高周波加熱器
【課題】アンテナの負荷インピーダンスによらず、食品を高速に加熱すること。
【解決手段】制御部17で伝送線路15の長さのバラツキの影響を補正することによって、電力増幅器14の出力端での反射係数を高い精度で推測し、さらにその反射係数の値に従って予め用意された参照テーブルをベースにきめ細やかに電力増幅器14への入力電力を過剰に低下することなく制御することによって、高い精度で電力増幅器14の破壊や発振などを防ぎ、アンテナからの高周波出力を高いレベルに維持することが可能となる。
【解決手段】制御部17で伝送線路15の長さのバラツキの影響を補正することによって、電力増幅器14の出力端での反射係数を高い精度で推測し、さらにその反射係数の値に従って予め用意された参照テーブルをベースにきめ細やかに電力増幅器14への入力電力を過剰に低下することなく制御することによって、高い精度で電力増幅器14の破壊や発振などを防ぎ、アンテナからの高周波出力を高いレベルに維持することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食品を高速に加熱する高周波加熱器に関連する。
【背景技術】
【0002】
高周波電力発生部に半導体増幅器を用い、キャビティ内に設置したアンテナから高周波電力を放射して食品を加熱する高周波加熱器においては、アンテテナから反射した高周波電力によって半導体増幅器が破壊する可能性がある。それを防止する手段として、従来結合器を用いて測定した進行方向電力と反射方向電力における電圧定在波比が所定の閾値以上である場合には半導体増幅器の動作を止めるなどの制御を行うものがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−284552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の増幅器制御回路の例を図6に示す。増幅器制御回路600は、発振器61、前段増幅器62、電力増幅器63、アンテナ69、電力検出器66、結合器64、電力検出部66、反射電力検知器67、電圧制御器65、電力制御命令部68、アンテナ69を有している。
【0005】
増幅器制御回路600は、電力制御命令部68の指示に従って、電力検出部66が検知する電力を所定値になるように前段増幅器62の出力電力を増加または減少しようと働く。その際、アンテナ69の負荷インピーダンスが何らかの影響により変動した場合、電力増幅器63の整合が変化し不整合に陥り、電力増幅器63からアンテナ69までの間に定在波が発生したり、電力増幅器63の消費電流が激増したりすることによって電力増幅器63が破壊する可能性がある。
【0006】
そこで、たとえば前段増幅器62が電力増幅器63の出力電力を増加させようと動作した場合は、結合器64より得られる進行方向電力を電力検出器66で検知し、反射方向電力を反射電力検知器62で検知し、得られた結果を電圧制御器65にて電圧定在波比を計算し、算出結果を所定の電圧定在波設定値と比較し、その結果を用いて前段増幅器62の駆動電圧を断とさせるように制御する。これによって、反射電力による送信電力増幅器63の増幅素子の破壊を防ぐ。
【0007】
しかしながら、上記従来の増幅器制御回路においては以下の2つの課題がある。
【0008】
一つ目の課題は、電力増幅器と結合器の間の伝送線路による制御誤差である。本来は電力増幅器の出力端での電圧定在波比を基準に制御すべきであるが、伝送線路が波長に対して長い場合、結合器でモニタした電圧定在波比と電力増幅器の出力端での電圧定在波比は異なるため、モニタした電圧定在波比が誤差を含んだ状態で制御してしまうという問題がある。
【0009】
二つ目の課題は、電圧定在波比をパラメータにした制御は、過剰な制御になってしまう可能性があることである。ある位置で測定された電圧定在波比は振幅情報であり位相情報は有しない。図7は、電力増幅器の出力端におけるインピーダンスマップ(スミスチャー
ト)であり、電圧定在波比2、3、4の各円と、グレーで示された電力増幅器が最大出力で造作している場合での破壊領域の例を記載している。この図より電圧定在波比2以下であれば、どのような位相でも破壊することはないが、位相条件によっては電圧定在波比4でも破壊しない領域がある。本来、できるだけ広いインピーダンス領域で動作することが好ましいが、従来例の電圧定在波比をパラメータにした場合では、たとえば無条件で電圧定在波比2以下において一律に高周波出力電力を停止する制御が行われてしまうことになる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で制御誤差と過剰な制御を抑制できる高周波信号発生器を搭載した高周波加熱器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の高周波加熱器は、その高周波信号発生部において、測定した進行波の位相および振幅と、測定した反射波の位相および振幅と、進行波の基準位相と測定した進行波の位相との差、とを用いて電力増幅器の出力端における反射係数を計算し、反射係数と前段増幅器の制御パラメータとの関係式を示す参照テーブルに従って、前段増幅器の出力電力を増減することによって電力増幅器の入力電力を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高周波加熱器によれば、電力増幅器の出力端における反射係数を高い精度で推測して、前段増幅器の出力レベルを参照テーブルにおける反射係数と前段増幅器の制御電圧の関係から導出して前段増幅器を制御することによって、電力増幅器の高周波出力を過剰に低下することなく電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となり、食品を高速に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波加熱器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態2をおける高周波加熱器のブロック図
【図3】本発明の実施の形態を示す電力増幅器の出力端における反射係数の位相・振幅と、利得可変増幅器の利得制御電圧の関係を示す参照テーブルを示す図
【図4】利得可変増幅器の高周波出力電力と制御電圧の関係を示す図
【図5】電力増幅器の最大出力領域での破壊・発振領域のスミスチャート
【図6】従来の増幅器制御回路を示す図
【図7】従来の電力増幅器の最大出力領域での破壊・発振領域のスミスチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
第一の発明は、アンテナから放射する高周波を閉じ込めるキャビティと、高周波の信号を発生する高周波信号発生器を有する高周波加熱器であって、高周波信号発生器は、高周波の信号を発生する発振器と、前記発振器の出力信号を増幅する前段増幅器と、前記前段増幅器の出力信号をさらに増幅する電力増幅器と、前記電力増幅器の出力信号を前記アンテナに伝送する伝送線路と、前記電力増幅器と前記アンテナとの間に、前記電力増幅器からの進行波の一部と、前記アンテナからの反射波の一部と、を取り出す結合部と、前記進行波の位相および振幅と、前記反射波の位相および振幅を測定して反射係数を計算して前記前段増幅器の出力電力を調整する制御部とを有し、前記制御部は、反射係数と前記前段増幅器の出力電力を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整することによって、
前記電力増幅器の出力端における反射係数を高い精度で抽出し、その反射係数を参照テ
ーブルに照らし合わせて前記電力増幅器を動作することで、過剰に高周波出力を低下することなく電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となる。
【0015】
第二の発明は、特に第一の発明における前記電力増幅器の入力電力を調整する機能を減衰器で代替することによって、第一の発明と同等の効果を得ることが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態を図1、図3および図4を用いて説明する。
【0018】
図1は高周波加熱器100における主要部分の構成図の一例である。
【0019】
高周波加熱器100では、高周波信号発生部10が出力した高周波電力をアンテナ20から放射し、キャビティ30内の食品を加熱する。発振器11は例えば周波数2450MHzの微弱な高周波信号を発生し、分配器12によって分配する。分配器12の一方の出力の高周波信号は利得可変増幅器13で増幅し、さらに電力増幅器14によって再度増幅する。電力増幅器14から出力した高周波信号は伝送線路15と結合器16を解してアンテナ20に供給する。結合器16は、高周波信号発生部10からの進行波の一部と、アンテナ20からの反射波の一部を取り出し、直交復調器18に入力する。直交復調器は分配器12のもう一方の出力の高周波信号を基準信号として使用し、進行波を振幅成分Afと位相成分Pfに、そして反射波を振幅成分Arと位相成分Prに分解して制御部17に伝達する。制御部17では電力増幅器14の出力における反射係数(複素数)を下記(式1)に基づいて計算する。
【0020】
【数1】
【0021】
Pm :進行波の位相値の測定値(ケーブル長のバラツキを含む)
Pi :基準となる伝送線路における位相回転量
Px :位相の基準値
(式1)では、伝送線路15の長さのバラツキによる位相回転をで補正している。位相の基準値Pxは、予め基準となる伝送線路が接続された状態で取得した位相値である。
【0022】
ここで基準となる伝送線路とは、電力増幅器14の出力での反射係数における破壊・および発振の関係と、電力増幅器14への入力レベルを決める利得可変増幅器13の制御電圧の関係を、予め取得した際に用いた伝送線路をさす。
【0023】
図3は、制御部17が有する、電力増幅器14の出力端での反射係数の位相成分および振幅成分と利得可変増幅器13の制御電圧の関係を示す参照テーブルである。振幅成分と位相成分は、(式1)から算出された値であり、利得可変増幅器13へ入力する制御電圧は、電力増幅器14が破壊・発振などしないように、電力増幅器14の出力端における各反射係数について予め抽出された値である。
【0024】
図4は、利得可変増幅器13における、制御電圧と高周波出力電力の関係であり、制御電圧が高いほど高周波出力電力が大きくなる。一般に電力増幅器14は出力端での反射係数の振幅成分の値が大きくなるほど破壊しやすくなる傾向にあり、反射係数が大きい場合
は、負荷インピーダンスに応じて制御電圧を下げることによって、電力増幅器14の破壊を防ぐことができる。従って、電力増幅器14が破壊・発振などしないような制御電圧を予め反射係数をパラメータとしてデータベース化してこれを参照テーブルとして有し、この参照テーブルに従って制御することによって、アンテナの負荷インピーダンスが変動しても電力増幅器14は破壊しない。
【0025】
つまり本発明では、伝送線路の長さのバラツキの影響を補正することによって、電力増幅器14の出力端での反射係数を高い精度で推測し、さらにその反射係数の値に従って予め用意された参照テーブルをベースにきめ細やかに制御することによって、従来のように無駄に高周波出力電力を低下することなく、電力増幅器14の破壊を防ぐ事が可能となる。
【0026】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2を図2を用いて説明する。
【0027】
図2は高周波加熱器200における主要部分の構成図の一例である。高周波加熱器200は、高周波加熱器100の利得可変増幅器13の入力側に減衰器19を配置し、さらに制御部17からの制御信号が前段増幅部である利得可変増幅器13ではなく、減衰器19に入力する構成となっている。つまり、高周波加熱器200では電力増幅器14への入力レベルを、利得可変増幅器13の出力レベルを調整する代わりに、減衰器19の減推量を制御することによって調整することによって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、減衰器19は利得可変増幅器13の出力側に配置しても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる高周波加熱器は、従来のように高周波出力電力を過剰に低下することなく、電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となるため、高速に食品を過熱する高周波加熱器などの応用に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
10 高周波信号発生部
11 発振器
12 分配器
13 利得可変増幅器
14 電力増幅器
15 伝送線路
16 結合器
17 制御部
18 直交復調器
19 減衰器
20 アンテナ
30 キャビティ
100 高周波加熱器
200 高周波加熱器
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食品を高速に加熱する高周波加熱器に関連する。
【背景技術】
【0002】
高周波電力発生部に半導体増幅器を用い、キャビティ内に設置したアンテナから高周波電力を放射して食品を加熱する高周波加熱器においては、アンテテナから反射した高周波電力によって半導体増幅器が破壊する可能性がある。それを防止する手段として、従来結合器を用いて測定した進行方向電力と反射方向電力における電圧定在波比が所定の閾値以上である場合には半導体増幅器の動作を止めるなどの制御を行うものがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−284552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の増幅器制御回路の例を図6に示す。増幅器制御回路600は、発振器61、前段増幅器62、電力増幅器63、アンテナ69、電力検出器66、結合器64、電力検出部66、反射電力検知器67、電圧制御器65、電力制御命令部68、アンテナ69を有している。
【0005】
増幅器制御回路600は、電力制御命令部68の指示に従って、電力検出部66が検知する電力を所定値になるように前段増幅器62の出力電力を増加または減少しようと働く。その際、アンテナ69の負荷インピーダンスが何らかの影響により変動した場合、電力増幅器63の整合が変化し不整合に陥り、電力増幅器63からアンテナ69までの間に定在波が発生したり、電力増幅器63の消費電流が激増したりすることによって電力増幅器63が破壊する可能性がある。
【0006】
そこで、たとえば前段増幅器62が電力増幅器63の出力電力を増加させようと動作した場合は、結合器64より得られる進行方向電力を電力検出器66で検知し、反射方向電力を反射電力検知器62で検知し、得られた結果を電圧制御器65にて電圧定在波比を計算し、算出結果を所定の電圧定在波設定値と比較し、その結果を用いて前段増幅器62の駆動電圧を断とさせるように制御する。これによって、反射電力による送信電力増幅器63の増幅素子の破壊を防ぐ。
【0007】
しかしながら、上記従来の増幅器制御回路においては以下の2つの課題がある。
【0008】
一つ目の課題は、電力増幅器と結合器の間の伝送線路による制御誤差である。本来は電力増幅器の出力端での電圧定在波比を基準に制御すべきであるが、伝送線路が波長に対して長い場合、結合器でモニタした電圧定在波比と電力増幅器の出力端での電圧定在波比は異なるため、モニタした電圧定在波比が誤差を含んだ状態で制御してしまうという問題がある。
【0009】
二つ目の課題は、電圧定在波比をパラメータにした制御は、過剰な制御になってしまう可能性があることである。ある位置で測定された電圧定在波比は振幅情報であり位相情報は有しない。図7は、電力増幅器の出力端におけるインピーダンスマップ(スミスチャー
ト)であり、電圧定在波比2、3、4の各円と、グレーで示された電力増幅器が最大出力で造作している場合での破壊領域の例を記載している。この図より電圧定在波比2以下であれば、どのような位相でも破壊することはないが、位相条件によっては電圧定在波比4でも破壊しない領域がある。本来、できるだけ広いインピーダンス領域で動作することが好ましいが、従来例の電圧定在波比をパラメータにした場合では、たとえば無条件で電圧定在波比2以下において一律に高周波出力電力を停止する制御が行われてしまうことになる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で制御誤差と過剰な制御を抑制できる高周波信号発生器を搭載した高周波加熱器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の高周波加熱器は、その高周波信号発生部において、測定した進行波の位相および振幅と、測定した反射波の位相および振幅と、進行波の基準位相と測定した進行波の位相との差、とを用いて電力増幅器の出力端における反射係数を計算し、反射係数と前段増幅器の制御パラメータとの関係式を示す参照テーブルに従って、前段増幅器の出力電力を増減することによって電力増幅器の入力電力を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高周波加熱器によれば、電力増幅器の出力端における反射係数を高い精度で推測して、前段増幅器の出力レベルを参照テーブルにおける反射係数と前段増幅器の制御電圧の関係から導出して前段増幅器を制御することによって、電力増幅器の高周波出力を過剰に低下することなく電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となり、食品を高速に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波加熱器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態2をおける高周波加熱器のブロック図
【図3】本発明の実施の形態を示す電力増幅器の出力端における反射係数の位相・振幅と、利得可変増幅器の利得制御電圧の関係を示す参照テーブルを示す図
【図4】利得可変増幅器の高周波出力電力と制御電圧の関係を示す図
【図5】電力増幅器の最大出力領域での破壊・発振領域のスミスチャート
【図6】従来の増幅器制御回路を示す図
【図7】従来の電力増幅器の最大出力領域での破壊・発振領域のスミスチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
第一の発明は、アンテナから放射する高周波を閉じ込めるキャビティと、高周波の信号を発生する高周波信号発生器を有する高周波加熱器であって、高周波信号発生器は、高周波の信号を発生する発振器と、前記発振器の出力信号を増幅する前段増幅器と、前記前段増幅器の出力信号をさらに増幅する電力増幅器と、前記電力増幅器の出力信号を前記アンテナに伝送する伝送線路と、前記電力増幅器と前記アンテナとの間に、前記電力増幅器からの進行波の一部と、前記アンテナからの反射波の一部と、を取り出す結合部と、前記進行波の位相および振幅と、前記反射波の位相および振幅を測定して反射係数を計算して前記前段増幅器の出力電力を調整する制御部とを有し、前記制御部は、反射係数と前記前段増幅器の出力電力を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整することによって、
前記電力増幅器の出力端における反射係数を高い精度で抽出し、その反射係数を参照テ
ーブルに照らし合わせて前記電力増幅器を動作することで、過剰に高周波出力を低下することなく電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となる。
【0015】
第二の発明は、特に第一の発明における前記電力増幅器の入力電力を調整する機能を減衰器で代替することによって、第一の発明と同等の効果を得ることが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態を図1、図3および図4を用いて説明する。
【0018】
図1は高周波加熱器100における主要部分の構成図の一例である。
【0019】
高周波加熱器100では、高周波信号発生部10が出力した高周波電力をアンテナ20から放射し、キャビティ30内の食品を加熱する。発振器11は例えば周波数2450MHzの微弱な高周波信号を発生し、分配器12によって分配する。分配器12の一方の出力の高周波信号は利得可変増幅器13で増幅し、さらに電力増幅器14によって再度増幅する。電力増幅器14から出力した高周波信号は伝送線路15と結合器16を解してアンテナ20に供給する。結合器16は、高周波信号発生部10からの進行波の一部と、アンテナ20からの反射波の一部を取り出し、直交復調器18に入力する。直交復調器は分配器12のもう一方の出力の高周波信号を基準信号として使用し、進行波を振幅成分Afと位相成分Pfに、そして反射波を振幅成分Arと位相成分Prに分解して制御部17に伝達する。制御部17では電力増幅器14の出力における反射係数(複素数)を下記(式1)に基づいて計算する。
【0020】
【数1】
【0021】
Pm :進行波の位相値の測定値(ケーブル長のバラツキを含む)
Pi :基準となる伝送線路における位相回転量
Px :位相の基準値
(式1)では、伝送線路15の長さのバラツキによる位相回転をで補正している。位相の基準値Pxは、予め基準となる伝送線路が接続された状態で取得した位相値である。
【0022】
ここで基準となる伝送線路とは、電力増幅器14の出力での反射係数における破壊・および発振の関係と、電力増幅器14への入力レベルを決める利得可変増幅器13の制御電圧の関係を、予め取得した際に用いた伝送線路をさす。
【0023】
図3は、制御部17が有する、電力増幅器14の出力端での反射係数の位相成分および振幅成分と利得可変増幅器13の制御電圧の関係を示す参照テーブルである。振幅成分と位相成分は、(式1)から算出された値であり、利得可変増幅器13へ入力する制御電圧は、電力増幅器14が破壊・発振などしないように、電力増幅器14の出力端における各反射係数について予め抽出された値である。
【0024】
図4は、利得可変増幅器13における、制御電圧と高周波出力電力の関係であり、制御電圧が高いほど高周波出力電力が大きくなる。一般に電力増幅器14は出力端での反射係数の振幅成分の値が大きくなるほど破壊しやすくなる傾向にあり、反射係数が大きい場合
は、負荷インピーダンスに応じて制御電圧を下げることによって、電力増幅器14の破壊を防ぐことができる。従って、電力増幅器14が破壊・発振などしないような制御電圧を予め反射係数をパラメータとしてデータベース化してこれを参照テーブルとして有し、この参照テーブルに従って制御することによって、アンテナの負荷インピーダンスが変動しても電力増幅器14は破壊しない。
【0025】
つまり本発明では、伝送線路の長さのバラツキの影響を補正することによって、電力増幅器14の出力端での反射係数を高い精度で推測し、さらにその反射係数の値に従って予め用意された参照テーブルをベースにきめ細やかに制御することによって、従来のように無駄に高周波出力電力を低下することなく、電力増幅器14の破壊を防ぐ事が可能となる。
【0026】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2を図2を用いて説明する。
【0027】
図2は高周波加熱器200における主要部分の構成図の一例である。高周波加熱器200は、高周波加熱器100の利得可変増幅器13の入力側に減衰器19を配置し、さらに制御部17からの制御信号が前段増幅部である利得可変増幅器13ではなく、減衰器19に入力する構成となっている。つまり、高周波加熱器200では電力増幅器14への入力レベルを、利得可変増幅器13の出力レベルを調整する代わりに、減衰器19の減推量を制御することによって調整することによって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、減衰器19は利得可変増幅器13の出力側に配置しても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる高周波加熱器は、従来のように高周波出力電力を過剰に低下することなく、電力増幅器の破壊を防ぐ事が可能となるため、高速に食品を過熱する高周波加熱器などの応用に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
10 高周波信号発生部
11 発振器
12 分配器
13 利得可変増幅器
14 電力増幅器
15 伝送線路
16 結合器
17 制御部
18 直交復調器
19 減衰器
20 アンテナ
30 キャビティ
100 高周波加熱器
200 高周波加熱器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから放射する高周波を閉じ込めるキャビティと、高周波の信号を発生する高周波信号発生器を有する高周波加熱器であって、
前記高周波信号発生器は、高周波の信号を発生する発振器と、前記発振器の出力信号を増幅する前段増幅器と、前記前段増幅器の出力信号をさらに増幅する電力増幅器と、前記電力増幅器の出力信号を前記アンテナに伝送する伝送線路と、前記電力増幅器と前記アンテナとの間に、前記電力増幅器からの進行波の一部と、前記アンテナからの反射波の一部と、を取り出す結合部と、前記進行波の位相および振幅と、前記反射波の位相および振幅を測定して反射係数を計算して前記前段増幅器の出力電力を調整する制御部と、を有し、
前記制御部は、反射係数と前記前段増幅器の出力電力を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整する、
ことを特徴とする高周波加熱器。
【請求項2】
前記前段増幅器の入力側もしくは出力側に減衰器と有し、
前記制御部は、反射係数と前記減衰器の減推量を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱器。
【請求項1】
アンテナから放射する高周波を閉じ込めるキャビティと、高周波の信号を発生する高周波信号発生器を有する高周波加熱器であって、
前記高周波信号発生器は、高周波の信号を発生する発振器と、前記発振器の出力信号を増幅する前段増幅器と、前記前段増幅器の出力信号をさらに増幅する電力増幅器と、前記電力増幅器の出力信号を前記アンテナに伝送する伝送線路と、前記電力増幅器と前記アンテナとの間に、前記電力増幅器からの進行波の一部と、前記アンテナからの反射波の一部と、を取り出す結合部と、前記進行波の位相および振幅と、前記反射波の位相および振幅を測定して反射係数を計算して前記前段増幅器の出力電力を調整する制御部と、を有し、
前記制御部は、反射係数と前記前段増幅器の出力電力を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整する、
ことを特徴とする高周波加熱器。
【請求項2】
前記前段増幅器の入力側もしくは出力側に減衰器と有し、
前記制御部は、反射係数と前記減衰器の減推量を調整するための制御パラメータの関係を示す参照テーブルを有しており、測定した前記進行波の位相と予め記録した進行波の基準位相との差を用いて前記反射係数を補正して前記電力増幅器の出力端における反射係数を計算して、前記参照テーブルに従って前記電力増幅器の入力電力を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【公開番号】特開2013−37872(P2013−37872A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172772(P2011−172772)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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