高周波加熱装置
【課題】加熱室内での蒸気の噴射方法を改良し、様々な被加熱物に対して適度に湿潤しながらムラを抑制した加熱を行う装置を提供をする。
【解決手段】加熱室10の左奥底には蒸気発生手段15を、左側壁面には噴射方向を斜め下方向にした噴射口23を配置させ、蒸気発生手段15で発生させた蒸気を噴射口23から被加熱物載置面である載置板12の略中央部をめがけて噴射させる。これにより被加熱物載置面上の自由な位置に載置された被加熱物を蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物周囲の空間はすばやく昇温するとともに被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【解決手段】加熱室10の左奥底には蒸気発生手段15を、左側壁面には噴射方向を斜め下方向にした噴射口23を配置させ、蒸気発生手段15で発生させた蒸気を噴射口23から被加熱物載置面である載置板12の略中央部をめがけて噴射させる。これにより被加熱物載置面上の自由な位置に載置された被加熱物を蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物周囲の空間はすばやく昇温するとともに被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を、蒸気を用いて加熱することもできる高周波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱装置には、飽和水蒸気を加熱室内に噴射する吐出ノズルを備え、この吐出ノズルをフレキシブル管で構成し、伸縮可能な構成として飽和水蒸気を集中的に被加熱物である食品に噴射させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−251478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、複数の被加熱物の同時加熱や、載置面積が大きい被加熱物の加熱には、加熱ムラを生じるという課題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱室内での蒸気の噴射方法を改良し、様々な被加熱物に対して適度な温度条件および湿潤条件を調整しながらムラを抑制した加熱を行う装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために本発明の加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させる構成としている。
【0006】
これにより、専用の加熱部で加熱されて発生した蒸気は、被加熱物の周囲空間を確実にすばやく湿潤し、被加熱物を適度に湿潤させながら均一に加熱させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱装置は、加熱室内に蒸気の強制対流を与えるように蒸気を噴射することで、様々な形状の被加熱物を均一性よく加熱できる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、複数の蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させるようにしたものであり、これにより被加熱物載の形状や数量、大きさなどの形態に応じて被加熱物を蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物周囲空間はすばやく昇温するとともに被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0009】
第2の発明は、複数の蒸気発生部は、飽和蒸気を発生させる飽和蒸気発生部と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部としたものであり、これにより被加熱物載の食品の材料や調理方法に応じて、被加熱物を最適温度の蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0010】
第3の発明は、飽和蒸気発生部は加熱室底面側に、過熱蒸気発生部は加熱室天面側あるいは加熱室側面側上方部に設けたものであり、被加熱物に対して、加熱室底面側からは飽
和蒸気で加熱室全体を加湿熱しながら、過熱蒸気を被加熱物上方側より加熱することが出き、最適な加熱を実現できる。
【0011】
第4の発明は、着脱可能な貯水タンクと、貯水タンクの水を複数の蒸気発生部に供給可能にする送水ポンプと、複数の蒸気発生部への給水流路を切り替える切替手段を備えたものであり、被加熱物に加熱状況に応じて被加熱物周囲の加湿の状態を自動的に切替えられるのはもちろんのこと、蒸気発生部が1ヶ所の場合と同様の使い勝手を実現できる。
【0012】
第5の発明は、加熱室側面に被加熱物載置皿を係止する係止手段を備え、係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部の空間が上下に分割される際に、少なくとも1つ以上の蒸気発生部が上下のそれぞれの空間に蒸気を供給するもので、被加熱物を上下の空間に別々に2つ同時に入れて加熱調理することができる。
【0013】
第6の発明は、加熱室の壁面材を絞り成型することにより係止手段を形成し、係止手段は、被加熱物載置皿を載せて係止する水平部と、その下方の傾斜部からなり、蒸気発生部の噴射口を傾斜部に設けることにより、蒸気の噴射方向が斜め下方になるようにしたものであり、被加熱物を加熱室底面に載置した場合に際に、自然に蒸気が噴出される。また、絞り部下面側壁面に噴出口が見えにくくすることが出きる。
【0014】
第7の発明は、被加熱物載置皿の裏側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を、加熱室の天面に面ヒーターを備えたものであり、マイクロ波を加熱室内に供給することで、被加熱物載置皿に被加熱物を載置したマイクロ波発熱体が発熱される。これによ伝熱およびヒーターの輻射熱、蒸気の凝縮熱などを利用して調理ができる。特に蒸気が被加熱物載置皿に付着した場合でも、マイクロ波発熱体が加熱されることで再蒸気化することもできる。
【0015】
第8の発明は、係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部が上下に分割される際に、すべての蒸気発生部が下側の空間に蒸気を供給する位置に被加熱物載置皿が係止される係止手段を設けたものであり、被加熱物載置皿で仕切られると、加熱室の容積が減少する。これにより蒸気密度が増加させることができるうえ、2箇所から蒸気を供給することで、被加熱物の周囲をすばやく昇温するとともに適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における高周波加熱装置の一部切欠き正面断面構成図、図2は、本実施の形態における被加熱物載置皿の外観を示す斜視図である。
【0018】
図1において、加熱室10は金属材料で形成された各壁面によって電波的に閉じられており、この加熱室10内に被加熱物を収納する被加熱物収納空間11を形成している。被加熱物収納空間11の底面は、被加熱物載置面を非導電性の材料からなる載置板12にて構成している。載置板12の下方にあって、加熱室10を形成する底壁面13の略中央部にマイクロ波を放射する放射アンテナ14を配している。この放射アンテナ14は、マイクロ波を伝送する導波管15の終端側に配置させ、導波管の他端側にはマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段であるマグネトロン16を設けている。
【0019】
また、加熱室10の左奥底には飽和蒸気を発生する第一の蒸気発生手段17を配設している。この蒸気発生手段17は、水溜凹部17a、水溜凹部17aを下方から加熱する水
加熱手段17bおよび水溜凹部17aを覆う開口部を備えた非導電性でかつ耐熱材料で形成された蒸気蓋(図示していない)を備えている。
【0020】
また、加熱室10の左壁面上方側には飽和蒸気もしくは過熱蒸気を発生する第二の蒸気発生手段18を配設している。この蒸気発生手段18はアルミニウムを主材料とするダイキャストヒーターであり、水溜凹部18a、水溜凹部18aを加熱する水加熱手段18bと、水溜凹部で生成した飽和蒸気を加熱する加熱部18cおよび熱交換部18dと、生成した過熱蒸気(加熱部の通電状態によっては飽和蒸気)を加熱室10内に供給する噴射口18eを備えている。
【0021】
また、給水手段19は、加熱室10の下方側に設けられた着脱自在の貯水タンク19a、貯水タンク19aの水を水溜凹部17a或いは水溜凹部18aのいずれかに給水する送水ポンプ19b、切り替え部19cを備える。
【0022】
また、加熱室10の左右壁面20、21には、被加熱物載置皿22を取り付けるため、左右壁面を型絞り(変形)して、作られた係止手段23、24、25が、取り付け高さを選択できるように複数設けられている。さらに、係止手段23(24、25も同様)は、被加熱物載置皿22を載せる水平部23aと水平面を支える傾斜部23bで構成されている(24a、24b、25a、25bも同様)。
【0023】
また、第二の蒸気発生手段18は傾斜部23bに取り付けられており、噴射口18eが加熱室10の中央下方側に向けられるようになっている。噴射口18eは噴射方向を同一に規定したものを複数個(例えば3個)、加熱室10の前後方向に所定間隔で配列させることで加熱室10内全体に蒸気を噴射させることができる。
【0024】
また、放射アンテナ14は、モータ26によって回転駆動される。
【0025】
また、加熱制御を効果的に行うための加熱情報センシング関連の検出手段として被加熱室収納空間内の温度を検出する温度検知手段であるサーミスター27、被加熱物の表面から発する赤外線量を検知して表面温度を判定する赤外線検知センサー手段28、加熱室内の湿度を検出する手段などを付帯させることができる。
【0026】
また、加熱室10天面側29には、加熱ヒーター30が設けられており、天面側29から輻射熱を発生する。
【0027】
また、制御手段31は、操作部(図示していない)からの操作入力信号や各検知手段からの信号に基づき、マイクロ波発生手段であるマグネトロン16やモータ26、蒸気発生手段17、蒸気発生手段18、給水手段19、加熱手段30の動作を制御する。加熱条件、制御条件などは、記憶手段(制御手段と一体)に一時的あるいは恒久的に記憶される。操作部には表示部、自動加熱操作キー、手動加熱設定キー、加熱開始キーなどが配設される。
【0028】
図2において、被加熱物載置皿22は、アルミニウムあるいは鉄を主成分とする表面に撥水処理を施した金属製の皿本体22aと、その底面に備えられたフェライトを主成分とするマイクロ波吸収体である発熱体22bと、壁面材と皿本体22aとの所定隙間を確保して係止手段23、24、25の水平部23a、24a、25aに取り付け可能なように、皿本体22aの長手側に設けられた耐熱樹脂で形成されるガイド22cと、皿本体22a周囲に設けられた略長方形の複数のスリット孔22dを備えている。
【0029】
次に、上記構成からなる加熱装置について、その動作、作用を説明する。
【0030】
図3、図4は、加熱室10内に被加熱物載置皿22を設置した場合の一状態を示すもので、図3は上段に設置した状態、図4は中段に設置した状態を示している。
【0031】
図3に示すように、水平部23aに被加熱物載置皿22を設置すると、加熱室10は加熱室10aと加熱室10bの空間に分離される。これにより載置台12に被加熱物を載せて被加熱物を加熱調理する場合は、加熱室の容積が小さくなる。切り替え手段19cで流路が矢印32のようにした状態で蒸気発生手段17を動作させると、飽和蒸気が加熱室10b内に充満する。蒸気発生手段17で発生する蒸気量が同じ場合は加熱室10内の蒸気密度が大きくなり。飽和蒸気により被加熱物を短時間で最適に加熱することが出来る。
【0032】
また、切り替え手段19cで流路が矢印33のようにした状態で蒸気発生手段18を動作させると、過熱蒸気を加熱室10b内の一部分に集中させて噴射することが出来る。
【0033】
さらに、上記状態のそれぞれでマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、被加熱物が直接加熱されるとともに、発熱体にも吸収され被加熱物載置皿22も加熱される。被加熱物載置皿22の裏側の発熱体22bや載置台12などには、飽和蒸気が付着して結露している場合は、結露して付着した水が直接加熱、或いは伝熱により加熱され、再び蒸気となり、被加熱物の加熱に用いられる。
【0034】
図4に示すように、水平部24aに被加熱物載置皿22を設置すると、加熱室10は加熱室10cと加熱室10dの空間に分離される。また、被加熱物載置皿22の上に載せて被加熱物を加熱調理する場合は、切り替え手段19cで流路が矢印33のようにした状態で蒸気発生手段18を動作させるようにすることで、噴射口18eから直接、蒸気を被加熱物に吹き付けるようになる。この際、加熱部18cの通電動作により噴射する蒸気の温度を可変することが出来、100℃以上の温度とすることも可能で過熱蒸気とすることも出来る。数量の少ない被加熱物を短時間で加熱するのに適している。
【0035】
さらに、この状態でマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、発熱体22bが昇温し、その伝熱により被加熱物が下方から伝熱加熱され、焦げ目をつけることが出来る。この際マイクロ波の大部分は金属製の被加熱物載置皿22で遮蔽され発熱体22bで吸収されることで被加熱物には入り難くなっている。またこの状態の後、加熱手段30を通電することにより、天面29側から輻射熱が被加熱物に与えられ、被加熱物上側に焦げ目をつけることもできる。
【0036】
また、これにより載置台12に被加熱物を載せて被加熱物を加熱調理する場合は、加熱室の容積がさらに小さくなる。切り替え手段19cで流路が矢印32のようにした状態で蒸気発生手段17を動作させると、飽和蒸気が加熱室10b内に早く充満する。
【0037】
さらに、この状態でマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、被加熱物が直接加熱されるとともに、発熱体にも吸収され被加熱物載置皿22も加熱される。
【0038】
さらに、被加熱物載置皿22の上、載置台12の上に別々の被加熱物を置いて、異なる加熱シーケンスで調理を行ない。仕上がりを同時にすることも出来る。
【0039】
なお、これまでの実施の形態においては、蒸気発生部を2有する場合で代表して説明したが、必要に応じて3以上設けてもよい。また、その際には係止手段の数も増やしてよく、場合によっては被加熱物載置皿も複数用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように本発明によれば、複数の蒸気発生装置を備えるとともに、加熱室内の空間を仕切ることで、被加熱物の大きさ、形状など応じて、様々な調理方法が実現できる。オーブンレンジ、オーブンあるいはグリラーはもとより、半導体装置、乾燥装置などの工業分野での加熱装置にも展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1の加熱装置の一部切欠き正面断面構成図
【図2】同装置の被加熱物載置皿の斜視図
【図3】同装置の被加熱物載置皿を上段に設置した場合の正面断面構成図
【図4】同装置の被加熱物載置皿を中段に設置した場合の正面断面構成図
【符号の説明】
【0042】
10 加熱室
16 マグネトロン
17 蒸気発生手段
18 蒸気発生手段
18e 噴射口
19 給水手段
22 被加熱物載置皿
23、24、25 係止手段
23a、24a、25a 水平部
23b、24a、25b 傾斜部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を、蒸気を用いて加熱することもできる高周波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱装置には、飽和水蒸気を加熱室内に噴射する吐出ノズルを備え、この吐出ノズルをフレキシブル管で構成し、伸縮可能な構成として飽和水蒸気を集中的に被加熱物である食品に噴射させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−251478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、複数の被加熱物の同時加熱や、載置面積が大きい被加熱物の加熱には、加熱ムラを生じるという課題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱室内での蒸気の噴射方法を改良し、様々な被加熱物に対して適度な温度条件および湿潤条件を調整しながらムラを抑制した加熱を行う装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために本発明の加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させる構成としている。
【0006】
これにより、専用の加熱部で加熱されて発生した蒸気は、被加熱物の周囲空間を確実にすばやく湿潤し、被加熱物を適度に湿潤させながら均一に加熱させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱装置は、加熱室内に蒸気の強制対流を与えるように蒸気を噴射することで、様々な形状の被加熱物を均一性よく加熱できる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、複数の蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させるようにしたものであり、これにより被加熱物載の形状や数量、大きさなどの形態に応じて被加熱物を蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物周囲空間はすばやく昇温するとともに被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0009】
第2の発明は、複数の蒸気発生部は、飽和蒸気を発生させる飽和蒸気発生部と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部としたものであり、これにより被加熱物載の食品の材料や調理方法に応じて、被加熱物を最適温度の蒸気で確実に包み込むことができ、被加熱物を適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0010】
第3の発明は、飽和蒸気発生部は加熱室底面側に、過熱蒸気発生部は加熱室天面側あるいは加熱室側面側上方部に設けたものであり、被加熱物に対して、加熱室底面側からは飽
和蒸気で加熱室全体を加湿熱しながら、過熱蒸気を被加熱物上方側より加熱することが出き、最適な加熱を実現できる。
【0011】
第4の発明は、着脱可能な貯水タンクと、貯水タンクの水を複数の蒸気発生部に供給可能にする送水ポンプと、複数の蒸気発生部への給水流路を切り替える切替手段を備えたものであり、被加熱物に加熱状況に応じて被加熱物周囲の加湿の状態を自動的に切替えられるのはもちろんのこと、蒸気発生部が1ヶ所の場合と同様の使い勝手を実現できる。
【0012】
第5の発明は、加熱室側面に被加熱物載置皿を係止する係止手段を備え、係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部の空間が上下に分割される際に、少なくとも1つ以上の蒸気発生部が上下のそれぞれの空間に蒸気を供給するもので、被加熱物を上下の空間に別々に2つ同時に入れて加熱調理することができる。
【0013】
第6の発明は、加熱室の壁面材を絞り成型することにより係止手段を形成し、係止手段は、被加熱物載置皿を載せて係止する水平部と、その下方の傾斜部からなり、蒸気発生部の噴射口を傾斜部に設けることにより、蒸気の噴射方向が斜め下方になるようにしたものであり、被加熱物を加熱室底面に載置した場合に際に、自然に蒸気が噴出される。また、絞り部下面側壁面に噴出口が見えにくくすることが出きる。
【0014】
第7の発明は、被加熱物載置皿の裏側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を、加熱室の天面に面ヒーターを備えたものであり、マイクロ波を加熱室内に供給することで、被加熱物載置皿に被加熱物を載置したマイクロ波発熱体が発熱される。これによ伝熱およびヒーターの輻射熱、蒸気の凝縮熱などを利用して調理ができる。特に蒸気が被加熱物載置皿に付着した場合でも、マイクロ波発熱体が加熱されることで再蒸気化することもできる。
【0015】
第8の発明は、係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部が上下に分割される際に、すべての蒸気発生部が下側の空間に蒸気を供給する位置に被加熱物載置皿が係止される係止手段を設けたものであり、被加熱物載置皿で仕切られると、加熱室の容積が減少する。これにより蒸気密度が増加させることができるうえ、2箇所から蒸気を供給することで、被加熱物の周囲をすばやく昇温するとともに適度に湿潤しながら均一に加熱することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における高周波加熱装置の一部切欠き正面断面構成図、図2は、本実施の形態における被加熱物載置皿の外観を示す斜視図である。
【0018】
図1において、加熱室10は金属材料で形成された各壁面によって電波的に閉じられており、この加熱室10内に被加熱物を収納する被加熱物収納空間11を形成している。被加熱物収納空間11の底面は、被加熱物載置面を非導電性の材料からなる載置板12にて構成している。載置板12の下方にあって、加熱室10を形成する底壁面13の略中央部にマイクロ波を放射する放射アンテナ14を配している。この放射アンテナ14は、マイクロ波を伝送する導波管15の終端側に配置させ、導波管の他端側にはマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段であるマグネトロン16を設けている。
【0019】
また、加熱室10の左奥底には飽和蒸気を発生する第一の蒸気発生手段17を配設している。この蒸気発生手段17は、水溜凹部17a、水溜凹部17aを下方から加熱する水
加熱手段17bおよび水溜凹部17aを覆う開口部を備えた非導電性でかつ耐熱材料で形成された蒸気蓋(図示していない)を備えている。
【0020】
また、加熱室10の左壁面上方側には飽和蒸気もしくは過熱蒸気を発生する第二の蒸気発生手段18を配設している。この蒸気発生手段18はアルミニウムを主材料とするダイキャストヒーターであり、水溜凹部18a、水溜凹部18aを加熱する水加熱手段18bと、水溜凹部で生成した飽和蒸気を加熱する加熱部18cおよび熱交換部18dと、生成した過熱蒸気(加熱部の通電状態によっては飽和蒸気)を加熱室10内に供給する噴射口18eを備えている。
【0021】
また、給水手段19は、加熱室10の下方側に設けられた着脱自在の貯水タンク19a、貯水タンク19aの水を水溜凹部17a或いは水溜凹部18aのいずれかに給水する送水ポンプ19b、切り替え部19cを備える。
【0022】
また、加熱室10の左右壁面20、21には、被加熱物載置皿22を取り付けるため、左右壁面を型絞り(変形)して、作られた係止手段23、24、25が、取り付け高さを選択できるように複数設けられている。さらに、係止手段23(24、25も同様)は、被加熱物載置皿22を載せる水平部23aと水平面を支える傾斜部23bで構成されている(24a、24b、25a、25bも同様)。
【0023】
また、第二の蒸気発生手段18は傾斜部23bに取り付けられており、噴射口18eが加熱室10の中央下方側に向けられるようになっている。噴射口18eは噴射方向を同一に規定したものを複数個(例えば3個)、加熱室10の前後方向に所定間隔で配列させることで加熱室10内全体に蒸気を噴射させることができる。
【0024】
また、放射アンテナ14は、モータ26によって回転駆動される。
【0025】
また、加熱制御を効果的に行うための加熱情報センシング関連の検出手段として被加熱室収納空間内の温度を検出する温度検知手段であるサーミスター27、被加熱物の表面から発する赤外線量を検知して表面温度を判定する赤外線検知センサー手段28、加熱室内の湿度を検出する手段などを付帯させることができる。
【0026】
また、加熱室10天面側29には、加熱ヒーター30が設けられており、天面側29から輻射熱を発生する。
【0027】
また、制御手段31は、操作部(図示していない)からの操作入力信号や各検知手段からの信号に基づき、マイクロ波発生手段であるマグネトロン16やモータ26、蒸気発生手段17、蒸気発生手段18、給水手段19、加熱手段30の動作を制御する。加熱条件、制御条件などは、記憶手段(制御手段と一体)に一時的あるいは恒久的に記憶される。操作部には表示部、自動加熱操作キー、手動加熱設定キー、加熱開始キーなどが配設される。
【0028】
図2において、被加熱物載置皿22は、アルミニウムあるいは鉄を主成分とする表面に撥水処理を施した金属製の皿本体22aと、その底面に備えられたフェライトを主成分とするマイクロ波吸収体である発熱体22bと、壁面材と皿本体22aとの所定隙間を確保して係止手段23、24、25の水平部23a、24a、25aに取り付け可能なように、皿本体22aの長手側に設けられた耐熱樹脂で形成されるガイド22cと、皿本体22a周囲に設けられた略長方形の複数のスリット孔22dを備えている。
【0029】
次に、上記構成からなる加熱装置について、その動作、作用を説明する。
【0030】
図3、図4は、加熱室10内に被加熱物載置皿22を設置した場合の一状態を示すもので、図3は上段に設置した状態、図4は中段に設置した状態を示している。
【0031】
図3に示すように、水平部23aに被加熱物載置皿22を設置すると、加熱室10は加熱室10aと加熱室10bの空間に分離される。これにより載置台12に被加熱物を載せて被加熱物を加熱調理する場合は、加熱室の容積が小さくなる。切り替え手段19cで流路が矢印32のようにした状態で蒸気発生手段17を動作させると、飽和蒸気が加熱室10b内に充満する。蒸気発生手段17で発生する蒸気量が同じ場合は加熱室10内の蒸気密度が大きくなり。飽和蒸気により被加熱物を短時間で最適に加熱することが出来る。
【0032】
また、切り替え手段19cで流路が矢印33のようにした状態で蒸気発生手段18を動作させると、過熱蒸気を加熱室10b内の一部分に集中させて噴射することが出来る。
【0033】
さらに、上記状態のそれぞれでマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、被加熱物が直接加熱されるとともに、発熱体にも吸収され被加熱物載置皿22も加熱される。被加熱物載置皿22の裏側の発熱体22bや載置台12などには、飽和蒸気が付着して結露している場合は、結露して付着した水が直接加熱、或いは伝熱により加熱され、再び蒸気となり、被加熱物の加熱に用いられる。
【0034】
図4に示すように、水平部24aに被加熱物載置皿22を設置すると、加熱室10は加熱室10cと加熱室10dの空間に分離される。また、被加熱物載置皿22の上に載せて被加熱物を加熱調理する場合は、切り替え手段19cで流路が矢印33のようにした状態で蒸気発生手段18を動作させるようにすることで、噴射口18eから直接、蒸気を被加熱物に吹き付けるようになる。この際、加熱部18cの通電動作により噴射する蒸気の温度を可変することが出来、100℃以上の温度とすることも可能で過熱蒸気とすることも出来る。数量の少ない被加熱物を短時間で加熱するのに適している。
【0035】
さらに、この状態でマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、発熱体22bが昇温し、その伝熱により被加熱物が下方から伝熱加熱され、焦げ目をつけることが出来る。この際マイクロ波の大部分は金属製の被加熱物載置皿22で遮蔽され発熱体22bで吸収されることで被加熱物には入り難くなっている。またこの状態の後、加熱手段30を通電することにより、天面29側から輻射熱が被加熱物に与えられ、被加熱物上側に焦げ目をつけることもできる。
【0036】
また、これにより載置台12に被加熱物を載せて被加熱物を加熱調理する場合は、加熱室の容積がさらに小さくなる。切り替え手段19cで流路が矢印32のようにした状態で蒸気発生手段17を動作させると、飽和蒸気が加熱室10b内に早く充満する。
【0037】
さらに、この状態でマグネトロン16、モータ26を動作させ、加熱室10内にマイクロ波を供給すると、被加熱物が直接加熱されるとともに、発熱体にも吸収され被加熱物載置皿22も加熱される。
【0038】
さらに、被加熱物載置皿22の上、載置台12の上に別々の被加熱物を置いて、異なる加熱シーケンスで調理を行ない。仕上がりを同時にすることも出来る。
【0039】
なお、これまでの実施の形態においては、蒸気発生部を2有する場合で代表して説明したが、必要に応じて3以上設けてもよい。また、その際には係止手段の数も増やしてよく、場合によっては被加熱物載置皿も複数用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように本発明によれば、複数の蒸気発生装置を備えるとともに、加熱室内の空間を仕切ることで、被加熱物の大きさ、形状など応じて、様々な調理方法が実現できる。オーブンレンジ、オーブンあるいはグリラーはもとより、半導体装置、乾燥装置などの工業分野での加熱装置にも展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1の加熱装置の一部切欠き正面断面構成図
【図2】同装置の被加熱物載置皿の斜視図
【図3】同装置の被加熱物載置皿を上段に設置した場合の正面断面構成図
【図4】同装置の被加熱物載置皿を中段に設置した場合の正面断面構成図
【符号の説明】
【0042】
10 加熱室
16 マグネトロン
17 蒸気発生手段
18 蒸気発生手段
18e 噴射口
19 給水手段
22 被加熱物載置皿
23、24、25 係止手段
23a、24a、25a 水平部
23b、24a、25b 傾斜部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、前記加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、前記複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、前記複数の蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させる高周波加熱装置。
【請求項2】
複数の蒸気発生部は、飽和蒸気を発生させる飽和蒸気発生部と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部とからなる請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
飽和蒸気発生部は加熱室底面側に、過熱蒸気発生部は加熱室天面側あるいは加熱室側面側上方部に設けた請求項1または2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
着脱可能な貯水タンクと、前記貯水タンクの水を複数の蒸気発生部に供給可能にする送水ポンプと、前記複数の蒸気発生部への給水流路を切り替える切替手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
加熱室側面に被加熱物載置皿を係止する係止手段を備え、前記係止手段に前記被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部の空間が上下に分割される際に、少なくとも1つ以上の蒸気発生部が上下のそれぞれの空間に蒸気を供給する請求項1〜4のいずれか1に項記載の高周波加熱装置。
【請求項6】
加熱室の壁面材を絞り成型することにより係止手段を形成し、前記係止手段は、被加熱物載置皿を載せて係止する水平部と、その下方の傾斜部からなり、蒸気発生部の噴射口を前記傾斜部に設けることにより、蒸気の噴射方向が斜め下方になるようにした請求項3〜5のいずれか1に項記載の高周波加熱装置。
【請求項7】
被加熱物載置皿の裏側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を、加熱室の天面に面ヒーターを備えた請求項5または6に記載の高周波加熱装置。
【請求項8】
係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部が上下に分割される際に、すべての蒸気発生部が下側の空間に蒸気を供給する位置に前記被加熱物載置皿が係止される係止手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室に蒸気を供給する複数の蒸気発生部と、前記加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段とを有し、前記複数の蒸気発生部はそれぞれが専用の加熱部を備えるとともに、前記複数の蒸気発生部の少なくとも1つを用いて蒸気を発生させる高周波加熱装置。
【請求項2】
複数の蒸気発生部は、飽和蒸気を発生させる飽和蒸気発生部と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部とからなる請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
飽和蒸気発生部は加熱室底面側に、過熱蒸気発生部は加熱室天面側あるいは加熱室側面側上方部に設けた請求項1または2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
着脱可能な貯水タンクと、前記貯水タンクの水を複数の蒸気発生部に供給可能にする送水ポンプと、前記複数の蒸気発生部への給水流路を切り替える切替手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
加熱室側面に被加熱物載置皿を係止する係止手段を備え、前記係止手段に前記被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部の空間が上下に分割される際に、少なくとも1つ以上の蒸気発生部が上下のそれぞれの空間に蒸気を供給する請求項1〜4のいずれか1に項記載の高周波加熱装置。
【請求項6】
加熱室の壁面材を絞り成型することにより係止手段を形成し、前記係止手段は、被加熱物載置皿を載せて係止する水平部と、その下方の傾斜部からなり、蒸気発生部の噴射口を前記傾斜部に設けることにより、蒸気の噴射方向が斜め下方になるようにした請求項3〜5のいずれか1に項記載の高周波加熱装置。
【請求項7】
被加熱物載置皿の裏側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を、加熱室の天面に面ヒーターを備えた請求項5または6に記載の高周波加熱装置。
【請求項8】
係止手段に被加熱物載置皿を係止することで加熱室内部が上下に分割される際に、すべての蒸気発生部が下側の空間に蒸気を供給する位置に前記被加熱物載置皿が係止される係止手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−278529(P2007−278529A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101739(P2006−101739)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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