説明

高イソプレンブチルゴムの製造方法

【課題】ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを50〜95%の転化率範囲で連続的に製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、AlClの存在下で、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに適当なプロトン源(例えば水)またはカチオノーゲン、および少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを50〜95%の転化率範囲で連続的に製造する方法であって、遷移金属化合物と有機ニトロ化合物の不存在下に製造を行う方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlClの存在下で、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに適当なプロトン源(例えば水)またはカチオノーゲン、および少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを50〜95%の転化率範囲で連続的に製造する方法であって、遷移金属化合物と有機ニトロ化合物の不存在下に製造を行う方法に関する。
【0002】
好ましくは、前記ポリマーはマルチオレフィン含有量が4.1モル%より多く、ゲル含有量が10重量%より小さく、70〜95%の転化率範囲で製造されたものである。好ましくは、前記ポリマーはムーニー粘度の範囲が25〜70MU、より好ましくは30〜60MU、更に好ましくは30〜55MUである。
【背景技術】
【0003】
ブチルゴムは、イソオレフィンおよびコモノマーとして1種またはそれ以上の、好ましくは共役のマルチオレフィンとのコポリマーであると理解される。市販ブチルゴムは、大部分のイソオレフィンおよび少量で2.5モル%以下の共役マルチオレフィンを含む。好ましいイソオレフィンはイソブチレンである。しかし、本発明は、任意に追加の共重合性コモノマーを含むポリマーも包含する。
【0004】
ブチルゴムまたはブチルポリマーは、一般に、溶媒として塩化メチルおよび重合開始剤の一部としてフリーデル-クラフツ触媒を使用するスラリー法で製造される。塩化メチルは、比較的安価なフリーデル-クラフツ触媒であるAlClを、イソブチレンおよびイソプレンコモノマーのように、その中に溶解するという利点を提供する。さらにブチルゴムポリマーは、塩化メチルに不溶性であり、微粒子として溶液から析出する。重合は、一般に約−90℃〜−100℃の温度で行われる。米国特許第2,356,128号およびUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第A23巻、1993年、第288〜295頁を参照されたい。低い重合温度が、ゴム用途のために充分に高い分子量を達成するために要求される。
【0005】
反応温度を上昇させること、または供給モノマー中のイソプレン量を増加させると、不良な生成物の性質、特に低い分子量が生ずる。しかし、高不飽和度が、他の高不飽和ジエンゴム(BR、NRまたはSBR)とのより有効な架橋のために望ましい。
ジエンコモノマーの分子量低減の影響を、基本的に、いっそう低い反応温度により埋め合わせることができる。しかし、この場合、ゲル化を生ずる二次反応がより大きな程度で生じ、このプロセスはより費用がかかる。約−120℃の反応温度でのゲル化およびそれを削減するための可能な選択肢は記載されている(W.A. Thaler、D.J. Buckley Sr.、Meeting of the Rubber Division, ACS, クリーブランド, オハイオ, 1975年5月6日〜9日、Rubber Chemistry & Technology 49, 第960〜966頁(1976年)中で公表、を参照)。この目的のために必要な補助溶媒、例えばCS2は、取扱いが困難であるだけでなく、比較的高い濃度でも使用しなければならない。CS2の使用に関連するさらなる不都合は、この種の重合反応物は本質的に均質であるという事実にある。従って、重合反応が進むにつれて溶液粘度の著しい増加が生じる。高い溶液粘度により熱伝達の問題が生じ、そのためこの重合反応を低転化率で行うことが必要となる(即ち、単位溶剤体積あたりのポリマー量がより低く、その結果、費用面で不利)。
【0006】
さらに、ゴム用途のために充分に高い分子量の生成物を約−40℃の温度で生じさせるために、前処理されたバナジウムテトラクリロリド(欧州特許出願公開第1 818 476号)、ニトロ化合物およびバナジウム(欧州特許出願公開第1 122 267号)またはジルコニウム化合物(国際公開第02/18460号パンフレット)の組合せなどを使用して、イソブテンと様々なコモノマーとのゲルフリー共重合を行うことも知られている。
本発明は、バナジウム-、ジルコニウム-および/またはハフニウム化合物の不存在下で行われる。
【0007】
ハロゲン化ブチルは、該技術において周知であり、優れた性質、例えばオイルおよびオゾンに対する耐性および空気に対する向上した不透過性を有する。市販ハロブチルゴムは、イソブチレンおよび約2.5モル%までのイソプレンのハロゲン化コポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1818476号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1122267号
【特許文献3】国際公開第02/18460号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】W.A. Thaler、D.J. Bruckley Sr.、Meeting of the Rubber Division, ACS, クリーブランド, オハイオ, 1975年5月6〜9日、Rubber Chemistry & Technology 49, 第960〜966頁(1976年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを50〜95%の転化率範囲で連続的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの側面において本発明は、AlClの存在下で、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに重合工程を開始可能なプロトン源および/またはカチオノーゲン、および少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを連続的に製造する方法であって、遷移金属化合物と有機ニトロ化合物の不存在下に製造を行う方法を提供するものである。
【0012】
別の側面において本発明は、AlClの存在下で、イソブテンモノマーから誘導される繰り返し単位、イソプレンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに重合工程を開始可能なプロトン源および/またはカチオノーゲン、および少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを製造するための連続スラリー法であって、遷移金属化合物と有機ニトロ化合物の不存在下に製造を行う方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリマーのムーニー粘度は、125℃で大きいローター、予熱期1分、分析期8分(ML1+8@125℃)を用いてASTM試験D1646により決定される。
本発明は、特別なイソオレフィンに限定されない。しかし、4〜16個の範囲の炭素原子、特に4〜7個の炭素原子を有するイソオレフィン、例えばイソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよびこれらの混合物が好ましい。最も好ましいものは、イソブテンである。
【0014】
本発明は、特別なマルチオレフィンに限定されない。イソオレフィンと共重合性である当業者に既知のあらゆるマルチオレフィンを、使用することができる。しかし、4〜14個の範囲の炭素原子を有するマルチオレフィン、例えばイソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-1,6-シクロヘキサジエンおよびこれらの混合物、特に共役ジエンを、使用することが好ましい。イソプレンを使用することが特に好ましくい。
本発明では、イソオレフィン用のコモノマーとして、β-ピネンを使用することもできる。
【0015】
任意のモノマーとして、イソオレフィンおよび/またはジエンと共重合性である当業者に既知のあらゆるモノマーを、使用することができる。α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエンおよびメチルシクロペンタジエンを使用することが好ましい。インデンおよび他のスチレン誘導体も本発明において使用してよい。
【0016】
マルチオレフィン含有量は、少なくとも4.1モル%より多く、より好ましくは5.0モル%より多く、さらに好ましくは6.0モル%より多く、なお好ましくは7.0モル%より多い。
好ましくは、モノマー混合物は、80〜95重量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーおよび4.0〜20重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー(β-ピネンを含む)並びに0.01〜1重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含む。より好ましくは、モノマー混合物は、83〜94重量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーおよび5.0〜17重量%の範囲のマルチオレフィンモノマーまたはβ-ピネン並びに0.01〜1重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、85〜93重量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーおよび6.0〜15重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー(β-ピネンを含む)並びに0.01〜1重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含む。
【0017】
重量平均分子量Mは、好ましくは240kg/モルより大きく、より好ましくは300kg/モルより大きく、さらに好ましくは500kg/モルより大きく、なお好ましくは600kg/モルより大きい。
【0018】
本発明に関しては、「ゲル」の用語は、還流下で沸騰シクロヘキサン中に60分間不溶なポリマー画分を意味するものと理解される。ゲル含有量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、なお好ましくは1重量%未満である。
【0019】
重合は、AlClおよびプロトン源および/または重合工程を開始可能なカチオノーゲンの存在下で行う。本発明の範囲内のプロトン源は、AlCl或いはAlCl含有組成物へ添加するとプロトンを生じる任意の化合物である。プロトンはAlClと水、アルコールまたはフェノールなどのプロトン源との反応により発生し得、プロトンおよび相当する副生成物を生じる。そのような反応は、プロトン源のプロトン化添加剤との反応がモノマーとの反応と比較してより早い場合に好ましいことがある。他のプロトン発生反応体には、チオール、カルボン酸などが含まれる。別の態様において、低分子量ポリマー生成物を所望する場合には、脂肪族または芳香族アルコールが好ましい。最も好ましいプロトン源は水である。AlCl対水の好ましい重量比は5:1〜100:1の間である。AlCl誘導可能な触媒系から、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムクロリド、四塩化チタン、四塩化スズ、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素またはメチルアルモキサン(alumoxane)をさらに導入することが有利であり得る。プロトン源に加え若しくはプロトン源の代わりに、重合工程を開始可能なカチオノーゲンを使用し得る。本発明の範囲内のカチオノーゲンは、当該条件下でカルボカチオンを生じる任意の化合物である。好ましいカチオノーゲン群は式:
【化1】

[式中、R,RおよびRは独立して、水素、または直鎖、分枝状或いは環状の芳香族基または脂肪族基である(但し、R,RおよびRの1つだけが水素であり得る)]を有するカルボカチオン性化合物からなる。好ましくは、R,RおよびRは独立して、C〜C20の芳香族基または脂肪族基である。適当な芳香族基の例は、フェニル、トリル、キシリルおよびビフェニルよりなる群から選ばれ得るが、限定されるものではない。適当な脂肪族基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、3-メチルペンチルおよび3,5,5-トリメチルヘキシルよりなる群から選ばれ得るが、限定されるものではない。
【0020】
別の好ましいカチオノーゲン群は式:
【化2】

[式中、R,RおよびRは独立して、水素、または直鎖、分枝状或いは環状の芳香族基または脂肪族基である(但し、R,RおよびRの1つだけが水素であり得る)]を有する置換シリリウムカチオン性化合物からなる。R,RおよびRのいずれもHでないことが好ましい。好ましくは、R,RおよびRは独立して、C〜C20の芳香族基または脂肪族基である。より好ましくは、R,RおよびRは独立して、C〜Cのアルキル基である。有用な芳香族基の例は、フェニル、トリル、キシリルおよびビフェニルよりなる群から選ばれ得る。有用な脂肪族基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、3-メチルペンチルおよび3,5,5-トリメチルヘキシルよりなる群から選ばれ得るが、限定されるものではない。特に好ましい反応性置換シリリウムカチオン群は、トリメチルシリリウム、トリエチルシリリウムおよびベンジルジメチルシリリウムよりなる群から選ばれ得る。そのようなカチオンは、例えば、RSi-Hの水素化物基を非配位アニオン(NCA)、例えばPhB(pfp)で置換し、RSiB(pfp)のように適切な溶媒中でカチオンを得る組成物を生じることによって調製し得る。
【0021】
本発明の範囲では、Ab−はアニオンを表わす。特に、好ましいアニオンは、2つの成分が結合すると形成され得る活性触媒種上の電荷をバランスさせるために必要な程度まで負に帯電した、電荷を有する金属或いはメタロイドのコアをもつ単一の配位錯体からなるアニオンである。より好ましくは、Ab−は一般式:[MQ
[式中、
Mは、+3形式的酸化状態でのホウ素、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムであり;
Qは、独立して、水素化物基、ジアルキルアミド基、ハロゲン化物基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシド基、ハロ置換ヒドロカルビル基、ハロ置換ヒドロカルビルオキシド基、およびハロ置換シリルヒドロカルビル基から選ばれる]
を有する化合物に相当する。
【0022】
この工程で用いる有機ニトロ化合物または遷移金属はない。
本発明のブチルポリマーを製造するために用いる反応混合物は、さらにマルチオレフィン架橋剤を含有してなる。「架橋剤」の用語は、当業者に既知であり、ポリマー鎖に付加するモノマーに対抗してポリマー鎖間の化学的架橋を引き起こす化合物を意味するものと理解される。いくつかの簡易な予備試験により、ある化合物がモノマーとして作用するか架橋剤として作用するかが明らかとなる。架橋剤の選択は特に制限されない。特に、架橋剤はマルチオレフィン性炭化水素化合物を包含する。その例は、ノルボルナジエン、2-イソプロペニルノルボルネン、2-ビニル-ノルボルネン、1,3,5-ヘキサトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレンおよびこれらのC〜C20アルキル置換誘導体である。より好ましくは、マルチオレフィン架橋剤はジビニル-ベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニル-キシレンおよびこれらのC〜C20アルキル置換誘導体、並びに前記化合物の混合物である。最も好ましくは、マルチオレフィン架橋剤はジビニルベンゼンおよびジイソプロペニルベンゼンを包含する。
【0023】
重合は、適当な希釈剤、例えばクロロアルカン(米国特許第5,417,930号に記載されている)中のスラリー(懸濁液)中で連続的方法にて行なう。
モノマーを、一般にカチオン的に、好ましくは−120℃〜+120℃の範囲、より好ましくは−100℃〜−20℃の範囲の温度および0.1〜4barの範囲の圧力で重合させる。
【0024】
バッチ式反応器に対して連続反応器を使用すると、本方法に好ましい効果が見られる。好ましくは、容積が0.1〜100m、より好ましくは1〜10mの少なくとも1種の連続反応器中で本方法を行なう。
【0025】
ブチル重合のために当業者に既知の不活性溶媒または希釈剤を、溶媒または希釈剤(反応媒体)として考慮してよい。これらは、アルカン、クロロアルカン、シクロアルカンまたは芳香族化合物を含み、これらは、しばしばハロゲンにより単置換または多置換されている。ヘキサン/クロロアルカン混合物、塩化メチル、ジクロロメタンまたはこれらの混合物を、特に挙げることができる。クロロアルカンを、好ましくは本発明の方法に使用する。
【0026】
重合を、連続的に行う必要である。本方法を、好ましくは以下の3つの供給流:
I)溶媒/希釈剤+イソオレフィン(好ましくはイソブテン)+マルチオレフィン(好ましくはジエン、イソプレン)
II)開始剤系
III)マルチオレフィン架橋剤
を用いて行う。
注目すべきは、マルチオレフィン架橋剤を、イソオレフィンおよびマルチオレフィンと同じ供給流中で添加することもできることである。
【0027】
本発明の方法を使用して、AlClの存在下で、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに重合工程を開始可能な少なくとも1種のプロトン源および/またはカチオノーゲン、および高二重結合含有量で同時に低ゲル含有量である少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有する新規な遷移金属フリーのポリマーを製造することが可能である。二重結合含有量はプロトン磁気共鳴分光法によって測定し得る。
【0028】
これらのコポリマーは、ハロブチルポリマーを製造するためのハロゲン化法のための出発物質とすることができる。特に好ましいのは、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意のさらなる共重合性モノマーを含んで成る、ムーニー単位30以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有する部分的或いは全体的に塩素化または臭素化されたポリマーであって、何らの遷移金属触媒残渣または有機ニトロ化合物残渣も含有しないポリマーである。これらは本発明のさらなる目的を形成する。臭素化または塩素化は、Rubber Technology, 第3版, Maurice Morton編, Kluwer Academic Publishers, 第297〜300頁および同報文に引用された報文に記載された手順に従って行なうことができる。
【0029】
本発明の提供するコポリマーは、あらゆる種類の成形品、特にタイヤ構成要素、および工業用ゴム製品、例えば栓、減衰要素、プロフィル、フィルム、コーティングを製造するために申し分無く適している。該ポリマーは、この目的のために、純粋形態で、または他のゴム、例えばNR、BR、HNBR、NBR、SBR、EPDMまたはフルオロゴムとの混合物として使用される。これらのコンパウンドの製造は当業者に知られている。ほとんどの場合にカーボンブラックがフィラーとして添加され、硫黄ベース硬化系が使用される。配合および加硫のために、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第4巻、S.66以降(配合)および第17巻、S.666以降(加硫)が参照される。
コンパウンドの加硫は、通常100〜200℃、好ましくは130〜180℃の範囲の温度(所望により10〜200barの範囲の圧力下)で行われる。
【実施例】
【0030】
以下の実施例を、本発明を説明するために提供する。
装置
ポリマー不飽和度を、Brukerを用いてH NMR分光法により測定し、Bruker 500 MHz NMR分光計でH NMRスペクトルを得た。イソプレン含有量を測定するために使用したNMR試料をCDCl中で調製した。DVB含有量を測定するために使用したNMR試料をTHF−d中で調製した。微細構造情報を事前に構築した積分法を使用して計算した。ピークシフトをTMS内部標準と照合した。
【0031】
GPC分析を、Waters Alliance 2690 Separations Module およびViscotek Model 300 Triple Detector Array を使用して行なった。GPC試料をTHF中に溶解することにより調製した。
ポリマーゲル含有量を、乾燥した炭化水素不溶画分(60分間にわたる撹拌下で沸騰シクロヘキサンに不溶のもの)の通常の重量分析により測定した。
【0032】
化学薬品
イソブテンを、当業者にとってブチルゴムの製造に許容されるレベルまで精製した。
イソプレンを、Exxon Chemical Co から入手し、そのまま使用した。イソプレン二量体濃度は約200ppmであった。
塩化メチルを、Dow Chemical Co. から入手し、非活性化したアルミナゲルを用いて使用前に乾燥した。
DVB(64%純度ジビニル-ベンゼン、Dow Chemical Co.)を使用した。このDVBの組成と純度をGC分析により確認した。分析によると、この材料は45重量%のm-ジビニルベンゼン(m-DVB)、19.5重量%のp-ジビニル-ベンゼン(p-DVB)、24重量%のm-エチルビニルベンゼンおよび11.5重量%のp-エチルビニルベンゼンを含むことがわかった。
【0033】
実験例1
以下の実施例は、イソプレン含有量が5.0モル%以下、ムーニー粘度(ML 1+8@125℃)が35〜40MUの間であるIIRの新規グレードを連続的方法により製造できることを説明するものである。
供給モノマー組成はイソプレン(IPまたはIC5)2.55重量%およびイソブテン(IPまたはIC4)27.5重量%から成るものであった。この供給混合物を連続重合反応器中へ5900kg/時間の速度で導入した。さらに、DVBを5.4〜6kg/時間の速度で該反応器中へ導入した。AlCl/MeCl溶液(MeCl中0.23重量%のAlCl)を204〜227kg/時間の速度で導入することにより重合を開始した。蒸発冷却法を用いることによって、連続反応の内部温度を−95〜−100℃の間に保持した。反応器内で十分滞留させた後、新たに形成されたポリマークラムをMeCl希釈剤から水性フラッシュタンクを用いて分離した。この際、約1重量%のステアリン酸をポリマークラム中へ導入した。乾燥に先立ち、0.1重量%のIrganox(登録商標) 1010をポリマーへ添加した。得られた材料の乾燥はコンベヤーオーブンを用いて行なった。表1に最終材料の特性を列挙する。
【0034】
実験例2
以下の実施例は、イソプレン含有量が8.0モル%以下、ムーニー粘度(ML 1+8@125℃)が35〜40MUの間であるIIRの新規グレードを連続的方法により製造できることを説明するものである。
供給モノマー組成はイソプレン(IPまたはIC5)4.40重量%およびイソブテン(IPまたはIC4)25.7重量%から成るものであった。この供給混合物を連続重合反応器中へ5900kg/時間の速度で導入した。さらに、DVBを5.4〜6kg/時間の速度で該反応器中へ導入した。AlCl/MeCl溶液(MeCl中0.23重量%のAlCl)を204〜227kg/時間の速度で導入することにより重合を開始した。蒸発冷却法を用いることによって、連続反応の内部温度を−95〜−100℃の間に保持した。反応器内で十分滞留させた後、新たに形成されたポリマークラムをMeCl希釈剤から水性フラッシュタンクを用いて分離した。この時点で、約1重量%のステアリン酸をポリマークラム中へ導入した。乾燥に先立ち、0.1重量%のIrganox(登録商標) 1010をポリマーへ添加した。得られた材料の乾燥はコンベヤーオーブンを用いて行なった。表2に最終材料の特性を列挙する。
【0035】
実験例3
この比較実施例は、全イソプレン濃度が7.26モル%のIIRのバッチ重合法による製造を説明するものである。無水AlCl(1.739g、13mmol、Aldrich 99.99%)を塩化メチル(400mL)中に−30℃で溶解することにより触媒溶液を調製し、この溶液を30分間撹拌した後に−95℃に冷却した。−95℃に冷却され、オーバーヘッド撹拌機およびT型熱電対が装備された2Lのモートン式反応槽へ、塩化メチル(900mL)、イソブテン(85.8g、−95℃で凝縮)、イソプレン(12.3g)およびDVB(0.565g)を添加した。この混合物へ、触媒溶液(50mL)を一度に添加して重合を開始させた。反応を10分間進行させ、その時点で10mLのEtOH/NaOHを添加して反応を終結させ、次いで1phrのIrganox 1076を添加した。得られたスラリーを室温まで暖め、この時間の間に塩化メチルおよび蒸発した残存モノマー並びにヘキサンを添加してポリマーを溶解した。ポリマーをヘキサンから回収し、スチーム凝固によって固め、次いで2-ロールミル上で135℃にて乾燥した。表3に最終材料の特性を列挙する。
【0036】
実験例4
この比較実施例は、全イソプレン濃度が7.00モル%のIIRの、架橋剤(例えばDVB)を存在させないバッチ重合法による製造を説明するものである。無水AlCl(0.3g、Aldrich 99.99%)を塩化メチル(200mL)中に−30℃で溶解することにより触媒溶液を調製し、この溶液を30分間撹拌した後に−95℃に冷却した。−95℃に冷却され、オーバーヘッド撹拌機およびT型熱電対が装備された2Lのモートン式反応槽へ、塩化メチル(900mL)、イソブテン(11.82g、−95℃で凝縮)、イソプレン(2.04g)を添加した。この混合物へ、触媒溶液(22mL)を一度に添加して重合を開始させた。反応を10分間進行させ、その時点で10mLのEtOH/NaOHを添加して反応を終結させ、次いで1phrのIrganox 1076を添加した。得られたスラリーを室温まで暖め、この時間の間に塩化メチルおよび蒸発した残存モノマー並びにヘキサンを添加してポリマーを溶解した。ポリマーをヘキサンから回収し、スチーム凝固によって固め、次いで2-ロールミル上で135℃にて乾燥した。表4に最終材料の特性を列挙する。
【0037】
これらの実験例から、高濃度のIP(IC5)および許容可能なムーニー粘度(35〜40MU)のIIRの製造を、DVBの存在下(実施例1および2)にてAlCl/HOで開始される連続重合法において首尾よく行ない得ることがわかる。イソプレン含有量が7.26molのIIRをバッチ法(DVB使用)で製造し得るものの、実験例3に提示したデータから明らかなように、そのような材料は著しく低いムーニー粘度、MおよびMを有し、低下した転化率で製造される。同様に、そのような材料をDVBの不存在下(実験例4)で製造する場合には、ムーニー粘度およびMのさらなる低下が観測される。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlClの存在下で、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より多い繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマー、並びに重合工程を開始可能な少なくとも1種のプロトン源および/またはカチオノーゲン、および少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含んで成る、ムーニー単位25以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーを50〜95%の転化率範囲で連続的に製造する方法であって、遷移金属化合物と有機ニトロ化合物の不存在下に製造を行う方法。
【請求項2】
ポリマーは60〜95%の転化率範囲で製造され、マルチオレフィンから誘導される繰り返し単位を5モル%より多く有し、ゲル含有量が10重量%より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマーは75〜95%の転化率範囲で製造され、マルチオレフィンから誘導される繰り返し単位を7モル%より多く有し、ゲル含有量が5重量%より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
イソオレフィンモノマーはイソブテンである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
容積が0.1〜100mの少なくとも1種の連続反応器中で製造を行なう請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
容積が1〜10mの少なくとも1種の連続反応器中で製造を行なう請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
マルチオレフィンはイソプレンである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
マルチオレフィン架橋剤はジビニルベンゼンである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される4.1モル%より大きい繰り返し単位、および任意にさらなる共重合性モノマーを含んで成るムーニー単位30以上のムーニー粘度および15重量%より小さいゲル含有量を有するポリマーであって、遷移金属触媒残渣または有機ニトロ化合物残渣を含有しないポリマー。
【請求項10】
一部または全部が塩素化されている請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
一部または全部が臭素化されている請求項9に記載のポリマー。
【請求項12】
マレエート化されている請求項10または11に記載のポリマー。
【請求項13】
NR,−OR,−SR,PR,−OPR,−OSiR,−CR,−OCR[式中、R=H,F,Cl,Br,I,CCH(x=0〜20)、フェニル(または任意の芳香族誘導体)またはシクロヘキシル基]のような求核性種で官能性化されている請求項10または11に記載のポリマー。

【公開番号】特開2011−168796(P2011−168796A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−123544(P2011−123544)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2004−37892(P2004−37892)の分割
【原出願日】平成16年2月16日(2004.2.16)
【出願人】(504351677)ランクセス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Inc.
【Fターム(参考)】