高周波発振器
【課題】 位相雑音を劣化させずに2倍波の出力電力を増加できる高周波発振器を得る。
【解決手段】 第1から第3の端子を有する能動素子と、前記第1と第2の端子にそれぞれ接続され、所要の周波数において誘導性となる第1と第2のリアクタンス回路と、前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性となる第3のリアクタンス回路と、前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、を備える。
【解決手段】 第1から第3の端子を有する能動素子と、前記第1と第2の端子にそれぞれ接続され、所要の周波数において誘導性となる第1と第2のリアクタンス回路と、前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性となる第3のリアクタンス回路と、前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にマイクロ波やミリ波領域で動作する高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波発振器には、例えば非特許文献1に示されるように、第1の直列共振回路と第2の直列共振回路を並列接続した並列共振回路と、並列共振回路と発振出力端子の間に挿入されて負性抵抗を有する能動素子とを備えたものがある。第1の直列共振回路は直列に接続されたインダクタとキャパシタにより構成され、第2の直列共振回路は直列に接続されたインダクタ、キャパシタおよびバラクタダイオードにより構成される。このバラクタダイオードに印加されるDC電圧の大きさを変えると、これに応じてバラクタダイオードの静電容量が変化し、第2の直列共振回路の直列共振周波数を可変できる。
【0003】
第1の直列共振回路の直列共振周波数を発振周波数よりも高く設定し、第2の直列共振回路の直列共振周波数を発振周波数よりも低く設定して、並列共振回路の並列共振周波数が発振周波数となるようにする。これにより、発振周波数近傍での並列共振回路の反射位相の傾きを、2つの直列共振周波数の差に応じて大きな傾きとすることができる。したがって発振周波数近傍での並列共振回路の外部Qを増大させることができ、低位相雑音の出力を得ることができる。
【0004】
また、特にミリ波帯などの高い周波数では、能動素子の性能が低下するなどの理由から、直接基本波発振により所望波を得る構成よりも、高調波を取り出す構成の方が低位相雑音化に有利である場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川上 他、「低位相雑音発振器に用いる2周波共振回路のQ値解析」、電子情報通信学会、信学技報、MW2006―117、2006年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の高周波発振器は以上のように構成されており、共振器の外部Qを高めることおよび高調波を取り出す構成とすることで低位相雑音の高周波出力を得ることができる。しかしながら、高調波の出力電力は基本波の出力電力に比べて低く、発振出力端子から取り出される2倍波出力電力は低くなる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、位相雑音特性を劣化させずに2倍波等の出力電力が増大する高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る高周波発振器は、
第1の端子、第2の端子、および第3の端子を有する能動素子と、
前記能動素子の前記第1の端子に接続され、所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第1のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第2の端子に接続され、前記所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第2のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性のインピーダンスとなる第3のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、
を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、位相雑音特性を劣化させずに2倍波の出力電力を増加することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波発振器を示す回路図である。
【図2】直列帰還型発振器を示す等価回路図である。
【図3】この発明の実施の形態2による高周波発振器の動作を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3による高周波発振器を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態3による可変リアクタンス回路の構成例を示す回路図である。
【図8】並列接続したショートスタブと可変リアクタンス回路の反射位相の周波数特性の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4による高周波発振器を示す回路図である。
【図10】並列接続した可変リアクタンス回路の反射位相の周波数特性の説明図である。
【図11】この発明の実施の形態5による高周波発振器を示す回路図である。
【図12】この発明の実施の形態5による直列共振回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高周波発振器を示す回路構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図1において、1は能動素子であるバイポーラトランジスタ、2は第3のリアクタンス回路であるキャパシタ、3は第1のリアクタンス回路であるインダクタ、4は第2のリアクタンス回路であるインダクタ、7は第5のリアクタンス回路であるショートスタブ、8は第4のリアクタンス回路であるオープンスタブである。
【0012】
次に動作について説明する。
図1において、能動素子であるバイポーラトランジスタ1の第1の端子であるコレクタ端子(C)には、誘導性のインピーダンスを有するインダクタ3が接続されている。バイポーラトランジスタ1の第2の端子であるベース端子(B)には、誘導性のインピーダンスを有するインダクタ4が接続されている。そして、バイポーラトランジスタ1の第3の端子であるエミッタ端子(E)には、容量性のインピーダンスを有するキャパシタ2が接続されている。このため、図1に示す高周波発振器は、直列帰還型発振器の構成を有しており、周波数f0の基本波発振周波数で発振する。このとき、主にバイポーラトランジスタ1の非線形特性により、発振器の出力周波数には、基本波発振周波数f0の高調波であるmf0(mは2以上の整数)の周波数成分も含まれている。
【0013】
図1の高周波発振器では、このうち発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数を取り出す構成としている。
【0014】
ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さは、発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。ここで、λは当該周波数における、ショートスタブ7およびオープンスタブ8を伝搬する2倍高周波の波長である。
【0015】
図2は図1に示した直列帰還型発振器の等価回路である。図1のバイポーラトランジスタ1は、電圧制御電流源5とベース・エミッタ間キャパシタ6とに置き換えることができる。バイポーラトランジスタ1のベース端子に印加される電圧は、図2のベース・エミッタ間キャパシタ6とキャパシタ2に分圧される。このため、キャパシタ2のインピーダンスが小さいほど、ベース・エミッタ間キャパシタ6に印加されるベース・エミッタ間電圧Vbeは大きくなる。電圧制御電流源5を流れる電流はベース・エミッタ間電圧Vbeに比例するので、Vbeが大きくなるほど、コレクタ端子から出力される電力は大きくなる。このことは、基本波周波数f0、高調波周波数mf0、それぞれについて成り立っている。
【0016】
図1のオープンスタブ8の長さは、発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。したがって、周波数2f0において、エミッタ端子との接続点におけるオープンスタブ8のインピーダンスはショートになる。このため、周波数2f0において、図2のキャパシタ2(静電容量Ce)は短絡されたように見え、バイポーラトランジスタ1のベース端子に印加される電圧は、ほとんどベース・エミッタ間キャパシタ6のみに印加される。したがって、キャパシタ2が短絡されない場合に比べてVbeが大きくなり、コレクタ端子から出力される周波数2f0の電力は大きくなる。
【0017】
エミッタ端子からキャパシタ2(静電容量Ce)側を見たアドミタンスYinは次式で表される。
【0018】
【数1】
【0019】
式(1)において、fは周波数、Z0はショートスタブ7およびオープンスタブ8の特性インピーダンスである。この式において、右辺第一項はキャパシタ2のアドミタンス、第二項はショートスタブ7のアドミタンス、第三項はオープンスタブ8のアドミタンスを、それぞれ表している。ショートスタブ7およびオープンスタブ8は無損失と仮定しているが、損失があったとしても式(1)は近似的に成り立つ。
【0020】
発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、式(1)は右辺第三項が発散する。すなわち、上述したように、アドミタンスYinは無限大になり、回路はショートとなる。
【0021】
一方、基本波の周波数である周波数f0について考えてみる。
周波数f0では、式(1)の右辺第二項のショートスタブ7のアドミタンスと第三項のオープンスタブ8のアドミタンスは打ち消しあう。これは、ショートスタブ7のアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)とオープンスタブ8のアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)が、絶対値は等しく、符号が正負逆になるためである。したがって、式(1)の右辺は第一項のキャパシタ2のアドミタンスのみが残り、ショートスタブ7およびオープンスタブ8のアドミタンスは見えなくなる。すなわち、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子の位置で並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7は、基本波の発振条件には影響を与えない。
【0022】
さらに、基本波発振周波数f0において、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子から見た反射特性は、キャパシタ2のアドミタンスによる反射特性の位相特性に加え、並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7のアドミタンスによる反射特性の位相特性が加え合わされた位相特性を有するものとなる。このため、周波数f0においてYinによる反射特性の位相特性は周波数の変化に対して急峻になる。このことにより、高周波発振器の発振器内のループ位相は周波数の変化に対して傾きが大きくなる。発振器内のループ位相の傾きが大きいほど、周波数選択性が強くなり、発振出力信号の位相雑音特性が向上する。このため、並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7により位相雑音特性が向上し、あるいは位相雑音特性の劣化が抑えられる。
【0023】
以上のように、この発明の実施の形態1による高周波発振器によれば、位相雑音特性を劣化させずに2倍波出力電力が増大するという効果がある。
【0024】
なお、本実施の形態では、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さを、2f0の周波数において、共にλ/4になるようにしたが、本発明はこれに限らず、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さを、2f0の周波数において、共に(2n+1)λ/4になるようにしてもよい。ここでnは0以上の整数である。この場合も、ショートスタブ7とオープンスタブ8を並列接続した回路のアドミタンスは周波数2f0では発散し、周波数f0では0となる。このため、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0025】
さらに、第4のリアクタンス回路を、オープンスタブ8の代わりに、周波数2f0においてアドミタンスが発散する任意のリアクタンス回路とし、第5のリアクタンス回路を、ショートスタブ7の代わりに、周波数f0においてアドミタンスが第4のリアクタンス回路と絶対値が等しく符号が逆になる任意のリアクタンス回路とすることもできる。このときも、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路との並列回路は、周波数2f0においてアドミタンスが発散し、周波数f0においてアドミタンスが0となるため、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0026】
なお、インピーダンスやアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)がオープンやショートになり、あるいは発散や0になること、また、絶対値が等しく符号が正負逆になることでアドミタンス等が打ち消しあうこと、リアクタンス回路の抵抗成分(コンダクタンス成分)が0であること、スタブ等の長さがλ/4等になること、等々の諸条件は、接続される回路のインピーダンス等の値から考えて十分に想定値に近い値と言えるものであればよく、当然に許容範囲を有するものである。したがって、この許容範囲内にインピーダンス等やスタブ長等が設定されればよく、本実施の形態と同様の効果が得られるものである。
【0027】
また、上記実施例では能動素子としてバイポーラトランジスタ1を使用したが、能動素子として電界効果トランジスタ(FET)を使用しても良い。このときは、図1において、能動素子の第1の端子をドレイン端子に、第2の端子をゲート端子に、第3の端子をソース端子に、それぞれ置き換えればよい。このときも、図2の等価回路で表されるような直列帰還型発振器を同様に構成することができるので、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0028】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1、図2と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図3において、9は第1のリアクタンス回路である反射回路、10は第2のリアクタンス回路である共振回路である。
【0029】
図3において、反射回路9は基本波発振周波数f0において誘導性のインピーダンスを有している。また、共振回路10は基本波発振周波数f0の近傍に共振周波数を有しているが、基本波発振周波数f0においては誘導性のインピーダンスを有している。したがって、図3の高周波発振器も、図1と同様に直列帰還型発振器の構成を有しており、基本波発振周波数f0において基本波発振する。
【0030】
実施の形態1と同様に、図3において、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さは、基本波発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。したがって、図3の高周波発振器では、実施の形態1と同様に、位相雑音特性を劣化させずに2倍波出力電力を増大することができるという効果が得られる。
【0031】
図4は、図3に示した高周波発振器の反射回路9と共振回路10を、それぞれ伝送線路11b、11cで構成し、第3のリアクタンス回路であるキャパシタ2を伝送線路11aで構成した回路図である。また、図5は、能動素子であるバイポーラトランジスタ1のコレクタ端子と反射回路9である伝送線路11bの間に、さらに伝送線路11dを備えたものである。
【0032】
このように実施の形態2では、第1、第2、および第3のリアクタンス回路をそれぞれ伝送線路で構成できるので、小型に構成できるとともに、実装性に優れるという効果がある。また、第2のリアクタンス回路が共振回路10として動作するので、高周波発振器の発振器内のループ位相が、周波数の変化に対して急峻になり周波数選択性が強くなる。このため、発振ループのQ値が高くなり、発振出力信号の位相雑音特性が向上するという効果がある。なお、第1、第2、および第3のリアクタンス回路を必ずしも全て伝送線路で構成する必要はない。また、本実施の形態では、第2のリアクタンス回路を共振回路10としているが、第1、および第3のリアクタンス回路に共振回路を用いることもでき、この場合も位相雑音特性が向上させることができる。
【0033】
さらに、図5に示したようにバイポーラトランジスタ1のコレクタ端子と反射回路9である伝送線路11bの間に、さらに伝送線路11dを備えたとき、高周波発振器の発振器内のループ位相を調整することができ、発振条件を調整することができるとともに、所要の周波数において発振させることができるという効果がある。
【0034】
なお、反射回路9である伝送線路11bは、基本波発振周波数f0において、ほぼλ/4の長さを有するオープンスタブで構成してもよい。このオープンスタブは基本波発振周波数f0の近傍で共振する共振回路としても動作するため、発振ループのQ値を高くすることができる。また、伝送線路11aも特性インピーダンスや線路長を適当な値とすることにより基本波発振周波数f0の近傍で共振する共振回路とすることができ、やはり発振ループのQ値を高くすることができる。また、第1から第3のリアクタンス回路は、可変リアクタンス素子を含んでもよい。このとき可変リアクタンス素子のリアクタンスを変化することにより、周波数による発振条件を変化させることができ、高周波発振器の発振周波数を可変とすることができる。
【0035】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図5と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図6において、12は第4のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路である。
【0036】
図6の高周波発振器は、反射回路9または共振回路10等の少なくとも一部を、可変リアクタンス素子を含む回路で構成しており、発振周波数を可変できる可変周波数発振器としている。
【0037】
また、図6の高周波発振器では、第4のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路12を用いている。可変リアクタンス回路12の具体的な回路は、図7に示すような回路を用いることができる。
【0038】
図7(a)から(e)は、可変リアクタンス回路12の具体的な回路構成の一例を示した図であり、図中、20a、b、c、d、eは伝送線路、21a、bは結合線路、22a、b、c、d、eは可変容量ダイオード、23は入力端子である。ここに示した結合線路21a、bは、2つの伝送線路を近接して配置した構成としたものである。可変容量ダイオード22a〜22eは静電容量を可変してリアクタンスを可変することができる可変リアクタンス素子である。
【0039】
図7(a)では、伝送線路20aに接続した可変容量ダイオード22aに図示していないバイアス端子から直流電圧を印加し、この印加する電圧を変化させることで、可変容量ダイオード22aの静電容量を変化させ、可変容量ダイオード22aのリアクタンスを可変としている。これにより、入力端子23から見た回路のリアクタンスを変化させることができる。したがって、この入力端子23を図6のエミッタ端子との接続点として、可変リアクタンス回路12を構成すればよい。また、図7(b)や(c)に示すように、伝送線路20aは結合線路21a、21bとしてもよい。また、図7(d)や(e)に示すように可変容量ダイオード22d、eを伝送線路20b、c、d、eの間に接続する構成としてもよい。なお、可変リアクタンス回路12に図7(a)から(e)に示した回路以外のもの、例えば集中定数素子のみを用いた回路等を用いてもよい。
【0040】
図8は並列接続したショートスタブ7と可変リアクタンス回路12の反射位相を示す。反射位相が0°のとき、回路のインピーダンス(アドミタンス)はオープンであることを表している。また、反射位相が180°(あるいは−180°)のとき、回路のインピーダンス(アドミタンス)はショートであることを表している。
【0041】
図8(a)において基本波発振周波数がf0であるとき、2倍波周波数2f0では反射位相が180°となり、インピーダンスはショートになる。
いま、図6に示す高周波発振器の発振周波数を変化させ、基本波発振周波数をf0から図8に示すf1に変化したとする。このとき図8(a)のように、2倍波周波数2f1において反射位相はもはや180°とならず、インピーダンスはショートにならない。しかし、図6に示す高周波発振器では、第4のリアクタンス回路に可変リアクタンス回路12を用いている。このため、このリアクタンスを変化させ、図8(b)に示すように周波数2f1において反射位相を180°とすることができ、インピーダンスをショートにすることができる。このとき、基本波発振周波数f1では反射位相は概略0°となり、インピーダンスが概略オープンとなる。したがって、基本波の発振条件に与える影響は少ないまま、発振周波数を変化させても2倍波を高出力化することができる。
【0042】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図6と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図9において、13は第5のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路である。
【0043】
図9の高周波発振器は、反射回路9または共振回路10等の少なくとも一部を、可変リアクタンス素子を含む回路で構成しており、発振周波数を可変できる可変周波数発振器としている。
【0044】
また、図9の高周波発振器では、第4のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路12を用い、さらに第5のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路13を用いている。また、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列に接続している。可変リアクタンス回路13の具体的な回路は、図7に示したような回路を用いることができる。
【0045】
図10は並列接続した可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の反射位相を示す。実施の形態3ではショートスタブ7と可変リアクタンス回路12を用いていた。このため、基本波発振周波数をf0にからf1に変化させたとき、可変リアクタンス回路12のリアクタンスを調整することにより、図8(b)や図10の点線に示すように、周波数2f1においてはインピーダンスをショートとすることができるが、周波数f1においてはインピーダンスを正確にオープンとすることはできなかった。
【0046】
図9の構成では可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列接続していることにより、発振周波数を変化した場合、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の両方のリアクタンスを調整することができる。このため、図10の実線に示すように、周波数2f1においてインピーダンスを正確にショートとしたうえで、さらに周波数f1においてもインピーダンスを正確にオープンとすることができる。したがって、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列に接続することで、基本波の発振条件に与える影響はより少なくでき、発振周波数の変化に追従して2倍波を高出力化することができる。可変リアクタンス回路12、13は例えば、図7に示す可変リアクタンス素子を含む回路とすればよいし、他の回路を用いることもできる。
【0047】
実施の形態5.
図11はこの発明の実施の形態5による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図9と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図11において、14は直列共振回路である。
【0048】
図11に示す実施の形態5による高周波発振器は、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子と、並列接続した可変リアクタンス回路12、可変リアクタンス回路13の接続部との間に、共振周波数が2倍の発振周波数と等しい直列共振回路14を直列に接続した構成である。
【0049】
高周波発振器の基本波発振周波数をf0とすると、2倍波周波数2f0では可変リアクタンス回路12がショートとなるよう調節されているため、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の接続部のインピーダンスはやはりショートになっている。また、直列共振回路14は2倍波周波数2f0で共振周波数となるよう設定されている。このため、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子から共振回路14側を見たインピーダンスも2倍波周波数2f0でショートになる。したがって、2倍波を高出力化することができる。
【0050】
一方で、並列接続した可変リアクタンス回路12、可変リアクタンス回路13のインピーダンスは基本波発振周波数f0ではオープンになっている。したがって、直列共振回路14を直列に接続しても、インピーダンスの変化は少なく、基本波の発振条件に与える影響は少ない。
【0051】
図12(a)から(c)は、直列共振回路14の具体的な回路構成の一例を示したものであり、図中、15はインダクタ、16はキャパシタ、17は伝送線路、18は可変容量ダイオードである。直列共振回路14は例えば図12(a)〜(c)に示すようにインダクタ15とキャパシタ16が直列に接続された構成であり、キャパシタ16の代わりに伝送線路17または可変容量ダイオード18を用いてもよい。
【0052】
インダクタ15は能動素子であるバイポーラトランジスタ1の寄生インダクタを含んだものでもよい。特に、能動素子の第3の端子であるエミッタ端子に寄生インダクタが含まれる場合、第4のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路12を2倍波周波数2f0でショートにしても、エミッタ端子から見たインピーダンスは寄生インダクタによって正確にはショートにならない。しかし、直列共振回路14のインダクタ15をエミッタ端子の寄生インダクタを含んだものとすることにより、エミッタ端子から見たインピーダンスを2倍波周波数2f0で正確にショートにすることができ、2倍波出力をさらに高出力化できるという効果が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態において、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路を、それぞれ、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13で構成したが、これに限らず、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路の片方、もしくは両方を、リアクタンスの値が固定されたリアクタンス回路としても良い。また反射回路9、共振回路10は他のリアクタンス回路で構成しても良い。これらの場合でも本実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1 バイポーラトランジスタ、2 キャパシタ、3、4 インダクタ、5 電圧制御電流源、6 ベース−エミッタ間キャパシタ、7 ショートスタブ、8 オープンスタブ、9 反射回路、10 共振回路、11a〜11d 伝送線路、12 可変リアクタンス回路、13 可変リアクタンス回路、14 直列共振回路、15 インダクタ、16 キャパシタ、17 伝送線路、18 可変容量ダイオード、20a〜20e 伝送線路、21a、21b 結合線路、22a〜22e 可変容量ダイオード、23 入力端子
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にマイクロ波やミリ波領域で動作する高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波発振器には、例えば非特許文献1に示されるように、第1の直列共振回路と第2の直列共振回路を並列接続した並列共振回路と、並列共振回路と発振出力端子の間に挿入されて負性抵抗を有する能動素子とを備えたものがある。第1の直列共振回路は直列に接続されたインダクタとキャパシタにより構成され、第2の直列共振回路は直列に接続されたインダクタ、キャパシタおよびバラクタダイオードにより構成される。このバラクタダイオードに印加されるDC電圧の大きさを変えると、これに応じてバラクタダイオードの静電容量が変化し、第2の直列共振回路の直列共振周波数を可変できる。
【0003】
第1の直列共振回路の直列共振周波数を発振周波数よりも高く設定し、第2の直列共振回路の直列共振周波数を発振周波数よりも低く設定して、並列共振回路の並列共振周波数が発振周波数となるようにする。これにより、発振周波数近傍での並列共振回路の反射位相の傾きを、2つの直列共振周波数の差に応じて大きな傾きとすることができる。したがって発振周波数近傍での並列共振回路の外部Qを増大させることができ、低位相雑音の出力を得ることができる。
【0004】
また、特にミリ波帯などの高い周波数では、能動素子の性能が低下するなどの理由から、直接基本波発振により所望波を得る構成よりも、高調波を取り出す構成の方が低位相雑音化に有利である場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川上 他、「低位相雑音発振器に用いる2周波共振回路のQ値解析」、電子情報通信学会、信学技報、MW2006―117、2006年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の高周波発振器は以上のように構成されており、共振器の外部Qを高めることおよび高調波を取り出す構成とすることで低位相雑音の高周波出力を得ることができる。しかしながら、高調波の出力電力は基本波の出力電力に比べて低く、発振出力端子から取り出される2倍波出力電力は低くなる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、位相雑音特性を劣化させずに2倍波等の出力電力が増大する高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る高周波発振器は、
第1の端子、第2の端子、および第3の端子を有する能動素子と、
前記能動素子の前記第1の端子に接続され、所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第1のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第2の端子に接続され、前記所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第2のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性のインピーダンスとなる第3のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、
を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、位相雑音特性を劣化させずに2倍波の出力電力を増加することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波発振器を示す回路図である。
【図2】直列帰還型発振器を示す等価回路図である。
【図3】この発明の実施の形態2による高周波発振器の動作を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3による高周波発振器を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態3による可変リアクタンス回路の構成例を示す回路図である。
【図8】並列接続したショートスタブと可変リアクタンス回路の反射位相の周波数特性の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4による高周波発振器を示す回路図である。
【図10】並列接続した可変リアクタンス回路の反射位相の周波数特性の説明図である。
【図11】この発明の実施の形態5による高周波発振器を示す回路図である。
【図12】この発明の実施の形態5による直列共振回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高周波発振器を示す回路構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図1において、1は能動素子であるバイポーラトランジスタ、2は第3のリアクタンス回路であるキャパシタ、3は第1のリアクタンス回路であるインダクタ、4は第2のリアクタンス回路であるインダクタ、7は第5のリアクタンス回路であるショートスタブ、8は第4のリアクタンス回路であるオープンスタブである。
【0012】
次に動作について説明する。
図1において、能動素子であるバイポーラトランジスタ1の第1の端子であるコレクタ端子(C)には、誘導性のインピーダンスを有するインダクタ3が接続されている。バイポーラトランジスタ1の第2の端子であるベース端子(B)には、誘導性のインピーダンスを有するインダクタ4が接続されている。そして、バイポーラトランジスタ1の第3の端子であるエミッタ端子(E)には、容量性のインピーダンスを有するキャパシタ2が接続されている。このため、図1に示す高周波発振器は、直列帰還型発振器の構成を有しており、周波数f0の基本波発振周波数で発振する。このとき、主にバイポーラトランジスタ1の非線形特性により、発振器の出力周波数には、基本波発振周波数f0の高調波であるmf0(mは2以上の整数)の周波数成分も含まれている。
【0013】
図1の高周波発振器では、このうち発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数を取り出す構成としている。
【0014】
ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さは、発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。ここで、λは当該周波数における、ショートスタブ7およびオープンスタブ8を伝搬する2倍高周波の波長である。
【0015】
図2は図1に示した直列帰還型発振器の等価回路である。図1のバイポーラトランジスタ1は、電圧制御電流源5とベース・エミッタ間キャパシタ6とに置き換えることができる。バイポーラトランジスタ1のベース端子に印加される電圧は、図2のベース・エミッタ間キャパシタ6とキャパシタ2に分圧される。このため、キャパシタ2のインピーダンスが小さいほど、ベース・エミッタ間キャパシタ6に印加されるベース・エミッタ間電圧Vbeは大きくなる。電圧制御電流源5を流れる電流はベース・エミッタ間電圧Vbeに比例するので、Vbeが大きくなるほど、コレクタ端子から出力される電力は大きくなる。このことは、基本波周波数f0、高調波周波数mf0、それぞれについて成り立っている。
【0016】
図1のオープンスタブ8の長さは、発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。したがって、周波数2f0において、エミッタ端子との接続点におけるオープンスタブ8のインピーダンスはショートになる。このため、周波数2f0において、図2のキャパシタ2(静電容量Ce)は短絡されたように見え、バイポーラトランジスタ1のベース端子に印加される電圧は、ほとんどベース・エミッタ間キャパシタ6のみに印加される。したがって、キャパシタ2が短絡されない場合に比べてVbeが大きくなり、コレクタ端子から出力される周波数2f0の電力は大きくなる。
【0017】
エミッタ端子からキャパシタ2(静電容量Ce)側を見たアドミタンスYinは次式で表される。
【0018】
【数1】
【0019】
式(1)において、fは周波数、Z0はショートスタブ7およびオープンスタブ8の特性インピーダンスである。この式において、右辺第一項はキャパシタ2のアドミタンス、第二項はショートスタブ7のアドミタンス、第三項はオープンスタブ8のアドミタンスを、それぞれ表している。ショートスタブ7およびオープンスタブ8は無損失と仮定しているが、損失があったとしても式(1)は近似的に成り立つ。
【0020】
発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、式(1)は右辺第三項が発散する。すなわち、上述したように、アドミタンスYinは無限大になり、回路はショートとなる。
【0021】
一方、基本波の周波数である周波数f0について考えてみる。
周波数f0では、式(1)の右辺第二項のショートスタブ7のアドミタンスと第三項のオープンスタブ8のアドミタンスは打ち消しあう。これは、ショートスタブ7のアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)とオープンスタブ8のアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)が、絶対値は等しく、符号が正負逆になるためである。したがって、式(1)の右辺は第一項のキャパシタ2のアドミタンスのみが残り、ショートスタブ7およびオープンスタブ8のアドミタンスは見えなくなる。すなわち、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子の位置で並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7は、基本波の発振条件には影響を与えない。
【0022】
さらに、基本波発振周波数f0において、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子から見た反射特性は、キャパシタ2のアドミタンスによる反射特性の位相特性に加え、並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7のアドミタンスによる反射特性の位相特性が加え合わされた位相特性を有するものとなる。このため、周波数f0においてYinによる反射特性の位相特性は周波数の変化に対して急峻になる。このことにより、高周波発振器の発振器内のループ位相は周波数の変化に対して傾きが大きくなる。発振器内のループ位相の傾きが大きいほど、周波数選択性が強くなり、発振出力信号の位相雑音特性が向上する。このため、並列接続したオープンスタブ8とショートスタブ7により位相雑音特性が向上し、あるいは位相雑音特性の劣化が抑えられる。
【0023】
以上のように、この発明の実施の形態1による高周波発振器によれば、位相雑音特性を劣化させずに2倍波出力電力が増大するという効果がある。
【0024】
なお、本実施の形態では、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さを、2f0の周波数において、共にλ/4になるようにしたが、本発明はこれに限らず、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さを、2f0の周波数において、共に(2n+1)λ/4になるようにしてもよい。ここでnは0以上の整数である。この場合も、ショートスタブ7とオープンスタブ8を並列接続した回路のアドミタンスは周波数2f0では発散し、周波数f0では0となる。このため、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0025】
さらに、第4のリアクタンス回路を、オープンスタブ8の代わりに、周波数2f0においてアドミタンスが発散する任意のリアクタンス回路とし、第5のリアクタンス回路を、ショートスタブ7の代わりに、周波数f0においてアドミタンスが第4のリアクタンス回路と絶対値が等しく符号が逆になる任意のリアクタンス回路とすることもできる。このときも、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路との並列回路は、周波数2f0においてアドミタンスが発散し、周波数f0においてアドミタンスが0となるため、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0026】
なお、インピーダンスやアドミタンス(サセプタンスあるいはリアクタンス)がオープンやショートになり、あるいは発散や0になること、また、絶対値が等しく符号が正負逆になることでアドミタンス等が打ち消しあうこと、リアクタンス回路の抵抗成分(コンダクタンス成分)が0であること、スタブ等の長さがλ/4等になること、等々の諸条件は、接続される回路のインピーダンス等の値から考えて十分に想定値に近い値と言えるものであればよく、当然に許容範囲を有するものである。したがって、この許容範囲内にインピーダンス等やスタブ長等が設定されればよく、本実施の形態と同様の効果が得られるものである。
【0027】
また、上記実施例では能動素子としてバイポーラトランジスタ1を使用したが、能動素子として電界効果トランジスタ(FET)を使用しても良い。このときは、図1において、能動素子の第1の端子をドレイン端子に、第2の端子をゲート端子に、第3の端子をソース端子に、それぞれ置き換えればよい。このときも、図2の等価回路で表されるような直列帰還型発振器を同様に構成することができるので、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0028】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1、図2と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図3において、9は第1のリアクタンス回路である反射回路、10は第2のリアクタンス回路である共振回路である。
【0029】
図3において、反射回路9は基本波発振周波数f0において誘導性のインピーダンスを有している。また、共振回路10は基本波発振周波数f0の近傍に共振周波数を有しているが、基本波発振周波数f0においては誘導性のインピーダンスを有している。したがって、図3の高周波発振器も、図1と同様に直列帰還型発振器の構成を有しており、基本波発振周波数f0において基本波発振する。
【0030】
実施の形態1と同様に、図3において、ショートスタブ7とオープンスタブ8の長さは、基本波発振周波数の2倍高調波である2f0の周波数において、λ/4になるように設定されている。したがって、図3の高周波発振器では、実施の形態1と同様に、位相雑音特性を劣化させずに2倍波出力電力を増大することができるという効果が得られる。
【0031】
図4は、図3に示した高周波発振器の反射回路9と共振回路10を、それぞれ伝送線路11b、11cで構成し、第3のリアクタンス回路であるキャパシタ2を伝送線路11aで構成した回路図である。また、図5は、能動素子であるバイポーラトランジスタ1のコレクタ端子と反射回路9である伝送線路11bの間に、さらに伝送線路11dを備えたものである。
【0032】
このように実施の形態2では、第1、第2、および第3のリアクタンス回路をそれぞれ伝送線路で構成できるので、小型に構成できるとともに、実装性に優れるという効果がある。また、第2のリアクタンス回路が共振回路10として動作するので、高周波発振器の発振器内のループ位相が、周波数の変化に対して急峻になり周波数選択性が強くなる。このため、発振ループのQ値が高くなり、発振出力信号の位相雑音特性が向上するという効果がある。なお、第1、第2、および第3のリアクタンス回路を必ずしも全て伝送線路で構成する必要はない。また、本実施の形態では、第2のリアクタンス回路を共振回路10としているが、第1、および第3のリアクタンス回路に共振回路を用いることもでき、この場合も位相雑音特性が向上させることができる。
【0033】
さらに、図5に示したようにバイポーラトランジスタ1のコレクタ端子と反射回路9である伝送線路11bの間に、さらに伝送線路11dを備えたとき、高周波発振器の発振器内のループ位相を調整することができ、発振条件を調整することができるとともに、所要の周波数において発振させることができるという効果がある。
【0034】
なお、反射回路9である伝送線路11bは、基本波発振周波数f0において、ほぼλ/4の長さを有するオープンスタブで構成してもよい。このオープンスタブは基本波発振周波数f0の近傍で共振する共振回路としても動作するため、発振ループのQ値を高くすることができる。また、伝送線路11aも特性インピーダンスや線路長を適当な値とすることにより基本波発振周波数f0の近傍で共振する共振回路とすることができ、やはり発振ループのQ値を高くすることができる。また、第1から第3のリアクタンス回路は、可変リアクタンス素子を含んでもよい。このとき可変リアクタンス素子のリアクタンスを変化することにより、周波数による発振条件を変化させることができ、高周波発振器の発振周波数を可変とすることができる。
【0035】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図5と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図6において、12は第4のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路である。
【0036】
図6の高周波発振器は、反射回路9または共振回路10等の少なくとも一部を、可変リアクタンス素子を含む回路で構成しており、発振周波数を可変できる可変周波数発振器としている。
【0037】
また、図6の高周波発振器では、第4のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路12を用いている。可変リアクタンス回路12の具体的な回路は、図7に示すような回路を用いることができる。
【0038】
図7(a)から(e)は、可変リアクタンス回路12の具体的な回路構成の一例を示した図であり、図中、20a、b、c、d、eは伝送線路、21a、bは結合線路、22a、b、c、d、eは可変容量ダイオード、23は入力端子である。ここに示した結合線路21a、bは、2つの伝送線路を近接して配置した構成としたものである。可変容量ダイオード22a〜22eは静電容量を可変してリアクタンスを可変することができる可変リアクタンス素子である。
【0039】
図7(a)では、伝送線路20aに接続した可変容量ダイオード22aに図示していないバイアス端子から直流電圧を印加し、この印加する電圧を変化させることで、可変容量ダイオード22aの静電容量を変化させ、可変容量ダイオード22aのリアクタンスを可変としている。これにより、入力端子23から見た回路のリアクタンスを変化させることができる。したがって、この入力端子23を図6のエミッタ端子との接続点として、可変リアクタンス回路12を構成すればよい。また、図7(b)や(c)に示すように、伝送線路20aは結合線路21a、21bとしてもよい。また、図7(d)や(e)に示すように可変容量ダイオード22d、eを伝送線路20b、c、d、eの間に接続する構成としてもよい。なお、可変リアクタンス回路12に図7(a)から(e)に示した回路以外のもの、例えば集中定数素子のみを用いた回路等を用いてもよい。
【0040】
図8は並列接続したショートスタブ7と可変リアクタンス回路12の反射位相を示す。反射位相が0°のとき、回路のインピーダンス(アドミタンス)はオープンであることを表している。また、反射位相が180°(あるいは−180°)のとき、回路のインピーダンス(アドミタンス)はショートであることを表している。
【0041】
図8(a)において基本波発振周波数がf0であるとき、2倍波周波数2f0では反射位相が180°となり、インピーダンスはショートになる。
いま、図6に示す高周波発振器の発振周波数を変化させ、基本波発振周波数をf0から図8に示すf1に変化したとする。このとき図8(a)のように、2倍波周波数2f1において反射位相はもはや180°とならず、インピーダンスはショートにならない。しかし、図6に示す高周波発振器では、第4のリアクタンス回路に可変リアクタンス回路12を用いている。このため、このリアクタンスを変化させ、図8(b)に示すように周波数2f1において反射位相を180°とすることができ、インピーダンスをショートにすることができる。このとき、基本波発振周波数f1では反射位相は概略0°となり、インピーダンスが概略オープンとなる。したがって、基本波の発振条件に与える影響は少ないまま、発振周波数を変化させても2倍波を高出力化することができる。
【0042】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図6と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図9において、13は第5のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路である。
【0043】
図9の高周波発振器は、反射回路9または共振回路10等の少なくとも一部を、可変リアクタンス素子を含む回路で構成しており、発振周波数を可変できる可変周波数発振器としている。
【0044】
また、図9の高周波発振器では、第4のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路12を用い、さらに第5のリアクタンス回路として可変リアクタンス回路13を用いている。また、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列に接続している。可変リアクタンス回路13の具体的な回路は、図7に示したような回路を用いることができる。
【0045】
図10は並列接続した可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の反射位相を示す。実施の形態3ではショートスタブ7と可変リアクタンス回路12を用いていた。このため、基本波発振周波数をf0にからf1に変化させたとき、可変リアクタンス回路12のリアクタンスを調整することにより、図8(b)や図10の点線に示すように、周波数2f1においてはインピーダンスをショートとすることができるが、周波数f1においてはインピーダンスを正確にオープンとすることはできなかった。
【0046】
図9の構成では可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列接続していることにより、発振周波数を変化した場合、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の両方のリアクタンスを調整することができる。このため、図10の実線に示すように、周波数2f1においてインピーダンスを正確にショートとしたうえで、さらに周波数f1においてもインピーダンスを正確にオープンとすることができる。したがって、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13を並列に接続することで、基本波の発振条件に与える影響はより少なくでき、発振周波数の変化に追従して2倍波を高出力化することができる。可変リアクタンス回路12、13は例えば、図7に示す可変リアクタンス素子を含む回路とすればよいし、他の回路を用いることもできる。
【0047】
実施の形態5.
図11はこの発明の実施の形態5による高周波発振器を示す回路構成図である。図中、図1から図9と同一符号は同一又は相当部分を示し説明を省略する。図11において、14は直列共振回路である。
【0048】
図11に示す実施の形態5による高周波発振器は、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子と、並列接続した可変リアクタンス回路12、可変リアクタンス回路13の接続部との間に、共振周波数が2倍の発振周波数と等しい直列共振回路14を直列に接続した構成である。
【0049】
高周波発振器の基本波発振周波数をf0とすると、2倍波周波数2f0では可変リアクタンス回路12がショートとなるよう調節されているため、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13の接続部のインピーダンスはやはりショートになっている。また、直列共振回路14は2倍波周波数2f0で共振周波数となるよう設定されている。このため、バイポーラトランジスタ1のエミッタ端子から共振回路14側を見たインピーダンスも2倍波周波数2f0でショートになる。したがって、2倍波を高出力化することができる。
【0050】
一方で、並列接続した可変リアクタンス回路12、可変リアクタンス回路13のインピーダンスは基本波発振周波数f0ではオープンになっている。したがって、直列共振回路14を直列に接続しても、インピーダンスの変化は少なく、基本波の発振条件に与える影響は少ない。
【0051】
図12(a)から(c)は、直列共振回路14の具体的な回路構成の一例を示したものであり、図中、15はインダクタ、16はキャパシタ、17は伝送線路、18は可変容量ダイオードである。直列共振回路14は例えば図12(a)〜(c)に示すようにインダクタ15とキャパシタ16が直列に接続された構成であり、キャパシタ16の代わりに伝送線路17または可変容量ダイオード18を用いてもよい。
【0052】
インダクタ15は能動素子であるバイポーラトランジスタ1の寄生インダクタを含んだものでもよい。特に、能動素子の第3の端子であるエミッタ端子に寄生インダクタが含まれる場合、第4のリアクタンス回路である可変リアクタンス回路12を2倍波周波数2f0でショートにしても、エミッタ端子から見たインピーダンスは寄生インダクタによって正確にはショートにならない。しかし、直列共振回路14のインダクタ15をエミッタ端子の寄生インダクタを含んだものとすることにより、エミッタ端子から見たインピーダンスを2倍波周波数2f0で正確にショートにすることができ、2倍波出力をさらに高出力化できるという効果が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態において、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路を、それぞれ、可変リアクタンス回路12と可変リアクタンス回路13で構成したが、これに限らず、第4のリアクタンス回路と第5のリアクタンス回路の片方、もしくは両方を、リアクタンスの値が固定されたリアクタンス回路としても良い。また反射回路9、共振回路10は他のリアクタンス回路で構成しても良い。これらの場合でも本実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1 バイポーラトランジスタ、2 キャパシタ、3、4 インダクタ、5 電圧制御電流源、6 ベース−エミッタ間キャパシタ、7 ショートスタブ、8 オープンスタブ、9 反射回路、10 共振回路、11a〜11d 伝送線路、12 可変リアクタンス回路、13 可変リアクタンス回路、14 直列共振回路、15 インダクタ、16 キャパシタ、17 伝送線路、18 可変容量ダイオード、20a〜20e 伝送線路、21a、21b 結合線路、22a〜22e 可変容量ダイオード、23 入力端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子、第2の端子、および第3の端子を有する能動素子と、
前記能動素子の前記第1の端子に接続され、所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第1のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第2の端子に接続され、前記所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第2のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性のインピーダンスとなる第3のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、
を備えたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
前記第4のリアクタンス回路はオープンスタブであり、前記第5のリアクタンス回路はショートスタブであり、
前記オープンスタブおよび前記ショートスタブを伝搬する高周波の、前記所要の周波数の2倍の周波数における波長をλとし、nを0以上の整数としたとき、前記オープンスタブと前記ショートスタブの長さが、共に(2n+1)λ/4であることを特徴とする請求項1に記載の高周波発振器。
【請求項3】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つを伝送線路で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波発振器。
【請求項4】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つに可変リアクタンス素子を有し前記所要の周波数を可変とするとともに、前記第4のリアクタンス回路は可変リアクタンス素子を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の高周波発振器。
【請求項5】
前記第5のリアクタンス回路は可変リアクタンス素子を有することを特徴とする請求項4に記載の高周波発振器。
【請求項6】
前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路との間に、共振周波数が前記所要の周波数の2倍の周波数である直列共振回路を直列に接続したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の高周波発振器。
【請求項7】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つに、前記所要の周波数の近傍に共振周波数を有する共振回路を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の高周波発振器。
【請求項1】
第1の端子、第2の端子、および第3の端子を有する能動素子と、
前記能動素子の前記第1の端子に接続され、所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第1のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第2の端子に接続され、前記所要の周波数において誘導性のインピーダンスとなる第2のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子に接続され、前記所要の周波数において容量性のインピーダンスとなる第3のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数の2倍の周波数においてインピーダンスがショートとなる第4のリアクタンス回路と、
前記能動素子の前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路の間に並列に接続され、前記所要の周波数におけるリアクタンスが、前記所要の周波数における前記第4のリアクタンス回路のリアクタンスと絶対値が等しく符号が逆となる第5のリアクタンス回路と、
を備えたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
前記第4のリアクタンス回路はオープンスタブであり、前記第5のリアクタンス回路はショートスタブであり、
前記オープンスタブおよび前記ショートスタブを伝搬する高周波の、前記所要の周波数の2倍の周波数における波長をλとし、nを0以上の整数としたとき、前記オープンスタブと前記ショートスタブの長さが、共に(2n+1)λ/4であることを特徴とする請求項1に記載の高周波発振器。
【請求項3】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つを伝送線路で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波発振器。
【請求項4】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つに可変リアクタンス素子を有し前記所要の周波数を可変とするとともに、前記第4のリアクタンス回路は可変リアクタンス素子を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の高周波発振器。
【請求項5】
前記第5のリアクタンス回路は可変リアクタンス素子を有することを特徴とする請求項4に記載の高周波発振器。
【請求項6】
前記第3の端子と前記第3のリアクタンス回路との間に、共振周波数が前記所要の周波数の2倍の周波数である直列共振回路を直列に接続したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の高周波発振器。
【請求項7】
前記第1から第3のリアクタンス回路の少なくとも1つに、前記所要の周波数の近傍に共振周波数を有する共振回路を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の高周波発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−175630(P2012−175630A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38358(P2011−38358)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]