説明

高分子化合物、化学増幅レジスト材料、該化学増幅レジスト材料を用いたパターン形成方法。

【課題】 ArFエキシマレーザー光、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、解像性に優れ、特にパターン形状の矩形性に優れ、更には基板への密着性に優れたパターンを形成することができるレジスト材料を得ることができる高分子化合物、該高分子化合物を含有する化学増幅レジスト材料及び該化学増幅レジスト材料を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で示す繰り返し単位を含有する高分子化合物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)高分子化合物、(2)その高分子化合物を含有する化学増幅レジスト材料及び(3)その化学増幅レジスト材料を用いたパターン形成方法に関する。なお、本発明において、高エネルギー線とは、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線を含むものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィー及び真空紫外線リソグラフィーが有望視されている。中でもArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーは0.13μm以下の超微細加工に不可欠な技術である。
【0003】
ArFリソグラフィーは130nmノードのデバイス製作から部分的に使われ始め、90nmノードデバイスからは主なリソグラフィー技術となった。次の45nmノードのリソグラフィー技術として、当初Fレーザーを用いた157nmリソグラフィーが有望視されたが、諸問題による開発遅延が指摘されたため、投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーが急浮上し(例えば、非特許文献1参照)、実用段階にある。この液浸リソグラフィーのためには、水に溶出しにくいレジスト材料が求められる。
【0004】
ArFリソグラフィーでは、精密かつ高価な光学系材料の劣化を防ぐために、少ない露光量で十分な解像性を発揮できる感度の高いレジスト材料が求められており、実現する方策としては、その各成分として波長193nmにおいて高透明なものを選択するのが最も一般的である。例えばベース樹脂については、ポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン−無水マレイン酸交互重合体、ポリノルボルネン及び開環メタセシス重合体、開環メタセシス重合体水素添加物等が提案されており、樹脂単体の透明性を上げるという点ではある程度の成果を得ている。
【0005】
また、高解像度を達成するために光酸発生剤や添加剤も種々の検討がなされている。例えば、露光により発生した酸の拡散を制御するために、アミンなどの塩基性化合物をクエンチャーとして添加することで、高解像が得られることが一般的に知られている。その他、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる(特許文献1、特許文献2)。即ち、フッ素置換されたスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し、強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には高エネルギー線照射により生じた強酸を弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。しかしながら、弱酸を発生するオニウム塩自身がレジスト材料中で移動性、拡散性を持つために、リソグラフィー特性へ与える影響や液浸液中への溶出など、高解像の達成という点で課題が残る。
更に、弱酸のアニオンが樹脂中に結合した樹脂結合型のオニウム塩が開発されている(特許文献3、特許文献4)。これにより弱酸オニウム塩の移動、拡散を制御することが可能となったが、弱酸アニオンが添加されたレジストでしばしば観察されるレジストパターンの基板からの剥れ等の欠陥の克服には未だ課題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−155824号公報
【特許文献2】特開2008−158339号公報
【特許文献3】WO2010119910
【特許文献4】特開2011−37834号公報
【0007】
【非特許文献1】Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ArFエキシマレーザー光、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、解像性に優れ、特にパターン形状の矩形性に優れたパターンを形成することができ、基板への適度な密着性を有するレジスト材料を得ることができる高分子化合物、該高分子化合物を含有する化学増幅レジスト材料及び該化学増幅レジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、下記一般式(1)で示す繰り返し単位を含有する高分子化合物を提供する。
【化1】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、或いはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを示す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはフッ素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を示す。kは0又は1の整数を示す。)
【0010】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位は、Bがフッ素置換されていないスルホン酸のスルホニウム塩構造を有しており、かつラクトン構造を有している。そのため、このような繰り返し単位を有する高分子化合物を化学増幅レジスト材料のベース樹脂として用いた場合、酸発生剤より生じた強酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、得られるレジストパターンは矩形性に優れ、また、パターンの基板への密着性も良好である。更には、スルホニウム塩の陰イオン成分の溶出が低いことから、特に、液浸リソグラフィー材料として好適に用いることができる。
【0011】
また、前記高分子化合物は、前記一般式(1)で示す繰り返し単位に加え、酸不安定基を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0012】
本発明の高分子化合物中に含まれる上記一般式(1)で示す繰り返し単位は、酸不安定単位の選択により、酸の移動、拡散制御の機能だけでなく、自身が酸を発生する単位として機能することも可能である。
【0013】
また、本発明では、(A)前記高分子化合物、(B)有機溶剤、(C)光酸発生剤、及び(D)塩基性化合物を含有するものであることを特徴とする化学増幅レジスト材料を提供する。
【0014】
このように、本発明の高分子化合物を含有する化学増幅レジスト材料を用いれば、矩形性に優れ、基板への密着性が良好なレジストパターンを得ることができる。
【0015】
また、本発明では、前記化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
また、本発明では、前記化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、前記基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0016】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、矩形性に優れ、基板への密着性が良好なレジストパターンを得ることができる。また、スルホニウム塩の陰イオン成分の溶出が低いことから、液浸リソグラフィー材料に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特定構造のスルホン酸アニオンとスルホニウムカチオンからなるスルホニウム塩を含有する高分子化合物をベース樹脂として用いた化学増幅レジスト材料は、解像性、特にパターン形状の矩形性に優れる。また、繰り返し単位中にラクトン構造を有しているため、樹脂の基板への優れた密着性を有しており、パターン倒れに強く、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示す特定構造のスルホン酸アニオンの繰り返し単位を有する樹脂組成物をレジストベース樹脂として用いたレジスト材料が、レジストの解像性、特にパターン形状の矩形性に優れ、また、基板との密着性にも優れラインアンドスペースパターン等の剥れが少なく、レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0019】
以下、本発明の高分子化合物、化学増幅レジスト材料及びパターン形成方法について詳述する。まず、本発明が提供する高分子化合物は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有するものである。
【化2】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、或いはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを示す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはフッ素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を示す。kは0又は1の整数を示す。)
【0020】
上記一般式(1)中、Bで示されるフッ素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。尚、本発明においてフッ素を除くヘテロ原子とは、窒素、酸素、硫黄原子等を言う。
【化3】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0021】
上記式(1)中、R、R及びRで示される置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基として、具体的には、置換もしくは非置換のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
置換もしくは非置換のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
置換もしくは非置換のオキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。
【0022】
置換もしくは非置換のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。
置換もしくは非置換のアラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
置換もしくは非置換のアリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。
また、R、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子と共に環状構造を形成する場合には、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【化4】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0024】
より具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)中、Aで示される炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基として、具体的には下記のものを例示できる。
【化5】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0026】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化6】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0027】
【化7】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0028】
【化8】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0029】
【化9】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0030】
【化10】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0031】
【化11】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0032】
ここで、本発明の高分子化合物中の一般式(1)で示される繰り返し単位を得るための単量体は、下記一般式(1a)で示される新規物質である。
【化12】


(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、或いはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを示す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはフッ素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を示す。kは0又は1の整数を示す。)
【0033】
ここで、単量体(1a)を得るための方法について下記スキームに例示するが、これに限定されるものではない。以下、式中で用いられる破線は結合手を示す。
【化13】

(式中、R〜R、X、A、B及びkは上記と同様である。Xはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又は下記一般式(10)
【化14】

(式中、R、A及びkは上記と同様である。)
で示される置換基を表す。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、置換もしくは未置換のアンモニウムイオンを示す。X3−はハライドイオン又はメチル硫酸イオンを示す。)
【0034】
なお、上記一般式(1a)において、kが1の場合には、下記に示す別法を用いて上記反応式中の化合物(4)を得ることができる。
【化15】

(式中、R、X及びAは上記と同様である。Xはハロゲン原子を示す。Xはハロゲン原子、水酸基又はアルコキシ基を示す。Ma+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン又は置換もしくは未置換のアンモニウムイオンを示す。)
【0035】
ステップ(i)はヒドロキシラクトン(2)とエステル化剤(3)との反応によりエステル(4)に導く工程である。なお、ヒドロキシラクトン(2)の合成法は、特開2000−159758号公報及び、特許第4539865号公報に詳述されている。
【0036】
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(3)としては、酸クロリド{式(3)において、Xが塩素原子の場合}又は酸無水物{式(3)において、Xが一般式(10)で示される置換基の場合}又はカルボン酸{式(3)において、Xが水酸基の場合}が好ましい。
酸クロリド又は酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、ヒドロキシラクトン化合物(2)と、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等の対応する酸クロリド又は酸無水物、及びトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基とを順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(2)及びアクリル酸、メタクリル酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0037】
ステップ(ii)は、エステル(4)のtert−ブチルエステル部分をギ酸により脱保護し、カルボン酸(5)を得る工程である。ギ酸を溶媒としてエステル(4)を溶解し、必要に応じ、冷却あるいは加熱しながら攪拌することでカルボン酸(5)を得ることができる。
【0038】
ステップ(iii)は、カルボン酸(5)を対応する酸塩化物(6)に導く工程である。反応は塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、二塩化オキサリルなどの塩素化剤を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0039】
ステップ(iv)は酸塩化物(6)とスルホアルコ−ル(7)の求核置換反応により、オニウム塩(8)を得る工程である。反応は常法に従って行うことができ、溶媒中、酸塩化物(6)、スルホアルコール(7)、及び塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却又は加熱して行うのがよい。反応に用いることができる溶媒として、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、上記ステップ(iv)で示される反応に用いることができる塩基として、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
ステップ(v)は、オニウム塩(8)とスルホニウム塩(9)とのイオン交換反応により、重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1a)を得る工程である。オニウム塩(8)はステップ(iv)の反応を行った後に、通常の水系後処理を経て単離したものを用いても良いし、反応を停止した後に特に後処理をしていないものを用いても良い。
【0041】
単離したオニウム塩(8)を用いる場合は、オニウム塩(8)を水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等に溶解し、スルホニウム塩(9)と混合し、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで反応混合物を得ることができる。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1a)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0042】
オニウム塩(8)を合成する反応を停止した後に、特に後処理をしていないものを用いる場合は、オニウム塩(8)の合成反応を停止した混合物に対してスルホニウム塩(9)を加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで反応混合物を得ることができる。その際、必要に応じて水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等を加えてもよい。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1a)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0043】
ステップ(vi)及び(vii)は、上記一般式(1a)においてkが1のとき、上記反応式中のエステル(4)を得る別法である。
【0044】
ステップ(vi)はヒドロキシラクトン(2)とエステル化剤(11)との反応により、ハロエステル(12)を得る反応である。反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(11)としては、酸クロリド{式(11)においてXが塩素原子の場合}又はカルボン酸{式(11)においてXが水酸基の場合}が特に好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(2)、2−クロロ酢酸クロリド、3−クロロプロピオン酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次または同時に加え、必要に応じ冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(2)と2−クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)によりハロエステル(12)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0045】
ステップ(vii)はハロエステル(12)とカルボン酸塩化合物(13)との反応によりエステル(14)に導く反応である。
【0046】
ステップ(vii)における反応は、常法に従って行うことができる。カルボン酸塩化合物(13)としては、各種カルボン酸金属塩などの市販のカルボン酸塩化合物をそのまま用いてもよいし、メタクリル酸、アクリル酸等の対応するカルボン酸と塩基から反応系内でカルボン酸塩化合物を調製して用いてもよい。カルボン酸塩化合物(13)の使用量は、原料であるハロエステル(12)1モルに対し0.5〜10モル、特に1.0〜3.0モルとすることが好ましい。0.5モル未満の使用では原料が大量に残存するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。対応するカルボン酸と塩基から反応系内でカルボン酸塩化合物を調製する場合に用いることができる塩基としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類;ナトリウムなどの金属類;水素化ナトリウムなどの金属水素化物;ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類;ブチルリチウム、臭化エチルマグネシウム等の有機金属類;リチウムジイソプロピルアミド等の金属アミド類から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。塩基の使用量は、対応するカルボン酸1モルに対し0.2〜10モル、特に0.5〜2.0モルとすることが好ましい。0.2モル未満の使用では大量のカルボン酸が無駄になるためコスト面で不利になる場合があり、10モルを超える使用では副反応の増加により収率が大幅に低下する場合がある。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)により重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1a)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0047】
本発明の高分子化合物中に含まれる上記一般式(1)で示す繰り返し単位は、Bがフッ素置換されていないスルホン酸のスルホニウム塩構造を有しており、かつラクトン構造を有している。そのため、化学増幅レジスト材料のベース樹脂として用いた場合、酸発生剤より生じた強酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、また、レジスト膜の高い基板密着性を付与することが期待できる。
【0048】
本発明の高分子化合物には、上記一般式(1)で示す繰り返し単位に加えて、酸不安定基を有する繰り返し単位を共存させることができる。この酸不安定基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(2A)で示される、酸不安定基を有する繰り返し単位が挙げられる。
【化16】

(式中、Rは上記と同様である。XAは酸不安定基を示す。)
【0049】
以下、酸不安定単位について詳述する。上記一般式(2A)で示される繰り返し単位を更に含有する高分子化合物は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる高分子化合物となる。酸不安定基XAとしては、下記一般式で示されるものを用いることができる。
【化17】

【0050】
上記式中、破線は結合手を示す。RL01、RL02は、水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0051】
【化18】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0052】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するRL01とRL02、RL01とRL03、又はRL02とRL03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0053】
L04、RL05、RL06は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0054】
L07は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。上記置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換された基、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換された基等が例示できる。上記置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、mは0又は1、nは0,1,2,3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0055】
L08は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。具体的には、RL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するRL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09とRL11、RL11とRL17、又はRL15とRL17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0056】
L19は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
【0057】
L20は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0058】
Xは、これが結合する炭素原子と共に、2重結合を含んでも良い置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL21、RL22は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL21とRL22は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。pは1又は2を示す。
【0059】
L23は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0060】
Yは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL24、RL25は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL24とRL25は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0061】
L26は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0062】
Zは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL27、RL28は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL27とRL28は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。
【0063】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化19】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0064】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0065】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基等が例示できる。
【化20】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0066】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0067】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記一般式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化21】

【0068】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41は、それぞれ独立に炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0069】
上記式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、上記式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0070】
例えば、上記式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化22】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0071】
また、上記式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化23】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0072】
上記式(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0073】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化24】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0074】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化25】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0075】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化26】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0076】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化27】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0077】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化28】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0078】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化29】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0079】
上記一般式(2A)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化30】

【0080】
【化31】

【0081】
【化32】

【0082】
【化33】

【0083】
【化34】

【0084】
【化35】

【0085】
【化36】

【0086】
本発明の上記一般式(1)で示す繰り返し単位は、上記一般式(2A)で示される繰り返し単位と共存する場合、酸不安定単位の選択により、酸の移動、拡散制御の機能だけでなく、自身が酸を発生する単位として機能することも可能である。
【0087】
本発明の高分子化合物には、上記一般式(1)、(2A)で示される繰り返し単位に加えて、下記式(2B)〜(2E)で示す繰り返し単位を共存させることができる。
【化37】

(式中、Rは上記と同様である。XB、XCはそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基を示す。YAはラクトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、又は酸素原子を有していても良い炭素数1〜15のフルオロアルキル基又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。k1Aは1〜3の整数を示す。R、R及びRはそれぞれ独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、或いはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0088】
一般式(2B)で示される繰り返し単位として、具体的には以下のものがあげられる。
【化38】

【0089】
一般式(2C)で示される繰り返し単位として、具体的には以下のものがあげられる。
【化39】

【0090】
【化40】

【0091】
【化41】

【0092】
一般式(2D)で示される繰り返し単位として、具体的には以下のものがあげられる。
【化42】

【0093】
【化43】

【0094】
一般式(2E)で示される繰り返し単位として、具体的には以下のものがあげられる。
【化44】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0095】
本発明の、繰り返し単位(1)に加えて、上記一般式(2A)で示す酸不安定単位や、一般式(2B)〜(2E)で示す繰り返し単位を適宜組み合わせた高分子化合物を、レジストベース樹脂として用いることで、高解像でパターン倒れに強い化学増幅レジスト材料を得ることが可能である。
【0096】
本発明の高分子化合物を合成する場合、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)等の開始剤を用いるラジカル重合、アルキルリチウム等を用いるイオン重合(アニオン重合)等の一般的重合手法を用いることが可能であり、これらの重合はその常法に従って実施することができる。このうち、本発明の高分子化合物の合成は、ラジカル重合により製造を行うことが好ましい。この場合、重合条件は開始剤の種類と添加量、温度、圧力、濃度、溶媒、添加物等によって支配される。
【0097】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてAIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、過硫酸カリウムのような水溶性重合開始剤、更には過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤等が例示される。重合開始剤の使用量は種類や重合条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜6モル%が採用される。
【0098】
本発明の高分子化合物を合成する場合、分子量の調整のためにドデシルメルカプタンや2−メルカプトエタノールのような公知の連鎖移動剤を併用してもよい。その場合、これらの連鎖移動剤の添加量は重合させる単量体の総モル数に対して0.01〜10モル%であることが好ましい。
【0099】
本発明の高分子化合物を合成する場合、一般式(1)、(2A)〜(2E)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0100】
ここで、本発明の高分子化合物中の繰り返し単位(1)、及び(2A)〜(2E)について、
一般式(1)の単位に対応する単量体の総モル数をU1、
一般式(2A)〜(2E)の単位に対応する単量体の総モル数をそれぞれ、U2、U3、U4、U5、U6とし、U1+U2+U3+U4+U5+U6=1(100モル%)とした場合、各繰り返し単位の導入割合は、
0<U1<1、0<U2<0.9、0≦U3≦0.3、0≦U4<0.7、0≦U5≦0.3、0≦U6≦0.15、0≦U2+U3+U4+U5+U6≦0.7であることが好ましい。
【0101】
重合を行う際には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。重合溶媒の使用量は、目標となる重合度(分子量)、開始剤の添加量、重合温度等の重合条件に応じて適宜変更可能であり、通常は重合させる単量体の濃度が0.1〜95質量%、特に5〜90質量%になるように溶媒を添加する。
【0102】
重合反応の反応温度は、重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更されるが、通常は20〜200℃が好ましく、特に50〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
【0103】
このようにして得られた重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0104】
本発明では、(A)上記本発明の高分子化合物、(B)有機溶剤、(C)光酸発生剤、及び(D)塩基性化合物を含有するものであることを特徴とする化学増幅レジスト材料を提供する。
【0105】
本発明で使用される(B)有機溶剤については、特開2009−269953号公報等の記載に詳しい。(B)有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、4−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0106】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200〜5,000質量部、特に400〜3,000質量部が好適である。
【0107】
化学増幅レジスト材料として機能するため、高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物((C)光酸発生剤)を含んでも良い。(C)光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2010−002599号公報(0108)〜(0116)段落に記載されている。
【0108】
光酸発生剤としては、特に下記一般式(C)−1で示されるものが好適に用いられる。
【化45】

(式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示す。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0109】
本発明の化学増幅レジスト材料における光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、化学増幅レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0〜40質量部、特に0.1〜40質量部、更には0.1〜20質量部であることが好ましい。光酸発生剤の割合がこのような範囲内であれば、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる恐れがないために好ましい。光酸発生剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0110】
また、本発明の化学増幅レジスト材料には(D)塩基性化合物を添加することもできる。このような(D)塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が挙げられ、その具体例としては、特開2009−269953号公報に記載されている。
【0111】
この場合、塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の上記一般式(1)で示す繰り返し単位の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜12質量部、特に0.01〜8質量部が好ましい。
【0112】
本発明の化学増幅レジスト材料は、更に、有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤、界面活性剤、のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0113】
有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)の添加は任意であるが、特開2009−269953号公報に記載の化合物を参照できる。
【0114】
界面活性剤については、特開2009−269953号公報に記載の(E)定義成分を参照することができる。また、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、2009−192784号公報、2009−191151号公報、特開2009−98638号公報も参照でき、通常の界面活性剤並びにアルカリ可溶型界面活性剤を用いることができる。
【0115】
上記界面活性剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0116】
次に、本発明では、前述の化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0117】
また、本発明では、前述の化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、前記基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0118】
詳述すると、本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0119】
また、有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンを形成することも可能である。この時の現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノンのケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチルのエステル類、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルの芳香族エステル類を好ましく用いることができる。
【0120】
また、本発明のレジスト材料は、種々のシュリンク方法によって現像後のパターン寸法を縮小することができる。例えば、サーマルフロー、RELACS、SAFIRE、WASOOMなど既知の方法によりホールサイズをシュリンクすることができる。特にポリマーTgが低い水素化ROMPポリマー(シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物)などをブレンドした場合、サーマルフローによりホールサイズを効果的に縮小することができる。
【0121】
なお、本発明の化学増幅レジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも250〜190nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。また、上記範囲内であれば、目的のパターンを得ることができるために好ましい。
【0122】
尚、露光は通常の露光法の他、場合によっては、液浸Immersion法を用いることも可能である。液浸リソグラフィーは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間(基板と投影レンズの間)に液浸媒体(好ましくは水)を挿入して露光する。ArF液浸リソグラフィーにおいては、液浸媒体として主に純水が用いられる。NAが1.0以上の投影レンズと組み合わせることによって、ArFリソグラフィーを65nmノード以降まで延命させるための重要な技術であり、開発が加速されている。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0123】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
【0124】
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例】
【0125】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。
【0126】
(合成例1)polymer−1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに、4.94gのトリフェニルスルホニウム=2−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホネート、19.0gのメタクリル酸=1−イソプロピルシクロペンチル、6.61gのメタクリル酸=2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、12.09gのメタクリル酸=5−オキソ4、8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イル、2.20gのV−601(和光純薬製)、2−メルカプトエタノール0.45gを68gのGBL(ガンマブチロラクトン)に溶解し、単量体―重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに、24gのGBLをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した640gの水−メタノール溶液(重量比3:7)に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体を240gの水−メタノール溶液(重量比3:7)で2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して30.3gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で2/50/20/28モル%であった。
【0127】
【化46】

【0128】
(合成例2〜7、比較合成例1〜4)polymer−2〜polymer−7、polymerA〜Dの合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、上記合成例1と同様の手順により、下記に示した高分子化合物を製造した。
【0129】
【化47】

【0130】
【化48】

【0131】
【化49】

【0132】
化学増幅レジスト材料の調製(実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−4)
上記合成例で示した高分子化合物を使用し、下記光酸発生剤、クエンチャー、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)を下記表1に示す組成で下記界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶媒中に溶解してレジスト材料を調合し、さらにレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト溶液(R−01〜R11)をそれぞれ調製した。
【0133】
なお、表1において、上記合成例で示した高分子化合物と共にレジスト材料として使用した光酸発生剤、クエンチャー、溶剤、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)は下記の通りである。
P−1〜P−7:上記polymer−1〜polymer−7
P−A〜P−D:上記polymer−A〜polymer−D
PAG−1:4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
PAG−2:N−ノナフルオロブタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボキシイミド
Q−1:1−ベンジルオキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール
Q−2:トリフェニルスルホニウム=10−カンファースルホネート
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1):下記式(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
【0134】
【化50】

【0135】
界面活性剤A:
3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化51】

【0136】
【表1】

【0137】
ArF露光パターニング評価(実施例2−1〜実施例2−7、比較例2−1〜比較例2−4)
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、120nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、Crマスク)を用いて液浸露光し、80℃で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0138】
レジスト形状の評価は、40nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。上記最適露光量におけるパターン形状を及びラフネス(LWR)を、電子顕微鏡にて観察し評価した。
パターン形状の評価基準は以下のものとした。
矩形:ライン側壁が垂直であり、ボトム(基板付近)からトップまで寸法変化が少なく良好。
テーパー:ボトムからトップにかけてライン寸法が小さくなる形状。
【0139】
レジスト成分の液浸水への溶出量の評価は、まず、上記方法にてレジスト膜を形成したウエハー上に内径10cmの真円状のテフロン(登録商標)リングを置き、その中に10mlの純水を注意深く注いで、室温にて60秒間レジスト膜と純水を接触させた。その後、純水を回収し、純水中のスルホニウム塩の陰イオン成分濃度(mol/cm・sec)をLC−MS分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製)にて測定した。
レジストパターンの基板への密着性に関しては、電子顕微鏡にて上空観察を行い剥れ欠陥の有無を評価した。
【0140】
各レジスト材料の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0141】
表2の結果より、本発明の特定構造のスルホニウム塩を繰り返し単位中にもつ高分子化合物をレジスト材料のベース樹脂として用いると、パターンの矩形性に優れ、スルホニウム塩の陰イオン成分の溶出が低く、LWRが小さく、また、パターンの基板への密着性も良好であることが確認された。以上のことから、本発明のレジスト材料は液浸リソグラフィー材料として好適である。
【0142】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示す繰り返し単位を含有する高分子化合物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、或いはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを示す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはフッ素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を示す。kは0又は1の整数を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示す繰り返し単位に加え、酸不安定基を有する繰り返し単位を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
(A)請求項1又は請求項2に記載の高分子化合物、(B)有機溶剤、(C)光酸発生剤、及び(D)塩基性化合物を含有するものであることを特徴とする化学増幅レジスト材料。
【請求項4】
請求項3に記載の化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項3に記載の化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、前記基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。



【公開番号】特開2012−246426(P2012−246426A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120457(P2011−120457)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】