説明

高周波加熱調理装置

【課題】マイクロ波を用いた被加熱物内部からの誘電加熱作用と、マイクロ波の照射により発熱する発熱材の伝導熱を用いて被加熱物表面を直接熱加熱する場合に、被加熱物へ誘電加熱を可能な限り低下させ、マイクロ波でほとんど直接加熱だけの加熱を実現する高周波加熱装置を提供する。
【解決手段】フェライトを主成分とする電波吸収体である発熱体27bをその底面に備えるとともに、金属製の被加熱物載置皿27は、加熱室10の左右壁面13、14に設けられたレール部28に係止することで取り付けられる。
アンテナ21の電波放射手段22を右側壁面11に向けた状態でマイクロ波を照射させることで、被加熱物載置皿27の上方側への電波の回り込みを抑制するとともに、効率よく電波吸収体である発熱体27bにマイクロ波を吸収させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波により発熱する被加熱物載置皿を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱調理器としては、マイクロ波を吸収して発熱する発熱層を設けたセラミック製の食品載置皿を用いて加熱調理する際は、予熱工程を設けるとともに、その初めは高出力でマグネトロンを駆動し、後半はマグネトロンの出力を低下させて駆動させることで、食品載置皿の加熱(温度)ムラを抑制するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−106362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の加熱方法では、載置皿がセラミック製であり、マイクロ波が透過する。このため載置皿上の被加熱物にマイクロ波照射され加熱される。つまり、被加熱物へのマイクロ波の照射量を制限することができない。
【0004】
また、載置皿を金属製で形成した場合は、セラミック製の場合と比較して、被加熱物へのマイクロ波の照射量はある程度抑制することができるが、加熱室壁面と載置皿との間には隙間が生じており、その隙間寸法によって、放射アンテナの方向によりマイクロ波の被加熱物へマイクロ波の照射量が変化する。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、金属製で載置皿を形成することで仕切られた加熱室の上方側の空間へはマイクロ波を低減させるとともに、放射アンテナの指向性を利用して加熱室上方側への回り込み量を制御することで、載置皿及び被熱物への加熱エネルギーの割合を可変することで、被加熱物底面に焦げ目をつけたり、内部を加熱したり自在に調整できるようにした高周波加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の高周波加熱調理装置は、マイクロ波の照射により発熱する発熱体を底面に備えた金属製の被加熱物載置皿と、被加熱物載置皿の設置高さを調整可能にする係止手段である複数のレールを側面に有する加熱室と、自らが回転しながら加熱室内底部よりマイクロ波を放射して被加熱物を加熱する放射アンテナと、放射アンテナの回転位置を検出する回転位置検出手段と、回転位置検出手段からの信号に基づいて基準位置で放射アンテナを停止する回転制御手段を有し、所定の指示操作した際には、放射アンテナを基準位置に停止させてマイクロ波を加熱室内に供給するものである。
【0007】
これによって、被加熱物載置皿で仕切られた加熱室上部へマイクロ波の照射量が放射アンテナを回転させた際と比較して安定させることができる。
【発明の効果】
【0008】
所定の指示操作した際に放射アンテナを基準位置に停止させてマイクロ波を加熱室内に供給するようにすることで、載置皿で仕切られた加熱室上部へマイクロ波の照射量が放射アンテナを回転させた際と比較して安定し、被加熱物内部が過加熱になることなく、被加熱物底面側に焦げ目をつけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、マイクロ波の照射により発熱する発熱体を底面に備えた金属製の被加熱物載置皿と、被加熱物載置皿を係止する係止手段を側面に有する加熱室と、自らが回転しながら加熱室内底部よりマイクロ波を放射する放射アンテナと、放射アンテナの回転位置を検出する回転位置検出手段と、回転位置検出手段からの信号に基づいて基準位置で放射アンテナを停止もしくは回転制御する制御手段を有し、所定の指示操作した際には、放射アンテナは基準位置で停止するようにしたものでありる。これにより、被加熱物載置皿で仕切られた加熱室上部へマイクロ波の照射量が放射アンテナを回転させた際と比較して経時変化量が安定する。つまり基準位置が、マイクロ波がもっとも回り込みにくい位置であるように設定した場合は、被加熱物へのマイクロ波の照射量を極端に低減させることができる。
【0010】
第2の発明は、放射アンテナは、両側に高周波伝搬を抑制する折り曲げ部を設けた略扇型とし、折り曲げ部で抑制されない方向にマイクロ波伝搬の指向性を持たせたものである。これにより被加熱物載置皿の上方側への回り込み量を制御しやすくなる。
【0011】
第3の発明は、透視ガラスと電波漏洩防止用パンチング板を有する開閉扉を有し、放射アンテナから放射されるマイクロ波が開閉扉に放射されない回転位置で前記放射アンテナを停止するものである。これにより、加熱室の左右壁面に対して指向性を持ったマイクロ波放射される。つまり、左右壁面には係止手段であるレール部が設けられ、被加熱物載置皿が係止するようになるため隙間は小さくなっているが、開閉扉および背面側は被加熱物載置皿の挿入方向であり、壁面との隙間が大きく設計される。さらに、開閉扉は加熱室内部を確認できるように2重にガラスがはめ込まれる構成となっており、そのガラスの間にパンチング板が供えられている。つまりガラス厚とパンチング板までの距離があり、マイクロ波としては、通過して被加熱物載置皿上方に回り込む空間が形成されていることとなる。開閉扉方向に対して、マイクロ波を照射しないことで、被加熱物載置皿上方へのマイクロ波の回り込みを低減することができる。
【0012】
第4の発明は、放射アンテナを基準位置で停止させた状態で、マイクロ波を加熱室内に所定時間(T1)供給すれば、放射アンテナの停止状態を解除し放射アンテナを回転させるようにしたものである。これにより、放射アンテナを停止すると、定在波ができやすく、結果として強電界領域が形成されるため、短時間で発熱体を高温にすることができ、被加熱物載置皿の温度も高温になりやすいが、急激に温度が上昇し、高温化に伴う不具合も発生しやすくなる。しかし、高温になる前に放射アンテナを回転すると定在波の形状が変化し、一部のみでの高温化が抑制されるようになる。
【0013】
第5の発明は、被加熱物載置皿の温度を検知する温度センサを備え、マイクロ波を供給することで被加熱物載置皿の温度が所定温度(TH1)に到達すれば、放射アンテナの停止状態を解除し放射アンテナを回転させるようにしたものである。これにより、強電界域を出現させ短時間で被加熱物載置皿を高温化するともに一部のみでの高温化に伴う不具合を抑制することとなる。
【0014】
第6の発明は、被加熱物載置皿の温度を検知する温度センサを備え、マイクロ波を供給することで被加熱物載置皿の温度が所定温度(TH2>TH1)に到達すれば、マイクロ波の出力を低下或いは停止するようにしたものである。これにより、急激な高温化に伴う不具合を確実に抑制することとなる。
【0015】
第7の発明は、放射アンテナが所定位置に停止した後、マイクロ波を加熱室に放射するとともに、マイクロ波の発振を停止した後に、放射アンテナが基準位置に停止するようにしたものである。これにより、電波の回り込み量が必ず安定し、被加熱物へ加熱を安定さ
せることができる。また、マイクロ波停止後、放射アンテナ位置を所定の基準位置で停止させることとにしたため。放射アンテナを停止或いは回転させるどちらの場合においも、すぐにマイクロ波を発生させることができる。
【0016】
第8の発明は、加熱室へ蒸気を供給する蒸気発生手段を備え、被加熱物載置皿の周囲に蒸気が通過する開口部を設けたものである。これにより、蒸気を発生させながらマイクロ波を発生させると、空気環境下ではなくスチーム環境下をマイクロ波が進むことになり、波長が短くなり、加熱ムラが減少する。さらに載置皿上方への回り込み量も増加する。つまり蒸気を供給することで、被加熱物への水分を補えるだけでなく、被加熱物へのマイクロ波照射量も可変することとなる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る高周波加熱調理装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1、図2は本発明に係る高周波加熱装置の断面図、図3は図1の上からみた概略構成図である。
【0020】
図1〜図3において、加熱室10は金属材料から構成された金属境界部である右側壁面11、左側壁面12、奥壁面13、上壁面14、底壁面15及び被加熱物を加熱室10内に出し入れする開閉壁面である開閉扉16により略直方体形状に構成され、給電された高周波をその内部に実質的に閉じ込めるように形成している。底壁面15には断面が略四角形の絞り部17を設け、絞り部17の略中央部には加熱室10内に給電する高周波の励振部18を設けている。
【0021】
また、高周波発生手段であるマグネトロン19は加熱室10に給電する高周波を発生し、導波管20はマグネトロン19が発生した高周波を励振部18に導く。励振部18には導波管20内に延在し導波管20を伝送してきた高周波と結合するアンテナ21を設け、このアンテナ21の一端は導波管タイプの指向性を有する放射アンテナとして電波放射手段22と接続している。またアンテナ21の他端は電波放射手段22を回転駆動させる駆動手段であるモータ23の出力軸を挿入組立てしている。
【0022】
電波放射手段22は扇型形状とし、扇型形状の両サイドには折り曲げ部22aを設けその折り曲げ方向への高周波の伝搬を抑制し、折り曲げ部22aのない方向に指向性を持たせて高周波を伝搬させる構成としている。この電波放射手段22はモータ23を駆動することで扇型の上面が絞り部17の底面と略平行面において回転駆動する。
【0023】
また、絞り部17の開口部には電波透過材料、たとえばガラス系やセラミックス系の材料からなる封口手段24を設けている。またモータ23の出力軸の回転位置を識別する回転位置検出手段25及びモータの回転速度を制御する制御手段26を設けている。
【0024】
被加熱物を加熱する際に用いる金属製の被加熱物載置皿27は、載置面が凹凸状に形成された皿本体27aと、その底面に備えられたフェライトを主成分とし、電波吸収体である発熱体27bと、皿本体27aの長手側周囲に設けられた耐熱樹脂で形成されたガイド27cと、皿本体27a周囲に設けられた略長方形の複数の開口部であるスリット孔27dを備えている。
【0025】
また、被加熱物載置皿27は、加熱室10の左右壁面13、14に設けられた係止手段であるレール部28にガイド27cが係止することで取り付けられる。これにより、皿本体27aと壁面13、14とは常に所定寸法の隙間が得られる。さらに、レール部28は、被加熱物載置皿27の設置位置を調整するために異なる高さのレールが設けられている。
【0026】
また、加熱ヒータ29が加熱室10の上方に備えられ、コンベクションヒータユニット30がその後方に設けられている。コンベクションヒータユニット30は加熱室内10の空気を攪拌するファン30aと、ファン30aを回転駆動するモータ30bと、ファン30aの周囲に位置するシーズヒータ30cで構成されている。尚、コンベクションヒータユニット30は加熱室10内の空気を吸排気するパンチング孔(図示せず)を奥壁面13に多数備えている。そして、サーミスタ31により、加熱室10内の温度を検知する。
【0027】
蒸気発生手段32には、水を貯留する給水タンク32aと、給水タンク32aの水を加熱室10内に設けられた水受け皿32bに搬送するポンプ32cと、水受け皿32b内の水を加熱して蒸発させるダイキャストヒータ32dと、ダイキャストヒータ32dの温度を検知するサーミスタ32eと、水受け皿32bの上方に設置されるセラミック製のカバー32fが備えられている。
【0028】
温度センサである赤外線センサ33により、加熱室の右側壁面11の上方に設けた凹部34の孔35を介して被加熱物載置皿27の表面あるいは被加熱物載置皿27を用いない場合は加熱室の底面の表面を温度検出領域としている。赤外線センサ33は、被加熱物載置皿27の全域を温度検出領域とするためのセンサ部駆動手段(図示せず)を備えている。
【0029】
なお、この赤外線センサ29は複数の検出素子(例えば4素子、8素子)で構成し、加熱室10の前後方向に首振りして被加熱物載置皿27の全域を温度検出領域とする構成が望ましいが、単素子構成として左右方向とそれに対する垂直方向の2軸可動とした構成にしても構わない。
【0030】
また、マグネトロン19を駆動するインバータ駆動電源部36、装置全体の動作を制御する制御手段37を備えている。赤外線センサ33が検出した信号は制御手段37に入力させている。制御手段37は、操作部(図示せず)から入力された情報、赤外線センサ29および回転位置識別手段25からの信号に基づいて、インバータ駆動電源部36の動作および電波放射手段22を回転駆動するモータ23の動作を制御して加熱室10内に収納された被加熱物を誘電加熱するなど、上記した構成部品の制御をつかさどっている。
【0031】
次に以上の構成からなる本発明の高周波加熱装置の動作と作用について説明する。
【0032】
加熱室10内に被加熱物を載置した被加熱物載置皿27をレール部28に係止し、開閉扉16を閉めた状態で、所定の指示操作を行うと、制御手段37が動作し、回転位置識別手段25により、アンテナ21の向きが判定され、電波放出手段22の方向が右側壁面11の方向に向いていない場合は、モータ23を動作させ、アンテナ21の電波放出手段22を、右側壁面11の方向である基準位置に停止させる。
【0033】
このようになれば、インバータ駆動電源部36が動作し、マグネトロン19を動作、マイクロ波を発生し、導波管21、励振部18を経て、電波放出手段22から、セラミックなどで形成された封口手段24を通過して加熱室10内部に照射するようになる。この際、右側壁面13の方向に指向性を持たせてマイクロ波を発生させている。
【0034】
このため、発生した電波は被加熱物載置皿27の電波吸収体である発熱体27bに吸収され、自ら発熱することで、皿本体27bを加熱する。これにより、被加熱物に伝熱された熱エネルギで被加熱物底面が加熱されるようになる。
【0035】
ところで、被加熱物載置皿27は、右側壁面13、左側壁面14に設けられたレール部28に皿本体27aがガイド27cを介して係止されているが、奥側壁面13にはレール部28は設けられていないうえに、挿入した際のあたり面となる凸部(図示せず)に接触することで規制され、左右壁面との隙間に対してより大きな隙間が設けられている。
【0036】
さらに、開閉扉16は外側に配置された透視ガラス16aと、加熱室10内に入れた被加熱物の調理状態を確認するためにパンチング孔が設けられ、その周囲に電波シール機構(チョーク)を備えた電波漏洩防止用パンチング板である金属体16bと、内側の透視ガラス16cとからなり、所定の隙間を有するように設けられている。特に内側の透視ガラス16cと金属体16bを接触させて構成させるようにしても、透視ガラス16cの厚み分は必ず電波の通る隙間が形成されることになってしまう。なお、金属体16bはパンチング孔を有すると説明したが、加熱室10の内部が視認でき、かつ電波漏洩を防止する構成であれば、一般的なプレス加工による孔に限らず、金網状の孔で構成されていてもよい。
【0037】
このため、左右方向に対して前後方向のほうが被加熱物載置皿27の周囲を通過する電波量が多くなるが、電波放射手段22により指向性を持たせてマイクロ波を発生させていることで、被加熱物載置皿27の周囲からその上方へ、マイクロ波が回り込み直接被加熱物に照射する量を極力低減させ、電波吸収体である発熱体27bへの電波照射量が多くなるようにしている。
【0038】
この状態を継続され、所定時間(T1)が経過すると、モータ23が回転し、アンテナ21が回転するようになる。これにより、定在波の分布が変化し、電波吸収体である発熱体27bへのマイクロ波の電界分布が変化する。これにより、被加熱物載置皿27周囲から上方側へ回りこむマイクロ波の量が増加し、内部及び外部から効率よく加熱されるようになる。この際、制御手段26により回転数を変化させることで、電界分布を均一にすることもできる。
【0039】
その後、被加熱物の温度検知手段である赤外線センサ33が被加熱物の温度が所定温度になったことを検知するとマグネトロン19の動作が停止され、加熱ヒータ29を動作させ、輻射熱により被加熱物の上方側を加熱する。この際、マグネトロンの動作が停止すると、右側壁面11に対して指向性を持たせるようにして停止するようにプログラムされている。
【0040】
またあるタイミングで、蒸気発生手段32を動作させるようにプログラムしておくと、給水タンク32aの水がポンプ32cにより、水受け皿32bに供給され、ダイキャストヒータ32dで加熱されて蒸気が発生するようになる。発生した蒸気はカバー32fの孔より発生し加熱室10内に供給される。この際、被加熱物載置皿27が上方に設置されているが、その周囲に設けられたスリット孔よ通過して加熱室上方に流れ込む。この際、被加熱物の温度が低ければより被加熱物表面に結露し、その凝縮熱が被加熱物に作用する。ダイキャストヒータの通電により、水受け皿の水量は減少するが、水量が減少するとダイキャストヒータ自身も昇温する。このようになれば、ポンプ32cを動作させ給水動作を行う。この動作を行うことで蒸気を被加熱物に作用させることができる。
【0041】
尚、本実施例において、電波放射手段22の方向を右側壁面11に対して指向性を持たせるようにしているが、略左右対称の形状であれば、左側壁面12に対して指向性を持た
せるようにしてもよい。
【0042】
また、被加熱物の温度を温度検知センサで検知してマイクロ波を停止させるようにしたが、時間により制御することも可能である。
【0043】
図4は被加熱物として水200ccを入れた樹脂容器を載置した被加熱物載置皿27をレール部28に係止し、電波放射手段22を右側壁面11側に指向性を持たせてマグネトロン19を駆動した場合の、載置皿上方側へのマイクロ波の回り込み量(水温)を示すものである。Aは電波放射手段22の扇型形状のひろがり方向が開閉扉16の方向に停止、Bは右側壁面12方向に停止、Cはアンテナを回転させた状態を示す。図の縦軸は電波放射手段の扇型形状のひろがり方向が開閉扉16の方向に停止した場合を1としている。
【0044】
同図より、開閉扉16とは直行する方向に扇型形状のひろがり方向を向けることで、載置皿上に載せた被加熱物へのマイクロ波の照射量を低減することができる。
【0045】
また、我々の確認で載置皿の温度は、開閉扉16とは直行する方向に扇型形状のひろがりを持たせた場合がそのほかと比較して上昇速度が小さい傾向にあることを確認している。
【0046】
次に、被加熱物載置皿27をあらかじめ加熱して利用する場合の予熱動作について記載する。
【0047】
加熱室10内に被加熱物を載置しない状態で、被加熱物載置皿27をレール部28に係止し、開閉扉16を閉めた状態で、所定の操作を行うと、上記したように、アンテナ21の向きが判定され、電波放出手段22の方向を右側壁面11の方向になり、マイクロ波が加熱室10内に供給される。発生したマイクロ波は、被加熱物載置皿27の電波吸収体である発熱体27bに吸収され、自ら発熱することで、皿本体27bを加熱する。
【0048】
被加熱物載置皿27は、温度検知手段である赤外線センサ33により温度検知しており、所定温度(TH1)以上になれば、モータ23が回転し、アンテナ21が回転するようになる。これにより、定在波の分布が変化し、電波吸収体である発熱体27bへのマイクロ波の電界分布が変化し、急激な部分温度上昇を避けることとなる。
【0049】
さらに、所定温度(TH2>TH1)以上になれば、インバータ駆動電源部36により、マグネトロンの動作出力を低下させ、加熱室10内に供給されるマイクロ波の量を減少させる。このようになると、電波吸収体での発熱量が減少する。さらに皿本体27bから放熱する熱エネルギーは皿温度に起因するためほぼ同一であり、皿本体27bの温度上昇が鈍るとともに、皿本体27内部での伝熱により、皿本体27bの温度が均一になる。
【0050】
これにより、被加熱物載置皿27の異常発熱を防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように本発明にかかる高周波加熱装置は、発熱体を有する金属製の載置皿の下方側からマイクロ波を照射することで載置皿を加熱して、被加熱物を熱伝導により加熱するとともに、放射アンテナに指向性を持たせ、その指向性を活かすことで、載置皿の上方側へのマイクロ波の照射量(回り込み量)を制御することができる。単なる調理分野のみでなく、被加熱物の乾燥や焼成などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波加熱装置の正面断面構成図
【図2】同装置の横断面構成図
【図3】同装置の上方からみた概略構成図
【図4】同装置の被加熱物載置皿上方への電波回り込み量を示す図
【符号の説明】
【0053】
10 加熱室
16 開閉扉
16a、16c 透視ガラス
16b 金属体(電波漏洩防止用パンチング板)
22 電波放射手段(放射アンテナ)
22a 折り曲げ部
25 回転位置検出手段
26 制御手段
27 被加熱物載置皿
27b 発熱体
27d スリット孔(開口部)
28 レール部(係止手段)
32 蒸気発生手段
33 赤外線センサ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の照射により発熱する発熱体を底面に備えた金属製の被加熱物載置皿と、前記被加熱物載置皿を係止する係止手段を側面に有する加熱室と、自らが回転しながら加熱室内底部よりマイクロ波を放射する放射アンテナと、前記放射アンテナの回転位置を検出する回転位置検出手段と、前記回転位置検出手段からの信号に基づいて基準位置で前記放射アンテナを停止もしくは回転制御する制御手段を有し、所定の指示操作をした際には、前記放射アンテナは基準位置で停止するようにした高周波加熱装置。
【請求項2】
放射アンテナは、両側にマイクロ波伝搬を抑制する折り曲げ部を設けた略扇型とし、前記折り曲げ部で抑制されない方向に高周波伝搬の指向性を持たせた請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
透視ガラスと電波漏洩防止用パンチンチング板を有する開閉扉を有し、放射アンテナから放射されるマイクロ波が前記開閉扉に放射されない回転位置で前記放射アンテナを停止する請求項1または2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
放射アンテナを基準位置で停止させた状態で、マイクロ波を加熱室内に所定時間(T1)供給すれば、放射アンテナの停止状態を解除し放射アンテナを回転させるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
被加熱物載置皿の温度を検知する温度センサを備え、マイクロ波を供給することで被加熱物載置皿の温度が所定温度(TH1)に到達すれば、放射アンテナの停止状態を解除し放射アンテナを回転させるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項6】
被加熱物載置皿の温度を検知する温度センサを備え、マイクロ波を供給することで被加熱物載置皿の温度が所定温度(TH2>TH1)に到達すれば、マイクロ波の出力を低下或いは停止するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項7】
放射アンテナが所定位置に停止した後、マイクロ波を加熱室に放射するとともに、マイクロ波の発振を停止した後に、前記放射アンテナが基準位置に停止するようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項8】
加熱室へ蒸気を供給する蒸気発生手段を備え、被加熱物載置皿の周囲に蒸気が通過する開口部を設けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−139245(P2007−139245A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331050(P2005−331050)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】