またはカルシウムがバリウム、ストロンチウムおよび鉛のような他のイオンにより部分的にもしくは完全に置換された結晶として形成される。本質的にはいずれの地質学的および生物学的アパタイトも、様々な他のイオンおよび陽イオンを含有し、純粋な合成アパタイトとは異なるカルシウムのリンとの割合を持ちうるので、「純粋な」ハイドロキシアパタイトではない。
【0083】
一般に、純粋な合成アパタイト、地質学的アパタイトおよび多くの不純な、合成的に作製されたアパタイトの結晶は、骨、象牙質、セメント質および軟骨の生物学的結晶よりも大きく、結晶性が高い。骨、象牙質およびセメント質の結晶はとても小さく、不規則な形の、非常に薄い板状であり、その大体の平均寸法は厚さおよそ10〜50オングストローム、幅30〜150オングストローム、および長さ200〜600オングストロームである。合成材料は文献に報告されているように、非常に多様である。例えば、4つの市販のアパタイトの特徴付けがPinholt et al. (1992)により報告されており; Marden et al. (1990)はタンパク質、生分解性材料について報告しており; Pinholt et al. (1991)はBio-Oss (商標)と呼ばれるウシ骨材料の使用について報告しており; Friedman et al. (1991)およびCostantino et al. (1991)はハイドロキシアパタイトセメントについて報告しており; Roesgen (1990)は自生骨と組み合わせたリン酸カルシウムセラミックの使用について報告しており; Ono et al. (1990)はガラスセラミック顆粒、ハイドロキシアパタイト顆粒およびアルミナ顆粒を含有するアパタイト-珪灰石の使用について報告しており; Passuti et al. (1989)はマクロ多孔性リン酸カルシウムセラミック性能について報告しており; Harada (1989)は骨移植のためのハイドロキシアパタイト粒子およびトリカルシウムリン酸粉末の混合物の使用について報告しており; Ohgushi et al. (1989)は多孔性リン酸カルシウムセラミック単独でのおよび骨髄細胞との組み合わせでの使用について報告しており; Pochon et al. (1986)は移植のためのβ-トリカルシウムリン酸の使用について報告しており; ならびにGlowacki et al. (1985)は脱ミネラル化骨インプラントの使用について報告している。
【0084】
本明細書において用いられる場合、これらの材料の全てが「ハイドロキシアパタイト」と総称される。好ましい形態において、ハイドロキシアパタイトは、直径およそ10〜100 μm、最も好ましくは直径約50 μmを有する粒子である。ハイドロキシアパタイトの足場の別形態は、足場としての失活珊瑚である。Le Guehennec et al. (2004); Chen et al. (2004); Devecioglu et al. (2004); Kujala et al. (2004)。
【0085】
リン酸カルシウムセラミックは、これらの材料が非毒性、非免疫原性で、骨の主要成分であるカルシウムおよびリン酸イオンから構成されているため、骨欠損の修復においてインプラントとして用いることができる(Frame, 1987; Parsons et al., 1988)。トリカルシウムリン酸(TCP) Ca3(PO4)2もハイドロキシアパタイト(HA) Ca10(PO4)6(OH2)もともに広く用いられている。リン酸カルシウムインプラントは骨誘導性であり、骨に直接結合されるようになる見掛けの能力を有する。結果として、強固な骨-インプラント接合部分が作製される。
【0086】
リン酸カルシウムセラミックはある程度の生体吸収性を有し、これはその化学的性質および材質構造によって支配される。高密度HAおよびTCPインプラントは再吸収をほとんど示さないが、多孔性のものは容易に、体液に溶解して分解され、食作用によって再吸収される。しかしながら、TCPはインビトロにおいて同じ多孔度のHA構造よりも速く分解する。HAは水性環境において比較的不溶性である。しかしながら、リン酸カルシウムセラミックの機械的特性により、それらは耐荷重状況下では構造要素として働くには不向きである。セラミックは脆弱であり、衝撃荷重に対する抵抗性が低いので好ましくない。
【0087】
B. ヒドロゲルを形成するための重合体
展性のあるイオン性ヒドロゲルを形成できる重合体を用いて、細胞を支持することもできる。重合体溶液中の細胞懸濁液の注射を行って、装置全体への細胞播種の再現性を改善し、細胞を剪断力もしくは圧力によって誘導される壊死から保護し、または細胞送達の空間的位置の決定を補助することができる。注射可能な重合体を利用して細胞を送達し、その他任意のマトリックスを使用せずに新しい組織の形成を促進することもできる。好ましい態様において、ヒドロゲルは重合体のイオン性塩をイオンで架橋することによって産生され、この強度はイオンまたは重合体の濃度を増加させると増加する。移植する細胞と重合体溶液を混合して懸濁液を形成し、懸濁液を重合体化する前にこれを直接患者に注射する。続いて、重合体がアルギン酸などの多糖の場合、インビボではカルシウムなどのイオンが生理学的濃度で存在するため、懸濁液は短時間で重合体化する。
【0088】
ヒドロゲルは、有機重合体(天然または合成)が共有結合、イオン結合または水素結合を介し架橋されて三次元開放格子構造を作製し、これが水分子を捕捉してゲルを形成する場合に形成される物質と定義される。ヒドロゲルを形成するために使用できる材料の例としては、多糖類、例えばアルギン酸、ポリホスファゼン、およびポリアクリレート、例えばイオン架橋されたヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、またはブロック共重合体、例えば温度もしくはpHにより架橋されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体の、それぞれ、Pluronics (商標)もしくはTetronics (商標)が挙げられる。他の材料としてはタンパク質、例えばフィブリノーゲン(fibrinogin)、コラーゲン、重合体、例えばポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸およびコラーゲンが挙げられる。
【0089】
一般に、これらの重合体は、荷電側鎖またはその一価イオン塩を有する、水、緩衝塩溶液、または水性アルコール溶液のような、水溶液に少なくとも部分的に可溶性である。陽イオンと反応しうる酸性側鎖を有する重合体の例は、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体、ポリ(ビニルアセテート)、およびスルホン化ポリスチレンのようなスルホン化重合体である。アクリル酸またはメタクリル酸およびビニルエーテル単量体または重合体の反応によって形成された酸性側鎖を有する共重合体を用いることもできる。酸性基の例はカルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ化)アルコール基、フェノール性OH基、および酸性OH基である。陰イオンと反応しうる塩基性側鎖を有する重合体の例は、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、および一部のイミノ置換ポリホスファゼンである。重合体のアンモニウムまたは第四級塩は骨格窒素または側鎖イミノ基から形成することもできる。塩基性側鎖の例はアミノおよびイミノ基である。
【0090】
アルギン酸を水中、室温で二価陽イオンとイオン架橋してヒドロゲルマトリックスを形成することができる。これらの穏和な条件により、アルギン酸は、例えば、米国特許第4,352,883号に記述されているように、ハイブリドーマ細胞のカプセル化に最も一般的に用いられる重合体である。この特許には、カプセル化する生物学的材料が水溶性重合体溶液に懸濁している水溶液が記述されており、この懸濁液を液滴にして、多価陽イオンと接触させることにより個々のマイクロカプセルを構成させ、マイクロカプセルの表面をポリアミノ酸で架橋して、カプセル化した材料の周りに半透膜を形成する。
【0091】
架橋に適したポリホスファゼンは、大多数の側鎖基が酸性で、二価または三価陽イオンと塩橋を形成できる。好ましい酸性側鎖の例は、カルボン酸基およびスルホン酸基である。加水分解に安定なポリホスファゼンは、Ca2+またはAl3+などの二価または三価陽イオンによって架橋されたカルボン酸側鎖を有する単量体から形成される。イミダゾール、アミノ酸エステル、またはグリセロール側基を有する単量体を組み入れることにより、加水分解によって分解する重合体を合成することができる。生体内分解性ポリホスファゼンは、少なくとも2つの異なるタイプの側鎖、多価陽イオンと塩橋を形成できる酸性側鎖、およびインビボ条件下で加水分解する側基、例えばイミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロールおよびグルコシルを有する。
【0092】
荷電側基を有する水溶性重合体は、逆の電荷の多価イオン、重合体が酸性側基を有するなら多価陽イオン、または重合体が塩基性側基を有するなら多価陰イオンのいずれかを含有する水溶液と重合体を反応させることによって架橋される。重合体を酸性側基と架橋してヒドロゲルを形成するのに好ましい陽イオンは、二価および三価陽イオン、例えば銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびスズであるが、二官能性、三官能性または四官能性有機陽イオン、例えばアルキルアンモニウム塩を用いることもできる。これらの陽イオンの塩の水溶液を重合体に加えて、軟らかくよく膨らんだヒドロゲルおよび膜を形成させる。陽イオンの濃度が高いほど、または価数が高いほど、重合体の架橋度は大きくなる。0.005 M程度の低い濃度から重合体が架橋されることが示されている。高濃度は塩の溶解度により限られる。重合体を架橋してヒドロゲルを形成するのに好ましい陰イオンは、二価および三価陰イオン、例えば低分子量ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、硫酸イオンおよび炭酸イオンである。陽イオンに関して記述したように、これらの陰イオンの塩の水溶液を重合体に加えて、軟らかくよく膨らんだヒドロゲルおよび膜を形成させる。
【0093】
様々なポリ陽イオンを用いて重合体ヒドロゲルを半透性表面膜に複合体化させて、安定化させることができる。使用できる材料の例としては、アミンまたはイミン基のような塩基性反応基を有する重合体であって、3,000〜100,000の好ましい分子量を有する重合体、例えばポリエチレンイミンおよびポリリジンが挙げられる。これらは市販されている。一つのポリ陽イオンはポリ(L-リジン)であり、合成ポリアミンの例は、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)である。多糖、キトサンのような天然のポリ陽イオンもある。重合体ヒドロゲル上の塩基性表面基との反応によって半透膜を形成するために使用できるポリ陰イオンとしては、アクリル酸、メタクリル酸および他のアクリル酸誘導体の重合体および共重合体、スルホン化ポリスチレンのような側鎖SO3H基を有する重合体、ならびにカルボン酸基を有するポリスチレンが挙げられる。
【0094】
VI. スクリーニングアッセイ法
さらなる態様において、本発明は、骨産生の刺激で用いるカテプシンKの新たなかつ有用な阻害剤を同定する方法を提供する。これらのアッセイ法は候補物質の大規模ライブラリのランダムスクリーニングを含んでもよく; あるいは、これらのアッセイ法は、カテプシンKの機能を調節する可能性をいっそう高くすると考えられる構造特性に配慮して選択した特定の化合物群に重点を置くように使用することができる。
【0095】
機能により、カテプシンKの酵素活性、発現、または骨形成をアッセイできるものと意図される。カテプシンK調節物質を同定するため、候補物質、つまり機能を変える物質と規定された調節物質の存在下および非存在下でのカテプシンKの機能が一般に判定されよう。例えば、方法には一般に:
(a) 候補調節物質を提供する段階;
(b) 候補調節物質を単離酵素、細胞溶解物もしくは細胞、または適当な実験動物と混合する段階;
(c) カテプシンKの活性もしくは発現、または骨形成を測定する段階; および
(d) 段階(c)において測定された特性を候補調節物質の非存在下において観察されたものと比較する段階が含まれ、
測定された特性の間の相違は、該候補調節物質が実際にカテプシンKの調節物質であることを示す。
【0096】
アッセイ法は無細胞系において、単離細胞においてまたはトランスジェニック動物を含む生物において行うことができる。骨形成はフォンコッサ(von Koassa)もしくはアルザリンレッド(Alzarin Red)染色、FTIRもしくはラマン分光分析により、または骨を結合する化合物に連結された蛍光色素により同定することができる。米国特許第6,346,373号ではカテプシンK活性に向けた全細胞に基づくアッセイ法について記述している。
【0097】
もちろん、有効な候補物質を見出せないという事実があったとしても、本発明の全てのスクリーニング法はそれ自体が有用であることが理解されよう。本発明は、単にこのような候補物質を見出す方法のみならず、このような候補物質をスクリーニングする方法も提供する。
【0098】
VII. 実施例
以下の実施例は本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示した技術は、本発明者らが本発明の実践において十分に機能することを発見した技術に相当し、したがってその実践に好ましい様式を構成すると考えられうることが、当業者により理解されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示した特定の態様のなかで多くの変更がなされ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られうることを理解するはずである。
【0099】
実施例1
カテプシンKの阻害はエクスビボで骨形成を刺激する
組織培養でのヒト成長(エクスビボでの骨形成)を対象とするVelcura社の専有技術(米国特許第6,811,786号)は、3次元組織様凝集体の形成、オステオネクチンおよびアルカリホスファターゼのような骨タンパク質の上方制御ならびにヒト骨の形成をもたらす(Kale et al., 2000)。この中核技術により組織培養においてヒト骨を素早く成長させる能力が得られる。図1に示されるように、これにはヒト骨細胞(骨芽細胞)が3次元組織様凝集体として成長する必要がある。FTIRおよびラマン(Ramen)分光法によって実証されるように(Kale et al., 2000)、骨形成化合物(小分子または生物製剤)の存在下において、骨芽細胞はヒト骨に似た一リン酸塩および炭酸塩誘導体化ハイドロキシアパタイトを産生する。この骨形成は種々の方法で検出される; 例えば、蛍光プローブによる骨中カルシウムの可視化(図2、矢印)。
【0100】
カテプシンK活性を阻害する種々の化合物が開発されている。具体的には、米国特許第5,843,992号; 同第6,387,908号; 同第6,689,785号(参照により本明細書に組み入れられる)に記述されている化合物は、細胞内阻害をもたらす。リード化合物VEL-0230は経口で使用できるカテプシンK阻害剤であり、これはエクスビボでの骨形成を刺激し(図2)、動物モデルにおいて骨形成の促進も骨量減少の阻止もする(下記参照)。さらに、本発明者は、本発明者らのエクスビボ骨形成技術を用いて、VEL-0230と同様の特性を有する他の化合物を開発し、第二世代の化合物として調べた。
【0101】
細胞透過性はカテプシンKの阻害およびエクスビボでの骨形成に必要である
本発明の別の新規の局面は、細胞に進入しない(すなわち、不浸透性である)化合物がエクスビボでの骨形成を刺激できないことである。これは無傷細胞と対比して細胞溶解物でのカテプシンK酵素活性の比較により実証される。
【0102】
ヒト骨芽細胞に基づくカテプシンKアッセイ法
カテプシンKを阻害する化合物を評価するために、本発明者はカテプシンK特異的蛍光基質Z-Gly-Pro-Arg-AMCを用いたアッセイ法を開発した。このアッセイ法は、ヒト骨芽細胞を含まない溶解物の存在下において行った(本明細書において溶解物アッセイ法といわれる)。同様に、本発明者らはこれらの阻害剤を用いて無傷のヒト骨芽細胞を処理し(2日間)、これに伴う、細胞内カテプシンK活性の阻害度を判定した(無傷細胞アッセイ法)。これらの二通りのアッセイ法の比較により、したがって、化合物間の浸透性の相違が評価される。というのは、他のデータから、これらの相違が化合物の安定性の相違によらないことが明らかなためである(データは示されていない)。
【0103】
本発明者はVEL-0230および他のNC関連化合物に対する溶解物アッセイIC50値を統計的に評価し、平均値ならびにこれらの平均値の95%および99%信頼区間を算定した(表1)。これより、VEL-0230と同様のIC50を有する化合物を、類似形状の濃度反応プロファイルおよびこの群に対する95%信頼区間の範囲内、すなわちIC50範囲297.8〜350.4 nMの範囲内のIC50値を有するものと定義した(図3および表1)。したがって、IC50 ≧ 351.0 nMを有する化合物は「高IC50群」に属すと定義し、IC50 ≦ 298.0 nMを有するものは「低IC50群」に属すと定義した。統計的仮説検定によってこれらの分類を確認した。重要なことに、低IC50群と類似IC50群との間の相違は、非常に有意であった(p = 2.56×10-6; 両側スチューデントt-検定)。化合物のバラツキが大きく、数が少ないと、類似IC50群と高IC50群との間のt-検定が有意ではなくなる。しかしながら、高い群に対する平均IC50値(709.3 nM)は、同様の群の99%信頼区間上限値のかなり外側にあることから、この群がVEL-0230群とはかなり違うことが強く示唆された(図3)。無傷細胞アッセイ法でのこれらの化合物の効果の検討から、細胞透過性の低減(データは示されていない)およびVEL-0230と同様のIC50が示されている。実際に、親化合物VEL-0230でさえもこの特徴を示す(図4)。溶解物アッセイ法において活性であったが、細胞に進入できない化合物は、エクスビボでの骨形成を刺激できない。
【0104】
カテプシンK RNAおよびRNAi試験
骨形成細胞内でのこの酵素の新規の作用機序と一致して、本発明者はカテプシンKを、骨形成増殖因子での骨形成の誘導に反応し一貫して下方制御された遺伝子と特定した(データは示されていない)。ヒトの骨形成でのカテプシンKの役割をより良く理解するため、次に本発明者はエクスビボ骨形成アッセイ法においてカテプシンKの発現を特異的に低減するようRNAiを使用した。骨芽細胞の生態に及ぼすカテプシンKサイレンシングの効果を的確に評価するには、トランスフェクションおよびsiRNA導入の潜在的な非特異的(off-target)効果を適切に制御することが重要である。これらの懸念に対処するため、以下の対照を使用した: (1) 骨芽細胞をsiRNA (対照)の非存在下で偽トランスフェクトして、トランスフェクションの効果を判定した; (2) RISC複合体とごくわずかしか相互作用しない非機能的siRNA (非RISC)を導入して、トランスフェクションの潜在的な非特異的(off-target)影響を判定した; および(3) RISCと相互作用するがヒト細胞RNAとの相互作用の可能性を最小限にするよう生物情報学的にデザインされた非標的化siRNA (非標的化)を用いて、siRNAによるRISC活性化の効果を測定した。これらの対照のどれもカテプシンK発現または骨芽細胞表現型を大きく変えることはなかった。しかしながら、カテプシンKを標的化したsiRNAでは、対照に比べてヒト骨芽細胞でのカテプシンK mRNAレベルが顕著に低下する(図5)。経時変化の予備的実験から、カテプシンKサイレンシングがトランスフェクション後24時間以内に最大レベルに達し、それから徐々に増大することが明らかである(図6)。予想通り、siRNAを介したカテプシンK RNA阻害は、VEL-0230に似た小分子阻害剤または骨形成増殖因子と同様に、類似の組織様骨芽細胞凝集体および骨形成を引き起こす(データは示されていない)。
【0105】
カテプシンK阻害剤のインビボでの作用
ラット、無傷のビーグル犬、医学的に卵巣切除されたサルおよび外科的に卵巣切除されたサルモデルでの薬理学的試験から、カテプシンK阻害剤VEL-0230は、骨形成の刺激も骨量減少の遅延もすることが明示される。この化合物はインビボモデルにおいて明らかな骨吸収阻害を示す。卵巣切除モデルでは、骨吸収マーカー1型コラーゲン架橋N-テロペプチドまたはC-テロペプチド(NTx、CTx)の尿中排泄が低減し、骨特異的なアルカリホスファターゼ(BSAP; 骨形成のマーカー)の血中濃度が増大する。さらに、骨も骨強度もともに増加する(データは示されていない)。
【0106】
予想通り、卵巣切除ラットでの骨量減少は骨梁量の低下をもたらし(図7、左側 対 中央のパネル)、その一方でVEL-0230を用いた処理によってこの減少が阻止される(右側のパネル)。同様に、皮質骨厚の変化の測定から、卵巣切除動物での明らかな減少が示唆される。(図8)、ならびに脛骨および第5腰椎骨の骨ミネラル密度(BMD)および骨強度の増大(データは示されていない)。VEL-0230はラットでの、尿中骨吸収マーカーの尿中排泄の増大も顕著に阻害する。
【0107】
本発明者は慢性処置カニクイザルの骨粗鬆症予防モデルも調査し、偽手術(偽)動物、卵巣切除(OVX)動物およびOVX VEL-0230処置動物を評価した。全体として、VEL-0230でのバイオマーカーおよび密度データからVEL-0230処置の同化作用が支持される。両骨形成の生化学的マーカーは処置動物では有意に上昇し、吸収マーカーは有意に減少する(骨吸収マーカーは示されていない)。VEL-0230により処置したOVX動物は骨形成マーカーオステオカルシン(図8A、OC; 400%〜800%)のおよび骨特異的なアルカリホスファターゼ(図8B、BSAP; 40%〜60%)の顕著な増大を示す。OVX動物での増大が予想される。これは吸収の増大によって促進されるからである(偽手術動物でのOCの増大は解明されないままである)。OVX動物は骨ミネラル密度(BMD)の有意な減少を示すのに対し、偽処置動物は有意な変化を示さない。対照的に、VEL-0230処置動物は16〜32週のうちに高用量処置群においてBMDの遅いが顕著な、だがまだ有意ではない増大を示し、低用量動物においてBMDの軽度の増大を示す(図8C)。本発明者は、VEL-0230処置により、この化合物が非ヒト霊長類において生物学的に活性であるという明白な証拠が得られると結論付ける。
【0108】
実施例2
データ分析
統計分析のため未加工の遺伝子チップデータをGene Springソフトウェアパッケージ(www.silicongenet-ics.com)に取り込んだ。データ媒体変換は、0.01未満の値を0.01に設定して行った。染色強度のチップ全体のバラツキを制御するため、チップでの全測定値を50%パーセンタイル値で割って、チップごとに正規化を行った。プローブセット間の検出効率の相違を考慮するため、サンプルでの各プローブセットのシグナル強度を実験群でのそのプローブセットのシグナル強度中央値で割った。対応のあるt-検定を用い、データセット全体で大きく変化する遺伝子を特定した。この識別水準で、強力かつ多面的な増殖因子であるTGF-β1は、エクスビボでの骨形成を誘導し、TFG-βスーパーファミリーの他のメンバーと共通する特徴を有する; しかしながら、他の骨形成増殖因子は異なる発現を示すことから、因子特異的な経路の遺伝子も共通経路の遺伝子もともに(最終的に)特定できることが示唆される(図10)。このデータセットは8600個の差異的に制御された遺伝子を代表する。応答遺伝子のセットをさらに正確に定義するため、さらなる選択基準を適用した。
【0109】
調節された遺伝子発現の定義
発現が骨形成増殖因子誘導に反応して大きく変化する遺伝子を同定するため、各誘導群をAffymetrix HU133チップセットで個別に分析した(6つのデータセット: IGF-1、PTH、ビタミンD3、ならびにTGF-β 1日目、3日目および5日目が得られる)。遺伝子リストに含まれるには、プローブセットが、対応のあるt-検定から0.05以下の両側p値を有しなければならなかった。さらに、プローブセットが
・誘導群でのサンプルの少なくとも75%において誘導 対 対照の比 ≧ 2 (または≦ 0.5)を有し
・誘導群での誘導 対 対照の平均比 ≧ 2 (または≦ 0.5)を有し
なければならなかった。
1245個の遺伝子を代表するプローブセットが上記の統計的および選別的基準を満たした。これらの遺伝子(およびその他、次を参照)を利用して、特別注文のAffymetrix遺伝子アレイOsteoChip (商標)を構築した。
【0110】
重要なことに、本発明者が発見した骨形成遺伝子の15%は、医薬の標的として適当な分泌タンパク質も膜タンパク質も(例えば、受容体、キナーゼ、シグナル伝達分子)ともに含め、生理学的に関連する多様なタンパク質を網羅する。これらの遺伝子の分析から、治療的介入のために可能な分子標的の種類のさらなる精緻化が示唆された(図11)。
【0111】
Velcura社のOsteoChip (商標)
健常者(n = 9)での骨遺伝子発現の大規模分析(ゲノム規模、下記参照)に基づいて、Velcura社は、契約の下でAffymetrix社がその専有技術を利用することによって作製したDNAマイクロアレイOsteoChip (商標)をデザインした。これらのアレイは、ヒトの骨形成に重要であるとしてVelcura社が特定した遺伝子の全ての代表的オリゴマーを含有する。このマイクロアレイは、ヒトの骨形成に関与するとして上記に詳述のように発見した遺伝子(すなわち、プローブセット)を含む。これは同様に、骨形成に関与するとして科学文献に記述されているさらに250個の遺伝子を含有する(同様に下記)。
【0112】
骨関連遺伝子
500個の骨関連遺伝子が文献、LocusLink、Online Mammalian Inheritance in Man、Mouse Mutation and Knockout DatabaseおよびSkeleton Expression Databaseの検索から特定された。これらのうち、250個は上記の基準により、誘導骨芽細胞において差異的に調節されることが認められた。残り250個の遺伝子は621個のプローブセットによって代表される。重複性のプローブセットを除いた後、これらのさらなる250個の骨関連遺伝子を代表する316個のプローブセットをOsteoChip (商標)に含めた。さらに、誘導 対 対照の平均比1.02および平均変動係数16.9%を有する100個のプローブセットを対照としてOsteo-Chip (商標)に含めた。
【0113】
細胞経路マッピング
OsteoChip (商標)を用いたことでの最終結果はヒトゲノム中の遺伝子20,000または30,000個から1281個までの、分析する遺伝子プールの低減である。これによって同化化合物を分析できる迅速性が大いに高まる。それにもかかわらず、この数の減った遺伝子の試験は、それらの遺伝子が細胞シグナル伝達経路と関連付けられなければ無意味である。したがって、本発明者は経路分析プログラムを利用して、エクスビボでの骨形成の間に活性化される新規経路(示されていない)も標準経路もともに特定している(図12)。
【0114】
骨形成の分子シグニチャー
RNA発現プロファイリングを用いて、骨形成促進化合物による骨形成誘導後のヒト骨芽細胞の分子反応を判定した。15人の独立したドナーから得た骨芽細胞をTGF-β1 (n=14)、BMP-2 (n=6)、BMP-7 (n=3)およびビタミン-D3 (n=6)で誘導し、OsteoChip (商標)を用いて分析した。統計分析を上記のように行い、誘導に反応して調節された遺伝子を特定した。さらに、骨刺激因子の全てで同じように制御される遺伝子を特定した。本発明者は、これらの165個の遺伝子が骨形成の分子シグニチャーに当たると考えている。これらの遺伝子、および各誘導群に対し調節された遺伝子をGeneGOにより細胞の経路およびネットワークにマッピングして、骨形成の間に活性化される細胞過程を特定した。経路マッピングにより、骨形成の間に調節されることが公知の経路(例えば、Wntシグナル伝達経路)だけでなく、骨形成とこれまでには関連付けられていなかった新規の経路およびネットワーク(示されていない)も特定された。これらの経路およびその制御因子は、骨形成に関する本発明者らの理解をさらに広げるためのRNA干渉(RNAi)に基づく逆遺伝学の重要な入り口点になる。
【0115】
本明細書において開示および主張される組成物および/または方法の全てが本開示に照らして過度の実験なしになされ達成されうる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して記述してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述する組成物および/または方法に、ならびに方法の段階において、または方法の段階の順序において変形を適用できることが当業者には明らかであろう。さらに具体的には、同様のまたは類似の結果を達成しながら、化学的にも生理学的にも関連するある種の薬剤を本明細書において記述する薬剤の代わりに使えることが明らかであろう。当業者には明らかなこのような類似の置換および変更は全て、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0116】
VIII. 参考文献
以下の参考文献は、本明細書において記載のものを補う、例示的な手順の、または他の詳細を提供する範囲内で参照により本明細書に具体的に組み入れられる。




【図面の簡単な説明】
【0117】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある種の局面をさらに示すために含まれる。本発明は、これらの図面の一つまたは複数と本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明とを組み合わせて参照することによってさらに良く理解されうる。
【0118】
【図1】エクスビボでの骨形成。ヒト骨芽細胞(赤)および骨コラーゲン(青)の3次元組織様凝集体。マッソン染色。
【図2】骨形成。ヒト骨芽細胞の組織様凝集体での骨形成がCa2+蛍光によって示されている(矢印)。
【図3】細胞溶解物でのVEL-0230および関連化合物のIC50。本文を参照されたい。注意: 本図中ではVEL-0230がNC-2300と表示されている。
【図4】細胞溶解物および無傷細胞におけるVEL-0230のIC50測定
【図5】siRNAによるカテプシンK mRNAの低減
【図6】siRNAによるカテプシンK mRNAの低減
【図7】VEL-0230は骨梁減少を阻止する。注意: 中央のパネルは「洗浄されて」いないが、この組織染色では赤色の、骨を欠いている。
【図8】VEL-0230は皮質骨減少を阻止する
【図9】VEL-0230で処置された霊長類でのオステオカルシン、BSAPおよびBMDレベル
【図10】骨形成増殖因子誘導後の遺伝子発現変化の非監視下の階層的クラスタ分析。本文を参照されたい。赤=下方制御; 青=上方制御。
【図11】エクスビボでの骨形成に関与する遺伝子のファミリー
【図12】TGF-βは骨芽細胞シグナル伝達経路を誘導した。緑の円=上方制御された遺伝子; 赤=下方制御; GeneGo Map。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 細胞内カテプシンK阻害剤を選択する段階; および
(ii) 対象に該第一のカテプシンK阻害剤を投与する段階
を含む、骨形成を促進する方法。
【請求項2】
阻害剤が生物製剤または有機医薬小分子である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一の阻害剤が生物製剤である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
生物製剤がペプチド、siRNA、アンチセンス分子または一本鎖抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
阻害剤が有機医薬小分子である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
阻害剤がエポキシスクシンアミドおよびその変種である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
阻害剤がVEL-0230またはその類似体である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
阻害剤が非エポキシスクシンアミドである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
対象を第二の薬剤と接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第二の薬剤がビスホスホネート、PTH類似体、または第一の阻害剤と異なる第二のカテプシンK阻害剤である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第二のカテプシンK阻害剤がカテプシンKの細胞外阻害剤である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
第一の阻害剤が膜貫通送達を高めるよう製剤化される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一の阻害剤が細胞透過性因子とともに製剤化される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第一の阻害剤が脂質送達ビヒクル中に製剤化される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
第一の阻害剤がその生体利用能を増強するよう製剤化される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
対象がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
対象が骨関連の病態または傷害を患う、請求項1記載の方法。
【請求項18】
骨関連の病態が、骨粗鬆症、ビタミンD欠乏症、骨がん、骨折、歯周疾患、パジェット病、他の疾患に続く骨粗鬆症である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
第一の阻害剤が骨吸収も阻止する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
第一の阻害剤が二回以上対象に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
第一の阻害剤が経口または静脈内経路によって対象に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
対象が非ヒト動物である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
(i) 細胞内カテプシンK阻害剤を選択する段階;
(ii) 骨細胞を該カテプシンK阻害剤と接触させる段階; および
(iii) 骨形成を促進する条件の下で該細胞を培養する段階
を含む、単離骨細胞において骨を作製する方法。
【請求項24】
骨細胞を対象に移植する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
骨細胞が対象から段階(ii)の前に取得される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
取得される細胞が、段階(ii)の前において幹細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
幹細胞が、段階(ii)の前に骨形成細胞の形成を促進する条件の下で培養される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
(i) 候補化合物を提供する段階;
(ii) 候補化合物を、単離カテプシンK酵素、またはカテプシンKを発現する細胞、または細胞がカテプシンKを発現する実験動物と混合する段階;
(iii) カテプシンKの活性もしくは発現、または骨形成を測定する段階; および
(iv) 段階(iii)において測定された特性を候補調節物質の非存在下において観察されたものと比較する段階
を含む、骨形成を促進する薬剤を同定する方法であって、
測定された特性の間の相違は、該候補化合物が実際にカテプシンKの調節物質であることを示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−503610(P2010−503610A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512230(P2009−512230)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/069211
【国際公開番号】WO2007/137149
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508345760)ベルキュラ セラピューティクス インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】